事業報告書 - 公益社団法人 日本交通政策研究会

平成 27 年度
事 業 報 告 書
公益社団法人
日本交通政策研究会
目
次
1.法人の概況 ·························································· 1
2.事業の概況 ·························································· 2
3.具体的な事業内容 ···················································· 4
3.1 研究プロジェクト ················································· 4
(1)共同研究 ························································ 4
(2)自主研究 ························································ 5
(3)受託事業 ························································ 6
3.2 シンポジウム、講演会等の開催 ····································· 6
(1)シンポジウム ···················································· 6
(2)講演会 ·························································· 8
(3)研究プロジェクト報告会 ·········································· 9
3.3 研究活動状況の公表 ·············································· 10
3.4 会議の開催 ······················································ 13
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告 ····························· 14
参考
公益目的事業と平成 27 年度研究プロジェクトの位置付け ··········· 46
1.法人の概況
設立年月日
平成 20 年 12 月 16 日
一般社団法人として成立
平成 22 年 2 月 1 日
公益社団法人認定
定款に定める目的
交通政策に関する諸問題について、学際的な観点から総合的に調査・研究を行い、各種
交通政策の発展に寄与することにより、安全で環境にやさしい持続可能な交通社会の実現
に貢献することを目的とする。
定款に定める事業内容
安全・快適・モビリティ向上に資する交通政策、環境・エネルギー政策並びに国土・地
域・都市政策と整合的な交通政策、人・物に関する交通事業政策、道路整備と財源政策な
どに関して、次の事業を行う。
(1) 会員が中心となった学際グループによる調査研究
(2) 調査研究の発表、討議のための研究会、公開シンポジウムなどの開催
(3) 国内外の交通政策データの収集・分析
(4) 研究等の成果、資料等の刊行及び配布
(5) 国・地方公共団体、学界、経済界及び一般社会への提言
(6) 若手研究者の育成
(7)その他当法人の目的を達成するために必要な事業
上記の事業については、全国都道府県において行うものとする。
□公益目的事業
交通政策及び道路交通に関わる諸問題に対し、正会員及び賛助会員から提案のテーマを
設定して調査・研究に取り組む。その成果はシンポジウムや講演会などを開催して公表す
るとともに報告書として刊行する。
□収益事業(相互扶助事業)
一般社団法人日本自動車工業会から「大気環境改善を目的とした交通流円滑化方策に関
する調査」を受託し、わが国における自動車・道路交通の環境と交通政策の現状、今後の
方向を検討するための資料・情報を提供することを目的に『自動車交通研究
環境と政策
2015』としてカラー版データベース(「日本の交通における最近の動向」「最近の調査研
究から」「交通の現状」「統計・資料」)を作成、ホームページ上に電子ジャーナル(自
動車交通研究 ISSN:2189-6968)として公表した。
-1-
会員の状況
正会員 92 名、賛助会員 18 団体(平成 28 年 3 月 31 日現在)
主たる事務所
東京都千代田区九段北一丁目12番6号
役員に関する事項
理事 13 名(内、代表理事 2 名、常務理事 2 名)、監事2名
職員に関する事項
職員数4名(常勤4名)
2.事業概況
事業の経過及びその成果
交通は国民の社会・経済活動を維持発展させてゆく基盤として重要な役割を担っており、
時代の要請に的確に対応できる交通政策を立案することが社会から強く求められている。
当研究会は交通政策について、社会科学・工学的観点から学際的な調査・研究を進め、
研究成果を広く社会に発信し政策提言することを目指している。
平成 27 年度は、わが国の交通政策課題などを踏まえて、地域・社会経済活性化と道路
交通政策、安全・安心、環境・エネルギーと道路交通政策、地域交通の確保と道路交通の
役割、道路整備と財源政策、自動車税制、自動車産業、自動車保険と交通政策、自動車の
技術革新と道路交通政策など幅広いテーマを取り上げて調査・研究を推進した。
当研究会は、これらの調査・研究の成果をシンポジウム・講演会・印刷物等を通じて適
宜公表し、行政はじめ関係機関等の交通政策立案や国民生活の利便性向上に寄与すべく活
動してきた。
資金調達の状況
正会員及び賛助会員からの会費収入による。内訳は以下の通りである。
正会員収入
賛助会費収入
合計
1,380,000 円
71,300,000 円
72,680,000 円
重要な契約の締結
業務名
発注者
契約金額
大気環境改善を目的とした交通流円滑化方策に関する調査
一般社団法人日本自動車工業会
3,190,000 円(別途消費税 255,200)
直前3事業年度の財産及び損益の状況
詳細は、平成 27 年度決算書類を参照のこと。
-2-
公益目的事業に充当するため取崩した特定資産の額は、以下の通りである。
年度 平成 24 年度
平成 25 年度 平成 26 年度
平成 27 年度
特定資産
道路経済研究特定資産
5,000,000
6,000,000
6,000,000
8,000,000
-
6,000,000
9,000,000
10,000,000
5,000,000
12,000,000
15,000,000
18,000,000
駐車政策及び交通政策研究特定資産
合計
社員総会、理事会等に関する事項
平成 27 年度定時社員総会
時・場所
平成 27 年 6 月 26 日
都市センターホテル オリオン
決議事項
1.平成 26 年度事業報告の承認
2.平成 26 年度決算報告の承認
3.役員報酬規程一部改正の承認
平成 27 年度第1回定例理事会
時・場所
平成 27 年 6 月 26 日
都市センターホテル オリオン
決議事項
1.平成 26 年度事業報告の承認
2.平成 26 年度決算報告の承認
平成 27 年度第 2 回定例理事会
時・場所
平成 27 年 12 月 1 日
都市センターホテル 706 号室
決議事項
1.正会員入会の承認
報告事項
1.平成 27 年度中間報告及び平成 27 年度予算執行状況
2.代表理事及び常務理事の職務執行
平成 27 年度第 3 回定例理事会
時・場所
平成 28 年 3 月 15 日
日本交通政策研究会会議室
決議事項
1.平成 28 年度研究プロジェクト選定の承認
2.平成 28 年度事業計画の承認
3.平成 28 年度収支予算の承認
対処すべき課題
当研究会の趣旨に賛同する賛助会員を増やすよう努めていく。
決算期後に生じた法人の状況に関する重要な事実
特になし
-3-
3.具体的な事業内容
平成 27 年度は、わが国の交通政策課題などを踏まえて、地域・社会経済活性化と道路
交通政策、安全・安心、環境・エネルギーと道路交通政策、地域交通の確保と道路交通の
役割、道路整備と財源政策、自動車税制、自動車産業、自動車保険と交通政策、自動車の
技術革新と道路交通政策など幅広いテーマを取り上げて調査・研究を推進した。
これらの調査・研究の成果は、シンポジウム・講演会、印刷物等を通じて公表し、関係
機関等の各種交通政策立案に反映し、国民生活の利便性向上に寄与すべく活動を推進した。
3.1 研究プロジェクト
研究プロジェクトは、賛助会員との協働による「共同研究」13 件、会員からの提案に
よる「自主研究」17 件、合計 30 件からなる。
研究プロジェクトのうち、道路経済・道路交通をテーマとする研究(共同研究(5) (7)、
自主研究 (8)(11))は、道路経済研究特定資産を充当(※表記)、駐車政策及び交通政
策をテーマとする研究(共同研究(9)(10)、自主研究 (10)(13))は、駐車政策及び交通政
策研究特定資産を充当(※※表記)している。
(1)共同研究
本年度は、以下の 13 件の研究を実施した。
1
自動運転と損害賠償責任
福田弥夫
日本大学教授
2
自動二輪車の交通事故分析とその活用
高田邦道
日本大学名誉教授
3
テレマティクス自動車保険の導入可能性と課題
堀田一吉
慶應義塾大学教授
4
交通需要の長期的変化と社会・経済環境
鹿島
茂
中央大学教授
5
低炭素型車両に着目した都市交通政策の有効性に
ついての研究※
秋山孝正
関西大学教授
6
気候変動に対する緩和と適応を考慮した中長期的な
都市と交通システムの整備方策に関する研究
室町泰徳
東京工業大学准教授
7
課金などによる大型車マネジメントに関する研究※
根本敏則
一橋大学教授
8
欧米を中心とした交通インフラの整備・維持管理・更
新の財源調達と組織形態に関わる研究
加藤一誠
慶應義塾大学教授
9
地方での都市集約化過程における人口と都市施設
分布の相互作用に関する研究※※
藤原章正
広島大学教授
井原健雄
香川大学名誉教授
田渕隆俊
東京大学教授
10 地方都市の交通政策と運輸行政のあり方※※
11
自動車交通の市場、地下鉄の運賃政策、都市集積の
経済、および地域経済の分析
-4-
12 LRT導入と沿線土地利用に関する研究
森本章倫
早稲田大学教授
13 地域交通の維持における住民参画の意義と課題
青木
東京経済大学教授
亮
※:道路経済研究特定資産(道路経済研究所寄附金)充当
※※:駐車政策及び交通政策研究特定資産(駐車場整備推進機構寄附金)充当
(2)自主研究
本年度は、17 件の研究を実施した。
1
交通事故対策の効果評価と今後の交通事故情勢に
関する研究
西田
2
企業 間(BtoB) 小口貨 物 輸送 需要 に対 応し た宅 配便
ネットワークの構築に関する研究
林
3
サプライチェーンの空間的分散化とレジリエンスに
関する研究
黒田達朗
4
社会的費用便益分析の研究―地方の社会環境維持と交通
庭田文近
インフラストラクチャー整備(基礎理論プロジェクト)
城西大学助教
5
動的交通シミュレーションを活用した自動車関連税
政策の分析
河野達仁
東北大学教授
6
旅行時間信頼性と利用者行動
福田大輔
東京工業大学准教授
7
交通ネットワーク分析を統合した SCGE モデルによるリニ
ア中央新幹線整備の便益評価 ―便益と実質 GDP 変化と 森杉壽芳
の関係の整理を中心に―
日本大学客員教授
8
道路を中心とした社会資本整備の経済分析※
井堀利宏
政策研究大学院大学教授
9
交通インフラストラクチャと地域経済に関する研究
文 世一
京都大学教授
10
地域・都市の総合交通政策-地域交通政策における
道路交通の意義について-※※
石田信博
松澤俊雄
同志社大学教授
大阪市立大学名誉教授
11
東京都市圏における物資流動のビックデータからみた
小早川悟
道路整備効果の分析※
12 理想の移動・空間・活動に関する研究
金
泰
克彦
利昭
交通事故総合分析センター
特別研究員兼研究第一課長
流通経済大学教授
名古屋大学教授
日本大学教授
茨城大学教授
13
ライフスタイルの変化にともなう新たな物流サービ
スに関する研究※※
岩尾詠一郎
専修大学教授
14
新興国の都市公共交通政策の動向に関する研究
中村文彦
横浜国立大学教授
15
地方の生活を支える物流と関連インフラの効率的供給に
寺田一薫
関する研究
東京海洋大学教授
16
交通まちづくり:「立地適正化計画」時代の都市交通計画
東京大学教授
17
少子高齢社会における子育てしやすいまちづくりに関する
大森宣暁
研究
原田
昇
※:道路経済研究特定資産(道路経済研究所寄附金)充当
※※:駐車政策及び交通政策研究特定資産(駐車場整備推進機構寄附金)充当
-5-
宇都宮大学教授
(3)受託事業
自動車業界から「大気環境改善を目的とした交通流円滑化方策に関する調査」を受託。
わが国における自動車・道路交通の環境と交通政策の現状、今後の方向を検討するための
資料・情報を提供することを目的に『自動車交通研究
環境と政策
2015』としてカラー
版データベース(「日本の交通における最近の動向」「最近の調査研究から」「交通の現
状」「統計・資料」)を作成し、電子ジャーナル(自動車交通研究 ISSN:2189-6968)と
して公表した。
「最近の調査研究から」は、主に当研究会の調査研究活動の一環となる平成 26 年度研
究プロジェクトの中から最新の交通政策として興味深いテーマを取り上げ、コンパクトに
まとめたものを収録した。
「最近の調査研究から」 (H26 研究プロジェクト)
主査
1
我が国におけるLRT導入時の課題に関する研究
森本章倫
2
車の保有と利用に関する多時点分析
兵藤哲朗
3
各国における大型車管理システム
根本敏則
4
我が国へのシャドートールの適用をめぐる課題の整理
加藤一誠
5
企業間取引構造を考慮した交通費用節約の企業生産性向上の定量分析:
東京都市圏を対象として
河野達仁
6
クリーンエネルギー車両の道路走行に関する影響分析
秋山孝正
7
ネット通販のラストマイルを考える
林
8
大規模災害時の救援物資輸送ための道路交通実態分析
小早川悟
9
深圳市の都市バス輸送にみられる技術改善動向に関する研究
中村文彦
克彦
3.2 シンポジウム、講演会等の開催
(1)シンポジウム
岡野行秀先生追悼シンポジウム:日本の交通政策を振り返る:政策志向経済学研究者の視点から
日
時
平成 27 年 9 月 25 日
14:00~17:00
場
所
都市センターホテル(日本都市センター会館内)706 号室
内
容
日交研双書出版にあたって
杉山
雅洋氏(早稲田大学名誉教授)
報告 1 総合交通体系
太田
和博氏(専修大学教授)
報告 2 国鉄改革
手塚広一郎氏(日本大学教授)
報告 3 道路公団改革・道路特定財源
味水
佑毅氏(高崎経済大学准教授)
報告 4 規制緩和政策
中条
潮氏(慶應義塾大学教授)
パネルディスカッション:日本の交通政策:戦後の経験から何を学ぶか?
-6-
コーディネータ
山内弘隆氏(一橋大学教授)
パネリスト
奥野
正寛氏(武蔵野大学教授)
杉山
雅洋氏(前出)
太田
和博氏(前出)
手塚広一郎氏(前出)
概
要
味水
佑毅氏(前出)
中条
潮氏(前出)
交通政策の議論に長年に亘り貢献された岡野行秀先生(平成 26 年 5 月逝去)
から若い世代の政策志向経済研究者に託されたメッセージとして、日本交通政
策研究会研究双書 28『日本の交通政策』を刊行した(平成 27 年 5 月)。岡野
行秀先生の戦後の交通政策に関する議論・考え方について紹介するとともに、
若手の政策志向経済学研究者を交え、将来の交通政策のあるべき姿、今後の政
策について議論した。
参加者
83 名
宅急便シンポジウム:優れたサービスと持続可能性を両立させる宅配便革新
日
時
平成 28 年 3 月 18 日
場
所
都市センターホテル(日本都市センター会館内)606 号室
内
容
本テーマの趣旨
問題提起 1
14:00~17:10
根本 敏則氏(当研究会常務理事)
宅配便研究の目的と意義
根本 敏則氏(一橋大学大学院商学研究科)
問題提起 2
急成長するネット通販と宅配便の物流革新
林
問題提起 3
克彦氏(流通経済大学流通情報学部)
アメリカにおけるネット通販と宅配便
齊藤 実氏(神奈川大学経済学部)
問題提起 4
ヤマトホールディングスの取組
佐々木啓介氏(ヤマトホールディングス㈱経営戦略担当)
問題提起 5
宅配便ネットワークの分析
宮武宏輔氏(一橋大学商学研究科)
パネルディスカッション:優れたサービスと持続可能性を両立させる宅配便革新
コーディネータ
根本 敏則氏(前出)
パネリスト
林
克彦氏(前出)
佐々木啓介氏(前出)
概
要
齊藤
実氏(前出)
宮武
宏輔氏(前出)
優れたサービスと持続可能性を両立させる宅配便革新をテーマとして、ネット
通販と宅配便に関する日本とアメリカの動向、現在進行中の「バリュー・ネッ
-7-
トワーキング」構想の実際、交通ネットワークの視点からの評価等、様々な立
場から問題を提起した後、パネルディスカッションでは、今後のネット通販、
ネット通販のロジ、ロジ・イノベーションという3つのテーマで議論を深めた。
参加者
32 名
(2)講演会
□記念講演会
日
時
平成 27 年 6 月 26 日
16:00~17:30
場
所
都市センターホテル(日本都市センター会館内)オリオン
テーマ
交通の時間価値:古くて新しいトピック
講
師
加藤
概
要
時間価値は,事業評価や需要予測などの交通プロジェクトの実務において重要
浩徳氏(東京大学大学院工学系研究科
教授)
な役割を果たす基本的な数値であり、かつ交通研究における中心的な概念の一
つでもある。ところが、時間価値は一見するとわかりやすい概念であるにも
かわらずその内容について丁寧に解説したものが少なかったため一般市民の
間でしばしば誤解がみられる。また計算機能力、データ収集方法、分析技法等
の発展に伴い、時間価値の推定方法も次第に精緻化され、より正確に、より
詳細に時間価値の特性が分析されてきている。ところが未だに交通の時間
価値については、理論的にも実証的にもさまざまな課題が残されている。そこ
で、まず交通の時間価値の概念を平易な形で説明し、次に内外の事例を踏まえ
その特性を解説し、その上で最近の交通の時間価値に関する課題が紹
介された。
参加者
72 名
□講演会
日
時
平成 27 年 10 月 26 日
14:00~16:00
場
所
都市センターホテル(日本都市センター会館内)706 号室
テーマ
広域都市圏計画の必要性―米国の事例を参考にして―
講
黒田達朗氏(名古屋大学環境学研究科経済環境論講座教授
師
兼情報文化学部環境法経システム系教授)
概
要
わが国でも、日常生活や経済活動の広域化を踏まえて、道州制や府県とその中
心市の行政統合の必要性が主張されて久しいが、実際の制度改革は必ずしも
進んでいない。米国における鉄道や港湾に関する行政区域を越えた事業組織に
ついては従来から良く知られているが、交通に限らず、広域の都市計画やエネ
ルギー等の調達を行う官・民の計画調整機関が活発に活動し、実際の都市・地
域行政に貢献していることは、わが国では必ずしも知られていない。そこで、
米国における代表的な計画機関の活動を取り上げ、都市計画家と住民との対
-8-
立・紛争の歴史が、ジェーン・ジェイコブズのような都市に関する稀代の思想
家を生み出しただけでなく、米国の計画機関が徹底した住民参加を制度化する
契機となった歴史などを紹介することにより、人口減少や高齢化が進むわが国
においても直近の制度改革の参考となることを示した。
参加者
30 名
日
時
平成 28 年 3 月 1 日
場
所
都市センターホテル(日本都市センター会館内)701 号室
テーマ
アジア諸都市の都市計画制度と公共交通志向型開発(TOD)
講
師
城所
概
要
アジア諸都市は急激な都市発展が進む一方、深刻な交通混雑等の問題が発生し、
14:00~16:00
哲夫氏(東京大学大学院工学系研究科准教授)
その結果、都市部では公共交通志向型開発(TOD)への関心が高まっている。
アジア諸都市の都市計画制度や市街化調整の程度の違いによって多様な TOD
計画が検討されている。特に駅周辺の TOD をどのように考えるか、その決め手
となるのが PPP であり、官民協働での計画がいくつか進められている。アジアの都
市形成プロセスにおいて生活インフラが自然発生的に整備されており(全体の
約3割)、生活・歩・車が融合した街づくりとして Natural Born(自然発生的)
TOD の保全が重要となることを示した。
参加者
30 名
(3)研究プロジェクト報告会
平成 26 年度研究プロジェクトの成果報告会を平成 27 年 5 月 16 日と 5 月 30 日の両日に
分け次のとおり開催した。
□第1回報告会(15 プロジェクト)
時・場所
平成 27 年 5 月 16 日
日本交通政策研究会大会議室
参 加 者 34 名
主査名
プロジェクト名
福田大輔
自主 旅行時間信頼性の経済評価方法の検討
兵藤哲朗
自主 自動車の保有と利用に関する多時点統計分析
森杉壽芳
自主 動学 SCGE モデルによる道路整備の経済効果と便益の算定
サプライチェーン・マネジメントから見た物流施設の立地場所と道路交通
岩尾詠一郎
自主
ネットワークの相互関係に関する研究
原田 昇
自主 交通まちづくり:土地利用・交通施策の実践における多様な連携と役割分担
交通経済学に着目した都市集積の経済、自動車市場、および地域間人口移動の
田渕隆俊
共同
政策分析
文 世一
自主 輸送費の構造と経済活動の立地に関する理論的および実証的研究
企業間取引構造を考慮した交通費用節約の企業生産性向上の定量的分析:
河野達仁
自主
大都市圏における上場企業を対象として
加藤一誠
共同 欧米を中心とした交通インフラの整備と財源調達に関わる研究
維持管理・人口減少時代における道路ネットワークのサービス水準に
太田和博
自主
関する研究
-9-
谷下雅義
小早川悟
秋山孝正
金 利昭
庭田文近
共同
自主
共同
自主
自主
災害復興における土地利用と交通
道路交通基盤の整備状況を考慮した災害時応援協定の締結に関する研究
道路交通のスマート化に着目した統合的都市交通政策についての研究
理想の移動に関する研究
道路整備事業評価における環境影響の研究(基礎理論プロジェクト)
□第 2 回報告会(15 プロジェクト)
時・場所
参 加 者
主査名
堀田一吉
藤原章正
高田邦道
室町泰徳
林 克彦
根本敏則
西田 泰
鹿島 茂
井原健雄
青木 亮
森本章倫
石田信博
松澤俊雄
中村文彦
黒田達朗
大森宣暁
平成 27 年 5 月 30 日
日本交通政策研究会大会議室
33 名
共同
共同
共同
共同
自主
共同
共同
共同
共同
共同
自主
プロジェクト名
テレマティクス自動車保険の現状課題と将来展望
発展段階の異なるニュータウンにおける交通シェアリングの実現可能性
道路空間の有効活用法に関する研究
交通システムに対する気候変動の長期的影響評価とその対策に関する研究
通信販売事業者の宅配ネットワーク構築に関する研究
大型車対距離課金に関する研究
職業運転者の交通事故対策のあり方
今後の交通安全対策への活用を意図した交通事故費用推計のあり方の検討
地方都市の交通政策と運輸行政のあり方
地域交通の維持、活性化に向けたモード間連携の在り方
我が国におけるLRT導入時の課題に関する研究
自主
地域・都市の総合交通政策-道路交通政策と公共交通システムの改善-
共同
現代アジアの都市交通政策に関する研究
自主
自主
空間的リスクとサプライチェーンを考慮した交通幹線の復旧策に関する研究
子育て世帯の生活の質向上に資する都市・交通施策に関する研究
3.3 研究活動状況の公表
ホームページを活用し、会員をはじめ広く社会に本研究会の活動紹介、調査・研究成果など
の公表、講演会・シンポジウム等の配布資料掲載等の情報提供に努めた。本年度は、『自動車
交通研究 環境と政策 2015』(「日本の交通における最近の動向」「最近の調査研究から」
「交通の現状」「統計・資料」)の電子ジャーナル化(自動車交通研究 ISSN:2189-6968)に
加えて、英文版の電子ジャーナル TRANSPORT POLICY IN PERSPECTIVE(ISSN:2189-6976)を作
成・公表し、それぞれ J-STAGE 注1の登載誌として採択された。
注1:学術機関が発行する学術資料等の電子化を支援し、電子化された科学技術刊行物の国内及び国際的
流通を促進、オープンアクセスを推進する電子ジャーナルプラットフォーム(情報発信・流通基盤)。
J-STGAE はジャパンリンクセンターと連携して登載された記録を DOI(デジタルオブジェクト識別子)の
組み立てルールに則り DOI を自動的に登録、 国際発信・流通促進強化のため海外からのアクセス機会
の拡大を図るとのこと。
さらに、研究プロジェクトの中から一定の成果が得られたものを「日交研研究双書」として発刊し
ており、平成 27 年度は『限界費用価格形成原理の研究Ⅱ』(大石泰彦・臼井功・關哲雄・庭田文近
編)刊行した。さらに、本研究会の調査・研究成果の平成 27 年度日交研シリーズを DVD で出版した。
-10-
(1)平成 27 年度日交研 A シリーズ<調査研究>
A-656 (旅行時間信頼性と利用者行動プロジェクト) 旅行時間信頼性と利用者行動
A-657 (道路を中心とした社会資本整備の経済分析プロジェクト) 道路を中心とした社会資本整備の経済分析
A-658 (交通インフラストラクチャと地域経済に関する研究プロジェクト) シャドードールを用いた国際交通
インフラ整備のメカニズム
A-659 (地方都市の交通政策と運輸行政のあり方プロジェクト) 地方都市の交通政策と運輸行政のあり方
A-660 (社会的費用便益分析の研究―地方の社会環境維持と交通インフラストラクチャー整備(基礎理論研究プロジ
ェクト))
社会的費用便益分析の研究―地方の社会環境維持と交通インフラストラクチャー整備
A-661 (低炭素型車両に着目した都市交通政策の有効性についての研究プロジェクト) 低炭素型車両に着目した
都市交通政策の有効性についての研究
A-662 (自動車交通の市場、地下鉄の運賃政策、都市集積の経済、および地域経済の分析プロジェクト) 自動車交通の
市場、地下鉄の運賃政策、都市集積の経済、および地域経済の分析
A-663 (地方での都市集約化過程における人口と都市施設分布の相互作用に関する研究プロジェクト) 地方
での都市集約化過程における人口と都市施設分布の相互作用に関する研究
A-664 (動的交通シミュレーションを活用した自動車関連税政策の分析プロジェクト) 動的交通シミュレーション
を活用した自動車関連税政策の分析
<刊行予定>
(自動運転と損害賠償責任プロジェクト)
自動運転と損害賠償責任
(自動二輪車の交通事故分析とその活用討プロジェクト)
自動二輪車の交通事故分析とその活用
(テレマティクス自動車保険の導入可能性と課題プロジェクト)
(交通需要の長期的変化と社会・経済環境プロジェクト)
テレマティクス自動車保険の導入可能性と課題
交通需要の長期的変化と社会・経済環境
(気候変動に対する緩和と適応を考慮した中長期的な都市と交通システムの整備方策に関する研究プロジェクト)
気候変動に
対する緩和と適応を考慮した中長期的な都市と交通システムの整備方策に関する研究
(課金などによる大型車マネジメントに関する研究プロジェクト)
課金などによる大型車マネジメントに
関する研究
(欧米を中心とした交通インフラの整備・維持管理・更新の財源調達と組織形態に関わる研究プロジェクト)
道欧米を中心と
した交通インフラの整備・維持管理・更新の財源調達と組織形態に関わる研究
(LRT導入と沿線土地利用に関する研究プロジェクト)
LRT導入と沿線土地利用に関する研究
(地域交通の維持における住民参画の意義と課題プロジェクト)
地域交通の維持における住民参画の意義と課題
(企業間(B toB)小口貨物輸送需要に対応した宅配便ネットワークの構築に関する研究プロジェクト)
企業間(B to B)
小口貨物輸送需要に対応した宅配便ネットワークの構築に関する研究
(サプライチェーンの空間的分散化とレジリエンスに関する研究)
サプライチェーンの空間的分散化と
レジリエンスに関する研究
(交通ネットワーク分析を統合したSCGEモデルによるリニア中央新幹線整備の便益評価プロジェクト)
交通ネットワー
ク分析を統合した SCGE モデルによるリニア中央新幹線整備の便益評価―便益と実質 GDP 変
化との関係の整理を中心に―
-11-
(都市圏総合交通政策プロジェクト-地域交通政策における道路交通の意義について-)
地域・都市の総合交通
政策の研究-地域交通政策における道路交通の意義について-
(東京都市圏における物資流動のビックデータからみた道路整備効果の分析プロジェクト)
東京都市圏における物資
流動のビックデータからみた道路整備効果の分析
(理想の移動・空間・活動に関する研究プロジェクト)
理想の移動・空間・活動に関する研究
(ライフスタイルの変化にともなう新たな物流サービスに関する研究プロジェクト)
ライフスタイルの変化に
ともなう新たな物流サービスに関する研究
(新興国の都市公共交通政策の動向に関する研究プロジェクト)
新興国の都市公共交通政策の動向に関する研究
(地方の生活を支える物流と関連インフラの効率的供給に関する研究プロジェクト)
地方の生活を支える物流と
関連インフラの効率的供給に関する研究
(交通まちづくりプロジェクト:「立地適正化計画」時代の都市交通計画) 交通まちづくり:「立地適正化計画」時代
の都市交通計画
(子育て世帯の生活の質向上に資する都市・交通施策に関する研究プロジェクト)
子育て世帯の生活の質向上に
資する都市・交通施策に関する研究
(2)平成 27 年度日交研 B シリーズ<講演会・シンポジウム>
B-169(加藤浩德) 記念講演会:交通の時間価値:古くて新しいトピック
B-170(杉山雅洋他) 岡野行秀先生追悼シンポジウム:日本の交通政策を振り返る-政策志向経済学研究者
の視点から
B-171(黒田達朗) 広域都市圏計画の必要性~アメリカの事例を参考にして
(城所哲夫)アジア諸都市の都市計画制度と公共交通志向型開発(TOD)
(林克彦・根本敏則他)優れたサービスと持続可能性を両立させる宅配便革新
(3)日交研研究叢書
『限界費用価格形成原理の研究Ⅱ』(大石泰彦・臼井功・關哲雄・庭田文近編(日本交通
政策研究会研究叢書 30)
(4)平成 27 年度日交研シリーズ DVD 版
日交研シリーズの電子ファイル化に向けた取り組みの第一段階として、本研究会の調査・
研究成果である平成 27 年度日交研シリーズ他、H21~H26 年度に刊行した日交研シリーズ
を収録した DVD 版(一般販売 定価 2,000 円)を制作した。
3.4 会議の開催
賛助会員との懇談会
時・場所
平成 27 年 12 月 1 日
内
平成 27 年中間報告及び平成 27 年度予算執行状況、②藤原章正正会員による
容
都市センターホテル 706 号室
研究報告「発展段階の異なるニュータウンにおける交通シェアリングの実現
-12-
可能性」、③意見交換
賛助会員評議会
時・場所
平成 28 年 3 月 11 日
内
①平成 27 年度事業の概況及び平成 28 年度事業計画案の概要、②平成 27 年
容
都市センターホテル 703 号室
度収支決算見込み 及び平成 28 年度事業予算案の概要、③意見交換
プロジェクトリーダー会
時・場所
平成 27 年 11 月 26 日
内
各プロジェクトの進捗状況、他
容
日本交通政策研究会大会議室
広報委員会
時・場所
平成 27 年 6 月 26 日
内
「自動車交通研究」電子ジャーナル版、J-STAGE 利用申込等
容
都市センターホテル
-13-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 1
主査名
福田弥夫 ・ 日本大学法学部 教授
研究テーマ
自動運転と損害賠償責任
研究の目的:
自動運転への動きが加速する中で、不可避的に発生する交通事故の損害賠償責任の帰属はどうなるのか。現行
の自動車損害賠償保障法の枠組みの中で、損害賠償責任の帰属主体をどう考えるのか、既存の枠組みでは対応し
きれないとするならば、自動運転の下で発生する事故の責任はだれに帰属するべきなのか、そしてその賠償責任を
補う保険制度の仕組みや自動車損害賠償保障法の改正の方向性を探るのが本研究の目的である。
研究の経過(4 月~3 月)
:
これまで 3 回の研究会を開催して、外部の専門家から自動運転に関する現状などを話してもらった。東大の大口
教授からは自動運転に関連する大きな枠組みについての説明を中心に受け、各国の自動運転に関する動向なども
併せて聞くことができた。国土交通省の谷口技官からは、自動運転に伴う現在の技術的レベルなどを中心に説明を
受け、国内の各メーカーなどの進捗状況や国としての対応状況などについての説明を受けた。景山教授からはこれ
までの歴史的な経緯やレベル 3 およびレベル4の詳細な説明を受け、単純にレベル 2 から 3 へそしてレベル 3 から
レベル 4 へとステップを踏んで移行することの問題点を中心に話を伺うことができた。なお、研究会においては、それ
ぞれの視点からメンバーが質疑を行い、自動車損害賠償保障法上の問題点や、製造物責任などの視点から意見交
換を行うことができ、今後の研究の方向性がある程度示された。なお、研究会は 3 回の開催であるが、そのほかにプ
ロジェクトリーダーが収集した外国における自動運転、とくにアメリカにおける自動運転に関する法制度や規制などに
関連する資料の翻訳なども進めている。
研究の成果(自己評価含む):
今年度の研究では、自動運転と損害賠償責任に関する基本的な視座の共有ができた。とくに、レベル 3 からレベ
ル 4 への移行は、現実問題としてかなり克服すべき課題が多いことや、人間工学的な面からも単純にレベル 2 からレ
ベル 3 へ移行することは大変危険であり、むしろレベル 2 からレベル 4 へと移行することが望ましいのではないかと思
われる。理系の研究者からの視点と社会科学系の研究者の視点の間には、興味深い違いが存在しており、自動運
転と損害賠償責任の研究には、両者の視点が不可欠であることが明らかになった。研究会が三回しか開催できず、
また当初計画していた宿泊を伴う研究会が実施できなかった点は反省すべきところである。全体としておおむね
80%の達成であると思われる。
今後の課題:
現実的にはすでにレベル 2 の段階まで到達している自動運転であるが、レベル 3 への移行には簡単には克服で
きない大きな課題があることが判明している。むしろレベル 4 へどのように移行すべきか、レベル 4 における損害賠償
責任を中心に研究を進める必要がある。
-14-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 2
主査名
高田邦道 ・ 日本大学 名誉教授
研究テーマ
自動二輪車の交通事故分析とその活用
研究の目的:
本研究は、自動二輪車の交通事故を分析し、その結果からこれまで実施されてきた自動二輪車関連の交通管理
手法と平成 24~26 年度の研究で提案してきた自動二輪車のバスレーン走行に関する手法について吟味し、より説
得性の高い安全な自動二輪車の走行空間確保と道路・交通管理技術の方法論を提案することを研究目的とする。
自動二輪車は、わが国の主要な産業で、世界をリードしてきた。自動車と変わらない交通機能を持ち、そのうえ燃
費もよく環境対応型ののりものであり、自動車に比べて走行空間面積も小さく渋滞緩和に貢献していることは言うまで
もない。しかし、近年超小型車や電動アシスト自転車の出現、あるいは自転車奨励の政策によって、自動二輪車は
その地位が脅かされると同時に、道路・交通管理技術の制約も自動二輪車の中の車種により異なり、加えてわれわ
れの研究成果による提案も「安全性」の確認がないことで反故にされてきた。プライバシーの問題や裁判の問題を理
由に、交通事故データは、外部者が自由に取り扱えないので、本来は外部からの交通管理手法などの提案に対し、
当局が交通事故解析をし、その採択を考えるべきものと考えられるが、致命的な問題が発生しないかぎり、提案は先
送りされてきているのが現状である。そこで、本研究は、一般社団法人自動車工業会二輪車部会からの要請もあっ
て、手に入る範囲の交通事故統計データの下で分析を試みたものである。
研究の経過:
鎌ヶ谷市における原動機付自転車・普通自動二輪車・大型自動二輪車別の交通事故発生地点分析、自動二輪
車事故に関する傾向分析<7月>、鎌ヶ谷市における原動機付自転車・普通自動二輪車・大型自動二輪車別の交
差点・単路部別、道路種別、道路幅員別、土地利用別、学校区別などによる分析、自動二輪車事故に関する要因
分析<9月>、自動二輪車事故に関する傾向分析・要因分析・バスレーンにおける事故特性分析<12 月>、鎌ヶ谷
市の交通事故データと交通事故総合分析センターの交通事故データの前回以前の議論に基づく分析結果につい
て検討し、自動二輪車のバスレーン走行の安全性に関する議論をした。
研究の成果(自己評価含む):
外部からの交通事故データ分析で効果を示すのは難しく、本来は外部からの政策提言に対し、行政当局が外部
に持ち出せないデータを分析し、実行できるかどうかを判断すべきと考える。当研究チームは、自動二輪車(以下、
二輪車)のバスレーン走行についての提案を、当局に説明してきた。しかし、事故の増加は大丈夫かとバスの走行本
数が激減しているにもかかわらず、バスレーン改善の動きが見られず、一方二輪車のユーザーに安全利用の改善を
提供したい自工会もこの課題への早期解決を望んでおり、このプロジェクトは、次のような方法で本テーマに取り組ん
だ。第一は、PL が過去に構築した『交通事故半減プロジェクト』の実施事例である鎌ヶ谷市の交通事故データから二
輪車の事故を抽出して分析する。第二は、公益財団法人交通事故総合分析センターで、一般に公表できる範囲の
交通事故データでバスレーン設置区間のバスと二輪車の交通事故データ分析である。その主な結果は、次のとおり
である。
1) 鎌ヶ谷市の交通事故データから
・二輪車の人身事故は、年平均 96.3 件、全事故の 18.3%を占める。原付事故は自動二輪車の 58%ある。このう
-15-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
ち、自動二輪車の重傷事故は、全重傷事故の 27%、そのうち、原付事故は 6 割。
・二輪車は、対自転車、歩行者においては第1当事者として、対自動車では第 2 当事者として事故に関与してお
り、各々の事故では異なる特性を持っている。
・二輪車の事故形態は、第 1 当事者事故では、出合い頭、横断中の形態が多く、原付事故では、さらに右折時、正
面衝突も多い。自動車の事故形態と傾向が似通っている。
・二輪車の事故形態は、第 2 当事者事故では、原付、自動 2 輪いずれも出合い頭、右折時、左折時が多い。自転
車が第 2 当事者の事故形態と傾向が同じである。
・二輪車事故の事故発生箇所は交差点が 65%を占める。二輪車が第 1 当事者の事故では街路での事故発生割
合が増加、第 2 当事者の事故では、交差点での事故発生割合が増加する傾向にある。
2)交通事故総合分析センターの交通事故データから
・二輪車が関係した人身交通事故は、2010~2014 年の 5 年間で約 55 万件、全事故の 16.5%。
・二輪車と路線バスの事故は、5 年間で約 700 件、死亡事故 0.09%、人身事故 0.02%。この事故は上位 5 都府県
の大都市圏に 56%集中。
・バスレーン設置区間を含む広幅員道路の二輪車事故をバスレーン規制方式が異なる都道府県別にみると、規
制方式により、車両の衝突部位の分布や事故発生傾向に差があることが分かった。
今後の課題:
交通管理は、道路管理と一体でなければ安全かつ安心な道路交通管理を運用することが難しい。しかし、わが国
では、警察庁と国土交通省に分かれており、調整協議をするものの焦点と重点の置きどころが異なるために既存の
運用システムの見直しや新しい両者の統合的な施策を導入する場合には非常なネックとなる。加えてバス問題は、
運輸管理やバス運転者の労務管理にまで踏み込まなければならず、この研究の出発点である「自動二輪車のバスレ
ーン走行の可能性を探る」類のテーマは、方法論の比較検討に当局の判断を必要とする場合には困難を極めること
になる。したがって、2012~2014 年度の研究成果を当局が交通事故分析を行い、運輸管理部門を説得することが好
ましい。しかし、当局はこのような科学的な分析をこれまでしてこなかったので、その要請にこたえるべき研究をした
が、十分なデータを出していただけるわけでなく、手持ちのデータと西田委員の使える範囲の交通事故総合分析セ
ンターデータで分析した成果で、必ずしも十分な成果を得たわけではない。したがって、ビッグデータ分析や解析シ
ステムの技術的進歩が認められる中で、どう管理者同志がことに対応していけばよいか、研究レベルの問題の実践
化にどう対応していけばよいか、自動運転車や超小型モビリティなど新たな道路利用者を日本の道路でどう受け入
れていけばよいかなどの手つかずの喫緊の課題が本研究でさらに明確になった。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 3
主査名
堀田一吉 ・ 慶應義塾大学商学部 教授
研究テーマ
テレマティクス自動車保険の導入可能性と課題
研究の目的:
昨年度からの研究プロジェクトにおいて、テレマティクスの諸問題、特に、リスク評価をめぐる問題はかなり大
きいことを確認したが、それ以外にも、経営戦略的にも課題は多い。さらに、この保険がもたらす功罪につい
て、国民的理解が必ずしもなされていないことも問題と言える。わが国にテレマティクス自動車保険が導入され
るとした場合に考慮するべき課題を検討する。
研究の経過(4 月~3 月)
:
テレマティクス自動車保険は、わが国保険業界の最大の関心テーマの一つとなってきた。それらの英米で先
導的に普及しつつあるテレマティクス自動車保険であるが、日本でも、最近、導入の動きが目立ってきた。昨年
に続いて、諸外国の事例の資料収集、比較分析を行ったところ、このビジネスモデルが、果たして定着できるの
かどうかについて、理論的、技術的、法律的側面から、いくつかの問題点が整理されてきた。先行しているイギ
リスやドイツの規制当局は、むしろ慎重な姿勢であることが印象的であった。
わが国の状況は、欧米諸国の状況に触発される形で、テレマティクス自動車保険を導入し、消費者の反応を
うかがうという初期段階にあるといえるだろう。毎回、研究会において賛否両論から激しい議論が展開された。テ
レマティクス自動車保険の最大の問題は、データを保険料率(=リスク)に反映させるためのロジック(科学的根
拠)は未だ不明瞭な点が多いことである。少なくとも、わが国における現在の状況は、将来の可能性を見据えた
経営戦略的な取り組みという段階であると受け止めざるを得ない。
今後、ビッグデータ技術が大きく発展すれば、テレマティクス自動車保険を本格導入が図られるかもしれない
が、テレマティクス自動車保険市場の安定化を図る上では、運営コストなどの実務上の問題だけでなく、プライ
バシー問題など法律上の整備、さらには契約者(国民)の合意が不可欠である。
研究の成果(自己評価含む):
わが国において、テレマティクス自動車保険を大きく普及させるためには、その問題点を含めて、消費者に
理解を促す取り組みが必要である。多くの課題があることが明確に示された。理論面、技術面、経営面、法律
面、社会政策面など、まだまた議論すべき課題が存在しているという印象を強くした。その意味で、本研究の位
置づけは重要であったと思われる。
今後の課題:
テレマティクス自動車保険をはじめとして、ビッグデータの活用により、保険業は、他の産業との連携を含め
た新たなビジネスモデルが生み出される可能性がある。このことは、保険業の将来を大きく変貌させる可能性を
秘めている。そうした観点から、ビッグデータ時代における保険業の展望にも研究の領域を広げていきたいと考
えている。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 4
主査名
鹿島 茂 ・ 中央大学理工学部 教授
研究テーマ
交通需要の長期的変化と社会・経済環境
研究の目的:
本研究の目的は、総合的な交通計画作成時に行われた交通調査結果及び需要予測手法について、事後的に分
析を行い、交通需要の変化を適切に表現するために必要とされる調査データと予測手法の条件について明らかに
することである。
研究の経過(4 月~3 月)
:
本年は5回(7 月、9 月、11 月、2 月、3 月)研究会を開催した。最初の 2 回の研究会では、研究会のメンバーが、
研究テーマである社会・経済環境の変化と交通需要の長期的変化に関してのそれぞれの問題意識を自由に発言し
てもらい、問題意識の相互理解を進めた。第 3 回の研究会では、韓国 KOTI で開かれた高齢化社会における公共交
通の役割に関するセミナーの内容を報告し意見交換を行った。第 4 回の研究会では、全国総合交通体系作成に用
いられた需要予測モデルについての事後分析結果を報告し、予測値と実現値の乖離の原因と予測手法の改善方
法について意見交換を行った。第 5 回の研究会では、PT 調査の中で予測モデルとして作成された発生・集中モデ
ルと分布モデルについてのメタ分析結果を報告し、分析結果と社会・経済環境との関連について検討した。
研究の成果(自己評価含む):
PT 調査結果を用いての分析からは、発生・集中モデルについては、目的別に見ると人口、就業者数といったよく
用いられる説明変数の係数は地域や年代等に依らず安定した値を有することが明らかになった。分布モデル(グラビ
チィーモデル)の距離の係数については、いくつかの都市圏で特異の値を示し、全都市のデータを用いた分析では
明確な傾向が見いだせなかったが、特異な都市圏のデータを分析対象から外すと、研究開始時に想定していた目
的に依らず距離の係数が年代とともに小さくなる(人々の行動の範囲が広がっていると考えられる)傾向が見られた。
高齢化社会に対する検討では、まず韓国と日本の比較を交通計画の作成制度の比較から行うことが必要との認識
に至り、本年度は両国の交通計画作成制度についての比較を行った。
今後の課題:
3 つのテーマについてそれぞれ以下の課題を残していると考えている。PT 調査結果を用いての分析では、本年度
実施できなかった機関分担モデルを対象に同様な分析を行うこと、及び各種の報告書から収集し分析に用いたデー
タについて可能な限り原典の報告書まで戻り記載内容を確認することである。全国総合交通体系についての分析で
は、国際貨物輸送量の予測モデルを対象に同様な詳細な分析を行うことである。高齢化社会については、福祉交
通、観光交通等比較対象を具体的に絞り込み施策等の比較分析を進めることである。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 5
主査名
秋山孝正 ・ 関西大学環境都市工学部 教授
研究テーマ
低炭素型車両に着目した都市交通政策の有効性についての研究※
研究の目的:
近年、低炭素型車両としてハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、超小型モビリティ(ULV)などの普及が顕著で
ある。本研究では多様な低炭素型車両普及に対応した都市交通政策の方向性を検討する。このため、①ULV の道
路走行性能評価、②低炭素都市交通政策評価、③低炭素社会の交通機関分担、④低炭素車両の都市活動影響
評価の視点から都市交通政策の有効性を検証する。
研究の経過(4 月~3 月)
:
設定した4種類の研究課題を分担して遂行した。①上期に ULV の道路走行性能に関して、GPS・電流計を用いた
計測を行った。下期に、複数被験者による UVL 運行調査結果を踏まえて、ULV の利用可能性を整理した。②上期
に地方都市圏の道路交通への経済的政策による持続可能な交通手段転換と車両更新を記述するマルチエージェ
ント型交通シミュレーショ ンを構築した。下期に道路混雑緩和の影響把握のためモデル修正を行い、二酸化炭素削
減効果による政策比較を行った。③上期に、低炭素社会の交通機関分担に関して、公共交通機関(鉄道)の社会的
便益の定量化を検討した。下期にはアンケート調査に基づく CVM 調査を実施して、鉄道利便性向上の効果を算定
した。④上期に低炭素型車両に関する都市交通政策評価に関して、低炭素型車両の導入によるライフスタイルの変
化が、スマートハウスのエネルギー消費に与える影響を整理した。下期に空間的地域経済モデル(SCGE)を拡張し
て、低炭素車両とスマートハウスの社会的有効性を検証した。
研究の成果(自己評価含む):
本研究で設定した研究課題は、低炭素車両の都市交通政策面での影響について、①道路交通流へ影響、②交
通手段選択・車両選択、③公共交通機関との機能分担、④都市交通の都市空間的影響の各視点から検討したもの
である。これより、都市交通政策での低炭素車両の有効性が明確となった。たとえば、道路交通面では ULV 運行特
性の利用、低炭素車両普及の環境負荷減少効果、公共交通機関の非市場価値の有用性、低炭素車両とスマートハ
ウスの一体的整備などが提案された。
今後の課題:
各研究課題別に成果が得られ、都市交通政策の有効性評価が実行された。しかしながら、各都市交通政策の統
合的な影響評価については、十分な整理が行われていない。このため、体系的な方法論の整理と各評価項目の統
合化についての検討が今後の課題として挙げられる。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 6
主査名
室町泰徳 ・ 東京工業大学大学院環境・社会理工学院土木・環境工学系 准教授
研究テーマ
気候変動に対する緩和と適応を考慮した中長期的な都市と交通システムの
整備方策に関する研究
研究の目的:
本研究では、2014 年都市再生特別措置法等の一部改正などにより、多極ネットワーク型コンパクトシティ化が政策
として採用されている点に着目し、人口減少、少子高齢化が進展する中で、また、同時に都市の低炭素化も進める
必要がある中で、多極ネットワーク型コンパクトシティ化の影響とこれが気候変動に対する緩和と適応に与える影響
に関して具体的に検討することを目的としている。
研究の経過(4 月~3 月)
:
本研究では、まず、全国の都市計画区域全域を対象として、都市から自然への土地利用の変化および自然から
都市への土地利用の変化に着目した分析を行い、土地利用変化モデルを推定した上で、これを 2030 年の状況に適
用し、将来の土地利用変化の傾向を把握した。1990 年から 2010 年までの 20 年で都市から自然への土地利用の変
化は、都市計画区域の端部や平野部と山間部の境界付近を中心に、都市計画区域の約 2%のメッシュで確認され
た。また、土地利用変化モデルの推定結果より、土地利用に変化が生じる地域の特徴としては人口、利便性、地理
的条件などが挙げられることがわかった。推定されたモデルを用いて将来を予測したところ、2010 年からの 20 年間で
は人口減少に伴い、さらに建物用地が減少し自然的土地利用が増加する可能性が示された。
次に、運輸部門における適応策に焦点をあて、この部門における進展を概観した。英国交通省が、交通レジリエン
スレビューを発表し、気候変動による極端現象に対する交通ネットワークのレジリエンス調査と適応プログラムを進展
させている点、また、米国交通省が、交通気候変動適応計画を発表し、その計画の中で、気候変動の潜在的な影響
を列挙し、これまでに行ってきた施策のレビューと今後行ってゆくべき施策の内容を議論している点などを示した。
最後に、ピークトラベルの要因の一つである「若者の車離れ」に注目し、「若者の車離れ」に深く関連する若者の将
来の車の購入に対する意識に焦点を当て、その要因に関して分析を行った。方法として、パネル調査を実施し、現
在の若者の車利用状況を把握し、所得や周辺環境などがどう若者の車利用や意識に影響するのか、将来の車の購
入意識が実際の車保有に繋がっているかに関して検討を行った。
研究の成果(自己評価含む):
都市から自然への土地利用の変化および自然から都市への土地利用の変化に着目した分析に関しては、人口
が減少する大都市郊外部の自治体においても開発が進む可能性が明らかとなり、何もしなければ将来もこの傾向が
続くことを示した。運輸部門における適応策に関しては、日本の国土交通省による気候変動適応計画にも示されて
いるが、今後は沿岸部以外の脆弱な地域におけるリスクにも留意しつつ施策を進める必要がある点を示した。「若者
の車離れ」に関する研究に関しては、最寄り駅までの距離、職業、生活状況が車の購入意識に影響する点、生活費
が実際の車保有に影響する点を明らかにした。
今後の課題:
今後は、2020 年以降の気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」や、これに先立って設定された日本の約束草
案、すなわち温室効果ガスの排出を 2030 年度に 2013 年度比 26%削減、運輸部門においても 2013 年度の 225 百
万t-CO2 から 2030 年度に 163 百万t-CO2 まで排出を削減する目標を達成するための有効な緩和手段に関して検討
する必要がある。既存の手段として、燃費改善、次世代自動車の普及、交通流対策の推進、公共交通機関の利用
促進などが挙げられているが、これらの緩和手段の費用対効果、および適応手段との関係についても詳細な検討が
必要である。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究
7
主査名
根本敏則 ・ 一橋大学大学院商学研究科 教授
研究テーマ
課金などによる大型車マネジメントに関する研究※
研究の目的:
大型車対距離課金、大型車走行マネジメントに関する諸外国の最新動向の把握
大型車対距離課金、大型車走行マネジメントを支える技術開発動向、標準化作業の進展状況の把握
わが国において課金などによる大型車マネジメントを導入する際の課題の整理
研究の経過(4 月~3 月)
:
平成 27 年度は 5 月 7 日、6 月 19 日、8 月 25 日、10 月 29 日、1 月 8 日に研究会を開催した。研究メンバーから
大型車対距離課金・大型車走行マネジメント制度、それらを支える技術開発動向、標準化作業の進展状況を報告い
ただき、わが国への適用に関し検討を行った。
研究の成果(自己評価含む):
大型車対距離課金制度に関してはドイツで高速道路だけでなく連邦道路を含んだ仕組みに拡張されつつある。ロ
シア、ベルギー、ハンガリーでも GPS を活用した自律型の大型車対距離課金が導入されることとなった。また、シンガ
ポールでも ERP2 として DSRC から自律型への移行が決まった。一方、大型車走行マネジメントシステムではオースト
ラリアで興味深い仕組みが導入されている。具体的には道路ネットワークを 4 種類に分類し、それぞれでまた、法令
遵守状況をテレマティクスサービス、車載型重量計で監視している。ドライバー不足が懸念されるわが国でも車両の
大型化という規制緩和と、走行履歴をアップロードする優良事業者に様々なインセンティブを付与することにより、大
型車の走行をより効率的にマネジメントしていくべきであろう。課金だけでなく、大型車走行マネジメントを組み合わせ
ることにより、道路ネットワークを賢く使うこと、道路の老朽化を遅らせることが可能になる。
今後の課題:
28 年度は過去 4 年の研究をふまえ、日交研双書「維持更新時代の道路課金・交通管理~道路交通分野における
戦略的イノベーション~」を出版する予定である。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 8
主査名
加藤一誠 ・ 慶應義塾大学商学部 教授
研究テーマ
欧米を中心とした交通インフラの整備・維持管理・更新の財源調達と組織
形態に関わる研究
研究の目的:
民間資金の導入が強調される空港に比べ、長期間にわたって特定財源制度をとっていたこともあり、道路インフラ
では公的部門の役割が大きい。例えば、公団が民営化された有料道路のファイナンスは、実質的に政府(国債)と大
差がないし、一般の道路整備については政府予算から支出されている。他方、首都高速道路への対距離料金の導
入、名古屋高速道路公社の民営化など新しい話題もある。本年度も引き続き、(1)インフラの財源調達手法とそのパ
フォーマンス、(2)運営組織の形態、に焦点をあて具体的な交通インフラプロジェクトを分析する。そして、これまで触
れてこなかった鉄道や港湾に関するテーマをとりあげ、翌年に予定されている出版につなげる。11 月には日本大学
経済学部中国・アジアセンターの研究プロジェクト「国際比較を通じたアジアにおける交通インフラの整備手法の分
析」(主査:加藤、手塚)と共同でシンポジウムを開催する。
研究の経過(4 月~3 月)
:
4回の研究会を開催した。
第1回
7 月 31 日(金)
加藤浩徳(東京大学)「話題提供:東京の鉄道に関して」
第2回
11 月 13 日(金) 寺村隆男(みずほ総合研究所)「最近の欧米における交通インフラの破綻事例を中心に」
第3回
11 月 20 日(金) 山縣宣彦(三井住友海上火災保険・元国土交通省)「わが国の港湾政策」
第4回 12 月 18 日(金) 小島克巳(文教大学)「アメリカにおける新規立法 Grow America について」、加藤一誠(慶
應義塾大学)・手塚広一郎(日本大学)「アメリカのオーソリティの生成とレベニュー債による財源調達」
研究の成果(自己評価含む):
数年間にわたって実施したプロジェクトの研究成果を報告するため、11 月 21 日に日本大学経済学部においてシ
ンポジウム「アジアの交通インフラの可能性を考える」を開催した。内容は以下の通りである。
基調講演Ⅰ 加藤浩徳(同上)「躍動するアジアの交通インフラ市場」
基調講演Ⅱ 程華(中国人民大学)「中国の高速鉄道のファイナンス」
パネルディスカッション
モデレーター 手塚広一郎(同上)
パネリスト 黒沢義孝(埼玉学園大学大学院)・味水佑毅(高崎経済大学)・加藤浩徳(同上)・程華(同上)
今後の課題:
現在、メンバーは報告書とともに日本大学より出版助成を得て研究書(『交通インフラの現状と将来(仮称)』を執筆
中で、後者は 2017 年 3 月に出版予定である。世界各地で実施されている官民の交通プロジェクトを分析している。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 9
主査名
藤原章正 ・ 広島大学大学院国際研究協力科 教授
研究テーマ
地方での都市集約化過程における人口と都市施設分布の相互作用に関する
研究※※
研究の目的:
本研究では,都市構造の集約化の文脈で非常に重要となる「人口と都市施設分布の相互作用」の解明を目的に
以下の三つの研究を実施した。
① 広島市における人口と施設立地の経年変化に関する基礎分析
② 消費者行動と商業施設立地の市場的相互作用と非市場的相互作用のモデル分析
③ 人口減少下におけるガソリンスタンドの撤退行動に関する実証分析
研究の経過(4 月~3 月)
:
今年度は、全体としては計三回の研究会を実施した。第一回目(2015 年 5 月 12 日)は、2014 年度の研究成果の
まとめと、2015 年度の研究方針について議論した。第二回目(2015 年 9 月 4 日)は、関口達也氏(中央大学)および
貞広幸雄氏(東京大学)を招き、食料品店の開店予測と閉店に伴う商業環境の変化を評価する方法等に関するご講
演をいただき、参加者で議論を行った。第三回目(2015 年 12 月 4 日)に谷口守氏(筑波大学)を招き、「拠点へ集約」
から「拠点を集約」へ―安易なコンパクトシティ政策導入に対する批判的検討―についてご講演いただき、参加者で
議論を行った。以上で行った議論をもとに、当初予定していた分析方針を適宜修正・改善しながら研究を進めた。
研究の成果(自己評価含む):
まず集約構造の集約化過程の実態を把握するために、研究①において、国勢調査データと商業統計調査データ
を用いて、人口と施設立地の経年変化を確認するとともに、グランジャーの因果性の意味での因果関係について考
察した。次に確認した相互作用の理論分析を行うために、研究②において商業施設を取り上げ、消費者行動と商業
施設立地の間に生じうる2つの相互作用、すなわち、市場的相互作用(集積の経済)及び非市場的(または社会的)
相互作用を考慮した目的地選択モデルを構築した。提案モデルでは、市場メカニズムの観点からは明らかに存続し
得ないような小規模小売店であっても、非市場的な相互作用を通じて存続が可能になる状況をモデル化される。広
島市を対象とした実証分析の結果、市場的/非市場的相互作用の双方が買物目的地選択に影響を及ぼしうること
が示された。最後に相互作用の実証分析として、研究③においてガソリンスタンドを取り上げ、中国・四国地方のガソ
リンスタンドの撤退(閉店・休業)行動を、空間ラグプロビットモデルによりモデル化した。次に、構築したモデルを用い
て、「国土のグランドデザイン 2050」における 2050 年推計人口時におけるガソリンスタンドの撤退を予測し、撤退がガ
ソリンスタンドへのアクセシビリティに及ぼす影響を定量的に分析した。分析の結果、2050 のシナリオ状況下では、5
~10km ガソリンスタンドへのアクセス距離が長くなる人々が 5 千人強存在する可能性が示唆された。
全体としては、当初予定していた動学的相互作用を詳細に検討するまで至らなかったが、研究会での議論を踏ま
え、当初の期待以上の実証的知見(商業施設とガソリンスタンドを例とした実証的知見)を得ることができた。
今後の課題:
後の課題は多岐にわたるが、特に重要な課題として、上記のような相互作用存在下における交通政策の影響評
価を行うための分析ツールの確立が喫緊の課題と考えている。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 10
主査名
井原健雄 ・ 香川大学 名誉教授
研究テーマ
地方都市の交通政策と運輸行政のあり方※※
研究の目的:
地方都市における交通問題の実証的な分析を行うとともに、政策志向の観点から、「地方自治体」を含む「運輸行
政」のあり方として、その意義と役割を検証するとともに、有意な知見の導出を試みる。そのなかでも、とくに地方都市
における地域公共交通のサービスの現状を明らかにし、交通政策に関わる基本的な主体として、①「地域住民」、②
「自治体」(運輸行政)、③「運輸事業者」の三者に着目するとともに、その相互関係としては、「地域住民」を基軸とし
た「二層」(Principal - Agent 関係)として捉え、しかもその〈フレームワーク〉のなかで、各政策主体の果たすべき役割
や位置づけを検討する。
研究の経過(4 月~3 月)
:
この研究プロジェクトを進めるにあたっての〈事前の連絡調整〉を、電話やメール等で個別具体的に行った。
これを受けて、平成 27 年度に開催された「研究会」は、つぎのとおりである。
① 8 月1日(土) 13:30~17:00(サンポートホール高松 51 会議室)
PL から、昨年度の研究活動を振り返り、今年度の研究活動の進め方について要望された。また、今年度の研究の
進め方について、各メンバーから報告があり、質疑応答と総括討議が行われた。
② 12 月 19 日(土)13:30~17:00(サンポートホール高松 51 会議室)
新井圭太(近畿大学準教授)による実証研究の報告を中心として、集中討議が行われた。
③ 3 月 12 日(土)13:30~17:00(サンポートホール高松 52 会議室)
今年度の研究成果の纏め方について、本研究プロジェクトの各構成メンバーから報告があり、これを受けて、相互
間での集中討議が行われた。
研究の成果(自己評価含む):
地域交通政策に関わる3つの主体(①「地域住民」、② 「自治体」 (運輸行政)、③ 「運送事業者」)が、それぞれ
本来の責務と役割を果たすためには、どのような創意と工夫が必要かについて有意な知見を得るとともに、当該主体
間の連携のあり方についても大いに学ぶことができた。
今後の課題:
問題意識の共有化を図ることにより、四国地域に相応しい自立志向の地域交通政策の樹立に寄与し得る有意な
政策提言ができるよう、より詳細な裏付け作業の継続とその総括を試みること。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 11
主査名
田渕隆俊 ・ 東京大学大学院経済学研究科 教授
研究テーマ
自動車交通の市場、地下鉄の運賃政策、都市集積の経済、および地域経済
の分析
研究の目的:
本年度の共同研究プロジェクトは、平成 26 年度の共同研究プロジェクト「交通経済学に着目した都市集積の経
済、自動車市場、および地域間人口移動の政策分析」を引き継ぎ、さらに深化・発展させることを目的とする。
首都高速道路では他の高速道路には現れない、通過台数が減って、速度が落ちるという超混雑という現象が生じ
る。そこで超混雑をボトルネック混雑の理論を導入して、首都高速道路のトラフィックデータを用いて混雑費用の推計
の元となる速度関数を推定することに重点を置いた。
具体的には、頻繁に研究会を行い、プロジェクト参加者間の議論を通じて、集積の経済を考慮した都市、地域、交
通経済の分析を行い、都市交通政策に適用することを目指しつつ相互の理解を深めた。研究会で得られた知見を
踏まえて、プロジェクト参加者が、自らの学問的立場で、「自動車交通の市場、地下鉄の運賃政策、都市集積の経
済、および地域経済の分析」プロジェクトの成果を理論的、実証的に発展させる研究を行った。
研究の経過(4 月~3 月)
:
本プロジェクトでは、昨年度の研究成果を継承しつつ、都市集積の経済が生じるメカニズムと政策評価について、
理論的かつ計量的な分析を行った。以下の研究報告に基づいて多角的な議論を行い、研究を遂行した。
佐野穂先 (大阪大学)"The endogenous decisions of unionization and international trade in general oligopolistic
equilibrium"
加藤隼人 (一橋大学)"The impact of labor market frictions on industrial agglomeration"
鈴木雅智 (東京大学) "Tenant protection law and vacant properties" (with Yasushi Asami)
瀬下博之 (専修大学)"Preventive Investment and Relief Spending in Natural Disaster"
Liang Han (Peking University)"The labor share--a genome of footloose capital models"
松尾美和 (早稲田大学)"Efficiency and effectiveness of rural bus transit in the U.S. "
久保敏弘(慶應義塾大学) "Roles of wholesalers in transaction networks"
高口太朗(国立情報学研究所) 「テンポラル・ネットワークの概説と空間情報を取り込む拡張への展望」
藤嶋翔太(東京大学)"A network theory-based delineation of metropolitan areas with mass people flow data"
星野匡郎"Incomplete information social interaction models with missing outcome data"
瀬谷創(広島大学)"Spatial competition among retail gasoline stations in Japan"
名方佳寿子(摂南大学)"Clarify the mechanism of horizontal and vertical tax competition"
佐藤公敏 (東北大学)"Anthropogenic climate change in an integrated energy balance model of global and urban
warming"
菅沼健司 (日本銀行) "Recent upstreamness trend and competitiveness in Japan"
安藤道人 (国立社会保障・人口問題研究所)"Identifying strategic interaction in municipality-based public health
insurance: evidence from a boundary reform"
田村龍一 (一橋大学) "The effect of high-speed railways on knowledge flows: evidence from Japanese patent
citations"
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
Tae Oum (British Columbia University)"Effects of air transport liberalization on international service trade"
牛島光一 (筑波大学)"The impact of high speed railway on residential land price"
北野泰樹 (一橋大学) "Tax incentives for green cars: Evaluation at a car variant level"
須田昌弥 (青山学院大学) 「オフィスの「地方移転」の可能性-工場立地との相互関係からの考察-」
Dao-Zhi Zeng (Tohoku University) "Mobile capital, pro-competitive effect, and trade integration"
研究の成果(自己評価含む):
首都高速道路では超混雑が発生するので、走行速度関数の推定が困難になるとともに交通混雑費用の推計も困
難になる。そこで超混雑をボトルネック混雑の理論を用いて、首都高速道路の混雑費用の推計の元となる走行速度
の関数を推定した。
今後の課題:
推定した走行速度関数を用いて、交通混雑費用を求め、さらには社会厚生の分析を行う予定である。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 12
主査名
森本章倫 ・ 早稲田大学理工学術院社会環境工学科 教授
研究テーマ
LRT導入と沿線土地利用に関する研究
研究の目的:
世界各地で LRT(次世代型路面電車システム)の整備が進む中で、その導入は交通流の整流化のみならず、地
域経済の活性化に寄与している事例も多い。中心市街地に賑わいが戻ったり、LRT 沿線地価が上昇したりするな
ど、まちづくりの装置としての役割も期待されている。また沿線土地利用の変化は、人口減少下での都市機能集約へ
の効果も報告されており、コンパクトシティ形成のためのツールとしても活用できる。そこで本研究は、LRT 導入と沿
線土地利用の関係を調べることで、駅周辺への集約化に関する知見を得ることを目的とする。
研究の経過(4 月~3 月)
:
これまでに計 4 回の研究会を実施し、主として以下のような議論を行った。特に、欧州の LRT 導入都市に着目して
実態を把握するともに、鉄道建設が地域に及ぶす影響や効果について討議した。
1)フランスの LRT 導入状況の把握 (第 1 回)
ストラスブールとオルレアンの LRT 導入経緯とその効果を各種文献から整理し、まちづくりにおける LRT の役割と
課題をまとめた。その結果、まちづくりにおける LRT の役割について一定の共通知見を検討することが出来た。
2)イタリア・フランスの LRT 導入状況の把握 (第 2 回)
フィレンツェの LRT の導入状況の報告を受け、今後のプロジェクトについて議論を行った。また、フランス諸都市の
状況視察について報告を受けるともに、ナント市の都市計画についての資料をもとに討議を行った。
3)ドイツ・カッセルのトラムと東京の鉄道まちづくりについて(第 3 回)
ドイツ地方都市の一例としてカッセルをとりあげ、トラムの導入と沿線地域の長期的変化について検討した。また、
東京の鉄道網建設を対象に、どのように世界都市として成長したかを議論した。
4)LRT 導入がまちづくりに与える影響(第 4 回)
LRT の便益算定モデルについて議論するともに、仙台地下鉄東西線の開業とその効果について報告を受けた。
研究の成果(自己評価含む):
研究の結果、LRT 導入によって電停周辺の人口や地価が変動し、総じてまちづくりに好影響を与えていることがわ
かった。特に、欧州の先進都市ではトラム整備をまちづくりの一環として捉え、沿線周辺の土地利用を高め、持続的
な都市経営に大きな貢献をしている。
今後の課題:
日本における現時点で唯一の LRT 導入都市・富山市において、LRT 整備のプラスの効果が把握されているもの
の、他都市においても同様の効果が見られるかについては不明瞭である。今後、LRT 整備計画が進んでいる宇都宮
市など、複数都市の継続的な評価が必要である。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■共同研究 13
主査名
青木 亮 ・ 東京経済大学経営学部 教授
研究テーマ
地域交通の維持における住民参画の意義と課題
研究の目的:
乗合バス事業の規制緩和(2002 年)以降、地域交通の維持策として、自治体が住民参画を支援するケー
スが、都市部・地方部を問わず多数見られるようになった。公民連携の推進に住民参画を組み合わせること
で、本格的な「公・共・民のパートナーシップ」を構築し、まちづくりに活かすことが求められている。住
民参画の対象たる「地域交通」の範囲を、貨物輸送・物流・流通にまで広げて、これまでに得たバス交通等
での経験・知見を活用して、協働を促進する余地を分析する。本年度の研究プロジェクトでは、地域交通の
維持における住民参画の足跡と意義を、年 3 回程度の研究会と現地調査を通じて分析する。その課題と応用
可能性・適用範囲を議論し、地域社会の維持・発展に果たす住民参画の役割や今後の展望を検討する。
研究の経過(4 月~3 月)
:
第 1 回研究会を 6 月 26 日(金)に開催し、本年度の研究テーマや、現地調査の対象である中国地方の公共交通
維持の現状、島根県雲南市での現地調査について討議した。研究会での議論をもとに、現地調査参加メンバーによ
る関連文献の輪読、調査先や調査事項の検討を続け、8 月 10 日(月)
、11 日(火)に雲南市で現地調査を実施
した。雲南市掛合の地域自主組織「波多コミュニティ協議会」が波多交流センターで運営する「はたマーケ
ット」の店舗見学ならびに協議会会長・事務局長にヒヤリング調査を行った他、
「掛合だんだんタクシー」
の配車センター見学とヒヤリングを実施した。また翌 11 日には雲南市役所を訪問し、交通政策をめぐる現
状と課題についてインタビュー調査した。調査結果は 11 月 10 日(火)の研究会で報告すると共に、ゲスト講師の
鳥取環境大学 倉持裕彌准教授より、山陰地方における移動販売と交通問題について報告いただき、討議を行っ
た。また 12 月 19 日(土)には、平成 17 年から住民主導でコミュニティバス「あおバス」を運行する千葉県市原市の青
葉台コミュニティバス運営協議会で調査を行った。これら調査について、2016 年 3 月 14 日(月)に開催した研究会で
報告、討議を行い、取りまとめに向け議論した。このほか、群馬県におけるバス交通の変遷と現状や、中国地方の公
共交通問題(三江線存続の取り組み、旧国鉄バスの路線変遷)なども、研究会で取り上げた。
研究の成果(自己評価含む):
過疎地の乗合バス路線の変遷や乗合タクシーサービスの現状、公共交通維持と移動販売の関わり合いなどから、
地方における公共交通の役割や地域の取り組みを明らかにした。またコミュニティバスの自主運行問題を取り上げ、
地域交通の維持を住民主体で行うにあたり生じる様々な課題と対応策について分析した。
今後の課題:
予定された研究成果に一定程度は達したと考えるが、この成果をもとに理論の一般化に向けて、さらに研究を深
化させていく。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 1
主査名
西田 泰 ・ 公益財団法人交通事故総合分析センター 特別研究員兼研究第一課長
研究テーマ
交通事故対策の効果評価と今後の交通事故情勢に関する研究
研究の目的:
交通事故対策の効果評価や交通事故情勢の推移に関する文献調査及び交通事故統計データ等の分析を行
い、交通事故対策の効果評価の考え方を整理し、不適切な評価(過大あるいは過小)となる要因を解明する
ことで適切な対策効果の評価方法について論じる。また、死亡事故の増加・減少要因を含めた影響要因につ
いて検討し、今後の交通事故情勢を予測する。
研究の経過(4 月~3 月)
:
資料の収集及び交通事故統計データ分析等を行っていたが、9月上旬、主査の個人的事情により当初計画
に従った研究遂行が困難となったので、委員会活動を含めた正規プロジェクトとしての活動は中止し、以下
の研究項目等を中心に研究の進め方の検討及び試行的分析を行った。
○対策と評価指標
○事故の多様性への対応
○対策以外の影響要因
○先行指標
研究の成果(自己評価含む):
○対策と評価指標
事故発生メカニズムと対策の関係(事故率低減/需要管理か、予防安全/衝突安全か等)を明確にし、対策
に応じた適切な評価指標を考える必要がある。例えば、死亡事故抑止対策では、死者数、死亡事故件数によ
る効果評価だけではなく、死亡事故率(死亡事故件数/人身事故件数)や致死率(死者数/死傷者数)を使う
評価も必要である。そこで、個別の対策に対して、新たな評価指標の可能性について検討した。
○事故の多様性への対応
社会・経済活動、道路交通や道路利用者特性及びそれらの変化速度には地域差があり、今後交通事故の多
様化が進むことを考えると、全国を単位とした分析では十分な効果評価が行えない可能性がある。そこで、
道路利用者特性や道路交通が同等とみなせるように分析対象を空間的(地域)
、時間的に絞り込んだ対策評
価のために、交通事故情勢に着目した地域(都道府県)のグループ化について検討した。
○対策以外の影響要因
事故死者数の多寡に大きな影響を与える人口高齢化や、道路交通に影響を与える経済活動や天候等の交通事
故への影響を考慮することも必要である。特に、様々な交通安全対策が進むと対策による効果が相対的に小さくなる
ことで、これらの要因の影響が相対的に大きくなると考えられる。そこで、対策以外の影響要因に関する内外の関係
資料を収集するとともに、試行分析を行った。
○先行指標
昭和 55 年以降の死者数増加に先行した昭和 53 年からの死傷者数増加を考えると、過去の事故情勢変化の地域
差、道路利用者属性変化の地域差、時間差を調べることで、特定な地域・条件の事故情勢の変化を示す先行指標
を特定できる可能がある。都道府県別に、状態別死者数、死傷者数の推移傾向を調べた結果、地域により交通事故
情勢変化にも大きな違いがあることが分かった。
当初の計画に従って研究を実施することはできなかったが、主査が関与した他の研究作業の中で、交通事故の多
様性や対策評価に関する資料を得ることができた。
今後の課題:
平成 28 年3月に平成 28 年度自主研究として承認されたことから、あらためて当初の計画に従って研究を
行う。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 2
主査名
林 克彦 ・ 流通経済大学流通情報学部 教授
研究テーマ
企業間(BtoB)小口貨物輸送需要に対応した宅配便ネットワークの構築に
関する研究
研究の目的:
企業間(BtoB)貨物輸送需要は、貨物の軽薄短小化に加え在庫削減の取組によって、多頻度小口化が著しい。
従来、企業は小口貨物輸送を特別積み合せ輸送に多く依存してきたが、小口化の進展に伴って宅配便を利用する
ケースが増大している。本研究では BtoB に対応した輸送体制の変化について、宅配便事業を中心にどのような
輸送ネットワークの再構築が行なわれているか、さらにそれを利用していかなるロジスティクスサービスが提供されて
いるのか考察することを目的とする。
研究の経過(4 月~3 月)
:
第 1 回研究会(5 月 8 日):本研究プロジェクトのテーマおよび研究方針について議論を交わした。小原氏より、「物流
部会合同会議資料・物流をめぐる状況」について報告があった。
第 2 回研究会(7 月 17 日):インドでのインタビュー調査の検討を行った。現地調査(8 月 16~23 日)では、特殊な事
業環境のもとでも、日系自動車企業が工夫を重ねて JIT 物流やミルクラン調達を行っていることがわかった。
第 3 回研究会(8 月 26 日):ヤマト運輸宅急便チーム集配バス停見学(国立市)を訪問し、施設見学とインタビュー調
査を行った。サービス水準向上、再配達削減、短時間労働力の確保、トラック走行距離の削減等について調査した。
第 4 回研究会(9 月 25 日):インド調査報告書の原稿案、小原氏より「今後の物流政策の基本的な方向性等に関する
審議の中間とりまとめ」の報告があり、討議した。
第 5 回研究会(11 月 27 日):宮武氏より、「Social Impact of “Team Pickup/Delivery" on Last Mile Parcel Delivery
Network」、小原氏より「ETC2.0 を用いた物流効率化、WIM による過積載取り締まり」の報告があり、議論を行った。
第 6 回研究会(1 月 15 日):高野氏・佐々木氏より「BtoB、ソリューションビジネスへの取組」、小原氏より「今後の物流
政策の基本的な方向性について(答申)」の報告があり、議論を行った。
研究の成果(自己評価含む):
①多頻度小口化する BtoB 需要に適合した宅配便ネットワークの高度化、ロジスティクスサービスの実態分析、
②チーム集配の有効性のモデル分析、③荷物追跡システム等 ICT(情報通信技術)を活用した BtoB サービスの高度
化、④インド、アメリカ等の諸外国における BtoB 小口物流の実態把握等について、研究が進み、報告書、論文等を
作成した。
今後の課題:
実態分析については、企業内情報やデータが多く、十分定量的に把握できない部分があった。今後、利用可能
な統計値や情報を参照しながら、多面的に分析を続けたい。また、交通政策に関連して、労働力不足への対応や
ICT を活用した物流生産性向上などの政策課題についても研究を深める必要がある。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 3
主査名
黒田達朗 ・ 名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻 教授
研究テーマ
サプライチェーンの空間的分散化とレジリエンスに関する研究
研究の目的:
2011 年における東日本大震災とそれに続くタイの大洪水等によって日本企業が連続的に甚大な被害を被った理
由の一つは、サプライチェーンがモジュール化の影響により部品単位の比較優位を求めて国内外を問わず空間的
に分散する「フラグメンテーション」によって、各立地点での局所的なリスクの発現が逆に他地点の生産活動に波及し
たことである。一昨年および昨年の自主研究においては、2階層からなるサプライチェーンを想定し、各地点の被災リ
スクが等確率である場合の被害を数値シミュレーションによって解析した結果、中間財の企業については分散した方
が望ましいのに対して、最終財の企業にとっては集中した方が短期的な被害は軽減できることなどを明らかとした。ま
た、プラントと同地点で交通ネットワークが途絶した場合、その被害のほとんどを最終財の企業が負担することも明ら
かにした。本年度は、基本的にはこの研究を継続することにより、さらなる知見を得ようとするものである。
研究の経過(4 月~3 月)
:
これまでの分析では危険中立型の企業を前提としてきたが、現実の企業が立地分散を図る理由の一つとして、危
険回避型の(潜在的な)効用関数を有する可能性が挙げられる。そこで、当該分野で良く用いられる代表的な関数
型を用いて、立地の分散化が正当化できる危険回避の水準を相対的に検討した。また、空間的価格政策について、
改めて過去の文献のサーベイを行った。とくに、輸送費用の負担方法による短期的被害への影響を明らかにするた
め、均一(配達)価格政策の場合について分析を拡張した。
研究の成果(自己評価含む):
特定の効用関数を前提に、集中立地よりも分散立地を指向する限界的な危険回避度の試算行った。また、均一
価格政策の場合には、中間財の生産企業が集中立地を選好する可能性が示された。これらの成果も興味深いが、
現実の輸送費用負担の制度からは過去2年間の前提条件が一般と思われ、危険回避度についても理論的な試算に
過ぎないという限界があるので、できればより包括的な分析が望まれる。
今後の課題:
最近でも 2016 年 1 月に愛知製鋼の爆発事故により、トヨタ自動車が約1週間操業を停止しただけでなく、4 月の熊
本地震でも同規模の生産中止が予想されている。したがって、今後ともサプライチェーンの空間的分散のあり方は重
要な研究課題と思われる。また、研究代表者の関与する他の研究プロジェクトとして、インドネシアにおけるスマトラ地
震・津波、中国における四川地震とわが国の東日本大震災の国際比較研究が本年度から始まったので、危険回避
に対する選好の国による違いなども、今後の研究課題と考えられる。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 4
主査名
庭田文近 ・ 城西大学現代政策学部 助教
研究テーマ
社会的費用便益分析の研究―地方の社会環境維持と交通インフラストラク
チャー整備(基礎理論プロジェクト)
研究の目的:
本プロジェクトでは、わが国の交通インフラストラクチャー整備に対して、地方の社会・経済・環境への影響を考慮
した総合的評価を適用することを念頭に置き、その社会的便益および社会的費用の合理的・実用的な測定方法を
見出すことを目的とする。今年度は特に、地方における交通インフラ整備の社会・経済・環境への影響を考慮した総
合的なプロジェクト評価手法の検討も行っていく。
なお、以前より原稿を取りまとめていた『限界費用価格形成原理の研究Ⅱ』について、本プロジェクトでの双書刊行
が許可されたため、昨年ご逝去された大石泰彦先生の遺作としての出版に向けて、準備を進める。
研究の経過(4 月~9 月)
:
地方の交通インフラ整備に関するさまざまな経済価値の範囲・定義および非市場財(環境影響)の経済的価値の
測定手法を検討するために、Nick Hanley and Edward B. Barbier (2009) Pricing Nature: Cost-Benefit Analysis and
Environmental Policy, Edward Elgar Publishing.より、第6章「Valuing the environment: production function
approaches」を、主として藤井秀昭氏(京都産業大学経済学部准教授)が中心となって訳出した。そして、当該文献を
メンバー全員で精読し、交通インフラ整備の社会的費用便益分析への生産関数アプローチの適用を議論した。
また、日交研双書『限界費用価格形成原理の研究Ⅱ』の出版に向けて、庭田と臼井功氏(横浜国立大学名誉教
授)・關哲雄氏(立正大学名誉教授)が編集・監訳作業および解題執筆を進めた。
研究の成果(自己評価含む):
地方における交通インフラ整備について、その整備効果(便益)として、自然災害等の被害回避の価値や、地方
経済の景気後退によって逸失する国民所得の回避の価値を算入する必要があり、そのためには予想される被害回
避の価値を“投入物としての環境価値”として推定する予想被害関数アプローチが適用可能であることを見出した。
また、日交研双書 30 として、勁草書房から、大石泰彦・臼井功・關哲雄・庭田文近編・監訳『限界費用価格形成原
理の研究Ⅱ』を刊行した。
今後の課題:
交通インフラ整備に伴う社会・経済・環境への連携的な影響を評価するために、さまざまな環境質、資源投入の
質、イノベーションおよび技術的変化等が投入物して組み込まれるような生産関数モデリング手法の精緻化を試みて
いきたい。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 5
主査名
河野達仁 ・ 東北大学大学院情報科学研究科 教授
研究テーマ
動的交通シミュレーションを活用した自動車関連税政策の分析
研究の目的:
日本では、自動車の保有や利用に多数の税(例.燃料税や自動車重量税)が課されている。自動車関連税は、それぞれが消
費者の自動車保有・利用に影響を与える。そのため、効率的な税率は別の税項目の水準に依存する。したがって、これらを同時
に考慮して税率を求めることが必要である。さらに、空間を考慮すると、燃料税や自動車保有税は、それぞれ交通需要に及ぼす
影響力が異なる。例えば、燃料税はトリップ長に応じて税支出額が変動するため、交通需要変化に及ぼす影響がトリップ長により
異なる。一方、保有税が需要変動に及ぼす影響はトリップ長によらず均一である。混雑が空間的に不均一に存在するため、需要
変動に与える影響の違いは交通関連税を決定するうえで重要である。
本研究では、交通混雑緩和や環境改善を考慮した「社会厚生」を最大化する複数の自動車関連税を同時に最適化する税率
を算出することを本研究の目的とする。具体的には、仙台都市圏の午前 6 時から 10 時の自動車交通を対象として、自動車の保
有・利用モデルと動的交通シミュレーションモデルを統合したモデルを用いて、1) 税額の同時最適、2) 各税の空間的特徴を考
慮した上で、効率的な燃料税と保有税の水準を求めた。
研究の経過(4 月~3 月)
:
本研究では、経済モデル(2013 年度の日交研プロジェクト、研究代表 河野のモデル)と動的交通シミュレーション SOUND
(株)アイトランスポートラボ http://www.i-transportlab.jp/company/index.html が開発したモデル)を用いて、仙台都市圏を対象と
した有料道路料金、燃料税、自動車保有税の最適な値を求める。具体的には図1に示すように、1)経済モデルに OD 一般化費用
(外生 OD 一般化費用:𝐶1 )を外生的に与え、OD 交通量、道路料金等を導出。2)ステップ 1 で得られた OD 交通量、道路料金デ
ータを交通シミュレーションに入力し OD 一般化費用(内生 OD 一般化費用:𝐶 2 )を導出。3)外生 OD 一般化費用(𝐶1 )と内生 OD
一般化費用(𝐶 2 )を比較。二つの値が等しい時、計算終了。この時の有料道路料金、燃料税、自動車保有税を最適とする。二つ
の値が異なるとき、内生 OD 一般化費用(𝐶 2 )を外生 OD 一般化費用(𝐶1 )に改め、またステップ 1 から再開。𝐶1 = 𝐶 2 となるまで繰
り返し計算を行って、最適な政策を求めた。
図1.分析のフロー
研究の成果(自己評価含む):
本研究では、仙台都市圏の午前 6 時から 10 時の自動車交通を対象とした。その結果、混雑・環境外部性・MCF=1.2 を考慮す
る場合、効率的な税水準は、燃料税が 205 円/ℓ、保有税は 40,150 円/年であり、MCF=1.1 とする場合、185 円/ℓ、29,200 円/年と
なることが分かった。MCF =1.2 を仮定すると、現行税額から、燃料税を約 150 円/ℓ 引き上げ、保有税を約 25,000 円/日引き下げ
るとき、各税水準は効率的となる。燃料税については、既存研究(Parry and Small(2005)による米英別の推計値や川瀬(2010 によ
る日本の推計値))の推計値よりも高い値である。これは、分析対象とした仙台都市圏の混雑緩和に燃料税が効果的であることが
要因である。実際、混雑のみを考慮する場合でも、効率的な燃料税は 165 円/ℓ と推計された。
今後の課題:
動的シミュレーションの計算時間が長いため、最適税率計算においてシミュレーションを行う税率の設定幅を5円刻みで行った。
また、同様の理由で、同じ税率の組み合わせにおける均衡計算の厳密な収束性の確認が困難であった。これらは、シミュレーショ
ンを回す回数を増やせば解決できる。ただし、大変な時間がかかるため、今後の検討課題である。
-33-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 6
主査名
福田大輔 ・ 東京工業大学大学院理工学研究科土木工学専攻 准教授
研究テーマ
旅行時間信頼性と利用者行動
研究の目的:
本自主研究では、これまで当研究グループで主に取り組んできた旅行時間信頼性の交通経済学的基礎に関する
理論研究をさらに深めると同時に、我が国において近年特に整備と蓄積が進展している交通関連ビッグデータを融
合的に活用することで、旅行時間信頼性と利用者行動との関連性を、理論的・実証的に検討することを目的とする。
具体的には以下の検討を行う
(1) 旅行時間変動に起因するユーザー移動コストの理論モデルの高度化
(2) エリア全体の旅行時間信頼性を面的に評価可能なマクロモデルの検討
(3) 時刻表ベースの交通機関(鉄道・バス等)における時間信頼性と利用者行動の関連性分析
研究の経過(4 月~3 月)
:
(1) に関して、旅行時間変動の Day-to-Day ダイナミクス(Smith ダイナミクス)を明示的に考慮した Stochastic
Capacity Bottleneck 均衡モデルのプロトタイプを構築し、その基本特性解析を行った。
(2) に関して、近未来に ETC2.0 搭載車両が広く普及することを念頭に、ETC2.0 プローブデータが広域で観測さ
れる状況におけるエリアレベルでの旅行時間信頼性指標の算出方法について基本検討を行った。
(3) に関して、バスでの駅アクセストリップに関する利用者の選好意識調査を実施し、出発時刻選択モデルを構築
した。また、大都市交通センサスの顕示選好データより鉄道通勤者の出発時刻選択モデルを構築し、列車遅延実績
データと融合することにより、首都圏の鉄道遅延回復施策の経済効果の試算を行った。
研究の成果(自己評価含む):
特に大きな問題もなく、当初の計画通り研究を実施できたと考えている。
今後の課題:
上記の(2)に関して、今年度は基本フレームワークを構築したのみであり、今後実際のデータを用いた検証が必要
となる。但し、より良い精度で時間信頼性を把握するためには、ETC2.0 対応車両の普及が進むことが必須であり、そ
れを期待したいところであるが、普及が遅い場合には、民間プローブデータ等を代理で用いる必要が生じる可能性
があると考えられる。
-34-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 7
主査名
森杉壽芳 ・ 日本大学 客員教授
研究テーマ
交通ネットワーク分析を統合した SCGE モデルによるリニア中央新幹線整備
の便益評価
―便益と実質 GDP 変化との関係の整理を中心に―
研究の目的:
本研究は、交通ネットワーク分析と整合的な SCGE モデルを構築し、それを適用したリニア中央新幹線の整備評価
において、便益による評価と実質 GDP 変化による評価との違いに関する理論的整理を行うことが目的である。
研究の経過(4 月~3 月)
:
研究は、定期的に研究会を実施し進めてきた。
研究の成果(自己評価含む):
具体的な成果は以下のとおりである。
1.交通ネットワーク分析と整合的な SCGE モデルの構築
交通ネットワーク分析と整合的な SCGE モデルとは、交通ネットワーク均衡分析を内包した SCGE モデルを構築する
ことが理想的である。しかし、現実は、交通ネットワーク分析が別途実行され、そこから得られる所要時間を SCGE モ
デルに入力して整備評価がなされる場合が多い。そこで現実的な対応を考え、本研究ではリンクごとに計測される便
益の総和と、SCGE モデルにより定義される等価的偏差(EV)とが、一致するようなゾーン間所要時間を交通ネットワ
ーク分析から求め、それを SCGE モデルに入力するという方法に関する理論的整理を行った。その結果、費用便益
分析マニュアル等の方法のように、リンク単位で利用者便益を計測しその総和をもって総便益とした評価と、SCGE モ
デルにより EV で定義される便益とが理論的に一致する SCGE モデルを構築することができた。
2.便益と実質 GDP 変化との関係の理論的整理
本研究の事例研究として扱ったリニア中央新幹線では、国土交通省がその整備効果を GDP 押し上げ効果により計
測している。しかし、GDP は最終需要部門の総消費額と一致することから、家計消費だけでなく政府や投資部門の
消費も含まれることになり、したがって家計の消費と余暇時間の増加により生み出される効用の増大として計測される
便益とは異なる概念である。交通整備の効果は、後者の便益により計測されるべきであり、この点で国土交通省によ
るリニア中央新幹線整備の効果分析は不適切、不十分と考えられる。本研究では、以上の点を改めて整理するととも
に、実質 GDP 変化あるいは便益が、産業別付加価値変化に分解できることを示した。それより、交通基盤の整備効
果がどの産業部門の付加価値の増大によってもたらされるものであるのかが把握可能となる。これは、便益の項目分
解である、よく知られた便益帰着分析に対し、付加価値側で産業部門に対する効果の項目分解を行ったものとも解
釈できる。
そして、本 SCGE モデルを用いて、リニア中央新幹線に加えて東海道新幹線の整備評価を行った。
今後の課題:
道路混雑を考慮しなければならない高速道路網整備への適用が今後の課題である。
-35-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 8
主査名
井堀利宏 ・ 政策研究大学院大学 教授
研究テーマ
道路を中心とした社会資本整備の経済分析※
研究の目的:
本研究プロジェクトは、道路を中心とした社会資本整備の応用例として、公共投資と民間投資との関係についての
計量分析と幼児死亡率と救急医療体制、特に救急救命センターまでの距離との関係に着目する実証分析を行う。
前者は生産関連社会資本として道路整備などの公共事業を評価することであり、後者は、生活関連社会資本として
道路などの公共事業を対象としている。また、最適な公共投資整備とその財源負担のあり方についても考察する。
研究の経過(4 月~3 月)
:
上半期の実証分析結果を踏まえて、下半期は、変数を加えたり、推定手法を工夫したりすることで、上記の結果の
頑健性を確認した。とくに、景気対策として執行された公共投資を取り出して、それが民間企業設備投資に与えた
影響を分析した。また、最適な救急救命センターまでの距離を求めた。こうした実証研究の結果を踏まえて、道路を
中心とした社会資本整備のあり方を考えた。また、生活関連社会資本の整備のあり方を理論的に検討した。
研究の成果(自己評価含む):
公共投資は運輸・通信業や鉱業など幾つかの部門の投資を誘発する。特に運輸・通信業については、地方にお
ける当該部門の投資活動の活性化に有用である。しかしながら、公共投資が地方圏の民間投資を活性化させる効
果は確認されなかった。景気対策が行われた 1990 年代に公共投資が地方に多く配分されたが、こうした政策は必ず
しも支持されない。また、幼児死亡を減少させるためには、各市区町村の総人口ではなく、幼児人口に応じた救急救
命医療センターの設置が効率的な政策であることが得られた。
今後の課題:
道路を中心とした社会資本整備の応用例として、社会資本を生産要素とした内生的経済成長理論を用いて、
最適な公共投資比率を導出する研究について、道路整備との明示的な関連づけが今後の課題である。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 9
主査名
文 世一 ・ 京都大学経済学研究科 教授
研究テーマ
交通インフラストラクチャと地域経済に関する研究
研究の目的:
高速道路、鉄道、港湾、空港などの交通インフラストラクチャの整備は、地域間輸送費の低下をもたらし、経済活
動の立地を変化させることを通じて、地域経済に多大な影響を与える。本研究では、上記のメカニズムを分析するモ
デルの構築と、交通インフラストラクチャの整備にかかわる代替的政策の評価を目的とする。その際、交通ネットワー
クの構造、輸送サービス市場の産業組織、そして複数の政府による意思決定がもたらす問題を考慮して、インフラス
トラクチャ政策(投資水準の選択、料金の設定)を議論する。
研究の経過(4 月~3 月)
:
研究会を計11回開催し、プロジェクトのメンバーおよび外部講師による、計21件の研究報告を行い、参加者間で
議論を行った。詳細は http://www.urban.kier.kyoto-u.ac.jp/index.html に掲載されている。
研究の成果(自己評価含む):
今年度は、メンバーの伊藤亮氏による、「シャドウトールを用いた国際交通インフラ整備のメカニズム」に関する研
究成果を選び、報告書としてまとめることにした。研究の概要は次の通り。
国境を跨ぐ橋やトンネルのように、複数の国に便益をもたらすような交通インフラストラクチャの整備に際して、各国政
府の自発的な投資貢献による共同運営方式を提案し、その効率性を検討した。ここでは、施設の使用料(たとえば道
路料金)を、ユーザーではなく政府から徴収するシャドウトールに着目する。本研究では、このシャドウトールが PFI だ
けでなく、政府間のインフラ投資のスピルオーバー(またはフリーライド)問題の分権的解決にも有効であることを示し
た。またこのような共同運営に両国政府が合意するための条件についても明らかにした。
今後の課題:
今年度の研究では、共同運営方式に対して両政府が合意に達しない可能性があることが示されたが、このような
場合の政策手段について検討する必要がある。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 10
主査名
石田信博・同志社大商学部 教授
研究テーマ
地域・都市総合交通政策の研究※※
―地域交通政策における道路交通の意義について―
松澤俊雄・大阪市立大学 名誉教授
研究の目的:
個別交通と公共交通および物資輸送の政策を一体的に行うという総合交通政策の考え方は今日地域・
都市交通政策の要でもある。道路の混雑緩和、環境・交通事故対策、エネルギー使用の抑制等の面から
自動車利用の適正化を目指し、物資輸送(業務交通)においては輸送と交通における合理化策を追求す
るとともに、地域・都市における限られた交通空間を利用して、道路交通システムと公共交通システムによ
る統合的で全体として効率性・公平性を満たし、「都市環境」の保持・改善に向けた交通・輸送体系とその
政策の確立が求められている。本年は社会・経済的な視点から、とりわけ地域交通政策における道路交
通と公共交通の経済発展における意義や都市活性化に及ぼす意義について考えたい。
研究の経過(4 月~3 月):
他の日交研Gや他の研究会との共同研究会も行うなか、全体研究会では、「住宅開発と交通」「公
企業の規制と運営」「離島生活と地域交通-交・流・通」「地域公共交通とソーシャル・キャピタル」
「英国 Oxford の P&R」「韓国地方都市の路線バスと準公営制のサービスへの影響」「リノベーション
によるまちづくり」「まちづくりと地域価値」「アメリカの空港オーソリティの生成とレベニュー妻」
「観光産業と経済」「コンテンツ・ツーリズム」等のテーマのもと、研究報告が行われた。また、他の
研究会との共同で開催している文献研究会では、「地域公共交通と LRT」「地域公共交通における運賃
統合の効果(2回)」「空港騒音と地価」「都市交通改善の評価」「アメリカの貨物鉄道迅速性」「航
空 NW 間統合の分析」等の論文紹介があった。データベースについては今後の分析に資するべく、2010
年の調査結果よる既存データベースの一部拡充や、鉄道の運賃水準や乗継運賃制度が鉄道輸送需要や自
動車交通等他の交通手段選択に与える影響についてのデータベースの形成と若干の分析にも努めた。
研究の成果:
課題としての、総合交通政策に関する欧米の文献研究を部会として開催し理解を深めるとともに、相互依存的
関係のなかで均衡を保つ鉄道利用と自動車利用の状態を質的・計量的に示し効果的インフラ整備
についての方向性についての研究を進めることがある程度できたと思う。
今後の課題:
今年度の研究上、十分に利用出来なかった、前回調査とのデータの整合性を回復し、鉄道利用と自動車利用
を都市交通全体の中で捉え、競合と分担の中で、相互依存的関係を保ちつつ均衡を保っている状態を質
的・計量的に示し、効果的インフラ整備についての方向性についての研究を進めるとともに、並行的に
は都市物流の効率化、都市交通と都心の活性化についての研究も進めたい。
-38-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 11
主査名
小早川 悟 ・ 日本大学理工学部 教授
研究テーマ
東京都市圏における物資流動のビックデータからみた道路整備効果の分析※
研究の目的:
わが国では、人と物の移動を把握するため昭和 40 年代よりパーソントリップ調査と物資流動調査が定期的に実施
されてきており、直近では、平成 25 年から 26 年にかけて第5回の東京都市圏の物資流動調査が実施された。この調
査では、事業者機能調査や貨物車走行ルート調査等が実施されているが、近年の情報通信技術(ICT: Information
Communication Technology)などの技術革新により、これまでは取得収集が困難であった様々な交通データが得ら
れるようになってきた。そこで、本研究では、東京都市圏で実施された物資流動調査のデータおよび民間企業が蓄
積している貨物車のプローブデータを用いて、ビックデータの解析手法を検討することを目的とした。
研究の経過(4 月~3 月)
:
本プロジェクトでは、まず、貨物車のプローブデータを活用した既存研究の整理を行った後、東京都市圏物資流
動調査の際に得られた小型貨物車と中型貨物車のプローブデータの分析方法に関する議論を実施した。通常は、
プローブデータを活用するためにはデジタル道路地図に位置情報データをプロットしてく作業が必要であるが、これ
とは別の簡易的な方法として貨物車のプローブデータをトリップ毎に分割して分析を進めていくことの可能性につい
ての議論を行った。その後、中型および小型貨物車のプローブデータをトリップ毎に分割した OD(起終点)データと
して、貨物車の流動構造を分析した。
研究の成果(自己評価含む):
東京都市圏における中型および小型の貨物車の移動実態をプローブデータをもとに OD の分析を行ったところ、
中型車は埼玉県や神奈川県などの圏央道周辺の郊外部に多くの発着地があるのに対し、小型車は都心部に発着
地が存在していることが判明した。また、OD 間の直線距離と移動時間を見ると、中型車と小型車で OD 間の直線距
離は小型車の方が短いにも関わらず、移動時間が長くかかっていた。今回は、中型および小型の貨物車のプローブ
データを OD データとすることで、東京都市圏における物流構造を明らかにしてきたが、さらなる分析方法の検討が
必要であり、そのための課題も多く存在することがわかった。
今後の課題:
日々蓄積される貨物車プローブのビックデータをどのように分析すれば、今後の物流政策の基礎データとして使
用できるものとできるかが今後の大きな課題である。特に、これまでは局地的しか明らかにされてこなかった端末物流
の実態を分析するデータとしての活用方法の可能性をさらに検討していく必要がある。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 12
主査名
金 利昭 ・ 茨城大学工学部 教授
研究テーマ
理想の移動・空間・活動に関する研究
研究の目的:
移動の意味的側面すなわち移動することによる人間の精神的・身体的利点、あるいは交通の社会文化的側面を
考えれば、これまでとは異なった交通社会のあり方が描けるはずである。そこで都市空間や交通システムのあり方を
考えていく上で、また交通文化を豊かにしていく上で、「移動」と「空間」と「活動」の三者の関係性の実態とあり方を探
ることが重要であると考えた。本研究の目的は「移動」と「空間」と「活動」との関係性を、「現実」と「理想」の両面にお
いて多面的に探ることである。
研究の経過(4 月~3 月)
:
①
自動運転の動向と課題(自動運転はどこまで行くか、車はどうなるか、人のモビリティはどうなるのか、車・人・社
会の関係)を議論した。特に将来の交通の姿として、カーシェアリング依存や「Mobility as a Service(旅行者は
出発地から目的地までの移動に必要なサービスをパッケージとして受け取る)」が興味深い。
②
国際会議に出席した研究メンバーから、本研究と同じ問題意識を持つ米国の Mokhtarian を中心とした海外の
研究動向が報告された。Mokhtarian が Transport Reviews に発表したサーベイ論文が参考になる。
③
移動制約者に対するグループインタビューを行い、移動に対する意識(移動手段別好き嫌い、移動を増やした
いか減らしたいか、どこでもドアの利用可能性、等)を把握することで、移動の本源的需要を議論した。
④
平成 25 年度に実施した WEB 調査データ(3700 サンプル)を用いて、理想の移動・空間・活動分析を進めた。
研究の成果(自己評価含む):
全国7都市圏の WEB 調査データの内、東京データを用いて目的別に現状と理想の頻度、手段、時間を分析した。
①
理想の頻度については、通勤通学目的と買い物目的では、理想では現状よりも頻度を減らしたい傾向,散歩ド
ライブでは頻度を増やしたい傾向がある。これを世代別でみると,通勤通学目的の頻度では若い世代のほうが
高頻度を求めるが,買い物目的や散歩ドライブでは高齢世代ほど高頻度を求める傾向がある。
②
理想の移動時間については、通勤通学目的と買い物目的では移動時間を減らしたい傾向、散歩ドライブでは
増やしたい傾向がみられた。理想的な移動時間の平均(0 分を除く)は,通勤通学目的で 17 分,買い物目的で
8 分,散歩で 43 分である。また年齢が高いほど移動時間が長くなる傾向がある。
③
通勤の有無に着目して買い物目的の理想の生活行動を分析した結果、通勤者に比べて非通勤者は理想の買
い物頻度が高く、徒歩を選択する割合が高い。これは、非通勤者は通勤者に比べて相対的に移動量が少ない
ために移動したいという欲求を買物のような生活行動で満たそうとしているのではないかと考察した。
今後の課題:
「移動」と「空間」と「活動」との関係を詳細に分析するには WEB 調査データでは限界があった。特に、空間との関
係を分析するためには、別途アンケート調査による詳細なデータが必要と考えられる。
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平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 13
主査名
岩尾 詠一郎 ・ 専修大学商学部 教授
研究テーマ
ライフスタイルの変化にともなう新たな物流サービスに関する研究※※
研究の目的:
近年の少子高齢化による、過疎化問題や高齢者の介護問題や医療問題、女性の社会進出や生活の 24 時間
化、商品の差別化等による生活の多元化、および情報化や国際化により、人々のライフスタイルが変化して
いる。
この少子高齢化、生活の多元化、情報化、国際化は、小口貨物の多頻度輸配送の増加等の物流サービスに
影響を与えることがあるため、ライフスタイルの変化により、新たな物流サービスが必要となる場合もある。
このことから、ライフスタイルの変化と新たな物流サービスの相互関係を明らかにするとともに、新しい物
流サービスの成立要件を明らかにする必要がある。
そこで、本研究では、ライフスタイルの変化と既存の物流サービスの事例を明らかにし、既存の物流サー
ビスを分類し、ライフスタイルの変化との相互関係を明らかにするとともに、ライフスタイルの変化にとも
なう新たな物流サービスが成立する要件を明らかにしていくことを目的とする。
研究の経過(4 月~3 月)
:
本年度は、研究を「ICT 化と少子高齢化と流通チャネル WG」、「コンパクトシティ WG」、「中山間地域問題 WG」、
「宅配サービス WG」の 4 つの WG で研究の検討を行い、研究会で報告した。
具体的には、①「ICT 化と少子高齢化と流通チャネル WG」では、モビリティの確保とアベイラビリティーの確保の相
互関係を、買い物支援の対策例をもとに明らかにするとともに、流通チャネルに与える影響を示した。②「コンパクトシ
ティ WG」では、コンパクトシティ実現前後の物流に与える影響の数量的分析の方法を明らかにするとともに、コンパク
トシティが実現した場合の物流の効果について数量的に分析をした。③「中山間地域問題 WG」では、中山間地域を
対象に、集落の拠点を活用した生活必需品と一般ごみの効果的な輸送・分別方法の検討方法を明らかにするととも
に、生活必需品と一般ごみの輸送の組み合わせによる移動距離の短縮効果を示した。④「宅配サービス WG」では、
宅配に関連する物流サービスの事例と課題を明らかにするとともに、新たな宅配サービスの成立可能性について定
量的な分析をした。
研究の成果(自己評価含む):
研究の成果としては、ライフスタイルの変化と既存の物流サービスの事例から、①ICT 化と少子高齢化が流通
チャネルに与える影響、②コンパクトシティ実現前後での物流の変化、③中山間地域において生活必需品と一般ゴ
ミの組み合わせ輸送の可能性と輸送距離の短縮効果、④新たな宅配サービスの成立可能性を明らかにすること
ができた。
今後の課題:
今後の課題としては、ライフスタイルの変化にともなう新たな物流サービスが成立する要件を、実際に新たな物流サ
ービスをおこなっている事例をもとに、実態分析をおこなうことで、新たな物流サービスの成立要件を明らかにしてい
く必要がある。
-41-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 14
主査名
中村文彦 ・ 横浜国立大学大学院都市イノベーション学府・研究院 教授
研究テーマ
新興国の都市公共交通政策の動向に関する研究
研究の目的:
本年度は、この2年間の成果を引き継ぎ、対象地域にアフリカや中南米の大都市を加え、一方で、特に都市公共
交通にかかる課題に焦点を絞り、文献調査や、対象地域からの留学生や招聘研究者へのヒアリングを通して、現状と
課題について資料を収集する。具体的な政策課題への展開については、過去20年を念頭に、各公共交通機関、関
連する道路交通政策について、どのような研究調査が展開されたかを整理した上で、環境問題、エネルギー問題、
健康問題、貧困問題、交通事故問題とモータリゼーション問題とのバランスの中で政策課題について検討する。
研究の経過(4 月~3 月)
:
研究会を4回開催した(6月4日、8月4日、10月20日、12月17日)。内外の学術刊行物の中での新興国の都市
公共交通に関連する研究事例のレビュー、南米のブラジルやコロンビアの都市公共交通の事例紹介、これらの国の
公共交通を題材とした研究分析事例の紹介などを行い、環境問題などとの関連性を議論した。低所得者地区の交
通行動の変化の可能性、BRT システムにおける専用道路舗装維持管理費用の評価手法、あわせて BRT と都市計
画や交通事故問題との関連性を議論した。
研究の成果(自己評価含む):
精力的な文献レビューを行い、環境問題、エネルギー問題、健康問題、貧困問題、交通事故問題、モータリゼー
ション問題を踏まえて課題を整理した。ケーススタディとしては、ビエンチャン、コンケン、クリチバ、アスンシオン、メデ
ジンなど東南アジアや南米の大都市あるいは中規模都市をフィールドとした研究成果を共有した。特にメデジンのロ
ープウェイと貧困層雇用問題との関係、クリチバの BRT と維持管理費用問題との関係を分析できた。
課題の領域が多様であり、また地域による社会的、文化的背景条件も異なることもあり、まだまだ取り組むべき課題
が多く、継続的な研究活動が必要である。
今後の課題:
今後重要となっていく、バス、軌道系そしてバスターミナル等交通結節点については、より精力的に検討を進め
る。
-42-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 15
主査名
寺田一薫 ・ 東京海洋大学大学院 教授
研究テーマ
地方の生活を支える物流と関連インフラの効率的供給に関する研究
研究の目的:
人口減少下での需要減少に直面しながら、地方交通分野、とくにインフラや運搬具への投資を伴う分野において
は、サービス低下かそれを回避するための政府補助金高騰が避けられなくなっている。とりわけ地方の物流は深刻な
問題に直面している。このような状況におかれているフェリー、港湾、空港、道路等について、サービス維持のための
政策課題抽出を行う。
研究の経過(4 月~3 月)
:
「港湾貨物流動と地域経済構造」と題し、港湾が地域経済に果たす重要性と実際の貨物流動量とのギャップ、なら
びに関連した港湾のタイプ分けについて議論した。「地方路線をめぐる航空自由化と地方空港の対応」と題し、イン
フラ管理形態の差が収益性に与える影響等を討議した。また「フェリー航路における PSO(供給義務)とユニバーサル
サービス」として、非対称規制下での供給義務付与の枠組みについて整理した。
「食料品アクセス問題とその課題」と題して、買物支援策の評価、とくに会員制小規模店舗運営の可能性について
議論した。「地方の物流危機」と題して、安定的トラック輸送提供について討議を行った。
サブテーマ的研究として、「高速道路の管理運営の費用効率性とインセンティブ」と題し、契約形態が管理費に与
える影響、「ルーラル地域における生活情報サービスへのアクセスについての研究」と題し、過疎地域一般のアクセ
シビリティ・社会的排除に関する討議を行った。また「ガスシステム改革とパイプライン拡張投資」と題して、空間的な
ネットワークサイズと価格の組合せについての理論的検討を行った。
研究の成果(自己評価含む):
地方の生活を支える物流を中心とした種々のインフラ、サービスについて、包括的な情報収集と課題抽出を行うこ
とができた。一方で、サービス毎の各論を超えた整理、ならびに経済的に中心課題となるべき効率化という観点から
の検討を十分行うに至らなかった。
今後の課題:
サービス横断的な課題整理と効率化のための政策次元の検討が必要であるが、そのためにはインフラ、サービス
間の比較、ならびに国際間での政策比較が課題になる。現状では、ユニバーサルサービス、PSO などの基本的用語
も統一的に使われておらず、一層精緻な整理が欠かせない。
-43-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 16
主査名
原田 昇 ・ 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 教授
研究テーマ
交通まちづくり:「立地適正化計画」時代の都市交通計画
研究の目的:
「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」の実現が目指される昨今、2014 年に創設された、都市再生特別措置法等
の改正による「立地適正化計画」と地域公共交通活性化・再生法の改正による「地域公共交通網形成計画」の両制
度は、今後の都市交通計画にとってとりわけ重要な意味を持つと考えられる。本研究では、こうした制度の転換期に
立った総合的な都市交通計画のあり方について検討することを目的としている。
研究の経過(4 月~3 月)
:
年度内に 4 回の研究会を開催し、メンバーやゲストからの話題提供に基づいて討議を行う形式で進めた。経過に
ついては「研究の成果」の項で併せて述べる。
研究の成果(自己評価含む):
第一に、地域公共交通活性化・再生法の改正の経緯・ポイントと地域公共交通網形成計画の策定事例(四日市
市、高松市など)に関する報告、市町村マスタープランに位置付けられた「拠点」の設定や機能集積の実態を全国 39
都市を対象に分析した研究の報告、最初期に公表された箕面市の立地適正化計画素案に見る居住誘導区域と都
市機能誘導区域の設定方針の紹介を受けて、地域公共交通とまちづくりの連携に関する論点や、拠点設定のある
べき姿について討議し、これらの計画論の必要性を改めて確認した。
第二に、岐阜市を対象として、公共交通とまちづくりの連携を深掘りするケーススタディを行った。特に地域公共交
通網形成計画を見据えたバス路線再編に関わる分析と検討の過程を追い、計画立案の実際を整理した。また、路線
網と都市計画(拠点設定、沿線密度)の重ね合わせ方などの課題を整理した。
第三に、宇都宮生活圏と津山生活圏を対象に、国勢調査データを用いた 3 次メッシュ単位の分析から、将来の土
地利用をコンパクト化したケースにおける公共交通利用者数や収支を推計した研究が報告された。これに基づき、コ
ンパクト化シナリオの適切性、推計手法の限界、推計値の妥当性などについて議論を行った。
以上のほか、台湾における LRT と BRT の動向、拠点地区における交通対策としてのららぽーと立川の事例、重伝
建地区における駐車場の実態などについて、それぞれ報告に基づき討議を行った。総じて、主に基幹的な公共交
通網の計画と、拠点を中心とした土地利用側の計画のあり方について、現状の把握を踏まえた幅広い検討が行えた
と評価する。
今後の課題:
現在はいくつかの都市において立地適正化計画や地域公共交通網形成計画の具体的な姿(素案)が見え始めて
きたところであるが、今後策定がより本格化するものと見込まれる。これらについてさらなる調査・分析を行うとともに、
立案に資する計画論と分析手法に関する検討を深めることが課題である。
-44-
平成 27 年度研究プロジェクト研究概要報告
研究種別
■自主研究 17
主査名
大森宣暁 ・ 宇都宮大学大学院工学研究科球環境デザイン学専攻 教授
研究テーマ
少子高齢社会における子育てしやすいまちづくりに関する研究
研究の目的:
本研究は、我が国の社会的文化的特性を反映した少子高齢社会における子育てしやすいまちづくりのあり方を、
都市・交通・建築・福祉・教育等、幅広い視点から総合的かつ具体的に検討することを目的とする。
研究の経過(4 月~3 月)
:
6 月に九州大学で開催された第 51 回土木計画学研究発表会において、「子育てしやすいまちづくり」セッションを
企画し、研究会メンバー以外の参加者を交えて、子育て世帯の生活の質向上に資する都市・交通施策に関して多
様な視点から議論を行った。研究会では、ゲストスピーカーによる講演「都市構造、就労形態、支援施設の一体的整
備による子育て支援環境の構築」と議論、土木計画学研究発表会での研究発表・質疑についての報告、大都市と地
方都市での子育て環境の違い等について、多様な視点から議論を行った。別途、昨年、宇都宮市内の 3 保育園で
実施した、子育て共働き世帯の家事・育児の役割分担の実態や意識に関するアンケート調査データの分析を進め
た。また、本アンケート調査の回答者の中で、追加調査への協力意向を示した世帯を対象に、Web ベースの活動・
交通シミュレーターARIGATO を用いて、送迎の役割分担を変更した場合の夫婦と子のスケジュールを提示し、理想
の役割分担に関する意向を把握した。
研究の成果(自己評価含む):
アンケート調査および活動・交通シミュレーターの適用により、共働き子育て世帯の家事・育児の役割分担の実態
や意識を明らかにし、他の子育て世帯の家事・役割分担の実態との比較、および送迎の役割分担を変更した場合の
子どもと過ごせる時間の変化に関する情報提供は、子育て世帯にとって家事・育児の役割分担を再考する機会とな
る可能性があることを示した。
今後の課題:
子育てしやすいまちづくりの実現に向けて、子育て世帯の日常生活を制限する「都市のバリア」の緩和と同時に、
「心のバリア」を緩和する具体的な手法と効果を検討することを、今後の課題としたい。
-45-
参考 公益目的事業と平成27年度研究プロジェクトの位置付け
公益目的事業の種類
研究テーマ
1 学術および科学技術の
16
17
事故または災害の防
自動運転と損害賠償責任
止を目的とする事業
特資
公益目
的事業
1
福田弥夫 共同
1
11
自動二輪車の交通事故分析とその活用
高田邦道 共同
2
11
テレマティクス自動車保険の導入可能性と課題
堀田一吉 共同
3
11
交通事故対策の効果評価と今後の交通事故情勢に関する研究
西田 泰 自主
1
11
鹿島 茂 共同
4
16
秋山孝正 共同
5
気候変動に対する緩和と適応を考慮した中長期的な都市と交通システムの整備方策
に関する研究
室町泰徳 共同
6
16
企業間(BtoB)小口貨物輸送需要に対応した宅配便ネットワークの構築に関する研究
林 克彦 自主
2
16
サプライチェーンの空間的分散化とレジリエンスに関する研究
黒田達朗 自主
3
16
社会的費用便益分析の研究―地方の社会環境維持と交通インフラストラクチャー整備
庭田文近 自主
(基礎理論プロジェクト)
4
16
動的交通シミュレーションを活用した自動車関連税政策の分析
河野達仁 自主
5
16
旅行時間信頼性と利用者行動
福田大輔 自主
6
16
根本敏則 共同
7
加藤一誠 共同
8
17
交通ネットワーク分析を統合したSCGEモデルによるリニア中央新幹線整備の便益評価
森杉壽芳 自主
―便益と実質GDP変化との関係の整理を中心に―
7
17
道路を中心とした社会資本整備の経済分析
井堀利宏 自主
8
交通インフラストラクチャと地域経済に関する研究
文 世一 自主
9
地域・都市の総合交通政策の研究
-地域交通政策における道路交通の意義について-
石田信博 自主 10
松澤俊雄
駐車
17
東京都市圏における物資流動のビックデータからみた道路整備効果の分析
小早川悟 自主 11
道路
17
理想の移動・空間・活動に関する研究
金 利昭 自主 12
地球環境の保全又は
交通需要の長期的変化と社会・経済環境
自然環境の保護及び
整備を目的とする事 低炭素型車両に着目した都市交通政策の有効性についての研究
業
国土の利用、整備又
課金などによる大型車マネジメントに関する研究
は保全を目的とする
事業
欧米を中心とした交通インフラの整備・維持管理・更新の財源調達と組織形態に関わ
る研究
ライフスタイルの変化にともなう新たな物流サービスに関する研究
19
種別
全ての研究
振興を目的とする事業
11
主査
地域社会の健全な発
地方での都市集約化過程における人口と都市施設分布の相互作用に関する研究
展を目的とする事業
道路
道路
道路
17
17
17
17
岩尾詠一郎 自主 13 駐車
藤原章正 共同
16
17
9
駐車
19
地方都市の交通政策と運輸行政のあり方
井原健雄 共同 10
駐車
19
自動車交通の市場、地下鉄の運賃政策、都市集積の経済、および地域経済の分析
田渕隆俊 共同 11
19
LRT導入と沿線土地利用に関する研究
森本章倫 共同 12
19
地域交通の維持における住民参画の意義と課題
青木 亮 共同 13
19
新興国の都市公共交通政策の動向に関する研究
中村文彦 自主 14
19
地方の生活を支える物流と関連インフラの効率的供給に関する研究
寺田一薫 自主 15
19
交通まちづくり:「立地適正化計画」時代の都市交通計画
原田 昇 自主 16
19
少子高齢社会における子育てしやすいまちづくりに関する研究
大森宣暁 自主 17
19
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