市立体育館のトレーニング室利用を通じた老後生活の実態と 新しい暮らし

市立体育館のトレーニング室利用を通じた老後生活の実態と
新しい暮らしの可能性
201214006 上野 燎平
指導教員 黒木 宏一
1. 背景と目的
今日的な社会の高齢者の見方は、要介護者や認知症高
2-1. 高齢者の利用実態
1 日のトレーニング室利用者の数はすべての事例で平
齢者の増加などから、社会が支えていかなければならな
均すると約 150 人の利用者がおり、全体の利用者のうち
い弱者として受け取られがちである。こうした現状に対
高齢者の割合は、5 割を占めている。中には、7 割以上
し、アクティブシニアと呼ばれる、自立した社会生活を
が高齢者の事例 ( 表 1- ⑤⑧⑨ ) もある。どの事例でも
営む元気な高齢者が増えてきている。中には、体育館で
午前中の利用が多く、男女比をみると男性が多い。また、
日々トレーニングを行う高齢者も見受けられる。こうし
トレーニング室の利用目的にも男女の違いが見られ、女
た高齢者は、自分の能力の限界を見定めて老後を過ごす
性では運動教室への参加や、健康維持のためといった手
だけでなく、更に新しい目標に向かって自らの能力や可
軽な利用に対し、男性では、登山やマラソンを行う基礎
能性を高めている態度が見受けられる。こうした高齢者
体力作りといった利用がみられる。
をアグレッシブシニアと定義する。
アグレッシブシニアのように、自らを高める高齢者が
2-2. 積極的な利用高齢者の特性
すべての事例に共通して、毎日通ったり、10 年以上
増加することによって、高齢者に対するイメージが変わ
前から利用する高齢者が存在する。最近は定年後や健康
り、より自律を促す社会へと変化する可能性がある。
診断の結果改善のための利用が増えてきている。また、
そこで、本研究では、新潟県内の市立体育館でトレー
利用高齢者の多くは、健康維持目的 ( 表 1- ⑥⑦⑨ ) で
ニング室を利用する高齢者を対象に、利用を通じた老後
あるが、中には、登山、マラソン、スキー ( 表 1- ①④⑤ )
の暮らしの実態を捉え、老後生活を積極的に送るための
といった、ある目的を達成するためトレーニングする積
諸要素を明らかにする。また老後の新しい暮らし方の選
極的な利用がみられる。
択肢を提言することを目的とする。
3. 今後の予定
今回の調査で、目標に向かってトレーニングを行う高
2. 調査概要
県内のトレーニング室を有する市立体育館 9 ヶ所それ
齢者の存在が確認された。今後は、アグレッシブな高齢
ぞれの職員に対して、高齢者の利用実態、積極的な利用
者を中心に、トレーニングをはじめたきっかけや、運動
高齢者の特性、利用高齢者に対する取り組みなどについ
暦、生活のスケジュール、健康や暮らしに対するアンケー
てヒアリング調査を行った ( 調査期間 7 月 31 日~ 9 月
ト・ヒアリング調査を行い、アグレッシブシニアの活動
16 日 )。
的な暮らしを形づくる諸要素を明らかにしていく。
表 1 施設概要と高齢者の利用実態
④上越市柿崎総合体育館 ⑤十日町市総合体育館 ⑥小千谷市総合体育館 ⑦鳥屋野総合体育館
①柏崎市総合体育館
②長岡市民体育館
③刈羽村ラピカ
営業時間
9 時~ 22 時 / 日・祝~ 17 時
9 時~ 21 時半
9 時~ 21 時半
9 時~ 21 時
9 時~ 21 時半
9 時~ 21 時半
利用料金
300 円
400 円
200 円
200 円
400 円
200 円
トレーニング室利用者数 / 日
180 人
100 ~ 120 人
20 ~ 40 人
20 ~ 30 人
160 ~ 200 人
男女比率
男 7:女 3
男性が多い
男 7:女 3
男 5:女 5
男性が多い
利用高齢者数 / 日
48 人
30 人
10 ~ 20 人
5~6人
128 ~ 160 人
利用高齢者の男女比率
男 8:女 2
男 7:女 3
男 7:女 3
男 5:女 5
男 5:女 5
9 時~ 12 時頃
9 時~ 11 時頃
最も多いのは午後 3 時過ぎ
9 時~ 11 時半頃
9 時~ 10 時過ぎ
利用の多い時間帯
高齢者の利用は昔から
高齢者の利用実態
多かった。
最近、新規登録者も増
えている。
開設当初。
常連の利用高齢者
ほとんどの方が毎日利
用。
52 人
100 ~人
180 人
男性は女性の 2 倍
少し男性が多い
男 8:女 2
男 7:女 3
9 時~ 11 時頃
9 時~ 12 時頃
9 時~ 12 時頃
午前中~夕方
高齢者の利用は昔から
高齢者の利用は昔から
高齢者の利用は昔から
高齢者の利用は昔から
高齢者の利用状況は、
多かった。
多い。
多いが、近年、徐々に
昔からほとんど変わっ
ていない。
最近も変わらずに利用
時期により、利用者の
増加傾向にある。
ていない。
者がいる。
利用頻度は変化する。
毎週夫婦で利用する。
多い方は週 2 ~ 3 回利
足が悪く、いつもウォ
用。
積極的に話をしたり、
ーキング。
んどが毎日利用。
夫婦でマラソンをする
方。
多い。近年増加傾向。
定年を期に利用し始め
る方が増加している。
毎日利用する方が多い。 10 年以上通う利用高齢
スキーをしたり登山を
健康に対する意識が高
健康維持の目的で利用
で活動的であり、姿勢
い高齢者が多い。
する方が多い。
も良い。
する方が多い。
多くの教室を行ってい
今年度から、シニア割
今年度から、シニア割
利用高齢者の多い午前
とんど。
を実施。
を実施。
中に教室。
太極拳の教室に多くの
利用高齢者の多い午前
トレーニング室の体験
男性の高齢者が参加。
中に教室。
教室も実施。
するための体力作り。
利用高齢者の多い午前
利用高齢者に対する取
体力測定や教室。
力測定などを実施。
中に教室を実施。
り組みは特に行ってい
トレーニングメニュー
の方が多く参加。
高齢者の利用は昔から
利用する高齢者のほと
定期的に健康診断や体
のため、自然と高齢者
増加傾向にある。
60 ~ 100 人
利用する高齢者のほと
んどが毎日利用。
ン大会や教室などの開
文化や地域のイベント。 ないが、教室が午前中
多いが、近年、徐々に
男 7:女 3
利用する高齢者のほと
地域で行われるマラソ
教室は女性が多い。
270 人
男性が多い
多かった。
利用する高齢者のほと
100 ~ 150 人
200 人
高齢者の利用は昔から
用している。
9 時~ 21 時半
男性が多い
男 7:女 3
昔からほとんど変わっ
最高で 87 歳の方も利
⑨サンビレッジしばた
一般 250 円 /65 歳以上 100 円 一般 250 円 /65 歳以上 100 円 市内 300 円 / 市外 450 円
高齢者の利用状況は、
トレーニングする方。
利用高齢者への取り組み 催。
130 人
⑧亀田総合体育館
9 時~ 21 時 / 日・祝~ 17 時9 時~ 21 時半 / 日・祝~ 18 時
の作成や指導。
んどが毎日利用。
るが女性の参加者がほ
現在、男性向けの教室
を計画中。
んどが毎日利用。
利用者の方々は、元気
者が多い。
健康維持の目的で利用