第33号 平成14年5月(隔月発行) 四日市市環境学習センター 四日市市本町9−8本町プラザ4階 ℡54−8430 里 山 の 嘆 き よっかいち環境クラブ 若林 修三 気だるくなるような春蝉の鳴き声が聞こえる昼下がり、裏山、それこそ近くの里山へ、バスケット にお菓子や飲み物を詰めて、子供たちとピクニックに出かける、そこはよく手入れされた赤松林、下 草は程よい高さのネザサ、その間からササユリやキンランが微笑みかけている。子供たちはマツの樹 の間や草原を駆け回ったりお菓子を食べたり、疲れると少しお昼寝をしたり。 そんな里山が昭和 20 年代には未だ身近に残っていた。ササは刈り取って肥料や燃料に、松は適当 に間引いて割り木にし、松落ち葉もかき集めて燃料にするのが、農家の冬の仕事であった。燃料と肥 料を供給してくれる{里山}は農家にとって大切な財産だから、その維持管理は注意深く配慮してい たがそれはまた大変な労力を必要とした。昭和30年代になると、家庭にはプロパンガス、農地には 化学肥料が入り込んだ。何れも手軽で便利、効果抜群とあって手間のかかる里山からの生産物は見捨 てられてしまった。そこへ急激な工業の発展は幾らでも働き手を求めたから里山の守りをする人手が なくなってしまった。何世代にもわたって自然と人との係わり合いによって維持されてきた里山はこ こに来て見捨てられたのである。 其れから約 50 年、守りをする者の居ない山は立ち枯れたり、朽ちて倒れた松の残骸が重なり合い 人の丈ほどに伸びたネザサが絡み合い足を踏み入れる事も出来ないか、或いはヒサカキが密生して林 床に草も生えない、荒れた林になっている。本来バランスのとれた自然の林は、高木・亜高木・低木・ 草本と大体 4 階建ての構成になって、お互いに光を分け合い共生するものであるが一度バランスが崩 れると、止めようも無く荒廃の道をたどる事になる、今その引き金のひとつになっているのは松くい虫 の被害である、マツノマダラカミキリによって拡がるマツノザイセンチュウによって枯れると言われ ているが、人里はなれた山の松は被害が少ない所を見ると、ザイセンチュウのほかに人為的な、たとえ ば排ガスなどの複合汚染なども影響しているのではないかとも考える。場所によってはほとんどの松 が枯れている所もある。またヒサカキなどが密生して、日照不足で林床に草本類のまったく生えない 林などは不健康な林と言わざるを得ない。 今年は例年に無く大きな山火事が多かった。林床に落ち葉が積もっていると火の走りが速く被害が 大きくなる恐れがあり、住宅にまで直接影響が出そうになり避難勧告が出されたりする。 身近な緑薫る「里山」は我々の生活に潤いと憩いの場を与えてくれる。私たちはこのことを忘れて いたのでは無いか、物と利便さを追い求めるのに忙しくて。 それでも、救いもある。今あちこちでささやかながら荒れた「里山」を再生しようと努力している 人たちがいる。この輪を広げて行きたい。一人ひとりの力は小さくても時間はかかるかも知れないが 大きなうねりになる事を期待している。 四日市市内の自然観察会のご案内 (日 時)6月9日(日)10時∼12時 (集 合)楠町中央緑地駐車場 (テーマ)河口と砂浜の植物・動物 地球市民であること 四日市市環境保全課 渡辺 將隆 今年は、新聞、テレビ等で黄砂に関する報道が多かったように思います。ちょっと悔しかったの で、記憶に残っているのか知れません。それは、3月下旬のことですが、夕方に雨が降り、なんと 紺色の車にベージュの斑模様が入ってしまいました。私は面倒くさがりなので、あまり洗車をしま せん。黄砂現象は珍しいことではありませんが、たまたま年末以来の洗車をした翌日のことだった ので、特にショックが大きかったのです。 黄砂は、中国黄土地方の細かな砂じんが風に吹き上げられて運ばれ、徐々に降下する現象ですが、 ここ3年間、観測日数が激増しており、特に今年は、これまで観測されていた西日本や日本海側以 外にも、北海道をはじめ北日本各地で黄砂が観測され、過去最高となったそうです。また、空のダ イヤに影響が出るなど市民生活に深刻な影響が出ていることが、マスコミで大きく取り上げられて いました。 こうした報道の中で、最近、「黄砂の大気汚染への影響」が取り挙げられるようになってきまし た。黄砂は炭酸カルシウムを多く含みアルカリ性であるため、飛行途中で二酸化硫黄や二酸化窒素 などの酸性雨の原因物質を吸着し、中和する効果があるといわれている一方で、吸着した酸性物質 により健康被害をもたらす可能性も指摘されています。このため、我が国では、同様に黄砂の影響 を受けている韓国と協力し、一昨年、黄砂対策として中国西部地方の生態系復元事業を進めること としましたが、これまでのところ大きな成果は上がっていないようです。 最近、中国の産業発展はめざましく、国際的な競争力を維持するため、中国へ進出する日本企業 も増えています。我々が便利で快適な生活を追求するため、中国の環境を悪化させているのだとす れば、また、黄砂によりその影響を受けているとしたら、考えものではないでしょうか。 この問題に限らず、今地球では、「地球温暖化」など、国境を越えて世界中に広がるようないわ ゆる「地球環境問題」が起こっています。これらの問題は、家庭での電気、ガス、水道や車の使用 など、豊かな生活を送ることによるエネルギーや資源の大量消費といった一人ひとりの何気ない毎 日の生活や、様々な事業活動に伴う環境負荷が大きな原因になっています。 この問題の解決のためには、市民・事業者・行政の全員が同じ地球上に住む一人の「地球市民」 としての自覚を持ち、地球環境に配慮した行動を自ら進んで実行することが大切です。普段の生活 や事業活動を見直し、それぞれが環境に与えている影響の大きさや能力に応じて役割を分担し、全 員で「地球にやさしい社会」へと変えていくことが必要となっているのではないでしょうか。
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