中島晶子(パリ・ディドロ大学) 日本語教育現場でのELP

授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
日本語教育現場での ELP
―学習者オートノミーを考えた実践例とワークショップ―
鬼頭夕佳(エコール・ポリテクニック)
中島晶子(パリ・ディドロ(パリ第 7)大学)
キーワード: ELP、学習者オートノミー、ブログ
1. はじめに
本稿では研修会第 2 日目午後に行ったワークショップについて報告する。まず次節で
ワークショップのねらいと構成について述べ、第 3 節でワークショップに組み込まれた鬼
頭からの実践報告をまとめる。
2. ワークショップの概要
2.1 ワークショップのねらい
本ワークショップは、青木直子講師による「学習者オートノミー概論」をふまえ、教師に
は何ができるのかを考えるための場を提供するものであり、また、研修最後のプログラム
として全体のまとめという位置づけもあった。そこで、参加者にそれぞれの経験や今回の
研修での学びを分かちあってもらうこと、またそうした知見を現場に結びつけるためのヒ
ントを得てもらうことをねらいとした。そして、CEFR の考え方(特に学習者オートノミー)や
その一つの体現である ELP をどのようにして教室に反映させることができるかについて、
参加者がいっしょに考える機会となるよう、「どんな形で ELP のエッセンスが取り入れられ
るか」をテーマとしたグループワークを企画した。最初の手がかりとして、研修前に行った
事前アンケートの結果を参考に教室での日頃の悩みや問題点を取り上げた。そして、そ
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
のような問題の具体的な解決策の一つとして ELP を取り入れた事例を報告した。このグ
ループワークは問題の明確化から問題解決へという形をとっているが、問題解決が主な
目的ではない。あくまで理論と実践の橋渡しがこのワークショップでのねらいである。
2.2 ワークショップの構成
ワークショップ全体の流れは以下のチャートの通りである。まず、前節で述べたような
ワークショップの主旨を説明し、それに続いて、グループワークのヒントとして 20 分程度
の実践報告を行い、グループでの活動に入った。最後に成果の共有として、ペアを組ん
だグループ間で発表をしたほか、研修後に各グループの代表者が『フランス日本語教師
会便り』に活動報告を書くことにした。次節からはセッションごとに説明する。
• ワークショップのねらいと流れを説明
導入
• 報告: グループワークへのヒントとして
実践報告 • 質疑応答
• 日頃の教室での悩みを話し合い、グループで取り組みたい課題を絞り
込む。
グループ
•
隣のグループの悩みについてグループ内で解決案を探る。
ワーク
共有
• グループ内で話した解決案を隣のグループと発表し合う。
• 他のグループの話し合いの内容を共有するために、教師会便りに報告
を載せる。
図 1 ワークショップの流れ
2.2.1 実践報告
実践報告はグループワークでの意見交換の材料提供を目的とし、どのような学習環境
で、どのような問題があり、その結果、どのような学習者を対象に、ELP のどの部分を、何
を目的として、どのように取り入れたか、といったプラグマティックな点に焦点をしぼった。
また、アンケートをもとに得られた学習者の反応や教室で聞かれた意見、教師の内省な
どを報告した。報告の詳細は第 3 節で述べる。
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
2.2.2 グループワーク
グループワークを始めるにあたり、あらかじめファシリテーターが決めておいた 4~5
人のグループに分かれてもらった。グループ分けはなるべく異なるプロフィールの人が
集まるように行った。教育機関や教育年数もさまざまに、また、知り合い同士で固まらな
いようにした。これは、グループワークができるだけ多くの視点が交差する場となるように
期待したためである。
グループワークは大きく二つのセッションに分けられる。一つ目のセッションはグルー
プで話し合うべき具体的な問題を決めることにあてられた。まず、参加者に教室で困って
いることや、これから変えていきたいと思っていることについて話し合ってもらった。その
際、問題が待遇や勤務条件などに偏らないように、事前アンケートの回答をまとめたプリ
ント「アンケートから垣間みられるいろいろな悩み」(稿末資料 1)を参考資料として配布し
た。ここでは、日頃の教室での悩みについて話し合うことで、問題とその対応策について
情報の共有を図ったわけだが、ワークショップ後のアンケートによると、このような話題に
ついて第三者と話し合う機会はなかなかないことから肯定的に受け止めている参加者が
少なくなかったようである。その後、各グループで今回取り上げたい問題をワークシート
(稿末資料 2)に記入してもらった。ここでは他の参加者と話し合い、書きつけることで、身
近な問題を整理し、相対化して考える機会をつくることをねらった。
次のセッションでは、その問題に対する解決案について話し合ってもらったが、話し
合いの前に、隣のグループとワークシートの交換を行った。つまり、解決策を考える問題
は、自分たちが書き込んだ問題ではなく、隣のグループがワークシートに記入したものと
なる。このようにして自分たちの問題から距離をおき、他者の新たな視点を取り入れられ
るようにした。
また、課題を交換するという指示を最初ではなく、ワークシートの記入を終えた段階で
したのは、視点を変えるという点を印象付けたかったのとグループワークの手順が単調
にならないようにするためであった。
話し合いで出てきたアイディアは、交換した相手グループのワークシートにまとめて記
入してもらった。
2.2.3 グループワークの成果の共有
グループで話した内容を共有するため、問題を交換しあったグループと一緒になり、
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
問題解決のアイディアを互いに提案
しあうという方法がとられた。提案され
るアイディアが自分たちの問題に対し
て出されたものであることで、報告が
一方的に終わることなく双方の意見交
換が活発に行われた。ここまでの流
れをまとめると図 2 のようになる。
また、参加者全員がグループワー
クの成果を共有するため、各グルー
図 2 グループワークの流れ
プの代表が『フランス日本語教師会便
り』1に短い報告を載せることにした。これには情報の共有だけでなく、研修会後も研修を
終わらせないようにという意図もあった。
便りでの報告を見ると、各グループの課題はかなり重なっており、代表的なものとして
「レベル差への対応」、「モチベーションの維持」、「漢字学習」が挙げられる。解決案には、
教室での具体的なアクティビティを提案するものもあったが、同時に個人目標の設定、自
己・相互評価、学習の振り返りなど、学習者オートノミーを意識したアイディアも多く見ら
れた。テーマである「どんな形で ELP のエッセンスが取り入れられるか」に答える形でグ
ループワークが行われたと言えるだろう。
3.
実践報告
3.1 はじめに
この実践の対象となっている学習者は、フランスの理工系グランゼコール、エコール・
ポリテクニックと ENSTA の二校で日本語を第二、第三外国語として学習している学生で
ある。二校とも同様の学習者プロフィールであることから、報告では教育機関での区別は
せず、四つのクラスをレベル別/学年度別(習得年度別)に見ていくこととする。このうち、
ELP の応用を考えるきっかけとなった中上級グループのケースについて初めにやや詳
しく述べ、次いで、そこでの考察をもとにクラス運営を行った初級 3 年生、2 年生、1 年生
『フランス日本語教師会便り』 54 号 (2009 年) を参照のこと。フランス日本語教師会のサイトで閲
覧可能。<http://aejf.asso.fr/filemgmt_data/files/AEJF_Tayori_54b.pdf>
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
の各クラスのケースを報告する。それぞれ、各クラスでの問題点と、それに対応するため
に行った活動、そしてアンケートなどから得られた学生の反応を紹介する。
そして最後にこの実践を通して気づいたこと、およびこれからの課題について述べる。
3.2 中上級グループ(2008 年 10 月~2009 年 2 月)
3.2.1 問題点
グランゼコールの日本語学習者はほとんどがゼロスタートの初心者だが、近年、既習
者も現れだした。高校で日本語を学んだ、CNED2で日本語を勉強した、親の仕事で日本
に滞在したことがある、独学などとその学習歴はさまざまだが、中にはかなりのレベルの
学生もいる。そんな中、2008/09 年度、日本語能力試験 1 級を持つ学生と 2 級を目指すと
いう学生 2 人の指導を担当することになった。他の学習者と全くレベルが異なるとはいえ、
2 人だけであるから別のクラスは開講されない。またその 2 人の間にも大きなレベル差が
ある。このようなレベル差の問題にどう対処するかがこのグループにおける課題であっ
た。
3.2.2 対応策
中上級の 2 人の学習者を通常の初心者クラスに入れることもできず、困っていたときに
手に取ったのが、桜美林大学日本語プログラム「グループさくら」(編)の『自律を目指す
ことばの学習』 (2007) という本である。通常の一斉授業が無理なら、自律学習の形にす
れば、逆に学生がそれぞれのレベル、リズムにあった学習ができるという利点がある。そ
こで、その利点を生かしたチューター形式のプログラムをつくろうと考えた。しかしながら、
好きなことを好きなように勉強してもよいと言うだけでは学生が迷子になる恐れがある。学
習上の地図ともなるべきものが必要である。そのときに参考になったのがこの本である。
またこの本と向き合ううち、ELP との多くの共通点を見いだし、あらためて CEFR 関連の資
料にあたり、目標設定のためのプリント(稿末資料 3)と評価表(稿末資料 4)を作成した。
この二つのシートは、先に述べた 『自律を目指すことばの学習』(p.236, 238)とインター
2
Centre national d’enseignement à distance. フランス教育省所轄の遠隔教育機関。
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ネット上に公開されている ELP のひな形3(p.48)を参考にしたものである。評価表は学校
規定の評価基準にしたがってアレンジし、「態度とモチベーション」の項目には ELP のひ
な形(p.50, 51)にある項目の中から自分の学生にとって大切だと思われるものを選んだ。
上記の本のチュートリアルでも ELP でも学習日誌が提案されているが、これは教師に
とっては学生の学習を把握する上で、学生にとっては教師からのフィードバックを得る上
で有効だと考えられる。しかしクラスが開講されず授業が行えないような状況において、
紙媒体では効果的に学習日誌を使うことが難しいと考え、ブログを使うことにした4。同じ
電子媒体でもメールではなくブログにしたのは、複数の人の閲覧が可能なため教師以外
からもフィードバックを得たり、学習者同士で助け合ったりできることが主な理由である。
また時系列に記事が残ることから ELP の資料集(dossier)の役割も期待された。
実際の導入にあたっては、まず学生へのオリエンテーションに多くの時間を割いた。
今までこのような方法で勉強をしたことのない学生には主旨を十分に理解してもらう必要
があり、また、学生と話す中で不明瞭な点があれば教師側がそれを明らかにする必要が
あったからである。その上で、まず目標設定のためのプリントを使って学生の答えを引き
出しながら、順に目標や方法などを記入していった。特に学習目標についての問いはあ
まりに漠然としているので、CEFR の自己評価表5を参照して答えるよう指導した。
3.2.3 結果
学生は当初、クラスが開講されないことに不満を持ち、1 人で勉強しなければならない
ことに不安を抱いていた。しかし、ブログを使うことで、教師はもとよりそれ以外の人からも
フィードバックが得られ、常に学習過程がチェックされていること、自分の学習が評価され
ていることを実感し、この不安は取り除かれたようだ。
懸念のレベル差についても、各人が自分に見合った目標を立てて学習に取り組むこ
以下のサイトから ELP 言語学習記録のひな型がダウンロードできる。
<http://www.coe.int/T/DG4/Portfolio/?L=F&M=/documents_intro/Maquettes.html> (フランス語)
<http://www.coe.int/T/DG4/Portfolio/?L=E&M=/documents_intro/Templates.html> (英語)
3
4
<http://xavance0809.blogspot.com/>
CEFR の評価表も下記サイトからダウンロード可能。
<http://www.coe.int/T/DG4/Portfolio/?L=F&M=/documents_intro/Grille_auto_evaluation.html>
(フランス語)
<http://www.coe.int/T/DG4/Portfolio/?L=E&M=/documents_intro/Self-assessment-grid.html>(英語)
5
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
とができたため、教師はそれぞれのレベルに合わせて対応することができた。そして自
分がしたいことを自分の好きなやり方で勉強できたことは学生に非常に肯定的に受け止
められた。自分に必要なことを見極めた上で学習したことが達成感につながったのだろう。
特に 1 級所持者の学習者は、それまで自分よりレベルの低い学習者とクラスをともにする
ことが多かったため、今回の学習のし方に驚きとともに深い満足感を示した。さらに、自
分で決めた方法で、自分で決めた時間に勉強するというのは、主専攻の勉強で多忙な
学習者には特に適していたのか、空き時間を利用して無理のない学習が続けられたよう
である。
欠点としてあげられたのは、読み書き、また聞くことはいいとしても、話す機会がないと
いうことである。 1 人の学習者は、本人の希望により日本人の知り合いとタンデムを組ん
で日本語の使用機会を増やし、学習のみならずプライベートでも非常に充実した時間を
過ごせたようだが、もう 1 人は日本人パートナーが得られず日本語セクションが定期的に
開く Table japonaise6へ出ることが話すための唯一の機会であった。
この他に学生から得られたコメントには次のようなものがあった。「ブログはコミュニケ
ーションのいいトレーニングになる」。ブログという媒体の性質上読み手を意識して書くこ
とになり、文体への注意が促されたようだ。内容も当初は何を勉強したかなどの報告だけ
だったが、次第に自分の興味や考えを読者と分かちあうようなものへと変化していった。
「1 人で何ができるのか分かった」というコメントも興味深い。これは「1 人では何ができな
いか分かった」という気づきにもつながる。実際、学生には教師との数少ないミーティング
の時間を積極的に使おうとする態度が見られた。このように授業は一つの手段であり、学
習にはさまざまな形があると捉えれば、今後、学生の授業への取り組み方も変わるかもし
れない。一方、評価に関しては「自己評価は難しいが、自分で自分の到達度・上達が分
かる」というコメントが得られた。これは、自分で立てた目標へ向かって勉強することから
得られる達成感、および、自己評価が学習に対するモチベーションの維持・向上につな
がる可能性を示している。
このように、中上級グループのケースにおいては、現場の問題解決のための具体的
な対策が、相手を意識したコミュニケーション、つまりより現実的なコミュニケーションの実
現と、学習者オートノミーの育成に貢献する可能性が見出された。
エコール・ポリテクニックでは、日本語や日本に興味のある学生、教員、研修者が昼食をともにす
る非公式な集まりを定期的におこなっており、Table japonaise と呼ばれている。
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
3.3 初級三年生(2008 年 10 月~2009 年1月)7
3.3.1 問題点
このクラスの問題点は、まず授業時間が週 1 回 1 時間半、全 13 回と少ないことである。
そのため、授業では語彙・文法説明などの知識の習得に焦点がおかれ、それが使えるよ
うになるまでに至らない。初級文法は一通り終えたいが、ことばを使って何かが「できた」
という達成感に至るには厳しい条件である。一方、マスターとのダブルディグリー・コース
の学生に対しては、授業に出られなくても語学授業へ登録するのを学校が許可している
ため、そのような学生に単位を出すにあたって何らかの措置を取らなくてはいけない。
3.3.2 対応策
そこで、授業に出られる学生にも出られない学生にも授業は多様な学習方法の一つ
であるという意識を持ってもらい、授業以外でも日本語に触れる機会を、しかもできるだ
け自主的に触れる機会を増やすことはできないか考えた。そのため、先の中上級の学生
を対象に使用した評価表と学習日誌としてのブログをここでも使ってみることにした。そ
の際、評価表の大きな枠組みはそのままに、項目のみをクラスにあわせて変更した。学
習者には、評価のために勉強するということではなく、評価が学習目標と一体であるとい
う点に焦点をおきオリエンテーションをした。また、ブログの使用には、読み書きの活動を
補うので授業をできるだけ口頭表現のための活動にあてられることのほか、授業に出席
できない学習者もクラスメートとの情報交換や学習過程のチェックができるという利点が
あると考えた。
3.3.3 結果
このクラスではブログへの投稿が課題として与えられることはなかったが、学期はじめ
にクラスで求められていることを評価表で確認し、ブログの意義を納得したためか、学生
たちは自分のリズムで好きなことを好きなように投稿していった。このブログは自分のもの
であり自分の好きなように使えるという点、与えられた題目ではなく自分が書きたいことが
書けるという点を特に学生は肯定的に受け止めていた。また、自分の書きたいテーマに
必要な語彙を見つけなければならないことから、語彙学習が従来よりも本人に意味のあ
る学習となったようだ。そして授業で習ったことをブログというコミュニケーションの場で使
7
<http://ensta0809.blogspot.com/>
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ってみる努力も見られた。ブログ上では文法的誤りの訂正をしないが、言いたいことがわ
からないような場合は教師あるいは他の学生がコメント欄に質問した。文法の明示的な訂
正をしないことに対し学生には賛否両論あったが、ブログ上では所有者を尊重して訂正
をせず、誤りが頻繁に繰り返される場合や本人によって訂正されない場合のみ、折りを
みて教室で取り上げた。
このように、ブログで読み書きの練習ができるため、教室活動は口頭表現中心にする
ことができた。また、授業に出席できない学生への対応という面では、ブログを通じてクラ
スの進度を把握したり、教師やクラスメートとのコンタクトを保ったりすることができ、クラス
の一員としての意識を持って学習を続けることができた、とのコメントが学生から得られ
た。
その他のコメントとしては、「他の人の勉強の仕方や上達をみることができた」と評価の
目を養ったと思われるものや、「一人で勉強するのが苦手だが、自分で勉強することが少
し学べた」のように学習の仕方を学習したと言えるものがよせられた。ここでも学習者オー
トノミーの育成が問題解決につながるという可能性を見ることができるだろう。
3.4 初級二年生(2008 年 10 月~2009 年 4 月)
3.4.1 問題点
日本語学習 2 年目の学生を対象とするこのクラスの問題は動機の維持である。日本語
を始めた 1 年目は、新しいことばに対する驚きと好奇心で学習動機も高い。また、1 年終
了後の夏休みにほとんどの学生が日本へ 2 ヶ月の研修に行くため、自然と学習にも熱が
入る。しかし、2 年目になると日本研修のような具体的な目標もなくなり、主専攻の勉強に
も本腰を入れなければならず、日本語学習への熱が急激に冷めてしまう。また、日本で
「コミュニケーションできた」という達成感を味わい、実際にその能力を伸ばして帰ってき
た学生たちも、日本語の使用環境に恵まれない現状ではその力を維持することができな
いと一種の挫折感を感じているようである。こうしたさまざまな要因が動機の低下につな
がっていると思われた。
3.4.2 対応策
目前に迫ったものがない今、より重要なのは内的動機であろう。では内的動機を高め
るような環境はどうやってつくれるのだろうか。そこで、このクラスでも評価表を取り入れて
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
みることにした。評価項目をあきらかにし、自己・相互評価を取り入れ、評価基準の設定
に学生たちも関わるようになれば、自分で到達度が把握しやすくなる。学習における選
択権と達成感は動機を高める要因にもなりうる。
また、「やってみたらできた」という喜びも学習動機の一つと考えられるだろう。どうした
ら教室がいつか来るであろう本番の練習で終わらずにすむのか。どうしたら教室内の活
動と教室外の活動がつながるのか。検討の末、ブログを使ってクラスメートや他機関で学
ぶ日本語学習者との交流を促す「友達をつくろう」プロジェクト8への参加を提案した。学
習者には、ここで述べた目的以外にも、 ブログ使用が学習を振り返る機会になることを
伝えた。
3.4.3 結果
このクラスでは評価表の試みは肯定的に受け入れられたが、ブログ活動に関してはこ
れまでの二つのケースと異なり、ごく一部の学生を除き否定的で、最終的には中断する
ことになった。
評価は、今までの学習経験から、人から下されるもの、嫌なものといったネガティブな
イメージを伴う傾向にあったようだが、今回の試みでは学生から、評価は楽しく学習に効
果的であり得るという反応を得た。また評価項目が多様であることも非常に好意的に受け
入れられた。学期末に行われた授業に関するアンケートでは「一番よかった教室活動は
何だったか」という質問に、口頭表現のテストを挙げる学生が多数おり、テストさえもが教
室活動の一環として肯定的にとらえられていることに嬉しい驚きを覚えた。自己・相互評
価に関しては、「難しい」とする意見が多かった。また少数ではあるが、「主観的であり、
好きではない」とするコメントも寄せられた。これは今までの学習経験を考慮すれば当然
かもしれない。まず評価の目的や方法について十分クラスで話し合い、コンセンサスを
得る必要があるだろう。そして日々の授業では学生同士のフィードバックなど、さまざまな
評価のし方を少しずつ取り入れ、評価の目を養うとともに、評価に対する意識を変えてい
くことも重要だと思われる。
一方、ブログ活動であるが、教師ができることとして、目的を再確認したり、見本を示し
「友だちをつくろう」プロジェクトはコロンビア大学(アメリカ)の佐藤慎司氏を中心に展開するブロ
グ・プロジェクト。以下のサイトを参照のこと。
2008/09 年度: <http://tomodachiotsukuro.blogspot.com/>
2009/10 年度: <http://tomodachiotukuro2009.blogspot.com/>
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たり、授業にラボでの時間を組み込んだりしてみたが、結局軌道に乗らなかった。思案の
末に行ったラボの授業では、意外にも学生たちが各自ブログを作り、自己紹介を書くとい
う課題をこなしたので、なぜ今までやらなかったのか尋ねてみた。学生たちは「先生のた
めにやった」と答えた。それで、次の授業でこのプロジェクトの取りやめを提案した。する
と学生たちも安心したのか、次々に「目的はよく分かった。でもブログは嫌だ」と本音を打
ち明けた。ブログのようなテクノロジーを導入する場合、それに対する各人の好みも考慮
する必要があるかもしれない。
最終授業のとき、ある学生が言ったことばが印象深く頭に残っている。「先生が僕たち
に自主性をもって学んでほしいと考えていたことはよく分かりますし、それはきっといいこ
とだろうとも分かっていますが、 実際には専攻が忙しくて日本語のために自分で何をす
るか、どうするかを決める時間はありません。日本語に関しては、僕は先生に決めてもら
いたいです。」今回のブログ活動の試みは教師にとって苦い経験となったが、このことば
が示すように学生が「先生に決めてもらう」ことを選択したという事実を、主専攻を優先さ
せた学習ストラテジーとして見なすこともできる。また、学習者オートノミーの考えに立つ
ならば、こうした学習者の選択を尊重するために、ときには活動内容の変更もしくは活動
自体の中断も必要になると言えるだろう。
3.5 初級一年生(2008 年 9 月~2009 年 6 月)9
3.5.1 問題と対応策
これまで述べてきた二年次、三年次におけるレベル差や授業時間数、動機の問題は、
いずれ現一年生も直面する問題であると考えられる。それらへの対応で共通するのは、
学習者オートノミーの育成であるが、それならば日本語学習のはじめから積極的に学習
者オートノミーの育成を意識した教室づくりを行おうと考えた。そうすることで学生も学習
に対し今までとは異なった姿勢を示すかもしれない。また学習のはじめから日本語でコミ
ュニケーションをする機会を設けることで、既習事項を使ってコミュニケーションを行うだ
けでなく、コミュニケーションの中から新たに幅広く学んで行く、そんな機会も増えるので
はと考えた。こうした目的で、やはりここでも評価表とブログの使用を試みた。
9
<http://xdebutant0809.blogspot.com/>
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
3.5.2 結果
意図した通り学習者オートノミーが育ったのかどうか、それをはかる手だてはない。し
かし、ブログ活動に関するコメントには、「自分が前に書いたものを読んで、自分の日本
語の変化を知ることができた」、「定期的に勉強するようになった」、「ネット上の辞書など
を活用するようになった」など、振り返りや学習の仕方に言及するものがあった。これは自
律学習への一歩と言えるだろう。また、評価表の自己・相互評価を取り入れることで、評
価は教師だけでなく自分たちも関わっていくものであり、授業の一部であるということが学
習者に浸透していったように思われる。評価が授業活動の一つとして徐々に受け入れら
れていったようだ。
またブログの使用を通じた日本語使用の広がりの可能性については、「日本語学習が
生活と結びつく」や「習ったことが実際に試せる」など肯定的に捉えたコメントがある一方、
「時間がかかる」、「何を書いたらいいか分からない」、「書きたいことが書けない」、「他の
人からのコメントが読めない」などのやや否定的なコメントも少なくなかった。最後の二つ
のコメントは日本語レベルが十分でないことを示すものだが、「何を書いたらいいか分か
らない」というのも、「今の自分の日本語の力では」というのを付け加えて解釈することが
できるかもしれない。これに加え、ブログ活動自体に対する評価の方法(学習者同士相
互評価をし、成績の一部とする)に対する異議もあり、このクラスのブログ活動は停滞気
味であった。数ある肯定的側面を生かすべく、初級レベルの学習者においてはどのよう
な対応が可能かを検討していくのが、これからの課題である10。
3.6 まとめにかえて
以上、レベル差、モチベーションの低下、授業時間数の少なさといった問題点に対し、
『自律を目指すことばの学習』と ELP にヒントを得た取り組みとして、自己・相互評価と学
習日誌をブログの形で試みた事例を紹介した11。『自律を目指すことばの学習』が CEFR
を参照している点や、学習日誌が ELP を採用している点に見られるように、この取り組み
は CEFR の理論を基本においており、なかでも学習者オートノミーが常にキーワードとし
てあった。このようなプランを実行していくなかで以下の三つの点を(再)確認することが
今年度(2009/10 年度)も、前年度の反省をふまえ、エコール・ポリテクニック日本語一年目のクラ
スでブログを取り入れている。<http://xdebutant0910.blogspot.com/>
11 このブログ活動についてのコミュニケーションおよびアセスメントを中心とした報告は佐藤(他)
(2010)を参照のこと。
10
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
できた。
まず、学習者オートノミー育成には時間がかかるということである。ここで言う「時間が
かかる」には二つある。一つは、少しずつ育てていくものである、という意味においてであ
る。教師はもちろん、多くの学生にとっても新しい取り組みであるため、まず十分に話し
合い互いにコンセンサスを得ることが肝要である。また自己・相互評価は授業のさまざま
な場面で日常的に取り入れるようにしたい。自分自身を評価するというのは思いのほか
難しいことであるし、伝統的な評価法しか知らない学習者には評価と見なされない可能
性もあるからである。もう一つの「時間がかかる」は、教師の仕事の時間は減らないという
意味である。教室で教師が教える時間は減らすことができるかもしれないが、アドバイザ
ーあるいはスーパーバイザーとしての役割が生まれるため、慣れないうちは逆に教室外
での仕事が増える可能性すらある。しかし、オートノミーを育てようと思うなら、その時間は
惜しまないようにしたい。
二つ目は、教師の柔軟性や内省する力が問われるという点である。ブログ活動に対す
る反応が、クラスや学生によって異なったように、学習者のニーズは多様である。これは
当然と言えば当然であるが、何かを改善しようとして教師が一生懸命になっていると、そ
の事実を忘れてつい自分のプランに固執してしまいがちになる。前述の初級二年生のク
ラスの事例では、教師がブログ活動にこだわってしまっていたところを、学生の声を聞い
てようやく、クラスが自分の目指すものとは違う方向へいってしまっていることに気づいた
のである。教師が自分の目指す教室づくりに忠実であるためには、実践の形自体に固執
せず、常に学生の声、自分の声に耳を傾け対応していく柔軟性こそが必要であると感じ
た。
そして三つ目は、教師にこそオートノミーが求められるという点である。これは上述した
教師の柔軟性とも関連する。今回、同じように評価表とブログを採用しても、活動が非常
にスムーズだったクラスとそうでないクラスがあったが、その要因は一つにしぼることがで
きない。ブログが嫌だと言う学生も何か一つクラスの要素が違っていれば他の反応をした
かもしれないし、うまく行ったクラスにしても次回もまた同じでいいとは限らない。当然のこ
とでありながら忘れがちなのが、他から借りてきたアイディアや活動は安易に転用できな
いということである。ELP も同様であり、既存のものをそのまま使える場合もあるだろうが、
基本的には CEFR のようにレファランスとして教師が学習目標やクラスの環境などに応じ
てアレンジを加え、あるいは新たに作り出し、その上で適切な使用方法を考えるという能
91
授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
力が必要となる。さまざまなニーズや条件に対応しつつ学習者オートノミーを育てるには、
教師が自分のオートノミーを培っていくという意識が重要であると思われる。
4. ワークショップを終えて
ワークショップや講演などは、参加者がもっぱら知識として情報を得、その趣旨には賛
同しながらも学習者プロフィールや学習環境の違いを理由に実際の応用には至らないと
いうパターンが少なからずある。見聞きしたさまざまな実践例や同僚が行っているすばら
しい活動を真似しようとする際も、対象や環境が異なれば同じようにはいかないのは当然
のことであり、当の本人にしても、以前うまくいった活動をもう一度行おうとしても全く同じ
ように繰り返すことはできない。トップダウンで CEFR や ELP の使用を要請される場合も、
まず大事なのは近藤裕美子・櫻井直子両講師のワークショップでも見たような文脈化とい
う作業である。もっとも、ひとつのモデルを異なる条件に適用させるのは思いのほか難し
い作業であり、それは否定できない事実である。こうしたことから、このワークショップでは、
授業活動のヒントとして、さまざまあるものをそのまま使うのではなく、いかに自分のクラス
に合わせて作りなおしていくか、それを考える過程に重点をおいた。その意味で、実践
報告では事例の内容そのものよりも、そこに至るまでの経過、そして一つでない結果とい
うものを示そうとした。そしてグループワークでは、解決策を見つけること自体よりも、それ
に至るプロセスのなかで最も重要と思われる作業、つまり、教師同士が話し合いながら問
題の明確化と方針の共有を図るという作業を重視した。果たしてそれが研修とその後の
参加者の教室作りを結ぶきっかけになったかはさだかではないが、たとえファシリテータ
ーの意図したところとは違ったものであったとしても、 参加者がそれぞれ次なる教室作り
のヒントを持ち帰ることができたなら幸いである。
参考文献
桜美林大学日本語プログラム「グループさくら」(編) 2007. 『自律を目指すことばの学習』凡人社
小川貴士(編) 2007. 『日本語教育のフロンティア―学習者主体と協働』くろしお出版
小木曽左枝子 2006. 「アイルランドにおけるヨーロッパ言語ポートフォリオの日本語学習への活用
例」 『日本語教育通信』 No.55.
<http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/tsushin/report/012.html >
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
佐藤慎司、深井美由紀、浜田英紀、佐藤友美 2008. 「社会文化的視点を取り入れた初級日本語
教育実践」 『日本語教育国際研究大会予稿集』 釜山外国語大学
佐藤慎司、鬼頭夕佳、芝原里佳、瀬尾匡輝、熊谷由理 2010 予定.「言語教育におけるコミュニ
ケーション再考:世界に広がるブログの輪」
『世界日本語教育大会予稿集』台湾国立政治
大学
デューイ、ジョン 2004. 『経験と教育』講談社[Dewey, John. 1938. Experience and Education]
トムソン木下千尋 2008. 「海外の日本語教育の現場における評価―自己評価の活用と学習者主
導型の提案」 『日本語教育』 No.136. pp.27-37.
長沼君主 2008. 「Can-do statements がもらたらすもの」 『日本語教育通信』 No.62.
<http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/tsushin/reserch/036.html>
根岸雅史 2008. 「英語教育における最近の評価の動向」 『日本語教育』 No.136. pp.49-58.
ノールズ、マルカム・S 2005. 『学習者と教育者のための自己主導型学習ガイド』明石出版
[Knowles, Malcolm S. 1975. Self-Directed Learning]
深井美由紀・佐藤慎二 2007. 「レベル別によるブログの使用例」 『第四回日本語教育とテクノロジ
ー学会プロシーディングス』
<http://www.columbia.edu/~ss903/Publication/CASTELJ07_poster.pdf>
細川英雄・ことばと文化の教育を考える会(編) 2008. 『ことばの教育を実践する・探求する―活動
型日本語教育の広がり』 凡人社
山本弘子 2008. 「日本語学校から見た評価の観点の見直し―ヨーロッパ共通参照枠の視点から
―」 『日本語教育』 No.136. pp.38-48.
M.Camilleri, P.Ford, H. Leja & V.Sollars. 2007. BLOGS : Blogs dans l’enseignement des langues
vivantes. Centre européen pour les langues vivantes: Conseil de l’Europe.
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
稿末資料 1
アンケートから垣間みられるみんなの悩み
*クラスの中のレベル差に対応しきれない。
既習事項を消化できていない学生がいて焦り、復習をした。しかし、そのことで予定が大幅に
狂い、またよく理解している学生はおしゃべりを始めてしまった。どのレベルを基準として授業
を進めたらいいのだろう。
*クラスの人数が多い。
仕方なく講義形式の授業をしている。私が考える語学授業のイメージとは随分かけ離れている
が、どうすればよいのかわからない。
*学生の学習態度が受け身。
活気ある楽しい授業が私の目標だが、活気があるのは私だけということが少なくない。学生は
真面目に勉強するのだが、私が聞いたことしか答えないし、言ったことしかやらない。
*日本人との接触の機会を増やしたいのに増やせない。
一度ビジターセッションを実施したところ、とても評判がよかった。学生のモチベーション向上
のためにも良いと思う。もっと取り入れたいが、そうすると教科書が進められなくなってしまう。
*スケジュールにしばられる。
一つのクラスを二人で担当している。相手の先生に迷惑がかからないようにスケジュール通り
に進もうとするため、強引に授業を進めることもある。
*モチベーションの維持。
大学一年生の時は夏に日本へ研修に行くこともあり、学生はやる気満々だった。しかし、二年
生になって目標を失ったのか、出席率も悪く、宿題もして来ない。
*毎回の欠席者が多い。
成人クラスなので、仕事や家庭の事情で休む人が多いが、出席を強要する訳にもいかない。ク
ラスの半分程度がほとんど毎回来る人とすれば、残りは入れ替わり立ち替わりといった感じだ。
*学生に進歩の度合いを示してあげられない。
成人クラスで何年も勉強している学生さんに「私の日本語のレベルはどのくらいでしょう」と聞か
れ、答えに窮した。本人も日本語、そして日本語の勉強が大好きで勉強を続けているが、自分
のレベルがどのくらいなのか分からないと言う。
*つい漢字がおざなりに。
週3時間の授業で、文法から読み書き、会話と全部しなければならないので、どうしても時間に
ゆとりがない。それで漢字は紹介するだけで、学生の自習に頼ってしまう。こうして漢字嫌いを
増やしているような気がするのは私だけだろうか。
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
稿末資料 2
ワークシート
課題
メンバー:_____________________________________
提案
メンバー:_____________________________________
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
稿末資料 3 (目標設定のためのプリント)
Mon prochain objectif d’apprentissage linguistique
Langue :
Objectif d’apprentissage : Que voudrais-je savoir faire ?
(Utilisez la grille pour l’auto-évaluation contenue dans le passeport de langues du Conseil de
l’Europe)
Quelle est ma difficulté maintenant ?
1)
2)
3)
Pour atteindre mon objectif, il faut savoir faire :
1)
2)
3)
Comment vais-je procéder pour atteindre mon objectif ? Que vais-je faire concrètement ?
1)
2)
3)
Combien de temps puis-je consacrer chaque jour/semaine à la réalisation de mon objectif ?
Quand vais-je commencer ?
Quand est-ce que je pense finir ?
Quels sont les supports dont j’ai besoin pour apprendre ?
Comment vais-je savoir si j’ai oui ou non atteint mon objectif ?
Bilan de mon travail en fin de parcours (à la date fixée pour l’objectif en question, ou une date
proche) :
96
稿末資料 4 (評価表)
Évaluation
cocher les
évaluations
souhaitées
envisager de façon positive les diverses
tâches
gérer mon temps de façon efficace
apprendre en travaillant avec d’autres
activité
d’apprentissage
apporter ma contribution à un groupe de
travail
objectif
définir des objectifs
planning
suivre mon programme
pratique
choisir des méthodes/outils
adaptés
atteindre mes objectifs
évaluation
d’autres
note de travail (10)
atitude et
motivation
à évaluer
note d’oral (20)
présentation du procèssus de l’apprentissage
(au mois de décembre)
présentation de l’apprentissage de ce semestre
en utilisant du portfolio/journal (à la fin de
semestre)
examen
final (20)
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
résultat
commentaire
note
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
quand, comment
contenu
d’apprentissage
note de niveau
(10)
quoi
par
centage
évalué par
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
soi-même
(
professeur
(
)
)
)
)
)
)
)
©école polytechnique 2008/09
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授業がかわる CEFR と学習者オートノミー 2009 年フランス日本語教師会研修会
Résumé
Apprentissage du japonais avec le PEL :
présentation de cas d’application et
atelier basé sur l’idée d’autonomie de l’apprenant
Yuka KITO (École Polytechnique)
Akiko NAKAJIMA (Université Paris Diderot – Paris 7)
Cet atelier a pour objectif de partager le savoir entre les participants et de
développer le savoir-faire à travers le travail de participation interactif. Il est constitué
des deux parties suivantes :
1) Présentation de cas d’application du PEL avec des apprenants de différents
niveaux et de ses possibilités pour améliorer leurs modes d’apprentissage du japonais
dans des enviromments problématiques comme un décalage radical de niveau entre les
apprenants, la baisse de motivation, le manque de temps pour bien pratiquer la langue en
classe.
2) Travail en groupe visant à saisir les problèmes fréquents auquels est confonté
chaque enseignant et à trouver par la suite les meilleures méthodes d’application d’outils
d’étude comme le PEL afin de les rendre plus efficace face aux difficultés quotidiennes
de l’apprentissage tout en favorisant le développement de l’autonomie de l’apprenant.
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