本書の使い方 本目録は工具書にすぎない。重要だからくりかえす。 「本目録は、あくまでも調査の補助に利用してほしい。第2次資料にもとづいて記述している 部分のほうが多い。誤記を避けることができないのだ。記述のすべてを信じる研究者がいるとは (新 思わないが、原稿を書くばあいには、各自で原書によって事実を確認する努力が必要とされる」 編増補版[第3版]序) 第4版である。理解しやすいように、従来のものを初版、第2版(新編版)、第3版(新編増補版。 中国で刊行)とよぶ。 本目録の構成から簡単に説明したい。 1 本書の構成 以下のようになっている。 a 略号一覧 下にあげた「f 典拠一覧」のなかから使用頻度の高い文献を選び略号をつけた。[ ]でくく る。 b 漢字の文字化けについて 本目録は電字版で刊行する。そのため紙媒体では考えられない問題が生じることになった。 漢字問題だ。電脳が所有しない字体の漢字については表示されないことがある。あるいは、少数 が別の漢字に変化する。これを一般に文字化けという。念のために対照表を作成した。 c 序、まえがきなど 「序」は、初版から本第4版まで共通する。以前、范泉氏と賀偉氏により漢訳がなされた。 それぞれの漢訳は複写を掲げる。 d 本書の読み方 翻訳の1例を示して説明した。それぞれの作品について以下の順序で記述している。 個々の作品について記述は5つの部分で構成される。冒頭に作品番号を置く。第2行は作品 名と角書きなど。第3行目は著者訳者編者。第4行は、掲載の雑誌新聞、および単行本の出版社 などを記す。残りは注釈だ。ここには典拠文献も記入する。 e 本書の使い方 いまここで説明している。 f 典拠一覧 本目録の目的は、清末民初当時に発表された各作品の履歴書を作成することだ。雑誌、新聞 2 の初出から単行本までを追跡する。最近、重版されたものもできるだけ収録した。原物で確認で きない作品については典拠を示した。また、個別にご教示いただいた情報も盛り込んでいる。そ れらの一覧表だ。 前出「a 略号一覧」は、これらの典拠から抽出したもの。[ ] でかこった。また、 ( )によっ て示すばあいもある。使用頻度の少ない文献について使用した。ただし、両者は厳密に区別して いない。長年にわたる増補訂正作業の過程でゆらいだ結果だ。不統一だといって責めないでほし い。 g 本文 作品目録の本体である。編集方針などは後述する。 h 著訳編者索引(参考として) 索引は紙媒体では欠かせない。しかし、本第4版は電字版だ。全文を機械的に検索すること ができる。索引は必要ではないかもしれない。ただ従来からの流れでいちおう作成しておいた。 点検をしていて気付く。本文と索引が一致しない箇所がある(後述)。もとはといえば、紙媒体 での印刷を前提にした索引だ。名前、号、などの一部を切り出して採録した箇所がある。また、 作者によっては本文になくても索引に取り込んだほうがよい、という採取当時の判断があった(今 から思えば、これは過剰な親切心だったらしい。索引に間違いが多いという見方につながったと思われる) 。電 字版など予想していなかった時代からの作業だ。今回、できる範囲内で修正した。しかし、完全 には直しきれなかった。訂正作業を続ける。 ということで、本索引は、あくまでも参考にとどめておいてほしい。重要視されている作家は だれか、人気のある作品になにがあるか。外国作家名の漢訳に種々ある。利用法としては、それ らを知ることができるくらいか。 i 統合版(本文+索引) g本文とhの索引は、ふたつのファイルに分けている。その2種を一体化したものが必要だと いう意見をもらった。簡単なことだから本文+索引を統合して収録した。 j 論文 本目録に関係する樽本の文章2本を収録した。それぞれに初出などの情報を記述している。 1 「清末小説目録の最新成果」 2 「時代を反映する小説目録」(賀偉氏による漢訳も収録する) k あとがき 初版、第2版の「あとがき」だ。第3版に収録したこれらの文章は、すべて賀偉氏によって 漢訳された。本第4版にも短いあとがきを書いている。 l 附録:清末小説から 清末小説研究会は、現在もウェブサイト(http://www.biwa.ne.jp/~tarumoto)で定期刊行物を主と して公開している。年刊『清末小説』および季刊『清末小説から』だ。 2010年、「清末小説から100号発行記念」と称して少部数を電字版(CD-ROM)で刊行した。 研究会のウェブサイトそのままを収める。それ以上に、ウェブサイトでは記憶容量の関係で掲載 していない論文も読むことができるように工夫した。本牧録に収録したのは、それと内容は同じ だ。 また、本第4版からインターネット経由で研究会ウェブサイトの最新版に連絡する。画面にあ 3 クリック る「**」を点撃すれば、自動的にとんで表示するはず。 電字版で刊行する本第4版は、紙媒体とは操作が違う部分がある。いちばんの変化は、なんと いっても全文検索ができるようになったことだ。しかし、基本は共通する。従来からの編集方針 などを説明しよう。 2 基本方針など 編集方針 編集方針は、そのまま本目録の特色となる。 清末の文藝状況をそれ以前と区別するのは、雑誌の出現である。また、新聞を加えるべきだろ う。新聞雑誌を無視して、単行本のみを採取対象とした目録は、清末民初の文藝状況を正しく反 映したものにはならないと考える。 新聞雑誌に掲載された作品を重視するのは必然だ。これを称していわゆる新聞雑誌主義という。 今では新聞小説にまとをしぼって収録する専門書も出版されるようになった。新聞雑誌に掲載さ れた小説は、できるだけ採取している。研究者からのご教示、また刊行物によった。連載が中止 されたものも含める。単行本にならなかった作品もある。新聞雑誌掲載後に単行本となって出版 されたものも、当然、収録する。単行本主義も併用するのはいうまでもない。それが本第4版の 特色のひとつであるといえよう。 最近の重版本も収録したのは、研究の便宜を考えてのことだ。だが、採録されていない重版も ある。充分ではないといっておく。 1 採録対象の作品は、基本的に1902-1919年に発行された創作小説と翻訳小説だ。しかし、そ の期間を厳密に区切ってはいない。重要作品がこぼれおちる恐れがあるからだ。商務印書館の「説 部叢書」あるいは「林訳小説叢書」の一部を1920年以降の発行だからといって排除するか。いや、 私はそれらも採取する。区切れば発行年に厳格な目録になるかもしれない。だが、私はそういう 目録は使いたくない。ゆるやかに1840年から、必要に応じて1919年後の作品も対象にしている。 そうご理解いただきたい。 また、以下は例外としてあつかう。 a) 阿英「晩清小説目」に採られた作品は、すべてを採録する。 b) 商務印書館が刊行した「説部叢書」「林訳小説叢書」は、1920年代以降に発行されたも のも収録する。 c) 『中国近代期刊篇目彙録』は、1857-1918年間に創刊された雑誌の目次を収録している。 これらに見える小説は、できるかぎり採録する。1918年を越えて収録した作品もある。 2 各作品の版本は、雑誌初出から最近の排印本まで採録する。 3 翻訳の原作は、わかっているものは注記する。 4 発行年月日は、清末時期は旧暦で表記し、カッコ内に新暦を示した。 例を示す。 4 戊申年10.1(1908.10.25) どちらもアラビア数字を使用している。「戊申年10.1」は旧暦で十月初一を表わし、 「(1908.10.25)」がその新暦である。 2次資料が新暦年と旧暦月を混在させているばあい、そのまま引用した。注意されたい。 『繍像小説』については、とくに説明しておく。 該誌は、第13期より発行年月日を記載しなくなる。半月刊が守られたとしての推測月日を [ ]で示した。 『繍像小説』11-55期 癸卯9.1-刊年不記[乙巳7.1](1903.10.20-[1905.8.1]とするは誤り) 作品の連載開始である第11期には、上のように発行年月日が書かれている。「9.1」は旧暦 九月初一を示す。 しかし、連載終了の第55期にはそれがない。ゆえに「刊年不記」と記す。また、定期刊行 が守られたばあいの推測を[乙巳7.1]として補った。研究の結果、その期日が遵守された可能性 はほとんどない。予定より遅れ気味に発行されていたことは事実だ。それをいうために「[1905.8.1] とするは誤り」とわざわざ記述している。[ ]内の数字はあくまでも架空のものだ。今にいたる まで刊行の月日が誤解されている。特に説明した理由だ。 5 小説以外の作品も、必要があると私が考えたものは収録した。利用者の方で、適当に無視 してほしい。また、このことをもって本目録の誤りだとご指摘されることは、ご無用である。 6 日本において原物に当たることのできるものは、可能なかぎり見るように努力した。しか し、その数は多くないことをおことわりしておく。 7 利用者は、本目録で検索したのち、原物で確認されることが重要だ。 作品題名から 作品の題名を現代漢語音abc順に並べた。ただし、読みやすいように順序を変更しているものも ある。初出・初版から、2010年までに重版・復刻されたものが、基本的にひとかたまりになるよ うに配列している。その作品が過去においてどういったかたちで出版されたかが、一目でわかる ように配慮した。 作品番号にある「*」印は、翻訳であることを示す。また、今回あらたに作品名を青色でかこ った。創作は黄色で区別する。ただし、問題がないわけではない。創作を装っているが実は翻訳 だったりする。創作と翻訳が合体している作品もあるはずだ。また、創作と翻訳を合冊した作品 集も判断をまよわせる。ふたつに分けたのは暫定的なものだと考えてほしい。それらをさらに検 証することは、今後の研究課題のひとつである。 著訳編者名索引から 興味をおぼえる作家の作品を知りたい場合は、全文を対象として検索をすることができる。 第3版以前の紙媒体で刊行した時は、「著訳編者索引」を見てほしい、と説明した。索引から 本文に当ってみると別の名前が使われていることもあるだろう。もう一度、索引にもどり引きな 5 おすことをおすすめする。別名で発表した作品が出てくる可能性がある、とも書いた。第4版は 使い勝手に以前とはすこし異なるところがある。 著訳編者索引凡例(あくまでも参考として) 1) 現代漢語音のabc順にならべている。同音では、第1-4声の順。ただし、同じ漢字でも、音 順の関係で同じ場所には並んでいない場合がある。ご注意ください。 2) 日本人の姓名も、漢字で表記してあるものは、すべて漢語音で読む。 3) アルファベットの人名は、姓,名の順。 4) 注釈部分の人名は採取していないものがある。本文にあって索引にない(その逆もある)、と いう現象が生じることをお断わりしておく。 全文検索を行なうときの留意点をひとつのべる。 たとえば、索引に「丁初我 Y1671* 」があるとする。このばあい「丁初我」と入力しても電脳 は探し出さない。それは本文に「(丁)初我」と記述しているからだ。電脳はかっこ部分を別物 だと判断する。取りこぼしのないように検索するには「初我」と短く区切りなおしてほしい。 もうひとつ例をあげよう。「西ママ廼舎人」は間に「ママ」があるため「西廼舎人」では探し当て ることができない。 作品別番号を手がかりにいちいち確認するという方法もあるにはある。だが、時間がかかるだ ろう。 おわりに――楽しみ方 本文から作品年表を作ることができる(といっても、すでに『清末民初小説年表』1999を出版してしま った)。索引からは著者別作品目録を作成することも可能だろう。そればかりか、本文の記述を訂 正し誤植を見つける楽しみもある(できれば、索引と本文が一致しないこと以外のご指摘を希望します)。 翻訳ならば、原作、原著者をさがす仕事が残されている。お手持ちの書籍で、採録もれを指摘す るのも楽しいことだ。ご教示いただくとうれしい。 樽本照雄 連絡先:日本〒520-0806滋賀県大津市打出浜8番4-202 清末小説研究会 樽本方 E-MAIL [email protected] 予備として、[email protected] 注:本稿は、以前に発表したものに手を加えて成立している。 6
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