休日 闊歩 きゅうじつかっぽ 第7回 高遠城址公園の空堀から見上げた桜雲橋周辺の色鮮やかな紅葉。11月初旬∼11月中旬が見頃。 (写真/伊那市観光協会) 信 州・伊 那 高 遠 の 秋 旅 秋の 紅 葉 が本 格 的な 彩りを見せる前に長 野県伊 那市の高遠を訪れてみました。 日本100名城にも数えられる高遠 城、 春は城 址 公園の 桜が全国的にも有名な 桜 の名所ですが、 実は秋も紅 葉 が美しく歴 史散 策や郷土の食も楽しめる情緒ある町 です。 これからの 季 節、魅 力ある高遠の 楽しみをご紹 介します。 桜で有名な高遠城址公園 秋はしっとりとした紅葉名所 中央自動車道の伊那インターから車で約30分の高遠町は、小高 い丘に広がる高遠城址公園を中心に、美術館や歴史博物館、数々の 史跡が残る山裾の小さな城下町です。 戦国時代は武田信玄公の対織田・徳川勢力の重要な軍事拠点と して、 また江戸時代は高遠藩の政治・経済の中心舞台としての役割 を担ってきた高遠城。現在は高遠城址公園として整備され、園内に残 る空堀や土塁などからは当時の姿が偲ばれます。 この高遠城址公園は、全国的に知れわたる桜の名所で、春は園内 を埋め尽くす約千五百本の固有種「タカトオコヒガンザクラ」が「天 下第一の桜」 と称されるほど。毎年桜まつり期間中には約25万人も の花見客が押し寄せるにぎわいを見せます。まさに桜の町としての 印象が大きいのですが、新緑や紅葉の時季も格別な風情が味わえま す。秋は約二百五十本のカエデが色とりどりの色彩を放つ紅葉名所 で、今年も11月1日∼9日に行われる 「高遠城址秋まつり」の頃には 美しい見頃を迎えます。開催期間中は高遠の伝統芸能の披露や菊花 展の他、 「新そばまつり」も併催され、園内の「高遠閣」ではそば打ち 高 遠 城 址 公 園 のシンボル高 遠 閣 。どっしりとした風 格があります。 毎 年 新 そばまつりの 会 場にもなっています。 (写真/伊那市観光協会) 体験や新そばを味わうこともできます。 高遠の歴史を語る史跡の数々 「新そばまつり」の会場にもなる 「高遠閣」は高遠城址公園のシンボル的な建物で、国 登録有形文化財にも指定されている昭和初期の建物。桜まつりと秋まつりの期間中は館 内が解放されるので、ぜひこの機会に見学をされるのがいいでしょう。 公園内にはその他にも優雅な「桜雲橋」や「問屋門」、めずらしい「無字の碑」など歴史 的な資料や数々の石碑も見られます。また北口には藩校となった「進徳館」が国指定史 跡高遠城跡唯一の建造物として現在も残り、自由に見学することもできます。 公園周辺にはまだまだ見どころがあります。南口を出ると 「信州高遠美術館」、その先 を下れば「高遠町歴史博物館」 と続きます。歴史博物館は、高遠藩主として地元で今なお 慕われている保科正之公を筆頭に、高遠ゆかりの偉人たちの功績を紹介。特に敷地内に 復 元されている「絵 島 囲 み 屋 敷」は興 味 深 高遠湖畔に建つ高遠町歴史博物館。歴史と郷土を愛す る人々の心が感じられるステキなミュージアムです。 く、大奥を舞台にしたスキャンダル〝絵島生 島事件〟で高遠に流刑となった大年寄・絵島 のもの悲しい余生がひしひしと伝わってくる ようです。 地 元 出 身 の 原 田 政 雄 氏 のコレク ション や 、郷 土 作 家 な ど の 作 品 が 鑑 賞 できる信 州 高 遠 美 術 館 。 高 遠 湖を眺 めながら優 雅 なひと ときも味わえます。 絵島囲み屋敷の復元。絵島は亡くなるまでの 28年間をここで過ごしたとされています。 信州そば発祥の地 殿様が愛した高遠そば 高遠を訪れた理由のひとつに 「高遠そば」があります。伊那は信州そば発祥の地と 言われ、そのルーツともされる 「行者そば」 と同様、大根おろしと焼き味噌を使った 「辛つゆ」で食べるのが特徴とされています。高遠城下に数ある蕎麦専門店の中から 城址公園に近い「ますや」で、高遠そばをさっそく体験してみることにしました。 ご主人がひとりで切り盛りするこの店は、細めに打った蕎麦がのびないように二枚 にわけて、一枚ずつ運んでくれるのが特徴。まず、 しゃもじに焼きつけられた焼き味 噌を半分ほど取り、鉢の中でつゆに少しずつ溶いていきます。味噌の量で味を加減 しながら、そこに大根おろしと刻みネギを加えて辛つゆを作り、蕎麦をつけていただ きます。喉越しのいい蕎麦に高遠辛味大根のピリッとした辛さと焼き味噌がよく合っ て、素朴ながら何とも言えない洗練されたおいしさです。元々、高遠の山間部で伝承 されてきた郷土食だったというエピソードを語ってくれるご主人。昔ながらの高遠そ ばの味わいを守ろうとするご主人の、蕎麦に対する心意気を感じ ました。 静かな城下町では、秋を満喫する豊かな自然や歴史散策の楽し みだけでなく、そこに暮らしている人々の郷土愛に触れることがで きるのも、魅力のひとつではないかと感じました。 自 家 栽 培・自 家 製 粉 の 玄 そ ばを 使った「ますや 」の 高 遠 そ ば 。1 枚 目 の 蕎 麦 を 食 べ 終 わる頃 に 2 枚 目 の 蕎 麦が運ばれてくるという嬉しい 心 遣 い 。 ■伊那市観光協会 (いなしかんこうきょうかい) 所在地/長野県伊那市下新田 3050 電話/0265-78-4111 (代) ■高遠そば ますや 所在地/長野県伊那市高遠町 東高遠1071 電話/0265-94-5123 営業時間/11時∼16時 休業日/原則火曜日 ※この記事の内容は2014年9月現在の情報です。
© Copyright 2024 Paperzz