2016年11月24日 原発コストの託送料金上乗せをやめて、 東電破綻・法的整理による「国民負担の軽減」を第一に取り組むべきである 電力システム改革貫徹のための政策小委員会(以後「貫徹委員会」)による、廃炉費用等の原発 コストを託送料金に上乗せ、原発電気新市場の創設という議論は、破綻を迎えた東電の救済策で あり、結果的に国民負担をさらに拡大する。 1、なぜ託送料金への負担がいけないか 1)電力システム改革の目的と真逆である。 発電、送配電、小売の分離が目的であることを忘れてはならない。 2)国民負担はむしろ増える。 債権者、経営者、株主の責任を放置し、消費者=国民に負担を押しつけ。 3)「過去の費用」論は原発コストの莫大さの証明。 不採算の発電方法をやめるべきで、採算が合わないから託送料金へは本末転倒。 2、東電を救済することの誤り 東電破綻の可能性→東電救済→送配電部門(託送料金を含む)へのコスト転嫁。 1)最初の東電救済の失敗を認めよ。 東電は3.11後の3月末の破綻を救済したのが、金融機関による緊急貸付と、その後の原子力損 害賠償支援機構(以後「機構」という。)による、公的資金流し込み。 東電はほぼ自腹を切らず、被害者への損害賠償、事故収束対策、除染などを行えた。それでも、 今回、東電は、3月末決算で債務超過になると政府に救済を要請した。 この5年間が無為無策であったことを検証すべき。 2)誰を救済したかが見える2度目の東電救済案 東京電力改革・1F 問題委員会(東電委員会)は、「国民負担の最小化」を名目に、債権者、経営者、 株主の責任を放置した。 ①肩代わり=現状のまま「原子力損害賠償・支援機構」。国庫(国民)負担の増大。 ②公的資金=東電の公社化。実質的な国民負担の増大。 ③放置=法的整理。債権者、経営者、株主の負担が増大。 ④東電改革=東電が「総力で」頑張る。実質は消費者負担という形の国民負担。 東電委員会は③を国民負担とし、④を選択し「貫徹委員会」での議論の前提とした。 3、セットで盛り込まれた「原発維持システム」 緊急の「東電救済」にかこつけて、他電力含む原発の「生命維持装置」をごり押し。 1)廃炉会計制度 東電を含む10電力(原発保有事業者)は、原発廃炉を決めると、資産が特別損失に変わり、その 時点で債務超過となる可能性がある(その点は今回の東電も同じ)。 そこで廃炉会計制度をつくり、廃炉後も減価償却できるようにした。しかし電力自由化により、発電 部門の総括原価方式が廃止され、この仕組み使えなくなる。 そこで廃炉費用を、総括原価方式が残る送配電部門会計に入れ、託送料金に直接上乗せする案 が出てきた。(法改正せず、経産省の規則の改正でできる。) 2)ベースロード電源市場: ベースロードには原発、石炭、ダム水力が入る。新電力に常時バックアップの代わりに購入を促す。 夜間の供給力と「安価な電気」という意味があるが、原発は決して安価ではない。そこで、安価に 「見せかける」ために、託送料金等に隠れコストを押し付ける。 3)低炭素(非化石)市場: 原発のコストを後からマイナスしてくれる。「非化石証書」は、原発の価値を「CO2 ゼロ」価値として、 実電気ではなく価値のみ取引する。 4)容量市場: この市場の意味は、需給調整に役に立つ発電所であれば、発電しなくても「kW=設備容量」にお 金を出すということ。変動電源の再エネ増の備え、天然ガス火力の新規建設リスクを減らす目的とさ れるが、考え方は石炭にも、原発にも使える。 4、背後にある原子力損害賠償法の問題 そもそもなぜ原発という危険なものの運転が認められたか。と福島原発事故の損害額はすでに15 兆円を突破しているが、多大な損害が予想されながら、原発が推進されたのは原子力損害賠償法 による。国と民間で、それぞれ1200億円、合計で2400億円の損害保険金で、これを超える損害 は事業者自身が無限責任を負う。 しかしいま、政府の公的資金によって、賠償や除染、事故処理が行われており、原子力損害賠償 法は破綻している。したがって、この法律の抜本的な改正が必要。最低でも、現時点の損害額15 兆円の保険金額の設定から議論をスタートすべきである。 以上 市民電力連絡会 090−9964−5024(竹村) 図1 第2回東電問題委員会資料3「今後の議論の手順」2ページ、3ページ 表1 現在までの損害額 (2016.11.06 大島堅一さん講演資料より) 図2 原子力損害賠償・廃炉支援機構による東電救済スキーム (貫徹委員会 第3回財務会計 WG 資料4「東京電力を取り巻く状況」より)
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