1908年以前の日本におけるオリンピックの知識 鳥谷部春汀による オリンピックの知識をもたらした三系譜 クーベルタン・オリンピズムの解釈: 1)歴 史 書 古代オリンピック 「體育界の偉人クベルタン」『中学世界』 2)体 操 書 古代オリンピック (1903年11月号)の分析 3)新聞・雑誌 古代オリンピック +近代オリンピック・オリンピズム ※.クーベルタン関係記事 和 田 浩 一 (神戸松蔭女子学院大学) 1897 風流覊客「昨年のオリムピア競伎」『世界之日本』 日本体育学会第61回大会 (2010年9月8日、中京大学) 1903 鳥谷部春汀「體育界の偉人クベルタン」『中学世界』 1 1906 大森兵蔵「希臘競技の復興」『體育』 発表の骨子 5 鳥谷部の記事(1):構成 1)大仏国民の一人 著書・雑誌:目的ではない → 計画の補助 問題の所在 研究の目的、先行研究 2)彼れの計画 英国式の体育法: フランスに輸入→中・高を変える 筋肉と精神の結合 → 体育:智力の向上にも補益 歴史的背景 鳥谷部春汀、『中学世界』、Fortnightly Review クーベルタンの紹介図書・記事 3)体育上の主義 体育を奨励する目的 = 人物養成 知育にも注目 → × 百科全書的 ○ 総合的 1908年以前の日本におけるオリンピックの知識 鳥谷部の記事(1):構成 ・ (2):分析 結論 2 4)彼れの目的 人類の進歩のために「体育」を推進 体育・智力・意力 鳥谷部の記事(2):分析 問題の所在 鳥谷部自身が書いた三つの段落 原文にはなし → 体育・教育との関連づけ 研究の目的 鳥谷部春汀によるオリンピ ズム解釈をオリンピック史 的に検討 ヨーロッパ・フランスの政治・外交問題(原文) 省略 → 焦点は体育・教育 先行研究 = 鳥谷部の記事への言及 ・ 事実の紹介のみ ・ オリンピズム受容史と いう視点での分析:なし 6 Girard, Mary. Pierre de Coubertin: An Appreciation, Fortnightly Review 74, August 1903. 3 クーベルタンへの評価 体育・オリンピックの事業家 教育家 コスモポリタン 体育(体力)・智力・意力 → オリンピズム 結 歴史的背景 論 1)時代背景:1897-1908ごろ 1)鳥谷部春汀:1865-1908 IOC機能せず → オリンピズムへの無理解 人物評論の第一人者 日本のオリンピックに関する知識 2)『中学世界』 総合学習雑誌:1898-1928 古代:体系的、近代:断片的 2)記事内容 3)Fortnightly Review:1865-1954 スポーツによる教育改革運動の経緯 イギリスで影響力のあった自由主義の評論雑誌 クーベルタン執筆 1897-1908:19編 クーベルタンの体育論・教育論 政治・外交問題(原文)の省略 → 体育・教育 4)クーベルタンの紹介図書・記事(存命中) 6編 → Girard の記事は1903年 ※ 1897-1908: IOCは機能せず 7 3)『中学世界』:少年・学生へ 4 オリンピズム(体育・知育・徳育)を紹介 8 日本体育学会第 61 回大会発表資料(演題番号:01 史-1A-K01) 2010 年 9 月 8 日 鳥谷部春汀によるクーベルタン・オリンピズムの解釈: 「體育界の偉人クベルタン」『中学世界』(1903 年 11 月号)の分析 和田 浩一(神戸松蔭女子学院大学) S2 発表の骨子 S3 問題の所在 研究の目的 鳥谷部春汀によるオリンピズム解釈 鳥谷部の記事は次の原文の抄訳 Mary, Girard. Pierre de Coubertin: An Appreciation. Fortnightly Review 74 (New Series, No.440): 336-346, 1903.8. 先行研究:鳥谷部の記事への言及 1956 鈴木良徳・川本信正編著『オリンピック』日本オリンピック後援会 1962 東竜太郎『オリンピック』わせだ書房 1976 『花絆』(田尾文庫)4 1977 早川武彦「日本における『クーベルタン像』について」『一橋論叢』77.1 1978 木村毅『日本スポーツ文化史(新版)』ベースボール・マガジン社 2007 Wada, Koichi. First Contact: Olympic ideas and ideals in Japan until 1909. Niehaus, Andreas & Seinsch, Max (Eds.). Olympic Japan: Ideals and Realities of (Inter)Nationalism, Germany: Ergon Verlag. S4 歴史的背景 鳥谷部春汀(1865-1908) 1)職業:ジャーナリスト 1898 『明治人物評論』 1902 『明治人物小観』 1900 『続明治人物評論』 1905 『時代人物月旦』 1909 『春汀全集』 2)経歴 1879 青森専門学校農芸科入学 1897 博文館入社:『太陽』の「人物月旦」執筆 1884 王戸小学校教諭(3 年間) 1900 報知新聞社入社:主筆、『太陽』の「人物月旦」は継続 1888 東京専門学校英語本科入学 1902 博文館入社:『太陽』主宰 1890 東京専門学校英語普通科卒業 1908 死去:12 月 21 日 1891 東京専門学校政治科卒業 1892 毎日新聞社入社:編集 ※.日本人評論・その他:約 270 編、外国人評論:約 60 編 (うち『中学世界』: 22 編、 6 編) 『中学世界』: 総合学習雑誌(1898-1928): ・ 論説、文界時評、史伝地理、理科算数、国語漢文、英語之栞、農商工芸、陸軍海軍、家庭遊戯、随筆雑纂、 青年文壇(投書)、受験案内、学会彙報、運動遊戯ほか ・ 伊東明「雑誌『中学世界』の体育・スポーツ記事索引目録の作成について」第 22 回日本体育学会、1971 体育・スポーツ記事:多い、文芸誌(1-7 巻)→ 受験雑誌(8 巻-) 1 Fortnightly Review (1865-1954) 19 世紀イギリスにおいて最も影響力のあった自由主義の評論雑誌 クーベルタンの執筆記事 1897-1908: 19 編 cf. Century Illustrated Monthly Magazine 4 編 American Monthly Review of Reviews 15 編 クーベルタンの紹介図書・記事(存命中) 1890 Bouthillier-Chavigny, Charles Marie Claude. Justice aux Canadiens-Français à Mr le Baron Pierre de Coubertin, Montréal : Cadieux & Derome, 126p. 1898 Show, Albert. Baron Pierre de Coubertin. American Monthly Review of Reviews 17.4: 435-438. 1903 Mary, Girard. Pierre de Coubertin: An Appreciation. Fortnightly Review 74(NS.440): 336-346. 1917 Seillière, Ernest. Un artisan d'énergie françcaise : Pierre de Coubertin, Paris : Henri Didier, 160p. 1918 Bonamaux, Charles. The Contributions of Baron Pierre de Coubertin and his Contributions to Physical Education. American Physical Education Review 20: 91, 96. 1935.Zentner, Kurt E. Pierre de Coubertin! Ein Beitrag zur Entwicklung des modernen Sports, 68p. ※ Leading articles of the month. American Monthly Review of Reviews: 1900.6, 1902.2, 1902.4, 1903.9, 1904.6, 1905.6, 1905.7. S5 1908 年以前の日本におけるオリンピックの知識 1)歴 史 書 古代オリンピック 2)体 操 書 古代オリンピック 3)新聞・雑誌 古代オリンピック+近代オリンピック・オリンピズム 1895. 4 北水生「運動会の歴史及種類」『少年世界』1.7: 3-4. 1896. 3 碧落外史「オリンピヤ運動會」『文武叢誌』29: 36-38. 1896. 4 碧落外史「オリンピヤ運動會」『文武叢誌』30: 20-21. 1896. 5 (見出しなし)『讀賣新聞』5 月 13 日付 1896. 8 K・Y「希臘オリムピヤ闘伎の復興」『少年世界』2.16: 55-57. 1897. 2 風流覊客「昨年のオリムピア競伎」『世界之日本』12: 46-49. 1903.11 鳥谷部春汀「體育界の偉人クベルタン」『中学世界』6.4: 35-43. 1905. 2 谷本梨庵「オリムピア競技」『讀賣新聞』2 月 15 日付 1906. 2 「『アラン』に於る萬國『オリンピア』の遊戯」『體育』147: 47-51. 1906. 5 大森兵蔵「希臘競技の復興」『體育』150: 44-47. 1908. 7 冒険世界「冒険世界天幕旅行大運動会」『冒険世界』1.7: 1-5. 1908. 9 橋戸頑鉄「オリンピヤン大競技」『冒険世界』1.9: 117-119. 1908.10 武彦坊「萬國選手二十六哩大競走」『冒険世界』1.10: 27-33. S6 鳥谷部の記事(1):構成 1)大仏国民の一人 執筆活動(著書・雑誌):彼の主義を広める手段 → 実行計画の補助 2 2)彼れの計画 英国式の体育法 → フランスに輸入:中学校・高等学校を変える 学生スポーツクラブの組織 1889 パリ万博での体育会議 クーベルタンの理想:筋肉と精神の結合 → 体育は智力の向上にも補益 1891 マンハッタン・アスレチッククラブのパリへの招待 1892 USFSA5 周年式典 1893 クーベルタン、ロンドン、ニューヨークでオリンピックに関する意見の陳述 1894 パリ、アマチュアリズム会議:出席者 17 カ国 3)体育上の主義 体育を奨励する目的 = 人物養成 生存競争の時代:実用的ジムナスティーク 「筋肉の記憶」「半練習」理論 体育だけではなく知育にも注目 → 知育: × 百科全書的 ○ 総合的 4)彼れの目的 外国視察 → 互いの国を知ることの重要性 欧州の未来に関する著書 → L'avenir de l'Europe (1899) 教育社会の事業家 → 人類の進歩のために「体育」を推進 体育・智力・意力 S7 鳥谷部の記事(2):分析 鳥谷部自身が書いた三つの段落: 原文にはなし → 裏面 ヨーロッパ・フランスの政治・外交問題(原文): 省略 → 焦点は体育・教育 クーベルタンへの評価: コスモポリタン、体育・オリンピックの事業家、教育家 体育(体力)・智力・意力 → オリンピズム S8 結論 1)時代背景:1897-1908 ごろ = 嘉納 IOC 委員誕生前 IOC 機能せず → オリンピズムへの無理解 日本のオリンピックに関する知識 古代:体系的、近代:断片的 2)記事内容 スポーツによる教育改革運動の経緯 クーベルタンの体育論・教育論 政治・外交問題(原文)の省略 → 焦点は体育・教育 3)『中学世界』:少年・学生へ オリンピズム(体育・知育・徳育)を紹介 3
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