PBD 改良された浚渫粘土層の自重圧密過程における

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D - 05
第40回地盤工学研究発表会
(函 館) 2 0 0 5 年 7 月
PBD 改良された浚渫粘土層の自重圧密過程における含水比と層厚の影響
プラスチックボードドレーン,浚渫粘土,遠心模型実験
大阪市立大学大学院
○学 西田貴博(現前田建設)
大阪市立大学大学院
国 大島昭彦
錦城護謨(株) 正 野村忠明 井口 実
1. まえがき
浚渫粘土の埋立処分場の圧密促進のために鉛直排水工としてプラスチックボードドレーン(PBD)がよく用いられてい
るが,通常の沖積粘土と は異なり,浚渫粘土の 圧密は粘土の自重が主体 となって生じる。この ような自重圧密場にお け
る PBD のような帯状ドレーンによる圧密促進効果は未だ不明であり,またその解析手法も確立されていない。
これまでに,PBD のような帯状ドレーンによる自重圧密促 進効果をドレーン幅,ピッチ,排水条件を変えた遠心模 型
実験で調べ,自重圧密場では Barron 解は実験値と整合しないが,Barron 解と一次元自重圧密解を合成した解(合成解と
呼ぶ)は比較的よく整合 すること,ドレーンが 粘土の沈下に追随しなが ら蛇行変形する場合は 圧密速度をやや速くす る
効果があるなどを報告した1), 2) 。今回は PBD の改良効果に与える粘土の含水比,層厚の影響を調べた結果を報告する。
2. 実験方法
表-1 実験条件
試料は,大 阪湾粘土 に市販の カオリンを 乾燥質量 比 4:1 で混合し た
OK84 粘土(wL = 84%,wp= 30%,Ip= 54)を用 いた。模型地盤容器は内 径
12cm,高さ 30cm のアクリル円筒で,これを 2 個ずつ遠心装置アームの
両端に設置して,同時に 4 ケースの実験を行った。
表-1 に実験条件をまとめた。全てのケースで,遠心加速度 100g,ドレ
ーンは正方形配置,ドレーンの設置形態は粘土の沈下に追随して変形する
「追随型」である。Case1∼12 は粘土の初期含水比 w0 を 120,150,180%
に変え,それぞれでドレーンピッチ d を 6,4,2.8,2cm に変えた実験を
片面排水条件で行った(粘土の初期層厚 H0 は実質層厚が一致するよう に
設定している)
。また,Case13∼21 は w0 = 150%で H0 を 10,15,20cm に
変え,それぞれで d を 4,2.8,2cm に変えた実験を両面排水条件で行っ
た。なお,各粘土 条件における無改 良(ドレーンなし )実験も別途行っ て
いる。ドレーン配置や設置形態の詳細については文献 1)を参照されたい。
3. 合成解の計算方法
Carrillo 3) の方法に準じて Barron 解と三笠解(一次元自重圧密解)を合
成した解(合成解)を実験値と比較した。Barron 解における水平方向の圧
密係数 ch は,超軟弱粘土であるので ch = cv と解釈し,別途行った無改良実
験から求めた f - log cv 関係から求めた。ch(Barron 解では圧密中一定)は,
初期体積比 f 0 と底面の最終体積比 f f の平均 f に対応する ch を適用した。
より厳密な深さ方向に ch を変化させる場合より も上記算定の方が実験 値
によく合うことは既に報告している2) 。また,ドレーン有効径は de = 1.13 d
(正方形配置)を,換算ドレーン直 径 dw はドレーン周長を直径に換算 す
る式「dw = 2(a+ b)/ π」(a,b:ドレーン幅,厚さ)を用いた2) 。
実験
Case
Case 1
Case 2
Case 3
Case 4
Case 5
Case 6
Case 7
Case 8
Case 9
Case 10
Case 11
Case 12
Case 13
Case 14
Case 15
Case 16
Case 17
Case 18
Case 19
Case 20
Case 21
図-1 (1)∼(3)にそれぞれ w0 = 120,150,180%地盤の片面排水条件でピ
ピッチ
d (cm)
t50
(min)
改良(ドレーンなし)の実験値と三笠解も示したが,両者はほぼ一致して
いる。ただし,図(3)の w0 = 180%地盤の無改良実験は遠心場で材料分離を
おこし,沈下曲線が折れ曲がる挙動を示したため,合っていない。
図(1),(2)の w0 = 120,150%地盤では,合成解はピッチの効果をやや過
排水
条件
片面
両面
表-2 各含水比における t 50 と無改良との比
4. 粘土の含水比が改良効果に与える影響
ッチ d を変えた場合の U− log t 関係と合成解の比較を示した。図中には無
粘土条件
ドレーン条件
含水比
層厚
幅
ピッチ
w0 (%) H0 (cm) a (cm) d (cm)
6.0
4.0
120
12.6
0.5
2.8
2.0
6.0
4.0
150
15.0
0.5
2.8
2.0
6.0
4.0
180
17.4
0.5
2.8
2.0
4.0
10.0
0.2
2.8
2.0
4.0
15.0
0.2
2.8
150
2.0
4.0
20.0
0.2
2.8
2.0
t50 /t50 無
無改良
6.0
4.0
2.8
2.0
6.0
4.0
2.8
2.0
120
512
214
148
81
52
0.41
0.28
0.16
0.10
w0 (%)
150
357
193
145
92
55
0.54
0.41
0.26
0.15
180
151
116
87
63
39
0.77
0.58
0.41
0.26
大評価している のが,実験値 との整合性は 比較的よい。 しかし,図(3) の
w0 = 180%地盤では,合成解は圧密速度を過小 評価している。この原因は,先に述 べた材料分離が改良地盤でも生じて い
る可能性があること,および紙面の都合で図は示さないが,このケースの Barron 解は圧密速度をかなり過小に(d= 2.8cm
以上では無改良よりも遅く)算定するため,その影響が合成解にも現れるためと考えられる。
表-2 に各ケースの圧密度 50%時の実時間 t 50 と無改良との比 t 50 /t 50 無をまとめた。w0 が大きいほど沈下量が大きく,層
厚減少の効果が大きいため,t 50 は小さいが,無改良に対するドレーン効果を表す t 50 /t 50 無は w0 が小さいほど小さい(d=6cm
Effect of initial water content and thickness on self-weight consolidation of dredged clay improved by plastic board drain,
Oshima Akihiko and Nishida Takahiro (Osaka City University), Nomura Tadaaki and Inokuchi Minoru (Kinjyo Rubber)
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0
0
d=6.0cm
(1) w0=120%
H 0=12.6cm, a=0.5cm
40
d (cm)
6.0 (Case1)
4.0 (Case2)
60
2.8 (Case3)
2.8
2.0 (Case4)
80
無改良
2.0
合成解 (ch =22.0cm2/d)
100
1
10
100
経過時間 t (min)
0
d=4.0cm
20
4.0
三笠解
1000
(1) H0=10cm
圧密度 U (%)
圧密度 U (%)
20
40 w =150%, a=0.2cm
0
d (cm)
4.0 (Case13)
60
2.8 (Case14)
2.8
2.0 (Case15)
2.0
80
無改良
2
合成解 (ch =10.4cm /d)
100
1
10
100
経過時間 t (min)
0
d=6.0cm
(2) w0=150%
H 0=15.0cm, a=0.5cm
d (cm)
6.0 (Case5)
4.0 (Case6)
60
2.8
2.8 (Case7)
2.0 (Case8)
2.0
80
無改良
合成解 (ch =11.5cm2/d)
100
1
10
100
経過時間 t (min)
0
40
(2) H0=15cm
40 w =150%, a=0.2cm
0
d (cm)
4.0 (Case16)
60
2.8 (Case17)
2.8
2.0 (Case18)
2.0
80
無改良
合成解 (ch =11.5cm2/d)
100
1
10
100
経過時間 t (min)
0
三笠解
1000
d=6.0cm
(3) w0=180%
H 0=17.4cm, a=0.5cm
d (cm)
6.0 (Case9)
4.0 (Case10)
60
2.8 (Case11)
2.0 (Case12)
80
無改良
2.0
合成解 (ch =6.1cm2/d)
100
1
10
100
経過時間 t (min)
40
三笠解
1000
d=4.0cm
20
4.0
圧密度 U (%)
圧密度 U (%)
20
1000
d=4.0cm
20
4.0
圧密度 U (%)
圧密度 U (%)
20
三笠解
2.8
三笠解
1000
図-1 PBD の改良効果に与える含水比の影響と合成解
との比較(片面排水)
(3) H0=20cm
40 w =150%, a=0.2cm
0
d (cm)
4.0 (Case19)
60
2.8 (Case20)
2.8
2.0 (Case21)
2.0
80
無改良
合成解 (ch =12.4cm2/d)
100
1
10
100
経過時間 t (min)
三笠解
1000
図-2 PBD の改良効果に与える層厚の影響と合成解
との比較(両面排水)
を基準とする比 t 50 /t 50d=6 を採っても同様であった)
。したがって,初期含水比が低い地盤ほどドレーンによる圧密促進効
果が大きいと言える。これは初期含水比が大きくなると,一次元の自重圧密が主体(層厚減少の効果が大きい)となり,
相対的にドレーンによる水平排水の効果が現れにくくなるためと考えられる。
5. 粘土層厚が改良効果に与える影響
図-2 (1)∼(3)にそれぞれ H0 = 10,15,20cm 地盤(w0 = 150%)の両面排水条件でピッチ d を変えた場合の U− log t 関係
と合成解の比較を示した 。図中には無改良(ド レーンなし)の実験値と 三笠解も示したが,各 条件とも実験値の方が 圧
密速度は遅く,両者の整合性は悪い。特に図(2)の H0 = 15cm の差が大きいが,同じ層厚の図-1 (2)の片面排水と比較する
と両面排水の効果があまり現れていないため,無改良実験で下面の排水性に不備があったものと考えられる。
粘土層厚 H0 と改良効果の関係を見ると,H0 が大きいほどドレーンピッチ d の効果が大きいことがわかる。これは H0
が大きくなると一次元圧 密の進行が遅くなるた め,ドレーンによる水平 排水効果が相対的に大 きく得られるためと考 え
られる。実験値と合成解を比較すると,d が小さいほど,H0 が大きいほど整合性が悪くなっている。これは d が小さいほ
ど結果的に粘土 中央に近いド レーンが外周方 向に逃げる変 形が観察され ,かつ H0 が大き いほどドレー ン自体も長く な
り,沈下に対する変形の 自由度が大きいため, 沈下とともに粘土内のド レーンピッチが拡がる という実験上の問題が あ
ったためと考えられる。この点は今後の課題としたい。
以上から,粘土の初期含水比が低いほど,層厚が大きいほど PBD による圧密促進効果が大きいと言える。また,PBD
改良された地盤の圧密過程は合成解(Barron 解と一次元自重圧密解の合成)で概ね予測可能と考えられる。
参考文献 1) 大島,森本,野村,井口:浚渫粘土の自重圧密におけるプラスチックボードドレーンの圧密促進効果,地盤工学会,第 48
回地盤工学シンポジウム,pp. 441∼448,2003.
2) 大島,藤元,野村,井口:浚渫粘土の自重圧密過程における PBD による圧密促進効果,日本材料学会,第 6 回地盤改良
シンポジウム,pp.11∼16,2004.
3) Carrillo, N. (1942): Simple two and three dimension cases in the theory of the consolidation of soils, Journal Mathematical Physics,
pp.1∼21
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