金属材料

金属材料
鉄と炭素の状態図
鉄鋼材料は鉄と炭素の合金であるが,製銑,製鋼の過程で炭素を含
めて鉄鋼中の五大元素のマンガン,珪素,リン,イオウが含有される。
最も重要である炭素の含有量%を変えて非常にゆっくり加熱・冷却し
たときの組織を現したものを、下図のFeーC状態図といいます。
℃
1600
1539℃
溶融
1400
1200
オーステナイト
1145℃
1000
910℃
オーステナイト+ パーライト+ 黒鉛
800
723℃
フェライト
600
フェライト+ パーライト
内容は熱処理で説明
400
1
0.02% 0.8%
2
2.06%
3
4
5
6
4.2%
1
鉄・鋼・鋳鉄の区別
鉄・鋼・鋳鉄は炭素の含有量によって区別されます。
鉄: 炭素量が 0.02%以下
鋼: 炭素量が 0.02~2.06%
鋳鉄:炭素量が 2.06~6.67%
鋼は炭素量によって機械的性質が変わってくる
硬さ:炭素量が増えると硬さは増す
引張強さ:炭素量が増えると引張強さは増す
伸び:炭素量が増えると伸びは小さくなります
五大元素の働き
炭素(C):
鋼にとって最も重要な元素です。熱処理をし、さらに硬さ・強さを
増加させ、焼入れにも重要な役割をします。
含有量が多くなると、硬くなると同時にもろくなります
ケイ素(Si):
鋼の耐熱性・硬さ・強さを増します
マンガン(Mn):
良く焼きが入るようになり、強じん性を与える働きをします
リン(P):
鋼に有害な元素で、寒いときに鋼をもろくします(低温脆性)
イオウ(S):
鋼に有害な元素で、赤熱状態のとき鋼をもろくします(赤熱脆性)
2
合金元素の働き
クロム(Cr):摩耗に強く、耐食性を増加させる元素です。また、浸炭
を促進し、焼入れし易くする働きもあります
ニッケル(Ni):鋼に耐食性・強靭性与え、粘り向上による低温時の耐
ショック性を増加させ、熱処理をしやすくします。
モリブデン(Mo):焼入性を増加させる優れた元素。高温に加熱した
時結晶粒の粗大化を防ぎ、高温引張強さを増大させます
バナジューム(V):鋼の硬度・強度を増大する。鉄と反応して硬い炭
化物を造り、結晶粒を細かくし強じん性を与え・耐摩耗性の向上に
も役立ちます。
タングステン(W):高温における軟化抵抗が大きく、硬い炭化物を形
成します
コバルト(Co):鋼中に溶け込み耐熱性を増大させる元素
鉄鋼規格の記号の見方
原則として3つの部分より構成されている
①
S
S
F
S
②
③
S
200
K
5
C
200
UP 6
構造用圧延鋼材、引張強さ400Mpa以上
工具鋼 5種
鋳鉄、引張強さ200MPa以上
ばね鋼鋼材 6種
①材質:Steel(鋼)、Ferrum(鉄)
②用途:Structure(構造物)、Casting(鋳造)、Kougu(工具)、
Plate(薄板)、Use(特殊用途)、sPring(ばね)、Wire(線)
Journal(軸受)、Stainless(ステンレス)、Tube(管)
③引張強さ又は鋼種 400Mpa、6種
3
機械構造鋼の記号体系
①
S
②
CM
③
4
④
35
クロムモリブデン鋼 4種
①材質:Steel(鋼)
②主要合金元素:C(クロム)、M(モリブデン),N(ニッケル)
A(アルミ)
③主要合金量コード:材質毎に合金の含有量が決まっている
④炭素量:炭素量の中心値で35は、0.33~0.38%の炭素量
① ②
③
S 43 C
②炭素量:炭素量の中心値で43は、0.40~0.45%の炭素量
③C:カーボン(炭素)
一般構造用圧延鋼材
JIS G 3101
Steel for structure
JIS:建築・橋・船舶・車両及びその他の構造に用いられ、一般構造用
の熱間圧延鋼材
一番使用頻度の高い材料です。JISには4種類規定されています。
成分は、有害な元素であるリン・イオウを0.05%以下に規制されて
いる以外に規定はありません。数字は引張強さを表します。
炭素量は、0.2~0.25%で焼入れしても硬度は上がりませんが
炭素が少ないので溶接が可能です。
一般に熱処理をしないで使用します。
JIS記号
C
化 学 成 分 (%)
Mn
P
S
SS330
SS400
SS490
ー
ー
0.05以下
0.05以下
SS540
0.30以下
1.60以下
0.04以下
0.04以下
4
機械構造用炭素鋼
JIS G 4051
Carbon steels for machine structural use
JIS:熱間圧延,熱間鍛造など,熱間加工によって作られたもので,
通常,更に鍛造,切削などの加工及び熱処理を施して使用され
る機械構造用炭素鋼鋼材
一般構造用圧延鋼材より信頼性が高い、強度を必要とする軸・歯車
などや硬度が必要なもの熱処理して使用されます。
主要5元素の成分について規定があり、炭素量を違うものを規定
種類
化 学 成 分 (%)
C
S10C
0.08~0.13
S20C
0.18~0.23
S30C
0.28~0.33
S43C
0.40~0.45
S50C
0.48~0.53
Si
Mn
P
S
0.03以下
0.035以下
0.30~0.60
0.15~0.35
0.60~0.90
炭素量が0.3以上の炭素鋼は余熱なしに溶接すると焼き割れが出ます
機械構造用合金鋼
JIS G 4053
Low-alloyed steel for machine structural use
JIS:熱間圧延,熱間鍛造など,熱間加工によって作られたもので,
通常,更に鍛造,切削などの加工及び熱処理又は窒化処理を施
して使用される
JISには40種類規定されている。
マンガン鋼(SMn)、マンガンクロム鋼(MnC)、クロム鋼(SCr)、ニッケルクロム鋼
(SNC)、クロムモリブデン鋼(SCM)、 ニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM)
機械構造用炭素鋼では、質量の大きなものは焼きが入り難い
(質量効果という)ので、特殊合金を添加して熱処理性を改善
して耐摩耗・耐食・耐衝撃性等を持たせた強靭鋼です
5
工具鋼
JIS G 4401
Carbon tool steel
工具鋼は、工作機械の刃物ややすり、のこぎり、プレスに用いられる鋼
材で、耐摩耗性が要求されます。
耐摩耗性を優先するため炭素量が多く、JISでは11種類の規定があり
ます。
炭素%の高い鋼材はやすり等に、プレス等の衝撃がかかるものは低炭
素%のものが使用されます。
化 学 成 分 (%)
記号
C
SK140
1.3~1.5
SK105
1.0~1.1
SK85
0.8~0.9
SK65
0.6~0.7
Si
Mn
用途
P、S
やすり
0.1~0.35
0.1~0.5
0.3以下
たがね 刃物
刻印 のこ
ナイフ プレス型
合金工具鋼
JIS G 4404
Alloy tool steel
工具鋼にクロム・タングステン・バナジューム等の合金を添加して 耐熱・
靭性・焼入れ性を向上させた工具鋼です。
鋼材の種類は32種類で切削工具用、耐衝撃工具用、冷間金型用、熱間
金型用の4種類に分類されます。
記号
化 学 成 分 (%)
C
Cr
W
V
SKS11
1.2~1.3
0.2~0.5
3~4
0.1~0.3
SKS2
1.0~1.1
0.5~1.0
1~1.5
0.2以下
SKS4
0.45~0.55
0.5~1.0
0.5~1
0.5~1
SKS41
0.35~0.45
1.0~1.5
1~1.5
2.5~3.5
SK3
0.9~1.0
0.5~1.0
0.5~1
-
SKD1
1.9~2.2
11~13
ー
ー
SKD4
0.25~0.35
2.0~3.0
5~6
0.3~0.5
SKT3
0.5~0.6
0.9~1.2
Mo 0.3~0.5
用途
切削用
バイト
タップドリル
衝撃
工具
たがね
冷間
金型
ゲージ
熱間
金型
削岩機
プレス型
プレス型
鍛造型
6
高速度工具鋼
JIS G 4403
High speed tool steel
高速度工具鋼は、ハイスピードスチールを略してハイスと呼ばれます。
機械加工の切削速度の高速化に伴い開発された工具鋼です。
高速になると切削時の温度は200℃を超えるため合金工具鋼では、
焼き戻し温度を超えるため硬度が落ちます。高速度工具鋼の
焼入れ温度は1300℃以上で、焼き戻し温度は500℃以上で 行
行われるため高温まで硬度低下がありません。
高速度工具鋼の成分はタングステン・モリブデン・バナジューム・コ
バルト・クロムです。次の2種類に分類されます。
・タングステン系 ・・・ 硬さ・耐摩耗性に優れている
・モリブデン系 ・・・ 粘り強さ優れている
材料記号はSKH
超硬合金
Cemented Carbide
セラミックスであるWCを10%程度のCo焼結した材料を超硬合金と
いいます。
超硬工具は旋盤やフライス盤、マシニングセンターなどの工作機械
向けのチップやドリルなどとして使います。
炭化物の組合わせにより、WC-Co系、WC-TiC-Co系の合金があ
り、耐摩耗性に優れ、1000℃の高温でも硬度の低下が少ないそ
の硬度は成分の組成で異なる。Coの少ないと硬さは増すが脆く
て欠けやすくなり、Coが増すと欠けにくくなるが硬さは落ちる。
工具の研磨は、一般にダイヤモンドといしで行う。
7
浸炭鋼と窒化鋼
Wrought case-hardening steel JIS G 7503
浸炭鋼
浸炭は、低炭素鋼の表面に炭素を侵入させて表面のみ硬度を上げます。
JISでははだ焼き鋼といいます。
浸炭鋼は低炭素鋼で次の2種類があります。
・浸炭用炭素鋼:S09CK、S15CK、S20CK
・浸炭用合金鋼:SMn、SCr、SCM、SNCM
JIS G 7502
Wrought nitriding steel
窒化鋼
窒化は鋼の表面に窒素を浸透させ硬いFeN化合物を作ります。
層の深さは0.1~0.3と浅いが、硬度が1000Hvと硬く耐摩耗性に優れてい
ます。
またアルミニュームとクロムが窒素と化合してAlNやCrNの硬い化合物
をつくります。(SACM465)
ばね鋼
JIS G 4801
Spring steel
ばねは、ゴムのように荷重が掛かかると弾性変形し、荷重を取ると
元の状態に戻ります。
繰り返し荷重や衝撃・振動に耐えるためには、大きなねじり強さが
必要なため、高炭素鋼(0.5~0.9%)が使われます。
記号
SUP6
SUP7
SUP9
SUP9A
適
用
シリコンマンガン鋼
重ね板ばね、トーションバー
マンガンクロム鋼
SUP10
クロムバナジューム鋼
コイルばね、トーションバー
SUP11A
マンガンクロムボロン鋼
大型重ねばね、コイルばね
SUP12
シリコンクロム鋼
コイルばね
SUP13
クロムモリブデン鋼
大型重ねばね、コイルばね
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軸受鋼
JIS G 4805
High carbon chromium bearing steel
高速で繰り返し荷重を受けながら、耐摩耗性と疲労限を維持する
ため、高炭素鋼でベアリング材料として使用されます。
正式名称は、高炭素クロム軸受鋼です。
焼入れ性を高めるためクロムが添加されています。
組織は、微細なCr炭化物を球状化処理して強度を上げています。
焼き戻し温度は、150~180℃のため、ベアリングの焼きばめ温度
は120℃以上上げてはいけません
記号
C
Cr
Mo
SUJ2
1.3~1.6
-
SUJ3
0.9~1.2
-
SUJ4
0.95~1.10
SUJ5
ステンレス鋼
1.3~1.6
0.9~1.2
0.1~0.25
JIS G 4304
Stainless steel
ステンレスとは、ステイン(錆:Stain)がない(less)という意味で日
本語ではさびない鋼、不秀鋼といいます。
鉄にクロムを12%以上加えると金属の表面に薄い強固な酸化皮
膜ができて耐食性があがります。
フェライト、マルテンサイト、オーステナイト系の3種類があります。
・フェライト系:低炭素でフェライト組織で、硬さよりさびないことを求
める場合に使用されます。家庭器具や建築材料に用いる。
・マルテンサイト系:さびないことより硬さを求めるときに使用。
焼入れして使用するため、炭素が他のステンレスより多い
・オーステナイト系:耐食性に最も優れており、溶接性もよいため
化学装置、建築材料、自動車等に幅広く使用されている。
18-8ステンレス(Cr 18%、Ni 8%)が代表的です
オーステナイト系のステンレスは、非磁石です。
9
ステンレス鋼の成分
分類
化 学 成 分 (%)
記号
C
Ni
用
Cr
途
フェライト
系
SUS405
0.08以下
11~14
ライニング
SUS430
0.12以下
16~18
台所用品・建材
マルテン
サイ系
SUS403
0.15以下
11~13
ブレード
SUS420
0.16~0.25
12~14
刃物、軸受
オーステ
ナイト系
SUS304
0.08以下
7~10
17~19
一般、熱交換器
SUS316
0.08以下
10~14
16~18
熱交換気
耐熱鋼
JIS G 4312
Heat resisting steel
耐熱鋼は、高温での酸化防止と強度低下を防止する材料です。
高温で金属材料に荷重が掛かると、時間の経過と共に徐々に塑性
変形が発生し、破壊に至るクリープ現象を防ぐ必要があります。
400℃以上の高温域で使用できるように耐熱性を高めたものいい、
1000℃の高温まで耐えられる耐熱鋼もあります。自動車エンジン
のバルブなどに使用されています。
耐熱鋼は、オーステナイト系とフェライト系の2種類に分類されます。
分類
記号
化 学 成 分 (%)
C
Ni
Cr
オーステナイト系
SUH309
0.2以下
12~15
22~24
フェライト系
SUH21
0.1以下
0.6以下
17~21
成分は、ステンレスに近い
10
快削鋼
JIS G 4804
Free cutting steel
機械加工時、容易に加工できるように開発された鋼で、イオウ・リン・マン
ガン・鉛などの元素を添加してあります。
リン・イオウは、もろい性質があるので切りくずが脱落しやく、鉛は融点が
低いため切削時の発熱を対して軟化します。
切削後の表面の仕上がりは良好です。
快削鋼は、強度より加工性を優先しており、細長い棒などの加工が難しい
ものに使用されています。
JISでは13種類あり、マンガン、リン、イオウ、鉛の規定がある。
記号
SUM11
化 学 成 分 (%)
C
0.08~0.13
Mn
0.3~0.6
P
S
0.04以下
0.08~0.13
SUM21
0.13以下
0.7~1.0
0.07~0.12
0.16~0.23
SUM31L
0.14~0.20
1.0~1.3
0.04以下
0.08~0.13
ねずみ鋳鉄
Pb
ー
ー
0.1~0.35
JIS G 5501
Grey iron casting
鋳鉄は、炭素量が2.5~3.5%含まれており、鉄の中にすべてが溶
解せず、一部が黒鉛として存在しています。
普通鋳鉄は、ねずみ鋳鉄といい複雑な形状なものに使用
鋼に比較して、引張強さが弱く、衝撃に弱いが圧縮強さは大きい
黒鉛が、摩擦係数が小さくくまた潤滑の油溜りや役目をし、振動吸
収性があるので、フレームやベッドに使われます。
黒鉛は、三日月状に存在しているので片状黒鉛と言われます。
普通鋳鉄の種類は、FC100、FC150、FC200、FC250、FC300、 F
C350の6種類で数字は引張強さを表します
FC250 ねずみ鋳鉄
黒色が片状黒鉛
11
球状黒鉛鋳鉄
Spheroidal
JIS G 5502
graphite iron casting
普通鋳鉄の黒鉛が片状や不均一に分布している組織ですが、こ
の黒鉛を球状に丸みを帯びさせて、均一に分布させたのが球
状化黒鉛鋳鉄又はダクタイル鋳鉄です。
普通鋳鉄に比較して、黒鉛に切り欠けが無いので引張強さと伸び
が改善されている。
JISでは次の7種類が規定されている。
FCD350、FCD400、FCD450、FCD500、FCD600、FCD700、
FCD800
いずれも普通鋳鉄より引張強度が高い
FCD450 球状黒鉛
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