犬と猫の肥満細胞腫 - 埼玉動物医療センター

16/09/23
犬と猫の肥満細胞腫
本日の講演内容
§ 犬の肥満細胞腫
§ 概要
§ 診断について
§ 治療について
§ 猫の肥満細胞腫
§ 犬との違い
埼玉動物医療センター 腫瘍科 林宝謙治
犬の肥満細胞腫
犬の皮膚肥満細胞腫
犬の肥満細胞腫
§ 犬の皮膚に発生する悪性腫瘍で最も多い
§ 犬の皮膚腫瘍の16~21% 肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
§ 通常高齢で発生(3週齢~19歳)
§  性別差なし
§ 好発犬種 § パグ, ゴールデン・レトリーバ, ボストン・テリア,ボクサー
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16/09/23
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
パグの肥満細胞腫 肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
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16/09/23
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
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16/09/23
肥満細胞腫の肉眼所見
偉大なる詐欺師
臨床症状
§ 嘔吐,吐血⇒胃潰瘍
§ 下痢,血便
§ 食欲不振
§ 血が止まりいく
※顆粒から放出されるヘパリンやヒスタミンが原因
肥満細胞腫の特徴
ダリエ徴候
§ 肥満細胞腫は大きくなったり,小さくなったりする
§ 触ると赤くなって大きくなる⇒ダリエ徴候
§ 過度の触診は危険!
細胞診前
細胞診後
※細胞診の際は抗ヒスタミン剤を投与!
ダリエ徴候
胃穿孔を起こす事も!
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16/09/23
胃穿孔部位の潰瘍病変
犬の肥満細胞腫の特徴
§ 多くは単発性
§ 11~14%が多発性 § パグの肥満細胞腫の56%は多発性
§ 肥満細胞腫の治療後, 新たな肥満細胞腫が別の
部位 に発生する可能性は,10~14% § インフォームドコンセントが重要 ottendorf, Zntralbl Vet, 1967
Van Pelt, Canadian Vet, 1986
Tams, Educ Pract Vet, 1981
McNiel EA, J Comp Oncol, 2006
Seguin B, JAVMA, 2001
Ladue T, Vet Radil. Ultrasound, 1998
肥満細胞腫の特徴
注意すべき発生部位
犬の肥満細胞腫の特徴
§ 主な転移先
§ マズル,口唇に発生した肥満細胞は高率に転移を起こす
§ 局所リンパ節
§ 肝臓
§ 脾臓
§ 骨髄
§ 初診時下顎リンパ節転移率:約60%
Gieger TL, JVIM, 2003
Hillman LA, JAVMA, 2010
§ 転移率は悪性度によって異なる(詳細は不明)
肥満細胞腫の特徴
注意すべき発生部位
§ 鼠径部、包皮、会陰部に 発生した肥満細胞腫は予後
が悪い?
§ 統一見解は得られていない
肥満細胞腫の診断
Tams TR, Compend Contin Educ Pract Vet, 1981
Macy DW, Semin Vet Med Surg, 1986
Cotchin E, Br Vet J, 1954
Turrel JM, JAVMA, 1988
Cahalane AK, JAVMA, 2004
Sfiligoi G, JAVMA, 2005
5
《 247 》
《 247 》
埼玉動物医療センター 御中
埼玉動物医療センター 御中
-‐‑‒32
5 0
( 011)827-7407/FAX 011)827-7406
E-mail
病理検査報告書
受付番号 BP16-11416
動物種:イヌ
送付組織:皮下腫瘤
担当医:
病理検査報告書
受付番号 BP16-11416
受付日
2016/08/26
報告日
2016/08/29
性別:♂動物種:イヌ
年齢: 8Y
林宝
先生
担当医:
[email protected]
受付番号 BP16受付日
2016/
報告日
2016/
患者名:ヤマネ チョコラ
種類:ラブラドールレトリバー
送付組織:皮下腫瘤
病理組織診断 右頚部:肥満細胞腫 グレード3 mast cell tumor, grade3
左下顎:肥満細胞腫 グレード2 mast cell tumor, grade2
-‐‑‒32
( 011)827-7407/FAX 0
E-mail
ちゃん カルテNo:14774受付番号 BP16-11416
患者名:ヤマネ チョコラ
種類:ラブラドールレトリバー
16/09/23
[email protected]
ちゃん カルテNo:1477
年齢: 8Y
林宝
性別:♂
先生
病理組織診断 右頚部:肥満細胞腫 グレード3 mast cell tumor, grade3
左下顎:肥満細胞腫 グレード2 mast cell tumor, grade2
摘出された右頚部の皮膚の腫瘤部では、真皮から皮下組織において、大型で境界不明瞭な腫瘍が形 摘出された右頚部の皮膚の腫瘤部では、真皮から皮下組織において、大型で境界不明瞭な腫瘍が
成されています。腫瘍は、類円形の腫瘍細胞のシート状増殖と好酸球の浸潤から成り立っています
成されています。腫瘍は、類円形の腫瘍細胞のシート状増殖と好酸球の浸潤から成り立っています。腫
瘍細胞は、豊富な細胞質と円形核、明瞭な核小体を有しています。腫瘍細胞は中程度の大小不同と核 瘍細胞は、豊富な細胞質と円形核、明瞭な核小体を有しています。腫瘍細胞は中程度の大小不同と
異型を示し、分裂像は8個程度/10高倍率視野と多数認められます。
異型を示し、分裂像は8個程度/10高倍率視野と多数認められます。
左下顎でも、真皮から皮下組織に、境界不明瞭な腫瘍病変が形成されています。腫瘍は、類円形の 左下顎でも、真皮から皮下組織に、境界不明瞭な腫瘍病変が形成されています。腫瘍は、類円形
腫瘍細胞のシート状増殖と好酸球の浸潤から成り立っています。腫瘍細胞は、豊富な好塩基性顆粒状 腫瘍細胞のシート状増殖と好酸球の浸潤から成り立っています。腫瘍細胞は、豊富な好塩基性顆粒
の細胞質と円形核を有し、軽度から中程度の大小不同と核異型を示し、分裂像は少数です。
の細胞質と円形核を有し、軽度から中程度の大小不同と核異型を示し、分裂像は少数です。
肥満細胞腫の診断
肥満細胞腫のグレード
§ 肥満細胞腫の診断は殆どが細胞診で可能
§ 悪性度の判定,は病理組織学的検査が必要
グレード 1
グレード 2
グレード 3
右頚部
右下顎
右頚部
右下顎
摘出された右頚部では、大型の腫瘍性の病変が形成されています。病変内には多数の分裂
摘出された右頚部では、大型の腫瘍性の病変が形成されています。病変内には多数の分裂像
が認められ、グレード3の腫瘍と考えられます。また近年、2段階評価が一部で用いられていが認められ、グレード3の腫瘍と考えられます。また近年、2段階評価が一部で用いられて
ますが、その分類では、High gradeに分類されます。マージン部に腫瘍性の病変は認められますが、その分類では、High gradeに分類されます。マージン部に腫瘍性の病変は認めら
ませんが、腫瘍の境界は不明瞭となっています。
ませんが、腫瘍の境界は不明瞭となっています。
また、左下顎にも肥満細胞腫が形成されています。この腫瘤に関しては、個々の細胞の分化 また、左下顎にも肥満細胞腫が形成されています。この腫瘤に関しては、個々の細胞の分
は高く、最小限のマージンでの切除となっていますが、マージン部の詳細は認められません
は高く、最小限のマージンでの切除となっていますが、マージン部の詳細は認められません。
複数のリンパ節転移や皮膚転移が指摘されていることから、更なる病変の拡大について経
複数のリンパ節転移や皮膚転移が指摘されていることから、更なる病変の拡大について経過
には注意が必要です。
には注意が必要です。
診断医 賀川由美子、山上哲史
診断医 賀川由美子、山上哲史
組織学的悪性度
組織学的グレードによる違い
グレード1 グレード2 グレード3 悪性度 低い 高い 非常に高い 転移 起こしにくい 起こすことあり 起こしやすい 再発 起こしにくい 起こしやすい 非 常 に 起 こ し
やすい ※病理組織検査で判定する
※細胞診では判定不可能
肥満細胞腫:WHOステージ分類
§  ステージ 0
§  組織学的に確認された単独の皮膚肥満細胞腫が不完全切除された もの
局所リンパ節への転移なし §  ステージ 1
*診断書を学会などで使用される場合は、事前にご連絡ください。
*診断書を学会などで使用される場合は、事前にご連絡ください。
*ホルマリン組織は、受付後30日間保存しています。返却が必要な場合は、連絡してください。
*ホルマリン組織は、受付後30日間保存しています。返却が必要な場合は、連絡してください。
*組織ブロックの返却は行っておりませんので、ご了承お願いいたします。
*組織ブロックの返却は行っておりませんので、ご了承お願いいたします。
*飼い主様からの直接のお問い合わせはご遠慮いただいております。かかりつけの病院を通じて、お問い合わせください。
*飼い主様からの直接のお問い合わせはご遠慮いただいております。かかりつけの病院を通じて、お問い合わせください。
進行度の把握:ステージ分類
§ CBC
§ 血液化学検査
§ 尿検査
§ 胸部X線検査
§ 腹部X線検査
§ 腹部超音波検査
§ 局所リンパ節針吸引生検
§ 肝臓・脾臓の細胞診
§ 骨髄穿刺検査
§ その他の画像診断(CTスキャン) 肥満細胞腫:WHOステージ分類
§ サブステージa : 全身症状なし
§ サブステージb : 全身症状あり
§  皮膚に限局した単独の肥満細胞腫,局所リンパ節への転移なし §  ステージ 2
§  皮膚に限局した単独の肥満細胞腫,局所リンパ節への転移あり §  ステージ 3
§  多発性の皮膚肥満細胞腫あるいは強い浸潤性を示す腫瘍,局所リ ンパ
節への転移の有無は問わず §  ステージ 4
§  遠隔転移を伴う肥満細胞腫、遠隔転移を伴う再発 ※多発は予後に影響を与えるとは限らない!
※パグは多発が多いが,グレード1が多い!
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16/09/23
肥満細胞腫の治療
肥満細胞腫の治療
§ 外科療法
§ 放射線療法
§ 化学療法(抗がん治療)
グレード別治療指針
グレード別治療指針
§ グレード1 , グレード2
§ グレード 3
§ 完全切除
§ 完全切除
§ 補助治療の必要は通常なし § 術後抗癌治療
§ 不完全切除
§ 不完全切除
§ 拡大手術あるいは放射線治療(拡大手術が不可能な場合) § 術後抗癌治療±拡大手術 or 放射線治
肥満細胞腫のイメージ図
外科療法
§ グレード1と2はリンパ節転移がなければ多くは手術のみで
完治が可能
§ 但し,完全切除には広範囲な切除が必要
§ 1回目の手術が勝負!
※完全切除には2−3㎝のマージン(しこりからの距離)を取って切除
※底部は筋膜または筋層1枚を取る!
腫瘍
皮膚
腫瘍の足
筋肉
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16/09/23
不完全切除
不完全切除後の変化(術後1-2カ月)
完全切除
不完全切除
不完全切除後の再発(術後6カ月)
グレード 2
2㎝の側方マージンを確保
側方マージン:2-3㎝あるいは腫瘍の直径と同じ距離を確保!
底部マージン:筋膜あるいは筋肉1枚を確保!
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16/09/23
腋窩リンパ節も一括で切除
底部マージン:筋層1枚
肥満細胞腫:外科単独治療の成績
犬280頭の研究
グレード1 グレード2
グレード3
1年生存率 100%
92%
46%
2年生存率 100%
89%
36%
放射線治療
§ 根治放射線治療
§ 緩和放射線治療
Murphy, Vet Rec, 2004
放射線治療の適応
§ 根治放射線治療(顕微鏡的病変に対して) § 根治手術後,不完全あるいは不十分な外科
マージンと判定さ れた症例 § 外科マージンの確保が非現実的な症例に対し
て減数手術後に 実施される根治放射線治療 放射線治療の適応
§ 緩和放射線治療 (肉眼病変に対して)
§ 何らかの理由で手術が行えない場合
§ 腫瘍に起因する疼痛や機能障害を一時的
に改善
§  作用は通常1~3ヶ月間程度持続
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16/09/23
抗がん治療の適応基準
抗がん治療(化学療法)
肥満細胞腫に用いられる抗がん剤
§ 肥満細胞腫への効果が確認されている主な抗がん剤
§ CCNU (ロムスチン)
§ ビンブラスチン
§ プレドニゾロン
§ ヒドロキシウレア
§ 分子標的薬
§ イマチニブ(グリベック)
§ マシチニブ(マシベット,キナベット)
§ トセラニブ(パラディア) § グレード3の肥満細胞腫
§ リンパ節転移を認める肥満細胞腫 (ステージ2以上)
§ 外科 or 放射線治療が適応とならないほど進行し た肥
満細胞腫 § 多発性(3カ所以上)に発生したグレード2以上の肥満細
胞腫(パグを除く) § 外科マージンがどうしても十分に確保できない肥満細
胞腫 の補助治療として 犬の肥満細胞腫:まとめ
§ 早期発見,的確な治療で完治が可能な悪性腫瘍
§ リンパ節転移がないグレード1と2の肥満細胞腫の多く
は外科療法±放射線治療で完治が可能
§ 最初のステージングと治療計画が極めて重要な腫瘍
§ 獣医師の技量にかかっている
§ 新しい分指標的薬に注目と期待
皮膚肥満細胞腫
§ 猫の皮膚腫瘍で最も多く発生(米国では2番目)
猫の肥満細胞腫
§ 皮膚腫瘍の20%
§ 2通りのタイプがある
§ 肥満細胞型肥満細胞腫(犬のMCTに類似)
§  組織球型肥満細胞腫
§ 平均8-9歳で発生
§ 肥満細胞型:平均10歳
§ 組織球型:平均2.4歳
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16/09/23
内蔵型肥満細胞腫
§ 犬より頻繁
§ 猫肥満細胞腫の50%との報告も
§ 脾臓肥満細胞腫
§ 脾臓病理組織検体の15%が肥満細胞腫
§ 発症年齢平均10 歳
§ 性差・種差なし
§ 消化管肥満細胞腫
疫学
§ 好発種
§ 皮膚:シャム
§ 内蔵型:なし
§ 原因
§ ウイルス説:証明されていない
§ FeLV, FIV, FIPとの関連性の報告なし
§ リンパ腫・腺癌に次いで多い
§ 発症年齢平均13歳(3歳での発症報告あり)
§ 性差・種差なし
皮膚肥満細胞腫:臨床症状
猫の皮膚肥満細胞腫
§ 0.5〜3cmの円形,無毛の腫瘤
§ 分化型:頭部と頚部が好発部位
§ ときに耳根部付近の耳介
§ 口腔内は稀
§ 掻痒,自損,ダリエ兆候もありうる
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肥満細胞型皮膚肥満細胞腫の特徴
§ 犬の悪性度分類は適応できない
§ 転移率は報告によって様々(0−22%)
§ 多くの皮膚肥満細胞腫は良性の挙動
§ パグに類似?
組織球型皮膚肥満細胞腫の特徴
皮膚肥満細胞腫の治療と予後
§ 外科摘出
§ 犬ほどマージンが必要ではない?
§ 細胞構成
§ 肥満細胞は20%程度
§ 組織球,リンパ球,好酸球
§ 4-24ヵ月で自然退縮
§ 皮膚病と誤診される事が多い
§ 切除後再発率は0−24%
§ 転移率は0−22%
§ 組織球型は経過観察で通常自然退縮
§ 転移が認められる場合は抗がん治療を考慮
§ ステロイドや抗がん剤,放射線治療の効果に対する
獣医学的文献は極めて少ない
§ ビンブラスチン,イマチニブ
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16/09/23
内臓型肥満細胞腫
内臓型肥満細胞腫:症状
§ 広範な播種や転移が多い
§ 脾臓肥満細胞腫剖検30例のうち
§ 肝臓転移 90%
§ 腹腔内リンパ節転移 73%
§ 骨髄浸潤 40%
§ 肺転移 20%
§ 腸管転移 17%
§ 3分の1の症例は好酸球と肥満細胞に富む腹水や胸水
§ 肥満細胞血症は43症例のうち40%,骨髄浸潤は23%
脾臓型肥満細胞腫の特徴
§ 脱顆粒に起因する症状
§ 食欲不振,沈鬱,虚脱,体重減少
§ 間欠的嘔吐,血便
§ 発熱
§ 3分の1で呼吸困難
§ 貧血,腹水によるもの
脾臓型肥満細胞腫
§ 脾臓の形態
§ 結節を作るものは少ない
§ いわゆる脾腫が多い
§ 皮膚肥満細胞腫の猫の18%が脾臓浸潤あり
§ どちらが先かは?
§ 全身への広範な浸潤があったとしても脾臓摘出
後に延命効果あり
消化管型肥満細胞腫
診断
§ 広範囲切除したとしても予後不良が多い
§ 犬同様,殆どが細胞診で診断可能
§ 内蔵型肥満細胞腫の1/3が貧血
§ 脾臓肥満細胞腫の50%が骨髄浸潤
§ 小腸が一般的,結腸は15%以下
§ 脾臓に比較して腹水を併発することは少ない
§ 領域リンパ節や肝臓への転移は多い
§ 外科摘出後の長期生存例もあり
§ 皮膚肥満細胞腫より未分化(悪性度が高い)
§ 肥満細胞血症が多い
§ 90%で凝固異常があったとの報告あり
§ 高グロブリン血症が多い(原因不明)
§ 胸部X線もとる(1/3で胸水・腹水)
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16/09/23
〒 358-0002
埼玉県入間市東町7-2-7
病理組織検査/ノースラボ
札幌市白石区本通2丁目北8-35
〒003-0027
TEL(011)827-7407
FAX(011)827-7406
診断内容: [email protected]
肉眼写真の送付:[email protected]
《 247 》
埼玉動物医療センター 御中
病理組織学的診断書 内蔵型肥満細胞腫の治療と予後
受付番号 BP13-13852
受付日
2013/11/04
報告日
2013/11/07
患者名:イトウ チビタ
動物種:ネコ
ちゃん
カルテNo: 08818-02
§ 脾臓肥満細胞腫
性別:♂C
種類:雑種
年齢: 7Y
送付組織: 脾臓/皮膚腫瘤
§ 脾臓摘出先生
担当医: 林宝・平林
病理組織診断 皮膚(2ヶ所):肥満細胞腫 mast cell tumor
頚部:嚢胞状アポクリン腺腫 apocrine cystadenoma
脾臓:著変認めず
§  例え骨髄や末梢血への転移があっても行うべき
§  生存期間の中央値は12−19週
§ 予後因子:食欲不振,体重減少,雄
§ 末梢血バフィーコートは術後定期検診すべき
右耳介ならびに左眼上から切除された2ヶ所の皮
§  通常脾臓摘出後有意に減少,再発時増加する傾向
膚の腫瘤部では、真皮内に限局して、類円形の腫瘍
細胞のシート状増殖が認められます。増殖する腫瘍
細胞は微細顆粒状の細胞質と小型核小体が明瞭な円
形核を有しています。腫瘍細胞は軽度の大小不同を
示し、分裂像は少数です。
頚部の腫瘤部では、真皮内に嚢胞状の腫瘍形成が
認められます。嚢胞壁は1から2層の立方上皮で覆わ
れています。内腔を内張する腫瘍細胞に悪性所見は
認められません。内腔には蛋白濃度の高い液体が貯
留しています。
脾臓の組織構造は保たれており、明らかな病変は
認められません。
§ 抗がん剤での生存期間の有意な延長なし
§ 消化器型肥満細胞腫
§ 5〜10cmのマージンで切除
§ 予後不良が多い
右耳介、左眼上の皮膚腫瘤はいずれも、肥満細胞腫と診断されます。腫瘍部分は完全に切除
されていますが、皮膚肥満細胞腫が多発していることから、引き続き、新しい肥満細胞腫の発
生について経過観察をお勧めします。
頚部の腫瘍は、汗腺(アポクリン腺)由来の良性腫瘍です。摘出状態は良好で、この病変に
関しては、今回の切除により予後は良好と考えられます。
脾臓には明らかな腫瘍性病変は認められません。
猫の肥満細胞腫:まとめ
診断医 賀川由美子、山上哲史
*診断書を学会などで使用される場合は、事前にご連絡ください。
*ホルマリン組織は、受付後30日間保存しています。返却が必要な場合は、連絡してください。
*組織ブロックの返却は行っていませんので、ご了承お願いいたします。
§ 犬より内蔵に発生するものが多い
§ 皮膚に発生するものは外科切除で概ね予後は良好
§ 脾臓型は全身転移がみられても脾臓摘出で延命効果
あり
§ 消化管型の予後は概ね不良
§ 抗がん剤の効果を証明するデータは少ない
§ ロムスチン, ビンブラスチン
§ 分子標的薬(イマチニブ,トセラニブ)に期待
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