生産経営技術向上事業

農畜産業振興事業団
指定助成対象事業
平
成 11
年
度
畜産経営安定化指導事業(生産経営技術向上事業)
報
告
書
デンマーク・フランスにおける農家支援指導体制
平 成 12 年 3 月
社団法人 中 央 畜 産 会
はしがき
わが国では農政改革の動きが急ピッチで進められている。平成10年12月には
農林水産省から今後の農政改革の基本となる「農政改革大綱」ならびに「農政改革
プログラム」が発表され、平成11年3月にはこれに即して酪農・乳業に係る各般の
施策を見直した、「新たな酪農・乳業対策大綱」がだされて、酪農・乳業に関する総
合的な方向性が示された。いま、それに基づく諸施策が具体化しつつある。
この中では、意欲ある酪農の担い手農家の経営安定のために、全酪農経営体に関
する経営管理情報のデータベース化の推進により、経営実態に応じたきめ細かな指
導体制の整備を行なうこととしており、経営管理に対する支援指導が重要な課題な
っている。
このような視点から、海外の先進的経営管理技術と、それを支援指導する農業関
係機関・団体の取組みについて、デンマークとフランスで実態調査をおこなうこと
とした。この調査報告書は、その両国の調査結果を取り纏めたものである。なお、
調査は本会の事業第一統括部中村民夫情報業務部長が担当した。
本調査の実施に当たっては、農林水産省畜産局はじめ農畜産業振興事業団の関係
者の方々にご高配とご協力を賜った。また、資料提供その他について、デンマーク
日本国大使館・頼田勝見氏、デンマーク在住養豚アドバイザー・砂川徹氏、農林水
産省農業総合研究所・須田文明氏、岡山大学農学部・横溝功教授にご協力をいただ
いた。ここに謝意を表する次第である。
この報告書が関係者の方々の参考になれば幸いである。
平成12年3月
社団法人
中央畜産会
本報告書の略号と単位
本報告書では、略号、単位、翻訳用語について、次のように取り扱っている。
1、デンマーク
DFU:The Danish Farmers’ Union-デンマーク農民同盟
DFFA:The Danish Family Farmers’ Association-デンマーク家族農民協会
DAAC:The Danish Agricultural Advisory Center-デンマーク農業指導センター
LAAC:Local Agricultural Advisory Center-地方農業指導センター
(注)
「Advisory
Service」の用語翻訳について
DAACやLAACは農業者に対するAdvisory Serviceが主要な業務の一つとなっている。
この日本語訳として「普及事業」という用語が用いられ、DAACを「デンマーク農業普
及センター」、LAACを「地域(地方)農業普及センター」、そしてこれらの業務にたず
さわるAdviserを「普及員」としている報告書も多い。しかし、Adviserの活動は畜産会
の行っている「畜産コンサルタント」業務に近いため、ここでは英語そのままの「ア
ドバイザー」とした。また、Advisory Serviceについては「支援指導」とすることとした。
・通貨単位:dkk(デンマーククローネ)
:ここでは1dkk=17円で換算
2、フランス
CNCER:Conseil National des Centres d’Economie Rural−農業経営センター全国会議
ANDA:National Association for Agricultural DevelopmentFNDA:National Fund for Agricultural Development
・通貨単位:フラン(F)
:ここでは1フラン=20円で換算
「デンマーク・フランスにおける農家支援指導体制」
目
次
はしがき
本報告書の略号と単位
要約 ………………………………………………………………………………………
日程と調査訪問先 ………………………………………………………………………
Ⅰ.デンマークの農家支援指導組織 ………………………………………………
1
2
3
1、デンマーク農業の概観 ………………………………………………………
2、デンマーク農民同盟(DFU)と農業団体の活動 …………………………
3、農業指導センターの支援指導事業 …………………………………………
4、デンマークの農業教育と農業関係者教育 …………………………………
5、訪問した農場の概要 …………………………………………………………
5
8
14
29
37
Ⅱ.フランスの農家支援指導組織 ………………………………………………… 43
1、フランス農業の概観 ………………………………………………………… 45
2、農業会議所の支援指導 ……………………………………………………… 47
3、CNCER(農業経営センター全国会議)の支援指導 ……………………… 52
4、訪問した協同組合企業と農場の概要 ……………………………………… 57
・参考文献・資料 ……………………………………………………………………… 61
Ⅲ.翻訳資料 …………………………………………………………………………
1、農業アドバイスサービスに対するリカレント教育の政策 ………………
2、フランスの農業普及 …………………………………………………………
63
69
79
[要
約]
わが国の畜産担い手農家に対する経営管理技術面での支援指導が重要な課題となってい
る。このため、デンマークとフランスにおける農家支援指導組織と、その行っている活動
について調査をおこなった。
デンマークでは農民組織(農民同盟と家族農民連盟)の元に、デンマーク農業指導セン
ター組織が農家支援指導サービスを行っている。その活動内容は会計処理と税務・諸申請
書類の取りまとめ、生産技術結果の処理とアドバイス、農家継続教育などである。
活動財源は国庫助成金から受益農家の負担に変わりつつある。支援指導内容も、技術普
及と開発というものから、農家個々に抱える問題への具体的アドバイス、別の用語で言え
ばコンサルテーション活動になっている。農業指導センター職員は3,250名いるが、その7
割は会計サービス部門の職員であり、最も農家ニーズが高い部門でもある。会計サービス
は農家利用料金により運営されており、助成金はこの部門では使われていない。
支援指導が有料になる中で、アドバイス品質の向上のために農業指導センターの職員の
スキルアップが重要な課題となっている。そのためアドバイザーへの再教育(リカレント
教育)カリキュラムが木目細かくつくられ、実行されている。
フランスでは農業会議所が幅広い農家支援指導活動を行っているが、会計分野は会議所
と協力しながら経営管理センター(CER)組織が農家会計専門サービスを行っている。CER
組織は全国に配置されており、その職員数は10,000名と多い。CERの会計処理サービスの
会員は農家30万戸(農産物生産額の85%をカバーしている)に達しており、受益者の利用
料金により組織を運営している。これだけ活動が定着している理由として、農家のメリッ
ト-つまり一定以上規模の農家は会計士による決算書類の作成と税務申告が義務付けられ
ており、その見かえりとして20%の節税が認められる-が大きいことがあげられる。CER
の料金は民間会計事務所を利用する場合に比べて安いという。
両国の支援指導サービスの有料化は、まず会計処理代行サービスから行われ、その後に
飼養管理や畜舎施設などのコンサルテーションサービスを有料化しつつある点で、共通の
ものがある。
-1-
[日程と調査訪問先]
1999年6月という時期は、ベルギー産の飼料及び鶏肉脂肪から高濃度ダイオキシンが検
出され、日本はベルギー、オランダ、フランス産の畜産物の輸入手続を保留した時期であ
った。調査国フランスもこの対応に追われており、農業会議所の調査を希望していたが相
手機関の事情により実現できなかった。農業会議所は幅広い支援指導活動を行なっている
機関であるが、このような事情により、フランスの調査内容にはやや限界があった。
日程と調査訪問先は下記のとおりである。
日程と訪問先
月日・場所
訪問機関・面談者
面談内容
1999年6月21日(月)
東京→コペンハーゲン移動
6月22日(火)
①コペンハーゲン
②オーデンセ
①デンマーク農民同盟
Hanse Helge Pedersen氏
②フュン島養豚事務所
①・デンマーク農業概要
・DFUの組織と活動
②アドバイザーの活動について
Morten Thomsen 氏
6月23日(水)
①オルフス
②オルフス郊外
①農業指導センター
Kund Buck Jepsen氏
②酪農農場、養豚農場
Jens Soerensen氏
農場マネージャ
6月24日(木)
オルフス→パリ移動
①・農業指導センターの組織と活動
・農業者教育について
②・経営内容について
・アドバイスサービスの評価について
Morten氏
①CNCER
①・CER組織の歴史について
Loic Le Menn氏
・CERの活動について
①パリ
6月25日(金)
①アンセニー
①乳製品輸出会社EPI
Laurent
①・EPIの業務概要について
・協同組合企業の概要について
Gallois-Montburn氏
②アンセニー郊外
②酪農牧場
②・経営内容について
Jean.Micel Claud氏
6月26日(土)
アンセニー→パリ移動
6月27日(日)~28日(月)
パリ→東京
-2-
・支援指導の評価について
Ⅰ.デンマークの農業支援指導組織
-3-
-4-
Ⅰ.デンマークの農業支援指導組織
1、デンマーク農業の概観
デンマークの国土面積は43千平方キロメートルで、日本の九州とほぼ等しい大きさであ
る。人口は513万人で、これは北海道とほぼ等しい。このような小さな国ではあるが、農産
物の大輸出国となっている。特に豚肉では生産量の75%以上を世界100カ国以上に輸出して
おり、輸出量ではアメリカとならぶ超大国である。
デンマークの養豚の歴史はそれほど古いものではない。約100年前まではデンマークは麦
の輸出国にすぎなかった。主たる輸出先は英国であったが、アメリカの安い穀物が英国に
輸出され、その対応策として養豚への転換を図った。麦を輸出ではなく、家畜(豚)に給
与して、その生産物である豚肉を輸出することにより高付加価値農産物生産に転換して今
日に至っている。
この国の農業も近年、大きく変わりつつある。農場規模の拡大と農業人口の減少、乳製
品の在庫増加、価格低迷による乳牛頭数の減少と養豚の増加という中で、家畜生産性や労
働生産性を向上させて、農産物輸出国としての地位を保っている。
そのような概観を表-1に示した。
農場数は61千農場、農地面積は2,658千ヘクタールであり国土の62%が農用地として利用
されている。ここ40年間の推移をみると、農場数は60年に196千農場あったものが大きく減
少し97年には61千農場と1/3以下となり、平均農場面積は15.8haから43.6haと約3倍に
規模拡大された。
97年に農業に投下された労働力は75千人であり、農業就業人口比は3%程度であった。
60年には農業労働人口は300千人で、就業比率では16%を占めていたのと比べると、農業人
口は大きく減少している。しかし、この僅か3%の農業労働人口で国内供給をはるかに上
回る農産物を生産しており、農産物の62%を輸出している。農産物輸出額は545億dkkで輸
出総額の17%にもなっており、この国の重要な輸出産品となっている。
農業関連企業の合併統合も進んでいる。97年では乳業企業数は32企業、食肉処理加工企
業数は4企業(99年には3企業)となった。
家畜飼養頭数では、乳牛は67年には1,329千頭だったが、バター等の乳製品価格が低迷し
たことから、その後大きく減少して97年のは670千頭となった。一方、豚は1960年以降飼養
頭数を増加させ97年には肉豚出荷頭数で21百万頭となった。家畜生産技術の改善も目覚し
いものがある。経産牛1頭当たり年間乳量は7,670kgとなり、母豚1頭当たり年間子豚生産
頭数も22頭となった。
経営形態もこの間に大きく変化した。67年にはデンマーク農場は畑作物と牛・豚両方の
-5-
家畜を飼養する畜種複合経営が大半を占めており、畑作+1畜種複合経営は少なく、また
家畜を有さない畑作専業経営は僅か8%であった。しかし、現在ではこの関係は逆転して
おり、畜種複合経営は僅か12%となり、畑作+単一畜種複合経営あるいは畑作専業経営が
大半となっている。
なお、デンマークの畜産が日本のそれと大きく異なる点は、農場は十分な耕地を所有し
ており、そこから生産された穀物を利用して畜産を行っている、ということである。さら
に、近年の畜産環境対策でもこの国では耕地がなければ家畜飼養はできない仕組みとなっ
ている。畜産環境対策では1.7家畜単位の家畜飼養に対して1haの耕地が必要と規定されて
いる。養豚の場合には「1家畜単位=3頭の繁殖豚=肥育豚年間30頭」と換算される。従
って、仮に養豚繁殖経営で母豚60頭規模の場合には最低でも20haの耕地を所有していなけ
ればならないこととなる1)。
この国の農業は家族経営を基本としているが、経営継承方法には大きな特徴の特徴があ
る。この国の税法では、農家は息子や娘に農場を相続させるための相続税はかなり高く設
定されているため、「相続」が実質上できない仕組みとなっている。生まれ育った農場で農
業を行おうとすると、子供は両親から農場を時価で購入しなければならない。
農場購入のために若者たちは自己資本蓄積と資金融資により購入資金を調達する。融資
機関は必要額の70%までの融資が上限となっているので、少なくとも30%以上は自己資本
を準備しなければならない。
農業をおこなおうとする若者たちは、このために農業者として土地を取得できる「グリ
ーン証」を取得するための農業専門教育を受ける。卒業後は自己資金蓄積と農業技術や農
場経営能力等のスキルアップを兼ねて、農場の雇用労働者となるのが一般的であるという。
親子で農場を売買する場合には、初期の資本投資額を少なくするために半分だけを買っ
ておいて、両親と経営を続け、やがて親世代がリタイアするとともに残りを買い取る、と
いうケースもあるが、この場合であっても農業の継承は相続ではない。
このように、農場を購入して農家となり、経営を発展させて、高齢となると農場を販売
してリタイアする、これがデンマーク農民のライフサイクルとなっている。
-6-
表-1
デンマーク農業の主要指標
比 較
値
1997年
農場数
1960年
196,000
戸
60,900
戸
1農場当り平均経営規模
1960年
16
ha
44
ha
農業就業人口比
1960年
16
%
3
%
農産物輸出比率
1960年
74
%
62
%
乳業企業数
1960年
1,350
企業
32
企業
と畜企業数
1962年
77
企業
4
企業
乳牛頭数
1967年
1,329
千頭
670
千頭
乳牛1頭当り年間産乳量
1967年
4,750
kg
7,670
kg
豚と畜頭数
1967年
母豚1頭当り年間子豚生産頭数
1967年
12
頭
22.0
頭
家畜と畑作物の複合経営割合
1967年
78
%
12
%
酪農専業経営割合
1967年
4
%
32
%
養豚専業経営割合
1967年
10
%
18
%
畑作物専業経営割合
1967年
8
%
39
%
-7-
11.2 百万頭
21.1 百万頭
2、デンマーク農民同盟(DFU)と農業団体の活動
デンマーク農民同盟(The Danish Farmers’ Union : DFUと略記)は、デンマーク農業者の
社会生活の基盤の整備と強化を目的に活動してきた。最初の農民同盟は、1805年に設立さ
れているが、本格的な全国組織であるデンマーク農民同盟(DFU)は1893年に設立されて
いる。一時は15万人の会員を要していたが、現在は6.5万人に減少し、地方の同盟は80とな
っている。
一方、最初の小農組織ができたのは1840年であり、1910年になって全国組織であるデン
マーク小農連盟が設立され、その後にデンマーク家族農業者連盟(The Danish Family
Farmers Association:DFFA)と改められた。一時は全国に約700の地方連盟が作られ、小農
運動が大きく前進したが、現在は190の地方連盟、1.7万人の組合員となっている。
デンマークの支援指導事業は、全国段階での組織である農業指導センターと地方段階の
組織である地方指導センターによりおこなわれているが、この組織は利用者である農民に
より管理され、農業者組織であるDFUとDFFAによって運営されている。政府は支援指導事
業を支援しているが、主体はあくまでも農業者自身である2)。
1)
デンマーク農民同盟の組織
1805年、初めての地方農民同盟が設立され、それ以来、地方レベルでのデンマーク農民
の暮らしに大きな影響を持ってきた。全国組織としてのDFUは1893年に設立され、それ以
来デンマーク各地で地方同盟が設立されていった。
デンマーク農民同盟は、個々の農民同士が地方連盟レベルで協力しあい、さらにそれら
の組織が国家レベルで協力しあうことで発展してきた。これは今でも農民同盟の機構を特
徴づけるものとなっている。
年1回行われる全国代表者会議では、農民同盟の執行部を選び、全体の方針決定を行う。
これらの決定はよく機能する民主的機構に基づいてなされる。
農民連盟の組織は、絶え間ない発展と変化への対応を経てきたが、最新の組織は図-1
のとおりである3)。
-8-
図-1
デンマーク農民同盟の組織構成
(1)地方農民同盟
約62,000人の農民は80の地方農民同盟に所属している。地方農民同盟の規模は様々であ
り、100人程度のものから2,000人のものまである。会員は総会で執行部を選出する。
同盟は会員に対する多岐にわたる活動を行っている。これらの活動は次にあげる3つの
カテゴリーに分類できる。
ア、 生産と経営における全ての場における支援および指導サービスを提供
イ、 国内および国外の農業政策等のに影響力を行使する代表者の選出
ウ、 文化活動や社会活動の拠点となる場の提供
(2)地域農民同盟
地方農民同盟は13の地域同盟を作っている。地域同盟では地方同盟で対応できない地方
を超えた支援指導サービスを提供するとともに、地域議会や地域官庁単位で構成員の利害
を守るために、地域交流や地域議員との接触を図っている。
(3)全国代表者会議
DFUの最高決定機関は全国代表者会議である。
、地方農民同盟から選ばれた450人の代表
が年に1度集まり、会議を行う。ここでは政治的目標を設定し、政策決定を行う。
代表者会議では議長1名と副議長2名を選出する。彼ら3名は自動的に理事会のメンバー
となる。この理事会は農家から選ばれた25名とともに28名で構成され、デンマーク農民連
-9-
盟の通常業務に責任を負う。
また、代表者会議は運営委員会(3人の議長と4人の選出されたメンバーからなる)を
選出する。この運営委員会は毎月一回開催され、組織の運営に責任を負っている。
(4)事務局
DFUの活動は3つの組織を通じておこなわれている。事務局(コパンハーゲン)、出版所
(コペンハーゲン)、デンマーク農業指導センター(オルフス郊外)、である。
事務局は45名の職員がおり、地方農民連盟や指導センターとの日々の接触、DFUの財務
管理、他組織との協力を行っている。事務局には経済統計部、生産計画部、農業法律・税
務・環境部、教育・支援・会員サービス部の4つの部があり業務をおこなっている。また、
議長と一緒に事務局は政府や政党、政府機関との密接な関係を維持している。
出版所は機関誌の配布を通じて会員と同盟のつながりを強固なものとしている。機関誌
は5種類発行している。週刊誌「Landsbladet(農業総合雑誌)」63,500部発行、「Landsbladet
Mark(作物)」15,700部発行、「Landsbladet Kvaeg(牛)」12,400部発行、「Landsbladet Svin
(豚)」8,200部発行、「Landsbladet Horses(馬)
」4,400部発行である。ここに勤務する職員
は約45名である。
(5)DFUの収入と支出
DFUの1996年の収入は54.2百万dkkで、その半分以上は会員負担収入28.2百万dkkである。
会員負担収入の中には出版局からの収入が含まれている(出版局では機関誌定期購読者と
して各農家から210dkkの収入に加えて、広告収入があり、合計45.2百万dkkの売上があっ
た)
。このほか、自己資金からの利息15.2百万dkk、共同基金からの利息10.8百万dkkである。
一方、支出は56.3百万dkkとなった。その内訳は出版局に17.4百万dkk、農業指導センター
(DAAC)に17.4百万dkk、事務局に20.1百万dkk、管理費5.4百万dkk、農業評議会等の負担金
が1.9百万dkkであった。
96年は支出が収入を上回り赤字となっているが、年によっては黒字の年もあり数年の単
位で調整が行われている。
-10-
図-2
DFUの収支(1996年)
2)デンマーク家族農民協会(DFFA)
最初の小農組織ができたのは、1840年のことであった。しかし、小農連盟が設立された
のは1896年になってからである。全国の連合会である「デンマーク小農民連盟」は1940年
に設立されている。その名は後に「デンマーク家族農民協会(DFFA)」と改めている。
全国に約700の地方連盟がつくられ、社会的、職業的なプロジェクトと取り組んできた。
1899年から1960年の間に、連盟の運動が大きく前進した。例えば大農場を分割して5~10ha
の家族農家をつくるための法令の整備などに成果をあげてきた。現在ではDFFAは190の地
方連盟、17千人の組合員を擁している。
-11-
3)農業協同組合
デンマークの農民が最初の組合をつくったのは、1880年代のことである。それら組織の
設立目的は、共同購入、共同販売と生産物の加工を共同でおこなおうというものであった。
こうしたことによって、小規模農家でもスケールメリットを得られるようにしたのである。
今日では農業協同組合は、基本的には組合員の商業活動に関わる事業を行っている。イ
デオロギーに関わらず、民主的ルールに基づいて、「1人1票」を原則としている。
利益はすべて組合員のものである。肉畜や酪農については、組合員は生産物を出荷し、
組合はそれを受け入れる義務をもっている。その契約は、一定期間で破棄できる。
例えば豚の場合、価格(生産者肉豚販売価格、種豚価格、子豚価格)の決定はデンマー
ク食肉連合(DS)の価格委員会が全国統一価格を週ごとに決めている。決定された販売価
格はデンマーク食肉連合の週報「マーケットニュース」に掲載され、その週において生産
者に支払われるべき基準価格として、すべてのと畜場に一律に適用される。この基準価格
の補正要素は体重(枝肉重量)と歩留率だけであり、肉質や肉色は基本的には考慮されな
い。従って、どこのと畜処理工場に出荷しても価格は基本的にかわらないことになる。
しかしながら、生産者の実際の受取価格はと畜処理工場ごとに異なっている。それはと
畜処理工場の経営努力により得られた利益の違いによるものであり、これらを反映したボ
ーナス制度がある。この制度は、生産者とと畜処理工場の両者が10月1日から翌年の9月
30日を1期とする長期契約を結び(契約期間は1~3年であるが、2年が一般的である)、
その期間のと畜処理工場の収益に応じた配当金を生産者に還元するという仕組みになって
いる。ちなみに95年の肉豚平均価格は1kg当たり9.64dkkであるのに対して、ボ-ナス支払
いの年間平均額は1kg当たり0.688dkkであった1)。
農業協同組合の畜産物の加工シェアーは高い。食肉では1962年に77の加工協同組合があ
ったが、その後の合理化と合併統廃合の結果、現在では3つとなったものの、そのシェア
ーは100%である。乳業協同組合では92%のシェアーを占めている。協同組合の合併による
巨大化が進み、販売面でも国際的な食品会社との競争に耐えられるようになったのである。
農業協同組合の活動は製品加工販売に止まらない。養豚では、その品種改良への取り組
みと、原種(繁殖豚)の供給事業、あるいは人工授精用の精液の供給事業などを行い、繁
殖技術などでは農家指導も行っている。農家支援指導事業との関係では、協同組合が要求
する肉豚や牛乳の品質維持のために、農業指導センターと協調して仕事をしている。
-12-
4)農業関係団体の協力
DFUのポリシーは、デンマークの農民と農業関係団体は政治的に重要な決定について、
できる限り合意のもとで行動するという点にある。現在、農民は、デンマーク人口のわず
か4%を占めるにすぎないが、DFUは他の農業関係団体と協力して、会員の政治力の強化
を図ってきた。
DFUはDFFAと協力して農業指導センターを運営しているなど、DFFUと密接に関わりな
がら、個々の農民とその経営を最優先させる活動をしてきた。デンマークの農業関係団体
はこのほかに、デンマーク農業青年組合、デンマーク企業的農業協会、食肉や牛乳などの
加工流通を行う協同組合連合などがある。これらの関係機関は「農業評議会」をつくって
活動している。
なお、
「農業青年組合」は35歳未満の農業に従事する若者のための組合であり、7,000名
の組合員がいる。農業に従事する若者のほか、教育中の学生も多い。
農業評議会はすべての主な農業関係団体を代表している。評議会は農民が直接運営して
いる団体を束ねる“傘機関”であり、34会員により構成されている。
政治交渉は農業評議会の政治経済会議が行う。この会議にはDFU、DFFA、デンマーク食
肉連合(DS)、デンマークデーリーボード、協同組合連合のトップから構成されている。
農業評議会の後援により、これらの団体はEUの評議会などと頻繁に接触するために、ブ
リュッセルに新しく事務所を構え、活動を行っている。
図-3
農業評議会
-13-
3、農業指導センターの支援指導事業
1)支援指導事業の特色
デンマーク農民はDFUとDFFAの組織を通じて支援指導事業を運営している。この2つの
農民組織の主な活動は前述したとおり、農民の利益を代表して政府や議会に政治的な要請
活動を行うことと、支援指導事業の運営の2つである。
地方レベルの支援指導事業は、地方農民同盟と地方家族農業者連盟が運営する80カ所の
地方農業指導センターを拠点に、個々の農家に対するアドバイスや彼らが必要としている
サービスをおこなっている。
全国レベルの活動はオルフス市郊外にあるデンマーク農業指導センターが行っている。
地方農業指導センターに対して試験研究成果や外国の最新情報を提供している。センター
はまた独自計画にしたがって、実用的な試験研究もおこなっている。
この国の支援指導事業は国際的な基準からいうとやや特殊な点があるといわれている。
その特色は次のとおりである4)5)。
① 支援指導事業は利用者によって運営され、農業団体によって管理されている。
② 支援指導事業は農業省から独立している。国からは運営費の10%の補助があるが、
独自の予算と事業計画をもっている。
③ 支援指導事業は公的な性格をもち、公平なサービスを行うという主旨を貫いている。
④ すべての農業生産部門に2段階(中央と地方)のサービスを行う。
⑤ 支援指導事業は国に代わって査察活動を行うことはない。
デンマークの環境規制では、水域へ窒素が流亡する量を50%削減を目指した「海・水行
動計画」が1987年に国会を通過。その後すぐに農薬使用量の50%削減を目指した「農薬行
動計画」が通過した。行動計画に従って行政官庁は環境査察基準を制定した。
この環境規制実施に対する個々の農家取り組みについては、国や地方の官庁が独自の査
察制度を確立しており、普及事業は査察制度に組みこまれることはなかった。環境査察か
ら独立していることにより普及事業は、農家に対してその法律を守り環境と調和するよう
に生産を最適化するように農家に対して助言ができ、このような活動を通じて農家の環境
に対する姿勢を変えてきた5)。
当初、国は支援指導事業にかかる費用をすべて負担していたが、その後の負担は減りつ
つある。今日、デンマークにおける農業サービス活動は、サービスに対して代価を支払う
ことを基本とした自由市場の状態になりつつある。事業にかかる人件費、旅費、コンピュ
-14-
ータプログラム開発、事務所等施設維持など諸経費について、国は10%のみを負担し、農
業団体が90%を負担している。
これらを行うためのスタッフ人数は地方、中央レベル合わせて3,250人である。その内訳
はアドバイザー1,000人、農業技師と助手が2,250人である。
注目されるのは3,250人のスタッフの中で農場会計を担当する人数は2,180人と7割弱を占
めていることである。この国のアドバイザー活動の特徴は、組合員のために農場会計を指
導センターが担当していることである。簿記サービスにより処理された会計データは税務
申告や申請書作成に使われるだけでなく、経営分析や経営管理素材として農場経営に役立
てられる。
なお、会計業務については、農家の利用者負担による独立採算性がとられており国の補
助金を使用することはできない。
表-2
農業指導センターのスタッフ
アドバイザー
農業技師・
助手
作物生産
260人
130人
畜産
140人
165人
養豚
100人
85人
50人
25人
380人
1800人
70人
45人
1000人
2250人
分
野
農場建築・農業機械
農場会計
経営管理
その他
合
計
2)デンマーク農業指導センター(DAAC)
(1)組織、業務
デンマークの支援指導事業について全国規模で活動しているのはオルフス市郊外のスカ
イビーにあるデンマーク指導センター(The Danish Agricultural Advisory Center:DAAC)で
ある。ここは最新の成果や情報を持った全国レベルのサービスセンターであり、地域セン
ターでもあり、農業学校でもある。DAACはデンマーク国立研究機関や海外の研究機関と
密接な関係を持っており、現実問題に対する調査研究プログラムやアドバイザーや農家に
対するコンピュータプログラム開発を行っている。
センターには10の部が置かれている。各部は全国レベルのそれぞれの委員会(委員は選
-15-
出された農家)によって管理されている。DAACの職員数は400人で、うち230人が専門家で
ある。彼らは様々な技術や経済分野における高度な専門知識を持っており、地方のアドバ
イザーを援助している。
図-4
デンマーク農業指導センターの組織構成
センター及び各部の主要な業務は次のとおり。
①
地方農業センターへの普及事業の支援、およびアドバイザーへの援助。
地方センターで解決が困難な問題について、電話を通じて地方指導センターのアド
バイザイーを援助する。時にはセンターの専門家が地方指導センターの職員とともに
農家を訪問することもある。
②
中央で取り扱うのが最適と考えられる専門業務の実施
例えば,農家の生産や財務管理用コンピュータソフトの開発などをおこなう。また、
簿記記録、生乳記録、イヤータッグの管理、トラクターの性能テストなどのサービス
を有料で行っている。
③ 国内や海外の研究や研究開発期間からの情報収集、分析、普及
センターは、研究者と農家をつなぐ「橋」としての役割を果たしている。最新のノ
ウハウは「情報シリーズ」「レポート」「ニュースレター」
「出版物」などを通じて地方
指導センター職員に伝えられるとともに、農家に直接送られることもある。最近では
インターネットを通じて情報の提供もおこなっている(URL http://www.lr.dk:ただ
しデンマーク語であり、英語サイトはない)。
④ DFUやDFFAへの専門的・技術的助言
-16-
⑤ 農家や地方指導センター職員に対する教育・研修用プログラムや教材の開発
2カ所のトレーニング・センターがあり、そこを用いてリーダー農家やセンター職
員のための短期滞在コースをおこなっている。また、地方指導センターや地方組合事
務所を用いてセミナーや講習会を実施している。
農学校は全国で20学校あるが、センターが農学校のサービスセンターでもある。農
学校の教員は地方指導センターの職員とみなして、同じ情報やニュースレターを受け
取り、地方指導センター職員と同じようにコンピュータプログラムを使用することが
できる。
センターはまた、農業協同組合企業とも密接な連携を持っている。例えば酪農会社、食
肉処理加工会社、種子会社などである。近年の家畜環境対策やアニマルウエルフェァー(動
物福祉)との関連での技術研究の協力課題には、畜舎建築、養豚施設設計などがある。こ
れらの協力を通じて、アドバイザーたちは農家に対して環境や動物福祉と農家経済の双方
を満たすアドバイスができるようになっている。
(2)DAACの収支構成(1997年)
DAACの収入に占める独自事業の割合は45%と大きい。サービス料及びコンピュータソ
フトや資料などの販売による収入である。企業等からのプロジェクト献金は24%、農家財
産税からの還元金21%、DFU及びDFFAからの上納金は5%、政府補助金5%となっている。
独自事業とプロジェクト献金で70%を占めており、収入に占める企業努力の割合は大きい。
一方、支出では27%が開発活動費、16%が研究実験費であり、専門的アドバイスサービ
ス経費13%、情報・知識提供費15%、公益活動費14%、教育研修費15%であった。
ところで、DAACと地方指導センターの関係についてである。これは、組織的に協調し
て業務を行っているが、その関係は対等であり上下関係あるいは会員関係により会費を徴
収するなどの関係にはない。DAACは地方農業指導センターに対するサービスセンターの
役割を担っているが、地方農業センターのアドバイザーはDAACをあえて使う必要はない。
また、コンピュータソフト等の開発と販売を行っているが、これも現場で評価されなけれ
ば売れない。この国の支援指導組織への政府補助金は減少し、受益者からの利用料金によ
り普及事業を行う転換期にある。近々、政府補助金はなくなることになっているという。
収入の70%を企業努力で得ているDCCAは、サービスの自由競争の中で、ますますそのサ
ービスを向上していくことが求められている。
-17-
図-5
DAACの収支構成
3)地方農業指導センター
(1)概要
農民連盟は全国に71カ所の地方農業指導センターと11カ所の農業指導事務所(以下LAAC
と略記)を設けている。その配置図は図-6に示した。
LAACの職員数20~50名で、1カ所当たり500~2,000人の組合員にサービスを行ってい
る。大きなLAACでは作物生産、酪農、養豚、農場会計,経営管理などの部をもっており、
小さなLAACでは作物生産、農場会計などの部を持っている。農場建築、農業機械、青少年
プロジャクトなどは他のセンターと共同しながら活動をおこなっている。
-18-
図-6
地方農業指導センターの配置図
-19-
LAACでは2,600名のアドバイザーや農業技師、助手がおり、各種の専門的な相談活動を
行っているが、その中で最もスタッフの多いのは農場会計部門であり、45千戸の農場に対
して記録記帳サービスを行っている。
LAACは地方の農民同盟と家族農業者連盟の元に運営されている。地方農民組織は年次総
会で理事を選出する。そのもとに委員会を設置して、支援指導活動に関してのガイドライ
ンを決め、また利用料金についても中央の理事会で決めている。LAAC職員の雇用につ
いても、理事会及び各分野別委員会が行う(図-7)。
図-7
地方農民組織とLAACの機構
(2)利用料金
デンマーク農業の概要でみたように、農場数は減少してきているが、支援指導に携わる
スタッフ数はどうなっているのかを図-8に示した。農場数は1960年以降大きく減少して
いるがアドバイザー数は逆に増えてきている。農業指導センター組織ができた1970年以降
も900名弱であったものが90年代には1,000名と増加している。
農家数の減少と農場規模の拡大により、綿密な経営管理が必要になってきていることが、
この背景にはある。以前は一般的なアドバイスであったものが、今はどのような機械を導
入するか、それを現金で購入するのかローンを組むのか・・といった資金繰りまでも含む
具体的なものとなっているという。規模が大きくなればアドバイザーへの専門的な相談も
増えてくるしニーズも高まってくるものとみられる。
-20-
図ー8農場数とアドバイザー人数
農家の利用料金は利用するサービスにより異なり、また経営規模によっても異なる。表
-3に農家負担料金例を示した。畜産を行う家族専業農場ですべてのサービスを受けた場
合には33~36千dkk(53万円~58万円)程度となる。これは養豚の場合では売上高の1.7%、
酪農では3.2%程度に相当する。規模がさらに大きくなり雇用型農場の場合には料金は高く
なるが、売上高割合は相対的に減ってくる。
なお、利用料金単価は600dkk/1時間である。
-21-
表-3 アドバイザーサービスに対する農家負担料金例(全てのサービスを利用した場合)
区分
養
豚
兼業農場
家族専業農業
雇用型農場
・規模:20 ha、肉豚出荷200頭
・50 ha、母豚125頭
・300 ha、母豚370頭
肉豚出荷2,500頭
酪
農
畑作物
肉豚出荷8,000頭
・料金:14,182dkk
・35,862dkk
・69,270dkk
・料金の売上高割合:5.00%
・1.70%
・0.8%
・規模:20 ha、乳牛20頭飼養
・50 ha、乳牛50頭
・200 ha、乳牛150頭
・料金:15,210dkk
・33,520dkk
・76,555dkk
・料金の売上高割合:4.55%
・3.15%
・1.45%
・規模:20 ha
・125 ha
・300 ha
・料金:11,365dkk
・21,050dkk
・41,220dkk
・料金の売上高割合:4.20%
・1.85%
・1.25%
(3)財政
地方農業指導センターの財政(収入)状況をみたのが図-9である。特徴的なのは72年
には37%が国庫補助、46%が農家による利用料金であったものが、97年には国庫補助は僅
かに10%となり、利用料金が82%を占めるに至っていることである。デンマークの支援指
導事業は受益者負担により成り立っていることがわかる。
-22-
図-9
地方農業指導センターの収入構成
4)事例:フュン島養豚事務所
住所:Odense市Orbaekvej 276
面談者:Morten Thomsen氏
(養豚アドバイザー)
フュン県では年間出荷数170-180万頭の肉豚生産を行っている。フュン島の養豚農家は
1200-1300戸あるが、大半は兼業農家あるいは小規模家族専業農家が多く、この事務所の
支援指導サービスを受けているのは450戸である。しかし、それらの農家は規模が大きい農
家であり、養豚生産頭数の90%を占めている。管内の平均的な養豚農家像は母豚100-200
頭規模、労働力は本人と妻、あるいは雇用の2人である。
この地方の養豚事務所でヒアリングをおこなった。以下は面談者Tomsen氏とのインタビ
ュー内容である。
① 養豚事務所の人員について
養豚事務所はフュン島農民事務所の敷地内にある。指導従事者は「アドバイザー」
「農業技師・助手」「事務職」の3つの職種があり、この事務所は12名の職員がいる。
養豚農家向けの講習会を年間5-6回開催している。講習会のテーマは毎回変えて
いる。ここ5-10年の間に養豚農家は自分の経営レベルを高める要求が高まってきて
いる。
-23-
② 養豚事務所の活動財源について
事務所の年間収入は600万dkkである。その内訳は農民組合(組合費)から11.9%、
食肉処理加工会社からの補助金(食肉処理加工会社は協同組合組織であり、肉豚1頭
当たり0.4dkkの補助金が支払われる)9.0%、政府補助金18.4%、農家サービスによる
収入60.7%である。農家サービス収入は農家への支援指導活動や講習料などによる収
入である。
支援指導については1990年から有料化し、政府補助金を減らしてきた。5年後には政
府からの補助金がなくなるだろうといわれているが、その分を利用者(農家)がまか
なうことになる。現在は時間当たり400dkkの利用料金だが、政府補助金がなくなった
場合には料金は上がる。独立採算となると800-900dkkが必要だと試算されているが、
その値段ではかなりの農家は利用しなくなるだろう。97年は農家収入がよかった年だ
が、あの時期でも「800-900dkkは高い」という農家が多かったという。
③ サービスの有料化と農家の利用について
農家経営が苦しくなると問い合わせ件数が少なくなる。Morton氏は畜舎改造が専門
分野だが、ここ数年養豚経営は所得がほとんど出ないような経済状況にあるため、農
家は建物への投資を抑えており、相談件数が減っている。また、小規模農家は時間
400dkkの相談料も負担となっているようで、活動は大規模農家への相談活動に変わっ
てきている。
農家の平均利用時間は年間10時間程度、4,500dkkの請求額である。電話相談も受け
付けている。15分までは無料だが、それ以上になると有料化する仕組みとなっている。
経営部門の請求も所要時間数で行っている。200頭母豚規模の農家では、簿記・税務
サービス+経営アドバイズで年間3万~4万dkkを支払っている(簿記・税務サービス
では2万dkk程度)。
④ 有料化の経緯について
サービス有料化は、まず経営会計部門から行われ、養豚→畑作→酪農の順に行って
きた。有料になってから農家も指導者も真剣となった。今、指導者はプロだという意
識が高くなっているという。
農家も指導者もサービス有料化により意識の変革を迫られた。生産者側では助言を
受けて、それが価値があれば払うという意識がある。例えば、母豚100頭の経営にとっ
て、10時間のアドバイス料は僅かなものだ。生産者は助言内容に価値があれば、その
対価を支払う。
-24-
⑤ 相談内容と誤った助言をした場合の損害賠償について
調査時の99年6月の農家からの相談内容について聞いてみた。EUでは今年9月から
抗生物質の投与が禁じられることから、これに対する問い合わせや相談が多い、とい
う回答であった。
面談したThomsen氏は古い豚舎の再利用が専門である。この種の相談は次のような
ものだった。
豚舎は家畜福祉(アニマルウエルフェアー)による管理システムに変わりつつある。
肉豚舎の床のスノコは2015年までに撤廃することになっている。今は家畜保護との関
連で豚舎改築に関する相談が多い。
コンサルに失敗した時には、その損害賠償義務がある。そのための保険があり、ア
ドバイザー1人当たり1,000dkk(年間)をかけている。アドバイスサービスが有料化
してから農家との間で賠償問題となった例もある。スラリー層の深さが20センチでよ
い、とアドバイスしたが、その結果、畜舎外に排泄できなかった。そのために、この
施設の改造費用を地方農業指導センターが支払った例がある。また、飼料への蟻酸添
加について、0.1%とすべきところを1%と誤って指導し、その結果豚が死んでしまい
賠償した例もあるという。
⑥ 養豚の技術管理システムについて
養豚では生産成績を3ヵ月毎に取りまとめ出力する「E-コントロール」というシス
テムで生産管理をしている。E-コントロールには繁殖と肥育があり、繁殖は個体毎に
管理し、肥育は個体管理ではなく農家毎の出荷成績管理を行う(表-4)。
この成績取りまとめは、3種の記入用紙があり、農家記入が基本であるが、必要な
場合にはテクニシャンが記入する場合もある。アドバイスは人と人との交流であるり、
ビジネス感覚では成り立たないので支援が必要なのうかには記録取りまとめから援助
している。この出力表の中では計画値と実績値の比較を行うが、「計画値」はアドバイ
ザーと農家が相談しながら決めていく。こうして農家が実現できそうな現実的な数値、
農家の目標とする水準が設定される。
結果の分析では標準値が必要となるが、これはインフォスビン(CD-ROMによる養
豚データベース)により提供される。フュン島の成績のよい農家では母豚1頭当たり
年間子豚生産頭数27頭、DGは950g(30-100kg間の増体)を達成している。
-25-
表-4
生産レポートの一例
-26-
⑦ リカレント教育への参加について
自分のレベルアップのために、年間10日ほどリカレント教育(支援指導にあたる職員
へのスキルアップのための継続教育)に参加している。研修日数は以前は1週間と長い
ものが多かったが、最近は2-3日のカリキュラムが多くなり、これを年に数回受講す
る。これに加えて新聞や雑誌でスキルアップを図っている。
また、パソコンを使った専門情報の収集については、インフォスビンや、世界の養豚
リンク集(LINKS)18)を利用している。
⑧ 養豚分野における民間コンサルタントについて
デンマークには130名の養豚コンサルタント(アドバイザー)がいる。その内訳は次
のとおり。
・地方農業指導センターのアドバイザー:70名
・食肉連合(DS)のアドバイザー:30名
・民間企業(飼料会社、施設機械会社等)のコンサルタント:30名
なお、これらに属さない個人コンサルタントも2名いる。個人コンサルタントは1戸
当たり年間1万dkkで養豚農場のコンサルを請け負っているという。
⑨ 低価格時の農家助言内容について
(調査時の養豚状況は、豚価が低迷がつづいており、多くの農場で所得が出ない状況に
あった。このような事態に、どのような助言をしているのかを聞いてみた。)
雇用を雇わず、経営者本人がもっと働くこと。また、経営の無駄をなくすこと。これ
らが重要である。「生産性の改善」と言うが、生産性の改善による即効的な効果という
ものは、そんなに大きなものではない。
⑩ 農家数の減少と職員数との関連について
有料化されてドバイスに対する農家側の評価が厳しくなった。古手のアドバイザーが
代遅れの指導を行い、第一線から外されたということはあるが、解雇されたという事例
は聞いていない。信頼を得られるアドバイスをすれば、それがアドバイザーの給与アッ
プに反映されていく可能性はある。
養豚農家数は減少している。450戸の養豚農家ははもっと少なくなっていくかもしれ
ないが、それにより仕事量は減らないであろう。1戸へのサービスはもっと多くの時間
を費やすようになるだろう。養豚界はダイナミックな動きをしており、農家はわれわれ
の支援が必要な場面は増えて行く。
-27-
⑪ ホームページの活用について
この事務所はホームページを開設してもうすぐ1年になる18)。デンマーク語によるサ
イトで対象はフュン島の農業生産者であるので、英語版は作っていない。海外からのコ
ンタクト用にはDS(食肉畜連合)が英語版のホームページをもっている15)。
なお、管内の対象農家は450戸おり、その20%がパソコンを持っているがホームペー
ジへのアクセス数は多くはない(1,000件未満)。また、Eメール利用も農家からのもの
は少なく、農家とのコミュニケーション手段は電話相談が中心であるという。
-28-
4、デンマークの農業教育と農業関係者者教育
デンマークでは専業の農業経営者の資格を取得するためには、学校教育と実習を交互に行
ないながら、5年(60ヵ月)かかる。60ヵ月の教育期間のうち、16ヵ月は学校での授業、36
ヵ月は農業実習となっており、基本的に実習に重点をおいた教育である。
農業者教育は義務教育の上に積み重ねられるので、学生はおおむね16才から農業教育が始
まる。毎年、約1,300名の学生が農業教育に入ってくるが、それは義務教育卒業者の男子5%、
女子0.5%に相当する。6)
現在のデンマークの若者に対する農業教育制度は97年に変更された。この教育制度は職業
専門教育として独自の仕組みを備えている。若い農業者にとって、教育は最も基本的なこと
であり、有能な農業者になるためには経験が必要である。この国の農業教育は学校での教育
と農場での研修が組みあわされて、農業者として必要なスキルと知識を習得する仕組みとな
っている7)。
1)農業者職業教育
デンマークの農業教育は「農業者職業教育」と「農場管理者教育」の2つのステップに大
別される。
農業者職業教育は基礎コースであり、このコースを終了すると農業技能者証が取得でき
る。基礎コースはモジュール1とモジュール2からなっている。モジュール1はさらに2つ
選択肢があるが、12カ月間の認証農場での実習と7カ月間の学校教育である。学生は農場実
習の間は指導センター農業普及員による定期的な農場訪問を受ける。モジュール1は基礎教
育にあたるものであり、農業教育が終わったわけではないが、農場労働者として雇われる資
格を持つことになる
モジュール2は農業専門技能を身につけた農業者になることを目標にしている。具体的に
いえば、1つの作目において、その生産に主体的に責任がもてること、日常作業の適正な計
画を立てることができることである。期間は最低18ヵ月の実習と6ヵ月の授業からなる。モ
ジュール1と合計すると3年間の教育プログラムとなる。これにより、学生たちは特定分野、
例えば養豚、肉用牛、酪農、野菜などでの専門化が可能となるほか、コンピュータ処理や経
済知識っを身につけることができる。
農業技能者証を取得した学生は、農場や協同組合企業組織に雇われることが出来る。また、
さらに上級の「農場管理者教育」へと進むこともできる。
-29-
2)農場管理者教育
「農場管理者教育」はグリーン証を取得する「経営者養成コース」があり、さらにグリー
ン・ディプロマを取得する「上級経営者養成コース」がある。
モジュール3で目指すグリーン証は農業経営者になるために必要な資格である。30ha以上
の農場を購入する場合にこの資格が必要であり、新規就農者のため低利率の融資を受けるこ
とができる。毎年、約1,200人の若者が農業に就職しているが、そのうちの900人はこの資格
を取得している。
上級経営者養成コースは、より高度な管理者を養成するものである。自立して戦略的な計
画を立て、規模の大きな農場を管理運営できる農業者の養成を目標としている。5ヵ月の授
業では、デンマーク経済、国際経済、社会・法律、リーダシップとコミュニケーションなど
のカリキュラムを学ぶ。終了時には各科目の試験のほか、卒業論文がある。
図-10
デンマークの農業教育制度
-30-
3)その他の農業技能教育
(1)農業経営士
この教育はモジュール4までの課程ととほぼ同じである。すでに農業技能者証を取得して
いる学生に対して教育が行われる。その内容は6カ月間の農場実習と18カ月間の学校教育で
ある。
農業経営士は大規模な農場経営の経営管理者となるための技能を身につけることである。
この資格があれば、農地購入の際にグリーン証取得者と同じ条件を用いることができる。
(2)農業技師
農業技師教育のねらいは将来の農業関連企業、団体の人材養成である。ここで養成しよう
としているのは将来、農業指導(アドバイザリーサービス)関連、、農業専門学校や企業、
農業に関係した貿易関係の仕事に従事できる人材である。ここでの教育は既に農業技能者証
を取得している学生に対して行われる。2年間の間にマネージメント、科学、数学、会計学
などを学ぶ。現在、農業指導センター関係者の35%がこの課程を修めている。
(3)農業の大学教育
農業分野の大学教育はペンハーゲンにある王立農獣医大学(KVL)のみで行われている。
この大学は教育省の管轄の元にある高等教育のためのセンターと連携をもっている。
大学制度は92年に改革された。従来の3年間の学士コースに2年間のキャンディデート・
コースを加えて5年制のマスターコースに再編された。1学年数は約550名、うち農学専攻
は150~175名である。大学の主な役割は、農業分野の最高の教育を行うことであり、その教
育は農業とその関連分野で大きな変化が起こりつつある社会に対して、適切な対応ができる
ものにでなければならない。そのため、試験研究と教育面での人材を養成することである。
修士の学位は、農学、農業経済学、園芸学、林学、食品科学(酪農学を含む)、獣医学の
分野で与えられる。獣医学のコースは、5年以上に延ばされ、獣医学博士の称号が与えられ
るが、博士コースは学士、修士とは別に設定されている。博士コースの学生は約300名いる。
農学の卒業生の60%が農業指導センターのアドバイー、あるいは教育関係に就職している。
(4)農業者継続教育
特定の仕事に数年間従事していると農業者は、新しい知識を身につけることが必要になっ
てくる。そのために、農業の継続教育センターが現在6校ある。この運営には農学校と農業
指導センターが共同で当たっている。
3日以上の研修受講者には補助金がでるので、受講者は僅かな自己負担ですむ。97年に継
-31-
続教育の補助金を受けた受講者数は11,000人弱であった。農家戸数に対する受講者の割合は
最近では17-24%であった。
また、農民組合組織は農場ヘルパー制度を運営しているが、病気の時だけでなく継続教育
の場合にも、国はヘルパー費用の一部を負担する仕組みとなっている。
表-5
農家及び農業従事者の継続教育受講者数(農家戸数に対する%)
年
1992
1993
1994
1995
1996
1997
%
8
10
16
24
19
17
資料:小川他7)による
4)農業指導センター職員に対するリカレント教育
(1)リカレント教育
農家支援指導にたずさわる農業指導センター及び関連機関や団体、企業の職員に対する専
門教育も重要である。農家支援サービスが有料化されている中では、いかに有用な情報を農
家に適用できるのかが問われることとなりる。そのために、アドバイザーや農業技師に対し
ての再教育は重要な事項となっている。
デンマークの農業指導センター全国委員会合同委員会は94年に農業支援指導サービス部
門の就業者に対するリカレント教育の政策をまとめた(翻訳資料に収録)。
(注)リカレント教育:OECD(経済開発機構)提唱の生涯教育構想の一つ。「recurrent」は
「循環する」あるいは「反復する」の意。従来は学校で教育を受けた後に社会にでるのが
普通で、教育というば学校から社会へという流れであったが、社会に出た者が再び学校
に入る逆の流れ、つまり循環・反復の教育制度をいう。「社会人再教育」の名もあるが、
デンマークの農業指導支援機関では系統的にアドバイザーに教育を実施していることか
ら、ここでは「リカレント教育」という用語を使うこととした。
アドバイザーに対する教育政策をまとめたのは次のような背景があった。
①
アドバイザーに対する個々の農家ニーズが変わってきている。農家が必要とし期待す
るアドバイスは個々の農家により大きく異なること。
②
ここ数年、コンピュータシステムの開発などアドバイザーの「工具」発展に重点が置
かれているが、「工具」の柔軟な利用とともにアドバイス方法の開発・発展が必要とな
っている。
-32-
③ 従来、指導員(アドバイザー)のリカレント教育への参加は十分ではない。ある分野
では、その内容と理論に対して批判が出ている。
④ 労働条件、作業方法、収入確保に関するアドバイザーへの要求に大きな変化が起きて
いる。農家はアドバイスの品質に満足していない。
⑤ 組織内の職務計画でリカレント教育を重視することに関して、組合員から選出された
代表者が理解していない。
⑥ アドバイスサービスでリーダー養成教育の必要性が増大している。
デンマークの支援指導サービスは有料となった。今までの国の補助金による負担から、受
益者である農家負担に移行している。このような流れの中で、農家が直接の顧客となり、農
家の要望するサービスの品質を提供できなければ、顧客は離れていく。
そのようなデンマークの支援指導サービスの大変革の中で、重視しなければならないこと
は、農業指導センター職員のスキルアップであろう。日々農家と接して、農場運営や技術ア
ドバイスをすることがコンサルタントやアドバイザーといわれる職種の仕事でもある。その
ためのスキルアップは支援指導機関がもっとも重視しなければならない事項である。
(2)リカレント教育のカリキュラム
リカレント教育の対象者はアドバイス機関(普及機関)従事者だけではない。アドバイザ
ー、技師等の支援指導機関職員の他に、教職者、研究者、企業の担当者、獣医などが対象と
なる。
カリキュラムは「アドバイス(支援指導)」「財務管理」「酪農」「養豚」
「その他の動物」
「教育」に大別される、日程は長短様々だが数日が多い8)。
例えばカテゴリー「アドバイス」は3つのコースがあるが、その特徴は次のように説明さ
れている。
① アドバイス3週間コース
アドバイザーとしての仕事は知識を伝達し、技術的そして専門的質問に答えるだけで
はない。専門分野のエキスパートとしてそしてそれに加えて、アドバイザーは人々の間
のコンディション、相互関係そしてコミュニケーションに注目しなければならない。農
業大学の教育は学生が専門知識の形成と科学的方法への洞察を習得する事に重点を置
いている。それ故、卒業前の農学士はアドバイザー業務を準備し、研修に焦点が当てら
れている落ち着いた条件の下に課題と見地を有効にトレーニング出来る。
-33-
表-6 農業指導者リカレント教育の内容(1999年)
カテゴリー・課題
アドバイス
・アドバイス3週間コース
・アドバイス資格取得教育
・新規採用者コース
財務管理
・Win95財務モジュール利用
・Win95使用の予算作成利用
・農場の生産と経営
・社会の経済発展の中における農業
・財務決算書の引渡し
・アクチュアル経営(経営管理)
・農業経済の資格習得
・財務
・Win95財務管理プログラムの活用
・農場総合管理システムの異分野活用
・紹介テクニック等
酪農
・牛モジュールのワークショップ
・将来の育種計画Ⅱ
・マネージメントと職務発展
・放牧草地コントロールと牛への給餌
・最高と最安のサプリメントの間における
トラブル
・反芻動物の最適栄養(3モジュール)
・酪農場で飼料供給の最適化
・経済と企業管理(モジュール1)
・酪農場での衛生アドバイス(モジュール)
・大規模酪農場のマネージメント
・有機酪農
・総括畜産アドバイザーに対する専門知識等
・ミルクの衛生に関するインフォメーションコース
養豚
・栄養、ステップ1、飼料の給餌テクニック
・アドバイザーと教職者のための
インフォーメーションコース
・養豚場での衛生アドバイス
・豚舎テクニック、ステップ1、
豚舎の寸法と構造配置
・放牧養豚
・生産力のある養豚
その他の動物
・養鶏に関するインフォーメーションコース
・毛皮動物の生産に関する
インフォーメーションコース
・馬に関するインフォーメーションコース
教育
・若者のコンサルタントに対するコース
・農業教職員に対するコース
主な対象者
期
間
農業大学学生
2年以上経験があるアドバイザー
新規採用されたアドバイザー
3週間
26日間
3日間
地域センターの財務管理部職員
地域センター財務管理部職員
農業教育を受けていない一般者
研究者、アドバイザー、教師、管理職
経営アドバイザー
経営アドバイザー
経営関係テクニシャン等
経営アドバイザー、教師
財務会計管理部職員
畜産アドバイザー等
グループリーダ
3日間
1日間
5日間
5日間
3日間
3日間
1670時間
5日間
3日間
2日間
2日間
酪農アドバイザー、教師
酪農育種コンサルタント
総括酪農コンサルタント
酪農アドバイザー、教師
飼料業界職員
3日間
3日間
1日
3日間
3日間
酪農アドバイザー、教師
3モジュール
計15日
3日間
5日間
3日間
2日間
1日間
1日間
4日間
畑作アドバイザー、酪農アドバイザー
酪農アドバイザー、教師
酪農アドバイザー、獣医
酪農アドバイザー
有機酪農アドバイザー,教師
総括畜産アドバイザー
品質アドバイザー、獣医、会社購入責任者
養豚アドバイザー、教師
養豚テクニシャン、アシスタント、
アドバイザー、教師
アドバイザー、獣医
アドバイザー、建築会社コンサルタント、
教師
養豚アドバイザー、教師、獣医
養豚アドバイザー、教師、
建築アドバイザー
2日間
5日間
コンサルタント、アドバイザー、獣医、
研究者等
コンサルタント、研究者、獣医等
コンサルタント、教師、獣医等
2部
計5日間
2部
計5日間
3日間
若者や4Hクラブのコンサルタント
教師
5日間
5日間
(資料:
「リカレント教育コースカタログ」8)より作成
-34-
2日間
2部
計4日
2日間
2部
計2日
[目的]
アドバイスの仕事がどのようになされ、アドバイザーはどの条件下で仕事をするのか
に対する洞察力を作成する可能性を受講者に与える事である。受講者は当面の問題を分
析し、アドバイザーとして課題がどのような成就を要求しているかを理解した上で、問
題解決の提案を作成準備・計画しなければならない。
[対象となる受講者]
農業大学卒業直前の学生そしてアドバイザーの仕事を考慮している学生。コースは農
業大学で3週間コースとして登録されていて、6点が与えられる。
[内容]
授業はプロジェクトワークとして実施され、更に、理論の紹介とトレーニングを含ん
でいる。プロジェクトワークで受講者は農家に対する指導プロセスを体験する。このプ
ロセスは3つの課題を抱えている。それらはコンタクトの設立、指導の対話そして文書
による指導のフォローアップである。この課題は一般の指導業務のプロセスに相当す
る。それ故、このコースのプロセスは現実の物に近く、基本的な問題要因を含有してい
る。そして、これは指導業務のチャレンジでの洞察力と見地を受講者に与える。
[期間]
6月14日-7月2日
[場所]
コルケアゴー学校
②アドバイス授業での資格習得教育
農業指導の活動で指導員は有能との定評がある。専門分野での技術的洞察は教育と農
業経済センターの仕事での核である。それとは反対に、殆どのコンサルタントは指導に
対する適切な教育を受けていない。即ち、指導相談で分野の専門知識のアレンジ方法に
関する教育である。エキスパートである事に加えて、指導員は人々の間のコンディショ
ン、相互関係そしてコミュニケーションに注目しなければならない。この教育は自己救
済の可能性を提供する。落ち着いた環境下、仲間と共に修業に焦点を当てて指導方法を
改善発展できる。
[目的]
指導プロセスの目標解説、準備、実行そして評価のシステム的な経験を参加者に与える
事、自分自身の体験に対する理解とより大きな認識を個々に与える事、困難な或いは衝
突の危険性が大きい相談状況を切り抜けるための基礎を与え、そして指導業務でストレ
スと疲労を予防する事である。
[対象となる受講者]
最低2年間は指導業務に携わっている全ての専門分野からの指導員
-35-
[内容]
教育と指導機能の間に近接と均等が存在する事が教育での根本的原則である。教育は
受講者の指導活動からの個々の経験と能力と事例で現在のスタート点を取っている。教
育は全てが違っていなければならないという方向では進んでいない。しかし、新しい知
識と増大した活動能力に比例して、指導員が既に所有している知識を再建しなければな
らない。実用と秩序が中心になっている。そして教育は問題解決の方法、戦略そして分
析テクニックの発展の延長に立つ。理論の勉学は現場での想定を明白に出来、それに対
する受講者の反応を支援する規模で取り入れられる。
[期限と構造]
教育は1年以上に渡り、9つのモジュールで構成されている。合計モジュールの日数
は26日である。そして同じ日数が宿題回答に使われる。
[場所]
コルケアゴー学校(モジュール1)
③指導分野の新規採用者に対するコース
[目的]
組織的状況を含めた指導活動の一般的な紹介を与える事。計画、遂行そして指導相談
のフォローアップで受講者をトレーニングする事。経験の相互交換を出来る仲間へのコ
ンタクトの設立。
[対象となる受講者]
最高約1年以内に新規採用されたローカルセンターのアドバイザー
[期間]
第1部:12月6日-12月8日
第2部:2000年3月8日-3月10日
[場所]
第1部:コルケアゴー学校
第2部:チューネ農業学校
-36-
5、訪問した農家の概要
今回の調査では、酪農農場と養豚農場の2戸を訪問し、アドバイザーやコンサルタントの
経営・技術支援の状況とその評価について聞き取った。
1)Soerensen農場(酪農)
農場主
Jens Soerensen氏
面談者
農場主の父
所在地:オルフス市郊外Hammel
(1)規模と特徴
・飼養頭数:経産牛200頭、育成牛250頭
・耕地面積400ha:牧草、トウモロコシ、穀類(油用ナタネ、麦類、グリーンピース)の
他、牧草種子も採取している。
・経営形態:当初は父親、2人の息子の計3農場だったが、家族の持分を集めて有限会
社組織とした。
労働力:息子2人、雇用2人(うち1人は日本からの実習生)、父親(補助的)の5人。
この牧場は1年半前に法人化した。法人化により規模を拡大したが施設は老朽化してお
り、新規投資は必要だった。そこで、思いきって搾乳ロボットを導入した。搾乳ロボット本
体費用が400万dkk、畜舎改造費用が400万ddk、合計800万dkk(1.36億円)の投資であった。
(2)飼養管理
① 畜舎
畜舎はフリーストール方式。床はスノコ式で糞尿混合スラリーで糞尿処理をおこなう。
② 搾乳施設
ミルキングパーラに搾乳ロボットが導入されている。4部屋複列で8頭が同時に搾乳
できる。搾乳牛は個体乳量により搾乳回数も変わる。訪問時には1日2回搾乳牛が106
頭、3回搾乳牛が72頭、4回搾乳牛が11頭だった。
③ 飼料給与
飼料給与はネックバーンによる自動フィーダで自給した圧偏小麦主体の濃厚飼料が
個体別に給与される。基礎飼料部分はコンプリートミキサーによりサイレージ主体に調
製されており、自由採食されている。
-37-
④ ロボット搾乳の評価
ロボット搾乳施設は必ずしも上手く稼動してはいないという。オランダのメーカから
導入したが、乳器への自動装着が上手くいかないために、人間の補助が必要だという。
「まだ完成された商品ではない、今のままでは作業効率があがらない」というのが牧場
の評価であった。
なお、この導入にあたっては、金額が大きいので弁護士に契約事務をお願いした。その契
約事項では、導入後にトラブルなく稼動することが条件となっていた。今でもトラブルが発
生しており、このため費用の支払いはまだしていないという。弁護士を通して契約してよか
った牧場では考えている。
(3)経営継承
デンマークでは相続という形での経営継承はほとんどない。それは、相続税が高いことに
もよる。農業をおこなう場合には融資と自己資金により農地や施設を買い取る。それが親子
の場合であっても、売買という形が一般的で、経営が継承されていく。
牧場主の父は1960年に祖父から牧場を購入した。その祖父も1908年に曾祖父から牧場を買
い取ったのだという。60年当時の経営は、養鶏、豚、酪農に穀物生産の混合経営で土地は22ha
だった。価格は当時13万dkk(221万円)だったという。
息子が2人いるが、長男が社長(牧場代表)をしている。次男は2年前に農業に参入した。
農家になるには資格が必要だが、息子たちはグリーン証取得するまでの教育をうけている。
(4)農業指導センターのサービスについて
簿記と酪農技術指導を農業指導センターが行っている。簿記は伝票の整理からお願いして
いる。簿記利用料金は6万dkk。技術指導は4万dkkである。衛生関係は開業獣医師が行い毎
月1回疾病治療、予防の他に、妊娠鑑定までやってもらっている。費用は年間6万dkkであ
る。
最近、開業獣医師の紹介で民間の指導員を紹介してもらった。飼料給与のアドバイスを受
けてコンプリートミキサー車も導入した。飼料設計を変えたところ、乳量も5kgほど増えた。
この酪農指導員は最初に毎朝きて牛の糞の水分を手でにぎって調べた。その後、彼の指導が
はじまったという。この牧場ではよい指導員を得たことを喜んでいた。なお、料金はまだ請
求がきていないのでわからないが、多少高くとも支払うつもりだという。技術指導により、
この牧場では乳量増加という目に見える形での増収が図られている。
農業指導センターの酪農技術指導サービスについて聞いてみた。「民間のコンサルタント
と比べると指導センターのアドバイザーのサービスには不満だ」という答えが返ってきた。
民間コンサルタント料金はこれからの請求となるが、この農場が簿記、酪農技術、衛生の3
-38-
分野のサービスに支払っている金額は16万dkk(272万円)となっている。
2)Brund養豚農場
農場主:Soeren Brund氏
面談者:Morten氏(農場責任者)
場所:オルフス市郊外
Sabro
(1)規模
オーナーのBrund氏は2つの農場を所有している。訪問した農場は繁殖豚1,000頭を持つ繁
殖専門養豚場であり、生産子豚の半分は外部販売し、残る半分は別にある肥育牧場に供給し
ている。牧場の規模は次のとおりである。
A農場:
(訪問した牧場):母豚1,000頭の繁殖専門養豚場。従業員4名で管理。
B農場:出荷肉豚1万頭規模の肥育部門と700haの畑作部門を持つ。従業員6名と牧場主
で管理している。飼料は自給が一般的だが、この牧場は育種用の種子生産を行
っているため、種子を販売し、飼料用穀物を購入している。
(2)飼養管理
① 畜舎
豚舎は外壁レンガ造り、内側に断熱剤コンクリートを貼り合わせて外気温の影響を受
けにくくしたセミウインドレス1棟で、それがエリア毎に部屋が設けられている。エリ
アは分娩母豚ストール、離乳子豚、離乳母豚(交配セクション)、妊娠豚ストールに別
れている。保育用のスペース以外はスノコ床であり糞尿処理は混合スラリーとしてスラ
リータンクに貯蔵し、土地還元している。
② 繁殖
人工授精でおこなわれており、精液はAIセンターから購入している。品種は母豚はLW
で雄豚にはDを利用している。
③
飼料給餌
飼料給餌はリキッド給餌で行われている。種豚用には粉砕した麦類、大豆粕、に魚粉
とビタミン・ミネラルを添加している。子豚用にはホエー(牛乳の固形物抽出残液)に
麦類、大豆粕、ビタミン・ミネラル等を混合する。飼料は畜舎内をパイプラインで配管
されて給餌場所に配餌され、これが飼料給与労働の大幅な軽減に結びついている。
④ ウィークリー養豚
作業の効率化を図るため、曜日により実施作業をきめて実行するウィークリー養豚を
-39-
おこなっている。その作業は次のとおりであった。
・月、火曜日:交配、子豚出荷(豚房の洗浄消毒まで終了)
・水曜日:離乳
・木曜日:母豚移動、セクション洗浄
・金曜日:その他の雑作業
⑤ 農場の生産成績
農場の技術成績は、自ら所有するパソコンにより随時把握される。その時に利用され
ているシステムはE-コントロールとよばれる養豚技術成果を取りまとめのためのシ
ステムである。このシステムはデンマーク養豚生産農場で共通して使われており、地方
農業指導センターによるアドバイスもこのデータを検討素材として行われる。
E-コントロールでは、その養豚場の繁殖技術が係数整理され、3ヵ月毎の時系列結
果が示される。「生産規模」に関する指標は7項目、「分娩結果」は8項目、「育成結果」
は5項目、「繁殖結果」は8項目、合計28項目の生産指標により、生産上の問題点が把
握できる仕組みとなっている(内容については表-6「生産レポート」を参照)。
なお、この農場の母豚1頭当たり年間子豚生産頭数は23.6頭であり、国内平均と比べ
ても高い水準にあるという。
(3)農場雇用について
面談者のMorten氏はこの農場の管理責任者として雇用されている。年齢は27歳。他に働い
ている若者たち3人も雇用されている。農業への就労という面からのヒアリング結果は次の
ようなものであった。
・Morten氏の養豚歴は7年。この農場に来る前は別の養豚場で5年働いた。この農場で
2年となるが、管理責任者となったのは1年前からだ。
・農業経営者になるグリーン証は取得している。独立する希望があるのかを聞いたが、
「将来はわからないが、今のところ赤字をだしてまで農業をやる気はない」という答え
だった。この2年ほどは養豚経営は経済的に厳しい状況にある。そのような背景から
の答えであるという見方もできるが、一方農業を雇用の場と割り切った若者達が増え
ているという報告もある。
・スキルアップのための方法を聞いた。専門雑誌を読み、興味のあるシンポジュームに
は参加する。また展示会は見に行くとのことであった。しかし、数日を要する継続教
育カリキュラムには参加していない。
・この農場の管理責任者の年収は30万dkk(510万円)で固定給であるという。この国の
農場では、一定の目標水準を決めて、それ以上の生産を達成した場合には歩合給を上
積みする「ボーナス制度」があるが、この農場では固定給制としている。副管理責任
者の給与は26万dkk、一般の管理者は17万dkkである。
-40-
この国の賃金水準は農業組合の技師(テクニシャン)25万dkk、食肉処理場の職工で25万
dkk(腕のいい職工で30万dkk)、工場労働者で16-18万dkk程度であるという。農場管理責任
者の給与はこれらと比べて高く、一般の管理者でも悪い水準ではない。この国の農業関係労
働者の給与は社会的にみても低いものではない。
ところで、Morten氏はグリーン証を取得してみずから農場をもつ資格があるにもかかわら
ず、独立への希望が薄い点についてである。この点につて通訳をしてくれたデンマーク在住
の養豚専門家砂川徹氏は、農場雇用労働者の就農意識について、次のようにレクチャーして
くれた。
(農場雇用労働者の就農意識)
全国養豚委員会の調査によれば、養豚場の雇用労働者の60%が農業専門教育を修了した
者、30%が教育課程にある者、10%が農業専門教育を受けていない者であった。若者が多く、
半数以上は20~25歳の年齢層である。この中で自分が農場主になるという希望をもつ者は
45%であり、養豚場に雇用される労働者の全てが将来農場を所有しようという強い希望を持
っているわけではない。
養豚場に就業した理由では、「労働時間が規則的であること」「賃金が高いこと」「将来性
があること」という回答が多い。かなりの若者たちが、他業種と比較しても養豚場の就業条
件が有利だと判断して養豚場に就職にしているものと思われる。
(4)農業指導センターのサービスについて
農業指導センターの指導は、獣医は毎月1回来るが、養豚アドバイザーは半年に1度程度
しかこない。簿記サービスについては、この農場は日々の出納簿は奥さんが行い、それを公
認会計士が取りまとめるので、センターのサービスは使っていない。
養豚アドバイザーには電話で問い合わせることはある。相談内容は他の優良事例紹介な
ど、これからの経営に対するヒントとなる事項に関するものが多いとのことであった。
-41-
-42-
Ⅲ.フランスの農家支援指導組織
-43-
-44-
Ⅱ.フランスの農家支援指導組織
1、フランス農業の概観
フランスの本土面積は5,492万haで日本の約1.5倍、人口は53,731千人で日本の約50%弱程
度である。農用地面積は3,290万haであり、フランス本土面積の60%が農地として利用され
ている。日本の農用地面積が499万haであるのに比べると、農用地は多い。農用地は緩やか
な減少が続いているが、農用地のうち耕地は56%、永年草地32%、果樹園地4%、非耕作地
8%である。
農場数は680千戸であり、79年からの18年間に半数に減少してきた。農場の平均面積は逆
にこの間で2倍近くの41.7haに増加している。農業生産人口は957千人で、生産人口に占め
る割合は3.76%と低い。フランスでは現在も農場数の減少を反映して、農業就業者数の減少
が続いている。なお、農業生産人口の内、147千人が農業雇用労働者である。
一方、農産物や食料品の生産高は大きく伸びてきた。特に農産物を原料として加工された
食料製品の付加価値は高く、最近の17年間に生産額を2倍近く伸ばして3.9千憶フランとな
っている。農産物・食料品の国内総生産額に占める割合も5.6%と高い。
農業の中で畜産のウエイトは高いく農業総生産額の47%を占めている。畜産は最近の17
年間で家畜飼養頭数はやや変化してきている。牛の減少と豚・家禽の増加である。牛が減少
しているとはいえ、牛乳と牛肉の生産はこの国の農産物生産の中心であり、牛乳は農業総生
産額の16.5%を、牛肉は12.6%を占めている。
多くの農産物は国内需要をはるかに上回る水準で自給されており、自給できないのは野
菜、果実などの一部である。
表-7
フランス農業の諸指標
指 標 項 目
比較値:
( )は比較年
農地面積
(1,000ha) (80)
34,501
農地面積割合
(%)
63
農場数
(千戸) (79)
1,259
農業生産人口
(千人) (80)
1,869
生産人口に占める割合
(%) (80)
8.0
国内総生産・食料農産物
(10億F) (80)
196.7
国内総生産に占める割合
(%)
8.3
農場当たり平均可耕地面積
(ha) (79)
23.4
家畜飼養頭数
(千頭・羽数) (80)
牛
23,554
豚
3,127
羊
1,263
家禽
228,713
9)
資料:JETRO資料 より作成
-45-
1997年
32,899
60
680
957
3.7
393.4
5.6
41.7
20,041
5,473
9,823
329,400
フランスは米国に次ぐ世界第2位の食料輸出大国である。EU内での農産物生産高は圧倒
的に多く、農業生産の21.7%を占めており、EUの食料基地となっている。輸出農産物は穀物、
ワイン、チーズ・バター・脱脂粉乳など乳製品、食肉などである。
EU内の農産物生産について表-8に示した。穀物は2位のドイツを大きく引き離してお
り、ワインはイタリアが接近しているものの3位のスペインを引き離している。牛乳はドイ
ツに1位の座を譲ったものの、近年までは1位であった。牛肉もドイツを上回り、3位であ
るイタリアの生産量に比べると2倍の生産を行っている。
表-8
品
目
1位
穀
類
フランス
63,428
2位
ドイツ
ワイン
フランス
英国
ドイツ
フランス
27,171
フランス
57,065
スペイン
23,531
牛
(単位:千t,千hℓ )
乳
牛
肉
59,650
イタリア
45,486
3位
EU内の農産物上位3カ国
32,729
1,971
ドイツ
22,920
英国
1,578
イタリア
14,257
949
資料:JETRO資料9)より作成
フランスが現在のような農業大国に成長する過程では、農場数の急速な減少と離農跡地を
集積した規模拡大があった。農業構造の改革が現在の農業の繁栄をもたらしたが、今では農
場数の減少は農業基盤を揺るがせる懸念を引き起こすまでに至っているという。現在でも早
期退職制度により農業からのリタイアは続いており、一方で既存農場の規模拡大は労働力的
にも限界に達している。もうこれ以上の規模拡大を止め、農業への参入を促すことで農業構
造を維持していこうという姿勢に農政の基本方向は向かっているという10)。
-46-
2、農業会議所の支援指導
1)支援指導事業の仕組み
フランスの支援指導システム全体像については、農林水産省農産園芸局が行なったフラン
スの普及事業に関する調査報告書11)にまとめられているので、そこから概要を引用する。ま
た、この国の農業普及事業の経過については「農業普及-フランスの経験」を翻訳資料とし
て収録してあるので参照いただきたい。
公的な支援指導サービスは県段階の農業会議所に設置されている農業普及部(SUDA)が
中心となって行っている。職能組合(養豚組合や酪農組合など作目ごとにつくられた協同組
合)や農業経営者グループにも独自に技術者が置かれており、農業会議所はこれらの団体と
の連携を図りつつ、技術・経営改善指導がおこなわれている。
この公的サービスを実施するための財源は農業者からの税金によっている。農地所有者か
ら徴収される土地課税と作物付加価値税が整備され、この資金を基本として事業が行われ
る。
作物付加価値税はANDA(National Association for Agricultural Development)が管理して応
用技術開発と普及事業に使われる。
この活動をすすめる上で必要になる実用化研究は応用技術研究所が行う。職能組合や農業
会議所、政府、県、民間企業などが設立母体となって作られている応用研究所がいくつかあ
るが、この連絡調整組織としてACTA(Agricultural Association for Technical Coordination)が
おかれている。ACTAは農水省傘下の国立農業研究所(INRA)や大学等の基礎研究と連携し
ている。
-47-
図-11 研究開発・普及事業の基本的な仕組図(フロー)
資料:農産園芸局「欧米の普及事業調査報告書」11)より
-48-
(1)ANDA
ANDAは農業者から出荷された農産物への付加価値税として徴収された資金を基金
(FNDA:National Fund for Agricultural Development)として運用し、各応用研究所や州・県の
農業会議所から新制された研究開発及び支援指導事業関連プログラムを審査し、資金を配分
している。
(2)農業会議所
農業会議所はの機能を大きく分ければ「諮問」と「直接活動」であるが、国、州、県の各
段階でその役割は違っている。
国段階では、農業の最高諮問機関として位置付けられており、国内の行政府、議会、欧州
議会、国内及び欧州経済社会評議会等に対して、農業、食料、地域政策、法律及び規制、国
際関係事項等についての嫌疑、答申、要望等を行っている。
州の農業会議は、管轄する県農業会議所や農業団体に対する指導及び研究と普及との調
整、州政府や州議会などに対する諮問機能を有している。
県農業会議所は県行政や県議会、職能組合などに対して各種提言を行うほか、農業会議所
内に設置された普及部は支援指導事業の中心組織として、経営者グループや職能組合等の関
係団体に対する指導・調整を通じて技術や経営に係る普及活動を行っている。
県農業会議所の機能を分類すると、次の3つがある。12)
・Experimentatio 実証試験と技術普及
・Riferences Systemes 情報の集積と提供
・Conseil コンサルテーション
「実証試験と技術普及」ではフランス国立農業研究所(INRA)が行なっている基礎研究
や畜産研究所・作物研究所当で行なっている応用研究所でフォローできない実証試験を県農
業会議所が分担している。実験農場を通じて技術の評価を行ない、確立した技術を農家に普
及する。
「情報の蓄積と提供」は、実証試験結果を月刊誌に掲載する他、ミニテルと呼ばれるフラ
ンス独自の双方向通信システムを使って農家に普及している。
「コンサルテーション」は個別農家の依頼にもとづいて実施されるサービスであり、一般
的には有料である。具体的な内容としては、新規就農への支援、畜舎設計、グリーンツーリ
ズムの支援などがあげられる。新規就農支援については、就農前の研修の実施、EPIと呼ば
れる新規就農者の営農・投資計画書の作成支援、新規就農後に年間4回の訪問サービスなど
である。
農業会議所が経営面で支援しているのは、次の内容である。
・新規就農する農家の営農・投資計画作成と診断(前述のEPI)
-49-
・新規作目導入のための営農・投資計画作成と診断
・現行の営農方式の変更方策と診断
このように、日常の経営診断ではなくて、新規就農や中長期的な経営の変革を伴う場合の
経営診断をおこなっている。
2)支援指導事業の予算と活動
95年の支援指導事業関係予算は24億フランで、その内訳は農業会議所活動の財源である土
地課税23%、FNDA助成(農産物付加価値税が原資)19%、政府補助金11%、州・県からの
補助金9%であり、その活動資金の多くを税金と補助金に拠っている。
支援指導事業に従事する技術系職員は県レベルで9,800名いるが、そのうち県農業会議所
職員は3,500人でそのほかは農業協同組合などに雇用されており11)連携しながら活動を行な
っている。
図-12
会議所の組織機構図
資料:農産園芸局「欧米の普及事業調査報告書」11)より
各県農業会議所には農業普及部(SUAD)が設置されており、県内の事業全体を調整する。
このためにSUADには指導会議(メンバーは農業会議所の代表と団体-協同組合など-代表
からなる)が設置されている。
-50-
農業会議所は支援指導事業を行なうために関連組織とも連携している。その1つがCER
(経営管理センター)組織である。CER組織は農業者の簿記記帳と分析、経営管理を支援す
るために設立された団体である。1971年から導入された実質所得への課税制度により、これ
に服する農業者に対して簿記の記帳が義務づけられたが、これにより認可された経営管理セ
ンターへの加盟が促進された。さらに就農助成金や施設整備計画への融資を受けるにあたっ
て、簿記の記帳が義務づけられている。
家畜パフォーマンス管理組合(Syndicates de Controls de Performances Animales)とも連携
している。この組織は家畜改良の目的で設立された団体で、個体ごとの生産記録が管理され
ている。酪農は別に組合があるが肉畜の改良情報は会議所によりおこなわれている。
また、協同組合組織はフランス全土には3,600協同組合(93年時点)があるが、その指導
員の技術サービスと連携して活動を行なっている。
3)職員の研修
農業コンサルになるために必要な資格は次のようなものである。
・ 21歳以上であること。農業上級者資格(BTSA)もしくはそれと同等以上の資格を有する
こと。
・ 全国農業会議所の教育センターにより行なわれる8週間の職務訓練と3カ月以上の研修
を含む準備研修を受けること。
こうした訓練により、農業省から認可されて、農業コンサル適正資格者リストに登録され
る。
このようにして採用前の教育がおこなわれる農業会議所職員の、その後の研修は、この国
の職業教育の一環として行なわれる。元々は企業を対象に職業教育を義務づけた制度であ
る。1971年以降、従業員の就業時間内にその就業時間の1.5%をたとえば英語教育やコンピ
ュータ等の研修に当てるよう企業に義務付けされた。
カルドス県農業会議所の場合では、職員の研修は1年間に最低10日間以上が義務付けられ
ているが、実際にはその日数以上の研修が実施されているという12)。具体的な研修方法は、
企業やフランス国立研究所・畜産研究所などから講師を招いたり、他組織が計画する研修に
参加する、という形態である。
-51-
3、CNCER(農業経営センター全国会議)
1)CNCERの特徴
CNCER(Conseil National des Centres d’Economie Rural)は各県にある農業経営のための会
計事務所CER(Centres d’Economie Rural)と農村商工業者(例えばグリーンツーリズムなど
を行う経営者)の会計事務所CGの全国組織である。CERは各県にあり(全国92カ所)CGは
14カ所にある。CER組織は、受益者負担により簿記処理と税務申告などの経営財務代行サー
ビスをおこなう全国組織である10)12)。
2)歴史
CNCERは1992年に設立された。その前身組織はIGER(Instit glolion economy rurale-経営
管理センター全国協会)である。IGERは1962年に国、農業組織(農業会議所、農業銀行、保
険会社、青年労働組合など)、農村経済センターという3つの機関により設立された農業経
営と経営管理の組織であり、各県の経営管理センターは農業会議所に付属していた。当時の
収入は国からの補助金が主なもので、全体の2/3を占めていた。しかし、現在ではその活
動は基本的に受益者負担(サービス対価)となっている。
簡単にCER組織の歴史をみると次のとおりである。
1926年:CER設立-当時はCERという名称ではないが全国に12センターーがつくられた
1950-60年:県単位にセンターができる
1960年:L.O.A(農業基本法)が制定される
1962年:IGER設立
1968年~TVA(農産物に対する付加価値税)が導入。実際の利益に対して課税されること
となり、利益確定のための会計処理が必要となる。
1976年~:農業開発プランにより農業生産は増産に向かう。
1980年代:ミニテルが普及。農業情報をミニテルで引き出せるようになった。コンピュ
ータ関係指導職員が増えてくる。
1983年:牛乳のクオータ制が導入、生産調整に入った
1990年:年金等社会保障の大改正がおこなわれる
1992年:PAC(CAP)が導入
1992年:組織をCNCERに変更-30年間の間にIGERから国が手を引き、専門組織も手を引
き、「農村経済」をあつかう独立採算組織として今の組織となった。国からの補
助はないが、常に国や農業会議所など農業組織と協力しあっている。
1997年:環境問題、特に畜産に関連した環境汚染の問題や狂牛病、最近はダイオキシン
汚染という新たな問題がおこっている。これに伴い、法律の専門家や環境問題
専門家をスタッフとして増やしている。
-52-
CER組織のスタッフの採用について、50~60年代は県組織では農業技術者を雇ったが、
72年からは付加価値税との関連で会計士が必要となり、80年代にはコンピュータ関係や法律顧問、
経営管理を含めたコンサルタントが必要となり、最近は品質管理責任者が必要となってい
る。このように時代の要請に応じて分野を拡大してスタッフを採用してきたが、ベースとな
っているのは会計と経営管理である。
今、この組織の最大のライバルは公認会計士・税理士と弁護士だという。
3)会員
会員は全国で農業者が30万人である。この会員は比較的規模の大きな農業経営が多く、農
業生産額からみれば全国の85%をカバーしている。小規模農業者は利益確定のための税務申
告計算は免除されているので、CERの会員は税務申告のための利益確定計算が必要な売上規
模をもつ農家を会員としている。
会員数は頭打ちだが、サービス内容に関する要求は増えている。小規模農民は課税対象と
はならないが、CERの会員はフランス農産物の85%を生産している。
また、農村商工業者会員は3万人で、商工業者の1~2%程度である。数値は少ないもの
の、会員数は伸びてきている。
なお、CER組織では売上高年間500万フラン(1億円)までの農場や会社を扱うことがで
きるが、それ以上となると公認会計事務所で扱うこととなっている。CERは農家と中小規模
商工業者を対象としたサービス組織となっている。
4)CER組織と人員
フランス本土は96県あるので、CERはほとんど各県に1つずつ存在することになる。さら
に、CERの支所は500ヵ所に上る。
職員数は98年7月時点では9,000名であったが、フランスの雇用者は週35時間という制限
があるので、最近では10,000名に増えている。専門職の内訳は次のとおりである。
表-9
CER組織の専門職数
専門職種
人数(人)
会計士
5,000
コンサルタント
1,500
法律・税務専門家
350
コンピュータ専門家
300
なお、中央組織であるCNCERは職員数15名であった。
-53-
CERの職員は県組織単位で採用している。業務の性格から、会計士・法律学士の資格をも
つ人材を採用している。コンサルタントについては、国家資格である農業技術士(BTA:Brevet
de Technicien Agricole)の資格を持つか、農業関係の高等教育を受けた者が多いというが、
採用後の教育では必ず会計を習得することが目標にされている。つまり、コンサルタント活
動をする上で、酪農技術や畑作栽培技術の他に、会計や経営管理に関する知識-技術と経営
の両面の知識-が必要とされている。
5)サービス内容と利用料金
CERの業務内容は会計処理、経営コンサルテーション、法律・税務相談、情報処理、人材
派遣の5つがある。
① 会計処理と入力のための人材派遣
個人経営や法人経営の会計業務を行い、税金の申告業務の代行も行っている。零細な
農家の所得税は確定しているので、CERを利用する必要がない。顧客は一定以上の売上
をもつ中・大規模農業経営になる。
農家の簿記記録の状況は、顧客の50%程度が自家所有のパソコンを利用し、20%程度
がCERの事務所のパソコンを利用して、領収書のデータを入力している。残る30%は人
材派遣部門から事務員を派遣してもらって、データを入力している。顧客のが対象とな
る。この人材派遣のためにCERはパートタイムを雇用している。
② 経営コンサルテーション
新規就農者に対して、作目の選択と収益性に関するコンサルテーション。規模拡大を
志向する就農者に対して、融資を受けるための経営計画書の作成。新規部門に取り組む
意向の農業経営に対して、当該部門の採算性に関するコンサルなどである。このような
経営コンサルテーションの利用は,会計処理の顧客の10%程度であるという。
③ 法律・税務相談
主として会計処理の顧客に法人化を勧めて、法的な面でのコンサルテーションを行っ
ている。顧客の半数近くがすでに法人化しているという。CERが農業経営の法人化を勧
める理由は、法人経営が個人経営と比較して経営委譲の際に有利なシステムとなってい
るからだという。
法人化した経営の場合、従業員の雇用があれば給与の支給が必要になる。この給与明
細書の作成もCERが代行するサービスをおこなっている。
④
情報処理
情報処理部門はCERの業務に用いる情報機器の管理、ソフトの開発をおこなってい
る。また、顧客に対する会計処理ソフトの提供と研修を行っている。
-54-
⑤ サービス利用料金
CERのサービス利用料金は受けるサービス内容により異なるが、会計処理の年間利用
基本料金は概ね10,000フラン(20万円)である。また、税務申告時に1回利用する場合
には6,000フラン(12万円)である。この料金は、農家にとてみれば個人の会計事務所
を利用するよりもCERを利用したほうが安いという。なお、CERはすべてのサービスは
必ず実務的な会計処理代行サービスと一体として行っており、コンサルテーション(助
言)部分だけをサービスすることはしていないという。
CERの会計処理を利用する農家の法的メリットは、20%の課税所得の控除が受けられ
ることである。従来は税務申告でのごまかしが多かったが、この規制により公認会計士
やCER組織などによる会計処理により透明性が高まったという。
6)農業会議所との関連
会議所は諮問機能を通じて政策活動を行うことが目的の1つであり、また普及活動など直
接的な活動を行うことも目的の1つとなっている。
会議所の普及活動では牛乳のクオータ管理など技術支援が中心である。畜産農家の飼養管
理に対する技術支援は地域農協の営農指導でも行なっている。また繁殖管理については農業
者グループで生産コントロールも行なっている。
技術指導は会議所、農家グループ、農協などがおこなっており競争者が多い。CERは経済
を中心にして活動を行なっている。経済面から技術問題の支援が必要な場合には農協や会議
所に相談にいくようにアドバイスしているという。従って、農業会議及び農協などの機関と
は補完的な関係にある。
農業会議とCERを比べると、いくつかの違いがある。CER組織は全国に500ヵ所の事務所
がある。農家からみれば30km以内にCERがある状況となっており、加えて農業会議の3倍の
スタッフがいることもあり、農家に木目細かなサービスが提供できる。また、CER組織は独
立採算であり、県農業会議は農家の税金が財源となっていることも大きな相違である。
-55-
7)CNCERの収入と支出
CNCERの収入はCERからの会費が過半を占め、次いでCNCERが行っているマーケッティ
ングサービスや経済予測などサービス収入、受託研究・調査収入である。収入規模は2000
万フラン(4億円)である。
表-10 CNCERの収支
支出
人件費
事務所維持費
調査費用その他
計
(単位:百万フラン)
600
700
700
2,000
収入
会費
1,200
受託研究・調査費
200
サービス収入
600
(経済予測、マーケティング等)
計
2,000
-56-
4、訪問した協同組合企業と農場の概要
1)乳製品輸出会社EPI
面談者:Laurent Gallois-Montbrun氏(輸出部長)
住 所:Cedex Ancenis 108-44153
(1)会社の概括
ブ ル タ ー ニ ュ 地 方 に は 南 ブ ル タ ー ニ ュ に CANA , 北 ブ ル タ ー ニ ュ に は COOPAGRI
BRITAGENという農業協同組合グルーブ企業があるが、EPIはそれらの乳業工場で生産され
る加工用乳製品の販売開発を行うために設立された組合グループの子会社である。ミルクパ
ウダー、カゼイン、ホエー等の乳製品だけでなく、卵白パウダー、リュピー(大豆に似た植
物を原料とした植物プロテイン)などを扱っている。これらはヨーグルトや乳飲料の原料、
ケーキやパン、チョクレート、アイスクリーム原料、ベビーフード原料としてフランス国内
だけでなく世界の製造会社に販売されている。
日本との関係はミルクパウダーを毎月300t輸出している。
(2)
2つの協同組合グループ企業の概要
協同組合グループ企業は「カナ」と「コパグリ・ブルターニュ」である。
農業協同組合はフランス経済の中で重要な役割をはたしている。農家10戸のうち9戸まで
が協同組合に関係しており(組合員総数72万人)協同組合の職員数は12万人を超えている。
農業及び農業関連産業の中で協同組合は30%のマーケットシェアーを占めている13)。
このような中で、今回訪問したEPIが関係するカナは協同組合企業の中で、国内第4位を、
コパグリ・ブリターニュは5位の売上高の大企業である。
以下に、グループ企業の概要を示した。両企業とも牛乳のほかに肉、穀物、ワインなど多
商品を扱っている。そして、それぞれの商品に特徴をもたせており、複数ブランドを提供し
ている(表-11)
。
(3)牛乳の流れと乳価
EPIに乳製品がとどくまでのルートは次のような流れである。
酪農家⇒協同組合で購入⇒協同組合グループ傘下の乳業工場で加工⇒EPI⇒輸出国
乳価は国で一般水準を示すが,具体敵な価格は地方で決める。3カ月ごとに農民の代表で
ある農業協同組合と乳業界の代表があつまり決定している。乳製品の相場により乳価はかわ
-57-
る。乳価は基本価格と乳質価格とによりきまるが、現在の乳価は1.98フラン/1リットル(42
円程度)であった。
表-11
カナとコパグリ・ブリターニュの概要
CANA
COOPAGRI BRETAGNE
97年総売上高
96億フラン
90億フラン
従業員数
4,516人
3,800人
組合員数
30,000人
30,000人
集荷量
340百万リットル
310百万リットル
売上高
15億フラン
27.6億フラン
ブランド名
Paysan Breton
Paysan Breton
<牛乳>
Fromage Pays
<肉>
牛,羊,豚,家禽
牛、豚
売上高
46億フラン
20億フラン
ブランド名
Gastronome,Soviba
Socopa,BIF Armor
ChanteBroche,LesVolailles
Fermieres d’Ancenis
<畑作物>
穀類
322千トン
387.4千トン
ワイン
42000hektoliter
-
野菜
-
103千トン
雑誌名
ESPACE CANA
MAGASIN VERT,CULTIVERT
売上高
967百万フラン
1100百万フラン
<印刷物など>
(4)ダイオキシンについて
訪問した時期は、日本ではベルギーに発生したダイオキシンによる畜産物汚染が問題とな
っていた時期であった。安全性が確認されるまで、フランス、オランダからの乳製品と卵、
家禽肉の輸入が停止されていたが、この措置は6月中旬に解除された。そのような背景があ
るので、この問題について担当者の説明を受けた。
(ダイオキシンに関する担当者の説明)
ダイオキシンはベルギーだけの問題なのか、ヨーロッパ全体の問題なのかはっきりしてい
ない。いずれにしても特別な問題である。この問題により日本政府は一時輸入をストップし
ていたが、フランスについては政府の公式証明書がでれば輸出できる。
食品汚染についての窓口は、昨年まで農林省だったが、99年から厚生省に移った。ベルギ
ーに端を発したダイオキシン問題だが、フランスでも疑わしいと思われるところが何箇所か
-58-
あった。しかし調査した結果では問題なかった。国内スーパマーケットでもフランス製品を
置いている。
乳製品のダイオキシン汚染については、98年から1年半ほど厚生省のチェックがおこなわ
れている。チェックは店頭に並んだ商品を抜き打ち的に行う,という方法で実施した。その
結果ではフランスの乳製品のダイオキシン濃度はヨーロッパ各国と比べても少ないという
ことがわかった。
2)Claud農場の概要
面談者:Jean. Michel Claud氏
住 所:Ancenis市郊外
(1)規模と就農
酪農経産牛30頭、農地53ha(小麦2ha、トウモロコシ12ha、牧草地27ha)の酪農・耕種混
合経営。全国の平均作付け面積は80ha、穀物生産農家は100~150ha規模であるのと比べると、
訪問農家は小規模な家族経営である。労働力は本人と妻、父が時々手伝う程度である。
土地は全て借地である。一部は父からの借地であり、また何人かの地権者から借地をして
いる。経営主は酪農3代目であり1982年に就農した。その時の就農助成金は3万フランであ
り、この補助金は家屋資産(土地を除く)の5%に相当するものであったという。
(注)就農助成について
就農助成制度には「青年農業者自立助成金」があり、1973年から開始された。これを受け
るためには対象者は次ぎの3つの要件を満たさなければならない。
ア、 未就農であり、就農日に21歳以上、35歳未満であること
イ、 一定の農業教育資格を有すること(BTA:農業技術者証書、BTSA:高等農業技術者証
書など職業資格取得が就農許可や助成金支給の条件となっている)
ウ、 1年以内に専業的農業者となり、10年間それを継続しなけらばならない
就農助成金は地域や経営形態によって異なるが、現在では個人経営の場合に113千フラン
~235千フラン(およそ220万円~470万円)程度となっている10)。
(2)乳牛飼養
クオータ制により年間出荷量は23万リットルであり、これを上回るとペナルティがかけら
れる。牛群検定を行なっている。牛群検定への参加は地域の全ての農家が行なっているわけ
ではない。小規模農家は参加していない。この地域では飼養頭数の85%をカバーしている程
度であるという。農協指導員は「当然ひろめるべきものだと思うが、義務ではない。その人
-59-
の自由にまかされているのだから」というスタンスであった。
この牧場の経産牛1頭当たり年間乳量は9,241kgであった。搾乳は2回(朝7:30~と夕方
6:00~)
、フリーストールで飼養している。
(3)支援・指導機関
Claud農場は農業会議所の指導も、CERの経営管理支援も、牛乳管理組合の行なう牛乳コ
ントロール指導も受けている。農業会議所料金は会費ではなく税金の一部が充てられている
が、人材派遣のなどを伴う具体的なサービスは時間当たり料金により支払っている。
CERの年間利用料金として8,000~9,000フランを支払っている。サービス内容は、年1回
の決算取りまとめを行ない、社会保障費など税務申告資料を作成する。費用は売上の1%程
度である。この料金負担について聞いた。
「売上の1%の利用料は高いと思うが、CERを通すと20%の節税になるというメリットが
ある。50ha以上を所有する農家は、会計士による決算と税務申告が必要である、というルー
ルがある。それを勘案すると利用価値は高い。」という回答であった。
(4)農協指導員:Gilles Boulnors氏の活動
農家訪問に同行してくれた農協指導員から、支援指導活動についてヒアリングした。その
概要は次のとおりであった。
Boulnors氏は組合加盟農家の中で酪農家にアドバイスをおこなう酪農技術指導員である。
相談内容は、乳量向上、乳質改善、飼料給与等の主に技術相談の他に、経営主の死んだ後の
農家の経営継承への相談や、クオーター制に対する対応などについての相談活動などをおこ
なっている。
農業協同組合の指導体制は、この地域に8人の酪農専門指導員がいる。この外に農協には
獣医がいるが、獣医は診療にあたるのではなく、病気予防という観点からののアドバイスを
おこなっている。1人の指導員の担当するのは200戸の農家であり、そのため年間の訪問は
2から3回程度である。
農協では農家の農産物を購入する(共同販売)活動と、種子、肥料、濃厚飼料、除草剤な
どの資材を販売する(共同購入)活動をしている。
同行してくれた農協指導員もIPE職員も、我々が農家訪問をすることに好意的だった。自
分の生産している牛乳が海外に輸出されており、その輸出先からどんな生産環境で生産され
ているのか視察がきた、ということが農家の生産意欲を刺激する、という理由からだ。この
ような機会には特定農家に案内するのではなく、傘下の多くの農家が対象となるように配慮
している、と語った。
-60-
[参考文献・資料]
[デンマーク参考文献]
1) 中央畜産会(1997)
「養豚先進国実態調査(デンマーク・スウェーデン)」
2) Danish Farmers’ Unions (1998) 「The Danish Farmers’ Unions」
3) 中央畜産会(1999)
「畜産経営安定化指導事業-生産経営技術向上事業-先進的海外畜
産経営・技術実態調査報告書
デンマークにおける農業情報システム」
4) 全国農業改良普及協会訳(1995)「デンマークの農家-組織普及教育-デンマークモデ
ル」
5) クヌーズ・ブック・イエプセン(1998)
「デンマーク農業普及事業とその環境制度の実
施上の役割」『畜産環境国際シンポジューム報告書』畜産環境機構
6) 小川秀雄・高井久光(1999)「イギリス・デンマークにおける畜舎設計の支援体制の概
要」『新農政推進等調査研究事業報告書-欧米畜産営農環境政策調査研究事業-第1分
冊:畜産経営指導調査
会計システム調査』農政調査委員会
7) The Danish Agricultural Advisory Center「Farmers’ education in Denmark」
8) Landskontorern(1999)「Efteruddannelse Kursuskatalog」
[フランス参考文献]
9) 日本貿易振興会(1999)
「フランスの農業事情」JETRO海外農林情報 VOL.95
10) 斎藤潔(1999)「フランスの農業経営指導システムの現状」『新農政推進等調査研究事業
報告書-欧米畜産営農環境政策調査研究事業-第1分冊:畜産経営指導調査
会計シス
テム調査』農政調査委員会
11) 農産園芸局(1999)「平成10年度欧米の普及事業報告書(フランス編)
12) 横溝功(2000)
「フランスにおける畜産会計システム」『平成11年度新政策推進等調査事
業報告書-欧米畜産経営環境政策調査研究報告書-欧米畜産経営環境政策研究事業
-』
、農政調査委員会
13) オンノフランク・ファン・ベックム他(1999)
「EUの農協」家の光協会
14) 中央畜産会(1998)
「先進的海外畜産経営・技術等実態調査報告書(フランス共和国)」
[ホームページ]
15) DS(デンマーク食肉連合)
16) DFU(デンマーク農民連盟)
http://www.ds-data.dk 英語版サイトあり。
http://www.ddl.dk デンマーク語のみ
17) DAC(デンマーク農業指導センター)http://www.lr.dk デンマーク語のみ
18) フュン島養豚事務所
http://www.fynsk-landbrug.dk/svineavlskontoret
デンマーク語のみ
19) リンクス
http://www.ds-data.dk/lu/links
養豚関係情報のリンク集
-61-
-62-
Ⅲ.
翻 訳
資 料
・農業アドバイスサービスに対するリカレント教育の政策
・フランスの農業普及
-63-
-64-
農業アドバイサリーセンター
農業アドバイスサービスに対する
リカレント教育の政策
コンサルタント
農業テクニシャン
-65-
-66-
ま
え
が
き
1993年秋に全国委員会合同委員会(以後合同委員会と記す)は農業アドバイスサービス部
門の就業者に対する最終的なリカレント教育*の仕上げの音頭を取った。来る時代で農業ア
ドバイスサービスに求められると予想できる大きなチャレンジやニーズを背景としてイニ
シアチブが取られた。
仕事とリカレント教育政策は2つの部門に分割できる。アドバイスサービスの農業指導員
(コンサルタント)と農業技術員(テクニシャン)を含んだ第1部門。そしてアドバイスサ
ービスの事務職員を含んだ第2部門である。第1部門の結果はこの小冊子で紹介されてい
る。第2部門は現在作成中である。
提案を明確化して、現場の仕事を理解するため、合同委員会はワークグループを設置した。
協議会をベースとして提案の明確化がワークグループに依頼された。これは1994年4月にア
ドバイスサービスのリカレント教育に直接的或いは間接的に巻き込まれている約50名の
人々の参加で成し遂げられた。
協議会を延長して、ワークグループは提議を作成し、これは1994年2月25日に合同委員会
で処理承認された。
結果はこの小冊子で3つのメインセクションに配分されている。
1. 第一セクションでリカレント教育に対する総括的目的が記述されている。
2. 第二セクションで職員のコースのニーズと希望をローカルセンターでカバーできるか
に対するアクションプランが記述されている。
3. 第三セクションでリカレント教育をどのように体系化するべきかが記述されている。
合同委員会はローカルセンターが今後リカレント教育に焦点を当て、そしてリカレント教
育を業務計画で高く優先する事を推薦している。加えて、合同委員会は出来る限り早急に、
例えば各専門分野のリーダーを、リカレント教育の責任者として決定する事を推薦してい
る。更に、合同委員会はリカレント教育のユーザーがリカレント教育に対する希望や提案を
全国事務所に活発に持ち込むようリクエストしている。
合同委員会委員長
農業アドバイサリーセンター、1994年3月
*リカレント教育:OECD(経済協力開発機構)提唱の生涯教育構想の一つ。『リカレント
(recurrent)』は「循環する」或いは「反復する」の意。従来は学校で教育を受けた後に社会
へ出るのが普通で、教育と言えば学校から社会へと言う流れであったが、社会に出た者が再
び学校に入る逆の流れ、つまり循環・反復の教育体制をいう。社会人再教育の名もある。〔情
報・知識
Imidas(イミダス)1987より〕
-67-
バックグラウンド
アドバイスサービスの基礎は技術的そして理論体系的の両方に渡って農家の要望を満た
せる優秀なアドバイザーにある。それ故、リカレント教育が絶えず高く優先され、アドバイ
スサービスとアドバイザーのリカレント教育の間に良好でタイトな共同活動の存在は重要
である。
最終的なアドバイスサービスに対するリカレント教育の政策を作成するために、一連の条
件に手を加える必要性がある。
その根本的な条件として下記の項目が掲げられる。
◎ アドバイザーに対する個々の農家ファミリーのニーズが変わっている、そして特に農家
が必要とするアドバイスに多大の相違性がある。
◎ ここ数年、アドバイザーの『工具』発展に重点が置かれている。現在、一部には「工具」
の柔軟な利用と一部にはアドバイス方法の開発発展に重点を移す必要性がある。
◎ 指導員(コンサルタント)のリカレント教育への参加は全ての分野に渡って十分でない。
あるコースでは内容と理論レベルに批判が出ている。
◎ 労働条件と作業方法そして収入獲得に関するコンサルタントへの要求に大きな変化が
起きている。同時に、農家はアドバイスの品質に大きな要求を加えている。
◎ 職務計画でリカレント教育を重要視する事に関して、選出されたリーダーで理解獲得の
困難性が時々存在する。
◎ アドバイスサービスでリーダー養成教育の必要性が増大している。
◎ アドバイサリーセンターに在する各々の全国事務所で統合された仕事の一部として、継
続したリカレント教育へのサポートに対するより高い優先度合とより大きな共同責任
が望まれている。
-68-
Ⅰ
アドバイスサービスでのリカレント教育に対する一般目的
農業のアドバイスサービスの分野で、直接的或いは間接的に仕事としてアドバイス或いは
教職を持つ全てのワーカーグループの間で人間的そして理論的発展を確かにするリカレン
ト教育の政策に狙いをつけるべきである。
アドバイスに対して個々の職員の意義が強調され、そして個々の職員のアドバイスに対す
る興味とその発展が強化されるようにリカレント教育をアレンジすべきである。更に、職員
の専門知識の充実化を促進し、アドバイスの目的と戦略を満たせる協同活動が強化されるよ
うにもリカレント教育を準備すべきである。
目的はアドバイスの職員がコンスタントに個々の農業の運営形態や色々なタイプの農場
管理者/農場主に適したそして農家の資源を完全に利用できる知的バックグラウンドを与
えるアドバイスを個々の農家に提供できる事である。
将来を見越した柔軟なリカレント教育
リカレント教育は柔軟で、将来を解説していなければならない。出来る限り大規模に個々
の職員の明確なコースのニーズを履行でき、そして同時に一般レベルでコースに対するニー
ズを履行出来るようにリカレント教育をアレンジすべきである。更に、モジュール積み重ね
のコースを提供すべきである。これにより、個々の職員は長期に渡って自己のリカレント教
育を明確化し、総合的な計画立案の可能性を持てる。
リカレント教育の政策ではリカレント教育が最新の専門知識と見解の広さをアドバイス
に追加できる事に重点を置く。これで、アドバイスサービスは農家に一般解説的なアドバイ
スのみならず特別なアドバイスの両方を提供できる。これに関連して、異分野提携のアドバ
イスを提供できる可能性を強化するようにリカレント教育をアレンジすべきである。
同じく、リカレント教育はアドバイスサービスに各々の農業の専門分野で現在実施されて
いる研究実験に関する知識を追加できる事にも重点を置いている。これは国内のみならず国
外の研究に関与する。これにより、リカレント教育は高品質の農産物作出の可能性を決定し
て、そしていかなる時点でも、又、長期的観点に見ても農業での実を結ぶ生産の発展を決す
る重要要素に関する知識をアドバイスサービスにもたらす。
一般的に言えば、リカレント教育は新知識のニーズを早くキャッチでき、この延長で、コ
-69-
ース或いは他のリカレント教育でこの新しい知識のニーズを早急に転換アレンジ出来るよ
うにリカレント教育を準備している。
農業のアドバイスサービスでテクニカルアレンジは重要視されねばならない。そしてこの
リカレント教育は専門技術の物事を教え、アドバイスし、そして別の方法で個々の職員の能
力を改善強化する手段でなければならない。
ユーザー本位のリカレント教育
合同委員会はリカレント教育ができる限りユーザー本位でなければならないといってい
る。これは個々の職員のリカレント教育のニーズが原則としてどのようにリカレント教育を
計画・実施するかを決定する事を意味している。リーダーと職員の協同活動で生まれる必要
性の分析がリカレント教育に対する個々の職員のニーズを決定する。この必要性評価そして
分析は個々の職員がどのリカレント教育を受講すべきかを決定するバックグラウンドを形
成する。
基本原則として、リカレント教育は個々の職員の仕事分野に専門的に関連付けられていな
ければならない。遂行されたリカレント教育が職員の実際の仕事場で必要としている事に基
礎付けられていると判断する責任は職場のリーダーに置かれている。更に、リーダーは個々
の職員がリカレント教育を受ける時間と可能性を寄与する労働条件の所有に責任を負う。
あらゆるリカレント教育がサポートそしてフォローアップされて、実際問題と関連して広
く使用される事は重要である。
各々の職場で、管理者は自身のリカレント教育に対しても責任を持つ。各々のセンターで
効果的で良好に稼動しているアドバイス業務に対して優秀なリーダーはあらゆるレベルで
決定的要因である。それ故、最新の知識導入は、ここでは仕事が要求しているリーダーシッ
プを個々のリーダーが所有するか或いは既に獲得している事を含めて、個々のリーダー自身
に見出される義務と考えられる。
アドバイサリーセンター自身の教育活動(チューネ/コルケアゴー学校)で、その他の学
習あるいは教育機関で、職場で計画された活動(Training on the job)で、労働時間外に個々
に学習参加する事でそして/或いは個々の計画した活動で、例えば短期の海外滞在などのリ
カレント教育を実施できる。
-70-
概して、合同委員会はその仕事分野が要求しているリカレント教育に職員が参加する事を
推薦している。加えて、リカレント教育にどれだけの時間とリソースを費やすべきか制限枠
は無い。個々にそれを判断評価し、そして各職場でそのニーズを評価している。
もし職員が労働時間外にその職員の仕事分野で直接的な意義を持つリカレント教育の活
動に参加するならば、合同委員会はこれに対して職場が一部或いは全額の費用を支払う事を
推薦している。
-71-
Ⅱ
ローカルなリカレント教育政策に対するアクション計画
合同委員会はローカルの職場/センターに存在するリカレント教育の要望そしてそのニ
ーズに基づいてリカレント教育が計画体系化されなければならないと考えている。これはロ
ーカルセンターで明確に表現さりたローカルのリカレント教育の政策とリカレント教育の
要望が全国プランで提供されるべき教科コース、或いは他のリカレント教育を決定する事を
意味している。リカレント教育が出来る限りユーザー本位になり、加えて、リカレント教育
の利用度が出来る限り効果的になる事を確実にするためこの構造が選択されている。
原則として、個々の職場/センターがそれらのリカレント教育を操作する。しかし、合同
委員会はリカレント教育の計画の取り組み方に対する共通の方針を推薦している。
このローカルのリカレント教育は職場の統合された人事政策の重要な一部として理解さ
れるべきである。これは職員のリカレント教育のニーズに加えて、職員の要望ニーズの目的
と職場の要求を調整する事で解決される人事政策の課題にも適用される。これにより、人事
政策はリカレント教育の計画で重要なコントロール手段となる。
教育の責任
システム的なリカレント教育を計画・体系化する作業の方向として、合同委員会は全ての
センター/職場で1名或いは数名の教育責任者が指名される事を推薦している。個々のセン
ター自身が教育責任者を指名するが、専門分野のリーダーコンサルタント(統括コンサルタ
ント)に責任を置く事がしばしば妥当と思われる。
教育責任者は上役として、ローカルのリカレント教育のニーズをカバーし、明確にリカレ
ント教育のニーズを収集し、そして全国事務所にそれらを伝達する役割を持つ(最終ページ
参照)。更に、教育責任者はコースのフォローアップに受講職員の新しい経験と知識が最大
限にセンター/職場で活用される場所を確保する課題を持っている。
リカレント教育を議題に
合同委員会はセンターのリーダーや理事が少なくとも年に1回はリカレント教育を議題
に取り上げる事を推薦している。これはローカルの現況をそして来る時代のリカレント教育
のニーズを明白にする。ここには、近い将来に農家が要求するアドバイスに対応するために
はセンターが何をすべきかを含んでいる。これにより、リカレント教育に使用されるリソー
スに関して合意の存在を確保するように、実施しているリカレント教育と農家が現在必要と
-72-
しているアドバイスニーズの間に調和がある事を確実にする。
リカレント教育のニーズの分析
教育計画
合同委員会は適度に各職員に対する教育計画が作成準備される事を推薦している。教育計
画が適切かどうかは職場が各ケースについて決定する。
教育計画は長期的観点で職員の能力発展を指針する。そして、これはその職員に対するよ
り長期的リカレント教育課程の基礎計画を作成する。教育責任者と各職員の協力で教育計画
を作成準備する。
職員との対話
合同委員会は職員との対話がローカルセンターで現在のリカレント教育のニーズと要望
を暴露する事を指摘している。これは職員との年1回の慣習的対話に関連して、或いはリカ
レント教育の計画とそのニーズのみを議題として計画された職員との巡回対話でなせる。他
の主な質問に交じって、ここでは発展の可能性が仕事分野の中で完全に活用されるか、そし
てどの発展ニーズが存在するかが評価される。これは下記の項目決定の段階で分析される。
●
職員の最も重要な仕事は何か。そして、これらをどのようにランク付けするか。
●
職員に理論的或いは人的資格が欠けているか。
●
職員の資格が現在の仕事でフルに活用されているか。
●
職員の仕事のエリア内で次の2年間にどのような発展が求められるか。
-そして、この継続として
●
ならば、どのようなリカレント教育が必要となるか
この分析されたリカレント教育のニーズと職員の追加受講希望の教科課程はセンターの
アドバイス活動の目的と調整される。これを背景に、教育責任者が全国事務所に持ち込む最
終的なコースのニーズと要望を決定する。
-73-
結果として、企画の希望コースは実行に移される。そして、習得した知識は最後に職場で
活用される。この段階を図式で下記に示している。
-74-
Ⅲ
リカレント教育の責任ある体系化
リカレント教育は一連の機関と色々な形でリカレント教育に直接巻き込まれているか、或
いはそれに大きく興味を持つ組織との間の密接な相互関係で体系化されねばならない。体系
化は良好な機能効率で、合理的でそして出来る限り「Ⅰ」に記されたリカレント教育の目的
を果たせる事で決定されねばならない。
下記のモデルは合同委員会がリカレント教育の一部でなければならないと考える組織や
機関を示している。
能力と目的
記述した機関並びに組織は明白な能力と目的で、そして明確に定義付けられた責任でリカ
レント教育の組織に加わる。主な目的と責任範囲に属するものとして:
● 技術的そして教育的責任
● 希望コースの収集
● 新規コースの提案
● コース提供の調整
● コースの計画、ユーザーグループのコントロールを含む
● コースリーダーの指名そして最初に話しをする人へのコンタクト
● コースの詳細計画
● コースの実行
● マーケッティング
● 評価とフォローアップ
● 経済的責任
● 手段とコースの発展
-75-
新しい『アドバイスサービスに対するリカレント教育政策』を作成準備する共通作業で、
一連の不足そして現在のリカレント教育制度とその構造の変更に対するニーズが指摘され
ている。設置された作業班と開催されたコンファレンスでリカレント教育に対する新しい構
造が補填修整してくれると期待される一連のクリティカルポイントが明確に表現されてい
る。最も一般的なクリティカルポイントはコースの調整が余りにも弱い事、コースの提供が
余りにも無秩序である事、コースの内容が余りにも伝統的である事、リーダーシップのトレ
ーニングがコースリーダーに不足している事、そして、特に、一般的に見てコースとその手
段の発展がリカレント教育で軽視された分野である事である。
現在の考慮状況はどのようにそしてどの程度の規模で全国事務所がコース計画に組み込
まれるか
-ここには各々の全国事務所がどのように組織化されるかを含んでいる-
そ
して、チューネ/コルケアゴー学校が共通作業に比してどのようにベストに組織化されるか
にある。
決定と新しい進歩
前述の考慮は一連の決定と新しい進歩を作り出した。
全国事務所*により多くの責任
合同委員会はリカレント教育強化の為に全国事務所がリカレント教育にかなりのリソー
スを投入し、そして一定の方針に沿ってコースの計画と遂行に参加する事を決定した。全国
事務所は今後コースの専門知識の内容とコース要望の収集に全責任を負わねばならない。更
に、全国事務所は新しいコースへの提出にも責任を負う。そして、合理的且つ最適な課題解
決を確実にするため、合同委員会は各全国事務所でリカレント教育をメイン業務としたコー
ス責任者が指名される事を述べている。全国事務所をこのように引き込む事で、リカレント
教育が全国事務所で実施されているアドバイスとインフォメーション業務で調整される事
をもこの方法で確保される。
*全国事務所:農業分野で設置されている各全国委員会(酪農、養豚、経営など)の日常業
務を取り仕切っている事務所
新規の教育部門
更に、合同委員会は農業アドバイサリーセンターでリカレント教育の計画と発展でリソー
スを必要とする課題の解決を業務とする新しい部門(教育課ともいえる)の設置を決定した。
これに適する業務は、例えば、責任のある調整(ここには研究機関や協会などがアレンジす
-76-
るリカレント教育の活動に比例しての調整が含まれる)、ユーザーグループに対する事務局、
コース計画、コースリーダーのトレーニング、マーケッティングそしてコースとその方法の
改善発展である。
教育に関する最終責任はこの教育部門に所在し、そしてこの部門は全国事務所の教育責任
者との密接な共同活動で指図された課題を解決できるフルタイムの職員の配属で設立され
る。
チューネ/コルケアゴー学校
-
現在は一つの機関
チューネ農業学校とコルケアゴー学校を合併し、2つの学校は共通の理事会、共通財務そ
して一人の運営最高責任者(学校長)を持つ1つの機関になる政治的決定がなされた。農業
アドバイスサービスの管理下で継続してアレンジされるリカレント教育のコースのフィジ
カルな範囲で主役を務める事がチューネ/コルケアゴー学校の目的である。
一部に全国事務所のリカレント教育に関して増加した業務と責任そして一部に農業アド
バイサリーセンターでの新しい教育部門の設立の結果として、これまでチューネ/コルケア
ゴー学校が有していた一連の機能は全国事務所/教育部に移されている。どれだけのそして
どの責任分野が移行されるかは未だ決定されていない。しかし、契約書で明白に定義化され
るであろう。
その他の機関
その他の記述された機関の業務と責任は次のように述べられる。
ローカルセンター/専門分野のオフィスはコースの提案とリカレント教育が職場で活用
される事に対する責任を持つ。
ローカルセンター/専門分野のオフィスがリカレント教育の受講者の大部分を占める。そ
して、リカレント教育の発展としてページ4のリカレント教育の目的に沿って出来る限りユ
ーザーベースのリカレント教育の基礎になる。ローカルセンターはユーザーグループで広く
代表者を持ち、コースプランに基本的な影響力を持つべきである。
ユーザーグループは基本的にリカレント教育のユーザーで構成されるべきである。そして
全国事務所のコース責任者がグループの会長を務める。ユーザーグループの課題はローカル
センターから来るコースの希望と更に必要と考えられるコースの両方を調整そして明確化
-77-
する事である。ここでは、ユーザーグループがコースの評価と発展で重要な共演者であるよ
うに、新しいコースの提案の創造に対する重要なフォーラムでなければならない。
3 i 委 員 会 ( inspiration = イ ン ス ピ レ ー シ ョ ン 、 information = イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン 、
igangsaetning=スタート)を独立分離した機関として設立する事を合同委員会は提案してい
る。そして、これは現在の協議会の後を継ぐ。3i委員会は専門分野のリカレント教育のイ
ンスピレーション、インフォメーションそしてスタートに貢献する。
他の教育機関は実習的、専門的そして教育的条件のためにチューネ/コルケアゴー学校で
コース開催が不可能な時、アドバイスサービスのリカレント教育が利用する教育機関であ
る。
農業アドバイスサービス分野内でのリカレント教育の体系化モデル
-78-
フランスの農業普及
── 解題と翻訳 ──
-79-
-80-
フランスの農業普及について(解題)
フランスの農業普及システム全体については、以下の翻訳部分を読んでいただければ、お
およその槻略はつかめるであろう。刊行されてから10年以上を経ているために数字そのもの
についてはアップデートしなければならないであろうが、ここにそのまま紹介するのは、複
雑なフランス農業普及システムを理解するのに、この農業会議所報の特集号(原著は、Revue
Chmbres d’Agriculture,no.765., 1989)が非常に有益なためである。
1999年5月7日に全国農業普及協会ANDAのG. VEDEL氏、9日に農業会議所常設委員会
APCAのJ.M. CORDONNIER氏からの農業普及に関する、訳者の聞き取り調査でも、この特集
号の現物を持参し、農業普及の現状について質問したが、枠組みそのものに大きな変化はな
い、とのことであった。それでも、普及内容における環境テーマの増加、普及財源の変化等
が見られるという。
以下では、上の二人の普及事業専門家からの聞き取り、入手した資料によりながら、最近
の普及事業について若干補足しておきたい(注1)
。
最初に、以下の翻訳の原著と現在の普及事業との普及内容上の違いについて言えば、90
年代に入ってから、市場と関連した広範な配慮(品質、新しい需要の開拓)、数年前からは、
環境問題、農村空間管理、食品安全性といった社会の新しい期待に応えるような農業を促進
するように、普及テーマも変化してきているという。例えば、1999~2001年普及プログラム
全体に占めるテーマを見ると、生産技術・経済効率性の改善が30%と相変わらず首位を占め
ているが、製品の高品質化(14%)、新規プロジェクト支援(13%)、経営多角化(12%)、
環境及び水質改善(12%)、空間の活用(5%)
、交代サービス(5%)等となっている。
また、屋上屋を架することを承知で、全国農業普及協会ANDAの資料によりながら、フラ
ンス農業普及について概要を述べておきたい(注2)
。
全国農業普及基金FNDAの管理機関として、1966年に、国と農業職能団体の代表からなる
全国農業普及協会ANDAが設立された。応用研究と普及に関して異なった生産部門の間で、
また行政庁と農業団体との間での調整が、このANDAにおいてなされている。
ANDAは次の二つを任務としている。
(1)農業・食品政策の方向付けの枠組みの中で、普及政策の目的と優先事項を決定する。
(2)国及び州、県の各段階で準備され、執行される普及プログラムを財政支援する。
また、1999年に8億フランのANDAの財源は、行政庁と農業団体との合意の下でなされる
課税システムにより保証される。このシステムは以下に基づく。
(1)農産物への課税:課税はそれぞれの生産部門に固有な方法でなされる。
-81-
(2)付加価値税に服する農業者によって支払われる一律500フランの課税。
全国レベルでは、技術研究所および全国段階機関により、また州や県レベルでは農業会議
所により作成された多年次普及プログラムを財政支援することで、ANDAは数年間にわたる
(例えば、現在では1999~2001年)プログラムを支援する。その他にも、ANDAは、就農や品
質、有機農業、農業設備、キャンペーン「良い施肥Fert-Mieux」、
「良い灌漑Irr-Mieux」の
ような新しい活動を起こすために全国レベルでのイニシアチブを財政支援する。
表-1
ANDAの財源(100万フラン、カツコ内は%)
作物産品課税
家畜産品課税
レポート収入
経営への課税
財政支援
289.3(36.2)
252(31.5)
50(6.3)
205(25.6)
3.7(0.5)
(1999年の予算は総計8億フラン)
表-2
ANDAの支出(100万フラン、カツコ内は%)
農業会議所等
技術研究所
全国機関
全国イニシアチブ
特別助成
ANDA
365(45.6%)
317(39.6)
80(10)
21.5(2.7)
2(0.3)
14.5(1.8)
(総計8億フラン)
農業普及事業は応用研究及び農業普及プログラムに従ってなされるが、それはおよそ次か
らなる。
(1) 州及び県の農業会議所により提案された州プログラム
(2) 技術研究所
(3) 一般的活動を行う全国機関
こうしたプログラムに含まれる活動は、35億フランであり、6,900人のエンジニア、テク
ニシャンにより担われる。これは、ANDAにより7億4,200万フランが負担されるが、これは
財源の21%をしめる。このプログラムヘのその他の財源は以下の通りである。
(1) 農業会議所から22%。
(2) 課税及び分担金が8%。これは技術研究所に向けられる。
(3) 機関の自己資金、独自財源が32%。
(4) 産品別オフィス及び農業省から17%である。
大まかに言って、応用研究及び農業普及プログラムの財源の83%は農業部門からまかなわ
れ、残りの17%が公的資金により負担される。
州及び県の農業会議所のみならず、協同組合組織や農業者組合、生産者グループ、簿記セ
ンターなどに関与する州プログラムが農業普及予算総額35億フランの70%(25億フラン)を
-82-
占め、ANDA支出予算の46%をしめる。
技術研究所・センターはこの予算の25%(8億8,600万フラン)を占め、ANDAからの支
出の43%をしめる。これらの研究所は以下の任務を有する。
(1) 経済事情に応じて、農業生産の技術的方向付けを定義。
(2) 農業者や普及貝の要請に応える、試験研究により提供された成果の実践的適用のた
めの応用研究の実施。
(3) 情報や研修を通じた普及への支援
一般的性格の全国機関のプログラムは、1億7,400万フラン(5%)ほどを占め、ANDAに
より支払われる予算の11%をしめる。これらの機関は、地方レベルの機関を調整する役割を
持つ。
表-3
普及プログラム(1000フラン、カツコ内は%)
支出全体
州
ANDA
エンジニア等(人)
2,466,490(70%)
341,161(46)
5,481(80)
技術研究所
885,699(25)
320,800(43)
1,173(17)
全国機関
174,000(5)
80,000(11)
224(3)
3,526,189(100)
741,961(100)
6,878(100)
全体
表-4
プログラム全体の財源(%)
固有財源
農業会議所
国・オフィス
ANDA
税・分担金
32%
22%
17%
21%
8%
なお、ここでは詳しくふれられないが、地域レベルで活躍する大小の農業普及グループの
存在も無視できない。昨年の新農業基本法の要をなす「経営に関する国土契約CTE」の実施
において重要な役割を演じているのが、こうした農業普及グループだからである。
CTEの成否は、こうした農業普及グループの動員のいかんにかかっていると言っても過言
ではあるまい。
(注1)フランスの普及事業について、川本、二階堂両氏による調査報告書がある。以下
の翻訳と併せて参照されたい。「欧米の普及事業調査報告(フランス編)
」平成11
年3月、農林水産省農産園芸局普及教育課・婦人生活課。
(注2)以下の数字は、ANDA,Les Programmes de Developpement Agricole enFrance1999/
2001による。
(農業総合研究所頴田文明)
-83-
農業普及
──フランスの経験から──
(Le Developpement Agricole;1’experience francaise, Revue Chambres d’Agriculture, no. 765,
mars 1989からの抄訳)
1.家族経営の促進
何世紀にもわたり、農業活動は、ゆっくりとしか発展してこなかった。農業者の能力は、
世代から世代へと、「農民的ノウハウ」と行動規範を通じて獲得された。ついで、次第に、
農業エリートや理論家により、農学が科学へと転換することになった。フランスの最初の農
書が書かれたのは、16世紀にさかのぼる。しかしながら、18世紀の肥料の導入、人工草地の
導入と休耕の廃止をもってしても、その影響は限られたものであった。他方で、工業化と食
料への需要が進歩を促進した。
20世紀初頭になって、つまり1919年に、試験を実施し、予算を組織化し、成果を普及する
ために、国のイニシアチブの下、県や州の農業オフィスが創出されるに伴って、進歩が拡大
するようになった。同時に、農業教師が農村で講義を行った。他方で、肥料の供給者が試験
を行い、販路を拡大した。さらに農業者組合や協同組合、保険共済、農業金庫などが設立さ
れるようになった。
しかし、真の農業技術進歩の普及政策が実施されるには、第二次大戦後まで待たねばなら
なかった。
(1)国を養うこと
1945年に、第一次近代化計画時に、国は農業にたいし次のような目的を設定した。すなわ
ち、食糧供給の保証、貿易収支の均衡、国内工業への市場の創出、である。
新しい生産技術の導入により、生産量のみならず、労働生産性も著しく向上した。
表-1
時間あたり労働生産性上昇率(1979年~85年、年平均)
フランス経済全体
農
2.2%
業
自
4.4%
表-2
動 車
3.9%
収穫量の変化(1960~87年)
小麦(100キロ/ha)
砂糖(トン/ha)
ワイン(100リットル/ha)
1960
25.5
7.7
33.5
1987
56.4
9.4
53.3
-84-
(2)
新しい技術の普及と管理
農業近代化は、これまで知られてはいたものの、まだあまり活用されていなかった多様な
技術イノヴエーションの導入によって進行した。例えば、機械化、モータリゼーション、化
学肥料、種子等である。
1)様々なイニシアチブ
(あ)1944年に、パリ盆地の革新的な農業者グループのイニシアチブの下で、最初の農業
技術センター(CETA)が作られた。1967年には、このセンターは1,300に増えている。
このグループは技術問題全体を解決するために集合した。すぐに、彼らはエンジニアや
テクニシャンを雇用し、全国レベルでの連合体を作っている。
(い)1946年以降、農業省がいくつかのイニシアチブを発揮している。すなわち、一人の
エンジニアによりそれぞれ指導されるパイロット農場ネットワーク、コンサルタント、
デモンストレーション、訓練を担う郡(カントン)レベルの普及員の設置、普及と教育
を結びつける農業進歩の中心地foyers de progress agricolesの設置、である。
(う)1948年以降、小麦生産者総連合会AGPBが自発的な農業者の下で生産の新技術の応用
(耕起、施肥、播種)を行うエンジニアやテクニシャンの「実験村」を設置し、こうし
た試験の見学会を組織した。この経験は、いくつかのコミューンにまたがる「実験地帯」
の設置につながった。これは、それぞれテクニシャンを擁する農業生産性グループによ
り運営された。
(え)1951年以降、農業会議所が農業者グループの支援を行うようになった。
農業者グループ、試験、デモンストレーション、コンサルタント、訓練が農業の技術進歩
を促進するのに必要な5つの回答である。また同時に、肥料や種子、飼料の販売を通じて、
協同組合と企業が技術普及に貢献した。
他方で、農業普及員という職業の創出が、工業におけるものとは異なった、構想と実行と
の間の関係を示している。農業の場合、家族経営への依拠という政策的考え方があったから
である。
2)農業普及への職能団体の責任
1959年のデクレが、行政に重要な役割を付与して、最初に普及vulgarisationの地位を一規
定し、その財源を規定した。
1966 年 10 月 の 新 し い デ ク レ が 、 農 業 職 能 団 体 に 重 要 な 役 割 を 付 与 し て 農 業 普 及
developpementを設定した。この名杯の変化は、農業における進歩が農業者のイニシアチブを
必要とし、農業潜在力の活用と経営の公平性、市場の可能性、設備との間のまとまりを必要
-85-
とすることを示している。
(3)フィリエール(サプライ・チェーン)への統合
経営の特化・専門化と製品や技術の多様性が、ますます精緻化され特化された情報への需
要を生み出した。これに答えるために、60年代末に、製品タイプないしフィリエールに基づ
いた技術組級が創立された。農業技術研究所・センターInstituts et Centres techniques
agricolesがそれである。職能団体的、業種間(フィリエールの上下)的性格を有するこれら
の組織は、応用研究を保証し、生産技術を方向付ける。資材供給や集荷、加工、販売のレベ
ルでの組織化の強化は、まず、食品全体へと農業生産技術を統合するようになった。
協同組合と生産者団体は、製品の販売のための技術フォローアップを行うようになった。
これらは、競争力上の理由から、これらの生産物の経済組織化を強化するべく、オフィス(と
りわけ牛乳と食肉)から財政支援を受けることができる。
(4)経営管理
市場経済への経営の統合や投資の必要性により、農業者は自らの経済合理性を修正するこ
とを余儀なくされた。徐々に、彼らは商工業企業で用いられている管理手法を導入すること
になった。こうして、50年代にもっとも近代的な農業者によって最初に作られた簿記管理セ
ンターが、その後全国に広がった。
こうした農業者のイニシアチブは、税制や構造政策の領域で、行政庁の意志決定により広
がることになった。例えば、税制において、1971年の実質所得benefice reelへの課税制度の
創出(76年に、その簡易制度の発足)により、これに服する農業者に対し、簿記の記帳が義
務づけられ、認可された簿記管理センターヘの加盟が促進された。さらに、就農助成金や施
設整備計画の融資を受けるに当たって、簿記の記帳が義務づけられている。
(5)フランス農業の新たな背景への適応
70年代末から80年代初頭に事態の変化が見られた。その最初の兆候は、74年から83年まで
続いた農業所得の規則的低下であった。こうした市場飽和の下で、近代化と販路の拡大が疑
問視されるようになり、市場への適応性が求められるようになり、多様化や非食料目的つの
販路の拡大、果樹、医薬用枯物なビヘの転作が進められた。多様化は、サービス(ツーリズ
ムや農村整備など)へも向けられるようになった。それに伴い、コンサルタントもより個別
化されるようになった。
-86-
2、農業者に責任を任せる支援・コンサルタント
表-3
県プログラムにおける普及活動の割合(時間)
農業者の訓練
応用研究
個人経営への普及
集団的普及
10%
15%
50%
25%
(ANDA1987より)
(1)職業教育
国の助成を得るために、青年農業者としての就農については、農業職業修了証書(BEPA)
が必要となった(当時)
。初期教育でこの水準を獲得していない青年は、生涯教育コース(800
時間;BPA資格へのアクセス。あるいは200時間;3年以上の農業経営での経験により補足)
を受講しなければならない。さらに、就農予測調査を、就農時に準備しなければならず、こ
れは、最初の3年間に経営がとるべき方向を提示する文書である。また、これに40時間(県
によっては、60から80時間)の就農準備コースに参加しなければならない。
初期教育と生涯教育は国によって費用負担され、一部は州によっても肩代わりされる。
1992年1月1日以降、就農候補者は、BTAと6ヶ月の研修が必要となった。
すでに農業に従事している農業者に村しても、短期の職業訓練コースが提案される。12
~15人のグループに村し、3日以上のコースに限り助成の対象となる。こうした助成は、農
業経営者教育保証基金FAFEA、農業経営被雇用者教育保証基金FAFSEAによりなされ、その
財源は主に、全国農業普及協会ANDAに由来する。
FAFEAは、7000のコース、10万人の研修、35万日に対応している。1987年では、その助成
金は研修生1日当たり90フランであった。こうしたコースの3分の2は、農業普及員ににな
われ、残りは教育堆進者や組合推進者により推進された。農業普及員は、自分が推進してい
ないコースにもしばしば参加している。
表-4
1988年に就農した青年農業者の教育水準
高等農業技術者
(BTS)
農業技術者
(BTA)
農業教育修了証
(BEPA、BPA)
初等教育
証書なし
6%(3%)
13%
58%(9%)
13%(19%)
10%(69%)
(カッコ内は農業者全体の資格水準。ただし、BTSの3%はBTAを含む。
)
(2)農業者のグループ
当初先端的農業者により創出されたCETAは、様々なイニシアチブ(とりわけ農業組合)
-87-
こより、より多数の農業者のためのものに発展し、今日では複数のグループを構成している。
すなわち、先端農業者のグループCETAより広範なグループが、専門分化した委員会、専門
別グループの中で活動している(農業普及グループGVA,GEDA,農業・農村振興センター
CIVAM)
。二つの全国連合体FNGEDA,FNCIVAMの下に結集した、現在2000の普及グループ
が数えられている。しかし多様性が増大している。生産者グループや協同組合、牛乳管理組
合も、自分たちで農業者との間で技術交換グループを作っているからである。農業機械利用
協同組合(CUMA)は、農業設備と農業技術の管理において重要な役割を持っている。農業
者グループは地域整備計画(灌漑、排水、土地整備など)に際して構成されたり、別のもの
は、労働力の問題(相互扶助、交代)、販売(直販グループ、生産者グループ)に際して作
られる。いくつか(特にCETA)はテクニシャンを雇い、他のものは農業会議所の普及員を
利用する。農業普及員を専門化させる必要性、グループの利用できる普及員の十分な数がい
ないことから、今日では、多くの農業会議所は「職務契約」を締結している。これは、それ
ぞれの活動に応じて、それぞれのグループに参加する普及員を指定するものである。
グループ化はいっそう促進されているが、それは技術進歩を普及するための最も経済的な
方法である。普及グループのメンバーは農業をとりまく環境全体に波及効果を有するのであ
る。
このように、普及活動の一部は、農業者支援のために利用される。すなわち、しばしばグ
ループの、特定の地帯での農業者に村して、彼等の必要を定式化し、活動をスタートさせ、
生産組織や相互扶助ネットワークを立ち上げたり、土地整備計画や集合施設計画を決定する
のを支援する。
-88-
多様なグループとともに活動:ピレネーオリエンタル県の事例
かつてはテクニシャンが地理別のグループにより利用されていたが、現在では、生産が
多様化し、村象者は、教育の面でも、経験や知識、動機の点でも非常に多様である。
そのために、農業会議所は、様々なグループ化を促すことで、対象者ごとに普及を調整
しようとした。
(あ)地理別の17グループが存続:
ひとりのテクニシャンが、その一部の時間をこれに当て、残りの時間は、生産基準の追
求や県の専門家としての活動に当てられる。
(い)テーマごとに、または地帯ごとに、4つの他のグループの立ち上げ:
これらはそれ自身でテクニシャンを雇用する。農業会議所は、その費用の5割(給料+
社会保険料+移動)を負担し、テクニシャンへの永続的な支援を行うことで、財政的、技
術的援助を行う。補足的な財源は、グループにより探索される(自治体の補助金や契約、
分担金など)
。
(う)専門別グループの新たな立ち上げ:
実際のところ、特定の生産(施設野菜や果樹)は高度な技術を必要とし、技術進歩は急
速である。これらの生産者は、地理別のグループの下では適切な支援を受けられず、専門
的サービスを必要とする。こうして、28人の生産者からなる施設野菜グループが誕生し、
ひとりのテクニシャンを雇っている。農業会議所は、彼の給料の20%と社会保険料を負担
し、彼の訓練を保証している。このグループの活動は個人的であると同時に集団的である。
各組合貝への週1度の戸別訪問。様々なテーマごとの作業(略)、月1回のグループ全体
会合。このグループの28人のメンバーは、当初2年間の予定で構成された。最初の年は、
分担金は、組合員当たり1000フランで、テクニシャンは、その時間の多くを自分の研修に
当てることができた。次年度は分担金が3000フランとなった。さらにもう一つの47人の施
設野菜グループができ、こうした二つのグループの成功により、専門別グループが発展し
た(4つないし5つが施設野菜、1つないし2つが果樹)
。
(3)コンサルタント(経営相談・診断)
普及は、経営者が行う意志決定に関して、次のような様々な給付を行う。(あ)方向付け
への相談。
(い)年間計画への支援。(う)特定の介入の実施に関連した、その時々の支援等
である。
いずれの場合も、経営の全体を考慮した総合的相談と、専門的支援との統合が必要である。
例えば、就農や発展計画PAMを契機とした、方向付けの意志決定の場合、普及員は農業者と
ともに、その経営の長所と短所を評価し、この基礎の上に複数のシナリオを打ち立てる。こ
-89-
れは、場合によっては、いっそうの専門家の支援を必要とする。例えば、排水の場合、当該
投資の費用と収益、フィージビリティーの評価が必要であろうし、相続問題の場合には、法
律や税制の専門家が必要となる。同様にして、毎年、経営成果の評価に基づいて、様々な技
術的選択が提示される。例えば、施肥について(施肥計画)
、飼料について(飼料計画)
、作
付け計画など。こうして、農業普及員や簿記相談員により広範になされる方向付けの相談と、
様々な機関のテクニシャンや協同組合、私企業によって与えられる専門的な支援を区別する
ことができる。
方向付けの相談と専門的支援は、主として、個人的給付の形で行われる。多くの県では、
こうした給付をより集団的な活動とつなげようとしている。
(4)大衆への普及
特別のキャンペーンが、特定のテーマで行われている。80年代初頭の小麦コンサルタント
ble conseil,とうもろこしコンサルタントmais conseil,
「良い飼料」fourrages mieux等のキャ
ンペーンがある。こうした全国イニシアチブの活動が県で行われており、他の機関と協調し
て行われることが多い(協同組合や組合など)。
(5)参照基準(レファランス)の精緻化
農業者にとって、経営を改善するためには参照基準が必要であるが、それは、農業普及員
やテクニシャンにとっても同様である。農業者やテクニシャンの経験や記録は、貴重な情報
源をなす(簿記、家畜のパフォーマンスの記録、地片のチェック・カードfiches de suivis de
parcellesなど)、さらに試験場で、精密なプロトコールにしたがって基礎研究が行われる。ま
た、多数の分権化された試験、参照基準として選択された経営のフォローが行われる。今日、
経営システムの多様性の特徴的分析によって、県で選ばれた、参照基準となる経営に重大な
役割が与えられている。この経営は、農業者に管理されてはいるものの、普及員による重要
なフォローと記録の対象となっている。この経営により、「基準システム」の確立、経営と
州の改善点に村する技術革新の可能性を検証し、他の農業者へのデモンストレーションの場
を提供し、技術経済的変化への経営の適用の可能性の調査の基礎として役立つ。この基準シ
ステムは青年就農者にとって特に重要で、彼等は重大な投資を行う際に、その地帯の経営と
自分の就農計画を比較することができる。
青年就農者への「訓練コース」は、初期教育と生涯訓練、フォローアップを組み合わせる。
この手法は、今日、財務困難に陥った農業経営についても用いられ始めている。
-90-
ローヌ・アルプ州での肉牛生産における参照基準ネットワーク
地域に提起された問題を調査、分析するために二つの試験農場がある。エヌAin県
Confrancon地区では、穀物・飼料技術研究所ITCFと協力して、3つの土壌タイプを備
えた30ヘクタール、montbeliardes種の85頭の雌牛を有する一つの農場で、乳牛のための
飼料システムの比較がなされている。また、イゼールISER県Cote Saint Andre地区では肉
牛飼養技術研究所ITEBと協力して、60頭の牛、30頭の雌牛、乳牛のための濃厚飼料の研
究のために、60ヘクタールの農場がある。また、基準農場ネットワーク(明日の牛飼養
ネットワーク)が、この州の農場から碍成されている。230人の飼養者を有する、自然地
帯ごとのネットワークが、ITEBの支援の下、農業会議所のエンジニアチームによりフォ
ローされることになる。
3.活動の補完の努力
農業普及システムは複雑だが、三つの原則を提示することができる。
(あ)州および県農業会議所を中心とする農業者支援の地域ネットワーク;様々な機関の
間での任務分担。しかし、それは、二つのネットワークからなる。一つは、農業会議所
とそのサービス(普及部SUAD,県畜産機関EDE,教育サービス)が、農業普及領域で、
行政庁への諮問、普及事業の調整、介入活動(試験研究、教育、税制その他)の3つの
業務を行うものである。その他に、独立した技術支援組織があり、これらは農業会議所
のイニシアチブにより設立されたものが多く、その運用に依存している(簿記センター、
家畜パフォーマンス管理組合、ASAVPA、教育協会など)。
(い)応用試験研究ネットワーク。(略)
(う)調整と財政支援(その財源は全国農業普及協会)(略)
。
(1)農業会議所の三つの任務
農業会議所は、1924年1月3日の法により作られた「農業職能機関」であり、この法によ
り、農業会議所は、商工会議所や職人会議所と同じく、「公共機関Etablissements Publics」の
地位を与えられている。
県農業会議所の構成員は、秘密投票により、農業者や農業労働者、農業職能団体により選
出される。
農業会議所は特別の財源を有する。非建造土地への付加的税が、農地所有者により支払わ
れ(しばしば、その半分は借地人により支払われている)、税制当局により徴収されている。
その額は、毎年、それぞれの農業会議所により投票されている。現在、平均1ヘクタールあ
たり22フランで、県全体では、11億フラン(1987年)である。この固有財源に加えて、ほぼ
-91-
同額の金額が加わる。すなわち、全国農業普及基金FNDA、県と州、農業者に支払われるサ
ービスへの対価などである。
こうして、農業会議所は以下のような三つの任務(公権力ヘの諮問、調査と相談、普及活
動全体のコーディネーション)を担うことになる。
1)公権力ヘの諮問
農業会議所は、農業利益の諮問的、職能的機関を碍成する。これは、公権力に村し農業問
題に村し意見を具申する。
2)調査と相談の職業機関
農業会議所は、複数の農業機関に村してその支援を与える。またこれは、様々なサービス
を有する(生涯教育、法律、農地、農村教育、文書作成、場合によっては管理簿記)。最も
重要なのが農業普及である。最初、60年代において、県農業会議所は、農業普及グループの
ために農業普及員connseillersを雇用した。今日では、農業会議所は、次の領域を主要な活動
とする。
(あ)技術経済的基準の精緻化とその普及組織化;別の組織、とりわけ応用技術研究所と
共同で基準が作り上げられる。
(い)イノベーションヘの支援;フィリエールや生産の調査、研究への支援、プロジェク
トの開始への支援。
(う)生涯教育;普及計画と整合した農業者や農業被雇用者の能力強化。
(え)農業経営への全体的相談;重大な経営変化の局面において、農業者に村し、生産費
の管理、高付加価値をもたらすような助言を与える。
(お)同伴とフォロー;生産手法の全体に村し(農学、施設、生産費用の全体的管理など)
、
別の機関の農業者支援と調整しながら行う。
農業会議所の公的任務と農業者の要求の多様性により、公的利益に基づいた活動と、より
個別化されたサービス給付との整合性が追求されるようになっている。
その活動を行うために、農業会議所は、ほぼ3,200人のエンジニアや農業普及員を配置し
ている。これは以下のように分類される。
(あ)農業普及員conseillers;2~5人のチームで、小農業地帯ごとに配置される。それぞ
れ特定領域の専門を持ち、まとめの全体的相談、教育、協調されたキャンペーンの振興、
農業者グループの立ち上げとその運営を主として担当する。
(い)専門的普及員とエンジニア;県レベル(しばしば州)で配置され、技術研究所と並
んで試験を行い、経営システムの基準を練り上げ、調査を行い、技術経済的文書を作成、
-92-
他の機関の農業普及員やテクニシャンに助言を与え、生産領域で農業者に専門的助言を
与える(とりわけ、他の機関のテクニシャンが少ないとき)
。他の専門普及員は、経営
の生産手法の同伴とフォロー(農業機械、建物、灌漑、農学などについて)を行う。
いくつかの農業会議所は、農業普及に役立つような設備を有する。応用研究のための20
の試験場と12の分析試験場(土壌分析、飼料馬草分析、製品の品質分析など)がある。
図-1
農業会議所技術サービスの組織図
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3)普及活動全体のコーディネーション
介入の役割の他に、農業会議所は、政令(デクレ)により、県で行われる普及事業全体を
調整・管理することが決められている。この任務は、様々な技術サービスの作業を効率よく
活用するために重要である。こうした調整的任務は、農業普及部SUADの存在、農業普及多
年次計画PPDA、協調した活動により促進されている。
(あ)農業普及部SUAD
各県農業会議所は、農業普及部を有し、県で行われる普及事業全体を調整する(当該
事業が全国農業普及協会ANDAの助成を得ている限り)。SUADの指導会議は、農業会議
所の6人の代表と県の職能団体代表6人(FDSEA,CDJA,協同組合、クレジ・アグリ
コール、農業者社会共済等)からなる。さらに、畜産に関する普及活動の場合は、事前
に、県畜産機関EDE(これはしばしば、農業会議所の一つのサービスを構成している)
の指導会議の中で議論される。
(い)農業普及多年次計画
県で予定されている普及活動は、5年間について設定される(必要とあれば調整され
る)多年次計画の中にまとめられる。この計画は、様々なパートナーとの協議の下で、
SUADにより準備される。この計画は、全国普及協会により支給される補助金の割り当
てと協調活動の実施の基碇となる。
(う)協調活動
調整機能は実施するのに困難が伴う。そのため、優先事項と判断され、当該機関の間
で合意を得られる領域についての共通活動の実施が重要視される。
fourrages miuex事業の例〔略〕
(2)他の技術支援機関
1)簿記管理センター
このセンターは、農業者に対して、簿記の記帳と分析、管理の視点から他の者と比較する
ために設立された。簿記の記帳の義務づけ(税制や、国の助成を受けるために)により、こ
れが促進されてきた。現在、100ほどの簿記センター(各県に一つ以上)が存在し、これに
25万人の農業者が加盟している。いくつかは、農業者組合や農業会議所のサービスに属する。
しかし、一般的には、これは、その組合員により管理されるアソシエーション(協会)であ
る。センターの多くは、全国団体の農業管理経済研究所IGER(現在CNCER全国農業経済セ
ンター機構)に加盟しており、これがセンターにたいして方法的支援を与え、会計管理の手
法を確立し、経済調査を実施する。
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2)家畜パフォーマンス管理組合Syndicate de Controles de performanoce animales
これは、牛乳・羊乳生産、肉用家畜の成長の個別的特徴を測定するために、まず、家畜の
遺伝的改良を目的に設立された。パフォーマンスの記録は、次いで、経営の下での技術支援
(改良、繁殖、衛生、飼料管理)により補完される。牛乳については、独立した管理組合が
存在するが、食肉の性質管理は、農業会議所により行われることが多い。
3)森林生産者グループ〔略〕
4)ASAVPA(農業労働者への普及組織)
ほとんどすべての県に存在するが、半分は農業会議所の中に存在する。
5)独立系農業者グループ(CETA等)
農業会議所の普及員の支援を得ずに、自分たちでエンジニアを雇用している。
6)協同組合と生産者グループ
その最初の機能は、よりよい条件での農産物の販売のための集荷を促進することである。
これは、場合によって、資材供給部門(家畜飼料、肥料など)を備える。フランス全土で4,250
の協同組合があり、200万人の組合員を有する。小さなグループでは、同一の人が販売振興
と技術支援を担うが、いくつかの組合では、特別の技術サービスが試験、農業者支援、教育
を担う。さらに、1万2000の機権利用協同組合CUMAが存在し、25万人の農業者が加盟して
いる。設備や機械での技術支援に重要な役割を持つ。多くの私企業も顧客に村し試験や技術
支援を行っている。
7)農業経営者の組合〔略〕
9)行政〔略〕
(3)応用試験研究ネットワーク
技術進歩の普及活動は、基礎研究と普及との間にある応用研究の成果に大きく依存してい
る。
1)農業技術研究所・センターICTA:17ほどの研究所が存在し、それぞれが生産部門(穀
物、野菜・果樹、肉牛、豚肉、森林など)をカバーしている。
これらの多くは、当該の職能組合により作られた職能的なものである。その他のものは、
加工や特別の販売を結合した業種間のものである。これらの役割は、生産や収穫、販売に関
わる技術基準を精緻化し普及することである。このために研究所は、試験場で、また農業者
-95-
の下での試験農場で、地域や県の機関と協調して、試験研究を行う。基準は、農業者の下で、
印刷物やテクニシャンの訪問、訓練コースにより普及される。技術研究所は全国普及協会や
国(主としてオフィス)の助成金を受けたり、固有財源(研究や印刷物)を有するほか、い
くつかは、さらに固有の税収がある。
2)基礎研究との関係〔略〕
3)農業機械化研究所CEMAGREF〔略〕
4)試験とデモンストレーションのネットワーク
技術研究所や普及機関、初期教育機関、研究の間の調整を改善するために、また、獲得さ
れた基準の普及を促進するために、主要な技術研究所は、1980年以降、主たる試駿普及機関
の代表を含む委員会を立ち上げている。「進歩のフィリエール」への介入者たちの整合性を
もたらし、応用研究成果を基準農場ネットワークのフォローにより補完することの中に、こ
うした意志が読みとれる。こうしたネットワークにより、それぞれの州における経営システ
ムの制約(戸外での作物、家畜のように、主として気候条件に依存する場合)を考慮する事
が可能になり、応用研究成果を適用し、その普及を促し、経営システムを発展させ、意志決
定に必要な情報を提供することを可能とするのである。
図-2
BerryのBordes試験農場の機能
-96-
(4)普及の調整と農政との連携〔略〕
1)方向付け最高諮問会議
2)製品ごとのオフィス
3)全国農業普及協会
4)県・州農業委員会conferences departementales et regionales de l’agriculture.
これは、各県、州において、普及活動をその他の農政(とりわけ、県での農村設備や施設、
州での教育・訓練や経済振興活動)と結合させるために規定されている。
各委員会は州・県知事により監督され、行政側代表(国、州、県)と職能団体代表からな
る。実際には、これは、職能団体・行政・地方自治体の協議に置き換えられる。
(あ)方向付けの権限の分割と普及の実施
(い)地方自治体(主要な機能)
4
普及員の能力の向上
農業普及の規則は、普及員の資格条件を詳細に規定している。これは漸次的な調整の対象
となっている。しかし、農業者への支援活動を行う機関の増加により、普及貞の数も上昇し
ている。相談・コンサルタントconseilを主要な活動とする機関のみが特別な教育を受けた普
及員を要している。
(1)農業普及員から普及エージェントヘ
普及活動に従事する主要なエージェント〔略〕
(2)普及という仕事への教育
規則は農業普及員に必要な資格を規定している。21歳以上であること、農業上級技術者資
格BTSAもしくはそれと同等以上の資格を有すること、認可された研修センター(農業会議
所全国委員会のTrieChateau,Etcharryセンター)により行われる8週間の訓練と3ヶ月以上
の研修を含む準備研修を受けること。さらに研修生は論文の執筆を行う。こうした訓練によ
り、農業省により認可された農業普及員適正資格リストに登録されることになる。毎年180
人の普及員が職務訓練を受講し、これは4,000日・研修生に相当する。この規則は、別の普
及員にも適用される(農業組合の事務局員、協同組合の普及テクニシャンなど)。農業会議
所の普及員の多くがこの研修を受け、その他の組合などのテクニシャンもこれを受けるが、
協同組合の普及員はそれほどこれを受けていない。
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(3)知識の完成
技術的経済的、教育的能力を改善するために、完成コースが、普及員に村して提案される。
2つの農業会議所常設委員会職業訓練センターと、州農業会議所によって管理される10ほど
の州センターによって組織される、農業普及員向けの3日以上のコースがある。毎年240以
上のコースが設置され、これは12,500日・研修生に値する。農業会議所常設委員会は、全国
農業普及協会の委任により、特別なサービス「普及教育部」SUAFの中で、職務訓練と普及
員の完成コースの活動を調整する。SUAFは、主として普及員の訓練を管理し、部分的に他
のコンサルタントの訓練を管理する。SUAFは、各研修センターにより提案されたプログラ
ムを認可し、そのコースの費用負担に関与する。SUAFの指導委員会は農業会議所や農業者
組合、協同組合などの職能代表からなる。農業省が作業に関与する。
応用技術研究所も、それぞれのテーマに応じて、普及員や協同組合や私企業のテクニシャ
ンのための完成コースを提案する。毎年、220ほどのコースが設置され、これは1万5,000日・
研修生に対応する。別の普及員を雇う機関の連合体も、その普及員のためのコースを組織し
ている。
5
相互扶助に基づいた財政
(1)様々な財源
普及財政についての主要な数字は全国農業普及協会ANDAが公表している。農業普及予算
は、1987年で、33億フラン(農業生産額の1.1%)と数えられているが、農業普及計画に登
録されている活動のみが考慮されているため、実際よりも少な目に評価されている。さらに、
協同組合の貢献分も過小評価されている上、国立農業研究所やCEMAGREFの応用研究、私
企業の活動も考慮されていない。現在の傾向として、全国レベルの助成が減少し、自己負担
分が増加している。
ANDAにより管理される全国農業普及基金は8億フランの予算を有する。その財源は主と
して農産物にかかる職業税(農業者から農産物を集荷する機関により、一般的に徴収される)
からなる。この税金は農業者に支払われる価格から控除され、職能の直接的貢献として見な
される。こうして、農業生産額の17%しか占めない穀物が全国農業普及基金の財源の3分の
2を提供している。それに村し、予算の85%はそれぞれの県(農業会議所)の間で(県の豊
かさ、農業者数などに応じて)、また応用試験研究所、さらにいくつかの全国機関の間で、
交付金の形で配分される。予算の15%のみが詳細なプロジェクトに基づいた全国レベルの優
先事項に応じて、奨励的予算の形で割り振られる。(訳注:その後、穀物部門からの度重な
る要求の結果、変更がなされた(解題参照))。
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製品ごとのオフィスも普及事業ために自らの予算の一部を当てている(2億5,000万フラ
ン)。この予算のほとんどは、経済組織や協同組合、私企業により、技術支援のために用い
られたり、技術研究所により、試験研究活動に使われたりする。
州や県といった地方自治体も、地方分権化により、生産の方向付け(州計画)や農村整備
(県の権限)、農業普及の間のまとまりを持たせるように、2億3,000万フランを支出してい
る。
農業会議所は、その自己財源の一部(1987年について、11億フランのうち5億3000万フラ
ン)を普及活動に支出し、その5分の4は、自らの技術サービスによりなされる活動に向け
られ、5分の1が、地域組織が行う普及活動への助成の形となっている。
その他の職能組識や全国組織も特別税(特定の技術研究所)や農産物への賦課金の形で自
己財源を有している。このように使用される金額の評価は、該当する機関の数が多いために、
また、正確な項目として計上されていないために、困難となっている。ANDAによれば、こ
れらは4億フランほどに上ると見られている。
普及のための特別分担金やサービス対価の形での農業者の直接的負担はANDAにより、6
億ないし7億フランと見積もられている。
このように、それぞれの機関の予算の仕組みは、その目的に応じて異なる。ANDAの助成
は、技術研究所予算の40%を占めるのに村し、県普及計画予算の19%を占めるにすぎない。
県計画においては、農業会議所によりなされる活動(10億)が、ANDAにより27%を負担さ
れている。協同組合や簿記センター、牛乳管理組合によりなされる活動は、個人的支払いに
よりなされており、ANDAによってはあまり助成されていない。
(2)より広範な固有財源に向かって
ソム県農業会議所の普及サービス料金表
(1)個人的給付
1)経営の全般的なフォローアップ(年間7回の訪問)
2)生産ないし作業場:技術診断
年1300-2800フラン
910-2800フラン
(経営面積、生産タイプにより異なる)
3)技術分析:簿記成果から
260-560フラン
4)診断:経営の方向付けの転挽
1時間130-280フラン
(以下、詳細な項目が並ぶ。中略)
(2)グループヘの給付
1)プログラムやテクニシャンの拘束時間、メンバー間での使用料金の配分、全体料金
を決める契約を締結
1時間280フラン
(ただし、県普及プログラムの一部をなす参照基準作成活動は無料)
(以下、略)
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