フィルム型光導波路材料

U.D.C.
621.383.09.416:621.372.8.049.002:535
フィルム型光導波路材料
Optical Waveguide Film
高崎俊彦 Toshihiko Takasaki
牧野竜也 Tatsuya Makino
山口正利 Masatoshi Yamaguchi
柴田智章 Tomoaki Shibata
落合雅美 Masami Ochiai
高橋敦之 Atsushi Takahashi
情報処理機器や携帯端末機器の高性能化に伴う機器内配線の高速化,高密度化の要
求から,従来の電気配線に比べ高速伝送が可能で電磁ノイズが小さな,光配線を導入
する動きが強まっている。当社では,光配線用にフィルム型光導波路材料の開発を進
めている。低光損失と高信頼性を両立するために,使用波長域での電子遷移吸収を低
減しつつ,分子骨格に芳香族を導入した材料設計を行った。さらに感光性を付与し,
フィルム状でラミネート,露光,現像で光導波路形成可能な材料を開発した。開発材
を用いて,ガラスエポキシ基板上に作製した光導波路は,波長850 nmにおいて損失
0.05 dB/cmと低光損失であった。またリフロー試験,温度サイクル試験,および恒温
恒湿試験をクリアし良好な信頼性を示すとともに,高速光信号が伝送可能なことも確
認した。さらに本開発材は,良好な屈曲特性を示すことから,フレキシブルタイプの
光導波路としても適用可能である。本開発材は,情報処理機器や携帯端末機器に用い
られる光配線用光導波路材料として有用と考えられ,今後の光配線の普及に寄与でき
ると期待している。
A novel optical waveguide film has been developed that has high transparency and
good reliability and that will simplify the fabrication process. This material was used to
fabricate a multimode optical waveguide on a glass-epoxy substrate using lamination
and exposure/development processes. The waveguide showed a low propagation loss
(0.05 dB/cm) and reflow solder heat resistance. Furthermore, there was no change in loss
after a thermal cycle test and temperature/humidity test. This material was also used to
make a flexible optical waveguide, which demonstrated good bending properties.
〔1〕 緒 言
近年の情報伝送量の爆発的な増大に伴い,通信分野で広く
用いられている光高速伝送を,機器内信号伝送に応用する動
100,000
きが出始めている1)。
ハイエンドルータを例に,伝送量の増大に伴う電気伝送の
図1に示すように,現在,ハイエンドルータのバックプレ
ーン容量は3 Tbps,ラインカード容量は80 Gbps程度であり,
年2倍近い割合で容量が増加すると予想される。2009年にはバ
ッ ク プ レ ー ン 容 量 10 Tbps以 上 , ラ イ ン カ ー ド 容 量 も 300
容 量(Gbps)
10,000
課題と光伝送の可能性を示す。
Gbps以上になると予測されるが,現状の電気配線では,高速
バックプレーン
スイッチ(装置)
1,000
スイッチ(ファブリック)
100
化の限界,高密度化に伴う信号遅延,反射の問題や,プリエ
ラインカード
ンファシスやイコライジング等の補正回路の付加による消費
10
2002
電力の増大等,課題が多い2)。
一方,光配線は,信号遅延や反射の問題が少ないため,チ
2004
2006
2008
2010
年 次
ャネルあたり10 Gbps以上の高速伝送が可能である。また,
高速伝送化により配線数の大幅な低減が可能となり,機器の
図1 ルータ容量の年次推移 ルータ容量は約2倍/年の割合で増加している。
小型化や設計裕度の飛躍的な増大が期待できる。さらに光配
Fig. 1
線は,電磁ノイズが小さいため,電磁ノイズ対策によるコス
Growth of high-end router capacity
High-end router capacity is increasing twofold every year.
当社 先端材料研究所
日立化成テクニカルレポート No.48(2007-1)
17
試験,および85℃/85%RH恒温恒湿試験において光損失の
ト高や設計制限がなくなることも大きな魅力である3)。
光配線の課題としては,低消費電力化,従来の電気配線と
同等の信頼性,低コスト化等があげられる。低消費電力化に
は,光信号伝送時の低光損失化がキーポイントとなる4)。また,
電気配線と同等の信頼性や,表面実装に対応したハンダ耐熱
性等,既存プロセスへの適合性などが必要と考えている。
光配線の手段には主に光ファイバと光導波路があり,機器
増大なし
③簡便な加工性:フィルムラミネート+露光,現像による光
導波路形成
①については,低光損失の光導波路材料を開発することに
より,より少ない光強度で信号伝送が可能になり,発光素子
の低消費電力化につながる。本開発では,光導波路長30 cm
の小型化には高密度,多層配線が可能なポリマ光導波路が有
において光損失3 dB以下(光強度50%以上)となるよう,波
利ととらえている3)。本報では,光配線の課題を見据え,低光
長850 nmにおいて光損失0.1 dB/cm以下の材料開発を目指し
損失,高信頼性を目指し,かつ簡易なプロセスで光導波路を
た。
製造可能な光配線用のポリマ光導波路材料の開発状況につい
目標とした。また,プリント配線板の代表的な信頼性試験条
〔2〕 開発方針
2. 1
②については,近年の表面素子実装の主流になりつつある,
鉛フリーはんだのリフロー条件で光損失が増大しないことを
て述べる。
件である,−55⇔125℃温度サイクル試験,85℃/85%RH恒温
光導波路の要求特性
恒湿試験においても光損失が増大しないことを目標とした。
光配線用のポリマ光導波路に求められる特性を,光通信用
③の光導波路形成プロセスであるが,サイズ数十µmのコア
フッ素化ポリイミドを用いたポリマ光導波路との比較で表1
が簡便に形成できるよう,感光性を付与し,マスク露光,現
に示す。
像によるコア形成が可能な材料設計を行うことにした。さら
にフィルム状にすることで取り扱い性に優れ,簡便な基板へ
の成膜と加工が可能と考えた。
表1 光通信用光導波路と光配線用光導波路に求められる特性
各々
の使用波長域での低光損失化のため異なる分子設計が必要である。また,コア
サイズが異なるためコア形成法も異なる。
2. 3
材料設計
上記の開発方針に基づき,低光損失と高信頼性を両立する
ための材料設計を行った。
Table 1 Requirements for optical waveguide for telecommunication and for
printed circuit boards
光損失の要因を図2に示す5∼7)。
Different molecular designs and core patterning methods of optical
waveguides are needed in order to decrease optical loss.
項 目
ポリマ光導波路
光配線用
光通信用
使用波長(nm)
850
1300∼1550
導波モード
マルチモード
シングルモード
コアサイズ(µm)
30∼100
4∼10
電子遷移吸収
吸収損失
内的要因
分子振動吸収
散乱損失
光損失
外的要因
レイリー散乱
不純物,ボイド,コア表面荒れ等による吸収,散乱
光通信で使用する波長は1300∼1550 nmであるのに対し,
光配線は,安価でアレイ構造が可能な面発光レーザ(VCSEL:
Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が用いられるため,
使用波長は850 nmとなる可能性が高い 2)。後述するように,
ポリマの光損失の要因は波長によって異なる。したがって,
図2 光損失の要因 波長850 nm付近においては電子遷移吸収の低減が低
損失化に有効である。
Fig. 2
Factors affecting optical loss
The most effective method for decreasing optical loss at the 850 nm
wavelength is to reduce the electronic transition absorption loss.
光配線用光導波路材は,光通信用とは異なる分子設計が必要
である。また,光通信はシングルモード伝送が主流である。
そのためコアサイズが4∼10 µm程度となり,実装裕度±0.5
光損失は,不純物混入,ボイド発生,コア表面荒れ等によ
µm以下と,高精度な実装が要求される。一方,光配線は,実
る外的要因と,材料そのものによる内的要因に大別される。
装裕度を広げ低コスト化を図るため,マルチモード伝送方式
内的要因による光損失は,吸収光損失と散乱光損失に分けら
でコアサイズは30∼100 µmを想定している。光配線用の光導
れ,吸収光損失の要因はさらに電子遷移吸収と分子振動吸収
波路材は,光特性に加え,プリント配線板製造プロセスのラ
に分けられる。また,内的要因は使用波長に大きく依存する。
ミネート,露光,現像のような簡易に加工できる方式に対応
光通信用途で用いられる波長1300∼1550 nmでの最も大きな
できることが必要と考えている。一方,フッ素化ポリイミド
内的光損失要因はC-H伸縮,変角振動の倍音等の分子振動吸
は,コア形成に真空条件下での加工であるドライエッチング
収であるのに対し,光配線で想定している波長850 nmでの最
を用いており,数十µm厚のエッチングには不向きである。当
も大きな内的光損失要因は電子遷移吸収によるものである。
社では,電子材料用をはじめ種々のポリマ材料技術を有して
電子遷移吸収は通常紫外∼可視域に発現するが,この吸収の
いる。そこでマルチモードに適用できるポリマ光導波路材料
すそ引きが850 nm付近までのびて光損失の増大要因になる。
の開発にあたり,次に示すような開発方針を設定し材料設計
すなわち,共役が長く,より長波長域に電子遷移吸収がある
を行った。
ものほど,850 nmでの光損失が増大する傾向がある。一方,
2. 2
ポリマに耐熱性を付与する一般的な方法として共役結合を有
開発方針
開発材の方針を以下に示す。
する芳香族分子を導入する方法がある。
①良好な光学特性:光損失<0.1 dB/cm(波長850 nm)
図3に,本開発材の材料設計を模式的に示す。
②良好な信頼性:リフロー試験,−55⇔125℃温度サイクル
本開発材は,系内に芳香族分子を導入することで耐熱性を
18
日立化成テクニカルレポート No.48(2007-1)
(1)下部クラッドフィルムラミネート・硬化
(露光+加熱)
低損失
感光性
共役の分断
反応性二重結合基
クラッドフィルム
基材
露光
(2)コアフィルムラミネート
光開始剤
キャリアフィルム
芳香族分子
コアフィルム
耐熱性
図3 光配線用ポリマ光導波路材の分子設計 透明性と耐熱性を両立さ
せ,かつ感光性を付与する分子設計を行った。
Fig. 3
(3)露光
UV
Molecular design of optical waveguide film
Discontinuous aromatic molecules are introduced to attain high transparency
and thermal stability simultaneously. Reactive double bonds are introduced to
develop photosensitivity.
発現し,かつ芳香族間の共役を分断することにより光損失を
小さくする分子設計を行った。
(4)現象
また,サイズ数十µmのコアを露光・現像により形成できる
よう,コア材に反応性二重結合基を導入し,光開始剤によっ
て硬化する感光性機能を付与した。光開始剤は,数十µmの厚
膜硬化が可能でかつ吸収のすそ引きが光伝送波長域に影響を
与えないものを用いた。
〔3〕 開発材の特性
3. 1
(5)上部クラッドフィルムラミネート・硬化
(露光+加熱)
開発材の物性
開発した材料の光学物性,および硬化物物性を,表2に示
す。
コア材は,主に透明性および耐熱性を重視した。プリズム
カップラー法により測定したコア材の材料光損失は,830 nm
において0.1 dB/cm以下である。また,屈折率は,フレキシブ
ル光導波路の小径曲げおよびVCSELとの結合効率を考慮し
図4 光導波路の製法 下部クラッドフィルムラミネート,コアフィルム
た。コア材の屈折率は1.583,クラッド材は1.548で,そこか
ラミネート,露光,現像,上部クラッドフィルムラミネートにより光導波路が
ら算出される比屈折率差は2.2%である。クラッド材は,主に
作製可能である。
耐熱性とフレキシブル性を重視した。5%熱重量減少温度はコ
Fig. 4
3. 2
Fabrication process for optical waveguide
With the film materials, optical waveguide can be fabricated easily by using
ア,クラッドいずれも350℃である。
lamination and exposure/development processes.
開発材を用いた光導波路の試作結果
図4に,本開発材を用いた光導波路の作製プロセスを示す。
表2 開発材の特性 コアでは主に低光損失および耐熱性を,クラッドでは主に耐熱性とフレキシブル性を重視した材料設計を行った。
Table 2
Properties of optical waveguide film
The core material is designed aiming for high transparency and thermal stability. Cladding material is designed focusing on thermal stability
and mechanical flexibility.
項 目
光
学
特
性
硬
化
物
物
性
材料損失
単 位
コ ア
クラッド
備 考
dB/cm
0.08
0.10
プリズムカップラー法,830 nmでの値
1.583
1.548
830 nmでの値
屈折率
−
比屈折率差
%
熱重量減少温度
℃
350
350
5%重量減少温度,空気中
ガラス転移温度
℃
120∼130
∼150
動的粘弾性試験による
α1
ppm/℃
50∼70
50∼70
TMA法による
α2
ppm/℃
140∼170
140∼170
TMA法による
線膨張係数
2.2
日立化成テクニカルレポート No.48(2007-1)
19
(d)フレキシブルタイプ
(a)ガラスエポキシ基板付き光導波路
クラッド
コア
50 µm
光導波路
ガラスエポキシ基板
250 µm
図5 光導波路作製例 (a)はガラスエポキシ基板上の作製例,(b)はフレキシブルタイプ作製例である。
Fig. 5
Photograph of optical waveguide
(a): Cross-section view of optical waveguide made on a glass-epoxy substrate
(b): Flexible-type optical waveguide
光導波路は,
(1)基材上に下部クラッドフィルムをラミネート,硬化
1.0
(2)コアフィルムラミネート
(3)
(4)マスク露光,現像によるコアパターン形成
によって形成される。図5に作製した光導波路の写真を示
す。
図5(a)は,プリント配線板用ガラスエポキシ基板上に
0.8
挿入損失(dB)
(5)上部クラッドフィルムラミネート,硬化
形成した光導波路の断面写真である。コア幅50 µm,高さ50
0.6
0.4
伝搬損失
0.05 dB/cm
0.2
µm,ピッチ250 µm,上下クラッド厚50 µmのマルチモード光
0.0
導波路が形成されている。また,断面写真から,矩形に形成
0
2
4
されたコアパターンを,クラッドがボイド等の発生無く埋め
6
8
10
12
導波路長(cm)
込んでおり,また,上部クラッドの表層が平坦性を保ってい
ることがわかる。
図5(b)は,フィルム状に作製したフレキシブルタイプ
の光導波路の写真である。光配線は,ガラスエポキシ基板と
複合化してリジッド基板として用いる他に,フレキシブル基
板と複合したり,単体でフレキシブル光配線として用いられ
ると考えている。
3. 3
図6 光伝搬損失(ガラスエポキシ基板上光導波路)
カットバック
法により光伝搬損失を測定したところ光損失0.05 dB/cmと目標を満足する結果
を得た。
Fig. 6
Propagation loss of optical waveguide made on glass-epoxy substrate
The propagation loss value measured by the cutbuck method was 0.05
dB/cm and attained the target value of less than 0.1 dB/cm.
光導波路の光伝搬損失
図6に,ガラスエポキシ基板上に作製した光導波路を用い,
波長850 nmのVCSELを光源に,カットバック法により測定し
た光伝搬損失を示す。光伝搬損失は,0.05 dB/cmと目標(<
dB/cm未満であり,本開発材が高い信頼性を示すことを確認
0.1 dB/cm)を満足する値を得た。また,前述の材料光損失と
した。なお,フレキシブルタイプの光導波路も,同様の信頼
ほぼ同等の値を得たことから,コア表面の荒れ等が少ない光
性を有することを確認している。
導波路が形成されていると考えている。なお,フレキシブル
3. 5
タイプの光導波路も,同様の損失値を示すことを確認してい
る8)。
3. 4
フレキシブル光導波路の屈曲特性
本開発材を用いフレキシブル光導波路を作製し,屈曲時の
光損失評価を行った。図8に,光導波路を360°に曲げ,光
光導波路の信頼性
損失の曲げ径の影響を測定した結果を示す。曲げ半径2 mm
開発材の信頼性は,以下のように測定した。耐リフロー性
は,最高温度265℃,260℃以上保持時間20 sのIPC/JEDEC JSTD-U20Bに準じた鉛フリーはんだリフロー条件に従って窒
まで光損失増加は0.1 dB以下に抑えられており,良好な曲げ
特性を示すことがわかる。
図9に,繰返し折曲げ試験の結果を示す。100万回折曲げ
素雰囲気下でリフロー試験を行い,光損失変化を測定した。
後の光損失変化は,0.1 dB以下であった。このことから,本
また,プリント配線板の規格に準拠し−55℃⇔125℃の温度
開発材を用いたフレキシブル光導波路は,高い耐屈曲性を有
サイクル試験,85℃/85%RHの条件で恒温恒湿試験を行い,
することがわかる。
光損失変化を測定した。結果を図7に示す。
3. 6
リフロー試験3回後,温度サイクル試験1000サイクル後,
恒温恒湿試験1000時間経過後のいずれも,光損失変化は0.03
20
高速光信号伝送特性
光導波路の高速光伝送特性を検証するため,ガラスエポキ
シ基板上に長さ10 cmの光導波路を作製し,マルチモード光
日立化成テクニカルレポート No.48(2007-1)
0.2
損失変化(dB/cm)
0.2
0.2
(a)リフロー試験
0.1
0.1
0.1
0.0
0.0
0.0
−0.1
−0.1
−0.1
−0.2
−0.2
0
1
2
3
−0.2
0
200
400
600
800
1,000
0
200
サイクル数
リフロー回数
図7 信頼性試験結果(ガラスエポキシ基板上光導波路)
Fig. 7
(c)恒温恒湿試験
(b)熱サイクル試験
400
600
800
1,000
時 間(h)
いずれの試験でも損失の増大がないことを確認した。
Reliability of the optical waveguide
The optical waveguide showed reflow solder heat resistance and no change in loss after a thermal cycle test and high temperature/humidity test.
1
0.75
0.5
損失変化(dB)
損失変化(dB)
1.0
曲率半径
0.5
0.25
曲率半径 5 mm
0
−0.5
−1
0
0
1
2
3
4
5
0
曲率半径(mm)
25
50
75
100
回 数(万回)
図8 360°曲げ試験 曲率半径2 mmまでは損失増加0.1 dB以下であった。
図9 繰返し折曲げ試験 100万回繰返し曲げ後も損失変化0.1 dB以下で
Fig. 8
あった。
Effect of 360°bend on loss increase
Little loss increase occurred above a 2 mm bending radius of curvature.
Fig. 9
Effect of repetitive folding on loss increase
No change in loss occurred even after one million times of folding repetitions
(radius of curvature 5 mm).
ファイバを介して波長850 nm,速度10 Gbpsの高速光信号を
伝送し,光導波路伝搬後の信号波形(アイパターン)を観測
した。図1
0に示すように,アイパターンは良好なアイ開口が
得られ,本開発材を用いた光導波路は,10Gbpsの高速光信号
を伝送する能力を有することを確認した。
〔4〕 結 言
光配線用途への適用を目的に,フィルム型光導波路材料を
新たに開発した。本開発材は,ラミネート,露光,現像によ
り光導波路を形成することが可能で,低光損失かつ高信頼性
の光導波路を作製可能である。また,フレキシブルタイプ光
導波路としても適用可能である。本開発材を用いた光導波路
は,今後のハイエンド情報処理機器や高性能携帯端末機器へ
図10
の光配線の普及に寄与できると期待している。
ている。
Fig. 10
10 Gbps信号伝送波形 光導波路伝搬後も良好なアイ開口が得られ
Ten Gbps signal eye diagram transmitted through the optical
waveguide
<謝辞>
高速光信号の伝送実験にご協力いただいた,株式会社日立
A good eye pattern was observed after transmission through a 10-cm-long
optical waveguide.
製作所中央研究所 宍倉正人氏と松岡康信氏に感謝致します。
日立化成テクニカルレポート No.48(2007-1)
21
参考文献
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,電子情報通信学会誌,88,
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2)西村信治:“ルータ/サーバ高度化に向けた光インタコネクション
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,エレクトロニクス実装学会 第22回OPT公
開研究会資料(2004)
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(2006)
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6)Y. Takezawa, N. Taketani, S. Tanno, and S. Ohara: "Empirical
Prediction Method of Intrinsic Light Scattering Loss of Transparent
Amorphous Polymers," J. Appl. Polym. Sci., 46, 2033-2037 (1992)
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Appl. Polym. Sci., 42, 2811-2817 (1991)
8)牧野竜也,柴田智章,落合雅美,高崎俊彦,高橋敦之:2006年
電子情報通信学会総合大会 講演予稿集,エレクトロニクス
p137
22
日立化成テクニカルレポート No.48(2007-1)