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International Exchange Center, Nara Women’s University
Mar. 2009 Vol. 14
1.英国オックスフォード大学留学中の雲島さんより報告
文部科学省の「大学教育の国際化推進プログラム(長期海外留学支援)」の支援を受け、英国オックスフォード大学に留学中の雲島
知恵さんから、留学生活の報告が届きましたので掲載します。なお、上記留学支援プログラムは、海外の大学で修士もしくは博士の学
位を取得するための留学と、アジア諸国等(現在対象国は世界 96 カ国)において 1 年間研究を行なう研究派遣の二つが対象になり
ます。採択者には、奨学金と留学経費の一部が文部科学省から支給されます。例年 7 月頃に希望者調査、12 月頃に学内募集を予定し
ています。関心のある方は、国際課へご相談ください。
「Letter from Oxford」
人間文化研究科 博士後期課程 比較文化学専攻 雲島知恵
留学先: オックスフォード大学 オリエル・コレッジ 博士課程
2007 年 9 月 30 日午前 5 時 30 分。ロンドン・ヒースロー空港。入国審査室。
「滞在期間はどのくらいですか?」
「い・・・1 時間、じゃなくて、1 年間です!」
――という、何とも不安な幕開けでスタートした私のオックスフォード留学。「19 時間かけ
て飛んできたのに 1 時間で帰るって・・・・・・」と自問自答した、早朝の珍しく閑散としたヒー
スロー空港。気づいたら、「1 時間」の滞在予定が「4 年間」になっていました。奈良女子大学の交流協定の制度を使わせていただき交
換留学生としてオリエル・コレッジに滞在した最初の 1 年を終え、昨年 10 月からは、文部科学省の長期海外留学支援の奨学金を頂ける
こととなり、オックスフォード大学の正規の学生として英文学の博士号を取得するべく 3 年間のプログラムをスタートさせました。
暮らし始めて早 1 年と数ヶ月。先週は英国全土が 18 年ぶりの大雪に見舞われ、オックスフォードも非日常の空気に街中が包まれてい
ましたが、今ではその雪もすっかり溶け、散歩中ふと気がつくのは鳥の鳴き声です。オックスフォードがどのような街か、その外観、特
にコレッジ等の古い建物群は、映画『ライラの冒険』や「ハリー・ポッター」シリーズを見た方なら容易に想像できると思いますが(「ハリ
ー・ポッター」の食堂のシーンや、『不思議の国のアリス』で有名なコレッジ)、オックスフォードは実は緑も豊かで、大きな公園がいくつか
あります。私は、家からコレッジのあるシティー・センターまで行くのに、毎日クライスト・チャーチの牧草地を通るのですが、あちこちか
ら 小 鳥 の鳴 き声 が 聞 こえ て きま す。 1893 年 に日 本 を訪れたダ ン 夫 人 が 、 その鳥 や 鳴 き声 の少 な さに驚 き、 日 本 のこと を
「bird-forsaken land(鳥に見捨てられた国)」と表現していますが、彼女がそう書いた
のも頷けるほどです。そう言えば、去年の春頃は真夜中の 3 時頃から始まる小鳥の大
合唱に悩まされ、眠れぬ夜を幾度も過ごしました。それを考えると、この鳥の鳴き声を
歓迎していいものやら、今から複雑な気持ちになります。
研究生活の方は、常に忙しい毎日です。オックスフォードは様々な大学施設が街中に
散らばっているため、100 以上あると言われる図書館を目的の本を目指して巡り歩い
たり、あちこちで毎日行なわれているセミナーに参加したりと、おかげさまで脚力は上
がる一方です。街の南西にある自宅から北東にある学部棟に向かって 0 度近い気温の
中を 30 分以上かけて歩く時は、正直涙混じりです。ちなみに、オックスフォードは一瞬オ
ランダかと思うくらいサイクリストが多い街ですが、日本より自転車の交通ルールがし
っかりしているイギリスで、巨大なバスに煽られながら車道を走るのは生きた心地がし
ないので、自転車を持ちながらも乗らない毎日です。セミナーに関しては、英文学教育
関係者だけで 100 人以上いるだけあって、本当に毎日様々なテーマでセミナーが行
なわれており、刺激には事欠きません。今年は隔週でヴィクトリア朝文学のセミナーと
ポストコロニアリズムのセミナーに参加していますが、発表者に対して毎回するどい質
1
問が飛び交い、学問探究の果てしなさを痛感させられます。
最後に。オックスフォードは社交生活も「大変」です。毎日何かのソサエティーやコレッジがイベントを行なっていたり、ディナー・パー
ティーがあったりと、皆いつ勉強しているのかと不思議に思うほどです。ドレスコードもあるため、そういったものに不慣れな私には、
正直肩が凝るばかりの時もありますが、なかなか出来ない貴重な体験だと、ぎこちなくも楽しんでいます。また昨年一年間ジャパン・
ソサエティーで初心者に日本語を教えさせてもらったことは、いつも助けられてばかりの留学生活の中で、少しながらも恩返しが出
来ているような、そんな気持ちを与えてくれる体験でした。目下楽しみにしているのは、6 月にオリエル・コレッジで開催される舞踏会
です。それを励みに、波乱万丈の留学生活ですが、自分らしく大胆に頑張っていきます!
2.短期交換留学より帰国した学生による報告
本学の短期交換留学制度を利用し、海外留学をした本学学生に体験報告を書いていただきました。交換留学に興味のある方は、国
際課留学生係までお問い合わせください。
留学報告
文学部 言語文化学科 ヨーロッパ・アメリカ言語文化学専攻 4回生 村山礼
留学先: ノースカロライナ大学 グリーンズボロ校 (アメリカ合衆国)
だ。図書館ではテスト期間中ある時刻になるとコーヒーが配ら
れ、24時間オープンの図書館でまるまる一夜勉強したこともあ
る。映画、演劇を学ぶ教室は、実際の劇場であり、映画の歴史、
実技、演劇の基礎など本格的に勉強ができることが嬉しかった。
しかし私の留学の目的は卒業論文の研究だったので、アメリカ
の先駆的なフェミニズムやジェンダー、セクシュアリティを学ん
だ。どの授業も3回生レベルのものばかりで、慣れるまで胃が痛
い思いをしながらクラスに通ったが、私は先生運がよかったの
か、とても丁寧で優しい先生に当たることができ、授業外でカフ
無事、交換留学の派遣が決まった時すぐに頭に浮かんだ言葉
ェに行き、二人で私の勉強について話し合いをしたこともあっ
は、辞退の二文字だった。日本出国の日付が近づけば近づくほ
た。正直クイズもテストもとても難しかったが、私が欠かさずや
ど辞退したくてたまらなかった。自分には荷が重すぎると、考え
ったことは授業後に先生と話すことで、その時は必ず自分の使
ても仕方がないことばかり想像しては不安や心配になり、周り
う教科書やノートを見せていた。
に相談ばかりしていたが、最後の最後まで背中を押してくれた
後期は、映画、クイア学、ドイツ語、そして数学を取った。クイア
専攻の友達や先生には感謝で胸がいっぱいだ。もしあの時挫折
学を主に勉強したかったので、日本で学んでいたドイツ語と、中
していたら今ここにある思い出や仲間との絆や経験というお
学校の時に学んだ数学を取った。クイア学では主にクラスのみ
金では絶対手に入らないものを手に入れることはできなかった。
んなとディスカッションをしながら授業が進められ、アジア人、黒
あの10か月間はこの21年間の人生で一番輝いていた時期であ
人、またゲイの生徒などさまざまな信念を持った人が集まって
り、もう二度と手に入れることができないと思うと今でも涙が
いたので、話し合いもいつも白熱していた。私はこの授業で、こ
出る。10ヶ月間のNCでの生活は私の心と体に深く染み込んで
れまで意識してこなかった性がいかに人々の手によって作られ
おり、道を渡るふとした瞬間でもあの頃の光景が脳裏に浮かぶ。
てきたかを思い知った。とてもいい機会になったと思う。前期で
ここで私は10ヶ月間の大学生活で何を専攻し、プライベートの
の授業のミスやクイズなどのアメリカの大学での勉強のコツを
時間で何を具体的にして何を得たかを簡潔に述べたい。
掴めたのか、後期は要領よくできたと思う。クラスでも友達がで
まず 前期は、映画、女性学、演劇、ブロードキャストを学んだ。
きるようになった。留学生が私一人だったので、クラスの友達は
月水金と火木のグループでそれぞれ授業があり、日本の大学
意外と私に興味を持ってくれていることが分かった。次に、プラ
のような週一回ずつの授業ではないので、予習に追われてい
イベートの時間の過ごし方を述べる。
た。テスト前になると図書館で国際寮に一緒に住むメンバーが
前期は、UNCGにインターナショナル生が300人以上いるこ
勉強していて、よくその中に交じって勉強した。夜10時、11時過
ともあって、みんな友達を作りたがっている状況だったので、寮
ぎに図書館から寮に向かって帰るとき、寒さを凌ぐため5、6人
に住む人はそれぞれの階でとても仲良くなった。私はオースト
のメンバーが一つの塊のようになっていた。微笑ましい思い出
ラリア人のルーミーがいたが、彼女と隣、前の部屋に住むアメリ
2
カ人、日本人、ドイツ人、
いる姿をよく目にした。そのあと私は NC に戻り、親友のミリアム
メキシコ人の友達と パ
の実家でクリスマスを迎えた。大きくてキラキラと黄金のように
ブにビールを飲みに行
輝くツリーを見た瞬間私は息を飲んだ。私へのプレゼントも木の
ったり、金曜日はクラブ
下にあり、家族として扱ってくれる喜びで胸がいっぱいになっ
に行った。週末はロードト
た。そのあと私はメキシコへ、アンジーというアメリカ人の女の
リップをしてアメリカ人
子と一緒に行った。メキシコでのあの二週間の旅ほどハードスケ
のホームタウンを訪れ
ジュールなものはなかった。息をつく暇もなかったが不思議と
て、彼女たちの家族と週
疲れず、六つの都市をメキシコ人の友達と回った。新年は、彼の
末を過ごしたりした。木
知り合いが住む、川でシャワーを浴びる村で過ごした。本当に貴
曜日の夜は誰かが必ず
重な経験だった。ぜひまた彼らを訪ねたい。後期は寮外の友達
持っているパーティ の
も増え、ゲイバーによく行った。またハローウィーンでは寮の友
情報をもとに、フラ ット
達と一緒にコスプレをして笑い合った。Spring Break 一回しか長
パ ーテ ィ 、 サ ルサパ ー
期休暇がなかったが、その前にあった、ターキー祭りではルーミ
ティ、フライデイパーティなどに行った。全力疾走でその場を逃
ーのアリシアの実家に行き、卵を着色したり、プレゼント交換をし
げ果せたような少し怖い思いもしたけれど、今では全部笑える
たりした。夜は庭で、ドイツ人のマリアや、アフリカ人のシェリース
思い出である(推奨はしないが)。何より楽しかったことは、寮で
と遅くまで星を眺めていた。雪が降れば、寮は空っぽになり、み
の生活かもしれない。寮の誰かの一室にみんなが集まり、馬鹿
んな外で雪合戦をした。そして Spring Break は西海岸へ行き、
な ことや くだらない ことをして夜通し笑っ ていたし 、 Study
サンフランシスコ、サンディエゴ、グランドキャニオン、ラスベガス
Party と命名して、ロビーや踊り場で集まって地べたに本とノー
へ行った。どうやったら費用を抑えれるか、忙しいなかメンバー
トを広げ、寝転がって勉強していた。深夜4時に、Café の前にあ
で集まり話し合った日々は懐かしい微笑ましい思い出だ。ラス
る噴水に飛び込んでみたり、雪が降ったら外の林をパジャマで
ベガスではストリップショーを、サンフランシスコではゲイバーへ
走り回ったり、ひとつの部屋で国籍も性別も気にせず雑魚寝で
と、メンバー全員とはいけなかったが、日本では体験できない
朝を迎えたり、ショッピングモールの駐車場で夜遅くに遊んでお
ことをすることができた。サンディエゴでは、綺麗な海を眺めな
まわりさんに注意されたり、深夜3時まで UNCG のシンボルの石
がら、もうすぐセメスターが終わり、みんながバラバラになるこ
をペイントしたり、本当に楽しかった。初めての長期休みの Fall
とを淋しく思った。セメスターが終わるに従って、寂しい思いと、
Break ではフロリダのディズニーワールドに行った。みんなとて
悲しい思いで胸がいっぱいになり、また悲しい思いを抑えて笑
も大人で気遣いと思いやりの詰まった旅だった。あんなに楽し
顔で最後を迎えたいという思いで心はぐちゃぐちゃになった時
かった旅は今までにはなく、家族や恋人と行く旅とは違った、心
もあったけれど、今まで述べたような素晴らしい、今でも輝きを
許せる友人との旅はあれほど心地よくて心の底から楽しかった
失わない思い出を共に作ってくれた友達が、そんな私も救い出
と思えるものなのだと初めて知った。次にあった Thanksgiving
してくれた。先生とけんかして泣いた日や、勉強が追い付かなく
の休暇では、学校が用意してくれた NYC へのロードトリップに参
てパニックになったときも、傍らには絶対に、絶対に友達がいた。
加した。私はその多くの時間を Fall Break のほとんど同じメンバ
今思えば彼らは私を一人にはしなかったし、私が孤独感を感じ
ーで行けたので、この旅もすばらしいものになった。綿密な計画
たことはなかったと思う。無力感は度々感じていたが・・・。あの
を作ってくれた森継さんや韓国人のヤンサンには感謝してもし
瞬間に、あの同じメンバーで戻ることはもう無理かもしれない
きれないくらいだ。昼と夜の顔をそれぞれもつ NYC で美しい景
けれど、今でも心の中で当時のみんながあの同じ笑顔を私に向
色を見て、映画で実際ロケ現場になった場所を巡り、念願叶っ
けていてくれる。この掛け替えのない笑顔は私に強さをくれ、
た日々であった。Winter Breakでは、まずフィラデルフィアに行っ
今では人生の大きな財産になっている。このようなチャンスを
た。友達と二人だけの旅だったので、行きたい所を全部回るこ
与えていただき、私を支えてくださったスタッフの方々には感
とができてとても充実していた。フィラデルフィアはとても可愛
謝で胸がいっぱいだ。
い街であり、かつビジネス街でもあり、女性が生き生きと働いて
留学体験記
文学部 言語文化学科 ヨーロッパ・アメリカ言語文化学専攻 4回生 川北奈都美
留学先: レスター大学 (連合王国)
一年間有効の飛行機のチケットを、期限ぎりぎりの最終日にやっと使って帰って
きた。2007 年 7 月、関空で大好きな日本の友達と家族とに別れを告げ、期待と不
安を抱きながらイギリスへと旅立った私。そんな私が、一年後のその日、ヒースロ
ー空港で、大粒の涙を流しながら見送ってくれるような大親友を得ようとは想像
3
もしていなかった。5 人で乗り込んだ車の中でのなんとも言えない空気と、空港でのあの別れの悲しみは今でも忘れられない。私のレ
スターでの一年間の生活は伝えたいことが沢山あるが、ここでは4つのことについて簡単に述べたい。
勉強: 学生の勉強への熱意というのには驚いた。試験前になると、奈良女のものよりも5倍以上広い図書館が学生で満員になるほど。
また、課題も定期的に出されるので日頃の授業をおろそかにも出来ず、学期中は誰もが勉強に重きを置いていたように思う。
寮生活: 大学の学生寮と雖も、誰かが何かをしてくれるわけではない。炊事洗濯掃除、全て自分で行う。こういう時ほど、団結力が身
に付くと感じた。共同で使うと決めた食器がいつの間にか全てキッチンからなくなっているなんてこともしょっちゅうあった。それも
これも全て怠惰なフラットメートが部屋に持ち込んで洗わずにそのまま溜め込んでしまっていたのだけれど。こんな衝突しかねない
出来事も、皆で笑ってそれで終わりにできたっていう素敵な日々。ただし、お互いに甘えすぎず、『自己責任』の気持ちを忘れないよ
うにするのが肝心。
課外活動: 学校にジムがあり、着々とふくよかになっている自分を戒めるためにも(鍛えられた欧米男性を見るという邪な楽しみも
無きにしもあらず?)友人とよく通った。また、サルサダンスやストリートダンスなどにもクラスメートと共に参加し、クラブに行って踊る
ことが当然という欧米の女の子達の、磨きのかかった踊りに衝撃を受けた。3 月以降はいろいろと余裕が出来たため、カフェでアルバ
イトをして、アラブ人の下でイギリス人の女の子達と働いたのもいい経験になった。
友人: 一年間、一度もホームシックにならずに過ごせたのも単に友人達のお陰。男女・国籍・年齢に関係なく、多くの人に出会うことが
できた。私の寮はいつも友人の溜まり場になっていて、テスト前には夜中の 2 時や 3 時まで机一杯に勉強道具とお菓子を広げて勉強
したこともあった。甘くておいしいモカの作り方を研究してマスターしたのもこういう日々の生活の中でだった。帰国までにフランス・
イタリア・ドイツを友人の家でお世話になりつつ旅行することもできた。
レスターでのこの一年は、今までになく沢山の人に触れ、学び、感じ、行動した一年だった。まさにこれぞ私が思い描いていた学生
生活そのものであった。今までずっと「典型的な A 型」だと言われ続けていた私が、帰国後「O 型」だとしか言われなくなったのも、私
の中で何かが大きく変化したことの表れなのだろうと思う。
交換留学体験記
人間文化研究科 言語文化学専攻 博士前期課程 2回生 前川麻美
留学先: 南京大学 (中華人民共和国)
2007 年 9 月から 2008 年 6 月まで中国の南京大学に交換留学させていただい
た。2007 年 8 月 31 日、関西国際空港から南京の禄口国際空港へ飛び立つ際の、
不安と期待は今でも鮮明に覚えている。「この留学で死んでしまう」と何の根拠も
なく思い込んでいた。実際にはもちろん死にはしなかったけれども、私の中で大き
な変化があったのは確かである。何がどう変わったのかは言いにくいのだけれど
も、得がたい数々の経験は確実に私を変え成長させた。以下、留学での体験や感
じたことを述べていきたいと思う。
南京大学では留学生は海外教育学院に所属する。私は読解に関してはほぼ問題なかったのだが、口語や聞き取りが苦手であった
ため授業についていくのに必死で、毎日大量の予習が欠かせず、ペースを掴むまでは本当に辛かった。幸いにも先生が親切でわから
なかったところを丁寧に答えてくれたことと、毎日諦めずに繰り返し練習したおかげか、前期の授業が終わる頃には授業にも余裕を
持って望むことができるようになった。
授業を通じて、友だちもたくさんできた。一緒に授業に参加する以外にも、一緒にご飯を食べに出かけたり作ったり、旅行に出かけ
たりするなど、日本ではなかなかできない交流ができた。日本では当たり前なことが他の国では当たり前でないことも多々あり、国
による文化習慣の違いや価値観の違いは非常に興味深かった。
また、南京大学の日本語科の学生とも仲良くなり、私は中国語を、相手は日本語を使って交流していた。日本語からの連想による中
国語の間違いやその反対の中国語からの連想による日本語の間違いなどは、言語を研究している私にとっては面白い間違いで、彼
らとの交流によって中国や中国語への理解をより深めることができたように思う。
南京大学の留学生用の寮は西苑と曽憲梓楼の二棟あり、私は前期半年、曽憲梓楼に住んでいた。部屋の中だけでなく共同の炊事
場もなかったため、食事は基本的に外食だったが、寮の前にレストランがあったし、少し足を伸ばせば南京大学の食堂や他のレストラン
4
も数多くあったため、食事に困ることはほとんどなかった。後期半年は、友だちとルームシェアをして外に部屋を借りて住んだ。中国
人と交渉して部屋を決めたり、市場であれこれ話ながら食材を買ってきて自炊したりするなどのいい経験ができた。
また、南京というと過去の暗い歴史の問題を心配する人が多いが、私はほとんどそのような歴史的問題から来る摩擦を体験する
ことはなかった。日本人に対する印象は良いものが多かった。むしろ、日本人が南京や中国を敬遠しているように思う。南京は友好的
な人が多く、適度に都会・適度に田舎で、住みやすい町だと感じた。
最後になったが、この留学生活を支えてくださった方々に感謝したい。
留学生活を終えて
文学部 国際社会文化学科 社会情報学専攻 4回生 堀江景子
留学先: トリアー大学 (ドイツ)
今回、大学の先生、両親そして国際課の方々の理解と応援のおかげて、ドイツに留学
するという願ってもない夢が実現した。短い期間でありながら、とにかくいろんなこと
に挑戦した半年間だった。ここでは、その中でも卒業論文の資料集めについて紹介し
たい。
私の留学の目的は、トリア大学で社会学を学ぶことに加えて、卒業論文の資料集め
をすることだった。というのも、私は4回生の前期を終えての留学で、卒論のテーマを「ドイツの地方自治」に決めていたからだ。トリア
周辺の市町村を選び、そこを詳しく研究しようと思っていたものの、始めはどうしたらよいか見当がつかなかった。そこで、大学の先
生に質問したところ、専門の近い先生、そしてある村長さんの情報を得た。私のドイツ滞在期間は数ヶ月と限られていたこともあり、こ
の連絡の取れた村長さんの住む、トリアからバスで一時間ほどにある市町村を研究対象にすることにした。また、「地方自治」といって
も枠が広すぎるため、自治体の観光政策に重点を置くことに決めた。
ここまで決まると、比較的スムーズに作業が進んだ。週に一度はこの専門の近い先生のオフィスアワーに出向き、卒論の進行状況
を見てもらい、こちらからも質問をした。これが卒論を進める上で、非常によいペースメーカーになった。先生は、日本の大学と共同研
究をされているということもあり、日本とドイツの自治体の比較についても話し合うことができた。ときには世間話をしたりもして、と
ても楽しい時間を過ごすことができた。そして、研究対象地には合計5回ほど足を運んだ。あるときはこの対象地の村長さんの家で
話をし、あるときは市長さんや観光協会の事務長さんにインタビューに行った。2月始めには、村長さんにカーニバルの村祭りに招待し
てもらい、そこでお酒を飲みつつたくさんの住民の方と知り合うこともできた。
もちろん、その自治体の観光パンフレットや論文などの文献も集めたが、何より実際にその土地の人たちと出会い、話をしたことは、
私にとってかけがえのない体験となった。ドイツ語は不十分だったとしても、いろんな場に飛び込んでいく勇気を持つことで、周りの
人は暖かく迎えてくれる、協力してくれるということがわかった。大変お世話になったこの大学の先生、村長さんは、日本に帰った後
もメールで私の質問に応じてくださった。卒論は思っていたほどよいものにならなかったのだが、ドイツ語で概要を書き、お世話にな
った方々に報告したいと考えている。
このように、この2点だけを振り返ってみても、大変充実した留学生活だったと感じる。よくわかったのは、留学していても、自分から
動かなければ何も手に入らないが、逆に自分から行動を起こせば、たくさんのことが学べるということだ。これからも、留学で身につ
けた知識、またそれだけでなく、この期間に養った挑戦する気持ち、行動力を忘れず、社会に出ても前向きに取り組んでいきたいと思
う。
交換留学体験記
文学部 言語文化学科 ヨーロッパ・アメリカ言語文化学専攻 4回生 五十川真紀
留学先: レスター大学 (連合王国)
1年間の交換留学は、海外と日本の文化や違いを実感し、考えさせられる機会と
なりました。
まず学部の授業が始まるまでの3ヶ月間、大学の語学学校へ通いました。そこ
で他国からの留学生と友達になり、週末ごとに一緒にイギリス国内を旅行したり自
国の料理を持ち寄ってパーティーを開いたりして交流しました。この時の友達は
学部の授業が始まってからも、時々会ってはお互いの授業での苦労を話して励ま
しあう留学生活に欠かせない友人となりました。
寮では台所が他国の留学生と共同で、みんなの集まる場になっていました。インド人の子はいつもスパイシーな料理、中国人は中
5
華を作っていました。ギリシャの子はパスタばかり食べていて、私がごはんを食べるのを見て「毎日ごはんを食べるんだね!」と驚い
ていました。レスターには日本人が少なく、寮でも学校でもイギリス人や他国の留学生の中に日本人は自分1人というのが日常でした。
よく話題の中で「日本はどうなの?」と聞かれて、自分が国を代表して発言しているようで言葉に責任を感じました。様々な国の学生
が日本に興味を持っているのを感じました。
前期の授業が始まると、講義やクラスメイトの会話が聞き取れずに苦労しました。生徒が15人ほどのイギリス人しかいない討論の授
業では、先生に「∼について隣の席の子と話し合いなさい。」と指示されても「何について話したらいいの?」と聞いているうちに時
間が過ぎてしまうことがよくありました。他国の留学生に相談すると、みな同じ経験をしていて、「私は聞かれてもいつも『分かりませ
ん』としか答えないわ。」と話していました。それを聞き、私も英語に慣れるのには時間が必要と開き直って授業に出られるようになり
ました。部活動にも参加し、テニス・スカッシュ・バドミントン・ラテンダンス等のスポーツに挑戦しました。いろいろな場面で友達を増やし
たことで、日常の英会話に慣れることができたと思います。大学のそばには無料のテニスコートがあり、週末にはよく友人とテニスを
して気分転換をしていました。
後期に入ると、急に周りの話している英語が聞き取れるようになってきたのを感じました。授業も内容が分かるようになると面白く
なり、これまでに知らなかった文学の歴史や背景、技法を学びました。後期の終わり頃にイギリス人の友達と話していると、「あなたは
バイリンガルで羨ましい!英語だけでなくもう一ヶ国語が話せるなんて。」と言われて驚きました。まだ早い会話は聞き取れないこと
が多かったのですが、友人との日常会話には問題が少なくなってきたのを感じました。
1年間の留学を通して、世界各国の文化に触れ外から日本を見たこと、本場のイギリスで英文学の勉強ができたことは今までにな
い経験となりました。帰国後も世界の20カ国以上にできた友達と連絡を取り合っています。これからはこの経験を将来に活かしてい
きたいと思っています。
3.ショートタームリターンプログラム∼同済大学王国譜先生講演∼
国際交流センター事業である「ショートタームリターンプログラム」は、奈良女子大学で学位を取得した後、様々な分野で活躍して
いる元奈良女子大学留学生を短期間本学へ招き、研究交流、先端研究情報の収集、お国の教育・研究状況やホットなニュースの披露
などをしていただき、これらの活動を通して元留学生と本学との人的ネットワークを築いていくことを目的に実施している事業です。
今回は、大学院人間行動科学科スポーツ科学講座 佐久間研究室にて研究し、2007年度博士の学位を取得後中国へ帰国。現在、
上海の同済大学体育教学部准教授の王国譜先生を2月2日(月)から16日(月)ま
での間招聘しました。この間、佐久間研究室での実験、研究交流、後輩の指導、学
長表敬、講演等を行いました。
同済大学は、211大学(21世紀中国の100の大学)や985大学(98年5月に選ばれ
た極めて優れた研究大学で現在 38 校)の一つです。理、工、医、文、哲、経済、経営、
教育の学部を持つ総合研究大学です。学生数は、学部約2万人、修士約 1 万人、博
士約3,300人です。王先生が所属する体育教学部は、専任教員 79 人、内訳は、教
授 5、副教授 32、講師 39、助教 3 です。学部課程を持たず、修士課程生が 9 人在籍
しています。バイオメカニックス、運動生理学、体質体力学、健康運動促進の 4 研究
領域があります。
9 日(月)には、同済大学を紹介していただく機会を得ましたが、ご披露いただいた写真やデータから、急速に発展する中国の研究
型大学の一端を知ることができました。いくつか印象的であったことを挙げれば、以下のようです。
① キャンパスの美しさや広大さは、日本の国立大学の比ではない。キャンパスには川が流れ、そこでは中国の伝統ボート競技「龍
船」の授業を行っている。
② 新入生全員(男女)に軍事訓練を行う。訓練の大きな効用は、一人っ子で育った学生に集団生活に慣れさせ、将来よき社会人と
なるための訓練機会の提供になること。
③ 大統領、首相、大臣などの政治家、ノーベル賞学者など、世界の錚錚たる学者、政治家等が来校している。
④ 学部課程に女子学院を上海市と共同で 2000 年に創設した。これは国家重点大学の中では始めてのこと。
⑤ 理工系が特に強く、土木建築工学は中国でトップと言われている。
4.JICA 青年研修<アフガニスタン女子教育>
五女子大学(お茶の水女子大学、津田塾大学、東京女子大学、奈良女子大学、日本女子大学)と JICA(国際協力機構)との共催で実
施した標記研修(全体プログラム1月13日(火)∼30日(金))のうち、奈良女子大学担当の研修は、1月23(金),24日(土)の両日13名の
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研修員を迎え、女子大キャンパス、女子大附属小学校、東大寺の3箇所で実施しました。今回参加した研修員の方々は、中学校や高等
学校で教鞭をとっている若手教員を中心とした教師達でした。以下に研修の概要を紹介します。
1. 講義と実習「食生活と健康」
講師: 生活環境学部食物栄養学科 伊達ちぐさ教授
講義: アフガニスタンの死亡率は日本の60∼80倍と非常に高い。死因の四分の三
が感染症である。感染症の予防には栄養改善が必須である。とりわけタンパク
質と脂肪を充分摂取することが重要であるが、アフガニスタンではこの摂取は
低い。ビタミン、ミネラルも不足し、成長期の子供のカルシウムの摂取量も低い、
等という指摘を中心に、食生活と健康の密接な関係について講義した。
実習: さまざまな食品サンプルの中から、研修員が随意に一食分のメニューを選択
し、その内容が栄養バランスの取れたものであるかどうかについて、伊達研究
室研究員がチェックを行った。
2. 奈良女子大学附属小学校
(1)「育友会」主催「教養講座」の一部を視聴
講師:小川三夫氏(宮大工)
「不揃いの木を組む」と題する小川氏の講義は、弟子を育成することの難しさ、才能の伸ばし方、叱り方などを例に引き、子育て
にも共通する人生の教訓を内容としたものであった。
(2)「育友会」会長から、例えば、教室の美化、子供の登下校のサポート、教養講座、コーラス活動等をとおして、「育友会」が地域や学
校をサポートしている状況が説明された。学校と家庭、学校と地域の連携が重
要であることを説く説明であった。
3.東大寺見学
研修員は、東大寺の僧(佐保山暁祥氏)から東大寺の建立と意義、大仏と大仏殿、
東大寺の歴史的変遷等について説明を受けながら、大仏殿回廊、大仏殿、大仏を見
学した。加えて、本学教員の案内により、南大門、鐘楼、二月堂等を見学した。東大寺
見学を通して、研修員が、伝統的建築物を守り続けてきた日本と日本人を考える機
会とした。
5.学生の企画による海外での研究活動
以下の3つの国際セミナーは、本学の平成 20 年度「魅力ある大学院教育」イニシアティブ『生活環境の課題発見・解決型女性研究
者養成』継続教育プログラム(代表:今井範子生活環境学部教授)の事業の一環として実施されたものです。以下は、セミナーの企画・
実施に携わった学生による報告です。なお、国際交流センターは、「内モンゴルと日本の文化を学ぶ多文化共生国際セミナー」と「台
日国際交流セミナー」の開催に協力しました。
「内モンゴルと日本の文化を学ぶ多文化共生国際セミナー」
文責: 人間文化研究科 住環境学専攻 博士前期課程 2回生 長崎愛
本セミナーは、平成 20 年度「魅力ある大学院教育」イニシアティブ『生活環境の課題発見・解決型女性研究者養成』継続教育プロ
グラムの一つである『学生による国際的な研究セミナー』の一環として実施されたものです。本学学生、内蒙古大学学生を対象に、内
蒙古大学教員による内モンゴル文化についての講義を受け、日本の歴史的地区、都市、中山間地域でのワークショップを実施するこ
とによって、日中双方の文化相互理解を深め、グローバリゼーションが進む中で、生活のアイデンティティをどのように考えるべきか、
互いの生活や文化について学ぶことを目的とし、実施しました。
本セミナーの内容を紹介させていただきます。
まず、吉野杉をふんだんに使った木造2階建て資料館で、吉野林業の歴史や吉野杉の特徴、林業から生まれた文化や暮らしの知恵
などを学びました。講義では、吉野林業の施業工程について川上村の人口の現状などを織り交ぜながらのお話をうかがい、様々な
木材や生活品などを実際に見て触れることで、内モンゴル大学学生は内モンゴルにはない“山やそこに暮らす人々”を身近に感じる
ことができたようで、本学学生にとっても貴重な体験であり、知識を深めることができました。
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また、村内の住宅にて、こんにゃくづくり体験と川上村の伝統的な木造住宅の見学をさせていただき、こんにゃくの試食や住宅様
式、内装等について学び日本の文化について考える機会となりました。
さらに、チゴロ渕では樹齢 250 年ほどの杉が並ぶ人工美林を見学し、吉野林業は、植林の際、1ha あたり 8,000 本から 12,000 本も植
えるという密植を特徴とすることを学びました。
川上村高原にある住宅を訪問の際には、樽丸工場の見学と共に作業工程についても説明していただき、林業は天候に左右される
職業であるため、雨の降る日の仕事として樽丸作りが行われるようになったことを学びました。また、接着剤なしでも漏れない樽を
作るためには無節の木材を使わなければならないことや、心材を使用することなどを知りました。
また、川上小学校では、各学年の授業風景を見学させていただいた後、体育館で小学生から川上村の紹介、内モンゴル大学学生か
ら内モンゴルの紹介を行い、その後ゲームをして小学生との交流を楽しみました。
本セミナーを通じて、林業についてだけではなく、内モンゴル、日本についてそれぞれの文化の相違点についても学ぶことができ
たように思います。また、内蒙古大学学生の常に興味を持ち、何かを学び取ろうとする姿勢はすばらしく、本学学生にとってもその姿
勢は見習うべきものであり、良い刺激になったと考えられます。
「第 2 回・東海大学(台湾)−奈良女子大学(日本)国際セミナー『地域社会で支える子どもと高齢者
のためのまちづくり』」
文責: 人間文化研究科 住環境学専攻 博士前期課程 2回生 張秀敏
2007 年、東海大学において『地域都市における地域資源を活用したまちづくり』をテーマに、「第1回台日国際交流セミナー」※1 を
実施し、院生や講演者を始め、参加者の方々に大変好評を得ました。その後も東海大学と連絡を取り合い、大学間の交流を進めてい
く中で、2008 年 12 月 12∼13 日の二日間に渡って、「第 2 回台日国際交流セミナー」の開催が実現しました。
1日目は、合同ワークショップを行いました。台湾の原住民族に対するさまざまな活動・教育を行っている施設を訪問し、民族衣装を
着たり、一緒にダンスを踊ったりなどして、原住民の高齢者や子どもたちとの交流を楽しみました。そして都市原住民と呼ばれる彼ら
に対する国の施策や、普段の生活、意識について実際に伺い、学びました。
2 日目は、台中の東海大学において『コミュニティー支援システムの成立と発展−台湾・日本・中国の事例を見る−』をテーマに、発
表とディスカッションを行いました。このテーマは大勢の関心を引き付け、発表当日、会場には多くの方々に来て頂きました。
日本側は、『地域社会で支える子どもと高齢者のためのまちづくり』をテーマに、子どもや高齢者のための施設、コミュニティーに
おける支援事業に焦点を当て、その施策の現状に関して具体的事例を踏まえながら発表をしました。ディスカッションでは、「貴方たち
の研究は自分の国、都市、コミュニティー福祉向上の実践にどのように関わっていけるのか。」といった質問を頂き、子どもや高齢者
に対する国の施策がいかに現場で生かされるべきかなどの議論がなされました。
また、台湾側は、『東海大学周辺の支援システム』、『「龍井コミュニティー」の都市原住民への生活、及び教育の支援状況』をテーマ
に、主に学校現場で実施されている原住民族の子どもたちに対する実践的教育活動の現状を、台湾社会の弱勢層に対する支援の成
功例として紹介されました。台湾の政府や地域だけではなく、大学も少数民族に対して社会で平等に生活できるように努力している
ことに大変感心しました。さらに、セミナーの休憩時間には、原住民の中学生による伝統的なダンスを披露して頂き、原住民の子供た
ちの元気さと生命力に感動しました。
セミナー後には、東海大学内にて懇親会パーティが開かれ、台湾側の発表者、発表会場に来て頂いた人たちと、発表内容に関して、
日本、中国の大陸と台湾との違いについて、また、今後の両大学の継続的な交流についてなど、意見を交わし、親交を深めることが
できました。
今回のセミナーは、約半年前から準備が始まり、奈良女子大学国際交流センター、東海大学日本語文学科の先生、学生の方々の協
力を得て、第2回セミナーを開催することができました。来年以降も、このようなセミナーを東海大学と共同で開催し続けていきたい
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と考えています。
※1 奈良女子大学大学院人間文化研究科
「魅力ある大学院教育」イニシアティブ『生活環境の課題発見・解決型女性研究者養成』(平成17年度文部
科学省採択)継続教育プログラム主催 平成19年度「学生による国際的な研究セミナー」
「学生による国際的な研究セミナー『合同ワークショップ・フォーラム ―韓日まちづくり交流―』」
文責: 人間文化研究科 社会生活環境学専攻 博士後期課程 3 回生 天野圭子
私どもは 2009 年 1 月 8 日から 1 月 9 日の 2 日間、韓国・釜山大学都市工学科の学生と合同にて「学生による国際的な研究セミナ
ー『合同ワークショップ・フォーラム ―韓日まちづくり交流―』」※1 を開催いたしました(会場:韓国・釜山大学)。
釜山大学との交流は都市工学科の鄭憲永教授と公共交通に関する共同研究に関する取り組みの実績がありますが、院生同士の交流
は今回が初めての試みとなります。
そこで、本ワークショップ・フォーラムのキーワードを「まちづくり」とし、1 日目は実際に釜山市内を地下鉄などの公共交通を利用し
ながら、港町釜山ならではの水産物を扱うチャガルチ市場や小規模な専門店が多数あつまり大規模商店街群を形成している国際市
場など地元商店の現状を視察。2 日目に、学生同士の交流フォーラムを開催しました。フォーラムではまず 、鄭教授と Song 氏
(GYEONGNAM 開発研究所研究員)より韓国のまちづくりに関し、公共交通の視点から講演していただきました。主な内容は、釜山市の
交通について①空港、港湾としての役割、②市内の自家用車や公共交通に関する現況、③韓日トンネル構想などで、交通を軸としな
がらも、韓国国内でも南に位置する釜山の地理的・歴史的特性、また、それによる日本との関わりについて深く学ぶことができまし
た。
次に日本・韓国の院生による研究発表の交流を行いました。日本側の内容としてはまちづくりにおいて住まい、中心市街地の活性、
公共交通を視点とした「高齢者の住環境整備」「中心市街地および商店街の活性化事業」「公共交通からみた住民参加とまちづくり」
をテーマとし、韓国側からは公共交通からまちづくりを捉えて「有料道路の連続利用の料金割引による需要変動」「広域経済圏の設
定を考慮した地域経済成長と地理要因」「新市街地歩行空間での心理的・物理的影響の関係性」と題した発表が行われました。また、
発表に対する質疑応答などから、近年では韓国においても日本と同様の問題が重要視されていること。例えば、少子高齢化の著しい
進行、大型店の出店等による中心市街地が衰退しているなどが挙げられ、それぞれの国における成果や問題点などについて活発な
議論が交わされました。国という単位を超えて、お互いが新たな視点で研究を捕えることができたことは今回の大きな成果と考えら
れます。
※1 奈良女子大学大学院人間文化研究科
「魅力ある大学院教育」イニシアティブ『生活環境の課題発見・解決型女性研究者養成』(平成17年度文部
科学省採択)継続教育プログラム主催 平成 20 年度「学生による国際的な研究セミナー」
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Break Time
留学生が書いた随筆です。
「日本人の行動や考え方などで理解できないこと」
私が日本に来てから八ヶ月がたち、日本の生活にも慣れてきた。
しかし、どうして日本人の男女関係に関する考え方はドイツ人とそんなに違うのかということはまだよく分からない。男女関係とい
えば、私は恋愛関係だけでなく、普通の友達としてのつながりなどのことを考える。具体的な例をいくつかあげようと思う。
日本人の若者は一般的に異性の友達がほとんどいない。女性は男性と二人で映画館に行ったり、レストランで食事をしたり、家で遊
んだりすることはあまりない。その場合には、その二人はもう付き合っているということになる。
わたしが育ったドイツでは異性の友達と 2 人で遊びに行くことは普通である。異性の友達のところに泊まることさえおかしいこと
ではない。私の場合には、女性の友達と男性の友達が同時にいて、男性の友達ともいろいろな事について話せる。恋愛や家族問題や
様々なことに関して話し合うのは普通のことだ。
私が分からないのは、日本人は誰かと付き合う時、相手について何も分からないということである。ドイツでは異性と付き合う前、
必ず二人でよく遊びに行き、友達になる時も多い。だから、付き合う時は相手のことをもうよく分かっていて、相手と親しいつながり
が可能である。
しかし、日本人は結婚するまで相手とそんなに親しくないことが多いと思う。結婚して初めて、配偶者の本音、本当の考えと気持ち
が分かるようになる。結婚する前、日本人は相手と外で会い、一緒に喫茶店やレストランに行く。ところが、自分の家に誘う場合は少な
い。相手を自分の家族に紹介するのも結婚を決めた後である。
それはドイツと全く違う点である。ドイツでは結婚しなくても、自分の相手の本当の顔を知るのは普通である。付き合っている人は
一番の友達という場合も多い。
私は日本人の若者とドイツの男女関係や恋愛関係に関して話す時、彼らの顔に驚きが見える。それと同じように、日本人の考え方を
聞くと私も驚いている。私たちが他の国の人の考え方をきちんと理解できないことは当然だ。私たちは違う文化や違う社会で育って、
この文化あるいは社会の規範を内面化する。その規範をもとにして私たちは考えたり行動したり判断したりする。日本の文化や社会
の機能はドイツと違うのは当たり前で、日本人の男女関係や恋愛関係についての考え方もドイツとはちがうものである。
私はこのような自分で経験した男女関係の考え方の差を社会的に見ると非常に面白いと思う。だが、それに関して日本人の考え
方を理解したいと思っても、なかなか理解できない。社会学の客観的な見方を勉強しているものの、自分が育った社会の主観的な見
方で日本人の若者の考え方や行動を判断している。
ここまで、ずっと「日本人の考え方」と「ドイツ人の考え方」などについて書いてきたが、それは一般化した見方である。私は自分の
経験についてしか知らないので、そのことを考える必要がある。日本人の若者は皆異性の友達がいないというわけではなく、ドイツ
人は皆異性の友達がいるというわけでもない。このように、私の意見も客観的でなく、非常に主観的である。
文学部 国際社会文化学科 特別聴講学生 3回生 クルガノワ・ニーナ (ドイツ出身)
6.センター活動(2009年1月∼3月)
国際交流センター及び国際課では、様々な事業を企画・実施しています。その一部をここで紹介します。
◆ 国際交流センター及び国際課主催事業一覧
2009年2月9日「ショートタームリターンプログラム∼同済大学 王国譜先生の講演∼」
2009年2月12日「リンカーン大学 ELC 短期英語研修最終説明会」
2009年2月19日「学長主催卒業・修了外国人留学生懇談会」
2009年2月21日∼3月21日「リンカーン大学 ELC 短期英語研修」
2009年2月27日「第 10 回いけばな教室」
▼「リンカーン大学 ELC 短期英語研修最終説明会」
2月 12日、リンカーン大学 ELC 海外短期英語研修の最終説明会を行ないました。オセアニア交流センター(OKC)担当
者より、研修参加者に対し、現地に着いてからの具体的なスケジュールや、ホームステイ先の家族状況、様々な注意事項な
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どについて説明がありました。また、本研修の旅行手配等を担当する近畿日本ツーリストの担当者より、出発当日の空港で
の注意事項や荷物に関する説明等がありました。
▼「学長主催卒業・修了外国人留学生懇談会」
春の訪れを感じさせる陽射しの2月19日、学長主催の卒業・修
了外国人留学生懇談会を開催しました。大学と卒業・帰国後の留学
生との関係が継続し、今後も学術・留学交流が活発に行われること
を確かめ合う機会として毎年実施しているもので、3月に自国に戻
る交換留学生を含め、指導教員も参加し、和やかに歓談が行われま
した。久米学長から祝辞に添えて記念品が手渡されると、各留学生
はそれぞれの言葉で感謝の気持ちを表していました。歓談の中では、
各々が、本学の卒業生として誇り高く志を持って語る今後の抱負に
耳を傾け、心からのはなむけの言葉を交わし合い、有意義な時間を
過ごすことができました。
学生からは、御礼の言葉に添えて、久米学長に記念品が送られました。あらためて、来る3月24日に、各々の学生に学
位記が手渡されることになります。
▼「リンカーン大学 ELC 短期英語研修」
ニュージーランドクライストチャーチにあるリンカーン大学 English
Language Centre で 1 ヶ月研修をする学生 11 名は、2 月 21 日、元気に、し
かし若干緊張しながら関西国際空港を出発しました。到着翌日の 23 日から、
クラス分けテストを経てレベル別のクラスに入り、授業を受けることになり
ます。帰国は 3 月 21 日です。
研修先では OKC(オセアニア交流センター)クライストチャーチ事務所が
24 時間体制で学生のサポートをします。飛行機の手配は KNT 奈良支店の担
当です。往路は関空‐クライストチャーチの直行便ですが、復路はクライス
トチャーチ‐オークランド‐関空と、オークランド経由の行程となります。
飛行機はJAL とニュージーランド航空の共同運航便です。
期間中、国際交流センターは OKC と連絡をとりながら対応していきます。全員が元気で帰国することを願っています。
▼「第 10 回いけばな教室」
2月27日に、第 10 回目となる留学生のためのいけばな教室を開きま
した。講師は華道池坊の田中ます幸先生です。参加者は少人数でしたが、
いつもより少し小さめの部屋で、アットホームな雰囲気の中、和気藹々と
お花を活けることができました。今回のテーマは、お雛さまです。桃の枝
とピンクのスイートピー、紫のアイリス、小手毬を使って、女雛と男雛を
表現しました。今回は初めていけばなを体験する参加者ばかりでしたが、
器用にはさみを使ってそれぞれの作品をつくり、先生にも上手だと褒めて
いただきました。参加者は、「難しかったけれど、とても楽しかった。ま
た機会があったらやってみたい」と感想を述べていました。
7. センター来訪者
(2009年1月∼3月)
日付
来訪者
1 月 22 日∼24 日
アフガニスタン女子教育研修参加研修員
2 月 2 日∼16 日
同済大学体育教学部 王国譜 准教授
来訪目的
(アフガニスタン)
(中国)
研修
学長表敬、講演、研究
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セミナー等
8.センター図書情報
国際交流センターでは、奈良女子大学で学ぶ留学生・日本人学生・ボランティア活動に興味をお持ちの皆さん等に図書の貸し
出しを行っています。ぜひご利用ください。今回新しく入手した図書は以下の通りです。
センターにはこんな本があります
【一般図書】
みやこの近代 / カブールの燕たち / アフガニスタン母子診療所 / 千の輝く太陽 / 近代京都研究
【雑誌】
岩波ブックレット No.742749 / 読者
【漫画】
カムイ伝全集:決定版 第 1 部 1-15 / カムイ伝全集:決定版 第 2 部 1-12 / カムイ伝全集:決定版 外伝 1-11 / ドカベン 1-31
/ がんばれ元気 1-16 / ストップ!!ひばりくん! 1-2 / あしたのジョー 1-12 / 巨人の星 1-11 / アタック No.1 1-7 / ホ
ットロード 12 / トーマの心臓 1-2 / 11 人いる! / メッシュ 1-2 / ポーの一族 1-2 / スター・レッド / 半神:自選短
編作品集 / 大島弓子が選んだ:大島弓子選集 1-2 / 地球へ… 13 / ファラオの墓 1-4 / 風と木の詩 1-8 / 働きマン 1-4
/ 愛すべき娘たち=All my darling daughters / フラワー・オブ・ライフ 1-4 / 西洋骨董洋菓子店 1-3 / Banana fish 111
/ 蝉時雨のやむ頃 / 真昼の月 / 江戸へようこそ / ニッポニア・ニッポン / 合葬 / ゑひもせす:杉浦日向子作品集 / ゲ
ゲゲの鬼太郎 1-9 / ミノタウロスの皿=The Minotaur’s plate / 気楽に殺ろうよ=Take it easy and make away with ’em /
箱舟はいっぱい=No room left ark / パラレル同窓会=An alumni meeting in parallel world / 日出処の天子 1-7 / タッ
チ 1-14 / めぞん一刻 1-10 / キャプテン翼 1-21 / 漂流教室 1-6 / Yawara! 1-19 / 生徒諸君! 1-12 / 龍=Ron 112 /
君に届け 1-8 / 動物のお医者さん 1-8 / Pink / 大奥 1-4
9. 2009年夏期南京大学中国語短期研修
国際交流センターは、2009 年夏期休暇中に南京大学中国語研修を実施します。奈良女子大学の協定校である中国南京大学の
海外教育学院で、8 月 21 日(金)∼9 月 18 日(金)の約4週間、中国語の勉強をするプログラムです。本学に在籍する正規生
(学部・院問わず)で、本学もしくは他大学にて少なくとも1年の中国語学習を修了した(もしくは同等の中国語学習歴を持つ)
人を対象としています。募集期間は 4 月 17 日(金)∼5 月 13 日(水)17:00 までです。
それに先立ち、募集説明会を下記日程で行ないます。研修申込用紙も配布しますので、研修参加希望の方は必ず出席してくだ
さい。
南京大学中国語研修募集説明会 2009 年 4 月 17 日(金)16:30∼ 文学部N101 教室
その他質問、相談等ある方は国際交流センターまでお気軽にお問い合わせください。
10. 国際交流・留学情報サイト開設&センターHP リニューアル
国際交流センターや国際課が実施する事業や、海外へ留学したい学生のための情報、本学へ留学を希望する学生のための情報等
を掲載する「国際交流・留学情報サイト」を新たに開設しました。随時更新をしていますので、ご覧ください。
また、国際交流センターのホームページもより見やすくリニューアルしました。こちらも併せてチェックしてみてください。
国際交流・留学情報サイト http://www.nara-wu.ac.jp/iec/kokusai/index.html
国際交流センターHP
http://www.nara-wu.ac.jp/iec/index/index.html
編集後記
もうすぐ春です。まだまだ寒いですが、梅が咲き、
学内の木々にも確かにつぼ みや新しい葉が芽吹
いています。春の訪れより少し早く、センターの HP
のデザインを一新しました。「国際交流・留学情報
サイト」も新たに作りましたので、News Letter とも
どもよろしくお願いします。
国際交流センターNews Letter vol.14 にご意見ご
感想がありましたら、右記連絡先までお寄せくだ
さい。
(編集者:早川絢子)
奈良女子大学国際交流センターNews Letter vol.14
2009 年 3 月発行
奈良女子大学国際交流センター
〒630-8506 奈良市北魚屋東町
TEL: 0742-20-3736
E-mail: iec@cc.nara‐wu.ac.jp
http://www.nara-wu.ac.jp/iec/index/index.htm
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