BSL-4 施設を必要とする新興感染症対策

BSL-4 施設を必要とする新興感染症対策
ニック状態を引き起こすことは必至である。
実 施 予 定 期 間:平成 18 年度~平成 20 年度
総 括 責 任 者:倉根
一郎(国立感染症研究所ウイルス
第一部)
なお、2001 年の米国における炭疽菌バイオテロの発生
以降、重要疾患病原体及び疑い患者検体の国際的な譲渡・
譲受の規制が米国を初めとする各国で強化され、試験検査
委託等のためのやりとりが不可能となっており、我が国の
Ⅰ.概要
問題は国内で処理しなければならない状況となった。
本課題においては、わが国における新興・再興感染症対
レベル 4 病原体による感染症の診断・研究に携わる者を
策として必要なレベル 4 病原体による感染症の診断技術
班員とし、世界標準レベルの診断・研究技術の習得と人材
と基盤的研究を世界各国の高度安全実験施設
(BSL-4 施設)
育成のため、諸外国機関と共同研究を行う。国内で本病原
との共同研究によって推進するとともに、わが国における
体を扱うことが出来ない現状のリスク分析を行い、BSL-4
BSL-4 施設の必要性、わが国において最も適した BSL-4 施
施設活用による新興感染症対策と危機管理における効果
設の設計、数、地域等が明らかとする。さらに、BSL-4 施
を評価する。さらに諸外国での当該施設の現状調査を行う
設に関する国民の理解を得るための方策を明らかにする。
とともに、国民の理解を得る方策を明らかにし、わが国に
以上より、BSL-4 施設を使用する人材育成がなされるとと
おける施設基盤整備の方向性を示す。
もに、科学的根拠に基づく BSL-4 施設の稼動、建設の実現
に向けての提言がなされる。
1.研究の目的
近年多くの新興・再興感染症が世界各地で発生している。
具体的には
a.現在わが国においては感染性病原体として既存施設で
わが国と世界各地との交通網、ヒト・動物の移動、物資の
扱うことができないレベル 4 病原体による感染症の診断
移動の頻度、速度を考えると、世界のどの地域で発生した
技術の確立と基礎研究を諸外国の施設との共同研究によ
感染症であろうと、我が国への病原体の侵入、感染患者・
り実施するとともに、人材育成を行う。
動物の侵入は短時間に起こりうると認識されるべきであ
b.わが国においてレベル 4 病原体を扱うことができない
る。このような感染症を引き起こす病原体(例えば感染症
ことによる現在のリスクを明らかにするとともに、わが国
法の一類感染症であるエボラウイルス、マールブルグウイ
において BSL-4 施設が稼動することによるベネフィット
ルス、ラッサウイルス等)の多くは、病原性と伝播性が高
を明確にする。感染症の特異性を考慮し、わが国において
いことから、危険度レベル 4 病原体として分類される。さ
建設、稼動すべき BSL-4 施設の施設数、地域等を明らかに
らに、これまで全く知られていなかった新たな病原体が人
することにより、わが国の BSL-4 施設整備の方向を提言と
間社会に侵入して重篤な感染症の流行を引き起こす(SARS,
して示す。
ハンタウイルス肺症候群、ニパ脳炎等)ことが現実に世界
c.各国で整備の進んでいる最新の BSL-4 施設の現状、維持
各国で経験されている。このような、重篤な新型感染症対
管理方法等の技術面の検討を行い、施設の安全性を明らか
策においては、まず原因となる病原体を同定すること、感
にするとともに、経費、維持費用等の面からわが国に最も
染者・感染動物の診断が正確で迅速に実施できること、病
適した BSL-4 施設設備を明確にする。
原体に関する科学的な知見にもとづく治療法、予防法を確
d.BSL-4 施設の必要性と安全性に係わる国民の理解の現状
立することが重要となる。
を明らかにし、BSL-4 施設の稼動、建設の実現に向けて国
現在わが国においては、これらのレベル 4 病原体を扱い
うる高度安全実験施設(BSL-4 施設)が稼動しているもの
民全体や地域住民の理解を得るための方策を明らかにす
る。
の、実際にレベル4病原体を扱えない。したがって、我が
これらの研究により、わが国における感染症研究、及び
国においては上記のようにレベル 4 病原体の侵入、レベル
新興・再興感染症対策における BSL-4 施設の必要性とわが
4 病原体感染者・感染動物の侵入、あるいは全く未知の感
国における BSL-4 施設の稼動等の基盤整備に向けての課
染症の発生に際して、科学的知見に基づく早急な対処が不
題とその解決方策を明らかにする。以上より、科学的根拠
可能である。かかる現状の下では、国民が重大な生命危害
に基づいた BSL-4 施設の稼動、建設の実現に向けての具体
に曝されても、これに有効に対処できないので、国内にパ
的な提言がなされる。
2.国内外の研究状況、提案にいたる準備・調査等について
Network, GHSAGLN)に参加している。この世界健康安
a.国内外の研究状況
全保障グループラボラトリーネットワークにはG7各国
(1)世界各国においてはすでに多くの国において高度安全
の公的 BSL-4 施設が参加している。本ネットワークはバ
実験施設(BSL-4 施設)が整備されており、感染症の対策
イオテロおよび感染症対策を各国が協力して推進するこ
および基礎研究に使用されている。現在 BSL-4 施設が稼動
とを目的としたものであり、レベル 4 病原体の検査法の標
し病原体の診断・研究を実施している国はアメリカ合衆国、
準化等を行っている。この活動を通して、本研究課題の遂
イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、ロシア、スエーデ
行に必要な G7 各国の BSL-4 施設との連携はすでに確立
ン、オーストラリア、南アフリカ、インド、台湾、ガボン
されている。
であり、G7の国としては日本とイタリアのみが自国でレ
ベル 4 病原体の診断等を実施しえない国である。さらに、
アジアにおいても中国、韓国が BSL-4 施設の設置を計画し
3.研究内容
研究は以下のごとく4つのサブテーマとして行われる。
ている。
4 テーマを有機的関連させ遂行することにより、BSL-4 施
(2)わが国においては 1981 年国立感染症研究所村山分室
設を使用する人材育成がなされるとともに、科学的根拠に
に BSL-4 施設が建設され、同年WHOにより BSL-4 施設と
基づく BSL-4 施設の稼動、建設の実現に向けての提言がな
しての評価を受けている。しかし、この施設は現在 BSL-3
される。
施設として運用されており、レベル4病原体は取り扱われ
ていない。また、遺伝子組み換え体の研究目的で理化学研
究所に建設された BSL-4 施設も使用されていない。従って、
サブテーマ 1:BSL-4 施設におけるレベル 4 病原体の基
盤研究と人材育成に関する研究
目的:現在、国内でレベル4病原体の診断研究に従事す
現在わが国にはレベル4病原体を使用できる BSL-4 施設
る者を班員として、現在わが国では取り扱うことができな
はない。
いレベル 4 病原体の研究を諸外国の施設との共同研究に
(3)レベル 4 病原体に対する検査法の確立はわが国の感染
より行うとともに、人材育成を行う。
症対策として不可欠であることから、国立感染症研究所ほ
かにおいては、遺伝子組み換え技術を用いてレベル 4 病原
体の蛋白質を個別に発現させ、それらを用いて抗体検査法、
参加機関:北海道大学、東京大学、長崎大学、国立感染
症研究所、動物衛生研究所、科学警察研究所
方法:エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ
遺伝子検出法、抗原検出法を開発してきた。しかし、実際
ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、南米出血熱
にレベル4病原体を使用できる BSL-4 施設がないことか
ウイルス、リフトバレーウイルス、ニパウイルス、ハンタ
ら、感染症の診断の基準であり、かつ最も確実な検査法で
ウイルスの各ウイルスにつき、海外 BSL-4 施設との共同研
ある病原体の分離、同定は行い得ない。また、感染性ウイ
究により、感染性ウイルスを用いた診断法の開発、ウイル
ルスを用いた検査法の確立も行い得ない。これらのことは、
ス分離法の開発および治療予防法の開発、病態解明のため
レベル 4 病原体に対するわが国の感染症対策、感染症研究
の基盤研究を行う。また、各施設より海外 BSL-4 施設に人
を著しく遅らせている。
材を派遣することにより、BSL-4 施設における研究遂行の
b.提案にいたる準備・調査等
トレーニングを行うとともに、将来わが国において BSL-4
(1)世界各国における現在の BSL-4 施設の数、設備(スー
施設における研究をリードする人材を育成する。サブテー
ツラボ、グローブボックスラボ)、利用目的、使用状況、
マ1参加者が各国の BSL-4 施設を使用することによって
今後の建設予定等につき情報収集を行っている。
得た経験、意見等をサブテーマ 2,3,4 における提言形成に
(2)上述のように、レベル 4 病原体については、エボラウ
も十分反映させる。
イルス、マールウイルス、ラッサウイルス、クリミア・コ
ンゴ出血熱ウイルスに関し、遺伝子組み換え技術を用いて
サブテーマ 2:日本における BSL-4 施設の必要性に関す
る研究
発現させた、病原体の蛋白を用いた抗体検査法、遺伝子検
目的:わが国において現在レベル 4 病原体を扱うことが
出法、抗原検出法を確立した。実際に、これらの検査法が
できないことによる現在のリスクを明らかにするととも
診断に有用であることは患者検体を用いて確認する必要
に、わが国において BSL-4 施設が稼動することによるベネ
があるが、パスツール研究所(フランスリヨン市)、米国
フィットを明確にする。
CDC(アメリカ合衆国アトランタ市)の BSL-4 施設の協力
参加機関:国立感染症研究所、大阪大学
を得て有用性を検討した。従って、これらの BSL-4 施設の
方法:世界各国の BSL-4 施設を訪問し情報収集を行うこ
共同研究体制は整っている。
とにより、各国の各 BSL-4 施設における研究の現状と、方
(3)国立感染症研究所 G7 各国とメキシコで構成される世
向性の調査を行う。さらに、調査結果とわが国の新興・再
界健康安全保障グループラボラトリーネットワーク
興感染症研究、対策の現状調査から、わが国における状況
( Global Health Security Action Group Laboratory
等を勘案した BSL-4 施設の必要性と、BSL-4 施設の新興・
再興感染症対策における役割、行われるべき研究、研究施
イオテロ等)によってわが国に侵入した場合でも同様であ
設の基盤整備の方向性を明らかにする。また、さらに合同
り、病原体の同定が非常に困難である。このことは国民の
シンポジウム等により関連学会、学術会議等の理解を得わ
生命安全にとって重大な脅威となる。従って、本研究によ
が国における施設基盤整備の流れを作る。
りわが国における BSL-4 施設を用いたレベル 4 病原体に対
サブテーマ 3:BSL-4 施設の設備および維持管理に関す
る研究
する、検査基盤、研究基盤が確立されることは、わが国の
社会の安定にとり大きな意義を有する。
目的:各国で整備の進んでいる最新の BSL-4 施設の現状、
維持管理方法等の技術面の検討を行い、施設の安全性を明
らかにする。
5.研究終了後の実用化等に向けた自立的な取組について
本研究によって、以下の 4 つの成果が得られる。レベル
参加機関:国立感染症研究所、動物衛生研究所
4 病原体の診断技術とそのための基盤研究が向上し、必要
方法:世界各国の BSL-4 施設を調査することにより、各
な人材育成が図られる。わが国の新興感染症対策において、
国における BSL-4 施設のハード面での特徴、長所と短所お
レベル 4 病原体を扱い得ないリスク分析より施設整備と
よび維持管理方法さらに建設、維持コスト、安全性を明ら
活用による効果が明確化される。諸外国の最新施設の現状
かにする。また、現在開発されている BSL-4 施設に関する
を把握し今後の施設整備の方策が提示される。さらに、施
最新技術の進歩状況を明らかにする。さらに、わが国にお
設に関する国民の理解を得るために採るべき方策が提示
ける使用法、建設維持コストに基づき、わが国にもっとも
される。これらの成果に基づき、既存の BSL-4 施設におけ
適する施設を技術面から明らかにする。感染症の特異性を
るレベル 4 病原体の使用あるいは新 BSL-4 施設の建設に関
考慮し、わが国に最も適した BSL-4 施設の設計、数、地域
し関連学会や学術会議等の理解を得、さらにわが国に建設
等を明らかにすることにより、わが国の BSL-4 施設整備の
すべき BSL-4 施設のデザイン、設備、数、地域に関しての
方向を提言として示す。
提言、および国民の理解を得るための具体的方策に関して
サブテーマ 4:BSL-4 施設に関するリスクコミュニケー
ションに関する研究
目的:BSL-4 施設の必要性と安全性に係わる国民の理解
の現状を明らかにし、BSL-4 施設の稼動、建設の実現に向
の関係各省庁への提言を継続する。また、本研究で形成さ
れた国内共同研究体制は、
「レベル 4 病原体研究ネットワ
ーク(仮称)」を立ち上げ、定期的に会合をもち、意見交
換、研究発表等を行うことにより発展させる。
けて国民全体や地域住民の理解を得るための方策を明ら
かにする。
参加機関:順天堂大学、国立感染症研究所
方法:BSL-4 施設に関し、医療関係者や一般国民の理解
設における倫理審査委員会による承認を受け、生体資料提
と意識の現状をアンケート調査等により明らかにする。さ
供者のイフォームドコンセントを得た上で遂行する。動物
らに、得られた結果をもとに、BSL-4 施設の重要性、必要
実験においては各研究施設における動物実験委員会によ
性と安全性に関し国民全般の理解や地域住民の理解を得
る承認を受けた上で遂行する。遺伝子組換え生物等の使用
るために国が採るべき具体的方策を明らかにし、提言とし
を含む実験においては「遺伝子組換え生物等の使用等の規
て提示する。
制による生物の多様性の確保に関する法律」を遵守し、施
6.生命倫理・安全面への配慮について
ヒトの生体資料の採取を伴う研究においては各研究施
設あるいは主務大臣の承認を受けた上で遂行する。疫学研
4.科学技術連携施策群への貢献度、経済社会への波及効果
究、臨床研究を含む研究はそれぞれ「疫学研究に関する倫
について
理指針」
「臨床研究に関する倫理指針」を遵守し遂行する。
現在わが国においては、レベル 4 病原体を扱うことが可
能である BSL-4 施設は存在しない。従って、仮にレベル4
7.ミッションステートメント
病原体感染疑い患者が帰国したとしても、最も確実な検査
a.新興感染症対策において重要であるレベル 4 病原体の
法である病原体の分離、同定による検査は行うことが出来
基盤研究と診断技術が進展し、BSL-4 研究を担う人材が育
ない。これまでに、1987 年にラッサ熱患者が 1 例帰国し
成される。これにより、わが国に BSL-4 施設のハード面の
たが、この時には米国 CDC に確認検査を依頼し確定診断に
基盤整備が図られるとともに、診断・研究を推進する人材
いたっている。2001 年の米国における 9.11 同時多発テロ
が育成する。
発生以降、現在、世界の BSL-4 施設においては、安全管理
b.レベル 4 病原体を扱うことができないことによるリス
上の理由から他国の検体を受け入れることはほとんど行
クと BSL-4 施設が稼動することによるベネフィットを明
なっておらず、仮に日本に患者が帰国した場合にはレベル
らかにする。さらに、さらに関連学会、学術会議等の理解
4 病原体感染者の確定診断を実施できない状況にある。こ
を得、わが国における BSL-4 施設の基盤整備の意義と今後
のことは、仮にレベル 4 病原体が他の経路(感染動物、バ
に向けたその方向性が明確化されることにより、BSL-4 施
設基盤整備の流れを作る。
d.BSL-4 施設に関する国民の意識と理解の現状が明らかと
c.現在の BSL-4 施設のハード面での特徴、長所と短所およ
なる。また、BSL-4 施設の重要性、必要性と安全性に関し
び維持管理方法さらに建設、維持コスト、安全性、
国民全般や地域住民の理解を得るために採るべき方策が
および最新技術の進歩状況が明らかとする。感染症の特異
明らかとなる。このことにより、BSL-4 施設における診断・
性を考慮し、わが国に最も適した BSL-4 施設の設計、数、
研究の実施に必要な国民の理解を得るための基盤が確立
地域等を明らかにすることにより、わが国の BSL-4 施設整
され、稼動、建設の実現に向けて国民の理解を得るべき方
備の方向性が具体的に示される。
法論が提言として示される。
8.実施体制
氏名
所属機関・職名
提案課題における役割
◎倉根 一郎
国立感染症研究所ウイルス第一部・部長
研究代表者・サブテーマ2責任者
○喜田 宏
北海道大学大学院獣医学研究科・教授
サブテーマ1責任者
○杉山 和良
国立感染症研究所バイオセーフティ管理室・室長
サブテーマ 3 責任者
○丸井 英二
順天堂大学医学部・教授
サブテーマ4責任者
高田 礼人
北海道大学大学院獣医学研究科・教授
サブテーマ1研究参画者
河岡 義裕
東京大学医科学研究所・教授
サブテーマ1研究参画者
吉川 泰弘
東京大学大学院農学生命科学研究科・教授
サブテーマ1研究参画者
安田 二郎
警察科学研究所・室長
サブテーマ1研究参画者
有川 二郎
北海道大学大学院医学研究科・教授
サブテーマ1研究参画者
山田 章雄
国立感染症研究所獣医科学部・部長
サブテーマ1研究参画者
甲斐 知恵子
東京大学医科学研究所実験動物研究施設・教授
サブテーマ1研究参画者
山口 成夫
動物衛生研究所感染症研究部・研究監理官
サブテーマ1研究参画者
森田 公一
長崎大学熱帯医学研究所・教授
サブテーマ1研究参画者
森川 茂
国立感染症研究所ウイルス第一部・室長
サブテーマ1研究参画者
西條 政幸
国立感染症研究所ウイルス第一部・主任研究官
サブテーマ1研究参画者
苅和 宏明
北海道大学大学院獣医学研究科・准教授
サブテーマ1研究参画者
木下 タロウ
大阪大学微生物病研究所・所長
サブテーマ2研究参画者
村上 洋介
動物衛生研究所企画調整部・部長
サブテーマ3研究参画者
9.各年度の計画と実績
a.平成 18 年度
(2)実績
(1)計画
サブテーマ 1:エボラウイルス、マールブルグウイルス、
サブテーマ 1:レベル4病原体について各病原体担当者と
ニパウイルス等各ウイルス研究で進展が見られた。カナダ
諸外国 BSL-4 施設との連携を確立し、共同研究や人材育成
国立微生物病研究所、フランスリヨン国立医学研究所への
への体制を確立する。また、共同研究開始のため国内で行
研究者派遣が複数のグループで行われ人材育成が開始さ
うべき基盤研究を完成させる。
れた。また、南アフリカ、米国テキサス大学、オーストラ
サブテーマ 2:BSL-4 施設を用いて先進的研究を行ってい
リアの BSL4 施設との共同研究の開始が合意された。
るG7諸国の施設を訪問、調査し、先進国における BSL-4
サブテーマ 2:英国 HPS(Health Protection Agency)のポ
施設の使用状況、BSL-4 施設が稼動することによる感染症
ートンダウンおよびコリンデールの 2 つの BSL4 施設、米
対策における利点を明らかにする。
国 CDC、カナダ国立微生物病研究所、フランスリヨン国立
サブテーマ 3:上記G7各国における BSL-4 施設を調査す
医学研究所の BSL4 施設につき現地調査を実施し、立地条
ることにより、各国の BSL-4 施設のハード面での特徴、長
件を調査するとともに、各施設の設置目的、役割、本施設
所と短所および維持管理方法さらに建設、維持コスト、安
に対する国民や周辺住民の理解等に関しての情報収集が
全性を明確にする。
行われた。さらにドイツ国内の BSL4 施設についても現地
サブテーマ 4:専門家や一般国民、特定地域住民を対象と
調査を行った。
した BSL-4 施設に対する意識調査を行い、同時にレベル 4
サブテーマ 3:英国 HPS(Health Protection Agency)のポ
病原体感染者を扱う施設を有する医療機関を訪問し現状
ートンダウンおよびコリンデールの BSL4 施設につき施設
を明らかにする。
およびマネージメントについての現地調査を実施し、基本
的な空調、排水、施設維持についての情報整理を行った。
サブテーマ 4:BSL-4 施設に関する啓発のため、ビデオや
また、英国およびカナダの専門家による施設およびマネー
HP,紙媒体等の試作品を作成し、それらを使用しに対す
ジメントに関するセミナーを行ない、BSL4 施設の最新知
るイメージ等を明らかにする。施設として国民に安心感を
見を得た。動物用 BSL4 施設としてはオーストラリアの
与えるデザインについての検討を開始する。
BSL4 施設に着いての調査を行った。
c.平成 20 年度
サブテーマ 4:研究会での議論、専門家に対する調査、事
(1)計画
例調査・フィールドリサーチ(インタビュー調査)、資料
サブテーマ 1:諸外国 BSL-4 施設への派遣を継続する。わ
の収集により、リスクコミュニケーションの視点からの
が国にとって重要なレベル4病原体の BSL-4 施設を用い
BSL4 施設稼動のための問題点の抽出を行った。また、国
た検査診断基盤を確立するとともに、基礎研究を行いうる
民の BSL4 施設及び感染症に関するリスク認知および意識
基盤を確立する。BSL-4 施設において研究経験を有し、
の状況把握を全国面接調査により行った。
BSL-4 研究を担う人材育成を完成する。
b.平成 19 年度
サブテーマ 2:レベル 4 病原体を扱うことができないこと
(1)計画
による現在のリスク、BSL-4 施設が稼動することによるベ
サブテーマ 1:各病原体ごとに諸外国 BSL-4 施設へ研究者
ネフィットを明確にする。感染症の特異性を考慮し、わが
を派遣し、BSL-4 施設におけるトレーニング、共同研究を
国において建設、稼動すべき BSL-4 施設の施設数、地域等
開始する。
を示し、わが国の BSL-4 施設整備の方向を提言する。
サブテーマ 2:G7以外の国で用いて BSL-4 施設を稼動さ
サブテーマ 3:各種 BSL-4 施設の建設維持コスト、
耐久性、
せている諸外国の施設を訪問、調査しこのような国々にお
維持費用等、さらにはサブテーマ 4 における施設デザイン
ける BSL-4 施設の現状、BSL-4 施設が稼動前後における感
の提言を取り入れ、わが国に最も適した BSL-4 施設設備モ
染症対策の相違を明らかにする。国内においては、関連学
デルを作製し提言する。
会等との合同シンポジウムを企画し BSL-4 施設に関する
サブテーマ 4:前年の調査結果から最終的に使用すべき啓
理解を深める。
発のための資料を作成する。国民に安心感を与える施設デ
サブテーマ 3:種々の設計図を作成し比較することにより、
ザインに関してのモデルを決定する。これらの結果から、
わが国における使用目的、使用頻度等わが国にもっとも適
稼動、建設の実現に向けて国民の理解を得るべき方法論を
する施設を技術面から明らかにする。
具体的に提言する。
10.年次計画
研
究
項
目
1年度目
2年度目
3年度目
(1)BSL-4 施設におけるレベル 4 病原体の基
盤研究と人材育成に関する研究
(参画研究機関)
北海道大学
東京大学
長崎大学
国立感染症研究所
動物衛生研究所
警察科学研究所
海外 BSL-4 施設との共同研究
計 26(百万円)
計 36(百万円)
計 36(百万円)
(2)日本における BSL-4 施設の必要性に関す
る研究
海外施設訪問
(参画研究機関)
国立感染症研究所
大阪大学
(3)BSL-4 施設の設備および維持管理に関する
研究
(参画研究機関)
国立感染症研究所
動物衛生研究所
計 11.3(百万円)
海外施設調査
計 5(百万円)
海外施設訪問と提言の集約
計 16.3(百万円)
計 16.3(百万円)
設備試作と設計
計 15(百万円)
計 15(百万円)
(4)BSL-4 施設に関するリスクコミュニケーシ
ョンに関する研究
国民の意識調査
(参画研究機関)
順天堂大学
国立感染症研究所
計 20(百万円)
国民の意識調査と現状分析
計 25(百万円)
計 25(百万円)
11.研究運営委員会
委員
所属
備考
(研究実施者)
○ 倉根 一郎
国立感染症研究所ウイルス第一部 部長
代表者
サブテーマ2責任者
喜田 宏
北海道大学大学院獣医学研究科 教授
サブテーマ1責任者
杉山 和良
国立感染症研究所バイオセーフティ管理室 室長
サブテーマ3責任者
丸井 英二
順天堂大学医学部 教授
サブテーマ4責任者
(外部有識者)
岩本 愛吉
東京大学医科学研究所 教授
柳
九州大学大学院医学研究科 教授
雄介
(省庁関係者)
三宅
智
厚生労働省
池田
千絵子
文部科学省
国保
健浩
農林水産省
吉野
峰生
警察庁