カナダ/ブリティッシュコロンビア大学(UBC) 留学記 カナダのバンクーバーにある、ブリティッシュコロンビア大学(以下 UBC)に留学をさ せていただいている Sara です。以下、大きく、4 点に分けて報告させていただきたいと思 います。 1. 授業について 私は、マーケティングに強い関心を持っており、UBC でもマーケティングに関連する授 業をいくつか履修しました。First semester に履修した、Marketing Research という授 業は、市場にどんなニーズがあるのか、どのように見極めるかといった手法を一通り教科 書で学んだ後、実際にグループワークで実践的な内容を学びました。私のグループは、カ ナダに実在する信用組合を UBC キャンパスに新たに開くという設定のもとでリサーチを 行いました。実際に信用組合の方と連携を取りながら、ニーズの有無、開く場所、運営方 法などを考えました。調査をする上で、アンケートの作成やフォーカスグループも行い、 一体どのような質問をすれば、顧客のニーズが読み取れるのかを自分たちで考えました。 教授は方向性を示唆してくださいますが、手伝うことはせず、完璧に各グループに任せた プロジェクトでした。また、SPSS という統計解析ソフトを使用して、調査結果を分析し、 それを元に、立てた仮説が正しいか否かを結論付けることが求められました。調査を進め る上で、信用組合の方には一定の資金も提供していただき、授業のグループワークとはい え、責任感を持って取り組む体制が整えられていたと感じています。 Second semester で特におもしろかったのは、International Marketing という授業で す。 この授業では教科書で理論を学ぶのではなく、より実践的な内容で、実際に今まで行われ た Marketing の事例を読み、議論する Case study が主でした。授業では発言することが 求められますが、もはやそれは現地の生徒にとって評価の基準というよりは当たり前の姿 であり、私は非常に刺激を受けました。UBC の Marketing の授業ではほぼ全てグループ ワークが組み込まれており、私のグループは Costa Rica に新たなサービスを提供するとい う設定で Marketing 戦略を考えました。教授はとても気さくな女性の方で、MBA で学ば れた知識を私たちに伝授してくださいました。教授対生徒というより、教授も加わる議論 形式が取られ、さまざまな意見が飛び交い、非常に充実した内容だったと思います。 勉強 を進める上で役立ったのが、図書館の利用です。UBC にはバンクーバーキャンパス だけでも、軽く 10 を越える図書館があり、しかも試験時には 24 時間開いています。平 常のときも、夜中の 1 時までは常に開いており、多くの学生が図書館を利用して勉強して いました。各図書館のコンセプトも多様で、私はどのように勉強したいか、何を調べたい かによっていくつか使い分けていました。 2. 留学前と後で変化したこと カナダに来て特筆すべきことは、主に 3 つあります。まずアジア人の多さです。私は滞 在している間、留学生ではあるものの、マイノリティである感覚は全く受けませんでした。 多民族国家のカナダという通り、中国、韓国を始めとし、友達に出身を聞くとそれこそ様々 な国名を聞くことができます。よって、カナダにおける言語に対する感覚は、日本と全く 異なるものがあると思います。日本では基本的に日本語のみが使われますが、カナダでは 英語、中国語、韓国語、スペイン語といった言語が日々至る所で飛び交います。また個人 が話す言語の種類も、2、3 種類は当たり前です。日本では英語が話せるとすごいという感 覚がまだ残っていると思いますが、こちらでは母国語と英語、かつそれ以上に使いこなせ る言語を持つ学生が多くいます。 次にあげるのは、逆説的ではありますが、言語以上に自分の内容を高める必要性、背景 知識、また考えることの大切さです。私がこちらで出会った人々は、なぜそのような意見 を持つのか、こういった事例から私はこう考えるから賛成だ、反対だなどという議論に非 常に長けていました。私は議論をするたびに、自分の意見の根拠の曖昧さに気づかされ、 自分の回転の遅さに嫌気がさしました。このような経験を通して感じたことは、たとえい くら言語が話せたとしても、内容がないと、人々は聞いてくれないということです。逆に、 内容があれば多少言語は不自由でも人々は興味を持ってくれます。今考えると当たり前の ことなのですが、実際にカナダでの生活を経験して痛感することができました。 最後に、日本の存在を国際的な視野で考えることについてです。私は、かねがね日本だ けでは狭い、国際的な視野を持たなくてはと思っていました。しかし、私が考える国際的 な視野とは、まだ日本と海外を区別して考えているものだと気づきました。日本はあくま でも日本の中だけで考え、日本と海外諸国のつながりの観点が欠けていました。例えば、 Marketing の授業では数え切れないほど「Japan」という言葉が出されました。なぜなら、 日本は世界が認めるレベルの技術と特殊性を持っているからです。このような特徴は、日 本で習ってはいたものの、その影響力を国際的視野で考えてはいませんでした。こうした 過程のなかで、私は今、日本という国に対して、大きな誇りを持っています。 また、全く想定外の出来事ですが、3 月に日本を襲った東北大地震は、日本を外から見 つめる重要性、そして日本と世界のつながりを考える貴重な機会であったと思います。私 が一番身近に関わった例としては、寮で free food や flea market などのイベントを企画 し、そこで集まったお金を日本赤十字社に寄付しました。毎日ニュースを見るたびに不安 でいっぱいでしたが、自分にできることをしたいと思い、たとえいる国は違ってもできる 援助をと考えた末の行動でした。企画には寮のアドバイザーが協力してくれたり、募金を してくださった人々がメッセージを書いてくれたり、私たちに声援をかけてくださったり、 人々の温かさが身に染みる経験となりました。同時に、世界各国が日本国民の災害に対す る秩序だった行動に驚き、賞賛したように、日本が世界に影響を与えた部分も多々ありま す。 私は日本人でありながら異なる国カナダにいたために、双方の視点からこの災害に関わ ることとなり、それは私の国際的な視野を一歩深めるものとなりました。 3. カナダという国について 全体的にのんびりとした国で、文化の受け入れる範囲が広いです。それぞれ思い思いの ことをしていて、日本だったら浮いてしまうようなこともカナダでは受け入れてもらえる と思います。 私が特におもしろいと思ったことは、カナダはアメリカと同一視されるのを非常に嫌う ことです。カナダとアメリカの違いを勉強していたときに、カナダとはどんな国かを一言 で定義するとしたらどうなるかを議論していました。そこで出たのは、 「アメリカではない」 ということです。カナダ人は、アメリカ人の多少冷酷な部分を持たない、そういう人種で ある、それを国全体で推進しているような気がします。親切さがカナダのアイデンティテ ィを形成することにつながると考えているようです。つまり、カナダは常にアメリカを意 識して、差別化を図っている国だと思います。 また、カナダ国内のグローバルさは、他に例をみないと思います。世界中でグローバル 化が推進される昨今、カナダはこの点において最前線をいっている国かもしれません。 4. 人々との関わり 上記の通り、カナダの人々はとても親切です。バスを降りるときには、みんなドライバ ーに”Thank you!”と言いますし、道や教室の場所を尋ねれば懇切丁寧に教えてくれまし た。 私は寮で 5 人のルームメイトと一緒に暮らしていたのですが、様々な問題もありまし た。例えば、掃除についてです。日本人は総じてきれい好きで、対して彼らは汚さの許容 範囲が広いため、当番を決めてもほとんど守りませんでした。また、食べ物の問題もあり ました。最初にお互いの範囲を決めてはいたのですが、いつの間にか冷蔵庫からたびたび なくなっていました。何度か指摘しても勝手に取られることが続いたので、私たちはその ルームメイトを信じることはできなくなってしまいました。なので、最初にしっかりとル ールを決めること、また問題があるようなら、ルームメイト同士で再度ミーティングを開 くなどしたほうがいいと思います。 クラブ活動については、社交ダンスやアウトドアク ラブ、テニスクラブに所属していました。UBC は非常に大きな大学なので、クラブ数も把 握できないほどあり、かつ多様な趣味に応えてくれます。私は特に社交ダンスでできた友 達ととても仲良くなり、週末にパーティを開いたり、練習後に一緒にご飯を食べに行った り、遊びにでかけたりしました。 留学期間は本当にあっという間です。新しい環境に慣れるまでには辛い時期もありまし たが、それをどう克服していくかも大切な勉強です。留学に来たのと引き換えに失うもの もあります。しかし、私は得たもののほうが確実に勝っていると感じています。多くのこ とを吸収できるこの時期に留学できたことは、私のこれからの人生において、長期的な視 点で選択肢を広げてくれるものであったと確信しています。 そして、日本に帰ってからこの経験をさらなる未来へ活かしていくと同時に、留学を 1 人 でも多くの学生に体験してもらいたいと思います。現在留学を迷われている方、あまり興 味がない方も、だまされたと思って一度飛び出てみてください。そしてその地で奮闘し、 大いに楽しんでください。どんなことを吸収できるのか、わくわくしてきませんか?
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