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一部抜粋
スコープ3基準の開発動向と
日本企業へのインパクト
~サプライチェーンのGHG算定基準・手法の開発動向と日本企業への影響~
2011年2月10日
みずほ情報総研株式会社
環境・資源エネルギー部
柴田
昌彦
本日の内容
1. スコープ3基準の開発動向と企業へのインパクト
 スコープ3基準とは何か?/
なぜ注目を浴びているのか?
 誰が、何の目的で開発しているのか?
 スコープ3基準の主な内容
 日本企業へのインパクトとは?
2. 国内制度の動き
~環境省を中心に~
 サプライチェーンGHG算定手法検討会の活動
 経済産業省の“スコープ3研究会”との違い
 スコープ3基準との違い
 環境省の狙い
3. 企業はいかに対応すべきか?
 企業が目指すべき取組みの方向性
1
1. スコープ3基準の開発動向
と企業へのインパクト
スコープ3基準とは何か?/ なぜ注目を浴びているのか?
2
スコープ3とは?
Point :スコープ3 = 組織のサプライチェーンに相当するGHG算定範囲
 スコープ3は、温室効果ガス(GHG)算定・報告のデファクト基準であるGHGプロトコルで定義されている
企業など組織のGHG算定範囲の一つ。
・スコープ1:企業の直接排出
・スコープ2:エネルギー利用による間接排出
・スコープ3:スコープ2以外の間接排出⇒範囲としては組織のサプライチェーン(バリューチェーン)に相当。
上流事業者
上流事業者
・原材料の採掘、生産
・原材料の輸送
・廃棄物の処理
・資本設備 ・リース資産
・その他投資(株式、債券) 等
・燃料の採掘、搬送
・送電ロス
報告事業者(連結)
報告事業者(連結)
下流事業者、消費者
下流事業者、消費者
スコープ1(企業の直接排出)
・固定燃焼
・移動燃焼
・プロセスおよび漏出 等
・製品の輸送
・小売 ・リース資産
・フランチャイジー 等
スコープ2(エネルギー間接)
・電力の生産
・熱、冷却の生産
・蒸気の生産 等
スコープ3(スコープ2以外の間接排出)
スコープ3(スコープ2以外の間接排出)
・製品・サービスの使用
・廃棄
・リサイクル
・従業員の通勤 ・出張
Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard DRAFT FOR STAKEHOLDER
REVIEW NOVEMBER 2010 に基づき、みずほ情報総研作成
3
スコープ3基準とは?
Point :スコープ3基準は、スコープ3のGHG排出量を算定・報告するための基準
 正式名称 :
”Corporate Value Chain (Scope 3)
Accounting and Reporting Standard”
 発行主体:
GHGプロトコル・イニシアチブ
 内容・位置づけ:
スコープ3、即ち企業のサプライチェーン/
バリューチェーンに相当する領域からの
GHG排出量を算定・報告するための基準。
既に企業のGHG算定・報告のグローバルデ
ファクト基準となっている「コーポレート
基準」の補遺文書という位置づけ。
基準」の補遺文書
 発行時期:
2011年9月に正式発行予定。
(2010年12月に最後のパブコメ期間終了)
• コーポレート基準
• 2002年に発行、2004年
に改訂
• スコープ1及び2のGHG算
定・報告の基準として、グ
ローバル企業、欧州政府が
採用
⇒デファクト基準としての地位
を確立
• スコープ3基準
• 2011年9月に発行予定
• コーポレート基準では具体
化されていなかった「スコー
プ3」の排出量の算定・報告
の基準
⇒コーポレート基準同様、デ
ファクト基準としての地位を
確立することが予想される
4
なぜ注目を浴びているのか?
(1)
Point :従来の日本企業の試みではカバーしきれない広範なカテゴリ設定
1
Purchased Goods & Services
購入した製品、サービス
2
Capital Goods
資本財
3
Fuel- and Energy- Related Activities Not Included in Scope 1 or 2
スコープ1、2に含まれない燃料、エネルギー関連活動
4
Transportation & Distribution (Upstream)
輸送・流通(上流)
5
Waste Generated in Operations
事業から発生する廃棄物
6
Business Travel
出張
7
Employee Commuting
従業員の通勤
8
Leased Assets (Upstream)
リース資産(上流)
9
Investments
投資
< Downstream(下流)>
< Upstream(上流)>
 スコープ3基準は、企業のサプライチェーン(バリューチェーン)を合計15個のカテ
ゴリに分類。(第2次ドラフト時点)
10
Transportation & Distribution (Downstream)
輸送・流通(下流)
11
Processing of Sold Products
販売された製品の加工
12
Use of Sold Products
販売された製品の使用
13
End-of-Life Treatment of Sold Products
販売された製品の廃棄後の処理
14
Leased Assets (Downstream)
リース資産(下流)
15
Franchises
フランチャイズ
日本の先進企業が対応しているのは、カテゴリ1、
4、10、12、13等、15のカテゴリの3分の1程度。
⇒ 過去の日本企業の貯金だけでは、
対応できない。
5
ご参考:日本企業の“貯金”とスコープ3(旧カテゴリ)
※ サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出量算定基準に関する調査・研究会(第3回) 配布資料より、
日本企業6社(電機、化学、食品、オフィス家具)による試算結果を転載。
#
上
流
下
流
カテゴリ
現在のデータ収集、GHG算定状況
1
購入した製品・サービス
- 直接サプライヤー(Tier 1)の排出
×
大半の企業は、カテゴリ2に該当する排出量の算定は行うも、カテゴリ1は算定実績なし。
2
購入した製品・サービス
- Cradle to Gateの排出
○
大半の企業が素材のLCAデータ(二次データ)等を活用し、算出した実績あり。ただし、網羅性は各社によっ
てさまざま。
3
スコープ2以外のエネルギー関連排出
×
大半の企業が算定実績無し。
4
資本設備
×
全社算定実績無し。一部企業が今回試算するも納得いく結果得られず。
5
輸送・流通(上流/入荷)
×
大半の企業が算定実績無し。
6
出張
△
大半の企業が算定実績無し。一部企業は今回試算しオーダーのみ把握。
7
事業で発生する廃棄物
×
大半の企業が算定実績無し。
一部企業が今回試算するも納得いく結果得られず
8
フランチャイズ(上流)
ー
各社とも該当せず
9
リース資産(上流)
×
全社算定実績無し。
10
投資
×
全社算定実績無し。一部企業が今回試算するも納得いく結果得られず。
11
フランチャイズ(下流)
ー
各社とも該当せず
12
リース資産(下流)
ー
大半の企業が該当せず
13
輸送・流通(下流/出荷)
○
改正省エネ法の特定荷主の責任範囲は各社ともカバー。
14
販売された製品の使用
△
独自の算定基準を用いて算定する企業と、算定の対象外に明確に位置づける企業に二分。
15
販売された製品の廃棄
○
約半数の企業が独自の算定基準を用いて算定。
従業員の通勤
△
大半の企業が算定実績無し。一部企業は今回試算しオーダーのみ把握。
その他 16
6
6
なぜ注目を浴びているのか? (2)
Point :“全量”の算定・報告が義務づけられている
 スコープ3基準では、広範な15のカテゴリにまたがるスコープ3の排出量の全量を算
全量
定・報告することが要求事項となっている。
⇒ 対応を誤れば、多大な対応コストが発生。
5章 バウンダリの設定 (Setting the Boundary)
Companies shall account for and report all scope 3 emissions and disclose and
justify any exclusions.
企業は、スコープ3排出の全てを算定・報告しなければならない。
算定・報告からのいかなる排除も開示し、その正当性を示さなければならない。
Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard DRAFT FOR STAKEHOLDER REVIEW NOVEMBER 2010
※ ただし、正当性を示すことができれば、除外をすることが可能。
除外の正当性を的確に示せるかどうかが、
スコープ3基準対応の“要”。
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なぜ注目を浴びているのか? (3)
Point :スコープ3への対応の如何が、外部からの企業評価に影響する
 スコープ3基準等のGHGプロトコル・イニシアチブが作成した基準類を企業評価に活用
する外部団体が存在。
 機関投資家が設立したCDP(カーボン・ディスクロージャ・プロジェクト)はその代表。
⇒
CDPは、スコープ3への対応状況をスコアリングに反映。
アンケートへの回答
に基づき
企業のCO2取組み
をスコアリング
(世界共通)
スコープ3への対応情況
は公開され、
スコアリングにも影響
Carbon Disclosure Project 2010
Japan 500 Report より
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ご参考:その他のサプライチェーンGHG算定基準・手法について
Point :スコープ3基準以外にもサプライチェーンGHG算定基準・手法は存在。
ただし、いずれもスコープ3基準に大きく影響を受けている。
組織
ISO
文書名 / 制度名 / 取組み名
TR 14069(draft):組織の
カーボンフットプリント
内容/位置づけ
ISO 14064-1のガイダンスとなる
技術報告書(TR)。
国際規格化はしない予定。
スコープ3基準との関り
スコープ3基準の検討が先行し、ス
コープ3基準から影響を受ける側に
なっている。
TRであるため影響力も限定的。
英国・
DEFRA
Guidance on how to
measure and report your
greenhouse gas emissions
フランス・
ADEME
Bilan Carbone
米国・EPA
Climate Leaders
企業のGHG報告に対する報奨制
度。
スコープ3に相当分の報告は任意。
サプライチェーンにおける温
室効果ガス排出量算定方法
検討会
温対法のオプション報告を視野に
入れた算定手法開発
スコープ3基準の影響を受けて独
自に手法開発
(スコープ3基準より後発)
日本・
環境省
Scope1-3の算定・報告ガイダンス。
スコープ3基準の第2次ドラフトに考
将来的に規制化を検討
え方を反映。
(スコープ3との互換性を担保?)
組織のGHG算定手法ガイダンス
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【ご参考】向上する”プライベート基準”のプレゼンス
Point :GHGプロトコル・イニチアチブのような非公的組織が作る“プライベート基準”
がデファクト基準になっている現実がある
 GHGプロトコル・イニシアチブのような非公的組織が“この指止まれ”で集ったメン
バー策定を進める基準は、ISO規格との比較で“プライベート基準”(private
standard)と呼ばれ、以前はISO規格より一段も二段も下の扱いであった.
 ただし昨今、ルール作りが長期化しがちなISOを尻目にプライベート基準が先に作成
され、その後ISOがプライベート基準の内容を取り入れるという現象が多発.
例)ISO 14064(組織レベル、プロジェクトレベルのGHG算定・報告の規格)
例)ISO 14067(製品カーボンフットプリントの規格)
例)ISO/TR 14069(組織のカーボンフットプリントの規格:Scope3基準に対応する規格)
⇒いずれもGHGプロトコル・イニシアチブが導入した概念、枠組を取り込んでいる
 また、政府による企業・組織のGHG算定制度において、GHGプロトコルに倣うケー
スが発生.(英国(企業向け制度)、米国(政府機関向け制度))
プライベート基準が、国際的なルール作りの主役になりつつある
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1. スコープ3基準の開発動向
と企業へのインパクト
誰が、何の目的で開発しているのか?
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誰が作成しているのか?(1)
Point :作成主体は「GHGプロトコル・イニシアチブ」の主催者、WRIとWBCSD
 「スコープ3基準」はGHGプロトコル・イニシアチブの活動として、同イニシアチブ
の主催者であるWRIとWBCSDが主体となって策定が進められている。
 GHGプロトコル・イニシアチブは、WRIとWBCSDが中心となっ
て開催するマルチ・ステークホルダー・パートナーシップ。
GHG排出量の算定と報告の世界共通の基準としての「GHGプロ
トコル」シリーズの作成と普及をミッションとしている。
 WRIは、米国の環境シンクタンク
World Resources Institute
(世界資源研究所)
米国政府、企業等からの出資で運営
本拠地:ワシントンD.C.
(WRIのロゴ)
(GHGプロトコル・イニシアチブのロゴ)
WBCSDは企業の連合体組織
 World Business Council for Sustainable Development
(持続可能な開発のための世界経済人会議)
 企業会員からの会費で運営
 本拠はスイス・ジュネーブ
(WBCSDのロゴ)
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ご静聴ありがとうございました
みずほ情報総研株式会社
環境・資源エネルギー部 http://www.mizuho-ir.co.jp/
Tel :03-5281-5282
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