浚渫粘土の自重圧密過程における PBD による圧密促進効果 大阪市立大学大学院 錦城護謨(株) まえがき ○正 大島昭彦 学 藤元 学 正 野村忠明 井口 実 浚渫粘土の埋立処分場の圧密促進のために鉛直排水工としてプラスチックボードドレーン(PBD)が よく用いられているが,浚渫粘土の圧密は粘土の自重が主体となって生じる。このような自重圧密場における PBD のような帯状ドレーンによる圧密促進効果は未だ不明であり,またその解析手法も確立されていない。筆者らは, これまでに円筒,帯状ドレーンによる自重圧密促進効果をドレーン直径(幅),ピッチ,排水条件を変えた遠心模 型実験で調べ,自重圧密場では Barron 解は実験値と整合しないが,Barron 解と一次元自重圧密解を合成した解(合 成解と呼ぶ)は比較的よく整合することなどを報告した 1)。今回はこれまでと異なる粘土試料を用いて,ドレーン 変形の影響,合成解の基となる Barron 解の水平方向の圧密係数 ch の採り方を調べた結果を報告する。 実験方法 試料は,大阪湾粘土に市販のカオリンを乾燥質量比 4:1 で混合 吊り糸 して海水で練り返したもの(w L = 84%,w p= 30%,Ip = 54)である。これまで用 いてきた苅田粘土(w L = 105%)よりもやや低塑性であるが,粘土の初期層厚を 海水 海水 両 面 排 水 の 場 合 15cm と大きくした。模型地盤容器は内径 12cm,高さ 30cm のアクリル円筒で, 初期含水比 150%,初期層厚 15cm,遠心加速度 100g に設定した。 ドレーン 図-1 にドレーンの設置形態を示した。PBD は粘土の沈下に追随して変形す 粘 土 ドレーン 粘 土 両 面 排 水 の 場 合 るので,その効果を調べるために,ドレーンが追随して変形する追随型と変形 しない固定型の 2 種類を採った。図(1)の追随型ではドレーンの両端を粘土表面 と底部に設置した薄手の不織布に接着して粘土の沈下に追随させた。図(2)の固 定型ではドレーン上端を糸で吊って蓋に固定した。なお,ドレーン材には少し (1) 追随型 (2) 固定型 図-1 ドレーンの設置形態 表-1 実験条件 厚手の不織布(100g/m2)を用い,幅 a= 0.5cm とした。 排水 ピッチ 本数 条件 d (cm) n (本) Case 1, 9 6 4 変えたケースを片面,両面排水で行った。図-2 にドレーンの配置を示す。全 Case 2, 10 4 9 片面 て正方形配置である。なお,改良地盤との比較および用いた粘土の圧密特性を Case 3, 11 2.8 16 Case 4, 12 2 32 求めるために,別途,無改良地盤の実験も行っている。 Case 5, 13 6 4 Case 6, 14 4 9 両面 ドレーン変形の影響 図-3 (1),(2)にそれぞれ片面,両面排水でピッチ d を Case 7, 15 2.8 16 2 32 変えた場合の追随型と固定型の比較を示した。追随型の方が圧密速度が速く, Case 8, 16 *Case No.の左が追随型,右が固定型 表-1 に実験条件をまとめた。追随型と固定型でピッチ d= 6,4,2.8,2cm に 実験 Case* 片面排水の方がその程度は大きい。これは追随型のドレーンは左右に蛇行する 変形を示す 2) ため,固定型に比べて粘土の排水距離が短くなり,全体の圧密進 直径12cm d=6cm 行に与えるその影響が片面排水の方が大きいためと考えられる。 合成解との比較 既報3) と同様に,Carrillo の方法に準じて Barron 解と三笠解 (一次元自重圧密解)を合成した解と実験値を比較した。Barron 解の ch は,超 drain (1) d=6cm, n=4 軟弱粘土であるので ch = cv と解釈し,別途行った無改良地盤の実験から求めた f -logcv 関係から算定した。ただし,①深さ方向に ch 一定:初期体積比 f0 と底面 (2) d=4cm, n=9 2 2.8 の最終体積比 ffn の平均 f に対応する ch (=12cm2/d) を適用,②深さ方向に ch 変化: 粘土層を層状地盤とし,初期体積比 f0 と各層の最終体積比 ffi の平均 f i に対応す る ch ( ≦12cm2/d) を適用(各層ごとに計算して合計する),の 2 種類の方法で算 定した。なお,換算ドレーン直径 dw は周長を直径に換算する式3) を用いた。 (3) d=2.8cm, n=16 (4) d=2cm, n=32 図-2 ドレーンの配置(d:ピッチ) Key Words : プラスチックボードドレーン,浚渫粘土,自重圧密,地盤改良,遠心模型実験,圧密理論 〒558-8585 大阪市住吉区杉本 3-3-138 大阪市立大学大学院工学研究科都市系専攻 TEL 06-6 605-2996 FAX 06-6 605-2726 0 0 2 1 抜き:追随型 塗り:固定型 (1) 片面排水 3 H0=15cm, a=0.5cm d (cm) 4 6.0 (Case1, 9) Case21(d=6) Case22(d=4) 4.0 (Case2, 10) 5 Case23(d=2.8) 2.8 (Case3, 11) 2.0 (Case4, 12) Case24(d=2) 6 無改良 71 10 100 経過時間 t (min) 沈下量 S (cm) 沈下量 S (cm) 1 2 3 H0=15cm, a=0.5cm d (cm) 4 Case25(d=6) 6.0 (Case5, 13) Case26(d=4) 4.0 (Case6, 14) 5 Case27(d=2.8) 2.8 (Case7, 15) Case28(d=2) 2.0 (Case8, 16) 6 71 1000 抜き:追随型 塗り:固定型 (2) 両面排水 10 100 経過時間 t (min) 1000 図-3 ドレーン変形の影響 0 0 d=6.0cm 40 60 80 (1) 片面排水 H0=15cm, a=0.5cm d (cm) 6.0 (Case1) 4.0 (Case2) 2.8 2.8 (Case3) 2.0 (Case4) 2.0 無改良 合成解 (ch=12cm2/d) 100 1 20 4.0 10 三笠解 圧密度 U (%) 圧密度 U (%) 20 40 60 80 100 経過時間 t (min) 1000 d=6.0cm (2) 両面排水 4.0 H0=15cm, a=0.5cm d (cm) 6.0 (Case5) 2.8 4.0 (Case6) 2.8 (Case7) 2.0 2.0 (Case8) 2 合成解 (ch=12cm /d) 100 1 10 100 経過時間 t (min) 無改良 (三笠解 ) 1000 図-4 追随型による排水条件変化と深さ方向の ch を一定とした合成解の比較 0 0 d=6.0cm 40 60 80 (1) 片面排水 H0=15cm, a=0.5cm d (cm) 6.0 (Case1) 4.0 (Case2) 2.8 (Case3) 2.0 (Case4) 無改良 合成解 (ch変化) 100 1 20 4.0 10 三笠解 2.8 2.0 100 経過時間 t (min) 圧密度 U (%) 圧密度 U (%) 20 40 60 80 1000 100 1 d=6.0cm (2) 両面排水 H0=15cm, a=0.5cm d (cm) 6.0 (Case5) 4.0 (Case6) 2.8 (Case7) 2.0 (Case8) 合成解 (ch変化) 10 4.0 無改良 (三笠解 ) 2.8 2.0 100 経過時間 t (min) 1000 図-5 追随型による排水条件変化と深さ方向の ch を変化させた合成解の比較 図-4 (1),(2)にそれぞれ片面,両面排水におけるピッチ d を変えた場合の U-logt 関係と深さ方向の ch を一定と した合成解の比較を示した。両者ともに,合成解は d が大きい場合に実験値に比べて圧密速度をやや過小評価して いるものの,比較的よく一致している。なお,両面排水では片面排水に比べて圧密促進効果とピッチの効果がやや 小さいのは,両面排水の方が一次元自重圧密の影響が大きいためと考えられる。 図-5 (1),(2)にそれぞれ片面,両面排水の同じ実験の U-logt 関係と深さ方向に ch を変化させた合成解の比較を 示した。両者ともに,図-4 に比べて合成解は圧密速度を遅く算定している。これは今回採った方法では深さ方向 に ch を変化させた場合には,ch を一定とした場合よりも全体に ch を小さく見積もるためである。本来,深さ方向に ch を変化させた方が正しい手法と考えられるが,少し大きめの ch を採用した方が実験値との整合性は良い結果とな った。これは前述したドレーンが粘土の沈下ととも追随して変形する場合の圧密速度はやや速くなるという効果に よるものと考えられる。紙面の都合で図には示さないが,図-3 と対照すると,ドレーンが変形しない固定型では ch を変化させた合成解の方が整合性は良いことがわかる。 参考文献 1) 大島,森本,野村,井口:浚渫粘土の自重圧密におけるプラスチックボードドレーンの圧密促進効果,地盤工学会,第 48 回地 盤工学シンポジウム,pp. 441〜448,2003.2) 大島,森本,野村,井口:PBD による浚渫粘土の圧密促進効果に関する遠心模型実験,日本材料 学会,第 5 回地盤改良シンポジウム,pp.217〜222,2002.3) 大島,藤元,野村,井口: PBD による浚渫粘土の圧密促進効果 −換算ドレーン 直径とドレーン変形の影響−,第 38 回地盤工学研究発表会(投稿中),2004.
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