パーキンソン病の治療 ー治療ガイドライン 2011ー 2012/9/25 南風病院 1 Parkinson's disease normal midbrain Lewy body Parkinson's disease normal midbrain Lewy body Ubiquitin staining 2 加齢による黒質細胞数の減少 パーキンソン病における パーキンソン病におけ 黒質細胞数の減少 る黒質細胞数の減少 黒 質 細 胞 数 黒 質 細 胞 数 時間経過 時間経過 3 4 パーキンソン病の治療はいつ開始すべきか? 症状の程度、日常生活の不自由さ、職業を 勘案して開始する。 薬物治療を遅らせることの利点はない 5 6 7 Levodopa/Dopa脱炭酸酵素阻害薬 Levodopa/Dopa脱炭酸酵素阻害薬 3-OMD COMT Levodopa Carbidopa DDC X Levodopa DDC Dopamine Dopamine 脳血液関門 脳血液関門 末梢(腸・血管) 脳 8 L-dopa + carbidopa L-dopa + benzarizide 9 パーキンソン病患者 パーキンソン病患者(64才: (64才:男性) 男性)における における 血中ドパ・ドパミン濃度 血中ドパ・ドパミン濃度 10 パーキンソン病患者における髄液中ドパミン濃度 パーキンソン病患者における髄液中ドパミン濃度 11 L−dopa/末梢性脱炭酸酵素阻害薬(DCI)配合剤 早期及び進行期パーキンソン病の運動機能改善に対して 最も強力な効果を示す パーキンソン病進行抑制効果は不明 早期導入により, on時の運動機能は改善状態が維持される L-dopa投与量・投与期間に依存して運動合併症の出現率が 上昇する 十分な運動機能改善を図りつつ、可能な範囲でL-dopa量を 抑える。過度の抑制は運動機能の増悪につながる 12 レボドパの吸収 小腸で吸収される 消化管のpH がアルカリになると吸収は悪くなる。 消化管のpHを上げる薬 同時に服用すると吸収が低下する可能性がある。 プロトンポンプ インヒビター ↓ (タケプロン、オメプラール) 併用しない H2ブロッカー 2-3時間投与間隔を空ける。 (ガスター、ザンタックetc) L-dopaの吸収を促す方法 錠剤を粉末化して飲む 牛乳は薬服用前には飲まない 空腹時に飲む レモン水30mlを一緒に飲む グレープフルーツ、酢のものを食べる ナウゼリンなどを併用し、胃蠕動を促進させる 13 タンパク質の加水分解によって生じたL−アミノ酸は主に小腸粘膜上皮細胞 膜に存在する能動輸送酵素で吸収される。レボドパは中性アミノ酸トランス ポーターで能動的に吸収されるため、高タンパク食で生じたL−アミノ酸が、 本輸送酵素をレボドパと競合し、レボドパの吸収量を低下させる。 レボドパ服用中の患者が多量のタンパク質を摂取した場合には、消化管吸収 低下に起因する薬効減弱でパーキンソン症状が悪化することがある 14 禁忌 禁忌 閉塞隅角緑内障の患者 閉塞隅角緑内障の患者 [眼圧上昇を起こし、症状が悪化するおそれがある。] [眼圧上昇を起こし、症状が悪化するおそれがある。] 15 右眼視力 0.15 (矯正 0.9) 左眼視力 0.2 (矯正 1.2) 両眼の閉塞隅角で、両眼の白内障があります。 本日、レーザー虹彩切開を希望され、 右眼を行いました。 明日、左眼も行います。 貴院再診時から、薬剤投与可能と考えます。 X眼科 16 運動症状の日内変動 (motor fluctuation) 抗パーキンソン病薬の効果持続時間が Wearing off 短縮し、薬物濃度の変動とともに症状 が変動する現象 スイッチを入れたり切ったりするように On-off 急激に症状が変動する現象 Non on Delayed on 薬を服用しても効果発現が見られない 現象 効果発現に時間を要する現象 17 Wearing Wearing off off (擦り減った) (擦り減った) 抗パーキンソン病薬の効果持続時間の短縮し、薬物濃度 抗パーキンソン病薬の効果持続時間の短縮し、薬物濃度 の変動とともに症状が変動する現象 の変動とともに症状が変動する現象 L-dopa製剤を1日3回服用してもなお、次の薬剤を服用する L-dopa製剤を1日3回服用してもなお、次の薬剤を服用する 前に効果の消退を自覚する 前に効果の消退を自覚する 18 L-dopa誘発性ジスキネジア Peak dose ジスキネジア L-dopa血中濃度が高い時に出現する 顔・舌・頚部・四肢・体幹の不随意運動 Diphasic ジスキネジア L-dopa血中濃度の上昇期と下降期に出現 19 ドパミンアゴニスト選択基準 運動合併症のリスクはL-dopaより少ない 50歳以下で発症した場合、ドパミンアゴニストで治療開始する 副作用:日中過眠・幻覚・心臓弁膜症・浮腫 自動車運転者・機械操作・高所作業者には推奨されない 高齢者・認知障害がある場合は、幻覚・妄想に注意 20 L-dopaとドパミンアゴニストの比較 L-dopa ドパミン アゴニスト 運動症状の改善効果 優れている やや劣る 認知障害・精神症状が ない場合の安全性 同等かやや優れている 同等かやや劣る 高齢者・認知機能障害が ある場合の安全性 優れている やや劣る 将来の運動合併症のリスク (日内変動・ジスキネジア) 相対的に高い 相対的に低い 21 麦角系ドパミンアゴニストの副作用:心臓弁膜症 カベルゴリン>ペルゴリド>ブロモクリプチンは 心臓弁膜症を来たすことがあり、第1選択薬としない 心臓弁膜症・心肺後腹膜線維症の可能性 使用前に身体所見・心電図・胸部X線・心エコー 定期的に検査する(6ヶ月-12ヶ月) カベルゴリン(カバサール)・ペルゴリド(ペルゴリド)・パーロデル(ブロモクリプチン) 22 非麦角系ドーパミンアゴニスト ビ・シフロール レキップ ドミン 23 ビ・シフロール (プラミペキソール) プラミペキソールで開始してもL-dopaで開始しても、L-dopa開始 後のジスキネジアの発症率に差はない 早期及び進行期パーキンソン病に対する効果はL-dopaと同等 早期パーキンソン病 有効 進行期パーキンソン病 Off時間の短縮・軽症化 L-dopaの減量 副作用 腎障害・高齢者 突発性睡眠・衝動性行動障害・強迫性障害 低用量から開始 24 レキップ (ロピニロール) 早期パーキンソン病に対し有効で、wearing offやジスキネジア の発現を予防出来る 使用量が多くUPDRSスコアが高い例では、wearing offは 生じえる 進行期パーキンソン病の運動機能・ADL改善に有用 副作用:突発性睡眠・衝動性行動障害・強迫性障害 25 診断 日常生活に支障あり 日常生活に支障あり 日常生活に支障なし 日常生活に支障なし 高齢・認知障害・精神症状 高齢・認知障害・精神症状 のいずれかを合併 のいずれかを合併 定期的診察・教育・リハビリ 定期的診察・教育・リハビリ 当面の症状改善を優先する特別の理由があるか 当面の症状改善を優先する特別の理由があるか ドパミンアゴニスト ドパミンアゴニスト L-ドーパ L-ドーパ 改善が不十分 改善が不十分 改善が不十分 改善が不十分 L-ドーパ L-ドーパ ドパミンアゴニスト増量 ドパミンアゴニスト増量 L-ドーパ増量・ドパミンアゴニスト追加 L-ドーパ増量・ドパミンアゴニスト追加 L-ドーパ併用 L-ドーパ併用 26 モノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬 脳内ドーパミン濃度を40-50%上昇させる 27 モノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬:エフピー L-dopa剤と併用することにより、L-dopa服用量を抑制出来る 初期から併用しても、ジスキネジア予防効果はない Wearing off, dyskinesia, dystoniaを改善し、 L-dopa作用時間の延長効果がある。 1日1回2.5mgを朝食後服用から開始、 2週ごとに1日量として2.5mgずつ増量, 標準維持量1日7.5mg 5.0mg以上の場合は朝食及び昼食後に分服 7.5mgの場合は朝食後5.0mg・昼食後2.5mgを服用 1日10mgを超えない 28 カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬 早期パーキンソン病に対する効果 L-Dopa/DCI配合剤単独 VS エンタカポン併用 運動症状の改善・運動合併症の発生に有意差なし ジスキネジア発現時期が早く、発現率も高い 進行期パーキンソン病に対する効果 Wearing offに対してon時間の延長効果あり 29 1 2 3 振戦 (tremor) の治療 筋固縮・無動を伴う場合は、L-dopaまたはドパミン アゴニストで治療 効果が不十分な場合、若年者ならアーテン追加 (6mg/dayまで) 振戦のみの場合:若年者ならアーテン (最大量6mg/day)まで増量 30 Wearing Wearingoff off L-dopaを1日3−4回投与、またはDAを開始・増量・変更 L-dopaを1日3−4回投与、またはDAを開始・増量・変更 Dyskinesiaがあるか? Dyskinesiaがあるか? No Yes エンタカポン エンタカポン セレギリン セレギリン ゾニサミド併用 ゾニサミド併用 L-dopa1回量を減量し L-dopa1回量を減量し エンタカポン併用 エンタカポン併用 または または ゾニサミド併用 ゾニサミド併用 L-dopa頻回投与 L-dopa頻回投与 及びDA増量・変更 及びDA増量・変更 手術 手術 31 Non Nonon on または または Delayed Delayedon on L-dopa内服タイミングと運動症状から判断する L-dopa内服タイミングと運動症状から判断する Delayed onの場合 L-dopa内服を食前に変更 L-dopa内服を食前に変更 胃排泄時間の短縮 胃排泄時間の短縮 Non onの場合 吸収障害の有無を検討 吸収障害の有無を検討 1回内服量を増やす 1回内服量を増やす (モサプリド・ドンペリドン) (モサプリド・ドンペリドン) L-dopa懸濁液で内服 L-dopa懸濁液で内服 32 Off-periodジストニアの治療 1 ドパミンアゴニストを追加または増量する 2 L-dopa投与回数を増やす 3 コムタン・エフピー・トレリーフを追加する 4 早朝のジストニアには睡眠前にドパミンアゴニ ストを追加・起床前にL-dopaを服用する 薬物治療が無効の場合、DBSが有効 5 33 悪性症候群の予防・治療 原因:抗パーキンソン病薬の中断・急速な減量・ 脱水・感染症・著明なwearing off 症状:発熱・筋硬直 治療:早期発見・輸液・冷却・ 薬物(ダントローレン・ブロモクリプチン) 34 悪性症候群 悪性症候群 輸液による脱水・電解質異常の是正 輸液による脱水・電解質異常の是正 全身冷却 全身冷却 抗パーキンソン病薬投与 抗パーキンソン病薬投与 ブロモクリプチン(15-22.5mg/day ブロモクリプチン(15-22.5mg/day分3) 分3) L-dopa静注(L-dopa合剤100mgに対しドパストン50mgで開始 L-dopa静注(L-dopa合剤100mgに対しドパストン50mgで開始 し、効果が足りなければ75-100mgで換算する。1回量を1時間 し、効果が足りなければ75-100mgで換算する。1回量を1時間 で点滴静注、1日3−4回・L-Dopa/DCI合剤(経口・経管) で点滴静注、1日3−4回・L-Dopa/DCI合剤(経口・経管) ダントロレーン点滴 ダントロレーン点滴 1-2mg/kgを6時間毎に静注、経口可能なら100-200mg/day 1-2mg/kgを6時間毎に静注、経口可能なら100-200mg/day ヘパリン1-1.5万単位持続点滴 ヘパリン1-1.5万単位持続点滴 35 幻覚・妄想 幻覚・妄想 生活に支障があるか 生活に支障があるか 経過観察 経過観察 直近に加えた薬物中止 直近に加えた薬物中止 抗コリン薬中止・アマンタジン中止 抗コリン薬中止・アマンタジン中止 セレギリン中止 セレギリン中止 コリンエステラーゼ阻害薬 コリンエステラーゼ阻害薬 ドーパミンアゴニスト減量・中止 ドーパミンアゴニスト減量・中止 エンタカポン中止 エンタカポン中止 ゾニサミド中止 ゾニサミド中止 L-ドーパ減量 L-ドーパ減量 非定型抗精神病薬 非定型抗精神病薬 定型抗精神病薬 定型抗精神病薬 36 生活の支障となるpeak-dose dyskinesia ↓ セレギリン中止 ↓ エンタカポン中止 ↓ L-dopa1回量を減量し、頻回投与 ↓ L-dopa1日総量を減らし、不足分をDAで補充 ↓ アマンタジン追加 ↓ 手術療法 37 ジスキネジアの治療 Peak dose dyskinesia 併用したエフピー・コムタンを減量・中止する L-dopaの1回量を減量して投与回数を増やす L-dopaの1日量を減量し、不足分をドパミンアゴニストを追加・増量 シンメトレル投与・増量 視床下核刺激術 Diphasic dyskinesia 併用していたコムタンを中止する L-dopaの1回量を減量して投与回数を増やす L-dopaの1回量を増やし、投与回数を減らしジスキネジアの出現時期 を予測しやすくする。 シンメトレル投与・増量 視床下核刺激術 38 すくみ足の治療 すくみ足以外の運動徴候が残っている場合、 抗パーキンソン病薬の用量調整を行う Wearing off時のすくみ足には、wearing off対策 を行う ドパミン作動薬に抵抗性の場合は、ドロキシ ドーパ(ドプス)を投与する リズミカルな感覚性キューや補助的用具の使用 39 すくみ足 すくみ足 低薬用量の場合 低薬用量の場合 抗パ剤増量 抗パ剤増量 Off時のすくみ Off時のすくみ Wearing Wearingoff対策に off対策に 準じた薬剤調節 準じた薬剤調節 Wearing Wearingoffに offに 対する手術療法 対する手術療法 On時のすくみ On時のすくみ または または 薬効と無関係のすくみ 薬効と無関係のすくみ ドロキシドパ追加 ドロキシドパ追加 (600-900mg) (600-900mg) 視覚のキュー:床にテープ 視覚のキュー:床にテープ 聴覚キュー:2拍子リズム 聴覚キュー:2拍子リズム 40 姿勢異常の治療 腰曲がり (camptocormia) 斜め徴候 (Pisa徴候) 頚下がり (dropped head) 41 嚥下障害 流涎 構音障害 嚥下訓練 食事形態の工夫(とろみ食) 胃ろう造設 抗コリン薬(アトロピン・スプレー・ 耳下腺へのボツリヌス治療) 言語療法 42
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