企業が直面する ハラスメントの問題 セクハラの問題

(注1)平成18年厚生労働省告示第615号。
る も の と す る。
﹂
︵ 労 働 契 約 法5 条 ︶と さ
れており、企業には労働者の就業にあた
職場におけるハラスメントは、法的に
も定義が確立しているセクシュアルハラ
せであり、多様な場面で起こり得る。
う か。ハ ラ ス メ ン ト は、い わ ゆ る 嫌 が ら
ことが多くなったとお感じではないだろ
﹁ハラスメント﹂という言葉を耳にする
各人の良識に委ねているだけでは、企業
義務ということからすれば、そのような
スメントはよくないこと﹂という意識は
従業員の多くは程度の差こそあれ﹁ハラ
策 が 求 め ら れ る わ け で あ る。お そ ら く、
観点からも企業としてのハラスメント対
って安全配慮義務が課されている。この
スメント︵以下﹁セクハラ﹂という︶をは
のハラスメント対策としては当然ながら
企業が直面する
ハラスメントの問題
じめとして、法的定義が確立していない
不十分である。
また、最近では学生の就職活動に関連し
下﹁マタハラ﹂
という︶
が主なものである。
こ と と す る。な お、本 稿 に お い て 使 用 し
で、企業のハラスメント予防策に触れる
本 稿 で は、セ ク ハ ラ、パ ワ ハ ラ お よ び
マタハラについてその内容を整理した上
持っているものと思われるが、安全配慮
パ ワ ー ハ ラ ス メ ン ト︵ 以 下﹁ パ ワ ハ ラ ﹂
た も の と し て オ ワ ハ ラ︵
﹁就職活動終わ
ている用語である﹁パワハラ﹂は、
﹁いじ
と い う ︶や マ タ ニ テ ィ ハ ラ ス メ ン ト︵ 以
れ ハ ラ ス メ ン ト ﹂を 略 し た も の で、企 業
め・嫌がらせ﹂を含むものとする。
まざまなものがあり、その行為がハラス
ト ﹂と い っ て も、程 度 の 問 題 も 含 め て さ
題に関して雇用管理上講ずべき措置につ
が職場における性的な言動に起因する問
セクハラとは、一般的には相手方の意
に 反 す る 性 的 な 言 動 を い う が、
﹁事業主
︵1︶法律等によるセクハラの規制
セクハラの問題
が内定者に対して就職活動を終了するよ
う迫るケースを指すとされている︶など
というものまでがある。
ハラスメントという言葉だけが独り歩
きをしすぎて問題の本質が没却してしま
メントに該当するか否かの判断がそもそ
いての指針﹂
︵以下﹁セクハラ指針﹂とい
う の は よ く な い が、一 口 に﹁ ハ ラ ス メ ン
も難しいケースもある。とはいうものの
う。注1︶
では、
セクハラを
﹁対価型﹂
と
﹁環
セクハラを規制する法律である雇用の
境型﹂に区分している。
﹁使用者は、労働契約に伴い、労働者がそ
の生命、身体等の安全を確保しつつ労働
することができるよう、必要な配慮をす
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会社法務A2Z 2015.11
分野における男女の均等な機会及び待遇
うことができるようになり、事業主がセ
調停など個別紛争解決援助の申し出を行
①発言
性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布することなど
【性的な言動】
②行動
性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布することなど
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働
者が解雇、降格、減給等の不利益を受けること
【類型】
①対価型 (具体例)
事務所内において事業主から性的な関係を要求されたことを拒否したために行われる解雇
出張中の車中における上司からの身体的接触に抵抗したために行われる不利益な配置転換
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものと
なったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない
程度の支障が生じること
②環境型 (具体例)
事務所内において上司が労働者の腰、胸等にたびたび触ったため、当該労働者が苦痛に感じ
てその就業意欲が低下している
同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、
当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかない
りである。
いてその内容を整理すると図表1のとお
﹁環境型﹂とがある。セクハラ指針に基づ
も の と し て は 前 述 の と お り﹁ 対 価 型 ﹂と
セクハラは、相手方が﹁望まない﹂
、
﹁性
的 な ﹂性 質 の 言 動 を い い、職 場 に お け る
︵2︶セクハラの行為類型と内容
った。
場合には、企業名が公表されることとな
クハラ対策を講じず、勧告にも応じない
の 確 保 等 に 関 す る 法 律︵ 以 下﹁ 均 等 法 ﹂
という︶は、平成一八年の改正によって、
職場におけるセクハラについて必要な措
置 を 講 ず る こ と が 事 業 主 の 義 務 と さ れ、
またセクハラの対象として男性も含まれ
ることとなった。また、同改正によって、
図表1 セクハラの要素と行為類型
セクハラに関する紛争が生じた場合には、
深田俊彦
特定社会保険労務士 ︵3︶事業主の措置義務
職場におけるセクハラに関して事業主
が講ずべき具体的な措置の内容について
は、セクハラ指針において示されており、
概要は以下のとおりである︵注2︶
。
① 職場におけるセクシュアルハラスメ
ントの内容・セクシュアルハラスメン
トがあってはならない旨の方針を明確
化し、管理・監督者を含む労働者に周
知・啓発すること。
② セクシュアルハラスメントの行為者
については、厳正に対処する旨の方針
・対処の内容を就業規則等の文書に規
定し、管理・監督者を含む労働者に周
知・啓発すること。
③ 相談窓口をあらかじめ定めること。
会社法務A2Z 2015.11
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(注2)同指針は平成25年12月に改正され、職場におけるセクハラには
同性に対するものも含まれることが明示された。
特集
今、求められる
人事労務マネジメント
の問題と
企業の対応
(注3)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律。
④ 相談窓口担当者が、内容や状況に応
じ 適 切 に 対 応 で き る よ う に す る こ と。
隔離、仲間外し、無視
❹ 過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不
可能なことの強制、仕事の妨害
❺ 過小な要求
パワハラと業務の適正な指導との線引きが必ず
しも容易でない場合があると考えられる。
業務上の合理性なく、能力や経験と その行為が「業務の適正な範囲」で行われてい
かけ離れた程度の低い仕事を命じるこ る場合には、パワハラに当たらない。
とや仕事を与えないこと
❻ 個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること
前記❹∼❻︶について何が﹃業
務の適正な範囲を超える﹄
かについては、
︵筆者注
❻であり、WG報告では、
﹁こうした行為
関して、見極めが難しいのが❹❺および
ここで、パワハラに該当するか否かの
判 断 要 素 で あ る﹁ 業 務 の 適 正 な 範 囲 ﹂に
ことではない︶。
の行為はパワハラには当たらないという
ると図表2のとおりである︵これら以外
かについて、WG 報告に基づいて整理す
❷ 精神的な攻撃
業 種 や 企 業 文 化 の 影 響 を 受 け、ま た、具
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会社法務A2Z 2015.11
パワハラの問題
︵1︶パワハラの定義
冒頭でも述べたようにパワハラの法的
定義は確立していないが、平成二四年一
また、広く相談に対応すること。
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認する
こと。
﹁ 職 場 の い じ め・ 嫌 が ら せ 問 題 に 関 す る
円卓会議ワーキング・グループ報告﹂︵以
月三〇日に厚生労働省から公表された
⑥ 事実確認ができた場合には、速やか
に被害者に対する配慮の措置を適正に
行うこと。
下﹁W G 報 告 ﹂と い う ︶に お い て 示 さ れ
から部下に対するものだけでなく、先輩
どのような行為がパワハラに当たるの
❸ 人間関係からの切り離し
業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定で
きないことから、
原則として「業務の適正な範囲」
を超え、パワハラに当たるものと考えられる。
脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言
ている職場のパワハラの概念は、以下の
とおりである。
なお、派遣労働者を受け入れている場
合、派遣先事業主についても当該派遣労
・ 後 輩 間 や 同 僚 間、さ ら に は 部 下 か ら 上
ていることが、パワハラに該当するか否
暴行、傷害
業務の遂行に関係するものであっても、
「業務
の適正な範囲」に含まれるとすることはできず、
パワハラに当たる。
❶ 身体的な攻撃
「業務の適正な範囲」を超えるかどうか
行為類型
⑦ 事実確認ができた場合には、行為者
に対する措置を適正に行うこと。
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること
︵事実が確認できなかった場合も同様︶
。
職場のパワーハラスメントとは、同
じ職場で働く者に対して、職務上の地
環境を悪化させる行為をいう。
精神的・身体的苦痛を与える又は職場
背 景 に、業 務 の 適 正 な 範 囲 を 超 え て、
位や人間関係などの職場内の優位性を
⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを
保護するために必要な措置を講じ、周
知すること。
⑩ 就業規則等の文書に、
相談したこと、
事実関係の確認に協力したこと等を理
由として不利益な取扱いを行ってはな
らない旨を定め、労働者に周知・啓発
﹁職務上の地位や人間関係などの職場内
働者を雇用する事業主とみなして均等法
司に対して行われるものも含まれる。ま
すること。
におけるセクハラに関する規定が適用さ
た、
﹁業務の適正な範囲を超えて﹂とされ
の 優 位 性 ﹂と さ れ て い る こ と か ら、上 司
れ る の で︵ 労 働 者 派 遣 法︵ 注 3︶ 条 の
2︶、派 遣 先 事 業 主 は 自 ら 雇 用 す る 労 働
かの判断要素になるものといえる。
おけるセクハラ防止のための雇用管理上
および指揮命令上必要な配慮を行わなけ
ればならない。
︵2︶パワハラの行為類型と内容
者と同様、派遣労働者についても職場に
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図表2 パワハラの行為類型と判断要素
る た め、各 企 業・ 職 場 で 認 識 を そ ろ え、
っても左右される部分もあると考えられ
状況や行為が継続的であるかどうかによ
体的な判断については、行為が行われた
﹁悲惨な事故や災害の体験、目撃をした﹂
決定件数︵
﹁業務上﹂と認定した件数︶は、
精神障害の原因となった出来事別の支給
件 の 増 と な り、過 去 最 多 と な っ て い る。
︵2︶最高裁第一小法廷平成二六年一〇月
二三日判決
条3項に基づく妊娠中の軽易な
法が禁じる不利益取扱いの該当性に課
題 が あ っ た 中、
﹁女性労働者につき労働
基準法
業務への転換を契機として降格させる事
︵七二件︶に次いで、﹁
︵ひどい︶嫌がらせ、
い じ め、又 は 暴 行 を 受 け た ﹂が 六 九 件 と
よ れ ば、総 合 労 働 相 談 の う ち、民 事 上 の
行状況﹂
︵平成二七年六月一二日発表︶に
﹁平成二六年度個別労働紛争解決制度施
をすることを一般的には指しており、こ
理由として、解雇その他不利益な取扱い
て い な い が、妊 娠・ 出 産、育 児 休 業 等 を
ラもパワハラと同様に法的定義は確立し
ここ数年の変化であり、相談内容の内訳
これを整理すると図表3のとおりである。
が最高裁によって示された。
項の禁止する取扱いに当たる﹂との判断
業主の措置は、原則として均等法9 条3
図表3 妊娠・出産、育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止
二番目に多い状況である。
その範囲を明確にする取組を行うことが
望ましい。
﹂とされている。
︵3︶増え続ける職場のパワハラ
マタハラの問題
︵1︶マタハラとは
個 別 労 働 紛 争 の 相 談 内 容 で は、
﹁いじめ
うした行為を法は禁じている︵均等法9
と し て 従 来 は﹁ 解 雇 ﹂が 最 多 で あ っ た と
こ の 不 利 益 取 扱 い の 禁 止 に つ い て は、
﹁法第9条第3項の﹃理由として﹄とは、妊
上記の事由があったこと、請求したこと、申し出をしたこと、措置を受けたこと、
取得したことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
パワハラは、職場におけるハラスメン
トとして近年特に問題視されており、そ
のことは厚生労働省が毎年発表している
・ 嫌 が ら せ ﹂が 六 万 二 一 九 一 件 と、三 年
条3項、
育児・介護休業法︵注4︶ 条︶
。
パワハラの問題と並んで注視されてい
る の が、マ タ ハ ラ の 問 題 で あ る。マ タ ハ
連続で最多となっている。注目すべきは
こ ろ、平 成 二 四 年 度 に﹁ い じ め・ 嫌 が ら
娠・出産等と、解雇その他不利益な取扱
の禁止等に関する規定に定める事項に関
せ ﹂と 逆 転 し、平 成 二 六 年 度 ま で 至 っ て
ま た、見 落 し て は な ら な い の は、精 神
障害の労災補償状況についてである。厚
し、
事業主が適切に対処するための指針。
いとの間に因果関係があることをいう。
﹂
生 労 働 省 の﹁ 平 成 二 六 年 度﹃ 過 労 死 等 の
注5︶と さ れ て い る も の の、実 際 に は そ
いる。
労災補償状況﹄
﹂
︵平成二七年六月二五日
の判断が難しいケースも少なくないとい
︵労働者に対する性別を理由とする差別
発 表 ︶に よ れ ば、精 神 障 害 に 関 す る 事 案
える状況にあった。
不利益な配置変更
不利益な自宅待機命令
昇進・昇格の人事考課での不利益な評価
仕事をさせない、専ら雑務をさせるなど
就業環境を害する行為
〈不利益取扱いの例〉
解雇、雇止め、契約更新回数の引下げ
退職または正社員を非正規社員とするよ
うな契約内容変更の強要
降格、減給
賞与等における不利益な算定
子を養育する労働者に関する事由
妊産婦に関する事由
﹁ 個 別 労 働 紛 争 解 決 制 度 施 行 状 況 ﹂か ら
65
育児時間
所定外労働の制限
時間外労働の制限
深夜業の制限
短時間労働
子の看護休暇
妊婦健診等
軽易業務への転換
つわり、切迫流産等での就労不能
時間外・休日労働をしない
深夜業をしない
も明らかである。
育児休業
産前産後休業
10
の請求件数が一四五六件で前年度比四七
会社法務A2Z 2015.11
17
復職
出産
妊娠
(注4)育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律。
特集
今、求められる
人事労務マネジメント
(注5)平成18年厚生労働省告示第614号。
(注6)平成27年1月23日 雇児発0123第1。
3項の禁止する取扱いに当たらないとも
観的に存在するとき﹂などは均等法9 条
ものと認めるに足りる合理的な理由が客
一方で、同判決では、
﹁当該労働者につ
き自由な意思に基づいて降格を承諾した
判断に関して、
﹁原則として、妊娠・出産
当該Q &Aでは、
﹁契機として﹂の具体的
益 取 扱 い に 関 す るQ & A ﹂を 公 表 し た。
娠・出産・育児休業等を契機とする不利
しい面もあったところ、
厚生労働省が
﹁妊
である。
が 発 出 さ れ、妊 娠・ 出 産、育 児 休 業 等 の
のか。速やかな事後対処も欠かせないこ
それでは、ハラスメントに対して企業
としてはどのような取組みを行えばよい
い問題意識を持って明確なメッセージを
ない。トップがハラスメントに対する強
ような考えはなくしていかなければなら
4
4
該不利益取扱いが行われたか否かをもっ
発生している期間と時間的に近接して当
し て ﹄に つ い て は、基 本 的 に 当 該 事 由 が
て い る。な お、改 正 通 達 で は、
﹁
﹃契機と
の点も最高裁判決を踏まえたものとなっ
あるものとして浸透しない可能性もある。
基本であるものの、それだけでは重みの
ことや、研修などを通じた教育の実施は
就業規則の整備やハラスメント防止規
程の策定等によってルールを明確化する
︵1︶トップのメッセージ
のではないので、外部の機関を活用する
相談窓口の設置場所は社内に限られるも
策 と し て 相 談 窓 口 の 設 置 は 必 須 で あ る。
セクハラ指針でも定められていること
だが、セクハラに限らずハラスメント対
︵2︶相談窓口の設置と実態把握
て判断すること。
﹂とされている。
そこで、
決定的に重要となってくるのが、
こ と も 考 え ら れ る。い ず れ に し て も、相
法に抵触する不利益取扱いか否かにつ
いては、改正通達においても引き続き抽
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会社法務A2Z 2015.11
象的な表現を含んでいるため、判断が難
示している。
利益取扱いがなされた場合は﹃契機とし
・育休等の事由の終了から一年以内に不
︵3︶解釈通達の改正
ている。
企業において法令遵守を掲げたものの、
﹁違法状態にあってもすぐに刑事罰が科
されるわけではないし、守らなくても大
丈夫なのでは﹂といった社内の声が上が
事由を契機として不利益取扱いが行われ
とではあるが、まずは予防策が極めて重
発信することで、
﹁ダメなものはダメ﹂と
企業の
ハラスメント予防策
て﹄いると判断する。
﹂ことなどが示され
この最高裁判決を受ける形で、
﹁
﹃改正
雇用の分野における男女の均等な機会及
び待遇の確保等に関する法律の施行につ
い て ﹄及 び﹃ 育 児 休 業・ 介 護 休 業 等 育 児
又は家族介護を行う労働者の福祉に関す
る法律の施行について﹄の一部改正につ
た 場 合 は、法 が 禁 じ る﹁ 妊 娠・ 出 産、育
要 で あ る。そ こ で、予 防 策 を 講 じ て い く
いう理屈抜きの感覚を各自が自然と持つ
るケースを耳にすることがあるが、その
児休業等を理由とした不利益取扱い﹂に
上で留意いただきたい点を以下に挙げる
ことができるような状態になることが望
いて﹂
︵ 注 6。以 下﹁ 改 正 通 達 ﹂と い う ︶
原則として当たるものと解されることが
こととする。
4
WG報告にもある
﹁トップのメッセージ﹂
まれる。
明 確 に さ れ た。ま た、一 定 の 場 合 に は 違
4
反に当たらないことも示されており、こ
4
特集
今、求められる
人事労務マネジメント
折をみて周知を繰り返すことが必要であ
談窓口が形骸化しないようにするために、
ハラスメントの起こる一因として、コ
ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 欠 如 が 挙 げ ら れ る。
︵4︶思いやりや感謝の気持ち
アンケートが定期的に行われるようにな
ト調査を実施するといったことも有効だ。
トの有無などについて無記名のアンケー
また、会社側がタイムリーに実態を把
握するということでいえば、ハラスメン
るときに一言添えておけば⋮﹂と思える
初 に 確 認 し て お け ば ⋮﹂
﹁仕事を依頼す
な と き も、冷 静 に 振 り 返 っ て み る と﹁ 最
行き違いが生じて衝突につながったよう
か り を 考 え て 仕 事 を 進 め て い く こ と で、
る。
れば、会社に報告してよいのだという意
ケースはあるだろう。仕事を依頼すると
お 互 い︵ あ る い は 一 方 ︶が 自 分 の こ と ば
識も徐々に広がることが期待され、一定
きに、相手に対する思いやりや感謝の気
自ずとふさわしいものとなり、トラブル
持ちを真に持っていれば、掛ける言葉も
の抑止力にもなり得る。
︵3︶行政ツールも活用した教育
うウェブサイトがあり、社内研修用資料
さ れ て い る﹁ あ か る い 職 場 応 援 団 ﹂と い
しては、厚生労働省委託事業として開設
用していただきたい。特にパワハラに関
て提供しているツールについてもぜひ活
だろうが、行政がホームページ等を通じ
とでは行動にも大きく差が出るものと思
うことを意識しているのとそうでないの
ない。そうした気持ちが大切であるとい
雰囲気や生産性にも悪影響を及ぼしかね
に感じるようになってしまうと、職場の
てもらうことをいつしか当たり前のよう
感謝の気持ちは誰しも忘れようと思っ
て忘れるものではないが、人に何かをし
とでその場では理解したつもりになって
も、時間の経過とともに意識が薄れてし
まうということはどうしても起こり得
る。この点、
﹁職場のパワーハラスメント
に 関 す る 実 態 調 査 報 告 書︵ 概 要 版 ︶
﹂
︵厚
生労働省、平成二四年︶においても、
﹁取
組実施期間が長いほど、効果を実感して
いる比率が高くなる傾向が見られ、研修
だけでなく、
﹃就業規則﹄や﹃トップの宣
言、会 社 の 方 針 ﹄な ど に つ い て 取 組 が 普
及浸透するまでには、一定程度の期間が
必 要 と な る こ と が う か が え る。
﹂と の 言
及がある。
企業として安全配慮義務を果たすとい
う観点からも、計画性を持って継続的に
予防策を施すことで各人の意識向上を図
っていくことが求められる。
社会保険労務士法人大野事務所グループリーダー。
特定社会保険労務士。慶應義塾大学法学部法律学科
卒業。人事労務に関する相談業務、IPO支援コンサ
ルティング、アウトソーシング業務に従事。著書に
『厚生労働省「業務取扱要領」を踏まえた離職票作成
ハンドブック』
(共著、日本法令)
、
『適正 労働時間
管理』
(共著、労務行政)
。
も起きにくくなる。
や動画資料も掲載されているなど内容が
われ、社内でそのような認識を共有する
ふかだ・としひこ
ハラスメントに関する研修を外部業者
に依頼することなども一定の効果はある
非 常 に 充 実 し て い る。ま た、セ ク ハ ラ や
ことは重要であると考える。
︵5︶対策の継続性
マタハラに関しても、厚生労働省のホー
ムページからわかりやすいリーフレット
等を入手することができる。
予防策は一回講じれば終了というもの
ではなく、トップのメッセージにしても
教育にしても、継続的に行われてこそ効
会社法務A2Z 2015.11
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このように、身近なところに情報源は
たくさんあり、こうした資料を手にとる
ことが対策への第一歩にもなる。
果が出るものである。研修等を受けるこ
予防策は「継続してこそ」効果が表れる。