3-12 Van der Pauw

Development of A Mobility Measuring System
for Semiconductors by Van der Pauw Method
Hidetoshi Takahashi, Yoichiro Nakanishi, Yoshinori Hatanaka
Research Institute of Electronics
Shizuoka University
Van der Pauw法による半導体移動度測定装置の作製
1.はじめに
半導体では電子や正孔の挙動を調べることによりその電気特性を求めることが出来き、それらの運動の
法則は電気伝導度やHall効果の解析に応用される。逆に伝導度やHall係数を求めることで電子や正孔の振る
舞いに関わる移動度やキャリア密度を導くことが可能となる。Van der Pauw法はこのHall係数を測定する便
利な手法であり、この測定法に基づき電気伝導度とHall係数を測定し、両者の積から移動度を求める半自動
)
の計測システムを作製した。1,2
z
2.理論
Fig.1 に 示 す よ う に z 方 向 に 大 き さ H(G)を 持 つ 磁 場 中 に 置
y
H
x
かれた長方形の半導体試料側面にオーミック電極を設けて x
I
方 向に電 流 I を流し たとき 、そのキャリアは yの逆方向に力を
受ける。その結果、p型半導体では多数を占める正孔が、n型半
d
t
導体では電子がその影響により yの逆方向面に移動し、ホール
VH
w
電圧VH が生ずる 。
ここで、Fig.2に示す様に、均一かつ平坦な膜の四隅に小さな
オーミック電極を設けた板状試料を考える。それぞれの電極を
Fig.1 Hall 測定における基本図
左上角より反時計回りにa、 b、c、dとしたとき、電極ab間に電
流 Ia b を流すと電極cd間に電圧Vc d が発生する。また、電極bc間の
Ohmic Electrode
d
a
電流 Ib c に対しては電極 da間に電圧 Vd a が得られる。このとき Ra b ,
cd
=Vc d /Ia b 、Rb c ,d a =Vd a /Ib c と置くと、Van der Pauw法では試料の抵抗
)
率ρを次式で表すことができる1,2 。
πt
(Rab,cd + Rbc,da ) f (Rab,cd Rbc,da )
ρ=
2 ln 2
Sample
(1)
b
c
ここでtは試料の膜厚(㎝)を示し、fはRa b ,c d /Rb c ,d a の関数で試料形状
により生じるファクターの補正項であり、Ra b ,c d / Rb c ,d a < 10であ
Substrate
)
れば次の近似式で示すことができる2 。
−2
 Rab,cd − Rbc,da 
R
− Rbc,da 
 − 0.0924  ab,cd

(2) F ig.2 van der Pauw 法 の 電 極 配 置
f = 1 − 0.3466 
R

R

 ab,cd + Rbc,da 
 ab,cd + Rbc,da 
次にHall係数RH を求める。任意の磁場Hを試料表面に垂直に加え、対角の位置にある電極bd間に電流Ib d を流
したときに電極ac間に発生する電圧をVa c とする。同様な配置で試料に磁場を加えないときに発生する電圧を
)
Va c 0とすると、Hall係数RH は以下の式で示すことができる1 。
RH =
(3)
t
ΔRbd,ac × 10 8
H
ここでΔRb d ,a c は次式とする。
ΔRbd,ac =
Vac − Vac0
I bd
(4)
移動度μH はRH と電気伝導度σの積であることから
(5)
μH = RHσ = RH ρ
となり、上式に式(1)と式(3)を入れる μH は次式で示すことができる。
2ΔR bd,ac ln 2
(6)
μH =
πH Rab,cd + R bc,da f Rab,cd R bc,da
(
) (
)
Sample
さらにRa b ,c d / Rb c ,d a ≒1であればf(Ra b ,c d /Rb c ,d a )≒1となり
2ΔR bd,ac ln 2
(7)
μH =
πH Rab,cd + R bc,da
(
)
a b c d
V-I
Converter
Switching
Machine
Preamplifier
となる。
(EG&G MODEL5113)
PIO
3.測定系
Fig.3に本測定系の構成を示す。制御部にはパーソナルコン
ピュータ(NEC, PC-9801RX)を使用し、RS-232C、パラレル
入出力ポートおよびGP-IBのインターフェースを介して電流の
制御、電極の切り替え、そして電圧の読み込みを行った。直
Personal
Computer
Digital
Multimeter
DC Power
Supply
(NEC,PC-9801RX)
(ADVANTEST,R6441A)
GP-IB
(KENWOOD,PWR36-1)
RS-232C
Fig.3 測定系の構成
流電源(KENWOOD, PWR36-1)はRS-232Cインターフェース
Sample
を備え、コンピュータからの信号により出力電圧を10mV単位
で変えることができる。直流電源の出力Voutは電圧電流変換器
a
b
c
d
によりVout/100の電流に変換され、コンピュータで制御される
I+
Relay
Relay
Relay
Relay
切り替えスイッチで選択された試料の電極に加えられる。次
に試料上の電極間に生じた電位は切り替え器を経て差動プリ
ア ン プ ( EG&G
PRINCETON
APPLIED
Relay
Relay
Relay
Relay
Relay
Relay
Relay
Relay
RESEACH,
MODEL5113) で 増 幅 さ れ た 後 、 デ ジ タ ル マ ル チ メ ー タ
(ADVANTEST,
I-
R6441A)で読みとられる。マルチメータに
V-I
Converter
V+
VRelay
Relay
Relay
Preamplifier
Relay
表示された電圧値はGP-IBを通してコンピュータへ送られる。
試料電極 a、 b、 c、 dと電圧電流変換器およびプリアンプと
の接続切り替えは、4×4の16個のリレーマトリックスで構成
Logical Circuit
4bit
4bit
4bit
4bit
される切り替え器により行われる。 Fig.4に切り替え器の内部
構成を示す。各リレーはTTLICで作られた回路を通して4bit×
PIO
4の信号でコンピュータに組み込まれた I/Oボード( ADTEC
Fig.4 切り替え器の内部構成
SYSTEM SCIENC, AB98-04B)に接続され、コンピュータか らの信号でそれぞれを独立に動作させることができる。
試料に加える磁場は電磁石(株式会社日本高密研究所)を用いて発生させた。定格は100V、15.4A、ギャ
ップ間隔5 cmで8500 gaussである。この電磁石の駆動電源には最大定格36 V、30 Aの直流電圧源 (SHOWA
ELECTRONICS, MODEL CVC36-30)を使用した。本測定系では試料ホルダーの大きさに合わせて電磁石の
ギャップ間隔を6.5cmに固定した。電磁石の磁場の強さを直流電圧源の電圧Vで簡単に換算するために0から
±30Vの範囲の電圧に対して磁場の強さHをガウスメータで測定し、その値を最小二乗法で近似したところ
H=84.6V-2.7の直線式によく一致した。
4.測定手順
それぞれの測定機器を制御するためのプログラミング言語
として MS-DOS上で動作する BASICを用いた。試料をセット
The Ohmic Confirmation of
The Electrode by The I-V Measurement
した後、プログラムを実行し付加電流範囲、測定点数、測定
時間間隔、プリアンプ増幅倍率、試料膜厚などのデータをコ
The Measurement of The Resistivity
ンピュータに入力する。コンピュータは入力データに従って
電流値を変えながら測定を開始する。 Fig.5に測定処理ルーチ
The Measurement of The Hall Coefficient
ンの流れを示す。プログラムは試料のI-V測定による電極のオ
ーミック確認、抵抗率測定、 Hall係数測定、そして移動度の
The Computation Process of The Mobility
計算処理の各ルーチンに分けて実行される。
電極のオーミック確認では各電極間に電流を流し同電極間
Fig.5 測定処理ルーチンの流れ図
の電位測定を行い、そのI-V特性により確認を行った。その後
、式(1)に従い Ra b ,c d と Rb c ,d a の測 定を 行 って 抵抗 率 の測 定を
始める。ここまでは、試料に磁場を加えないで行う。次
の Hall 係 数測定では電磁石の電源電圧を手動により変えて
試料に加わる磁場の強さを調整する。設定電圧値はコン
ピュータにキー入力し、関係式H=84.6V-2.7を使い磁場の強
さに置き換えられる。コンピ ュータは磁場を加 えたときと
加えないときの電圧をデジタルマルチメータで読み込み
、 得 ら れ た I-V 特 性 を 最 小二 乗 法 に よ り 直線 近 似 し 、双 方
の 傾 き の 差 を 式 ( 3) に 入 れ て Hall 係 数 を 求 め る 。 抵 抗 率
と Hall 係 数 が 求 ま っ た 後 、 式 ( 7) を 使 っ て 移 動 度 を 算 出
する。キャリアが電子かホールかの判断は、 Hall 係数測定
時 に お け る磁 場 に 対 す る I-V 特 性 の 傾 き によ り 行 っ た。 各
パラメータの測定においてコンピュータは切り替え器を
使って自動で試料電極への接続を選択できるようにプロ
グラミングされている。
Fig.6 ホルダーに固定された Ge 試料
5.測定例
本測定ではFig.6に示されるように大きさ10㎜角、厚さ350μmのpまたはn型Ge基板をホルダーに取り付け
行われた。基板と電極間のオーミックコンタクトを得るために電極材料としてp型にはInをn型にはSnを用い
た。測定電流は0から3 mAの範囲で5ポイントを取った。 Hall係数測定時の磁束密度は約2540gaussとした。
Table 1に本試作装置で測定した値(A)と、既製 Ta ble 1 p 型および n 型 Ge 基板の抵抗率と移動度
のHall測定装置(Bio-Rad Microscience HL5500)で
p-type
同一の試料を測定した値 (B)との比較結果を示
す。試作装置で測定したpおよびn型Geの抵抗率
は1.616Ω㎝と1.699Ω㎝、移動度は1239㎝2/Vs
Resistivity
(Ω
Ωcm)
と1837㎝ 2/Vsであった。既製装置では抵抗率と
A
移動度がそれぞれ1.512Ω㎝と1.701Ω㎝、1230
㎝2/Vsと1860㎝2/Vsとなった。これらの値を比較
B
n-type
Mobility
(cm2/Vs)
A
B
Resistivity
(Ω
Ωcm)
Mobility
(cm2/Vs)
A
A
B
B
1.616 1.512 1239 1230 1.699 1.701 1837 1860
すると、抵抗率はp型試料で約6%、n型では約0.1%の違いとなり、移動度に関してはp、n型共に1%程度で
あった。
測定値に大きなばらつきが無かったことは、本測定で使用した試料が低い抵抗率であり、ノイズ等の影
響を受け難かったためと考えられる。
6.おわりに
Van der Pauw法は平坦で均質、均一な厚みを持つ膜であれば特に試料形状を気にすることなくHall測定が
できる便利な方法である。今回使用した試料の測定結果は、既製の装置で測った値と比べて大きな差は無
かった。測定時間に関しては10分程度を必要としたが、これはデジタルマルチメータの読み取り時間や加
算平均に時間を要したためである。
本測定装置の製作にあたっては、研究室に既存のコンピュータ、計測機器、電源等を使って行うことを
前提としたために機器数が多くなってしまったが、それぞれの計測器が独立した機能を持つため、より高
い機能を持つ機器に置き換えればさらに測定時間の短縮、精度の向上などが期待される。
参考文献
1) 庄野克房:半導体技術−上 、
(東京大学出版会、1980)
、 pp.100-108.
2) M.Razeghi: The MOCVD Challenge - Volume 2、 (Institute of Physics Publishing Bristol and Philadelphia、 1
995)、 pp.155-162.