334号 - 結核予防会

総裁秋篠宮妃殿下
ご動静
資金寄附者感謝状贈呈式
並びにお茶会でのご様子
平成22年5月31日/リーガロイヤル
ホテル東京(新宿区戸塚町)
妃殿下は、贈呈式において結核予防事業資金として多額のご寄附を下さった方
や功績のあった方々に感謝状をお渡しになりました。続いて記念撮影とお茶会が
行われ、なごやかなひとときを過ごされました。
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Message 曲がり角に立つ結核対策
結核予防会沖縄県支部長
(沖縄県総合保健協会副理事長)
ひ
が
せ い しょう
比嘉 政昭
永年,沖縄県支部長をお務めになられた大城盛夫先
ゆる社会的弱者に結核が集積する恐れが生まれており
生の後任として平成22年4月1日付けで,結核予防会
ます。
故青木正和会長より支部長辞令を拝命致しました。
この様な中で本県の結核対策を全国結核予防会,本
私は保健所長を長く務め,保健福祉行政を通して結
県及び市町村行政担当者,民間関係者の皆様等のご指
核患者発見及び患者管理に携わってきました。今回の
導とご協力を得て進める必
沖縄県支部長就任に当たって,これまでの諸先輩方の
要があります。
活動の偉大さに感嘆すると共に,これからの活動の方
本県は日本の最南端に位
向性に戸惑いも感じております。
置し,本土の各支部からの
結核対策は,従来の「結核予防法」から「新感染症
支援が得にくい位置にあり
法」に変わり,地域の実情に合わせ,県,市町村及び
ますが,皆様の変わらぬご
事業所等の自主性が重視されてきております。しかし
厚情をお願いしまして,私
ながら,地域は多忙で,人材,財政に乏しく,行政担
の支部長就任の挨拶と致し
当者,事業担当者,各個人等の自覚に任され最終的に
ます。
は,合理化・効率化の波に呑まれ,格差が生じ,いわ
Contents
■メッセージ
■2010年世界禁煙デー記念シンポジウム開催 曲がり角に立つ結核対策
比嘉政昭……1
■訃報 青木正和会長
……2
■お別れの言葉
島尾忠男・森 亨・山下武子……4
●女性と子どもをたばこの害から守ろう
(5/30・東京SYDホール)
……22
●「世界禁煙デー・タバコフリー築地フォーラム2010
■「連載企画」∼結核に縁(ゆかり)の地歴訪∼
∼ジェンダーとタバコ」報告
第4回「鳥取県鳥取市」―青谷上寺地遺跡―(遺稿)
■第85回日本結核病学会(京都)印象記
望月友美子……23
内村和広……24
青木正和……6
■(お知らせ)結核予防会は「公益財団法人」に
▽予防会だより
移行いたしました
○第50回日本呼吸器学会(JRS)学術講演会に
竹下隆夫……8
■ストップ結核パートナーシップ日本だより№12
COPDブース出展
●ACSMというのをご存知でしょうか?
○アフリカン・フェスタ2010出展
田中慶司……9
■シリーズDOTS
……26
○呼吸の日記念フォーラム2010―大阪にて開催
地域DOTSの実施状況に関する調査から
永田容子……10
■結核感染診断IGRAについて
原田登之……12
■ハイチ共和国への派遣報告∼地震後三ヶ月を経て∼
村上邦仁子……14
小倉 剛……27
○平成21年度複十字シール募金結果報告
……28
○平成22年度複十字シールと広報資材
○複十字シール募金が世界へ届ける
■結核予防会支部紹介の頁
結核が治る喜び。健康を守る喜び。
佐賀県支部「県民の健康づくりを進める
○トピックス 厚生労働大臣に要望
県内中核保健センターを目指して」
古川俊英……17
○平成22年度資金寄附者感謝状贈呈式並びに
■ドイツの結核医療施設を訪ねて
加藤誠也……18
永年勤続職員表彰式
■TSRUmeeting2010参加報告
伊藤邦彦……19
○新結核関連切手紹介シリーズ(1)始めに
……29
……30
■バングラデシュの結核対策とJICAプロジェクト報告
■ずいひつ 「私の役目―今思うこと―」
南川真理子……20
〔表 紙〕平成22年度複十字シールより
仁科亜季子……21
〔カット〕佐藤奈津江
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訃報
あお き
まさかず
青木 正和 結核予防会会長
平成22年5月29日逝去
享年82歳
本会会長青木正和は本年5月29日
(土)逝去されまし
た。故人は,東京大学医学部を卒業後,昭和29年に結核
予防会結核研究所に入職いたしました。以来56年の長き
にわたり,研究部長,所長を経て結核予防会理事長,会
長を歴任し,結核病学の発展と結核医療の向上に努める
とともに,全都道府県支部を含む結核予防会の業務運営
を統括し,日本及び世界の結核の制圧に向けた結核予防
対策の推進に生涯を捧げられました。
平成8年に結核研究所を退任後も,引き続き名誉所長
として,研究面でのライフワークでありました結核病学,
呼吸器疾患学,公衆衛生学等の発展に寄与するとともに,
学会関係では日本肺がん学会集検委員会委員,日本結核
【故人の履歴(抄)】
昭和2年6月4日 東京生
昭和28年3月 東京大学医学部医学科卒業
昭和29年12月 財団法人結核予防会 結核研究所に医員と
して入職
昭和34年12月 医学博士(東京大学)
昭和41年2月 結核研究所 臨床学研究科長
昭和45年1月 川崎市公害被害者認定審査会 委員
昭和49年7月 結核研究所 疫学研究科長
昭和52年4月 日本結核病学会 理事
昭和52年12月 結核研究所 第二研究部長
昭和54年6月 厚生省公衆衛生審議会委員
昭和59年10月 結核研究所 副所長
昭和60年1月 日本学術会議 胸部疾患研究連絡委員会委
員
昭和60年4月 日本結核病学会 常務理事
昭和60年10月 国際結核・肺疾患予防連合
(IUATLD)理事
昭和62年2月 日本肺がん学会 集団検診委員会委員
昭和62年4月 結核研究所 所長
昭和62年4月 IUATLD結核サーベイランス研究班幹事
2
病学会会長,日本公衆衛生学会評議員,日本医学会評議
員,日本学術会議呼吸器学委員等を歴任し,審議会関係
では川崎市公害被害者認定審査会委員,国際結核・肺疾
患予防連合(IUATLD)結核サーベイランス研究班幹事,
同連合理事,旧厚生省結核感染症サーベイランス委員会
委員,同公衆衛生審議会結核予防部会長,人事院健康専
門委員会委員等を務め,我が国の結核,呼吸器疾患研究
の発展と公衆衛生の向上に大きく寄与してきました。
なお,平成5年には国際協力促進で外務大臣表彰を受
け,平成6年には結核予防の分野における保健衛生の向
上への貢献と海外医療協力事業の推進への貢献により
「保健文化賞」を受賞しております。
昭和63年4月 人事院 健康専門員
昭和63年5月 厚生省結核感染症サーベイランス委員会 委員
平成元年1月 厚生省公衆衛生審議会結核予防部会 会長
平成2年4月 日本医学会 評議員
平成2年7月 日本公衆衛生学会 評議員
平成4年6月 日本結核病学会 会長
平成8年7月 財団法人結核予防会 理事長
平成9年6月 日本結核病学会 理事長
平成11年7月 財団法人結核予防会 副会長
平成12年3月 財団法人結核予防会 会長
【賞罰関係歴】
昭和59年8月 沖縄県知事表彰(沖縄県の結核対策推進)
平成5年7月 外務大臣表彰(国際協力促進)
平成6年9月 環境庁長官表彰(公害健康被害補償制度の
推進)
平成6年9月 保健文化賞(結核予防の分野において保健
衛生の向上に貢献)
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思い出のお写真
結核研究所にて,結婚前の幸田
玉さん,母親の幸田文さんと
(昭和31年)
渋谷診療所にて,喉頭粘膜採取
を行う医師として(昭和30年頃)
海外医師研修受講生とツベルク
リン反応検査実習風景
(結核研究所所長時代)
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お別れの言葉
島尾 忠男(結核予防会顧問)
私の時にはぜひ青木先生,貴方にお願いしたいと
計算機,最後には電子計算機と種々の機器を用いなが
思っていたのに,まさか私が貴方にお別れの言葉を申
ら仕事を行っておりました。忙しかったが,また楽し
し上げることになるとは,正に断腸の思いです。貴方
かった日々のことを思い出します。
と私の経歴にはかなり似たところがあります。私は大
将来は結核患者の登録と管理は必ず電算機を用いて
学を出て,インターン終了後大学の医局をまったく経
行われると考え,そのモデル活動を沖縄県が引き受け
験せずに結核予防会に入りましたが,貴方も昭和28年
ていただき,昭和50年から試行を始めた時に,貴方は
東大医学部を卒業しインターンを終了後,昭和29年に
森亨君とともにその仕事を担当され,最初は毎月,そ
遠藤昌一,戸井田一郎の両君と一緒に直接結核予防会
の後もしばしば沖縄を訪れ,新しいシステムを完成さ
に奉職されました。その後結核研究所の疫学研究科長
れました。当時は未だ今日ほど便利な電算機がない時
(昭和49年),第二研究部長(昭和52年),副所長(昭
代で,使用者が自らプログラムを組む必要のあった電
和59年),第8代の結核研究所所長(昭和62年)に就任,
算機を使いこなすのはさぞかしご苦労が多かったこと
その後結核予防会本部の第12代の理事長(平成8年)
と拝察しております。この沖縄での経験をモデルに,
となり,第5代副会長(平成11年)
,続いて平成12年
結核サーベイランスの体制が昭和61年から日本全国で
に第15代の会長に就任されました。国の結核公衆衛生
行われるようになり,患者管理,結核サーベイランス
審議会結核予防部会では,平成元年に私の後の部会長
の体制が飛躍的に進歩しました。
に就任され,国際結核予防連合(IUAT)の理事(昭
開発途上国の結核対策への協力の中では,特に力を
和60年)も私が2期務めた後を継いでいただきました。
注いでおられたのがネパールの対策の支援でありまし
貴方は優れた分析力と包容力を持っておられ,しか
た。ネパールへの結核予防婦人会のスタディツアーに
も私のように気短ではなく,人の意見をよく聞いて,
も何度か行ってくださいました。
総合的に判断し,決断する,おのずから人の上に立つ
結核対策が目覚しい成果を挙げ,結核の様相が著し
能力を備えておられました。結核研究所で重要な職務
く変わってきた中で,結核予防会はその事業を本来の
をお願いしたのも,貴方なら間違いないというお人柄
目的である日本国内での結核の制圧,結核の領域での
と能力を高く評価した結果です。古川武温理事長が病
国際協力の強化に加えて,COPD,生活習慣病など国
に倒れられた時に,その後任に貴方を推挙したのも,
民の健康を脅かす疾病に対する対策,さらには国民の
また厚生労働省から後任の理事長がこられた際には,
健康増進に寄与する良い生活習慣を育成することにも
貴方に副会長をお願いし,私が会長を引く際にも,貴
拡大することにし,大きく舵を切りました。貴方は先
方に後を託しましたのも全く同じ理由からです。
頭に立ってその大仕事を指導され,その途中で,しか
結核研究所に入られた貴方は,隈部英雄,岩崎龍郎,
も貴方の亡くなられたすぐ後に認可された新しい公益
両先生指導の下に病理学を勉強しておられましたが,
財団法人への移行,その中で評議員会長として厳しい
その後疫学に転向され,同じ道を歩むことになりまし
ご指導を期待していた時期に,貴方を失ったことは結
た。昭和40年代の結核研究所の疫学研究科は,結核実
核予防会にとって大きな痛手でありますが,後を継ぐ
態調査をはじめとして,結核対策を改善するための多
者は貴方の遺志を戴して,立派に新しい方向に進むこ
くの研究を保健所や事業所と協力して行っており,多
とをお約束いたします。私も精一杯お手伝いいたしま
くの調査データを集めて集計し解析する仕事が多く,
す。
集計には当時開発中の色々な機器を使用し,計算にも
どうぞ安らかにお眠り下さい。
最初のころの計算尺から手回しの計算機,次いで電動
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森 亨(結核研究所名誉所長)
青木先生,あれはたしか1990年だったでしょうか,ボ
ストンでの国際結核予防連合年次総会にお供したとき,
私が少々気を利かせて,ボストンポップス演奏会の切符
を手に入れ,二人で聴きにいったことがありましたね。
東大音感合唱研究会の旧メンバーでクラシックのお好き
な先生とワインを飲みつつ,忙中閑ありの楽しいひととき
でした。―――1968年に結核研究所に入って以来,私は
先の島尾忠男先生とまったく逆の関係で38年間,ずっと
直接の部下として仕事をともにさせていただきましたが,
二人の年齢・世代・勤務歴の違いからしてそれはまさに師
弟の関係でした。とにかく,入職のその日から,結核の
研究,診療はもちろん講義の仕方やはては酒の飲み方ま
ですべて先生の指導を受けてきたのですから。
先生はかつて隈部英雄・岩崎龍郎先生門下で病理学の
研鑽を積まれ,その後疫学に転じられたので,先生の疫
学研究は病理学の知識やセンスに裏付けられたきわめて
奥行きのあるものでした。その一端は1987年の結核病学
会特別講演(学会長の島尾先生のお取り計らいで,私と
の師弟共同講演という恐れ多いセッションでしたが)の
結核感染論に示されています。大変な勉強家の先生は重
要な文献はきっちりとサブノートを作られていましたが,
それに基づいた重要なレビューのひとつが集団感染論で
あり,これは上の感染論と結合して,
「接触者健康診断」
や「院内感染対策」の策定の重要な基盤になっています。
1970年代以前には突発事故くらいにしか考えられていな
かった結核集団感染を結核感染・発病のひとつのモデル
ととらえ,そこに(特に低蔓延下の)結核対策のあり方
の手がかりを見ようとされた先生の慧眼には感嘆するほ
かありません。
低蔓延下の日本の結核対策の模索の中で,先生はオラ
ンダ結核予防会が中心となって発足した結核サーベイラ
ンス研究会(TSRU)に熱心に参加され,そこで発表さ
れる成果を日本に紹介し,日本の対策に活かそうとされ
ました。その結実が,世界に先駆けた「電算化結核サー
ベイランス事業」であり,「発見の遅れ」 に基づいた患者
発見対策論でありました。そしてその延長に新しい患者
管理・活動性分類の策定がありました。また,先生は結
核研究所の伝統である現場重視の姿勢を身をもって貫か
れました。私がご一緒させていただいた沖縄県や愛知県
での対策支援や共同研究の成果は現場に還元されると同
時に国の制度の重要な基礎となったことは島尾先生の言
われるとおりです。
先生が文字どおり一生涯をかけて創られた短期化学療
法時代・低蔓延下の新しい結核対策を,私たちは立派に
継承発展させる決意を新たにし,先生のご指導に報いた
いと思います。
山下 武子(結核予防会事業部顧問)
―冒険しなけりゃ進歩はない―
青木先生は保健師達に「冒険しなけりゃ進歩がない
よね!」と勇気づけ素晴らしい仕事をさせてしまう師
でした。沖縄県,愛知県,熊本県,佐賀県,等々全国
の結核担当保健師は次々に結核対策の改善にチャレン
ジし成果を出し続けたのです。
―嘘つきは大嫌い―
「出来ないものは出来ないと正直に言えば怒らない
よ。はい出来ます,といってやらないから怒るんだよ」
と,青木先生の大きさに包まれて日々職員は育てられ
ました。
―研究への挑戦―
1996年結核研究所保健師長期研修終了の2日前,青
木先生宛てにWHOから「結核治療成績の基準」の
ファックスが届き,すぐさま日本語に訳して保健師達
に紹介くださいました。「6ヶ月で治療終了」は当時
の日本では驚きです。そこから全国の保健師達と4年
間にわたって10万人の結核患者の治療成績を調査する
「コホート観察調査」は誕生したのです。
―結核病学会に保健・看護委員会誕生―
1994年IUATLD
(世界結核肺疾患予防連合)世界会議
(マインツ)が開かれ,第1回結核専門保健師会議への
参加では大変ご心配をおかけしました。何とか「日本に
おける保健師の結核再教育の歩み」を紹介することがで
き,1995年には米国胸部学会議(ATS)でも結核専門保
健師会議の誕生に際し「日本の保健師再教育の歩み」に
ついて紹介の機会を得ました。そして日本でもと日本結核
病学会に保健・看護委員会誕生につなげていただきました。
―ツアーコンダクター―
青木先生と参加する国際学会には常に全国の保健師仲
間が数名同行したものです。マインツ,パリ,オランダ,
ベルギー,フィレンツェ,ニューヨーク,バンコクなど発
表の合間に青木先生にお願いして名所旧跡を訪問,
「ダイ
レクターがツアーコンダクターになっちゃったよ」とうれ
しそうに案内してくださる先生の笑顔が忘れられません。
―これから―
「結核のない世界に!」先生の御遺志を多くの人々と分
かち合い成し遂げるまで邁進して参りますことを誓います。
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「連載企画」∼結核に縁(ゆかり)の地歴訪∼
第4回「鳥取県鳥取市」
あお や かみ じ
ち
い せき
―青谷上寺地遺跡―(遺稿)
青木 正和
結核予防会会長 鳥取市から米子市方面に向かう山陰道を改善するた
青谷上寺地遺跡での発見で一挙に約300年遡ることと
めに計画された高架道路「青谷・羽合道路」の建設に
なったのである。
先立って,1991(平成3)年に行われた事前調査で土
脊椎カリエスの骨は今から2500∼5000年前のエジプ
器などが散布していることが発見され,1996-97(平
トのミイラで発見されており,最近,この結核病変か
成8,9)年に青谷町教育委員会が実施した試掘調査
らDNA分析で結核菌が確認3)されている。さらに結
では弥生時代の遺構・遺物が確認された。早速,県の
核菌の仲間である牛型菌,アフリカ型菌などのDNA
教育文化財団が1998(平成10)∼2001(13)年に発掘
分析の結果から推定すると,結核菌はおよそ4万年前
調査を行ったところ,弥生時代の大規模な遺跡がある
に出現したと推測されている。アフリカの奥地で誕生
ことが明らかになった。遺跡は極めて広汎で今後も調
した結核菌はその後,人から人に感染し,その人達の
査が行われるであろうが,出土品は既に数万点にのぼ
移動に伴って世界各地に拡がっていくが,「東アフリ
り,200体以上の人骨も発見された。その中に弥生後
カ・インド株」
「ハーレム株」「北京株」などDNAの
期のものと判断される2例の脊椎カリエスを示す人骨
一部がごく僅か変化したいくつかのグループとなり各
も発見された1)のである。
地に広がった。日本に侵入してきた結核菌は恐らく北
青谷上寺地遺跡の結核例が発見されるまでは,わが
京株に罹患した大陸人が1800年前頃にわが国に渡来し
国で最も古い結核例は,現在は国立長寿医療センター
て入ってきたこととなる。
あお や
あお や かみ じ
は わい
ち
2)
研究所所長をされている鈴木隆雄先生 がかなり以前
青谷上寺地遺跡は弥生時代前期末(約2200年前)か
に全国の古人骨2,000体以上を精力的に調べて発見さ
ら古墳時代前期の初め(約1700年前)にかけて存在し
れた,①千葉県小見川町城山古墳の壮年男の腰椎結核
ていた集落の遺跡である。出土した板に「大小さまざ
(6世紀),②宮崎県西諸県郡高原町旭台地下式横穴
まな船で船団を組んで航海した絵」が残されているし,
の熟年男性の胸・腰結核(6世紀)
,③東京都大田区
大陸や日本各地から海を介してもたらされた品々が多
鵜の木1号墳の50歳代女性の胸・腰椎結核(6世紀後
数発見されているので,青谷は弥生時代の交易拠点で
半∼7世紀前半)の3例とされていた。つまり,「結
あったと考えられている。青谷では農耕稲作も木製の
核菌は6世紀から7世紀にかけての古墳時代後期に,
農具などを用いて行われ,田んぼを開墾するための鋤
渡来人により大陸からもたらされた」という鈴木説が
や鍬,稲穂をつみ取る石包丁,さらに大量の米も出土
定説で,結核菌が日本に侵入したのは,今から1400∼
している。
1500年前と考えられていた。わが国では縄文・弥生時
人骨の人類学的計測の結果,弥生時代には縄文人と
代の人骨は全国で多数発見され調査されているが,上
の混血が進んで弥生人となり,人口もかなり増加した
記の3例を除いて結核例は無かったのである。これが
と推定されている。考古学者の推定では年間1,000人
すき
くわ
にものぼる人々が毎年大陸から
渡来し,新しい文化が移入され
たと推定されている。青谷上寺
地遺跡の集落はこういう弥生時
代に,まさに新文化の取り入れ
口の一つとして栄えた集落だっ
たのであろう。日本の結核がす
べてこの1例の渡来人から拡
がったと考える訳ではないが,
青谷の1例を含む結核に罹患し
た渡来人,あるいは大陸の人と
日本で最も古い脊椎カリエスの症例
(青谷上寺地遺跡展示館)
6
人骨の出土状況
接触して結核に感染した弥生人
により,約1800年前に青谷を含
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白兎神社
人骨類が出土した青谷上寺地の溝状遺構はこの県道
の下に位置していた
む日本海岸のどこか,あるいは数カ所から結核菌が日
談した大国主命の兄に騙されてさらに酷くしてしまった。
本に侵入したことは事実だろう。
これを見た大国主命は白兎に「ここにある池で体を
現在は鳥取市に編入された青谷の町には勝部川と日
洗い,蒲の穂を敷き詰めた上で転々として治しなさい」
置川の2本の川が流れ,北は日本海に面しているが,
と教え,白兎がそのとおりにすると完全に治ったとい
他の三方は山に囲まれている。弥生時代には入江は深
う。その白兎を祭った白兎神社が白兎海岸にあり,今
く,その入り口には砂丘があり,水深が浅い穏やかな
も神社には「不増不減の池」と言われる池があり,干天・
内湾に面し,大規模な護岸設備を伴う溝で囲まれてい
豪雨でも水の増減がないという。白兎神社は今では「日
た。こうして青谷は稲作,狩猟,漁業と共に,日本海
本医療発祥の地であり,古来病気に霊験あらたかの神
沿岸の各地や大陸との交易拠点として弥生時代には栄
様」とされ医療関係者のお参りが多いという。弥生時
えていたと推定される。その後,
「倭国の大乱」で滅
代から神話の世界まで,「結核菌の侵入」から「医療
びた後は,長い間に川の氾濫などで埋められ,このよ
の発祥」までを心に刻みこまれた印象深い小旅行で
うな低湿地特有の環境のため,田圃の下にあった遺跡
あった。
の保存状態は極めて良く,他の遺跡では見られなかっ
た多くの人骨,動物の骨,多種類の品々が発見され,
文献
弥生時代の生活・文化について多くの新知見が得られ
1)井上貴央,青谷の骨の物語.(財)鳥取市社会教育事業団発行,
たのである。今は遺跡は埋め戻されているが,高架の
山陰道が縦断している田圃のあたりが弥生時代の中心
域であった。
今井書店鳥取出版企画室発売. 2009年刊
2)鈴木隆雄,我が国の結核症の起源と初期流行についての古
病理学的研究・376-396,埴原和郎編「日本人と日本文化の
形成」朝倉書店,1993年刊
第61回結核予防全国大会が成功裡に完了した日の午
3)Zink AR, Sola C, Reischl U et a1. Characterization of M. tbc.
後,発掘のニュースを聞いた時から一度は訪ねたいと
Complex DNAs from Egyptian mummies by spoligotyping. J
10年余考えていた青谷上寺地遺跡を訪ねる機会を持
CIin Microbiol 41; 359-367: 2003
ち,今は平和な農村の遺跡の上に立ってわが国の結核
1800年の歴史に思いをめぐらし,誠に感無量の思いで
あった。
なお,青谷上寺地遺跡を訪ねる前に,鳥取駅と青谷
遺跡のほぼ中間にある「因幡の白兎」の伝説で有名な
謹んでお知らせいたします。青木正和会長は,こ
「わに」を騙して海を渡り,
「白兎神社」にお参りした。
の原稿を執筆後の5月29日,くも膜下出血により逝
渡り切ったところで「騙した」ことを告げたために怒っ
去いたしました。ここにご冥福をお祈りいたします。
はく と じんじゃ
た「わに」によって白兎の皮は赤むけにされ,初め相
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お知らせ
結核予防会は
「公益財団法人」に移行いたしました
公益財団法人結核予防会 総務部長 竹下
隆夫 財団法人結核予防会は,昨年末に公益財団法人への移行を内閣府公益認定等委員会に申請しておりましたが,
このたび同委員会より公益3法の認定基準に適合する旨の答申を受けて,別掲のように平成22年6月18日付けで
内閣総理大臣からの認定書を受理いたしました。
つきましては,本年7月1日より「財団法人結核予防会」は「公益財団法人結核予防会」と名称が改まりまし
たので,ここにお知らせいたしますとともに,今後は一層,国民の健康増進に寄与すべく,役職員一同,気持ち
を一新して再出発する所存でおります。
公益財団法人は,自動的に従来の特定公益増進法人(複十字シール募金等寄附金優遇措置)となり,利子等に
係る源泉税や不動産取得税の非課税をはじめ税制についての優遇措置が受けられ,収益事業の収益も一定の条件
のもとで,公益目的事業のための「みなし寄附金」として使うことが認められます。
公益財団法人への移行に伴い,従来の「寄附行為」は「定款」に変わりますが,当会の「目的」「事業」等は
基本的に従来どおりで変更はありません。
ただ,支部につきましては,財務上別法人であるという理由とともに,本部が公益認定を受けたことにより,
「○○県支部」という支部名の支部には「公益認定法」第9条4項に抵触する恐れが生じ、名称の変更を求めら
れる懸念があります。しかし,従来の本部・支部の連携や全国大会はもとより,健診のネットワーク事業,
COPD共同研究,結核予防や生活習慣病予防の研究及び普及啓発,婦人会組織との連携,複十字シール募金運動
も従来通り継続してまいります。支部の皆様方にはこれまで以上の連携・協力関係を構築・進展させていただき
たく,よろしくお願いいたします。
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ACSMというのを
ご存知でしょうか?
ストップ結核パートナーシップ日本
ストップ結核パートナーシップ日本だより №
英語の略号というのは,仲間内の符丁といったものが
ほとんどで,知らないのが当たり前です。説明がなけれ
ば,聞いて会話が始まります。ACSMは,アドボカシー,
コミュニケーション,ソシアルモビライゼイションの頭
文字です。
政策提言,相互理解,社会動員とでも訳しましょうか。ACSMは,ストップ結核パート
ナーシップ(STBP,WHOと連携した,われわれの親団体)の行動指針というものです。
10年程前に設立されたときに,これが提唱されました。たとえば結核については,
IUATLD(国際結核肺疾患予防連合)
,結核予防会,日本結核病学会など,いろいろな組
織があり,結核を制圧するために,活動をしていますが,STBPは,世界の結核対策を推
進するために,今までとは違うやり方を狙って,ACSMを取り上げました。
部分部分は,特別なことではありません。政治家や,行政などに働きかけることに力を
入れるのは,アドボカシーの基本で,アメリカなどでは,ロビーイングというのは,立派
なビジネスです。 記者会見や,広報宣伝というのも,社会に向けて発言し,理解しても
らう常套手段です。特に,結核は忘れられがちな問題となっているので,積極的に声をあ
げていかないといけない分野となっています。社会動員は,以前は健康診断へ向けた働き
かけが中心でしたが,今の日本では,治療からの脱落防止や,症状のあった時の気づきの
促しなど,国際的には,結核対策の推進への協力など行動してもらうことがテーマになっ
ています。
ACSMの味噌は,この3つのバランスをとって,運動を展開するところにあります。た
とえば,結核の技術の革新について言えば,単に研究の促進を政策提言するだけでなく,
最先端の開発中の検査などを紹介し,研究開発の促進に関して患者からの発言を取り上げ
たり,市民からの募金によって,治験環境を整備したりすることなどが考えられます。 結核患者憲章というものがSTBPから提言されました。患者の権利と同時に,患者の義務
も書かれ,12章からなります。 この普及に関しても,患者や,医療者に対して理解して
もらうと同時に,広く報道して周知を図るとともに,政策決定に関与するかたがたにも知っ
てもらい,必要な制度改革をおこなうなど,3つの要素が相乗作用をしながら,事業を展
開することが期待されます。
この3要素の配分は,それぞれの国の結核の状況によって異なります。結核が蔓延して
いる国々では,国民に直接働きかけることが多く,政治家は,特に注文をつける前から,
問題の重要さを理解しています。一方,低蔓延の国では,国の政策判断をする議員や行政,
マスコミに積極的に働きかける必要があります。そして,社会に対しては,とかくしわ寄
せがいきがちな,経済弱者に対して啓発をおこなわなくてはなりません。
アメリカ,
ワシントンで,
STBJがACSMの発表会
(スポンサー:国際交流基金日米センター)
を行いました(写真)
。日本の結核予防婦人会活動が,参加型の運動として始まり,大きな
組織となっていったこと。当初は患者発見率の向上を目
的として,それが最近では国際協力や行政,政治に対す
る働きかけを行うように,SMから,A,Cに重点を移し
つつあることが紹介されると,A,CのみがNGOの役割
だと思いがちの聴衆には新鮮に聞こえたようでした。
ACSMは結核対策だけでなく,組織的な事業を展開す
るときに,さまざまな分野でチェックリスト的に使える
のではないかと,考えています。
Coughing even; not alone
田中 慶司
事務局長 タイトル:俳人尾崎放哉の「咳をしても一人(Coughing even;alone)から。咳をしても1人じゃないぞ!
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Use DOTS More Widely
地域DOTSの実施状況に関する調査から
結核研究所 対策支援部
保健看護学科科長 永田
容子
平成15年2月に厚生労働省が日本版DOTS戦略を発
や来所など直接服薬を見守る方法が中心で,週単位
表してから7年が過ぎ,入院中の院内DOTSの促進に
や月単位になると患者の状況に応じて様々な方法が
伴い,地域DOTSは今や当たり前に保健所で行われる
行われていた。月単位(Cタイプ)では電話による
ようになりました。本誌「シリーズDOTS」は約10年
支援が8割と最も多い状況であった。
間で保健所や医療機関の報告が50余りとなりました。
昨年全国の保健所の地域DOTS実施状況についてアン
図2 DOTSタイプ別支援方法
ケート調査をおこない,地域DOTSの質を高めつつ維
持していくための対策についてまとめましたので報告
します。
方法:平成21年5月全国の510保健所に質問紙を郵送
し486保健所から回答を得た。(回収率95.3%)。
結果:
①DOTSタイプ別割合;地域DOTSは97.8%(474保健
所) で 実 施。 日 本 版DOTSに 示 さ れ た 地 域DOTS
A,B,C の タ イ プ は 図 1。 毎 日 の 服 薬 支 援 A は
23.4%,週単位の支援Bは60%,月単位の支援Cは
92.8%実施されていた。
④DOTSカンファレンス;退院時は85.4%で実施,外
来治療中は31.9%で実施されていた。
図1 DOTSタイプ別割合
⑤コホート検討会実施状況(図3)
実施率は74.5%であり,地域DOTS実施率97.8%に
23.4%
比較して低かった。
60%
一部の患者のほとんどが塗抹陽性者であった。年間
92.8%
実施回数は少数のところが約7割を占め,月1回以上
と頻度の多いところも若干あり,差がみられた。
図3 コホート検討会の開催
②DOTSタイプの組み合わせ;週単位と月単位を合わ
せたB,Cが187保健所38.5%で一番多く,月単位の
Cのみ164保健所33.7%,21.9%の保健所はA,B,C
すべての方法を取り入れていた。
③タイプ別支援方法(図2);毎日の支援では,訪問
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⑥DOTSパートナー(DOTS支援者)(図4):保健師
が最も多く94.9%,次いで医療機関,在宅介護支援
者の順に多かった。薬剤師は10.9%であった。
⑧薬局DOTSのメリットは図6のとおりで薬局の特徴
が活かされていた。
考察
質の高い地域DOTSを実践するための対策を4つに
図4 DOTSパートナー
まとめた。
1.DOTSのゴールを見据えた医療機関との地域連携
の強化
2.個々の患者の服薬支援計画の作成と評価
3.DOTSタイプに捉われない支援方法の選択と患者
の生活に応じた具体的な支援の提供
4.地域DOTS手引き案の策定
1∼3は医療機関との日頃からの地域連携の中で実
施するものである。一人一人の患者に向かい合った服
薬支援を行っていくことが,結核看護の質,治療成績
の向上につながっていくと思われる。
⑦薬局DOTS実施:薬局DOTSを行っている保健所は
その一つが,「DOTSカンファレンス」である。個々
42保健所(図5),タイプ別実施割合はB(週単位)
の患者に対する取り組みを検討するものであり菌検査
が57%と一番多く,その方法は半数が対面服薬で
の把握や確認などのチェックを行う。これらのもとに
あった。
なる患者の治療経過情報の収集(受療状況,服薬情報
さらに菌検査成績)や入力も保健所の重要な役割であ
図5 薬局DOTSタイプN=42
る。
一方,
「コホート検討会」は単に治療経過や治療成績,
菌検査の確認,個々の対応困難な事例検討にとどまら
ず,患者を一つの集団として見た場合の地域全体の服
薬支援活動の評価,結核医療の問題や地域連携体制の
在り方などの検討が含まれる。
今後はさらに多職種によるDOTSのチームケアの推
進と地域連携を図るため,また日本版DOTS事業の精
度保証のために質の高いコホート検討会がどこの保健
所でも行えるようなガイドラインが必須であると思わ
れ る。 4.の「地 域DOTSの 手 引 き」 案 は, 地 域
DOTSを円滑に進めるための指針(手引き)として結
図6 薬局DOTSのメリット
核病学会保健看護委員会において作 成 中 で あ る。
「DOTSが目的にならない」ことを十分留意するよう
配慮したものを考えている。
*最後になりましたが,昨年度の新型インフルエンザ
対応で混乱していた時期でありながら,本調査にご
協力いただきました多くの保健所の保健師の皆さま
にお礼申し上げます。
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教育の頁
結核感染診断IGRAについて
結核研究所抗酸菌レファレンス部
部長 原田 登之
はじめに
では検査が実施できませんでした。このような点を解
結核感染を診断する方法は,ごく最近まで唯一ツベ
決できるものとして次世代のQFT-3Gが開発されました。
ルクリン反応(ツ反)しかありませんでした。しかし,
QFT-3GとQFT-2Gでは2点異なっており,一つは
ツ反に用いるPPD(精製ツベルクリン・Tuberculin
QFT-2Gに用いられているESAT-6とCFP-10に加え,
Purified Protein Derivative)に含まれる結核菌抗原
QFT-3Gではさらに結核菌特異抗原TB7.7(Rv2654)
はBCGや非結核性抗酸菌の持つ抗原と非常に類似性
の合成ペプチドが新たに添加されていることです。も
が高いため,BCG接種や非結核性抗酸菌感染によっ
う一つの点は,QFT-2Gでは血液検体を培養プレート
てもツ反は陽性を示すことがあり,特異性の面で大き
に1mlずつ4ウエルに分注し抗原を加える必要があり
な欠点を持っています。さらに,ツ反はこれ以外にも,
ましたが,QFT-3Gでは採血に3本1組の1ml専用採
PPD投与およびツ反測定における技術的差,ツ反測定
血管(それぞれ,陰性コントロール,結核菌抗原,陽
のための再受診の必要性,PPD再投与によるブース
性コントロール)を用い,結核菌抗原の採血管には上
ター効果を持つ等の欠点を持っています。これらの欠
記の結核菌特異抗原が一緒に入れられ て い ま す。
点を解決できる新しい結核感染診断法が長年望まれて
QFT-3G検査では,採血後採血管を十分混和し培養器
いましたが,近年ようやくBCG接種やほとんどの非
に入れることにより血液培養を開始することが可能で
結核性抗酸菌感染の影響を受けない結核感染診断法が
す。携帯型の培養器を使用すれば,採血場所において
2種類開発されました。これらの診断法は,結核菌特
直ちに血液培養が開始できます。また採血直後に培養
異抗原で全血あるいは精製リンパ球を刺激し,産生さ
しない場合でも,遅くとも採血後16時間以内に培養を
れるインターフェロン-γ(IFN-γ)を測定すること
開始すれば良く,QFT-2Gの12時間以内という制限よ
に よ り 診 断 す る た め,Interferon-Gamma Release
り緩やかであるため有利と考えられます。第2段階の
Assay(IGRA)と呼ばれています。現在日本では全
ELISAは,基本的に現行のQFT-2Gとほとんど変わり
®
血を使用するクォンティフェロン TB-2Gと次世代の
®
クォンティフェロン TBゴールド(以下QFT-3G)が
ませんが,安定化発色液が用いられているため,より
簡便化されています(図1)。私達はQFT-2GとQFT-
承認されており,接触者健診等に積極的に使用されて
3Gの性能を比較し,QFT-3Gがより高感度であり,か
い ま す。 本 稿 で は, こ のQFT-3Gと, も う 一 つ の
つ高特異度を維持していることを報告しています1)。
IGRAであるT-SPOT.TB(以下T-SPOT)について主
に原理と特性を解説します。
1. QFT-3Gの原理
図1.QFT-3Gの操作手順
Stage 1:
血液培養と回収 陰性
陽性
対照
QFT-3Gの原理は基本的にQFT-2Gと同様であり,
ESAT-6
+
CFP-10
+
TB7.7
血液1mL採血
QFT-2Gの原理については,複十字№328「次世代の
QFT概要」に既報のため簡単に説明します。QFT-2G
Stage 2:
IFN-γELISAと
解析
COLOR
37℃で16-24時間
培養
15分間遠心.
IFN-γは冷蔵庫で4週間安定.
TMB
は結核菌特異抗原ESAT-6とCFP-10で全血を刺激培養
する第1段階と,刺激培養後産生されたIFN-γ量を
サンドウィッチELISA法で定量する第2段階から構
成されています。ESAT-6とCFP-10は,BCGやほとん
サンドイッチELISA法
によるIFN-γの測定
解析ソフトによる結果の
計算と報告書の印刷
上段の血液培養の第一段階と,下段のELISAの第二段階から構成されて
いる。
どの非結核性抗酸菌には存在しない抗原であるため,
12
QFT-2G検査結果はBCG接種や多くの非結核性抗酸菌
T-SPOTの原理
感染の影響を受けません。一方,QFT-2Gでは採血後
T-SPOTは,QFT検査より技術と設備を必要としま
12時間以内に血液培養をする必要があり,この時間以
す。図2に示すように,T-SPOTでは血液より末梢血単
内に血液培養ができる施設に検体を持ち込めない場所
核球(Peripheral Blood Mononuclear Cells;PBMCs)
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立つものと思われます。
図2.T-SPOTの操作手順
3.今後の研究課題
密度勾配遠心
IGRAにおける刺激培養時間約18時間内にIFN-γを
PBMCの培養
培養
PBMCの分離
産生するT細胞は,エフェクターT細胞と考えられて
抗原刺激
(ESAT-6/CFP-10)
洗浄後、
標識
2次抗体添加
おり,これは抗原刺激を受けたナイーブT細胞から分
化・増殖した細胞であり,また比較的寿命は短いと考
えられています。従って,結核菌抗原に反応するエフェ
コロニーカウンター
による計測
クターT細胞からのIFN-γ産生が見られるということ
発色
は,IGRAで使用されている結核菌抗原を産生してい
IFN-γ産生細胞の位置
に色素が着色
る結核菌が現在体内に存在していることを示していま
す。しかし,IGRA検査陽性は結核菌の存在は示唆し
を精製し,規定の細胞数を専用の培養ウエルに入れ結
ますが,感染時期を特定することはできません。また,
核菌抗原ESAT-6とCFP-10で刺激します。専用の培養
活動性結核と潜在性結核感染の区別もできません。こ
ウエルは底面がPVDFという白幕で形成されており,
のように,IGRA検査のみでは判断できない部分も多
ヒトIFN-γ抗体が結合しています。抗原刺激後,細胞
くあるため,他の臨床所見や情報を総合し最終的な診
から放出されたIFN-γはその場所で抗体に結合します。
断を行うことが重要です。
培養後,産生されたIFN-γを染色することで,IFN-γ
IGRAに関しては,最近数年間で論文報告が500以
を放出したリンパ球の存在した場所をスポット(点)
上なされているという現在非常に活発に研究が行われ
として可視化します。すなわち,スポット1個が,
ている分野でありますが,新しい診断法であるため診
IFN-γを放出したリンパ球1個に相当します。染色後
断特性において今後解明されるべき多くの課題を持っ
スポット数を計測し,規定の判定基準により結核感染
ています。このようなIGRAに関する多数の研究課題
の診断をします。実際の結果は,図3のように見えます。
を2007年にPaiらが提唱し,我々はこれを和訳しさら
多くの論文において,T-SPOTはQFTより高感度で
に当方の研究成果を加えたものを発表しているので参
あ る が, 特 異 度 は 低 い と さ れ て い ま す 2)。 一 方,
考になると思われます3)。
T-SPOTは高感度ですので,QFTでは検出困難な免疫
不全症(エイズ等)患者や小児などでの感染診断で役
おわりに
IFN-γと,これ以外の生理活性因子を測定し総合
的に判断することで診断感度が上昇するという報告が
図3.T-SPOTの一例
あります4)。また,前述したように現状のIGRAでは,
「過去の感染」と「最近の感染」,あるいは活動性結
核と潜在性感染を区別することはできませんが,現在
も様々な研究や更なる開発が進められている状況であ
刺激は,陰性コントロール(Nil)
,パネルA,パネルB,陽性コントロー
ル(Mitogen)の4種類行う。上段は結核感染者検体,下段は健常者検体。
り,今後このようなことが可能になることが期待され
ます。
文 献
1)Harada N, et al.: Comparison of two whole blood interferon-γ assays in tuberculosis patients and healthy
controls. J. Infection 2008; 56: 348-353.
2)Diel R, et al. Evidence-based comparison of commercial interferon-gamma release assays for detecting
active TB: a metaanalysis. Chest 2010; 137: 952-968.
3)樋口一恵,他: Interferon-gamma release assays(IGRAs)の研究課題. 結核 2009; 84: 173-186.
4)Ruhwald M, et al. IP-10, MCP-1, MCP-2, MCP-3, and IL-1RA hold promise as biomarkers for infection with M.
tuberculosis in a whole blood based T-cell assay. BMC Res Notes 2009; 2: 19.
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ハイチ共和国への派遣報告
∼地震後三ヶ月を経て∼
結核予防会結核研究所 国際協力部
医師 村上 邦仁子
2010年1月12日午後4時53分,ハイチ共和国をマグ
主要幹線道路上の通行は保たれていましたが,路地
ニチュード7.0と推定される首都直下型地震が襲い,
を一本入ればむき出しの電線が空中にぶら下がり,時
被災者約370万人,死者約22万人,倒壊住宅10万戸以上,
には道の真ん中に避難民のテントが張られていまし
被害総額77億ドル以上という甚大な被害をもたらしま
た。テント村は首都だけで300を超えるといわれてい
した1)。地震から3カ月が経過したハイチの現状、結
ます(写真2)。
核対策の課題についてご報告いたします。
ハイチ共和国概要
ハイチ共和国は,国土面積が27,750km2(日本の四
国の1.5倍),人口約900万人が暮らすカリブ海の小国
です。産業は,米,コーヒー,トウモロコシなどのプ
ランテーション農業を主とし,西半球最貧国と言われ
ています。1804年にフランスから独立し世界初の黒人
共和国を樹立しましたが,20年間の米国による軍事占
領,1990年代以降の政治不安を経て,2004年より国連
ハイチ安定化ミッションが再開され,治安の安定化が
進められていました。
首都ポルトープランスおよび周辺の現状
地震後3カ月を経過した首都ポルトープランスの街
写真2:街中のいたるところにあるテント村
中は,被災者の遺体の撤去などは目に見える範囲では
終わっているものの,倒壊した家屋の瓦礫は,街中の
起伏に富み,山肌を切り取ったような地形にブロッ
いたるところで,山となったままに残されていました
ク造りの家が乱立している状況の首都周辺では,重機
(写真1)。
が入れる地域は限られています。多くの地域では,依
然地道な人海戦術による撤去作業が継続され,一体い
つ終わるのか,目途の立たない状態でした。また,余
震への恐怖心がいまだ強く,
「自分の家は倒壊しなかっ
たが,余震が怖くてテントにいる」「すぐに逃げ出せ
るように,娘とベッドを並べ手をつないで寝ている」
などの訴えも聞かれました。テントの中で急に泣き出
したり叫んだりする方もいるそうです。より震源地に
近いレオガン市で医療援助を行っている日本赤十字社
の方々の話でも,全身の痛みなどの訴えで受診した患
者さんも,話をよく伺うと,不安症状が主である方も
多いとのことでした。長引く避難生活におけるメンタ
ルケアが重要になっています。
写真1:倒壊した建物の瓦礫
14
テント村周辺で支援物資が配布される際に奪い合い
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などが起こることもあり,そのようなきっかけから,
も高まります。まさに非常事態と言えます。
鬱屈した人々の感情が暴力化して一気に噴き出す危険
ハイチにおいて,地震以前に稼動していた結核サナ
性もあります。また,配布された物資から出たゴミが,
トリアム(入院治療施設)は3か所あり,うち2か所
山積みのまま放置されている場所もありました。今後
が今回の地震で被害を受けました。首都のポルトープ
雨季を迎え,ハリケーンによる二次被害や,コレラな
ランス国家結核サナトリアムは地震で全壊し,現在機
どの感染症の流行も懸念事項です。一日も早い改善が
能停止しています。レオガンのシグノ国家結核サナト
望まれます。
リアムは,30年にわたりハイチでの結核治療に身を捧
一方で,路上脇やテント村の周辺ではオープンマー
げてこられた,日本人シスターの須藤昭子医師が勤務
ケットが開かれ,倒壊した家屋の瓦礫の山を気にする
されていた病院ですが,入院棟はほぼ全倒壊(写真4),
ようでもなく,人々は平然と通行していきます。街と
入院していた多剤耐性結核を含む80人の患者のうち4
しての機能も徐々に回復しつつあります。「地震でこ
人が死亡,何名かはいまだ行方不明です。
の世の終わりを見た。我々は命を救われたのだから,
地震前よりももっと周囲の人々と助け合う気持ちに
なった」など,話してくれる人もいました。テント村
の子供達も明るく(写真3),これまで過酷な状況を
生きぬいてきたハイチの人々の芯の強さを感じました。
写真4:倒壊したシグノ結核サナトリウムの病棟
検査棟のみが倒壊を逃れ,結核診断は継続できたこ
とは幸いでした。結核治療は,国際支援団体が建設し
た仮設テントの中で継続され,看護師は「我々を必要
とする患者がいる限り協力し続けたい」と語ってくれ
写真3:テント村の子どもたち
ました。
ハイチにおける結核の状況
ハイチは,ラテンアメリカ・カリブ海地域における
結核研究所国際結核コース卒業生との再会
結核コントロール重点国のひとつで,2007年結核罹患
今回の訪問期間中に,過去の結核研究所における国
2)
率は人口10万人対306と推定されました 。エイズと
際結核コースの卒業生と会うことができました。1987
の重複感染も問題になっています。722の全医療施設
年に来日したD Meza医師は,現在国家結核対策プロ
中,結核のサービスを提供しているのは294施設(カ
グラム(NTP)のトップです。
バー率40.7%)で,患者の結核サービスへのアクセス
地震によってNTPのオフィスは全壊し,現在は他
は依然限られています。地震後,ポルトープランスで
団体の一室を間借りしています。地震以前からNTP
は,少なくとも3000人の患者が治療を中止し,その患
の活動資金自体が不足していましたが,地震後にド
者のうちの数百は薬物治療のないテント村に散り散り
ナー資金が緊急支援に振り分けられた結果,NTPの
3)
になったと推定されました 。テント村では換気が悪
通常活動も滞っています。今回の地震で被災したのは
く,塗抹陽性患者からの感染拡大が懸念されると同時
あくまで首都周辺のみで,地方における結核プログラ
に,栄養状態の低下した既感染者の結核発症のリスク
ムには影響はないとの意見もありましたが,実際には
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国家プログラムの中枢の機能不全が国家全体への影響
では,今後日本は,ハイチの結核分野へどのように
を与えていることが懸念されました。同様の卒業生で,
貢献できるのでしょうか。まずはNTPを強化するこ
地震の影響のなかった北部州に滞在しているLazare
とが第一の課題です。結核対策のみならずプライマ
氏(2008年来日)の意見では,もともと地理的に地方
リーヘルスケアーを担う被災地の一次医療機関の再建
へのアクセスはよくないが,地震後,中央からのスー
が急務です。倒壊した結核サナトリアムの再建も急が
パーバイズがさらに滞り,電話回線の切断で,ファッ
れます。このような施設を再建するとともに,DOTS
クスによるデータのやり取りができなくなったなどの
の質の強化を長期的に行うことが,多剤耐性結核の発
訴えがありました。
生を抑制することにつながります。同時に人材育成も
重要ですが,ハイチはフランス語圏ですので,日本が
カポジ肉腫・日和見感染症研究所(GHESKIO)
人材育成を行うには不利な面もあります。一方で,直
一方で,地震後も活動を継続している施設もありま
接的な被災国への援助ではないですが,日本の緊急支
した。カポジ肉腫・日和見感染症研究所(GHESKIO)
援団体用に,派遣先国における結核の状況をいち早く
がその一つで、1982年にハイチ人のPape医師が創設
伝え,結核技術指導を行うことも,日本(特に結核予
したNGOです。結核,HIV/AIDSなどをターゲット
防会)がすぐにでも実施できる,重要な支援です。
に,患者治療,研修,研究などを積極的に行い,各国
WHOが推奨する災害時の結核対策対応策のなかで,
ドナーからの投資を受けています。ハイチで最も規模
災害後一定期間経過後の対策として,NTPによる被
の大きい結核外来を持ち,年間600人以上の患者が治
害地域の結核対策評価,および再興計画の立案が挙げ
療を受けています。この病院も,地震直後から外傷の
られています4)。今回の地震はハイチにとって悲劇で
処置のための野戦病院と化し,病院の中庭はテント村
したが,地震をターニングポイントとして,NTPを
となりましたが,結核外来は途切れることなく続けら
再建することも可能です。
れました。多剤耐性結核専門の病院は全壊したため,
現在かつてないほど国際社会の目がハイチに向いて
テント病院を設立,多剤耐性結核患者,塗抹陽性結核
おり,被災地では,地震後400を超す新しい国際援助
患者らが入院していました(写真5)。
団体が活動を行っています5)。これまで医療施設にア
クセスのできなかった人々(女性・子供・老人など)
の受診が増え,「いまだかつて,私たちの地域でこん
なに医療が充実した時期はなかった」という声も聞か
れるそうです。しかしこれらはあくまで緊急支援の一
環で,期間限定であるということも事実です。地震後
ある程度は安定を取り戻しつつあるハイチへの緊急支
援を,どの段階で,どのような形で終了させるのか,
または短期的な緊急支援から,長期的な援助活動への
シフトを行うのか,各団体が共通に抱える課題です。
最後に,今回の出張に際し,多くの方々にご指導,
ご協力を頂きましたことに,心より感謝申し上げます。
参考文献:
1)ハイチ政府復興支援会合発表資料
写真5:テント病棟内の結核患者さん(掲載許可済)
2)WHO. Global TB Control 2009
3)Jean Pape et al. The earthquake in Haiti-
今後のハイチ結核対策における日本の貢献可能分野
今回の調査を通じ,地震後の影響だけではなく,地
震によってハイチの基本保健インフラの脆弱性が露呈
されたように感じました。また,多くの発展途上国で
見られるような,NTPと優秀なNGOという二極構造
Dispatch from Port-au-Prince, NEJM10.1056
4)WHO. Implementing The WHO Stop TB
Strategy, a handbook for NTP
5)PAHO/WHO. Emergency Operations Center
Situation Report#1-25
も見受けられました。
16
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結核予防会支部紹介のページ
佐 賀 県 支 部
県民の健康づくりを進める
県内中核保健センターを目指して
財団法人佐賀県総合保健協会
(結核予防会佐賀県支部)
常務理事・事務局長
古川 俊英
はじめに(沿革)
佐賀県支部は,昭和57年度に,県の主導のもと,財
団法人結核予防会佐賀県支部,財団法人佐賀県対がん
協会,佐賀県寄生虫予防会の3団体が統合して設立さ
れました。
以来,県の保健行政を補完する団体として,県の手
厚い支援と厳しい監督を受けながら,保健の啓発,予
防のための検診及びその結果のフォロー,調査研究,
健康を守る婦人の会との街頭募金活動
研修,相談など,結核やがん対策を中心とした様々の
保健活動を佐賀県と連携しながら積極的に取り組んで
ポン券検診の導入は,受診率向上に大きく寄与してい
います。
ます。
このことは,国の積極的な取組みがあれば,がん受
診率の伸びることが証明されたものであり,今後の国
の施策が大いに期待されます。
検診以外の事業
当支部では,県や市町の委託を受け検診以外の保健
分野にも数多く取り組んでいます。
すなわち,複十字シール運動やがん募金活動,さら
にはピンクリボンキャンペーンなどの各種啓発事業の
佐賀県総合保健会館
ほか,がん登録事業や検診精度を高めるための研究・
研修事業などです。
検診事業
また,最近では特定保健指導従事者研修やがん電話
当支部には,検診車が20台あり,県内各地に赴いて,
相談事業,さらにはがん患者会の支援なども実施して
がんや結核さらには循環器系等の様々の集団検診に取
います。
り組んでいます。
このような検診以外の公益事業の実施は,今後の公
さらに,協会の施設内でも,一部所内検診を実施し
益法人改革に有益であり,また,当支部に対する県民
ております。
の信頼を高めるものと考えています。
受診者数の殆どは,県内市町が実施する集団検診に
よるものであり,職域検診の比率の小さいことが,当
終わりに
支部の特徴です。
高齢化に伴う医療費抑制のために,国は予防のため
これは,県内に大企業の少ないことが,原因の一つ
の施策を今後強化してゆくことは間違いないものと考
ではないかと考えます。
えますが,長引く不況により,現在支部の経営は,極
一方,がんの集団検診については,県内殆どの市町
めて厳しい状況にあります。
から委託を受け,当支部の主要事業となっていますが,
自助努力は,もちろん大事ですが,共同購入や電算
近年のがん受診率低下傾向が経営に大きなダメージを
の共同開発,さらには検診の共同受託や人事交流など,
与えています。
今こそ結核予防会のもと,全支部が提携を一段と強化
このような環境の中,今回の女性がんに対するクー
する必要があると考えます。
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ドイツの結核医療施設を訪ねて
結核研究所副所長
加藤 誠也
我が国の医療提供体制は結核患者の減少によって必
の扉で区分されていたが,患者が減少して第2の扉が
要病床数が1病棟単位以下になっている自治体も増え
設置された。訪問時には結核患者は数名でさらに奥の
ている,一方で合併症の対応に困難な患者が増加して
第3の扉の区域に収容されていた。結核病室には小さ
おり,平成23年に予定されている医療法改正も視野に
なバルコニーが付いて,2人病室の2部屋毎に食事等
入れた抜本的な見直しが必要になっている。筆者は,
ができるテーブルやエアロバイクが設置された共有ス
2010年4月,厚生労働科学研究事業の一環としてドイ
ペースがあった。
ツの医療施設の視察を行った。ドイツの結核罹患率は
ベルリン市内のエミールフォンベーリング病院は,
2008年に人口10万対5.5,
外国人が約4割を占めている。
2007年に訪問した時には結核患者は呼吸器病棟の個室
視察した病院の結核病床
等に収容されていたが,最近,結核病棟を新設したと
最初に訪問したハイデルベルグ胸部疾患病院は1772
のことで再訪問した。新結核病棟は15床で,植え込み
年に貴族が狩猟ロッジとして建築した建物をサナトリ
やベンチがある庭がある緩和病棟の階上に位置してい
ウムに転用した歴史があるがその後,都市化によって
る。結核患者の専門病棟にした理由は,感染性に対す
周囲は住宅地になった。現在,病床数310床の呼吸器
る懸念と長期入院に適した療養環境を整えることで
疾患専門病院である。結核病室は15床で,病院の小公
あった。ドイツでは病院と家庭医の機能は厳密に分け
園に面した病棟の3階に位置している(写真)。病室
られており,一般には両者を併せ持つことはできない
は2人部屋でかなりゆったりとした広さがあり,各病
ことになっている。この病院でも以前は結核患者の外
室にバルコニーがついていた。
来診療は行われていなかった。しかし,言語障壁があ
る外国人患者やアルコール依存,多剤耐性など複雑な
問題を持った患者など,一般開業医での診療が困難な
事例が増加したため,外来診療を行うようになった。
結核医療の現状
ドイツでは国あるいは学会等による入退院基準はな
い。視察した3病院ではいずれも塗抹陽性患者の場合
は塗抹3回陰性確認,6-7週間程度が標準となって
いるようである。何れの病院にも陰圧病室はなく,多
剤耐性患者の病室では看護師はN95相当のマスクを装
着していたが,基本的には換気を行っていれば十分と
の認識であった。入院患者は外国人で比較的若年が多
いためか,合併症に関する問題は聞かれなかった。ベ
写真.病棟に面して日本の児童公園程度の広さで小さな人工池
がついている公園
ルリンでは旧ソ連邦からの移民が持ち込む多剤耐性結
核が増加しており,病棟の一角で土日も注射薬投与の
ために通院する患者の治療が行われていた。ドイツで
18
次に訪れたバートベルカ中央病院はワイマールから
はDRGシステムで疾患毎の診療報酬は決まっている
ローカル線で約30分の人口7000人の田園地帯にある。
が,結核患者の入院については入院期間分支払われる
1898年に結核のサナトリウムとして開設され,戦後は
ことになっており,医療経営上の問題は聞かれなかっ
旧東ドイツに属していたが,東西ドイツ併合後民間資
た。
本に売却され,市と州の資金も導入されて運営されて
今後の我が国の医療提供体制の整備にあたっては,
いる。病床数800で,呼吸器,心臓,神経等の高度専
複雑化する結核問題や長期入院・長期治療になる患者
門医療を提供している。民間移行時結核病床は,第1
に十分な配慮が必要と考えられた。
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TSRU meeting 2010
参加報告
結核研究所臨床・疫学部
伊藤 邦彦
部長 2010年のTSRU(Tuberculosis Surveillance Research
中断7.9%,失敗2.6%,再発ゼロと非常に良好な成績
Unit)meetingは,ドイツのベルリンで4月14∼15日
だということでした。これまでの多剤耐性治療プログ
の二日間行われ,16の国から総計47名が参加しました。
ラムの『常識』を打ち破るような方針です。もちろん
会議の名前は Tuberculosis Surveillance になって
発表者が認めているようにどこでも通用するような処
いますが,現在では結核対策に係るさまざまな発表と
方ではありませんが,方針自体は極めて実際的なもの
議論を行う場になっているようです。発表は5つの
のように感じられました。
セッションに分けて25の発表が行われました。
第二日は「サーベイランス」のセッションが行われ
初日は最初に「有病率・罹患率調査」のセッション
ました。総括議論では世界基金等の資金などにもかか
が行われ,日本からはWHOインターンの市村先生が
わらずルーティンのサーベイランスに関する状況や知
有病率調査プロトコールの各国の違いについて発表さ
識はあまり好転していないとの指摘がありました。
「薬
れました。続く「治療」のセッションでは3題全てが
剤耐性」のセッションでは結核研究所副所長の下内昭
多剤耐性結核の治療に関するものであったことは,こ
先生が,大阪市における対策強化による耐性率低下に
の問題が今いかに世界的な脅威になっているかを示す
ついて発表されました。自由題では合計7題が発表さ
ものかもしれません。またこのセッションでDr H.
れましたが,印象にのこったのは接触者検診と「DNA
Riederが発表した,バングラデシュでの標準化多剤耐
指紋」を基にした結核の「潜伏期間」の推定でした。
性 短期(最低9ヶ月) 化学療法の可能性に関する
2次患者の数も1,000人以上とこれまでの古典的研究
発表は,私にとって今回のTRSUで一番興味あるもの
よりも多く,また有名なサザーランドの成績とほぼ一
でした。この試みでは,薬剤感受性試験をせず最初最
致していました。「古い」問題も新しい手法で再度確
低4ヶ月(塗抹が陰性になるまで継続)INH(比較的
かめることができるのは,非常に面白いことだと思い
高用量)+PZA+EB+KMの4剤のほかClofazimine+
ます。
Gatifloxacin+Prothionamideの計7剤を用い,維持期
2011年のTSRUは日本で開催されることが予定され
はEB+PZA の2剤のほかClofazimine+Gatifloxacin
ていますが,向こう一年の間に様々な問題がどのよう
の計4剤を5ヶ月投与するという処方でこれまで206
に動きどのような発表がなされるのか楽しみなところ
人を治療し,治療完了5.3%,治癒82.5%,死亡5.3%,
です。
※写真は,KNCV(王立オランダ結核予防会)Web SiteTSRU記事より抜粋
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バングラデシュの結核対策と
JICAプロジェクト報告
南川真理子
元結核予防会国際部 バングラデシュ人民共和国の概要
NGOは中央NTPによって示される指針を踏襲し,県
国境の一部をミャンマーと接する以外はインドに囲
保健局や公・私的医療機関との連携及び独自のネット
まれ,南はベンガル湾に面している。その国土面積は
ワークを駆使してさまざまなアプローチできめ細かな
日本の約40%,人口は1億5千万人以上(世界第7位)
サービスを提供している。保健省は対策の遂行に必要
である。また国土のほとんどが大きな河川の下流域に
な検査機材・試薬,抗結核薬を確保しNTPを通じて
位置し,毎年雨季には河川水量の増加と氾濫により多
NGOに提供している。NGOによる具体的な支援とし
くの国土が水没し,何年かに一度は大規模な洪水やサ
て,大学病院内における診療科を横断したDOTSコー
イクロンによる甚大な被害を受けている。
ナーの開設・運営,繊維工場など職域におけるDOTS
の提供,住民レベルでの村医者やヘルスボランティア
保健医療の現状
によるDOTS,元患者の組織化による啓蒙活動や患者
保健医療指標と結核統計を表に示した。近年これら
紹介,移動喀痰検査の実施や公的医療施設に対する人
の指標は改善しているとはいえ,未だ多くの感染症が
員補強によるサービス強化など多岐にわたっている。
蔓延し,特に人口の4割を占める貧困層において,基
バングラデシュをはじめとし,途上国における患者
礎的保健サービス・カバー率の低さの改善などが重要
発見と治療観察の基本は喀痰塗抹検査による菌の確認
な課題とされている。保健医療サービスの提供は主と
である。そのため塗抹検査の精度保証システムの構築
して地方では県病院や郡病院などの公的機関が,都市
と検査の質向上は,対策の質を保証する上で非常に重
部では大学病院,専門病院や民間病院に加え,市から
要な活動である。結核予防会は2004と2005年に同国に
サービス提供を委託された非政府セクターが行ってい
おいて移動セミナーを実施し,精度保証システム導入
る。しかし,公的サービスは脆弱で,医療施設,機材,
のために技術研修を行った。その後,2007年に国際協
人材の不足,信頼性の低さと,利用者の経済的理由も
力機構(JICA)がこのシステム強化を目的としたプ
あり,住民に満足のいくサービスが提供されていると
ロジェクトを開始したことから,2010年3月まで3年
は言い難い。そのためサービス提供における非政府セ
に渡り結核対策専門家を派遣し,精度保証システムの
クター(NGOや民間医院・薬局等)の役割が極めて大
強化支援にあたった。現在,システムは全国35箇所の
きく,依存度も増している。
精度管理センターに拡大され,そのネットワークは
1,000箇所を超える検査室を網羅する。定期的に検査
国家結核対策とJICAプロジェクト
済標本の精度評価が実施され,NTPにその結果が報
バングラデシュ国家結核対策計画(NTP)では2
告がされている。全国の結核検査統計もこのネット
つの重要な対策指標はWHOが掲げた目標値に達して
ワークを通じ報告・監視されている。ほとんどの精度
いるものの(表),年間約8万人もの結核による死亡
管理センターでこれらの業務を担当しているのは
が推定されるなど,世界第7位の結核高負担国として
NGOのスタッフであり,ここでもNGOが重要な役割
位置づけられている。NTPではDOTSを広く住民に提
を担っているのである。
供するために,全国すべての地域でNGOと協力・連
このようにバングラデシュの結核対策は政府と非政
携のもと結核対策サービスの提供・拡大を行っている。
府セクターの連携・協力により成果を挙げている一方
で,長期的な対策の維持や薬剤耐性結核への取り組み
表 保健医療指標と結核に関する統計
出生時平均余命※1
5歳児未満死亡率※1
妊産婦死亡率※1
(歳)
(出生1,000対)
(出生10万対)
2007年
2007年
2007年
64
61
320
など課題も多い。効果的な対策と成果を持続させるた
めには政府・行政の役割が重要であり,中央集権の現
状から地方への予算・権限委譲等の行政強化と継続し
たNGOとの協力関係が必要であろう。
(推定)結核患者・
全結核※2
(推定)結核患者・
新規菌陽性肺結核※2
(推定)結核死亡※2
患者発見率
※3
(新規菌陽性肺結核)
治療成功率
※3
(新規菌陽性肺結核)
(10万人対)
(10万人対)
(10万人対)
(世界目標70%)
(世界目標85%)
2008年
2008年
2008年
2008年
2007年
225
100
50
73%
92%
出典:※1 UNICEF,※2 WHO,※3 バングラデシュ国家結核対策計画
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ずいひつ
「私の役目 ― 今思うこと」
女優
仁科 亜季子(にしな あきこ)
この年齢になると,本当に月日が経つのが早い…。
した抗ガン剤。その治療もさることながら,その後に
今年ももう半年が過ぎてしまいました。東京もいよい
襲ってきた想像を絶する絶え間ない吐き気。辛かった
よ梅雨に入り,鬱陶しい季節です。ほんの少し前まで
です。そして,生命と引き替えなのだからと理解はし
デパートの一階の隅に遠慮がちにあったレイングッズ
ていたものの,すさまじい勢いで抜け落ちる毛髪を見
は,最近は俄かに注目を集め,色とりどりの傘やおそ
てパニックになり涙が止まらなくなりました。八月に
ろいのレインコート。そして私が娘時代,何とか履か
手術。五時間半もかかった,全摘出手術。傷の回復を
ずにいたいと思っていた黒や紺の長靴に至っては,何
待って始まった放射線治療。まさにフルコースの治療。
ともカラフルに可愛らしく,誇らしげに存在を主張し
子供達の存在があったからこそ乗り越えられた気がし
て,私の眼を十分楽しませてくれます。そんな様変り
ますが,本当に多くの方々に命を助けていただきまし
した梅雨時の様子をみていても,私の気分は徐々に夏
た。でも,十九年も経った今でも,一生抱え続けてい
に向って心がざわつく時期なのです。年に一回の全身
かなければならない問題が数多くあります。忘れた頃
の検査の日が近づく頃,私は日々の生活の中では忘れ
にフッと過る再発や転移などへの恐怖。精神的不安。
ている「癌」の記憶が蘇る頃なのです。不安や恐怖…
そして女性としての喪失感や,絶望感。女性特有の「癌」
それを打ち消そうとする気持ちや,今年もまた大丈夫
だからこそ直面する肉体的な変化。ホルモンのバラン
という期待感など,様々な感情が一日一日違った形で
スが乱れて起る更年期の症状やリンパ浮腫。そして人
交差するのです。
間として最も戸惑う排尿障害等々…。また,金銭面に
今から十九年前,三十八才の時―癌細胞はあまりに
おいても,時間的にも多くの負担がかかります。誰で
も衝撃的にやってきました。突然地球を攻撃してきた
も病にかかれば自分自身,全力で治したいと思うはず
エイリアンの様に…。下の娘が小学校へ入学して「や
です。医師の方々も全力で治療して下さる事でしょう。
れやれ」と言うことで,友人達三家族と一緒にゴール
でも,病気に―「癌」にならない方が絶対によいので
デンウィークに台湾へグルメ旅行をすることになり,
す。現在,私が苦しみ,今も闘っている「子宮頸癌」
本場の中華料理を満喫する予定でした。もしかしたら
のための画期的な予防ワクチンが開発・承認され,発
もうその頃身体には変調があったのか,私だけ「食中
売されています。今世紀最大の,神様から全女性への
毒」のような症状で三日間苦しみ,その後やっとの思
贈り物とも言っても過言ではないこの素晴らしいワク
いで日本へ帰り内科の主治医を訪れ,ついでに受けた
チンですが,まだまだ人々の認知度は低く,正しい理
婦人科検診で,本当に偶然に,本当に運よく「子宮頸
解をされていません。「子宮頸癌」を撲滅しようと十
癌」が発見されました。子供達は八才と六才。幼い子
年あまり地道に活動をしてきた私にとって,少なから
供達の事を考え,心臓が破裂しそうな思いで一人で聞
ずメディアに関わる人間として,又,体験者としての
いた医師の告知。驚きと恐ろしさに押し潰されそうに
役目を考え,何より,ワクチンの公費助成への活動も
なりましたが,子供達を残して死ぬことなど絶対にで
含め正しい情報を提供しようと,微力ながら,でも積
きない! 頭だけでもいいから,身体は動かなくても
極的にこれからも携わって参りたいと思っています。
いいから生きていたい! せめて十年。その一念で
検診の大切さは言うまでもなく,ワクチン接種を推進
「癌」と正面から闘おうと決心しました。我が身を切
し,一人でも多くの女性が辛く悲しい思いをすること
られる思いで子供達と離れての四ヶ月に及ぶ長期の入
なく幸せな一生を過ごせる様に,人生の後半に差しか
院生活。治療が始まり,二回の動注という方法で投与
かった者の大きな思いをここに寄せました。
よぎ
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女性と子どもをたばこの害から守ろう
2010年世界禁煙デー記念シンポジウム・5月30日(日)
SYDホール(東京・渋谷区)
23回目を迎えるWHO世界禁煙デーのスローガンは,
“Gender and tobacco with an emphasis on marketing
to women(ジェンダーとたばこ∼女性向けのマーケティ
ングに重点をおいて∼)”です。
今回200名を越える参加者が集いました。今年のテーマ
は「女性と子どもをたばこの害から守ろう」
。厚生労働省
長浜博行副大臣のあいさつに始まり,AKB48のメンバー
による対談や漫才のダムダムダンのたばこ漫才など,今
までにないプログラムも取り入れられました。
政府における主なたばこ対策
厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室たばこ対策
専門官の森淳一郎氏は,平成22年度税制改正大綱により,
今年10月よりたばこの値段を1本あたり3.5円引上げ,一
箱およそ100円の値上げに至った経緯について述べられ
ました。国民の健康を考慮した上での決定であり,これ
までの経済面とは異なった立場からの決定は新しいと話
されました。
また,たばこの煙を周りの人が吸い込むことは,マナー
の問題ではなく,喫煙者から石をぶつけられている行為で
あり,喫煙対策にはみんなが声を大にして言うことが,国
の対策を進めていくことにつながると話されました。
参加者を前に挨拶する厚生労働省長浜博行副大臣
一緒に学ぼう!たばこの害
禁煙啓発イベントとして,AKB48から佐藤夏希さん,
秋元才加さん,松原夏海さんの3人が登場。日本医師会
前常任理事の内田健夫先生と対談を行いました。喫煙者
だったお父さんに,家に入れないよ,と言って止めさせ
た佐藤さん,家族がヘビースモーカー,自分は健康のた
めに吸いたくないと語った秋元さん,たばこの害につい
て興味があると,松原さん。対談は,活発な意見が飛び
交い賑やかに進行しました。
たばこは美容の大敵!
たばこは美容の大敵! サイト主宰者である平賀典子
氏からは,海外のショッキングな警告画像が印刷してあ
るタバコパッケージに対して,日本では女性向けに美し
くデザインされたパッケージで購買意欲を煽る現状を紹
介しながら,たばこの害について熱く語られました。
職場禁煙法制定後,ハワイで何が変わったか
ハワイ大学法学校准教授マーク・レビン氏は,流暢な
22
対談で禁煙推進に強い意欲を見せたAKB48のメンバー
会場に大きな笑いの渦を巻き起こしたダムダムダン
日本語で,ハワイで2006年11月に職場禁煙法が制定され
た結果をまとめられました。明らかに喫煙率が下がり,
心筋梗塞・乳がんなどの疾病への影響が減ったことと共
に,経済的にも営業経費が削減し,労働者の環境向上に
より,経済効果が損なわれるのではなく,返って良い方
向へ向かっていると報告された。結論としては,職場の
完全禁煙は“simple norm”簡単な決まりで,法律によっ
て平等に,公正に規制され,効率的に推進することがで
きるとまとめられました。
閉会挨拶
たばこと健康問題NGO協議会の島尾忠男会長は,今回
のシンポジウムで,漫才で笑いとともに教訓を入れるなど
画期的なことであったこと,ハワイで施行された職場禁煙
法では,ホテルや飲食の場での経済的な影響は全く無く,
むしろ良い方向へ働いたことを嬉しく拝聴したこと。日本
人が一番弱い問題は,受動喫煙であること。明日から諸問
題に対する対策を強化し,互いに努力していくことを確認
して,シンポジウムは無事閉会しました。
挨拶をされる島尾忠男会長
(文責:編集部)
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「世界禁煙デー・タバコフリー築地フォーラム2010
∼ジェンダーとタバコ」報告
望月友美子
独立行政法人国立がん研究センター研究所たばこ政策研究プロジェクトリーダー
「喫煙と健康」WHO指定研究協力センター長
毎年5月31日はWHOの定める世界禁煙デーです。
女性の国際NGOの総元締めであるスーンヤン・ユー
今年はWHOによりグローバルローンチの場として日
ン(WHOジ ェ ン ダ ー と タ バ コ コ ン サ ル タ ン ト),
本が選ばれ,独立行政法人国立がん研究センター(嘉
WPROのたばこ対策担当官であるスーザン・メルカ
山孝正理事長)は,新体制発足後初めての公的行事と
ド(WPROリージョナルアドバイザー)の三氏によ
して「タバコフリー築地フォーラム2010∼ジェンダー
り世界的な潮流をご講演いただきました。総合討論で
とタバコ」を5月31日に開催しました。今年の世界禁
は,ハワイ大学のマーク・レビン氏から,たばこ産業
煙デーのテーマ「ジェンダーとたばこ∼女性向けの
がジェンダーの視点からも社会的なマイノリティを
マーケティングに重点をおいて∼」は女性をタバコ産
狙ったマーケティングを行っているという指摘がさ
業のマーケティングと受動喫煙からいかに守るかとい
れ,一筋縄ではいかないタバココントロールの課題が
うことが主眼におかれましたが,我が国では全般的な
浮き彫りになりました。
たばこ離れが進む一方で,若い世代のみならず中高年
会場には省庁,企業,メディア,一般の方々など総
女性でも喫煙率が増加しており,次の世代を守るため
勢200名程度の参加があり,立ち見が出るほどの盛況
に早急に手を打たなければならない課題です。また,
の中,たばこ政策のあり方についての議論が交わされ,
我が国のように男性喫煙率が高い国では,家庭や職場
たばこ政策において世界の動きを国や地方に伝え,ま
における女性の受動喫煙も問題で,フォーラムでは,
た逆に地方や国の動きを世界に発信することで大きな
この二つの課題について重点的な討議が行われました。
うねりを作っていくことの重要性が再認識されまし
フォーラムは,長浜博行厚生労働副大臣と嘉山孝正
た。また,タバココントロールには多くのステークホ
国 立 が ん研究センター理事長の挨拶に引き続き,
ルダーの協力が不可欠であり,国境や業界の垣根を超
WHOタバコフリーイニシアチブ・ディレクターのダ
えてのパートナーシップのあり方にも議論が集中しま
グラス・ベッチャー氏から世界禁煙デー2010年の狙い
した。なお,当日配布した資料は,ご希望の方にはお
について解説があり,「地球規模で考えて地域規模で
分けいたしますので,メールで,[email protected].
行動しよう」というテーマのパネル討論では,神奈川
ncc.go.jpまでご連絡下さい。折り返し,お申し込み方
県の松沢成文知事,グローバルダイニングの山下優子
法をお知らせいたします。今後も,国立がん研究セン
氏,WHO神戸センターのフランシスコ・アルマーダ
ター研究所たばこ政策研究プロジェクト・「喫煙と健
氏を迎え,スモークフリーポリシーの実践例と挑戦課
康」WHO指定研究協力センターでは「タバコフリー
題について討議が行われました。特別講演「ジェンダー
築地フォーラム」として,国内外の最先端のタバココ
とタバコ」では,世界のたばこ対策を30年にわたりリー
ントロールの潮流を共有する機会を企画してまいりま
ドするジュディス・マッカイ(WHOシニアポリシー
すので,ご支援下さいますようお願いいたします。
アドバイザー)
,神戸会議のコーディネーターを務め
7/2010 複十字 No.334
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第85回日本結核病学会(京都)印象記
結核研究所 臨床・疫学部
内村 和広
主任研究員
結核病学会に参加して毎回感じること,それは日本
のそして世界の結核病学がこれまでに積み上げてきた
層の枚数である。それは歴史といっていいのかもしれ
ないが,記録,記憶としての歴史というよりは,今,
この現在にいて前に進む時に常に傍に存在する,もっ
と今の私たちにとって「生きた」ものであるように思
えてならない。もちろん,それは結核病学だけでなく
他の病学,他の学問においてもあてはまるであろう。
しかし,最先端の研究や最新の知見のうちにある歴史
を結核病学会では特に感じるのである。
新たな時代の目標
亡を2015年までに半減する(1990年と比べ)ことが設
第85回日本結核病学会は5月20,21日に京都市京都
定され世界がこの目標に取り組みを進めている。まさ
テルサを会場に,国立病院機構南京都病院院長倉澤卓
に,今この現在の結核病学会にふさわしい学会テーマ
也先生を会長に開催された。京都で日本結核病学会が
であった。
行われるのは京都大学胸部疾患研究所教授久世文幸先
24
生が学会長であった平成3年第66回以来19年ぶりであ
IGRAに関する技術・知見に関する進展
る。その第66回結核病学会の講演集をふりかえると,
ここ数年にわたり,IGRA(Interferon Gamma Re-
学会長久世先生の会長講演「リファマイシン誘導体の
lease Assay,インターフェロンガンマ 放出アッセ
抗菌活性」をはじめとする基礎研究や,シンポジウム
イ)検査法に関する話題がめだっている。今回も特別
や要望課題そして一般演題においても臨床研究,報告
講演,ミニシンポジウム,要望課題(2セッション),
がめだっている。その一方でシンポジウムでは「INH・
一般演題,ランチョンセミナーと多数の発表が行われ
RFP両剤耐性例への対策」として現在の結核対策の大
た。これはIGRA法自体の研究面の関心もあるが,や
きな課題となっている多剤耐性結核のセッションが行
はり結核対策の現場である接触者健診での利用が進
われている。
み,そこから得られる知見や疑問点,課題が増えてき
第66回結核病学会が行われた平成3年の日本の新登
たことが大きいのではないだろうか。それだけIGRA
録 結 核 患 者 数 は50,612名 で 罹 患 率 は10万 人 対40.8で
法が結核対策現場に与えた影響が大きかったことは間
あ っ た。 そ し て 平 成20年 に は 新 登 録 結 核 患 者 数 は
違いない。ツベルクリン反応検査結果と比べより確信
24,760名,罹患率は10万人対19.4と17年をかけ数,率
を持って感染診断を行うことができる現場での安心感
ともに半減した。21世紀に入っての最初の京都での結
は大きいであろうし,過剰な潜在性結核治療の減少も
核病学会は「目指せ,結核半減! 今,求められてい
確かであろう。そのなかで判定保留の問題や陰性結果
る対策は?」が学会テーマである。平成3年からの結
者からの発病といった課題も出ている。これらは今後
核半減もそこに費やされた労力と結核対策のたゆまな
の知見の集積によって合理的解決が見出される可能性
い前進があってのことである。しかし現在,そしてこ
もあるが,健診集団の注意深い観察と特性の検討と
れから日本が直面するであろう結核問題を考えれば,
いったツベルクリン反応検査での健診の経験がやはり
平成22年からの結核半減はさらなる研究,技術,対策
大切であることを再確認させてくれてもいる。
の前進がなければ困難であるかもしれない。国連ミレ
今回の学会では「Pro & Con」
(賛否両論)と題し
ニアム開発目標においても世界の結核有病率と結核死
たセッションが行われた。そこで「ツベルクリン検査
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−必要か否か−」と刺激的なタイトルでの議論が行わ
あるが先生のなされてきた仕事とその情熱は十分に印
れた。発表,討議からIGRA法の有用性は論を俟たな
象的であった。また何よりも,先生の講演の中で示さ
いがツベルクリン検査のIGRA検査との相補的利用価
れた岡治道先生,隈部英雄先生らの剖検肺のスケッチ
値についての議論から上に記したこれまでの経験の重
は,言い方は不適かもしれないが鬼気迫るものが感じ
要性についての印象を強くした。
られるものであり,ここにも最初に記した歴史を感じ
ずにはいられなかったのである。
新たな結核対策の方向性
海外からの先生による二つの招聘講演も貴重であっ
結核半減に向けて求められる対策について,医療の
た。カナダのErwin Schurr先生は結核発病の宿主側
側からの講演,シンポジウムそして発表も印象的で
遺伝子要因に関する講演で発病・病因論の大きな挑戦
あった。重藤えり子先生の教育講演では,今後の結核
のうちのひとつである。香港からのWing Wai Yew先
医療のありかたについての問題提起と解決に向けての
生は多剤耐性結核,超多剤耐性結核についての現状と
提案がなされた。結核病床については今後の結核医療
将来についての講演であり,その背景となった文献資
の根幹をつく問題となろうし,社会的弱者への治療支
料の膨大な量に圧倒された。やはり両先生にも結核病
援は保健行政と共に解決を探るべき課題となる。そし
学に対する情熱を感じたのかもしれない。
て多剤耐性結核は慢性排菌状態での長期治療,超多剤
耐性結核のリスクとして緊急の課題である。
本稿の依頼を受けて,学会当日はなるべく多くの
結核医療側からの取り組みで近年その重要性を増し
セッションに参加しようと思っていたのだが,発表,
ているのが結核治療のクリニカルパスである。結核治
講演を聴いているとついセッションの最後までいてし
療の場合,入院から退院までのパスは服薬支援という
まい,結果としては私の興味に偏った報告となってし
面からも患者との協同作業といえなくもない。また退
まいました。ここに紹介した以外に貴重で興味深い講
院後の治療に向け地域連携機能も必要性が増してい
演,発表は本当に多数ありましたが紹介できなかった
る。シンポジウム「結核クリニカルパス」では先進的
のは全て私の怠惰のせいでありご批判を甘受いたしま
取り組みをされている医療側からの貴重な発表を拝聴
す。
することができた。結核という慢性疾患に応用する場
本学会は大盛況で大ホール以外の会場ではセッショ
合のバリアンスの多様性や,地域連携パスに向けた標
ンによっては立ち見の聴衆が多数でるところもあり,
準化といった課題も見えたが,結核半減化に向けた治
参加者の関心の高さを感じられました。二日目は汗ば
療強化ということからもクリニカルパスの重要性は増
むぐらいの陽気で京都観光にはもってこいの日和でし
すのではないかと思える。
たが,それよりも関心をひく発表の数々が並んだ本学
高松勇先生の教育講演「小児結核対策の今後−次の
会でした。
10年にめざすもの−」は大変印象深いものであった。
平成20年には小児結核(15歳未満)登録数は95名と
100人をきり,発生数ゼロの県も現れている。このよ
うな状況下で今後の小児結核対策は個別的・重点的対
策が求められているとの高松先生の指摘は真正面から
のものである。小児結核の診断機会の減少から診療
ネットワークの必要性,IGRAの小児への応用などの
新技術の話とともに,BCGの選択的接種に向けての
話はそう遠くない時期での結核対策政策の決断となる
であろうと思えた。
印象深かった講演の数々
福井大学名誉教授伊藤晴海先生の特別講演「肺結核
の画像∼呼吸器画像診断学を根元より支える∼」は今
回の学会でも特に印象に残った講演であった。疫学を
している私にとって画像診断学はまったくの門外漢で
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予防会だより
第50回日本呼吸器学会(JRS)学術講演会にCOPDブース出展
4月23日(金)∼25日(日)
,国立京都国際会館(京
また,25日(日)15時からイベントホールで行われ
都市)で第50回JRS学術講演会が開催され,3日間で
たポスターセッションにおいて,COPD共同研究委員
6,000名出席されました。会場内のイベントホールとア
会小倉剛委員長(本会大阪府支部長)から,「COPD
ネックスホールの2カ所において併設展示会が催され,
質問票を用いたCOPDハイリスク者のスクリーニング
本会はアネックスホールで出展し,主にCOPD共同研
の検討」と題して,研究の成果を発表いただきました。
究事業の普及啓発と,本会のPR
( 複十字シール運動・
この出展を機に,COPD共同研究事業の確実な進捗
出版事業・結核研究所研修の案内)を行いました。
を関係者に感謝し,事業の更なる発展に向けて努力し
出展内容
てまいります。
(文責:編集部)
1.ポスター(結核予防,禁煙,COPD)を貼り,特にビー
トたけしさんと桂歌丸さんのお二人のポスターがブー
スに立ち寄る方々の目を引きました。
2.COPD共同研究事業説明を貼り出し,①これまでの研究・
普及啓発活動年表,②主な普及啓発イベント風景写真,
③支部,婦人会で実施した質問票回収実績や肺機能検
査実施状況の集計表,④4月に実施したパチンコ店に
おける肺年齢イベント報告,の4項目をPRしました。
3.COPDパンフレット,禁煙啓発冊子,複十字シール案内,
出版案内,結核研究所研修案内の5点を無料配布しま
した。
結核予防会ブース全景
アフリカン・フェスタ2010出展
6月12日(土)・13日(日),横浜赤レンガ倉庫・イ
アフリカ各国からの参加がある結核研究所でのJICA
ベント広場にて,アフリカへの理解を深めるためのイ
(国際協力機構)集団研修等を通じて,アフリカの結
ベント,「アフリカン・フェスタ2010(主催外務省)」
核対策の推進を支援しています。ブースでは,パネル
が開催され,真夏並みの太陽が照りつける中,アフリ
展示と,チラシや複十字シールなどを配布して活動を
カ大使館,NGO,企業など約140団体が参加。アフリ
紹介。ザンビア事務所のカエベタ所長や研修生も加わ
カ音楽・ダンス,民族グッズ販売,ワークショップな
りました。
どが行われ,大勢の来場者で賑わいました。
国際協力について勉強している学生さん,募金いた
結核予防会は昨年に続き,アフリカで活動している
だいているご夫婦,娘さんがアフリカで活動している
NGOとしてブースを出展しました。南部アフリカで
お母さん,咳が出るという女性(
「結核の常識」を差
は結核と診断された患者の50%以上がHIV/AIDSにも
し上げました)
,お子さんにパネルを読むよう勧める
感染しており,結核で死亡する人が増え深刻な問題と
教育熱心な若いお母さん等,普段触れ合うことのない
なっています。本会は,ザンビアでの地域の結核対策
方との交流の中で,結核予防会として,アフリカ,そ
を支援するプロジェクト(日本NGO連携無償資金協
して世界の結核問題を広く伝えていくことの大切さを
力の助成と複十字シール募金により運営)や国の結核
改めて実感した有意義な2日間となりました。
菌検査の体制づくりを支援するプロジェクト
(TBCAP)
,
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(文責:国際部久保田)
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呼吸の日記念フォーラム2010―大阪にて開催
財団法人結核予防会大阪府支部
小倉 剛
支部長 5月9日(12時45分∼16時),(社)日本呼吸器学会,
身への影響を紹介され,大阪市立大学病院呼吸器内科,
(社)日本医師会,(財)結核予防会共催により呼吸の日
金澤博医師は「レントゲン・肺機能検査で分かること」
記念フォーラム2010「楽に息して,楽しく生きよう」
と題して,診察時の身体所見,胸部X線・CT画像の
が大阪国際会議場イベントホールで行われた。講演会
特徴や呼吸機能検査について実際の症例を示して解説
やQ&Aに肺年齢測定会,企業展示も加えた多彩な催
された。さらに大阪府立呼吸器・アレルギー医療セン
しに,750人を超える聴衆がお見えになり,田村あゆ
ター呼吸器内科,石原英樹医師は「息切れと上手に付
ち氏の司会のもと,開会の挨拶についで日本呼吸器学
き合うために」と題し,呼吸リハビリテーション,薬
会 永井厚志理事長,日本医師会 原中勝征会長(代
物療法特に吸入療法,酸素療法などを組み合わせた包
読永井厚志氏)から御祝辞をいただき,講演の部に入っ
括的な治療の大切さを強調された。最後に,国立病院
た。
機構刀根山病院内科,平賀通医師は,
「肺年齢を知ろう」
まず,世界の盗塁王,福本豊氏が「私の健康法」と
と題して,肺年齢測定の実際やその評価の仕方を解説
題し,健康維持に対する平素の細やかな心配りの数々
された。このお二人の講演では,院内のスタッフが壇
を紹介された。野球の解説とは一味違う,天才の影の
上に上がり,呼吸リハビリテーションや肺機能検査の
努力,健康を守る生活習慣の大切さを痛感させた講演
実技を披露され,福本氏も肺年齢測定にチャレンジさ
でした。
れたが,あまりの高年齢値に唖然とされる一幕もあっ
た。
「肺結核,皆で楽しくQ&A」では,賞品を用意し,
国立病院機構近畿中央胸部疾患センター呼吸器科,鈴
木克洋医師から出題(3問)された。まだまだ結核啓
発の必要性を感じさせる回答結果で,結核の感染と初
発症状,治療についての解説とまとめが行われた。
最後に,大阪府医師会,伯井俊明会長が閉会の挨拶
をされ,府民の生活習慣と呼吸器疾患予防への注意を
喚起された。
講演会場に隣接して,展示場とチェスト,日本光電
工業,フクダ電子,ミナト医科学の4社から提供され
た10台の測定機器が並ぶ肺年齢測定体験会場が設営さ
「世界の盗塁王,福本氏 懸命に頑張る!」
れたが,展示場では多数企業から呼吸器疾患の関連啓
続いて,「私の肺がんと生きがい」と題し,徳島南
発冊子が配布され,禁煙薬ニコレット(スギ薬局),
部からこられた多田氏は,COPDに気づきながらの愛
一般向け呼吸機能測定器 ハイ・チェッカー(宝通商),
煙時代,肺がん手術の決断から「治癒」に至るまでの
在宅酸素療法(帝人在宅医療)など府民と直接関わる
経過と心情を切々と語られた。これに対し,主治医の
企業が展示に参加したほか,創立70周年を記念して大
大阪府立成人病センター外科の児玉憲医師は,同氏の
阪府支部もPR展示を行い,肺がん闘病記(大阪から
肺がんの病状を説明され,タバコは,肺がんのみなら
肺がんをなくす会編,178頁)180部を無料配布した。
ずCOPDの原因でもあり,COPDで肺機能が低下して
肺年齢測定会では検査技師の協力を得て430人以上の
いると早期の肺がんであっても手術できない場合があ
測定を行い,医師との相談も行われたが,評価できな
ることを話されたが,患者と医師の信頼関係の大切さ
い検査例が23%見られ,今後の課題も感じられた。
がひしひしと伝わる貴重なお話でした。
大阪は結核,肺がんなどの罹患率が高いが,8年前
休憩後,「今注目の肺の生活習慣病,C(慢性)O(閉
に第1回の「肺の日,8月1日」の記念行事を担当し
塞性)P(肺)D(疾患)とは?」に移り,日本呼吸器
た時代に比べると,呼吸器病に対する府民の関心も高
学会「肺の健康」,「禁煙」啓発・推進委員長,久留米
まってきている。しかし当日の参加者には肝心の喫煙
大学医学部相澤久道教授の座長のもと,大阪大学病院
者の割合が少なかったようで,今後さらに努力する必
呼吸器内科,合屋将医師は「こんな症状,心当たりあ
要性を感じた1日でした。
りませんか」と題して原因,症状,早期発見対策,全
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平成21年度複十字シール募金結果報告
平成21年度の複十字シール募金総額は,約3億3,330
金ができるようになります。家のパソコンから,お持
万円となりました。皆さまには,結核予防週間におけ
ちのクレジットカード決済で複十字シール募金ができ
る街頭キャンペーンなど様々な場を通じてご協力をい
ます。いままでのように,電話を掛ける手間が要りま
ただきありがとうございました。
せん。
経費を除いた益金の使途は,円グラフのとおりです。
結核予防のための普及啓発や教育資材の作成,途上国
これからの複十字シール募金は,新しい募金方法を
の国際協力で74.5%となりました。特に,途上国での
見つける必要があります。安定した財源があってこそ,
国際協力費が約1,400万円の増加になりました。
しっかりとした事業が出来ます。日本の次の目標は,
低まん延国になること。世界における日本の責任も
また,8月から本部ホームページからオンライン募
益々重くなってきています。
胸部検診機器の整備に
3.9%
調査研究に
4.2%
955万円
1,022万円
全国の結核予防
団体の活動に
17.4%
4,216万円
平成21年度
途上国の結核対策に
40.4%
皆様から寄せられた温
かい募金は、このよう
な目的で使われました
9,807万円
結核予防の広報や
教育資材の作成に
34.1%
8,278万円
募金総額 3億3,330万7,498円
益金(経費除く)2億4,280万1,745円
平成22年度複十字シールと広報資材
平成22年度の複十字シールのテーマは「子ども」で
す。表紙にもカラーで掲載しておりますが,今回も安
野光雅先生に腕を振るっていただきました。竹馬・縄
跳びなど昔懐かしい遊びに興じたり,笛や太鼓を鳴ら
しながら踊ったり,時の変化に色あせない楽しい「子
ども」の時間を,複十字シールでご堪能ください。
また今年度の新しい広報資材は,ご好評にお応えし
て複十字シール坊やのストラップです。といっても第
2弾。前作より小ぶりの坊やは,もこもこしたテディ
ベアみたいです。おまけに手足が曲がるので,どんな
動作も自由自在。写真の“お座りポーズ”も可愛いい
でしょう。夏ごろ完成致します。ご期待ください。
(お問い合わせ 結核予防会本部資金課
直通 ℡03-3292-9287)
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坊やの新作ストラップ。可愛いい!
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HIV/AIDSの感染者が多い中,結核による死亡が急増。早期診
断が受けられる体制づくりを行っている。(ザンビア)
治療を続けるために見守ってくれる人の存在は大きい。定期的
に患者さんを訪れるボランティアの育成は大切。(ネパール)
複十字シール募金が世界へ届ける
結核が治る喜び。健康を守る喜び。
複十字シール募金は,自分たちの手で,結核から人々
地域の力が増すことが,より多くの結核患者さんの
を守ろうとしている途上国の人々の取り組みを支援し
治療や結核の予防に繋がっています。
ています。
皆さまのご協力に感謝申し上げます。
複十字シール募金による支援活動が行われている国:
インドネシア,カンボジア,タイ,ネパール,フィリピン,ミャンマー,ザンビア
活動は,地域の人たちの健康を願う現地スタッフと共に行われ
る(結核予防会カンボジア事務所)
結核はみんなの問題。子供から大人まで大勢が参加して普及啓
発のキャンペーンを行う(フィリピン)
例えば,フィリピンでは都市マニラの貧困地区,ザ
び日本NGO連携無償資金協力の助成により運営)
,ネ
ンビアではHIV/AIDSと結核の二重感染が深刻なルサ
パール・カトマンズでは,結核の治療や普及啓発を行
カ市で,地域の結核対策を支援する活動(募金益金及
う現地NGOの活動支援が行われています。
★トピックス★
厚生労働大臣へ要望「どうなる!? これからの結核医療」
5月20日(木)
,厚生労働大臣(結核感染症課長が代理)に,第61
回結核予防全国大会の決議・宣言文の要望をした。結核予防会本部橋
本壽専務理事,全国結核予防婦人団体連絡協議会中畔都舍子会長など
8名が訪問し,橋本専務理事から決議・宣言文を福島靖正結核感染症
課長に手渡し今後一層の協力を仰いだ。
福島課長に決議・宣言文を渡す橋本専務理事
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●平成22年度資金寄附者感謝状贈呈式
並びに永年勤続職員表彰式
5月31日(月)13:00からリーガロイヤルホテル東京において永
年勤続表彰式が行われた。まず島尾忠男顧問より「これからの結核
予防会を支える皆様へ」と題し記念講演が行われ,続いて13:30よ
り永年勤続職員に長田理事長から表彰状が授与された。また14:30
より総裁秋篠宮妃殿下の御臨席を賜り,資金寄附者感謝状贈呈式が
行われ,結核予防事業資金として多額のご寄附を下さった方々に総
裁から感謝状が授与された。引き続いて記念撮影とお茶会が行われ
た。
【感謝状贈呈者(順不同,敬称略)】
・事業資金協力者(個人:4名)
上田裕子,奥津孝一,関口守正,柳澤弘仁
・事業資金協力者(団体:2社)
アボットジャパン,日本ビーシージー製造
・複十字シール募金協力者(個人:8名)
飯塚友子,池田泰章,片庭慶子,河津秋敏,中島達晃,長根宗悦,
吉田福子,綿引一
・複十字シール募金協力者(団体:2社)
アロエベラエンタープライズ,
KEN INTERNATIONAL JP
・事業活動協力者(個人2名)
小林佑吉,ビートたけし
【永年勤続職員表彰者(敬称略)】
・30年勤続者(22名)
(宮城県)永瀬康一,(茨城県)藤来秀俊,小林むつみ,(栃木県)
田野井靖子,(東京都)佐藤進,(神奈川県)平田直俊,(山梨県)
三沢恵美子,
(岐阜県)田口正世,
(京都府)澤田稔,
(大阪府)
柴田純子,和久田洋子,藤野弘子,安永君枝,河面孝,(愛媛県)
浅井三喜男,(長崎県)上井清美,(熊本県)熊本和章,田口博規,
三浦英揮,(新山手病院)永井愛子,鈴木澄子,(本部)齋藤隆則
・20年勤続者(64名)
(宮城県)石川優子,竹内敏智,(山形県)海藤尚良,神 史生,
大澤麻喜子,
(福島県)今田香代子,大竹智子,高橋幸子,栗田
和香子,林王克明,森佐知子,八代功士,志賀道浩,(神奈川県)
辻真紀子,林明美,牧田和子,橋本裕子,大久保肇,杉政龍雄,(茨
城県)森康子,戸張慶子,(栃木県)宇賀神典子,伊藤登,(長野県)
義家浩子,(新潟県)家合淳子,
(大阪府)道原和己,中岸康美,
梅村朋和,宮之脇均,前川芳子,水野真奈美,村部裕子,藤原淳子,
井上順子,溝口美喜子,屋比久亜紀子,大坪三佐子,尾島里美,(兵
庫県)河野昭博,(高知県)上原美恵,森澤渡,久武啓子,(佐賀県)
氷室順子,(宮崎県)星野俊一,(沖縄県)高良惠美子,池田有子,
金城由乃, 谷美恵子,比嘉宏子,星律子,
(結核研究所)佐藤
和美,(複十字病院)桑原真由美,中野幸生,黒田佳美,桑原龍児,
須賀川真理子,丸山由美子,
(新山手病院)小野沢則雄,
(保生の森)
佐藤奈津江,(第一健康相談所)田川斉之,水上加代子,冨澤祐子,
(本部)菊地健司,山本理生
●2010年世界禁煙デー記念シンポジウム
・テーマ 女性と子どもをたばこの害から守ろう
WHOの標語:「ジェンダーとたばこ∼女性向けのマーケ
ティングに重点をおいて∼」(Gender and tobacco with
an emphasis on marketing to women)
・日 時 平成22年5月30日(日) 開場12時30分
・会 場 SYDホール(東京都渋谷区千駄ヶ谷4-25-2)
・共 催 厚生労働省,
(社)日本医師会,
(社)日本歯科医師会,
(社)
日本薬剤師会,
(社)日本看護協会,たばこと健康問題
30
NGO協議会〈がん研究振興財団,結核予防会,健康・体
力づくり事業財団,日本対がん協会,日本公衆衛生協会,
日本心臓財団〉,「喫煙と健康」WHO指定研究協力セン
ター
・目 的 世界保健機関(WHO)が世界中の国々に呼びかけてい
る世界禁煙デーは今年で23回目となっています。今年の
シンポジウムでは「女性と子どもをたばこの害から守ろ
う」をテーマとして,特に性差に着目した喫煙及び受動
喫煙による健康被害を中心とした喫煙問題について,専
門家を招いて議論を進めることとしています。
・対 象 国民一般,行政・保健医療・教育関係者,その他
12:30−13:00 開場
13:00−13:10 開会挨拶 厚生労働副大臣
13:10−13:30 報告「政府における主なたばこ対策」
○厚生労働省健康局総務課
生活習慣病対策室たばこ対策専門官 森 淳一郎
13:30−14:00 対談「一緒に学ぼう!たばこの害」
○AKB48
秋元 才加,松原 夏海,佐藤 夏希
○医療法人社団内田病院
内田 健夫
○フリーアナウンサー
駒村 多恵
14:00−14:30 講演「たばこは美容の大敵!」
○たばこは美容の大敵!
http://tobacco-biyou.jpサイト主催者 平賀 典子
14:40−14:50 漫才
○ダムダムダン
14:50−15:30 講演「職場禁煙法制定後,ハワイで何が変わったか」
○ハワイ大学法学校准教授
マーク レビン
閉会
閉会挨拶 たばこと健康問題NGO協議会会長
島尾 忠男
●タバコフリー築地フォーラム2010
∼ジェンダーとタバコ
主 催:独立行政法人国立がん研究センター「喫煙と健康」WHO
指定研究協力センター
共 催:厚生労働省
日 時:5月31日(月)14:30∼17:00
会 場:国際研究交流会館(東京都中央区築地5-1-1,国立がん研究
センターキャンパス内)
【予定登壇者】
・挨 拶
―嘉山孝正 独立行政法人国立がん研究センター理事長
―長浜博行 厚生労働副大臣
―Ala Alwan WHO事務局長補
・解 説 Protecting women from tobacco marketing and smoke
―Douglas Bettcher WHOたばこ規制部長:「世界禁煙デー2010の
狙い」
・鼎 談 Think globally, act locally .
―松沢成文 神奈川県知事
―Francisco Armada WHO神戸センター技官
―Mark Levin ハワイ大学法学部准教授
・講 演 Gender and Tobacco
―Judith Mackay WHO上級政策顧問:
「たばこ産業のマーケティ
ング戦略」
―Soon-Young Yoon WHOジェンダーとタバコ問題コンサルタ
ント:「WHOモノグラフの概要」
―Susy Mercado WPRO地域アドバイザー:「ベトナムのパイ
ロットプログラム」
・総合討論:進行 望月友美子 国立がん研究センター・「喫煙と
健康」WHO指定研究協力センター
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多額のご寄付をくださった方々
〈指定寄付者〉(敬称略)
鮎澤正紀,柳澤弘仁(保生の森)
〈複十字シール募金〉(敬称略)
石川県―公立能登総合病院,東野病院,アイ
ビーシステム,米沢電気工事,慶祐静子,南
出正義,横川重子
福井県―松原病院,三精病院,福井赤十字病院,
福井県済生会病院,福井総合病院,福仁会病院,
藤田記念病院,小林病院,福井温泉病院,福
井愛育病院,福井厚生病院,西浦病院,光陽
生協病院,青山皮膚科クリニック,荒川整形外
科医院,打波外科胃腸科医院,かさまつファミ
リークリニック,柏原脳神経クリニック,佐藤
整形形成外科,末松内科循環器科医院,辻医院,
畑内科,
眼科原医院,
本多レディースクリニック,
本多整形外科医院,松田外科胃腸科医院,む
かい心療内科クリニック,吉村医院,福井健康
福祉センター職員一同,福井環境衛生協会,福
井食品衛生協会,三国土木事務所職員一同,
あわら市,坂井地区医師会,金津高等学校一同,
奥越健康福祉センター職員一同,大野東高等
学校一同,勝山高校一同,大野市保健センター,
大野市教育委員会,勝山市健康長寿課,さつ
き苑,さくら荘,大日園,大野市医師会,勝山
市医師会,福井社会保険病院,武生高校,池
田町結核成人病予防婦人会, 江市愛育会,
木村病院,高村病院,笠原病院,中村病院,岩
堀病院,武生記念病院,池端病院,今立中央
病院,JAたんなん, 江市医師会,信越化学
工業武生工場,福井村田製作所,アイシン・エ
イ・ダブリュー工業,丹南健康福祉センター職
員一同,日本原子力発電敦賀地区本部,日本原
子力研究開発機構敦賀本部,関西電力美浜発
電所,東洋紡績敦賀事業所,敦賀ライオンズク
ラブ,二州健康福祉センター職員一同,敦賀市
赤十字奉仕団,敦賀市連合婦人会,JA敦賀
市女性部,美浜町女性の会,小浜市,おおい町,
高浜町,若狭町,嶺南振興局,小浜土木事務所,
小浜ライオンズクラブ,杉田玄白記念公立小浜
病院,社会保険高浜病院,小浜市医師会,県
赤十字血液センター,北陸公衆衛生研究所,
福井県歯科医師会,福井県予防医学協会,自
衛隊福井地方連絡部,福井県栄養士会,福井
市結核成人病予防婦人会,大野市連合ふわわ
女性の会,越前町保健推進員会,越前市健康
づくり推進員会,福井県食生活改善推進員連
絡協議会,福井県医師会,福井県看護協会,
福井県健康管理協会,北陸電力福井支店
滋賀県―滋賀県地域女性団体連合会,東近江
市,滋賀県庁,野洲市,愛荘町,甲良町,豊
郷町,虎姫町,高島市,高月町,高畑巳年生,
米原市近江老人クラブ連合会,びわこ企業,
山田整形外科病院,うだ医院,スマイル,え
とうクリニック,油定薬局,大原整
京都府―今井紀陸
大阪府―和田泰彦,吉野孝幸,山本智英,中
山きみ子,郡慶三,吉村直樹,村主弘明
兵庫県―塚本倉一郎,のぶさわ内科医院延沢
彰,谷口内科クリニック谷口智通,馬勝容子,
京阪運送,長池幸治木工所,神鋼病院看護部,
杉田哲,伊藤良,済世会兵庫県病院・兵庫県
済世会訪問看護ステーション看護部,前田ク
リニック理事長前田啓志,西宮市医師会,や
まだ整形外科クリニック院長山田博,友成油
業,瀧谷泰博,順心会介護老人保健施設津名
白寿苑,東敬子
岡山県―浅野病院,旭総合印刷,池上医院,
大熊,大村内科小児科医院,大森恵美子,岡
協商事,
岡村一心堂,
岡山県浄化槽団体協議会,
岡山中央病院,長田医院,落合病院,加原雅教,
カミヨ千々木,河井建設工業,川崎医学振興
財団,倉敷中央病院,三栄鉄工,新青山,高谷,
高山医院,田中商会,玉野市民病院,中山医院,
日建,備前発条,平允会,松田病院,丸五,
水中開発,山本医院,吉本医院
福岡県―福岡県庁職員,福岡県警察職員,福
岡市職員,福岡県筑紫保健福祉環境事務所,
福岡県粕屋保健福祉事務所,福岡県宗像・遠
賀保健福祉環境事務所,福岡県嘉穂・鞍手保
健福祉環境事務所,福岡県田川保健福祉事務
所,福岡県北筑後保健福祉環境事務所,福岡
県南筑後保健福祉環境事務所,福岡県京築保
健福祉環境事務所,秋富成子,朝倉市女性連
絡協議会,アドバンスウェア,阿部筆子,飯
塚市婦人会,いけだ内科クリニック,石蔵富
士子,石橋欣一,
一律電機,糸島医師会,井上
福三,井上内科クリニック,入江内科医院,
エス・アール,エスシーシー九州支店,大川
市連合婦人会,太田良實,岡税務労務会計事
務所,御所病院,遠賀郡婦人会連絡協議会,
甲斐電気工事,春日市婦人会,糟屋郡連合婦
人会,金隈病院,加納英実,嘉穂郡桂川町婦
人会,蒲池咲子,菊池クリニック,北九州市
歯科医師会,
北九州市衛生総連合会,
北原靖久,
水戸病院,久保カヨ子,クリスタルビルクリ
ニック,久留米市女性の会連絡協議会,久留
米市保健所,久留米市三潴町婦人会,久留米
市城島町婦人会,健康保険直方中央病院,合
志恒子,広真ビルテック,河野弘道,小財スチー
ル,小竹町役場,小林政人,さく病院,篠栗
病院,佐藤安弘,シー・アール・シー,篠
社労士事務所,柴田稔,志摩町役場,島松循
環器内科クリニック,行政書士吉浦事務所,
城浜保育園,城崎仁郎,新日本薬局,鈴木内科・
小児科医院,西南学院,西方寺,聖マリア病院,
高比良昌一,高宮外科胃腸科,竹下誠二,太
宰府市婦人会,田主丸町地域婦人会連絡協議
会,田原整形外科医院,筑後市連合婦人会,
筑紫野市地域婦人会連絡協議会,筑紫南ヶ丘
病院,筑前町役場,千代男女共同参画協議会,
つくし会病院,天神会,特別養護老人ホーム
志摩園,刀根五月,筑紫郡那珂川町婦人会,
中庭トシヱ,中間市婦人会,直方鞍手医師会,
直方鞍手薬剤師会,
直方歯科医師会,
野田尚武,
箱田病院,橋本雅晴,林法生,原鶴温泉病院,
原病院,久野完,平尾山病院,福岡県医師会,
福岡県歯科医師会,福岡県信用保証協会,福
岡県立精神医療センター太宰府病院,福岡県
直方商工会議所,福岡市医師会,福岡市鮮魚
仲卸協同組合,福岡市中央区南当仁校区婦人
会,福岡市博多区保健福祉センター,福岡市
南区保健福祉センター,福岡生命保険協会,
福津市地域婦人会,
豊前病院,
二日市中町病院,
二日市共立病院,穂積会計事務所,本地寺,
丸山病院,みずほ不動産鑑定所,三潴郡大木
町婦人会,水三島紙工九州支店,みやま市女
性倶楽部,宮若市職員互助会,宮若市婦人会,
村上巧,柳川市地域婦人会連絡協議会,八女
市福島婦人会,ゆうかり学園,行橋記念病院
熊本県―熊本県医師会,恩賜財団済生会熊本
病院,阿蘇温泉病院,宮崎内科胃腸科医院,
元島産婦人科医院,司法書士行政書士平島尚
典事務所,庄嶋医院,谷 MAクリニック,
熊本県医師会婦人の会,熊本県弘済会,中央
砕石工業,健軍神社,アドファータ,阿蘇製
薬,有明測量開発社,友和会,熊本第一信用
金庫,肥後タクシー,ダイヤエンジニアリン
グサポート,サンレイメディカル,熊本綜合
管理,福島文隆堂,天草郡市医師会附属天草
准看護高等専修学校,専修学校九州美容学校,
山田弥生,反後皓介
本部―小野智,小野健一,畑中友次,佐野萌,
長坂是隆,鴻巣晶子,服部弘太郎,柳沢和子,
小林保彦,小俣宗昭,小山欽造,下田賢司,
杉山正道,鈴木喜久子,鈴木明,千野素行,
田村市兵衛,富沢一行,中野敏江,安西英太郎,
代表取締役飯田和道,加納好昭,笠原庄治,
金井猛,久松孝之,久富順平,熊田忠真,田
島ルーフィング,秩父石灰工業,本浄寺,伊藤
壮子,浜田寛子,深澤能里子,福田孟,藤崎
久子,平沢久男,田島富次,田村碩子,多田甚
作,照山紹,出井弘八,善照寺,鳥飼和子,中
村忠次,西山道樹,信澤薫,野田照子,木曽マ
ス子,壁矢浩一,早川一胤,平林千江,堀口一
男,牧のぞみ,松石洋輔,宮崎政春,森裕子,
林田光永,山崎君代,弓削道子,三宅長雄,青
木秀久,朝倉馨,秋元,渡辺電機工業,飯田
真一,渡辺憲夫,村上末吉,成毛典子,長村
滋子,勝本慶一郎,科研製薬総務管理G,コー
レンス,手嶋敏,日本銀行文書局健康サポート
担当,日本生産性本部,藤倉化成,江原若菜,
岩田達明,古林誠,御園生芳行,竹中はる子,
寺田真文,野辺地恒雄,安養寺重夫,石田弘子,
宇田川和俊,及川恭子,小石幸雄,久保田誠夫,
久野連峯,久保田美佐子,小川昭二郎,小黒
信一,今井栄,日本製茶,水口隆一,真貝ます
子,千賀通裕,竹中一雄,武川節,長谷川治
郎兵衛,太田文子,国際文献印刷社,廣谷郁,
近藤泰,三好信子,野原勝男,野崎健一,勝
美印刷,綜研化学人事総務部,名倉司,山岡
建夫,滝口順浩,渋谷幸保,西川徳子,内藤
義子,温井律子,伊那貿易商会,岩田造園土木,
大塚ゴム,椎名政夫,谷口全亮,鳥羽田節,桑
田貞,ナンシン,博進紙器製作所,日野自動車
架装特装部,ヒロセ電機,平和物産,門野達夫,
石川泰子,臼田正臣,上野毛幼稚園,六合製
作所,岡部国際特許事務所,吉野賢治,立石
正夫,塚本利明,浅川教徳,梅田常和,河野
豊弘,隨應寺,小林千枝子,恩田明久,日高望,
樋口孝夫,屋代晶子,山口智道,佐藤秀抱,島
尾洋子,寺門光男,名取誠二,中村茂,青木
正和,安芸直,木村欣二,梶谷純子,角田無
線電機,カトリックイエズス会,信愛福祉協会,
羽鳥藤雄,関崎三郎,榎本コンクリート工業,
菊川和子,クミアイ化学工業,小田木工業,三
進興業,斉藤商店,すみれ,トヨフク,日本醫
事新報社,東京自動シール製袋所,ユニオン化
成,吉野製作所,南雲定次,平川秀雄,平井
林三,小山明,五光,スエヒロ,徳榮商事,や
よい観光,ぷらかい,庵原フミ,村野猛,森京子,
志村知男,白須康弘,日本缶詰協会,保坂誠,
渡辺彰子,大野俊司,電鉄商事,西村商店,
牧野電設工業,魚籃寺,山城清邦,岡惺治,
東山道之,藤井源七郎,結核研究所保健看護
学科保健師対策5日間コース第1回研修生一同
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結核予防会役員人事〈敬称略〉
《支部》
発令日
氏 名
発令内容
発令日
支部名
氏 名
発令内容
平成22年4月1日 竹下 隆夫 理事を委嘱する(重任)
平成22年3月25日
大阪府
小倉 剛
支部長を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 田中 元直 理事を委嘱する(重任)
平成22年4月20日 神奈川県 大久保吉修 副支部長を委嘱する
(重任)
平成22年4月1日 中畔都舍子 理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
広島県
湯
平成22年4月1日
平成22年4月1日
広島県
佐々木昌弘 副支部長を委嘱する
(重任)
平成22年4月12日
熊本県
平成22年4月11日
熊本県
北野 邦俊 副支部長の委嘱を解く
平成22年4月1日 荒田 茂夫 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
新潟県
若月 道秀 副支部長を委嘱する
平成22年4月1日 井伊久美子 評議員を委嘱する(重任)
平成22年3月31日
新潟県
石上 和男 副支部長の委嘱を解く
平成22年4月1日 石山 節子 評議員を委嘱する(重任)
平成22年3月31日
青森県
佐々木義樓 副支部長の委嘱を解く
平成22年4月1日
小倉 剛
評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月24日
福井県
松田 尚武 支部長を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
菅野 通
評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月24日
福井県
小竹 正雄 副支部長を委嘱する
(重任)
平成22年4月1日
木村 哲
評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月24日
福井県
村田 秀秋 副支部長を委嘱する
平成22年4月1日
小山 明
評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月23日
福井県
竹内 駿男 副支部長の委嘱を解く
平成22年4月1日 佐々木忠雄 評議員を委嘱する(重任)
平成22年3月31日
山形県
結城 博史 副支部長の委嘱を解く
平成22年4月1日 佐藤 睦夫 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
宮城県
平成22年3月31日
宮城県
鈴木 隆一 副支部長の委嘱を解く
平成22年4月1日 澁谷いづみ 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
栃木県
加藤 和英 副支部長を委嘱する
平成22年4月1日 下田 智久 評議員を委嘱する(重任)
平成22年3月31日
栃木県
小林 雅與 副支部長の委嘱を解く
平成22年4月1日 杉田 博宣 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
三重県
加藤 正彦 支部長を委嘱する
平成22年4月1日 代田 浩之 評議員を委嘱する(重任)
平成22年3月31日
三重県
英彦 支部長を委嘱する(重任)
福田 稠
岡部 敦
中嶋 寛
副支部長を委嘱する
副支部長を委嘱する
支部長の委嘱を解く
守 純一
理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 櫻井 孝頴 監事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 渡辺 俊介 監事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 柴田 玲子 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
高瀬 昭
評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 長尾 啓一 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 中島 由槻 評議員を委嘱する(重任)
《本部》
発令日
平成22年4月1日 福地義之助 評議員を委嘱する(重任)
氏 名
発令内容
平成22年4月1日 藤巻 且敬 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 青木 正和 会長、理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 古川 武温 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
長田 功
理事長、理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
平成22年4月1日
橋本 壽
専務理事、理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 松平 恒忠 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 石川 信克 常任理事、理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 丸瀬 和美 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 石館 敬三 常任理事、理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 宮坂 敞尊 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 江里口正純 常任理事、理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 宮本 信夫 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 尾形 正方 理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 村上 治洋 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
平成22年4月1日 山内 邦昭 評議員を委嘱する(重任)
岡山 明
常任理事、理事を委嘱する(重任)
星野 繁
評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 唐澤 祥人 理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 山口 峯生 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 工藤 翔二 常任理事、理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 米窪千加代 評議員を委嘱する(重任)
平成22年4月1日 笹井 康典 理事を委嘱する(重任)
平成22年4月1日
渡部 尚
評議員を委嘱する(重任)
追 記:前号No.333にて《本部》3月31日付で尾身 茂,山下武子 両名について「顧問の委嘱を解く」となっておりますが,4月1日
付で引き続き下記の通り就任されました。
尾身 茂 本部学術相談役 山下武子 事業部顧問
お詫び:前号№333 P20-21「結核予防切手と赤複十字シール」の執筆者名が間違っておりました。訂正してお詫び申し上げます。
誤:小林 祐吉 正:小林 佑吉
平成22年7月13日 発行
複十字 2010年334号
編集兼発行人 藤木 武義
発行所 公益財団法人結核予防会
〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-3-12
電話 03(3292)9211(代)
印刷所 勝美印刷株式会社
東京都文京区小石川1-3-7
電話 03(3812)5203
結核予防会ホームページ
URL http://www.jatahq.org
本誌は皆様からお寄せいただいた複十字シール募金の益金により作られています。
複十字シール運動
―みんなの力で目指す、結核・肺がんのない社会
平成22年度複十字シール
複十字シール運動は,結核や肺がんなど,胸の病
気をなくすため100年近く続いている世界共通の募
金活動です。複十字シールを通じて集められた益
金は,研究,健診,普及活動,国際協力事業など
の推進に大きく役立っています。皆様の暖かいご
協力を,心よりお願いいたします。
運動の輪を広げてください。シールは,はがきや,手紙や包装の封印,何にでも使えます。
問い合せ:資金課 TEL03-3292-9287(直)
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新結核関連切手紹介シリーズ(1)
始 め に
岡西順次郎先生が集められた医学関連の切手については,お嬢様の岡西雅子さんのご厚意で結核予防会に寄贈していただき,その中で結核に関
連したものをシリーズで本誌に紹介させていただきました(2007.11 №318から2010.3 №332まで15回)。
昨年には埼玉県八潮市で長く開業され,地域医療の振興に貢献された小林佑吉先生から,1991年11月16―24日東京で開催された世界切手展(ワー
ルド・スタンプ・エキシビション)で銅賞を得られた「結核予防切手の変遷」と題する結核予防に関連した切手を集めたものを当会にご寄贈いた
だきました。その中からいくつかの切手をシリーズで紹介させていただきます。
小林先生は,結核関連の切手を,発行された時期と国によって,4期に分けておられます。
第1期(1897―1925年):結核が強く蔓延していた西欧諸国で,慈善の色彩の強い黎明期
第2期(1925―1940年):ベルギーなど西欧諸国を中心に,盛んに発行された発展期
第3期(1940―1950年):西欧諸国に加えて,中南米,アジアの一部の国でも発行された最盛期
第4期(1950年以降):結核関連切手の発行が西欧諸国からアジア,アフリカなどの開発途上国に移った転換期
各期を代表するものと,特に発行が多かったベルギーの切手については,デザインの移り変わりなども取り上げて,紹介することにします。
①
②
①,②:1897年にビクトリ
ア女王即位60周年を記念し
て当時英国の植民地であった
オーストラリアのニューサウ
スウェールズ州で発行され
た。最初の結核関連切手で,
患者を慈しむ天使の姿が象徴
的に描かれている。表示価格
の12倍である①は1シリン
グ,②は2シリング6ペンス
で発売され,差額は結核サナ
トリウムに寄贈された。
⑧
⑤,⑥,⑦:オ
ラ ン ダ で1906
年に発行。図柄
に当時の結核療
養の4原則,太
陽,水,空気と
栄養が4隅に配
置されているの
が興味深い。表
示価格の2倍で
発売され,差額
は結核予防協会
に寄贈された。
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③
④
③,④:1904年にポルトガルで結核予防のため
に発行されたもの。
⑨
⑩
⑤
⑥
⑦
⑧,⑨,⑩:1921年に結核予防週間を記念してダンチッヒ自由市で発行されたもの。
ダンチッヒ自由市(ポーランド語ではグダニスク)は第一次大戦後独立したポーラ
ンドの海への窓口として1920年に国際連盟管理下に設けられ,
1939年まで持続した。
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ゆうちょ銀行
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