東芝半導体アプリケーションノート 標準ロジックの使用上の注意点

管理番号 : SOU1AP2011003
東芝半導体アプリケーションノート
標準ロジックの使用上の注意点
2011/12/25
株式会社東芝 セミコンダクター&ストレージ社
ディスクリート半導体事業部
Copyright 2010, Toshiba Corporation.
内容
管理番号 : SOU1AP2011003
1.標準ロジックとは
2.標準CMOSロジックの基本動作
3.標準CMOSロジックの機能
4.標準CMOSロジックの各特性
5.標準CMOSロジックの使い分け
6.回路設計上の注意
2
標準ロジックが使われている機器は
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックは色々な機器で使われています。
3
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックとは
デジタル基本ロジック(NAND,OR, インバータ,フリップフロップ等)を
標準化された機能/ピン配置により配列したIC製品群です。
ピン接続図
1A
1
14
VCC
1B
2
13
4B
1Y
3
12
4A
2A
4
11
4Y
2B
5
10
3B
2Y
6
9
3A
GND
7
8
3Y
(製品名称例)TC74VHC00FT
この数字により機能が判別できる。
数字が同じであれば、同一機能/同一ピン配置
(top view)
TC74HC00AP
(ピンピッチ:2.54mm)
(DIP)
TC74VHC00F
(ピンピッチ:1.27mm)
(SOP)
TC74VHC00FT
(ピンピッチ:0.65mm)
(TSSOP)
TC74VHC00FK
(ピンピッチ:0.65mm)
(US)
4
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックの分類
製品構造(プロセス)により主に下記に分類され、それぞれ特性
が異なります。
TTLロジック
ECLロジック
標準ロジックIC
BiCMOSロジック
CMOSロジック
現在、標準ロジックの市場は『CMOS』が主流です。
5
内容
管理番号 : SOU1AP2011003
1.標準ロジックとは
2.標準CMOSロジックの基本動作
3.標準CMOSロジックの機能
4.標準CMOSロジックの各特性
5.標準CMOSロジックの使い分け
6.回路設計上の注意
6
項目
管理番号 : SOU1AP2011003
¾ CMOSとは?
¾ CMOSの基本動作は?
¾ CMOSの基本動作構造は?
¾ CMOSの基本回路構成は?
¾ ちょっと一息①逆さしに注意!
7
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CMOSとは?
基本回路
CMOS(シーモス)とは、論理回路を構成するための回路構成の1つ。
(CMOS: Complementary Metal Oxide Semiconductor)
CMOS構造を用いた論理ICを CMOSロジックIC と呼ぶ。
CMOSロジックの基本回路:インバータ(NOT)回路
ソース
P-ch
MOS-FET
VCC
ゲート
ドレイン
入力
+
出力
ドレイン
ゲート
ソース
GND
N-ch
MOS-FET
論理回路図
8
管理番号 : SOU1AP2011003
CMOSの基本動作は?
基本動作
CMOSインバータのFETは図のように、ON/OFFできるスイッチとして
表すことができる。
VCC
VCC
P-ch
MOS-FET
P-ch
MOS-FET
ON
入力
OFF
入力
出力
L
N-ch
MOS-FET
H
OFF
GND
出力
H
入力
L
H
入力にLレベルが加わった場合
N-ch FETがOFFし、P-ch FETがON状態になる。
出力はP-ch FETのON時の抵抗を介し、
VCCと接続される。
出力は、Hレベル(VCCレベル)。
出力
H
L
ON
L
N-ch
MOS-FET
GND
入力にHレベルが加わった場合
P-ch FETがOFFし、N-ch FETがON状態になる。
出力はN-ch FETのON時の抵抗を介し、
GNDと接続される。
出力は、Lレベル(GNDレベル)。
CMOSの特徴:P-ch、N-chFET 何れかがOFF状態であり、スタンバイ消費電力が極めて少ない。
9
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CMOSの基本動作構造は?
Nch MOS FETとPch MOS FET
>Nch MOSとPch MOSの違いは、ゲートとソース間にかける電圧の向きが異なっている点です。
>Vth(N)とVth(P)よりも大きな電圧をゲートにかけるとMOSはON、Vth(N)とVth(P)よりも
小さな電圧をゲートにかけるとMOSはOFFします。
Pch MOS FET
Nch MOS FET
ドレイン
ソース
Vth(P)
ゲート
ゲート
Vth(N)
ドレイン
ソース
Vth(P)≒-0.8V
Vth(N)≒+0.8V
ソースに対して、ゲートに正の電位を印加するとONする。
ソースに対して、ゲートに負の電位を印加するとONする。
Vth(P)≒VCC-0.8V
Vth(N)≒0.8V
ゲート
ゲート
GND
(VSS)
P
N
N
ソース
ドレイン
P
P
P
ソース
ドレイン
N
VCC
(VDD)
N
10
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CMOSの基本動作構造は?
・断面構造図
>N型基板(N-Substrate)上にP型の広い拡散領域(P-Well)を設ける 。
>P-well上にN-chのFETを形成
>N- Substrate上にP-chのFETを形成
>プロセスによってはP型基板上にN-wellを設けるタイプもある。
>ゲートの幅(ゲート長)よりFETの性能/集積度が決定するため、ゲート長にて
使用プロセスを表現する。
ex、ゲート長が1.0μmの場合1.0μmCMOSプロセスと呼ぶ
(この場合、③−④、⑤−⑥間の距離)
①:N-Substrate 通常ウエハー基板となる。
②:P-Well Nchトランジスタ領域形成用
③:Nchトランジスタソース用拡散
④:Nchトランジスタドレイン用拡散
OUT
⑤:Pchトランジスタドレイン用拡散
GND(VSS)
⑥:Pchトランジスタソース用拡散
⑦:P-Wellバイアス用拡散
P
N
N
P
⑧:N-Substrateバイアス用拡散
7
P-ch
N-ch
G
+
3
S
D
+
+
4
P-Well
VCC(VDD)
G
D
S
+
IN
5
P
+
6
N+
8
2
1
N-Substrate
11
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CMOSの基本動作構造は?
VCC(VDD)
Nch MOS FETの特性
RL
ICC
(IDD)
Nch トランジスタ
ON
OFF
ICC(mA)
Vout
ドレイン
Vin
ゲート
Vth(N)
ソース
ソースに対し、ゲートに正の電位を印加する。
Pch MOS FETの特性
Vth(N)
VCC
Pch トランジスタ
ON
ソース
Vth(P)
VCC
Vin(V)
OFF
ICC(mA)
Vin
ゲート
ドレイン
RL
Vout
ICC
ソースに対し、ゲートに負の電位を印加する。
Vth(P)
VCC
Vin(V)
12
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CMOSの基本動作構造は?
CMOS(Nch MOS+Pch MOS)の特性
Nch MOS
OFF
Pch MOS
ON
VCC(VDD)
Nch MOS & Pch MOS
ON
Pch MOS
OFF
Nch MOS
ON
ICC
(IDD)
P-ch
MOS-FET
VIN
VOUT
N-ch
MOS-FET
ICC
(mA)
ICCピーク
Vth(N)
VthC
Vth(P)
VCC
(しきい値)
VIN(V)
GND(VSS)
VINがVCCもしくはGNDレベルであれば、Pch MOS FET
もしくはNch MOS FETの何れかがOFFとなり、スタンバイ
消費電力は極めて小さい。
13
管理番号 : SOU1AP2011003
CMOSの基本回路構成は?
構成
P-ch FETとNch-FETを組み合わせることにより、さまざまな論理回路を構成することができる。
2入力NANDゲート回路
2入力NORゲート回路
VCC
VCC
入力A
出力
入力B
入力A
出力
入力B
入力
A
B
L
L
L
H
H
L
H
H
出力
H
H
H
L
GND
入力
A
B
L
L
L
H
H
L
H
H
出力
H
L
L
L
GND
14
管理番号 : SOU1AP2011003
CMOSの基本回路構成は?
構成
P-ch FETとNch-FETを組み合わせることにより、さまざまな論理回路を構成することができる。
φ
φ
クロックドインバータ回路
φ
トランスミッションゲート回路
φ
VCC
入力φ
入力φ
入力A
入力A
入力
出力
φ
A
H
H
L
H
L
H
L
X
Z
X:Don't Care
Z:High Impedance
出力
GND
出力
入力
出力
φ
A
H
H
H
H
L
L
L
X
Z
X:Don't Care
Z:High Impedance
15
管理番号 : SOU1AP2011003
CMOSの基本回路構成は?
回路使用例(ラッチ)
クロックドインバータ回路を使ったラッチ
D
Q
トランスミッションゲート回路を使ったラッチ
Q
D
φ
φ
φ
φ
16
管理番号 : SOU1AP2011003
CMOSの基本回路構成は?
回路使用例(フリップフロップ)
クロックドインバータ回路を使ったフリップフロップ
Q
D
φ
φ
φ
φ
トランスミッションゲート回路を使ったフリップフロップ
D
Q
φ
φ
φ
φ
17
管理番号 : SOU1AP2011003
ちょっと一息
‡①逆さしに注意!
3Y
(top view)
8
3A
9
3B
10
4Y
11
4A
12
4B
5
6
2B
2Y
7
4
2A
GND
3
1Y
VCC
2
14
4B
1B
1
13
4A
VCC
1A
2
12
4Y
14
1B
3
11
1
1Y
4
1A
2A
3B
3A
10
9
5
6
2B
2Y
GND
3Y
○
8
GND
7
出力
(top view)
入力
Vcc
GND
Vcc
Vcc
13
TC74VHCの入力保護等価回路、出力寄生回路
×
GND
標準CMOSロジックのVcc(電源)とGNDはコーナーピンに配置されています。
14ピンの場合(7pinGND,14pinVcc) 16ピンの場合(8pinGND,16pinVcc)
20ピンの場合(10pinGND,20pinVcc)です。
逆さし(回転して)すると大電流が流れ、確実に破壊します。
電源/GND間の寄生ダイオードに大電流が流れ、内部のボンデングワイヤ
が焼損したり、モールド樹脂が溶解、破裂したりします。
18
内容
管理番号 : SOU1AP2011003
1.標準ロジックとは
2.標準CMOSロジックの基本動作
3.標準CMOSロジックの機能
4.標準CMOSロジックの各特性
5.標準CMOSロジックの使い分け
6.回路設計上の注意
19
項目
管理番号 : SOU1AP2011003
¾ 基本論理回路
¾ 標準ロジックの機能
¾ 標準ロジックはどこで使われるか?
¾ L-MOSとは?
¾ ちょっと一息②静電気に注意!
20
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックの基本機能
組合せ論理回路
現在の入力が定まれば出力が決まる回路です。
標準ロジック
ゲート、デコーダ、マルチプレクサ、アナログスイ
ッチなど
順序論理回路
以前の入力状態を記録して、制御信号など入力
で出力が決まる回路です。
フリップフロップ、ラッチ、カウンタ、シフトレジスタ
など
21
管理番号 : SOU1AP2011003
基本論理回路
論理回路
回路機能
論理式または真理値表
インバータ
A
X
A
X
X=A
バッファ
A
X
A
X
X=A
NAND
NOR
AND
OR
Exclusive OR
Exclusive NOR
A
X
B
A
X
B
A
X
B
A
X
B
A
A
B
A
B
A
B
A
B
B
X=A・B=A+B
X
X=A+B=A・B
X
X=A・B=A+B
X
X=A+B=A・B
X
X=A・B + A・B
X=(A+B)・(A+B)
X
X=(A・B)+(A・B)
B
A
X
22
管理番号 : SOU1AP2011003
基本論理回路
論理回路
回路機能
クロックド
インバータ
論理式または真理値表
φ
φ
φ
φ
φ
H
H
L
A
H
L
X
X
L
H
Z
X: Don’t care
Z:High Impedance
φ
φ
φ
φ
トランスミッショ
ンゲート
φ
H
H
L
A
H
L
X
X
H
L
Z
X: Don’t care
Z:High Impedance
入力
Dタイプ
フリップフロップ
出力
S
R
R
S
D
CK
Q
Q
H
L
LH
X
X
L
H
L
Preset
CLEAR
Q
H
L
L
H
X
X
H
L
L
PRESET
Clear
CK Q
RR
L
L
X
X
H
H
LH
H
L
L
L
H
LH
LH
H
H
L
LH
L
H
X
Qn
Qn
D
S
S
機能
―
―
―
No Change
X: Don’t care
23
標準ロジックの機能(インバータ、バッファ)
管理番号 : SOU1AP2011003
インバータ
出力が反転します。
バッファ
バッファは論理演算を行いません。
駆動能力を上げて接続できる信号線を増やしたり、高速化の
手助けを行います。
24
標準ロジックの機能(デコーダ)
デコーダ
管理番号 : SOU1AP2011003
デコーダは2進数から8進数への変換などを行います。
チップセレクト信号として使い方が代表的です。
(3to8、2to8、3to10)
25
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックの機能(マルチプレクサ、アナログスイッチ)
マルチプレクサ
アナログスイッチ
マルチプレクサは複数の信号から、必要な信号を選択しま
す。(2to1、4to1、8to1など)
デマルチプレクサは1本の信号を任意の出力に振り分けるも
のです。
アナログスイッチはアナログ信号を劣化させることなく、
ON/OFFスイッチとして使用できます。
デジタル信号のON/OFFスイッチとしても使用可能です。
Z
Z
Z: High Impedance
(スイッチオフ状態)
26
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックの機能(マルチプレクサ、アナログスイッチ)
マルチプレクサの種類
2to1(74xxx157)
A
Y
B
G
4to1(74xxx153)
8to1(74xxx151)
C1
D1
C2
D2
C3
Y
・・・
C4
D8
A
A
B
C
B
アナログマルチプレクサ/デマルチプレクサ
1to1(xxx4066)
2to1/1to2(xxx4053)
4to1/1to4(xxx4052)
Y
・・・
8to1/1to8(xxx4051)
・・・
A
G
A
B
A
B
C
アナログマルチプレクサ/デマルチプレクサはアナログ信号、デジタル信号共に使用できます。
27
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックの機能(ラッチ)
D
Q
φ
LEがHighでON
LEがLowでOFF
LE
ラッチはLE=“H”でD入力のレベルを出力します。
LE=“L”でD入力のレベルを記録します。
φ
LEがLowでON
LEがHighでOFF
φ
φ
波形
LE
D
Q
28
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックの機能(フリッププロップ)
φ
CK
φ
Q
Q
D
φ
φ
CKがLowでON
CKがhighでOFF
CKがHighでON
CKがLowでOFF
φ
CKがHighでON
CKがLowでOFF
φ
CKがLowでON
CKがhighでOFF
フリップフロップはCKの立ち上がりエッジでD入力のレベルを記録します。
波形
CK
D
Q
Low or HIgh
Q
High or Low
29
標準ロジックの機能(カウンタ)
カウンタ
管理番号 : SOU1AP2011003
カウンタはクロックの立上り、立下りエッジでカウントアップ/
ダウンを行います。
4bitカウンタで16、8ビットカウンタで256、14ビットカウンタで
16384カウントとなります。
30
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックの機能(カウンタ)
TC74VHC161(4bitカウンタ)
CK同期式:パラレルキャリー方式
カウンタの種類
CLR
ENP
非同期式:一段tpdとすると、n段目のtpdは
n*tpdとなり、大きく遅延する。
出力にGATEを追加すると遅延によりハザード
に注意
ENT
LOAD
A
1
7
E
10
E
9
L
L
15 Carry
Out
3
(注 2)
L
L
TC74VHC393(4bitカウンタ)
CK非同期式:リップルキャリー方式
D
CLR
CK Q
CK Q
CK Q
R
R
R
R
E
3/11
QA
4/10
QB
D R
Q
CK
Q
5/9
QB
Q
CK
Q
12
QC
(注 2)
L
L
E
QD
D R
Q
CK
Q
E
CK
13
6
6/8
QC
D R
E
2/12
D
QA
(注 2)
L
CK Q
14
5
D
L
1/13
E
E
C
CK
Q
(注 2)
L
D
CK
4
L
D
Q
E
E
B
D R
2
11
QD
31
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックの機能(シフトレジスタ)
シフトレジスタ
SI
QA
シフトレジスタはクロックの立上り、立下りエッジでデータが
1bitシフトします。シリアルIN-パラレルOUTやパラレルIN-シリ
アルOUTの変換を行います。
QB
QC
QD
入力
CK
SI
QA
QB
QC
・・・
QH
QF
L
L
QAn
QBn
・・・
QGn
QG
H
H
QAn
QBn
・・・
QGn
QE
QH
CK
出力
CK
SI
QA
QB
QC
QD
QE
QF
QG
QH
32
管理番号 : SOU1AP2011003
標準ロジックの機能(シフトレジスタ)
シフトレジスタの種類
TC74VHC164(8bit SI-POシフトレジスタ)
CLR
Serial
Inputs
9
A
1
B
2
CK
R
R
R
R
R
R
R
R
D
Q
D
Q
D
Q
D
Q
D
Q
D
Q
D
Q
D
Q
CK
Q
CK
Q
CK
Q
CK
Q
CK
Q
CK
Q
CK
Q
CK
Q
8
3
4
QA
5
QB
6
QC
10
QD
11
QE
12
13
QG
QF
QH
TC74VHC165(8bit PI-SOシフトレジスタ)
A
B
C
E
3
F
4
G
5
H
11
12
13
14
6
PD
D Q
PD
D Q
PD
D Q
PD
D Q
PD
D Q
PD
D Q
PD
D Q
PD
D Q
9
CK
S/L
CK
S/L
CK
S/L
CK
S/L
CK
S/L
CK
S/L
CK
S/L
CK
S/L
7
SERIAL
INPUT
10
CLOCK
2
QH
QH
15
CLOCK
INHIBIT
1
SHIFT/
LOAD
Serial In-Parallel Outと Parallel In- Serial Outがある。
33
標準ロジックはどこで使われるか?
管理番号 : SOU1AP2011003
CPU、メモリ、ASIC等のLSIを繋ぐ(インタフェース)役割で標準ロジックを
使用するケースが多い
34
管理番号 : SOU1AP2011003
L-MOSとは?
L-MOS(東芝呼称)
5∼8ピン
L-MOS(1ゲートロジック)は通常4
∼6回路で構成されるCMOSロジッ
クの1部を小型パッケージに搭載し
た製品です。
35
ちょっと一息
管理番号 : SOU1AP2011003
‡②静電気に注意!
これは、作業時の注意を入れた理想的な作業環境です。
参考:東芝半導体信頼性ハンドブックの[5]取り扱い注意とお願い
http://www.semicon.toshiba.co.jp/product/reliability/index.html
36
内容
管理番号 : SOU1AP2011003
1.標準ロジックとは
2.標準CMOSロジックの基本動作
3.標準CMOSロジックの機能
4.標準CMOSロジックの各特性
5.標準CMOSロジックの使い分け
6.回路設計上の注意
37
項目
管理番号 : SOU1AP2011003
¾ 入力電流IINとは?
¾ 入力電圧VIH、VILとは?
¾ 出力電流IOH、IOLとは?
¾ 静的消費電流ICCとは?
¾ 動作消費電流ICCとは?
¾ 伝搬遅延時間tpLH、tpHLとは?
¾ 入力、出力トレラントとは
¾ 5V→3.3V、3.3V→5Vレベル変換には
¾ 2.5V→1.8V、1.8V→2.5Vレベル変換には
¾ 双方向のレベル変換には
¾ ちょっと一息③電源投入の順番は?
38
管理番号 : SOU1AP2011003
入力電流IINとは?
測定回路
TC74VHC04 入力電圧VIN-入力電流IIN
Vcc=5.5V
入力電流IINはnA程度のリーク電流です。
IIN
A
IIN (A )
VIN
1E-3
1E-4
1E-5
1E-6
1E-7
1E-8
1E-9
1E-10
1E-11
1E-12
1E-13
1E-14
GND
Ta=25℃
VHC04
SPEC.
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
測
項
力
目
電
記
流
3.0
定
号
IIN
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
VIN (V)
TC74VHC04 DC特性
入
各電流の流れる符号は
ICへ入る方向が”+”
ICから出る方向が”-“
です。
VIN = 5.5 V or GND
条
Ta = 25°C
件
Ta = −40~85°C
単位
VCC
(V)
最小
標準
最大
最小
最大
0~
5.5
―
―
±0.1
―
±1.0
μA
39
管理番号 : SOU1AP2011003
入力電圧VIH、VILとは?
測定回路
TC74VHC04 入力電圧VIH、VIL-電源電圧Vcc
CMOSのVIH、VILは1/2Vccに設計されています。
4.5
Pulse
Generator
VIH、VIL-VCC
Ta=25℃
Vcc
4.0
プローブ
GND
プローブ
VIH、VIL
3.5
入力
3.0
出力
VIH
2.5
VIL
2.0
SPEC VIH
VOH≒Vcc
VIH
VIH
GND
VOL ≒GND
SPEC VIL
1.5
Vcc
1.0
VIL
VOH≒Vcc
VIL
VOL ≒GND
0.5
0.0
出力が動作しなくなる入力電圧です。
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
VCC (V)
5.0
5.5
6.0
TC74VHC04 DC特性
測 定
項
目
“H” レベル
記
号
VIH
条
Ta = 25°C
件
VCC
(V)
―
入力電 圧
“L” レベル
VIL
―
単位
最小
2.0
1.50
3.0~
5.5
VCC ×
0.7
2.0
3.0~
5.5
Ta = −40~85°C
標準
最大
―
―
―
―
―
―
―
―
0.50
VCC ×
0.3
最小
1.50
VCC ×
0.7
―
―
最大
―
―
0.50
V
VCC ×
0.3
40
CMOS入力レベルとTTL入力レベルとは?
管理番号 : SOU1AP2011003
74VHC/VHCT/VHCUの違い
41
出力電流IOH、IOLとは?
管理番号 : SOU1AP2011003
測定回路
Vcc=4.5V
TC74VHC04 出力電流IOH,IOL-出力電圧VOH、VOL
VOH
A
IOH、IOLはほぼ同等の駆動能力に設計されています。
IOH - VOH
-50
GND
IOHは出力 H 時、Pchの流し出し電流です。
40
-30
IOL (mA)
IOH (mA)
50
Ta=25℃
-40
-20
IOH
IOL - VOL
Vcc=4.5V
30
VOL
20
A
-10
10
0
0
0
-1
-2
-3
VOH-VCC (V)
-4
IOL
GND
0
-5
1
2
VOL (V)
3
4
5
IOLは出力 L”時、Nchの流し込み電流です。
TC74VHC04 DC特性
測
項
目
“H” レベル
記
VOH
VIN
= VIL
出力電 圧
“L” レベル
定
条
号
VOL
VIN
= VIH
Ta = 25°C
件
Ta = −40~85°C
単位
VCC
(V)
最小
標準
最大
最小
最大
2.0
1.9
2.0
―
1.9
―
3.0
2.9
3.0
―
2.9
―
4.5
4.4
4.5
―
4.4
―
IOH = −4 mA
3.0
2.58
―
―
2.48
―
IOH = −8 mA
4.5
3.94
―
―
3.80
―
2.0
―
0.0
0.1
―
0.1
3.0
―
0.0
0.1
―
0.1
4.5
―
0.0
0.1
―
0.1
IOL = 4 mA
3.0
―
―
0.36
―
0.44
IOL = 8 mA
4.5
―
―
0.36
―
0.44
IOH = −50 μA
IOL = 50 μA
V
42
管理番号 : SOU1AP2011003
出力電流は何mA流せますか?
絶対最大定格の出力電流IOUTで規定しています。1出力当たりの最大流し得る電流値です。
絶対最大定格の電源/GND電流ICC/GNDについては,1個IC当たり最大流し得る電流値のため,
8出力合計の電流についてもICC/GNDを超えないようにしてください。また、各パッケージの許容
損失PDを超えないようにしてください。
1出力当たりIout=±25mAまで流せる。
1A
1
14 VCC
Icc =±50mAMAXのため、2出力までとなる。
1Y
2
13
6A
2A
3
12
6Y
2Y
4
11
5A
3A
5
10
5Y
3Y
6
9
4A
GND
7
8
4Y
(top view)
1出力当たりIout=±8mAまであれば6出力まで
流せる。
その場合、
PD=IOL・VOL+IOH・(VCC-VOH)
IOHを8mA@6出力流した時
PD=8mA・(4.5V-3.94V)・6回路=10.5mW
となる。
TC74VHC04 最大定格
出
電
許
源
項
目
力
電
/
G
容
N
D
損
記 号
電
定
格
単位
流
IOUT
±25
mA
流
ICC
±50
mA
失
PD
180
mW
43
管理番号 : SOU1AP2011003
静的消費電流ICCとは?
測定回路
TC74VHC04 電源電流Icc-電源電圧Vcc
Vcc
Vcc
A Icc
CMOSの電源電流IccはnAオーダーのリーク電流です。
GND
VIN=Vcc or GNDの条件です。
IC C (A )
Ta=25℃
1E-3
1E-4
1E-5
1E-6
1E-7
1E-8
1E-9
1E-10
1E-11
1E-12
1E-13
VHC04
SPEC
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
測
目
静 的 消 費 電 流
記
定 条
号
ICC
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
VCC (V)
TC74VHC04 DC特性
項
3.0
VIN = VCC or GND
Ta = 25°C
件
Ta = −40~85°C
単位
VCC
(V)
最小
標準
最大
最小
最大
5.5
―
―
2.0
―
20.0
μA
44
管理番号 : SOU1AP2011003
CMOSのAC動作は?
一段インバータのAC動作
VCC
VIN
IP
VOUT
出力
入力
CIN
IP
COUT
IN
CIN:GATE容量
COUT:DRAIN容量+負荷容量
GND
IN
入力信号を受けて出力容量COUTを充放電
して動作します。
TC74VHC04のAC動作
内部波形
VCC
①
VOH
①
②
出力
入力
CIN
入力
②
出力
COUT
GND
各段のFETは内部のGATE容量+DRAIN容
量を充放電して動作します。
45
管理番号 : SOU1AP2011003
動作消費電流ICCとは?
測定回路
TC74VHC04 入力周波数Fin-電源電流Icc
Ta=25℃
A Icc
Fin-ICC
Pulse
Generator
10E-3
ICC(A)
Vcc
GND
入力
1E-3
Vcc
GND
100E-6
動作消費電流は内部等価容量、出力負荷
容量の充放電電流できまる。
従って、周波数に比例する。
Icc=CpD・Vcc・fIN+ICC(静的消費電流)
(例)fIN=1MHZ、CL=15pFの時
Icc=(18+15)pF・5V・1MHz+2μA
=167μA
PD(損失)=I・V=167μA・5V=0.84mW
10E-6
1E-6
100E+3
1E+6
10E+6
100E+6
Fin(Hz)
TC74VHC04 AC特性
項
目
等 価 内 部 容 量
注:
記
号
測 定
VCC (V)
CPD
Ta = 25°C
条 件
CL (pF)
(注)
Ta = −40~85°C
最小
標準
最大
最小
最大
―
18
―
―
―
単位
pF
CPD は、無負荷時の動作消費電流より計算した IC 内部の等価容量です。
無負荷時の平均動作消費電流は、次式により求められます。
ICC
(opr) = CPD·VCC·fIN + ICC/6 (ゲート当たり)
46
管理番号 : SOU1AP2011003
伝搬遅延時間tpLH、tpHLとは?
TC74VHC04
100
tpL H -V c c
測定回路
Ta=25℃、CL=50pF
Pulse
Generator
V H C04
tpLH (ns)
Vcc
CL
S P EC
10
GND
プローブ
tr
1
2.0
3.0
4.0
Vcc (V)
5.0
tf
6.0
3ns
VCC
90%
入力
tpHL-Vcc
100
3ns
プローブ
50%
10%
GND
tpHL (ns)
tTHL
tTLH
VHC04
VOH
90%
SPEC
10
出力
0.5Vcc
10%
tpHL
VOL
tpLH
1
2.0
3.0
4.0
Vcc (V)
項
5.0
目
記
6.0
TC74VHC04 AC特性
測
号
定
条
VCC (V)
3.3 ± 0.3
伝 搬 遅 延 時 間
tpLH
tpHL
Ta = 25°C
件
―
5.0 ± 0.5
CL (pF)
最小
標準
15
―
50
―
15
50
Ta = −40~85°C
最大
最小
5.0
7.1
1.0
8.5
7.5
10.6
1.0
12.0
―
3.8
5.5
1.0
6.5
―
5.3
7.5
1.0
8.5
単位
最大
ns
47
伝搬遅延時間tpLH、tpHLの容量依存性
管理番号 : SOU1AP2011003
TC74VHCの負荷容量に対する⊿tpd特性
出力負荷により、最終段のインバータの駆動能力で出力が立上り、立下り時
間が大きくなる。
48
管理番号 : SOU1AP2011003
順序回路のセットアップ時間、ホールド時間とは?
この期間はD入力を変化さ
せてはならない。
TC74VHC74
順序回路を組むときの重要なタイミング規定
です。
ts
セットアップ時間tsはCKの立ち上がり前にD
入力が入力され保持されなければならない
時間を示します。tsより前にD入力を入れて
おく必要があります。
D
Q
th
D
CK
CK
ホールド時間thはCKの立ち上がり後にD入
力が入力され保持されなければならない時
間を示します。thより後にD入力を変化させ
る必要があります。
Q
D
“H”や”L”を保持するため、また、サンプル
ばらつきによる規定です。
CK
目
記
号
測
最 小 セ ッ ト ア ッ プ 時 間
ts
―
最
th
―
小
ホ
ー
ル
ド
時
間
CK
CK
TC74VHC74 タイミング動作条件
項
CK
定
条
Ta =
25°C
Ta =
−40
~85°C
VCC (V)
Limit
Limit
3.3 ± 0.3
6.0
7.0
5.0 ± 0.5
5.0
5.0
3.3 ± 0.3
0.5
0.5
5.0 ± 0.5
0.5
0.5
件
単位
ns
ns
49
管理番号 : SOU1AP2011003
順序回路の最小パルス幅,リムーバル時間とは?
TC74VHC74
タイミング測定波形
順序回路を組むときの重要なタイミング規定
です。
最小パルス幅時間twはCKが正常に受付け
られる最小のパルス幅です。
リムーバル時間tremはCLEAR、PRESET
信号が解除されてからCKの立ち上がりを受
付けられる最小時間です。
TC74VHC74 タイミング動作条件
項
最
小
目
パ
ル
記
ス
幅
(CK)
最
小
パ
ル
tw (L)
tw (H)
ス
幅
( CLR , PR )
最 小 リ ム ー バ ル 時 間
( CLR , PR )
号
測
―
tw (L)
―
trem
―
定
条
Ta =
25°C
Ta =
−40
~85°C
VCC (V)
Limit
Limit
3.3 ± 0.3
6.0
7.0
5.0 ± 0.5
5.0
5.0
3.3 ± 0.3
6.0
7.0
5.0 ± 0.5
5.0
5.0
3.3 ± 0.3
5.0
5.0
5.0 ± 0.5
3.0
3.0
件
単位
ns
ns
ns
50
管理番号 : SOU1AP2011003
アナログスイッチ特性
TC74VHC4066
アナログスイッチはフラットのON抵抗をなっています。
アナログ信号、デジタルのスイッチとして使用できます。
Ron測定回路
V
I I S = 2 mA
VCC=4.5V、Ta=25℃、(VEE=0V)
100
90
Vcc
オン抵抗 (Ω)
80
70
HCシリー
ズ
60
50
:電流源
VHCシリ
ーズ
40
30
20
V
Ron= IIS
10
0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
VI/O (V)
TC74VHC4066 DC特性
51
管理番号 : SOU1AP2011003
レベル変換とは?
コア デバイス(CPUなど)の低電圧化トレンド
5V
3.3V
コア デバイス
2.5V
(CPUなど)
1.8V
の電源電圧
1.5V
1.2V
プロセス(μm) 0.6
年度
0.4
1995
0.25
0.18
0.13
2000
0.09
コア デバイスとのレベル変換
2006
入力
レベル
変換IC
2.5V
メモリ
出力
1.8V
コア デバイス
レベル変換用途の要求が
高まっています。
レベル
変換IC
3.3V
周辺IC
3.3V
2.5V
1.8V
0
V
Vcc=1.8±0.15V
VIH=0.65*Vcc
VIL=0.2*Vcc Vcc=2.5±0.2V
VIH=1.6.V
VIL=0.7V Vcc=3.3V±0.3V
VIH=2.0.V
VIL=0.8V 各電源電圧の条件はJEDECで提案され、決定されていきます。
52
管理番号 : SOU1AP2011003
入力トレラントとは
トレラントとは「耐性のある」という意味です。
入力トレラント機能とは,入力が電源電圧以上に高く設定された時,また,電源Vcc=0Vの時に,入
力から電源に向かって電流が流れない機能です。
入力許容電圧規格については,推奨動作条件の入力電圧に記載されています。入力,出力規格
が0∼Vccの場合,ダイオードがある回路となるため,Vcc以上の電圧を印加することはできません。
VHC/LCXの入力電圧は,0∼5.5V(入力トレラント機能有)となっていますので,電源電圧に関係な
く5.5Vまでの電圧が入力に印加可能です。電源電圧Vcc=3.3Vの場合,5Vから3.3Vのレベル変換
ができます。
VCXの入力電圧は,0∼3.6V(入力トレラント機能有)となっていますので,電源電圧に関係なく3.6V
までの電圧が入力に印加可能です。電源電圧Vcc=1.8Vの場合,3.3Vから1.8Vのレベル変換がで
きます。
データシートの動作保証条件
記号
(単位)
Vcc
電源電圧
(V)
VIN
入力電圧
(V)
項目
出力電圧
VOUT
(V)
TC74VHC
定格
TC74LCX
TC74VCX
2∼5.5
2∼3.6
1.65∼3.6
0∼5.5
0∼5.5
0∼3.6
0∼Vcc
0∼5.5
(注1)
0∼VCCA
(注2)
0∼3.6
(注1)
0∼VCCA
(注2)
コメント
入力トレラント機能あり
LCXとVCXは出力トレラント機能あり
注1:出力HZ状態
注2:出力 H または L 状態
53
出力トレラントとは
管理番号 : SOU1AP2011003
出力トレラント機能とは,出力がハイインピーダンスのとき,また,電源Vcc=0Vの時に,出力から電
源に向かって電流が流れない機能です。
出力許容電圧規格については,推奨動作条件の出力電圧に記載されています。出力規格が0∼
Vccの場合,ダイオードが有る回路(トレラント機能なし)となるため,Vcc以上の電圧を印加すること
はできません。
LCXの出力電圧は,0∼5.5V@出力=ハイインピーダンス(出力トレラント機能有)となっていますので,
電源電圧に関係なく5.5Vまでの電圧が出力に印加可能です。 Vcc=3.3Vの場合,5Vのバスライン
に直結できます。
VCXの出力電圧は,0∼3.6V@出力=ハイインピーダンス(出力トレラント機能有)となっていますので,
電源電圧に関係なく3.6Vまでの電圧が出力に印加可能です。 Vcc=2.5Vの場合,3.6Vのバスライン
に直結できます。
54
管理番号 : SOU1AP2011003
入力、出力トレラント機能規格
入力,出力等価回路と入力,出力許容規格表
トレラント機能
シリーズ
入力・出力ともにあり
VHCT,LCX,VCX
入力のみあり
VHC,LVX
入力・出力ともになし
AC/ACT,HC/HCT
0∼5.5V
0∼5.5V
0∼Vcc
0∼Vcc
0V (電圧供給不可)
0∼Vcc
0∼Vcc
0∼Vcc
0V (電圧供給不可)
0V (電圧供給不可)
入力、出力等価回路
入力トレラント機能
動作時
0∼5.5V (VCXは3.6V)
パワーダウン時 0∼5.5V (VCXは3.6V)
出力イネーブル時 0∼Vcc
出力ディセーブル
0∼5.5V (VCXは3.6V)
出力許容電圧
時
パワーダウン時 0∼5.5V (VCXは3.6V)
入力許容電圧
出力トレラント機能
55
5V→3.3V、3.3V→5Vレベル変換には
5V→3.3Vなど高い電圧から低い電圧のレベ
ル変換は,入力トレラント機能によりできます。
入力トレラント機能は電源がVcc=0Vの状態
で入力に5 Vの電圧が与えられるケースも許
容され,不要な電流も流れません。また,伝
搬遅延時間の低下もなく,簡単にレベル変換
できます。
3.3V→5Vなど低い電圧から高いレベル変換
は,前段ICのCMOS出力から後段CMOS入力
を駆動する場合,出力電圧VOH≒電源電圧
Vccとなるため,VOHが後段ICの入力電圧
VIHレベルを満足すればレベル変換ができま
す。
Nchオープンドレイン品で出力トレラント機能
をもったLCX05/07の例です。プルアップ抵抗
により,出力はVccレベルまでフルスイングし
ます
管理番号 : SOU1AP2011003
5V→3.3Vのレベル変換
3.3V→5Vのレベル変換
3.3V→5Vのレベル変換(Nchオープンドレイン
出力,出力トレラント機能品)
56
2.5V→1.8V、1.8V→2.5Vレベル変換には
2.5V→1.8Vなど高い電圧から低い電圧のレベ
ル変換は,入力トレラント機能によりできます。
入力トレラント機能は電源がVcc=0Vの状態
で入力に3.3Vの電圧が与えられるケースも許
容され,不要な電流も流れません。また,伝
搬遅延時間の低下もなく,簡単にレベル変換
できます。
1.8V→2.5Vなど低い電圧から高いレベル変換
は,前段ICのCMOS出力から後段CMOS入力
を駆動する場合,出力電圧VOH≒電源電圧
Vccとなるため,VOHが後段ICの入力電圧
VIHレベルを満足すればレベル変換ができま
す。
管理番号 : SOU1AP2011003
2.5V→1.8Vのレベル変換
1.8V→2.5Vのレベル変換
57
管理番号 : SOU1AP2011003
双方向のレベル変換には
TC74LCX245やTC74VCX245は、 低い電圧と高い
電圧の双方向・単電源でのレベル変換として使う事が
できます。TC74LCX245は3.3V⇔5V、
TC74VCX245は1.8V⇔3.3V,1.8V⇔2.5Vなどのレベ
ル変換となります。
動作例(右の図1を参照)
TC74LCX245を使用し、電源電圧VCC(VCCA)=3.3V、
Abus(An)側を5V系システム、Bbus側を3.3V系システム、と
した例で説明します。
先ず、Abus入力→Bbus出力方向で考えますと、Abus
に入る信号が電源5V系(VCCB)のシステムになりま
すので、Abus(An)に5Vの信号が入力されます(①)。
この場合トレラント機能がありますのでBbus(Bn)には
3.3Vが出力(②)されます。よって、高い電圧から低い
電圧へのレベルシフトができた事になります。
逆方向の、Bbus(Bn)入力→Abus(An)出力の場合で
は、Bbus(Bn)入力に3.3Vが入力されます(③)。
TC74LCX245の電源VCC(VCCA)が3.3Vですので、
Abus(An)出力には3.3Vの電圧が出力されてしまいま
す(④)。よって、低い電圧から高い電圧へのレベル変
換はできていない事になります。
そこで、Abus(An)側につながるICの高レベル入力電圧
(VIH)が、TTL入力レベルのような低い設定のICを使用
(図1)1電源タイプ双方向レベル変換
①
②
④
③
VCCAとVCCBの対応表
前段IC
VCCA≒VOUTA
シリーズ
3.3V
2.5V
1.8V
LCX
VCX
VCX
後段IC
VCCB=5V VCCB=3.3V
VIH=2.0V VIH=2.0V
○
○
×
−
○
×
VCCB=2.5V
VIH=1.6V
−
−
○
して頂きますと、Abus(An)出力3.3VをHIGHレ
ベル入力と判断しますのでAbus(An)側につな
がっている5V系のシステムが動作する事になり
ます。
ちなみに、TC74VHC245には入出力I/O端子
にトレラント機能がありませんので、入出力
I/O端子にVccより高い電圧を印加できませ
ん。よってレベル変換はできません。
58
双方向のレベル変換には
2電源タイプレベル変換,双方向は3.3V⇔5V,
1.8V⇔3.3V,1.8V⇔2.5Vなど内部にレベルコンバータ
回路を内蔵したICです
一般にレベルシフタ、レベル
トランスレータと呼称しています。
管理番号 : SOU1AP2011003
2電源タイプ双方向レベル変換
低い電圧(VCCA)⇔高い電源(VCCB)
TC7MP3245(8bit)を例にとりますと、VCCA=1.1∼2.7V,
VCCB=1.65∼3.6V間のあらゆる組合せのレベル変換
ができます。
2電源レベルシフタの特徴としましては、出力電圧が
Abus(An):VOH≒VccA、 Bbus(Bn):VOH≒VccBと、
フルスイングするため消費電流も少なく、高速にスイ
ッチング動作を行います。
コントロール回路の電源が低いタイプのものと高いタ
イプのものがあります。コントロール回路の電源は同
時か先に投入する必要があります。8ビット品と16ビッ
ト品ではコントロール回路の電源がそれぞれVCCA,
VCCBとなりますので注意が必要です。
59
管理番号 : SOU1AP2011003
ちょっと一息
‡③電源投入の順番は?
TC74HCの入力保護等価回路、出力寄生回路
Vcc
TC74HCの電源投入順序は?
Vcc
入力保護ダイオード
D1
○
入力
出力寄生ダイオード
入力
出力
GND
Vcc
×
入力
TC74VHCはD1ダイオードなし。
電源,入力の投入順序は一般に絶対最大定格を満足するため,(1)GNDを接続,(2)Vccを接続,
(3)入力信号の接続で行ってください。電源降下の順序は電源投入の逆で行ってください。
TC74VHC/VHCT,TC74LCX,TC74VCXのような入力トレラント機能(入力から電源へ向かって
の順方向となる入力保護ダイオードがない)のある製品は,電源が加わらない状態でも入力信号
を印加することが可能です。そのため,(2),(3)の投入順序は必要ありません。
参考:東芝セミコンダクター社ホームページ 汎用ロジックIC よくあるお問い合わせ
http://www.semicon.toshiba.co.jp/product/logic/index.html
参考になります。
60
内容
管理番号 : SOU1AP2011003
1.標準ロジックとは
2.標準CMOSロジックの基本動作
3.標準CMOSロジックの機能
4.標準CMOSロジックの各特性
5.標準CMOSロジックの使い分け
6.回路設計上の注意
61
項目
管理番号 : SOU1AP2011003
¾ 東芝の標準ロジックのポジショニング
¾ 標準ロジックシリーズの負荷容量依存性
¾ 標準ロジックシリーズの伝搬遅延波形
¾ 標準ロジックシリーズの入力感度
¾ 標準ロジックシリーズの使い分け
¾ ちょっと一息④ラッチ、フリップフロップの電源投入の出力状
態は定まっていますか?
62
標準ロジックシリーズの負荷容量依存性
管理番号 : SOU1AP2011003
伝搬遅延時間tpLH、tpHL-負荷容量CL
5Vロジック:
30pF以下以下では74VHC(T)が高速
30pF以上では74AC(T)が高速
3.3Vロジック:
74VHC/LVXが低速
74LCXが高速
63
標準ロジックシリーズの伝搬遅延波形
管理番号 : SOU1AP2011003
伝搬遅延時間tpLHの出力立上り波形
AC00、VHC00、HC00
Ta=25℃
Vcc=3.3V
CL=50pF
出力立上り時間(10-90%)ttLH
AC00:3ns、VHC00:5ns
出力立上り時間(10-90%)ttLH
LCX245:2.5ns、VHC,LVX245:6ns
高出力電流のシリーズは出力立上り、立下り時間は速くなる。
→各種ノイズ(スイッチングノイズ、反射、クロストーク、EMI)が大きくなる。
64
標準ロジックシリーズの入力感度
管理番号 : SOU1AP2011003
入力感度(最小パルス幅入力応答特性)
高速シリーズは入力感度が高くなる。
→高速ロジックはノイズ、ハザードに反応しやすい
65
標準ロジックシリーズの使い分け
管理番号 : SOU1AP2011003
出力電流能力が大きい
← 同時スイッチング、オーバ/アンダーシュート、動作時
しきい値変動に対する考慮
出力立ち上がり、立ち下がり時間が速い
← 反射、クロストークノイズEMIに対する考慮
入力感度が高い
← 細いパルス幅信号に応答
高速ロジックはノイズが大きくなる。
→高速と低速シリーズを使い分ける
66
ちょっと一息
管理番号 : SOU1AP2011003
‡④ラッチ、フリップフロップの電源投入の出力状態は定まっ
ていますか?
ラッチなどは制御信号(スイッチ)によって
情報を記憶します。
電源投入時、CLEAR、PRESET信号を
が非アクティブ状態(スイッチ=ON)の時
出力は不定となります。
フリップフロップ(ラッチ、レジスタ,カウンタ,ワンショットマルチバイブレータ)の電源投
入後の出力状態は H”であるか L”であるか不定です。
一般的に電源投入時,CLEAR端子などを一時的にアクティブにして初期状態を設定
します。これをパワーオンリセットと呼びます。パワーオンリセットの方法は,抵抗やトラ
ンジスタなどを使ったパワーオンリセット回路やリセット信号用ICで行います。
67
内容
管理番号 : SOU1AP2011003
1.標準ロジックとは
2.標準CMOSロジックの基本動作
3.標準CMOSロジックの機能
4.標準CMOSロジックの各特性
5.標準CMOSロジックの使い分け
6.回路設計上の注意
68
管理番号 : SOU1AP2011003
項目
¾ 入力未使用端子の処理は?
¾ スロー入力で誤動作!
¾ 出力短絡、バスの衝突
¾ 大きな負荷容量に制限は?
¾ デジタルICの各種ノイズ
(スイッチングノイズ、反射、IBIS、クロストーク、EMC)
¾ ハザード
¾ チャタリング
¾ アナログスイッチ
¾ メタステーブル
¾ ラッチアップ
¾ ESD
69
管理番号 : SOU1AP2011003
入力未使用端子の処理は?
CMOSの入力は 必ずVccまたはGNDへの接続処理が必要です。
CMOSの入力インピーダンスは非常に高く,オープンのままで使用
すると,出力が不安定となります。そして,貫通電流による消費電
流の増加や誤動作の原因となります。
一般的に,VccまたはGNDの処理方法による消費電流やノイズに
よる差はありません。
※空き入力端子は,必ず電源VccかGNDへ接続してください。
出力3ステート製品も注意してください。
A
DA
A
DB
R
D
D
CK
B
B
バス
CK
DA
D
B
ハイインピーダンス
CK
出力不定となる
入力プルアップ
抵抗で処理。
70
管理番号 : SOU1AP2011003
製品紹介:バスホールド機能は?
バスホールド回路はラッチ回路となるため,CMOSの入力をオー
プンすることが可能です。外付けプルアップ抵抗やプルダウン抵
抗を削減できます。また,プルアップ抵抗やプルダウン抵抗によ
るどちらか一方に処理する方法に比べ,ハイインピーダンス直前
のレベルを保持するため低消費電流となります。
バスホールド機能製品
一般ロジック製品
VCC
VCC
入力 ロジック 出力
IC
入力論理固定が必要
入力 ロジック 出力
IC
GND
GND
最終の入力状態を保持
入力論理固定が不要
メリット
・最終の入力状態を保持
・外付け抵抗削減⇒基板スペース削減
製品展開
TC74VCXシリーズの16bitなどの製品に適用
例)TC74VCXH16244FT
71
管理番号 : SOU1AP2011003
スロー入力で誤動作①!
汎用CMOSロジックの入力信号の立
上がり,立下り時間の上限を動作保
証条件で規定しています。出力の発
振などによる誤動作を引き起こさない
入力信号の立ち上がり,立下り時間
の最大値を示します。
立ち上がり,立下り時間の遅い信号
が印加された場合,スイッチング時に
発生するスパイク電流によるVcc,
GNDラインのリップルにより,出力発
振か誤動作をすることがあります。
ゲートかバッファの入力でも誤動作や
発振することがありますので,特にク
ロックなどの制御信号には注意が必
要です。対策としてはシュミット・トリガ
ICを使用します。
シリーズ
Vcc ハイスピード アドバンス
TC74HC
5V 500ns
3.3V
-
5Vロジック
3.3V 低電圧低速 低電圧中速 低電圧高速
低速
TC74AC TC74VHC TC74LVX TC74LCX TC74VCX
20ns/V
20ns/V
100ns/V
100ns/V
100ns/V
-
-
10ns/V
10ns/V
72
スロー入力で誤動作②!
管理番号 : SOU1AP2011003
パッケージの異なるD-F/Fを用いて
シフトカウンタを作成した時の規格値内で
も誤動作例を示します。
F/F-1の回路しきい値をVthC1、 F/F-2の
回路しきい値をVthC2に差があり、
誤動作となった例です。
正常動作させるには⊿t<tpd±tset-upと
なる必要があります。
対策としては、シュミットバッファで一度挿
入するなどが必要です。
73
管理番号 : SOU1AP2011003
出力短絡
出力同士を接続したワイアードOR論理構成は,出力がショート状態になるため使用できません。
もちろん,出力をVccやGNDにも接続しないでください。
(3ステート製品は除く)
駆動能力を向上させるため,同一パッケージ内のゲートを下の図のように接続することはでき
ます。
74AC,74LCX,74VCXシリーズなどの高駆動能力のICを使用することを推奨します。
ワイアードOR禁止の例と駆動能力向上の例
74
バスの衝突
管理番号 : SOU1AP2011003
3ステート出力の製品において,出力がとも
にイネーブル状態で長時間流し続けますと,
ICの劣化に結びつく場合がありますので,
出力が同時にイネーブルにならないよう設
計してください。
一度、ディセーブル時間を設定してください。
3ステート出力製品の出力衝突
同一パッケージ内のコントロール信号
a、bが相補的に変化すればほとんど
のICはtZ<tAなのでバスの衝突はない。
ただし、デコーダ出力をコントロール
信号にする場合は要注意。
同一パッケージ内のtZとtA
75
大きな負荷容量に制限は?
管理番号 : SOU1AP2011003
CMOSに大きな容量性負荷を接続すると大きな充放電電流が長時間流れ,誤動作,破壊の原因と
なります。また,長時間,出力が短絡状態となるため,内部配線の溶断につながります。さらに,電
源をオフの時間が速い場合に出力寄生ダイオードに電流が流れる可能性あるため,大きな負荷容
量を直接駆動することは避けてください。
出力端子に接続するコンデンサ,容量性負荷は500pF以下に抑えることを推奨します。それ以上の
負荷は抵抗を介して充放電電流を制限してください。
大きなコンデンサの出力接続法
TC4000やTC74HC/ACシリーズなど入力トレラント機能のない製品については,入力についても電
源をオフの時間が速い場合に入力保護ダイオードに電流が流れる場合あるため,大きな負荷容量
を直接接続することは避けてください。
入力端子に接続するコンデンサ,容量性負荷は500pF以下に抑えることを推奨します。それ以上の
負荷は図2に示すように抵抗を介して接続してください。
大きなコンデンサの入力接続法(TC4000,TC74HC/ACシリーズ)
76
管理番号 : SOU1AP2011003
デジタルICの各種ノイズ
CMOSロジックICを使う場合は,スイッチング時に発生する各種ノイズに注意が必要です.
ノイズには,
①スイッチング・ノイズ(電源,GNDバウンス)②反射(配線によるLC振動)
③クロストーク・ノイズ④電磁妨害(EMI)
の4つです.これらはすべて,出力波形のスルー・レート,di/dt(dv/dt)が原因です.
④EMI
Vcc
④EMS
ΔVVCC
②外部インターフェース上で
のノイズ、サージ
②配線長により反射ノイズ
ΔVVCC
入力
(A0)
出力
(Y0)
IC
CL
ΔVGND
①ΔVGNDにより回路しきい値
の変動
L
1
dVout
iGND=-CL
dt
ΔVGND=(L1+L2)
d iGND
dt
GND
L
2
iGND
③平行パターンによりクロストー
ク
①ΔVGNDによりアンダーシュート、
非動作出力ノイズ発生
ΔVGND
GND
①共通インピーダンスZによ
るGND電位の変動
Z
77
①スイッチング・ノイズ(電源,GNDバウンス)
管理番号 : SOU1AP2011003
CMOS IC内のMOS FETは,内外の負荷容量を充放電しながらスイッチングします.そして,IC内スイッチング
動作回路の配線のインピーダンスは,LCR回路となります.スイッチング電流iはLを流れるため,シリコン・チップ上
の電源やGNDにスパイク電圧V=L(di/dt)を発生します.これをスイッチングノイズ(電源/グラウンド・バウンス)と
呼びます.
特に,多数の出力が同時に変化するときは,充放電電流が増え,(同時)スイッチング・ノイズが大きくなります。
スイッチング・ノイズ対策
①電源VccとGNDラインを太く,短く処理する.基板の多層化も有効である
②パスパス・コンデンサは可能な限りICに近く配置・配線する
Vcc
バイパス・コンデ
ンサ
0.01μF∼0.1
μF程度
Vcc
IC
IC
IC
a)バイパス コンデンサ
GN
D
GN
D
直行配線が基本
VCC
GND
b)多層基板
78
①スイッチング・ノイズ(電源,GNDバウンス)
スイッチング・ノイズ対策
③クロック,リセットなどの信号に
注意し,ドライバなどの空きゲート
は使用しない.ローパスフィルタで
ノイズを除去する。
8ビットバスバッファの
1ビットをCKとして使用
管理番号 : SOU1AP2011003
後段のしきい値を超えて
誤動作
CK
IC
6ビットをデータ
バスとして使用
VIL
a)クロック信号
④低ノイズICを選択する
⑤出力にダンピング抵抗を入れる
(直列終端)
b)ローパスフィルタ
⑥信号の同期化をする
D
Vcc
Q
CK
a)信号の同期化
入力
R=25Ω∼100Ω程
度
D
Q
CK
a)バッファを入れる
79
②反射(配線によるLC振動)
管理番号 : SOU1AP2011003
反射は,送信端出力インピーダンスあるいは,受信端入力インピーダンスと線路インピーダンス間の不整合が原因
です. 送信端出力インピーダンスが,線路インピーダンスより大きいと反射は発生しません.逆に,出力インピーダ
ンスが線路インピーダンスより小さいと,反射が発生します.また線路長が長く,信号が負荷で反射して送信端に戻
ってくる時間より,出力の立上がり/立下がり時間が短いと反射を起こします.式であらわすと,
tr,tf>2T
tr,tf:出力の立上がり,立下がり時間
T:送信端から受信端までの遅延時間
となります. たとえば,立ち上がり時間が3nsの場合,配線による遅延時間を5ns/mとすると60cmから反射の影響
が顕れます. また,線路インピーダンスと受信端入力インピーダンスとの差が大きいほど,反射は大きくなります.
したがって,受信端がオープンの時などは大きな反射が発生します.一方,線路インピーダンスに等しい,インピー
ダンスを受信端に接続すると,反射は起きません.これを整合終端と呼びます。
集中定数理論と異なり、分布定数理論となります。
Bergeron解析
実測波形
80
管理番号 : SOU1AP2011003
②反射(配線によるLC振動)
反射対策
①配線を短くする
②必要以上に高速,高駆動のICを使わない
③終端処理する
Z0
(a)並列終端
R=Z0
・消費電力大
R
④分岐配線は一筆書き
・ドライバICに大きな駆動能力が必要
R
Z0
(b)テブナン終端
R=2Z0
・消費電力大
R
(c)直列終端
R
Z0
・ドライバICに大きな駆動能力が必要
R=Z0−Zout
・消費電力小
・立ち上り、立下り時間が遅くなる。
(d)AC終端
Z0
R>=Z0
⑤外部インタフェース上でのノイズ、サージ保護
R
・消費電力小
(e)ダイオード終端
終端処理(例)
81
管理番号 : SOU1AP2011003
製品紹介:直列終端(ダンピング抵抗)内臓製品
TC74VCXシリーズ直列終端(ダンピング抵抗内臓品)
出力電流特性
入出力等価回路
VCC
26Ω
入力
出力
GND
出力電流特性はフラットとなり、Rout=45Ω程度となる。
一般にZ0=75Ω~100Ωとなり、反射波形を軽減できる。
製品展開
TC74VCXシリーズの8bit以上の
バッファ製品全てをラインアップ
例)TC74VCX162244FT
メリット
・ノイズの低減
・部品点数の削減
82
管理番号 : SOU1AP2011003
③クロストーク
クロストーク・ノイズは配線間の容量結合,誘導
(インダクタンス)結合が原因です.したがって,
急峻な立ち上がり,立ち下がりをもつ信号に注
意し,それらの配線間の相互容量,相互インダ
クタンスを小さくする必要があります
クロストーク・ノイズ対策
実測波形
①平行にアース・パターン(多層基板など)を設ける
②平行パターンの配線長を短くする
③パターンを平行に引かない(直交させる)
④クロック信号などはバス・ラインの側に配線しない.
また,信号の両側をグラウンド・ラインでシールドす
る.
⑤コンデンサで波形をなまらせる
83
管理番号 : SOU1AP2011003
③EMC
電磁妨害(EMC)
EMC(Electromagnetic Compatibility)
電磁環境両立性。
電磁波を出さないこと。そして、電磁波による悪影響受けな
い、つまり誤動作をしないこと。
EMC=EMI(電磁妨害)+EMS(電磁感受性)
EMI(Electromagnetic Interrence)
電磁妨害。
デバイス自体からノイズを発生させ、各々の周辺機器に影
響を及ぼす状態。
特に電波受信機器への妨害が問題とされる
EMS(Electromagnetic Susceptibility)
電磁感受性。
電子機器が他から発生したノイズの影響を受けること。
放射ノイズEMIの規制
EMC規格はIEC(国際電気標準会議)の下部機構CISP
R(国際無線障害特別委員会)などが制定しています。
EMI規制の代表機器装置を示します。
装置
国際規格
日本
アメリカ
EU
テレビ、
ラジオ、
オーディオ、
VTR
CISPR
Pub13
電気用品取
締法
FCC Part
15
EN55013
プリンタ、
パソコン、
ディスプレイ
複写機
CISPR
Pub22
VCCI
FCC Part
15
EN55022
VCCIでは、機器装置の使用環境によって、2種類の規定値
を定めています。
クラスBに適合した機器装置にマークがつけられます。
第1種(クラスA)−−商工業地域(業務用)−−緩い
第2種(クラスB)−−住宅地域(家庭用)−−厳しい
EMI規制は放射ノイズと電源に出すノイズの2つの規定
があります。
放射ノイズ−−装置から一定距離(3m、10m、30m)での電界強度
クラスAが30m、クラスBが10m
電源線に出すノイズ
−−電源線を伝わって出す30MHz以下のノイズ
機器のノイズ対策
①ノイズ源への対策
②ノイズ伝播経路での対策
伝播経路での対策・・・アリスタ、バリスタ、フィルタ素子による減衰
配線、構造・・・シールド、GND等の接地方法、配線ループ排除
③機器自体のノイズ対策
ノイズ耐量向上・・・機器の信号レベル、使用素子、回路方式、選定
の際、耐ノイズ性を考慮する。
④ソフトウェア対策
誤動作検出・・・動作、データなどの誤り検出
フェールセーフ・・・誤動作状態からの復帰機能
84
管理番号 : SOU1AP2011003
IBIS
IBIS (Input/Output Buffer Information Specification)
IBISとは伝送線路シミュレーション用I/Oバッファモデルでインテルが提唱しています。
IBISモデルは、バッファのV−I特性を
数値化したものです。
(1)入力バッファの保護ダイオード特性
①Power Clamp
②GND Clamp
送端
(2)出力バッファの出力電流特性
5.0
③Pull Up
4.0
④Puul Down
3.0
(3)出力バッファのスルーレート特性 2.0
1.0
⑤Pamp
0.0
(4)パッケージデータ
-1.0
⑥C_PKG、R_PKG、L_PKG
10
で記述されています。
C=5pF
Z=75Ω
L=20cm
VHC08F
実測
Simulation
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
15
20
25
30
-1.0
60
65
70
75
実測
Simulation
受端
5.0
5.0
4.0
4.0
3.0
3.0
2.0
2.0
1.0
1.0
0.0
0.0
-1.0
10
-1.0
60
15
20
25
30
80
65
70
75
80
基本的考え方はBergeron解析です。実測波形とシミュレーション
波形がほぼ一致しています。
85
管理番号 : SOU1AP2011003
ハザード
GATEのハザード
対策
A,B
Y
A
Y
B
D
D
Q
CK
C
C
GATEでロジック組んだ時、遅延などによりのハザード
が発生する。
同期化をする。
リップルキャリー方式カウンタ(各FFのCKが非同期)のハザード
Y
対策
Y
Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7
CK
CK
74VHC4040
Y
D
D
Q
CK
CK
同期化をする。
カウンタ出力の遅延をGATEするためハザードが発生する。
86
管理番号 : SOU1AP2011003
チャタリング
F.Fによるチャタリング除去回路
A
Vcc
Y
A
R
B
R
B
Y
R=10K∼500KΩ
積分回路によるチャタリング除去回路
Vcc
R1
R2
A
Rs
Y
Y
Rs=10K∼50KΩ
Rsは電源オフ時の保護抵抗
87
管理番号 : SOU1AP2011003
アナログスイッチ
(1)クロストークノイズ
コントロールを切り換える際、I/Oにクロストークが発生する。
⇒対策 出力にフィルター用コンデンサを挿入(この場合も500pF以上は抵抗を挿入)
(2)I/O間に流せる電流(スイッチスルー電流)は
STD
74HC/VHCタイプ
±0.5/Ron
±25mA max
(3)I/Oに過電圧がかかった場合の悪影響
スイッチがOFFした状態でもI/OにGND以下、Vcc以上の電圧が印加されると、
寄生トランジスタがONし、I/Oピンに寄生電流が流れます。
88
メタステーブル
管理番号 : SOU1AP2011003
順序回路をもちいて、入力信号を同期化させる
とき、クロック信号と取り込まれる信号とのタイミ
ングにより、出力が不確定になることがある。
セットアップ時間、ホールド時間、リムーバル時
間を満たさない場合、発生し、この状態をメタス
テーブルと呼びます。
この状態は伝搬遅延時間tpdの増加や論理の
再反転などを引き起こします。非同期信号をク
ロック信号と同期する時、必ず発生します。
対策はフリップフロップを2段接続し、1段目の
tpdの遅れやハザードを、2段目の出力に伝達さ
せないようにした回路です。この場合も1段目と
2段目のクロックの位相差がtpdの遅れと同等で
ある場合注意が必要です。
一般に高速ロジックの方がtpdの遅れが少なく
有利です。2段を3段にすると更に対策となりま
す。
89
管理番号 : SOU1AP2011003
ラッチアップ
ラッチアップを引き起こす原因は、
①入力電圧 VIN<GND もしくはVIN>VCC
②出力電圧 VOUT<GND もしくは VOUT>VCC
③電源電圧VCCが定格以上に上昇し、ブレークダウンする
対策 ⇒ 最大定格内にとどめる
過大なサージなどが印加される可能性があるインタフェース部分には、保護回路
を付加することを推奨します。
ラッチアップ誘発防止方法の例
90
管理番号 : SOU1AP2011003
ESD
ESD(静電気放電)耐量を測定する試験回路
人体モデル:HBM方式C=100pF,R=1.5KΩ
±2000Vが目安
機械モデル:MM方式C=200pF,R=0Ω
±200Vが目安
静電破壊試験
サージ防止回路の例
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製品取り扱い上のお願い
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などにより予告なしに変更されることがあります。
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従ってください。また、上記資料などに記載の製品データ、図、表などに示す技術的な内容、プログラム、アルゴリズムその他応用回路例などの
情報を使用する場合は、単独およびシステム全体で十分に評価し、お客様の責任において適用可否を判断してください。当社は、適用可否に対す
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されている用途に使用されることが意図されています。本製品は、特別に高い品質・信頼性が要求され、またはその故障や誤作動が生命・身体に
危害を及ぼす恐れ、膨大な財産損害を引き起こす恐れ、もしくは社会に深刻な影響を及ぼす恐れのある機器(以下 特定用途 という)に使用さ
れることは意図されていませんし、保証もされていません。特定用途には原子力関連機器、航空・宇宙機器、医療機器、車載・輸送機器、列車・
船舶機器、交通信号機器、燃焼・爆発制御機器、各種安全関連機器、昇降機器、電力機器、金融関連機器などが含まれます。本資料に個別に記載
されている場合を除き、本製品を特定用途に使用しないでください。
本製品を分解、解析、リバースエンジニアリング、改造、改変、翻案、複製等しないでください。
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本資料に掲載してある技術情報は、製品の代表的動作・応用を説明するためのもので、その使用に際して当社及び第三者の知的財産権その他の権
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情報に関する一切の損害(間接損害、結果的損害、特別損害、付随的損害、逸失利益、機会損失、休業損、データ喪失等を含むがこれに限らな
い。)につき一切の責任を負いません。
本製品、または本資料に掲載されている技術情報を、大量破壊兵器の開発等の目的、軍事利用の目的、あるいはその他軍事用途の目的で使用しな
いでください。また、輸出に際しては、「外国為替及び外国貿易法」、「米国輸出管理規則」等、適用ある輸出関連法令を遵守し、それらの定め
るところにより必要な手続を行ってください。
本製品のRoHS適合性など、詳細につきましては製品個別に必ず弊社営業窓口までお問合せください。本製品のご使用に際しては、特定の物質の
含有・使用を規制するRoHS指令等、適用ある環境関連法令を十分調査の上、かかる法令に適合するようご使用ください。お客様がかかる法令を遵
守しないことにより生じた損害に関して、当社は一切の責任を負いかねます。
92
93