2016年度TA研修会 TA経験者の体験談 同志社大学商学部 中園宏幸 だれなの? • 中園宏幸 (NAKAZONO Hiroyuki) • 1989年鹿児島県生まれ • 博士(商学) • 2015年4月より、同志社大学商学部助教 • TA経歴 − 大阪大学大学院経済学研究科 − 京都大学経営管理大学院 − 同志社大学大学院商学研究科 2 Cite: 2015年度TA研修会資料 4月7・9日TA研究会パワーポイント資料 3 教育分担者としてのTA制度 • 教員の「お手伝いさん」から「教育分担者」へ(田中, 2013) たとえば、 − 学生の意見・感想が述べられた「感想カード」を講義後に回収 し、それら150枚程度を熟読したうえで、その内容に対する 「応答」を講義冒頭10分程度で行う(金丸・渡部, 2015) 教育活動にかかわるための知識や技能 4 アメリカの経験 大学教員準備としてのTA制度 =プレFD • アメリカにおけるTA 業務の円滑な遂行のための訓練プログラ ム(=TA Development) • TA の主要な業務内容 − 少人数の討論クラスの指導、成績評価の補助、試験問題の作成、オ フィス・アワーでの学生支援等 − 教授等による講義とは別に設定された必修の少人数の討論クラスを、 TA が単独で指導 Cite: 吉良(2014) 5 日本の経験 • TAの業務として「授業の代講や補講」「定期試験の採点」「成 績評価」などを明確に禁じている大学もあり、TAが自身の ティーチング能力の向上を端から期待できない状況(北野, 2005; 上野・丸山, 2009) • 「給料は低いが、TAに従事する経験は、君たちが将来、大学教 員として教壇に立つ時に必ず役に立つから」という理由や、 「指導教員-直属の大学院生」という権力関係下でTAを引き受 ける状況は、TA業務を「文句を言われないための最低限のこと だけをする“やっつけ仕事”(ルーチンワーク)」に貶めてしま う可能性がある(上野・丸山, 2009, 131頁) 6 日本のTA制度の現実的課題 1. TA業務に時間を取られ、大学院生の研究時間が減ること 2. TAとしてのティーチング能力を発展させるための機会は存在 するが、TA研修が必ずしも大学院生のティーチング能力を伸 ばすものになっているとはいえない内容であること 3. 充分な財政支援となるだけの賃金を得られないこと 4. TAの一定の社会的地位が認められていないこと Cite: 上野・丸山(2009)7 研究時間が減る? • 大学院生だけではなく、教員も実感すること • 「研究遂行の方法」を学ぼう 8 ティーチング能力を伸ばせない? • OJTは可能か − 教員が想定しているTA業務内容を理解する − 教員の想定している講義進行を理解する − 教員と適切にコミュニケーションを行い意欲を伝える • Off-JTの機会は閉ざされているのか − たとえば、東大FD(http://www.todaifd.com/) − mooc講座もある(http://gacco.org/) • 参与観察 − 単位に関係しないため、講義内容ではなく、講義の運営に着目可能 − 教員の動きと学生の反応を観察できる 9 賃金が充分な財政支援にならない? Cite: 加藤・鐘ヶ江・茶山(2012) 10 我々は賃金に動機づけられるのか? • 内発的動機づけ理論 − Deci(1975; 1980)による心理学的実証研究 − 内発的動機づけ=有能感と自己決定に基づき、その行動自体が目的と なる − 賃金などの外的報酬は、内発的動機づけを低下させる − 同様の結論を持つ日本の実証研究(碓井, 1992; 高橋, 2004) みなさんは、 − なぜTAを志望するのか − なぜTAに任用されるのか 11 TAの社会的地位が認められていない? − 履歴書には書けない 12 同志社大学では認められるTAの地位 − 履歴書には書けない • TAとは、学生であると同時に、本学の教育に携わる一員 教員にとってTAは講義をともにつくり上げるパートナー − 信頼関係が重要(教員とTA、受講生とTA) − 教員とのコミュニケーションが最重要 − 隠れたニーズを見出すためにも講義の観察も欠かせない • 目的意識を持って主体的に 13 Cite: 2015年度TA研修会資料 4月7・9日TA研究会パワーポイント資料 14 ついやっちゃうミス • 成績優秀で有能感あふれる大学院生であるがゆえの、 − 上から目線で教えてやろうという態度 − 答えまで全部教えてあげようという間違った丁寧さ − くだらない質問に対して小馬鹿にしたような態度 • 主体的に動いてやろうという意識ゆえの、身勝手な行動・判断 • 同じ学生であるという立場ゆえの、友達感覚すぎる言動や対応 教育分担者としての自覚をもつこと 15 TA経験は苦労もありますが、 唯一で有意義な経験になる 16 参考文献 • Deci, E. L. (1975) Intrinsic motivation, Plenum Press. • Deci, E. L. (1980) The psychology of self-determination, D. C. Heath. • 金丸彰寿・渡部昭男(2015)「博士課程後期課程におけるプレFD : 2014年度前期「教育政策」のTA経験から」『教 育科学論集』18号, 19-27頁. • 加藤真紀・鐘ヶ江靖史・茶山秀一(2012)「我が国の博士課程修了者の大学院における修学と経済状況に関する調査 研究」文部科学省科学技術政策研究所. • 吉良直(2014)「大学院生のための段階的な大学教員養成機能に関する研究 -アメリカの研究大学から日本への示唆」 『教育総合研究』7号, 1-20頁. • 北野秋男(2005)「我が国のティーチング・アシスタント(TA)制度研究の動向」『教育学雑誌』40巻, 49-61頁. • 高橋伸夫(2004)『虚妄の成果主義』日経BP社. • 田中正弘(2013)「教育分担者としてのティーチング・アシスタント : 平成23年度弘前大学TA研修会の報告を兼ね て」『21世紀教育フォーラム』8号, 45-46頁. • 碓井真史(1992)「内発的動機づけに及ぼす自己有能感と自己決定感の効果」『社会心理学研究』7巻2号, 85-91頁. • 上野哲・丸山恭司(2010)「ティーチング・アシスタント制度を活用した「大学教師」教育の可能性」『学校教育実 践学研究』16号, 127-136頁. 17 おわり 18
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