全米で老後に住みたい街 NO.1 と言われ ているボルダー(コロラド州)。街中には緑 に溢れ、川が流れ、空は青く、空気は澄ん でいて、人々は優しい。見上げると、いつ もロッキー山脈がすぐそこにある。ここは 標高約 1600m もあり、アスリートの高地 トレーニング場所としても有名です。そん な美しい街に約 2 か月(2007 年 7 月下旬か 左:ボルダーのシンボル”Flatirons”という丘。ここもトレイルになっていて登れるの ら 9 月中旬)、研究のために滞在してきま で、しっかり行ってきました。右:Flatirons から見下ろすボルダーの町並み。右下手 した。このときは、共同研究者がコロラド 前の赤い建物の集まりがコロラド大学 大学おり、日本ではまだ誰もできないデー タの解析方法を学び、帰国後に教授に教えることができるぐらいまでに腕をあげる、という大きなミッションが 与えられていました。 成田からロサンゼルス経由、州都デンバ ー行き。到着後真っ先に目に入ったのは、 長い旅の疲れを吹き飛ばす見事な青空 でした。そこから車を1時間弱走らせれ ばボルダーです。ボルダーの街に入ると すぐ目につくのが、全米で最も標高が高 いところにある大学、コロラド大学。赤 左:コロラド大学物理学科の”Duane building.”大学内にも緑が溢れています。右:私 レンガの色に統一されたデザインが、街 が通っていた研究所”Center for Astrophysics and Space Astronomy(CASA)”の玄関。 の雰囲気と見事に融合しています。明日 贅沢なことに 1 階建て! からしばらくここで研究をするのだと 思うと、期待と緊張が入り混じります。 私が通うキャンパスはさっき目にしたメインキャンパスではなく、そこから車で 5 分ほど、尐し離れたイースト キャンパスにある"Center for Astrophysics and Space Astronomy(CASA)"というところ。1階建てでそこそこ 広く、しかも庭にはバーベキューセット完備のオフィスです。景観を守るためボルダーには高い建物があまりな く、一番高いビル(10 階建)はメインキャンパスにある物理学科の"Duane building"のようで、アメフトフィール ドの傍という好立地で上階では何と試合観戦ができるとか! さて、肝心の研究生 活についてですが、 ボルダーの大 自然 に囲まれた環 境の ためか、ほとんどの 人々が働く時 間は 朝早くから夕 方早 くまで。生活時間帯 左:街中で出会う小動物たち。右:突如、キ がよく狂うと 言わ ャンパス内に現れた山羊の群れ!後ろの建 れる研究者で さえ 物内には何とノーベル賞者が二人いるとか!! もです。9 時頃には机に向かい 5 時頃には帰宅する、とても健康的な研究生活でした。通学にはマウンテンバイ クを使いました。ここは アメリカ、郷に入れば郷に従え、あのアーモンド型ヘルメットとサングラスを装着、 地元の人のように颯爽と走りました。20 分程度のロッキーマウンテンビューのサイクリングですが、道中たく さんの小動物たちに出会います。うさぎ、リス、プレイリードッグ、鴨などを見ました。時々、放牧されている 山羊や、ガサガサ音がしたと思うと鹿も現れたりします。こうして癒されながらオフィスに到着後、さっそく研 究スタートです。 ラッキーなことに今回の滞在期間中に、コロラド大学の学部と大学院の 講義を受けることができました。というのは、アメリカの学校は9月に 新学期が始まるので、こちらの生活にも研究にも慣れてきた頃にちょう ど講義が始まり、学外の人である私も参加しやすかったのです。私が出 席した講義は、光赤外線観測装置(学部)と、銀河(大学院)をテーマにし たものです。講義中、学生からの発言がとても活発で、いつも活気があ り、良い雰囲気でした。それでもさすがに講義に飼い犬を連れてきた生 徒がいたことには、日本人の私だけでなく、アメリカ人の教授も驚いて いましたが…。当然のことながら、講義はすべて英語です。最初はもち ろん不安でしたが、思っていたよりも問題にはなりませんでした。良く 聞き取れなかったら質問すればいいですし、学生たちも親切でいろいろ と助けてくれました。また、私が参加した大学院の講義では毎回、講義 中にちょっとした課題を与えられ、学生だけで考え議論し結果を導き出 すことがありました。同年代の人たちと英語で議論をするチャンスは今 までほとんどなかったので、英語を聞き取り、考え、論理の通った発言 をする一連の流れができたのはとても良い経験になりました。しかも議 休日にはスポーツ観戦へ。上:松井(稼)選手がい たコロラドロッキーズの試合。松井選手、ホー ムランを打ってくれました!! 写真はホームスタ ジアム Coors Field 名物の Rockies dog. 大きす 論の内容は私の研究テーマだったので、まさに一石二鳥!こういった講 義中の簡単な課題だけではなく、レポートも頻繁に課されます。1 週間 に 2-3 コマ同じ講義があるのですが、レポート課題は月に 1-2 つは課さ れるようです。他の講義もたくさんあるし、学生は皆忙しそうでした。 ぎて食べきれません。 。。 下:アメフトの大学リ ーグ。残念ながらコロラド大バッファローズ。 この試合は負けました…。 夕方頃、気がついたらオフィスはとても静かになっています。もうそろそろ 5 時、 ほとんどの人たちは帰宅してしまったようです。私もそろそろ…と思うと、外は大 雨。これでは自転車に乗れません。ボルダーの夏は、いつも夕方頃に 10 分程度大 雨が降るのです。雨が過ぎ去るといつもの青空、清々しい空気に包まれます。この シャワーのおかげで、ボルダーの夏は過ごしやすいのかも知れません。自転車に跨 って直帰のこともあれば、買い物がある時はお気に入りのスーパーで食材などを買 い込んで、夕食にボルダー地ビール(これがまた美味しい!)を一緒に呑み、一休み。 そのあと、持ち帰った作業を終わらせたらそろそろ一日の終わりです。 これがダウンタウンのすぐそばだと 信じられますか?河原では、のんび り本を読んでいたり、ピクニックし ている人もたくさんいました。 私がボルダーにいた期間、アメリカではサ マータイム中でした。なので、一日がとて も長く感じられ、毎日朝から晩まで充実し た時間を過ごすことができました。特に休 日は、午前中からお気に入りのカフェでコ ーヒーを飲みながら研究の続き。それが一 段落する夕方頃から遊びに出掛けていまし た。夜 8 時頃になるまでは明るいので、マ 左:お気に入りのカフェで勉強中。「かぐや」打 上げ時間、PC にちゃんとメモしてありました。 右:お気に入りのトレイル。最高に気持ちいい! ウンテンバイクで尐しだけ遠出をします。 ボルダーには、大自然の中を散歩したり、 自転車で駆け巡れるトレイルがたくさんあるので、その日の気分に合 わせて地図を見ていろんなトレイルを走ってきました。その中でも気 に入っているトレイルは、川のすぐそばを走る場所。言葉で説明するより、写真を見て頂ければ、その美しさも 素晴らしさも伝わると思います。 こうして、オン・オフを上手に切り替え、研究生活と普段の生活ともに堪能してきました。慣れない地で生活を すること自体やはり大変なことでしたが、それを楽しんでしまう、ということで乗り越えたのだと思います。本 当に毎日が異文化との触れあいの連続でした。実はちょっとした大けがをしたのですが、その時の治療費用が約 1500 ドル!!後から知ったのですが、アメリカで病院に行くのは非常にお金がかかるとか。暮らしの違いを身に染 みて感じた最大の出来事です。初めての土地でひとり暮らしをすることは大変なことでしたが、その分、得られ たことも多く非常に有意義な滞在になりました。研究でも大きく前進することができ、帰国直後の天文学会で発 表をしましたし、今でも毎週火曜日の早朝 8 時(!)からコロラド大学などと電話会議をして研究を続けています。 また、コロラド大学滞在中の頑張りが認められたのか、6 月にある国際学会でもこの研究の成果を発表してきま す。普段の生活に関しても、あちらで新たに友人ができ、今でも連絡を取り合っています。 私はたまたまボルダーで 2 か月滞在したことで様々な経験をしましたが、行先はボルダーでなくても、アメリカ でなくても、どこであっても、尐しだけ違った視点を持つことができれば一気に視野を広げることができると思 っています。例えば、ISAS に毎日通っている私の場合、たまには他の総研大生のオフィスを覗いたり、 実験し ている様子を眺めたり、一緒に勉強会をしたり、そうすることで新たな発見・経験をしています。ちょっとした ことを日々積み重ねることで新たなブレイクスルーが生まれる可能性がある、そう信じています。日々成長! ロッキーマウンテン国立公園にて。この雄大な自然、写真でお伝えしきれないのが残念で仕方ありません…
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