富士通テン技報

Dec. 2010 Vol.28 No.2
通巻
富士通テン技報
第56号
ISSN 0289-3789
2010−56
Vol.28 No.2
☆本誌は大豆油インクを使用しています。
This bulletin was printed with soy ink.
富士通テン技報
Dec. 2010 Vol.28 No.2
巻頭言
イノベーション勃発 …………………………………………………………………………1
重
松
崇
一般論文
世界展開を考えたAVNプラットフォーム構想
〜第一弾:10秋国内市販AVNの開発〜 …………………………………………………3
江
中
澤
口
村
井
高
文
利
史
武
仁
尾
溝
西
脇
淳
一
司
成
ドライバーの視界補助を行なうMulti Angle Vision™ システム ……………………12
清 水
貴傳名
山 田
誠
忠
正
也
司
博
谷
山
口
田
奨
浩
小型・高性能なミリ波帯アンテナ…………………………………………………………19
上
生
山
里
野
脇
良
雅
俊
英
義
樹
吉
藤
竹
本
弘
正
晃
彦
連立方程式法を用いた車室内音場創生技術の研究………………………………………26
藤 井
宇治野
健
作
正
若
加
林
藤
茂
功
樹
技術ノート
制御開発用シミュレータ「CRAMAS」のITS分野への取り組み ……………………33
丸
山
特
製
許
品
紹
紹
山
崎
晃
剛
田
中
誠
吾
介………………………………………………………………………………37
介………………………………………………………………………………44
FUJITSU TEN TECHNICAL REPORT
Dec. 2010 Vol.28 No.2
PREFACE
Innovation Emergence ................................................................................................. 1
Takashi SHIGEMATSU
PAPERS
Platform Concept for Global Expansion
First article: Development of AVN for 2010 Autumn Model for Japanese Market ........... 3
Takashi EGUCHI
Junji ONISHI
Fumitake NAKAMURA
Kazunari MIZOWAKI
Toshihito SAWAI
Multi Angle Vision™ System to supplement Driver's Visual Field ................................. 12
Seiya SHIMIZU
Susumu TANIGUCHI
Tadashi KIDENA
Hiroshi YAMADA
Masahiro YAMADA
Compact and High-performance Millimeter-wave Antennas ........................................ 19
Yoshihide UEZATO
Hiroaki YOSHITAKE
Masayoshi SHONO
Masahiko FUJIMOTO
Toshiki YAMAWAKI
Study of In-vehicle Sound Field Creation by Simultaneous Equation Method................. 26
Kensaku FUJII
Isao WAKABAYASHI
Tadashi UJINO
Shigeki KATOH
NOTE
HIL Simulator "CRAMAS" for ITS Application .............................................................. 33
Akira MARUYAMA
Seigo TANAKA
Takeshi YAMASAKI
INTRODUCTION OF PATENTS .................................................................................. 37
INTRODUCTION OF PRODUCTS ............................................................................... 44
巻 頭 言
イノベーション勃発
Innovation Emergence
代表取締役社長
重松
崇
Takashi SHIGEMATSU
リーマンショックから2年。新興国のリードもあって自動車産業の
立直りは順調に見える。しかし、その再浮上の状況は予想を超えた
環境変化を伴いながら、さらに加速している。
その変化のなかで我々に関わるものとして、スマートフォンに代
表されるネットビジネスの拡大と中国市場の膨張が挙げられる。何
れも歴史に残る偉大なイノベーションである。アップルは自由参加
のアプリ市場を公開し、お客様への付加価値を増大させながら紐付
けした自社ハードを世界中に売っている。中国では自由経済の考え
方を基に市場開放を図る一方、政府の強い指導でお金と技術を自国
に誘導している。
両者とも、自らの強みである パソコン関連の情報処理技術力
や 世界最多の人口と資源 などを最大限に活かした戦略で市場を
席巻した。当面は、この環境を是としつつ新たな方向性を模索する
ことになるだろう。
両者ほどの拡がりではないが、当社もAVNという商品で新しいビ
ジネス領域を創造してきた。また、長年培ってきたミリ波レーダ技
術も高いポテンシャルを持っている。今後、この種のイノベーショ
ンにつながる 変革のネタ作り を社内で浸透させるにはどういう
環境が必要になってくるだろう。このテン技報のあり方も含め、将
来の会社の成長を左右する重要なキーになると思われる。
一般的にイノベーションとは、公的機関や企業が知識や技術・ノ
ウハウを新製品・サービスに転換し、お客様価値を創造するプロセ
スと定義されている。「何が自社の強みか」を明確にした上で、その
強みから「どんな商品・サービス」を提供すれば良いかを考えねば
ならない。また、実現するものはお客様にとって「真に価値あるも
のか」を冷静に評価する必要もある。
1
このプロセスは至極当然のようで実行は難しい。期限が迫った仕
事では、まず、体を動かすことで安心してしまい、結局、期待外れ
な結果になる場合も多い。営業から開発・生産まで 何かを企画
するときは、このプロセスを確実に実行し徹底的に考え抜く習慣を
共有すること。曖昧なままで実行フェーズに移らず、納得できる結
論が得られるまで熱い議論を戦わして欲しい。 考えること が知識
社会で価値を生む 唯一の方法 であることを認識しなければなら
ない。
今回のテン技報でも4〜5件の論文が紹介されており、上記のプロ
セスを通して、これらの技術が大きなイノベーションにつながるこ
とを期待している。
一方、イノベーション活動を後押しするマネジャーの役割も重要
である。
一つは開発者の 出てきた芽を大きな事業につなげたい と志す
気持ちを共有すること。概して同じ分野で経験を積んだマネジャー
は商品化の課題を先読みし、アイデアに対して否定的になり易い。
特に先行フェーズでは 光る部分 を共に探していく姿勢が重要で
ある。
二つ目は有望な担当者をアイデアが出易い環境に置くこと。接す
る人材や専門知識の多様性が高く、かつ、それらへのアクセスも容
易な環境であれば 考える姿勢 が自律的に強化される。
アップルや中国の例でも、イノベーション自体は新技術のみに当
てはまるものではない。むしろ最近のデジタル機器が起こす新商品
はイノベーションに至る前に普遍化されてしまい、高度な技術を導
入している割に、お客様へのインパクトは余り大きくない。
真似されない技術、感性に訴える商品、他社が抜け出せないビジ
ネスモデルなど、テンの将来を支える若い人材からのイノベーショ
ン勃発に期待したい。
2
世界展開を考えたAVNプラットフォーム構想
〜第一弾:10秋国内市販AVNの開発〜
Platform Concept for Global Expansion
First article: Development of AVN for 2010 Autumn Model for Japanese Market
要
江
口
高
史
Takashi EGUCHI
尾
西
淳
司
Junji ONISHI
中
村
文
武
Fumitake NAKAMURA
溝
脇
一
成
Kazunari MIZOWAKI
澤
井
利
仁
Toshihito SAWAI
旨
国内市販ナビ市場は、低価格帯のAVNが販売を伸張してきており、今後も伸張すると予測される。一方、海
外のナビ市場も、スッキリスマートに取り付くAVNタイプの需要が増えてきている。
そこで当社は、2008年秋に投入した『AVN Lite』で培った技術をブラッシュアップし、競争に勝てるコスト
実力を持ち、地域最適を実現するグローバル展開モデルの企画・開発を進めてきた。
本論文では、商品概要(第一弾の10秋国内市販)、世界展開プラットフォームに求められる要件と具体的な実
現方策について紹介する。
Abstract
In Japanese car navigation system market, the sales of low-priced AVN have been growing and they are expected to continue to grow in the future. On the other hand, in overseas car navigation system market, the demands
for AVN to be installed neatly and smartly have been increased.
Hence, Fujitsu Ten has brushed up the technology cultivated in "AVN Lite" that we launched in autumn
2008, has improved a cost-competitiveness to beat our competitors, and has promoted planning/development of
models for global expansion that realizes an area optimization.
In this article, we introduce a product outline (the first article: 2010 autumn model for Japanese market),
requirements and concrete realized measures on the platform for the global expansion.
3
富士通テン技報 Vol.28 No.2
1.はじめに
1
そのグローバルプラットフォームには、世界各国で共通
はじめに
して求められるニーズ(例:高画質ディスプレイ…)とそ
現在の国内市販市場ではカーナビの販売台数は増加傾向
れぞれの仕向け地やお客様によって異なるニーズ(例:地
にあり、PND(パーソナル・ナビゲーション・デバイス)
上デジタルTV/日本、デジタルラジオ/米国、RDS/欧
の普及により低価格化が進行し、PNDとAVN(インス
州…)が存在し、その両方を満たさなければならない。
トールタイプの一体型ナビゲーション)の2極化が鮮明に
なってきた。また、AVNとしても10万円以下の低価格モ
つまり、グローバルプラットフォームとして求められる
要件としては以下の通りとなる。
デルへ需要はシフトしてきている(図1)
。
〈お客様視点〉
(千台)
PND
AVN(10万円以下) AVN(10万円以上)
2,500
・基本である高音質&高画質化
・好みや車室内環境に応じて細かな音質調整ができる
・PCオーディオコンテンツへの対応(MP3/WMA)
2,000
・各国のラジオ放送方式への対応
・楽しい、わかりやすいHMI(アニメーション表示など)
1,500
〈設計/作り方視点〉
1,000
・要求仕様に応じて機能変更が容易なシステム
500
・作りやすいメカ構造
・グローバルでアプリ開発ができるソフトウェア
0
'07
'08
'09
'10
'11
上記要件を成立させるためのシステム、電気、メカ、ソ
図1 国内市販カーナビ市場推移(台数)
Fig.1 Transition in Japanese Car Navigation Market (Sales Volume)
フトウェア構造についての具体的な実現方策は第2章で述
べることとし、第一弾の適用製品となる10秋市販向け
海外市場については、PNDがナビ市場を牽引し販売台
AVN 110Mの機能および特長について紹介する。
数を大きく伸ばしてきている影響を受け、AVNタイプも
着実に販売台数を伸ばし一定の市場規模を築いており、今
1.1 AVN 110Mの紹介
2008年秋、【安心・カンタン・楽しさ】をキーワードに
後のポテンシャルは大きい(図2)
。
『ナビを使っていないお客様』をターゲットにしたAVN
(千台)
7,000
Liteを発売。これは目標販売台数の2倍を越える大ヒット
西欧
米国
中国
商品となり、08年秋以降に発売された市販AVNの10台に1
その他
台がAVN Liteという画期的な商品になった。
6,000
2010年秋、このコンセプトを継承し、さらにブラッシュ
5,000
アップした商品がNew AVN Liteである。
4,000
《もっと「見やすい、使いやすい」》
・ワイドQVGAディスプレイ&LEDバックライト
3,000
・使いやすさを追求したGUI(図3)
2,000
《もっと「しっかりナビ」》
1,000
・複数目的地に対応し、カンタンに最大5箇所の目的地を
設定可能
0
'08
'09
'10
'11
'12
図2 海外AVN市場推移(台数)
Fig.2 Transition in Overseas AVN Market (Sales Volume)
以上の背景から、ワールドワイドでAVNに対する需要
が高いことが読み取れるが、共に「低価格化」という大き
な命題が存在し、さらにスピーディな商品展開を見据えた
場合、世界展開を考慮したプラットフォームが必要である。
4
・FM-VICS専用チューナーによるFM-VICS常時受信を
実現
世界展開を考えたAVNプラットフォーム構想 〜第一弾:10秋国内市販AVNの開発〜
2.1 システム構成
従来製品は機能ごとに複数のCPUを搭載することによ
り、CPU負荷の分散を行い、高機能を実現していた。しか
し、各地域からの各種要求仕様を満足しつつ、基本性能を
維持、向上しながらコスト低減を行なうためには、従来製
品の考え方を踏襲したシステムでは成立しないことは明白
であった。
今回は複数のLSIやCPUにて分散処理していたシステム
構成を見直し、1CPUをベースとした三つの構成要素から
〈大好評のナビ+AVの二画面表示〉
成り立つシステムに変更した(図4)
。
①コア部はメインCPUを核にグローバル視点で要求される
機能に対応できるI/Oインターフェースを準備し、変え
ない領域。
②共通部は地域やお客様ごとに変わらない機能を実現す
るために必要なデバイス(GPS、デッキなど)を配置す
る領域。
③固有部は地域やお客様特有の機能を実現するために必要
なデバイス(車載LAN、TV受信など)を配置する領域。
以上により、派生機種を展開する場合は③固有部の機能
〈よく使うボタンを大きく表示〉
図3 表示画面
Fig.3 Display Screen
開発に注力することが可能となり、開発期間の短縮が実現
できる。
CPUは要求される機能から必要要件を求め、スペックを
満足するデバイスを新規に採用した。しかし、CPU単体で
《もっと「楽しいAV機能」》
は周辺デバイスなどとのインターフェース(IO)が不足
・音質調整機能をグレードUPし、カンタンに自分好みの
するため拡張用IO-ASICを開発した。
音質に調整可能
IO-ASICでは不足しているアナログポートやシリアル
・USBメモリによる音楽再生機能を搭載し、メディア対
ポートを拡張すると共に、従来はソフト処理で行ってい
応力をUP
たタッチパネル制御やキースキャン制御、その他向け先
さらに、法人ユースモデルも同時開発。
ごとに異なる個別機能を内蔵することでCPUの負荷低減
個別仕様変更対応(ワンセグの視聴制限機能)やレンタ
を図った。
カーユースでニーズが急速に高まっている外国語(英語)
にも対応したモデルとなっている。
共通部
コア部
GPS
2
2. システム構成の概要
システム構成の概要
世界展開を想定した製品を開発するためには、向け先や
お客様の要求機能に対応でき、かつ安価なシステム構成に
する必要がある。
SDカード
GYRO
車速パルス
カメラ
メモリ
ステアリング
タッチパネル
キースキャン
ユーザの重要な購入動機となっており、コストパフォーマ
TFT
(480*272)
Radio部
IO-ASIC
USB・IPOD
廉価モデルであっても高画質・高音質といった要素は
TV部
交通情報
メインCPU
CDデッキ
固有部
車載LAN
電源監視
ンスに優れた製品を提供する必要がある。
本章では、AVN 110Mのシステム構成やハード設計に
ついて、以下四つの点を紹介する。
図4 システム構成図
Fig.4 System Configuration Diagram
・システム構成
・映像部の構成
・ラジオ・音声部の構成
・ノイズ対策のフロントローディング化
5
富士通テン技報 Vol.28 No.2
A/Dデコーダ
(NTSC/PAL デジタル信号
両対応)
キャプチャ
描画合成
デジタルRGB
(24bit)
ワンセグ
デコーダ
TS信号
ワンセグIC
CPUコア部
映像処理
IC
(色合い、
色濃さ調整)
デジタル
LVDS
(24bit)
デジタルTFT
480dot*272dot
LEDバックライト
図5 映像部のブロック構成
Fig.5 Block Configuration of Video
本プラットフォームでは世界展開と音質向上を狙い、ラ
2.2 映像部の構成
本プラットフォームでは従来モデルからさらなる高画質
ジオ・音声部のブロック構成を決定した(図8)
。
化(鮮やかさの向上、くっきり感の向上)を実現するため、
下記2点に対応できる構成とした(図5)
。
〈全世界Radio方式への対応〉
向け先毎の仕様差にソフト変更で対応することが可能な
〈フルカラーデジタル伝送〉
映像処理のフルカラー化(24bit処理)は、CPUから減
色処理を行わずTFTまで24bitでデジタル接続することに
より表示可能色を従来比61倍にUPし鮮やかさの向上がで
きた(図6)
。
デジタルチューナを採用した。また、拡張用デバイスをア
ドオンすることで海外のデジタルラジオ放送や交通情報
サービスに対応できるよう考慮した。
〈音声のALLデジタル化〉
DSPとラジオのベースバンド処理を統合したデバイスを
採用し、ラジオ,CD,USB,IPODをALLデジタルでDSP
〈デジタルTFT〉
デジタルTFTの新規採用により、AD変換時に生じる誤
へ接続した。さらにDSPでは各種音質調整処理を行い、
差をなくし、色にじみのないくっきりした表示を実現でき
24bitDACにてアナログ信号に変換することにより従来に
た(図7)
。
比べて音質向上が図れた。
また、バックライトにはLEDの採用により、鮮やかさの
VICS
向上とともに水銀レスと大幅な省エネを実現し、環境への
拡張部
CPU
取り組みも行った。
フルカラー映像処理
鮮やかさ
向上
CD
USB・IPOD
DSP
ラジオ
(ベースバンド処理)
RF
RF
デジタル信号
アナログ信号
制御信号
DAC
(24bit)
ラジオ・音声部
図6 フルカラー映像処理(イメージ)
Fig.6 Full-color Video Processing (Image)
図8 ラジオ・音声部のブロック構成
Fig.8 Block Configuration of Radio/Audio
Full Digital伝送
2.4 ノイズ対策のフロントローディング化
今回の開発は大幅なプラットフォーム変更であり、製品
くっきり感
くっきり感
向上
向上
のノイズ解析を短期に解析対応することが重要なポイント
であった。
図7 フルデジタル伝送(イメージ)
今回はCAD基板データによるシミュレーション解析お
Fig.7 Full-digital Transmission (Image)
よび実機による最適化シミュレーション検証を実施した。
2.3 ラジオ・音声部の構成
ラジオは各国で方式が異なるため、世界展開を考慮する
と共通化が非常に難しく、欧米ではHD-RadioやDAB、
RDS/RDS-TMCへの対応が必須である。
6
〈基板設計段階:電源インピーダンス解析〉
ノイズ低減には電源ラインのインピーダンスを下げるこ
とが有効な手段であり、今回の着眼点とした。
CADデータから電源インピーダンスシミュレーション
世界展開を考えたAVNプラットフォーム構想 〜第一弾:10秋国内市販AVNの開発〜
解析を実施し、パスコンの配置配線の最適化を行った。
初期データの1.5GHz帯において、信号線インピーダン
スが100Ω付近にあったが、対策により10Ω付近に安定し
たインピーダンスとなった(図9)
。
【対策前】
【対策前】
【対策後】
図11
製品輻射ノイズ(UHF帯)
Fig.11 Product Radiation Noise (UHF)
【対策後】
3
3. 構造設計の概要
構造設計の概要
図9 電源インピーダンス
Fig.9 Power Source Impedance
本章では、製品内機プラットフォーム構造の取り組みに
ついて紹介する。
〈試作段階:伝送線路解析及び電源GND共振解析〉
1次試作では基板単体による伝送特性解析および電源
GND共振解析を実施し、ノイズ源パターンシールディン
グ、最適VIA配置、信号間クロストーク改善パターンを2
〈従来構想の振り返り〉
2009年度までの開発機種の内機プラットフォーム構想は
積上げ構造を採用してきた(図12)
。
積上げ構造とは、TILTメカのベースシャーシを土台に、
ホルダと基板を交互に配置するようなレイアウトで部品を
次試作に反映した(図10)
。
積上げ、最上段にデッキを載せて、最後に筐体で周囲を覆
うことで製品完成状態となる構造である。
積上げ構造のメリットは、製品を回転させる必要がない
GNDベタ強化
ため、ラインの自動化に向いており、国内のロボットセル
生産システムを導入する場合は非常に生産性が高い。
その反面、デメリットとして、内蔵物が完全に積上げ方
式で構成されるため、基板を保持するために基板枚数分の
VIA追加
ホルダが必要となり、部品点数が多くなり(=ネジ本数が
多くなる)、マニュアル生産の場合は、組立工数が多くな
り、加工費が高くなる。
図10
パターン反映例
Fig.10 Example of Pattern Reflection
結果、UHF帯の輻射ノイズを全体的に5〜10dB低減する
ことができ、2次試作段階でノイズ基準を達成できたこと
により、検討工数の約30%削減につながった(図11)
。
7
富士通テン技報 Vol.28 No.2
3.2 ネジ本数削減と前板削除への取り組み
本プラットフォームでは、積み上げ構造と同等の強度を
従来モデル
維持した上で、ネジ本数の削減、軽量化を実現するため、
構想段階で応力シミュレーションを用いた構造の最適化を
行った。
まず、ネジについてはCAE解析上で60G相当の衝撃荷重
積
み
上
げ
構
造
図12
を加え、各ネジについて引張り・せん断応力シミュレー
ションを行い(図14)、不要な締結を廃止、また締結を共
用できる部位については可能な限り共締めを行うなど、ネ
ジの最適配置を実施した。
現行AVN Lite分解図
Fig.12 Exploded Diagram of Current AVN Lite
〈世界展開を見据えた新プラットフォーム〉
今回の110Mをベース開発とし、生産方法(海外拠点)
に合わせた『作りやすさ』と『低コスト』を追求した内機
プラットフォーム構想を考え、
図14
・コストダウン 目標▲30%
・部品点数削減 目標▲30%
・ネジ本数削減 目標▲30%
・軽量化
目標▲20%
衝撃シミュレーション
Fig.14 Impact Simulation
筐体についても同様に、60G相当の衝撃荷重を想定し、
筐体表面の応力分布を見ながら適正な板厚の選定や形状の
を開発目標に掲げ、構想設計を行った。その主な取り組み
最適化を行い、形状変更によるデッキの耐振性への影響が
事例を以下に紹介する。
懸念されるため、耐振性シミュレーションも並行して実施
した(図15)
。
その結果、構造的に前板削除が可能となった。
3.1 省スペース化設計
まず、商品企画部門にて今後3年間の派生機種展開計画
と必要機能を抽出してもらい、各向け先の機能精査により、
電気部門にて基板の必要面積の算出を行った。基板の基本
構成としては、オーディオ基板、CPU基板の2枚とし、一
つのホルダに表裏で固定することで、省スペース化を図っ
た(図13)。その結果、拡張機能に関しては追加基板の搭
載スペースを予め確保することができ、基本構造に変更な
しで追加機能への対応を可能にした。
CPU基板
オーディオ基板
拡張基板配置スペース
図15
デッキ耐振性シミュレーション
Fig.15 Deck Vibration Resistance Simulation
図13
基板ASSY
Fig.13 Printed Wiring Board ASSY
8
世界展開を考えたAVNプラットフォーム構想 〜第一弾:10秋国内市販AVNの開発〜
表1 AVN LiteとAVN 110Mの比較
前板削除による車両側へのANTノイズ輻射への影響が
Table 1 Comparison between AVN Lite and AVN 110M
懸念されていたが、前述の基板ノイズシミュレーションに
合わせて、製品ノイズシミュレーションを実施し、試作製
作前段階で品質の作り込みを実施した(図16)
。
目標
AVN Lite
110M
結果
部品点数
▲30%
24
15
▲37.5%
ネジ本数
▲30%
71
39
▲40.5%
内機重量
▲20%
2912g
2290g
▲21.3%
4. ソフトウェア構造
4
ソフトウェア構造
世界展開のためには、全世界のあらゆる地域にAVNを
展開することを考えなければならない。つまり、あらゆる
向け先や地域に合わせた仕様の多様化へ対応する必要があ
る。膨大な数の機種に対応するため、AVN Liteの系列機
種のみならず、他の機種も含めた各機能の載せ換えを行い
図16
製品ノイズシミュレーション
Fig.16 Product Noise Simulation
やすい構造とし、工数をできる限り押さえる必要があった。
図18にソフトウェアの構造を示す。
本章では、多種多様な機種や仕様への対応のために行っ
その他、温度シミュレーションも合わせて実施し、コン
カレントに進めていくことで、短期開発かつ品質のフロン
たソフトウェア構造の変更点のうち、3点を取り上げて説
明する(図18の赤枠)
。
トローディングを実行できた。
上述の内容を主な活動として構成部品の持つべき機能を
4.1 共通I/F
最小限に抑えながら、プラットフォーム構想を見直すこと
まず、各アプリが利用するOS(Operating System)の
によって、コストダウンを達成できた。また、追加機能に
リソースを操作する「共通I/F(Inter Face)」を設けた。
対する変更規模を抑えることによって派生機種開発設計工
こうすることにより、各アプリのOS依存性を低減し、他
数の抑制を実現できた。図17にAVN 110Mの内機構成図
のOS上で動作するアプリを移植しやすい構造とした。次
を示す。
に、I/Fの共通化のため、OSなどの差異を吸収する「機種
依存層」を設けた。
このように、他機種も含めたソフトウェアの共通化を図
る構造を目指した。
主な変更箇所
Flashコンテンツ
(HMI)
Flashエンジン
Navi
ワンセグ ラジオ
CD
USB
iPod
共通I/F
機種依存層
図17
AVN 110M内機構成図
Fig.17 Inside Structure of AVN 110M
開発当初に掲げていた目標値に対して、表1に示す結果
Windows Automotive5.5
File System
DirectShow
DirectDraw
Error Handling Ready Guard GDI-sub
になった。
図18
ソフト構成と主な変更箇所
Fig.18 Software Configuration and Main Changed Points
9
富士通テン技報 Vol.28 No.2
4.2 Flashエンジンの採用
きなかった動作を事前に確認できる上、ソフト開発の工数
4.2.1 アニメーション対応
も削減できると期待できる。
従来は当社独自の描画フレームワーク(以下、F/W)
<現状>
によりHMI(Human Machine Interface)を構築してきた。
しかし、世界展開に伴う多仕様化のため、従来の描画
F/Wでは限界に達していた。そこで、アニメーションな
仕
様
デザイン/遷移仕様
釦パーツデータ
表示位置(座標)
画面遷移仕様書
ど、よりリッチなHMIを開発するため、Flash Liteコンテ
ンツを再生できるエンジン(ACCESS社製NetFront
FlexUI)を搭載した。
Flashエンジンの採用により、従来機種(2009年モデル
以前AVN-Lite)では困難であったアニメーションを容易
に実装できるようになり、かつ、スムーズなアニメーショ
ンが可能となった。図19は「ナビの地図表示とラジオの
ソ 画面設計
フ
ト
設
計 コーディング
<今後>
Flashで画面と遷移
を作成(動く仕様書)
Flashデータ
遷移設計
画面設計 遷移設計
コーディング
コーディング
コーディング
マルチ画面表示」と「ラジオの全画面表示」の切り替え中
の画面である。このように従来では表現できなかったアニ
メーション中の描画も可能となった。他にもポップアップ
図20
開発プロセスの変化
Fig.20 Change of Development Process
で表示されるコーション画面の表示や再生時間のカウンタ
などにもアニメーション効果を持たせている。
4.3 Windows®の採用
世界展開を狙い、ソフトウェアのプラットフォームも従
来のiTRON OSから汎用OSへと転換する必要があった。
iTRONは日本では最も普及しているOSであるが、海外で
は異なる。世界展開を考えた場合、海外で、より普及して
いるOSへの置き換えが必要であった。特に、各国・各地
域に対応したナビゲーションアプリ(以降、単にナビアプ
スライドIN/OUT
IN/OUT
リと記載する)を各地域に合わせて搭載するため、入れ替
えが可能なプラットフォームへの転換が必須であった。そ
こで、PDA(Personal Digital Assistant)のOSとして最
図19
アニメーション例
Fig.19 Example of Animation
も普及しているWindows® CEをベースとした車載向けOS
「Windows® Automotive5.5(以降、WA5.5と記載する)」
を採用した。
4.2.2 開発プロセスの変化
Flashエンジンを採用することにより、アニメーション
ができるようになっただけではなく、開発プロセスにおい
ても、見直しが可能となった。
図20に見直し前後の開発プロセスを示す。
現状は、企画部門にて画面仕様や画面遷移仕様を作成し、
ソフト開発部門へ提供される。しかし、全ての企画部門の
また、Windowsなどの汎用OSを採用するには他にもメ
リットがある。
・多彩なミドルウェアを標準搭載している
(File System、MP3などのデコーダ、通信機能、など)
・開発メーカが多い
世界展開を図る上で、お客様のニーズに合った機能をス
ピーディに搭載できる可能性を持つことを示す。
思いを仕様書に込めることはできないため、現状では、画
面遷移や画面デザインを実際に組み込んだ後に変更しなけ
4.3.1 Windows移行時の課題
ればならないケースが多々ある。今後、Flashを採用する
一般組み込み用のWindows® CE 5.0では、起動が非常
ことにより、ツールを使えば誰でも画面とその遷移をPC
に遅く、車載には向かないと考えてきた。しかし、WA5.5
上で作成できるようになるため、企画部門にて画面デザイ
では、高速起動のソリューションが提供され、この問題は
ンと画面遷移仕様を織り込んだFlashファイルを作成する
解消された。ただし実装については課題があり、開発開始
ことが可能となる。つまり、動く仕様書の作成が可能とな
当初この課題への検討時間を十分に取る必要があった。
る。ソフト開発部門はこのFlashデータをもとに、釦押下
WAの高速起動のソリューションとしてまず挙げられるの
時の動作などを組み込むことにより、製品の機能を実装す
はReady Guard(以下、単にRGと記載する)である。こ
ることができ、従来は実際に製品に組み込むまでは確認で
こでは、RGの仕組みを説明する(図21)
。
10
世界展開を考えたAVNプラットフォーム構想 〜第一弾:10秋国内市販AVNの開発〜
起動すると、まずはRG OSと呼ばれる最少構成のOSが
5
高速に起動する(図21-a)。ここで、最低限起動しなけれ
5. おわりに
おわりに
ばならないモジュールを起動することができる。当社では
今回、良品廉価AVNについて、地域性やお客様の要求
さまざまな検討をした結果、車載LAN通信機能やマイコ
に基づき性能や機能の整理を行い、世界展開できるプラッ
ン間通信機能、電源制御機能などを起動することとした。
トフォームを開発することができた。
次に、RG OSの動作中に平行してMAIN OSを起動する。
MAIN OSの起動の準備が整えばMAIN OSへ切り替わる
(図21-b)。この際、RG OS上で動作していたプロセスは
今後、車載機単体だけではサービスができなかった車両
や各種情報センターとつながりを持つ製品に進化発展させ
ることにより、お客様の利便性を高めていきたい。
MAIN OSへ引き継がれRG OSは停止する。このように、
最後に本プラットフォーム開発にご協力いただいたソフ
高速で起動させなければならない機能についてはRG OSに
トウェア、デバイスメーカ様の方々に心より感謝とお礼を
て起動し、ナビアプリなど後から起動してもよいプロセス
申し上げます。
はMAIN OSで起動させることにより高速起動を実現して
いる。
〔a〕 Process 1
Threads
Process 2
Process 3
Threads
Threads
Ready Guard OS
MAIN OS
Ready Guardから
MAINへ切り替え
〔b〕 Process 1
Threads
Process 2
Process 3
Threads
Threads
切替
Ready Guard OS
MAIN OS
図21
高速起動の仕組み
Fig.21 Structure of High-speed Start-up
筆者紹介
江口
高史
(えぐち
たかし)
2003年入社。以来、AVNのシ
ステム設計を経て・AVNの先
行開発に従事。現在、製品統括
本部 先行企画統括部 技術企
画部に在籍。
溝脇
一成
(みぞわき
かずなり)
2001年入社。技術開発部門を経
て、2006年よりAV製品のソフ
ト開発に従事。現在、ソフト
ウェア技術本部 CIソフト統括
部 第一ソフト技術部に在籍。
尾西
(おにし
淳司
じゅんじ)
2005年入社。以来、AVNの機
構開発に従事。現在、CI・第一
技術本部)機構技術部に在籍。
澤井
(さわい
中村
文武
(なかむら
ふみたけ)
2003年入社。以来、ナビ・オー
ディオ関連商品の商品企画業務
に従事。現在、製品統括本部
第一製品統括部 アフターマー
ケット推進部に在籍。
利仁
としひと)
1981年入社。以来、音響機器の
開発を経て、AVNの開発に従
事。現在、製品統括本部 先行
企画統括部 技術企画部長。
11
ドライバーの視界補助を行なう
Multi Angle Vision™ システム
Multi Angle Vision™ System to supplement Driver's Visual Field
清
水
谷
口
貴傳名
要
山
田
山
田
誠
忠
正
也
Seiya SHIMIZU
奨
Susumu TANIGUCHI
司
Tadashi KIDENA
浩
Hiroshi YAMADA
博
Masahiro YAMADA
旨
近年、バックモニタを中心にドライバーの視界補助を目的とした車載カメラシステムの市場ニーズが高まっ
ている。さらに縦列駐車などの簡便化を狙い、四つの魚眼カメラを用いて上空から見下ろした映像(俯瞰映像)
をドライバーに提供するシステムが相次いで製品化され、技術的にも新たな進化を見せている。
従来のシステムでは、限られた視点・エリアしか映像表示できないため、利用シーンに制約があった。
そこで我々は、 3次元仮想投影視点変換技術 を用い、車両付近は路面平面上に周囲は湾曲面上にカメラ映
像を合成することにより、立体映像を実現した周辺監視システム Multi Angle Vision ™ を開発した。
本システムは車両周辺を立体的な俯瞰映像で見たい視点から表示できることが特徴であり、駐車時や走行時
などさまざまな利用シーンに合わせたカメラ映像を提供でき、ドライバーの視界補助に大きく貢献可能となっ
た。また、夜間など低照度時に視認性の悪い車両側方に対し、近赤外LED照明を採用することで夜間の視認性
を確保し、昼夜問わず車両全周囲の視界補助が可能となった。
Abstract
Recently, the market needs has grown for the vehicle-mounted camera system to supplement driver's visual
field, mainly those for back monitors. Moreover, the technologies for the system are advancing. Among them,
one technology provides images of downward view from the sky (bird's eye view images) to drivers by using four
fish-eye cameras, for easy parallel parking, etc. Products using this technology have been commercialized one after
another.
The conventional system was useful only in limited scene because it could provide images of limited areas and
from limited angles.
With "the 3-D virtual projection viewpoint conversion technology," we developed "Multi Angle Vision™,"
which is a surrounding monitoring system that combines video images into 3-dimensional images with the area
near the vehicle displayed onto a plane representing the road, and the surrounding area distant from the vehicle
onto curved surface.
This system is characterized by displaying images of the surroundings of the vehicle in 3-dimensional bird's eye
view from any arbitrary angle according to driving scene such as parking, and greatly contributes to supplement
driver's visual field. Moreover, the nighttime visibility is ensured for the right and left sides of the vehicle where
visibility is poor when the illumination intensity is low, e.g. in the nighttime, by adopting a near infrared LED
lighting system, which allows drivers to see entirely around their vehicles even in the nighttime.
12
ドライバーの視界補助を行なう Multi Angle Vision™ システム
1
1.はじめに
はじめに
2.2 ドライバーへの視界補助に対する課題
前節で紹介した車載カメラシステムは、いずれもドライ
近年、車両にカメラを取付けドライバーが直接確認でき
バーが直接確認できない死角部分の状況を映像で知らせる
ない車両周辺状況をカメラ映像で視界補助する車載カメラ
ことで、運転時に抱える 車両周辺に何かあるのではない
システムが急速に普及している。最近では、カメラ1台に
か という不安要素を取り除くことを目的としている。一
よる視界補助システムだけでなく、複数台のカメラを組み
般的にドライバーが運転時に感じる不安要因として次の三
合わせてより広い範囲の視界補助を行う製品が相次いで発
つがある。
表されるなど技術進歩を見せている。
今回、我々は車両の全周囲をさまざまな視点から立体的
な俯瞰映像として表示する 世界初 のドライバー視界補
①車体構造による視界制限
…車両のボディやピラーなど
②車両周辺の障害物による視界制限
助システム「マルチアングルビジョン™」を開発した。本
…建物、車両、歩行者など
論文では、マルチアングルビジョン™の概要ならびに要素
③人間の視界特性による制限
技術について紹介する。
2
2. 開発の背景
開発の背景
2.1 車載カメラシステムに対する市場ニーズ
…一度に周囲360°を見ることができないなど
実際の利用シーンでは、これらの要因が複合的に存在し
ドライバーの安全運転を阻害する。このため、車載カメラ
システムには、これら全ての要因を取り除けるようなもの
近年、車載カメラシステムはバックモニタ用途を中心に
が求められるが、従来のシステムでは十分対応できていな
ニーズが高まっている。例えば、米国では2008年2月に車
い。例えばバックモニタやブラインドコーナーモニタの場
両後方の視界確保を義務付ける法案「Cameron Gulbransen
合、各システムの利用を想定しているシーンにおいて車両
Kids and Cars Safety Act of 2007」が可決されている。ま
ボディによる死角や車両周辺の障害物によってできる死角
た、日本では2007年に車載カメラの出荷台数が400万台を
部分を映像で見せドライバーの視界補助を行なっている。
越えるなど、ドライバーの視界補助を行う車載カメラシス
しかし、あくまで車両の後方や壁の向こう側といった死角
テムが急速に普及している。最近では女性ドライバーや高
を部分的に見せているに過ぎず、人間の視界特性による要
齢者ドライバーが増えてきているため、車載カメラシステ
因をカバーするという点では、サポートするには至ってい
ムへのニーズは今後より高まっていくと考えられる。
ない。また俯瞰映像システムの場合、車両を上空から見下
ろした映像で車両周辺の路面状況を一度に見せてはいる
従来の車載カメラシステムの例
が、固定された特定の視点からの映像しか表示できないた
・バックモニタ
め、ある限られたシーンでの利用に限られてしまう。この
車両後方に取付けたカメラで車両後方映像を表示し、後
ように従来のシステムでは、各システムがサポートを想
退時の視界を補助する
定している限られたシーンにおける車両周辺の死角を部
・ブラインドコーナーモニタ
分的に映像化し視界補助を行っているに過ぎず、ドライ
車両前端に取付けたカメラで車両前方映像を表示し、見
バーの視界特性まで含めたトータル的なサポートまで
通しの悪い交差点進入時の視界を補助する
至っていない。
・俯瞰映像システム
また、これらの要因に加えて夜間時のカメラ視認性低下
車両に取付けた4台のカメラで車両上空から見下ろした
への対策も重要である。昼間の明るい時間帯に比べ太陽が
映像を表示し、縦列駐車時の視界を補助する
沈み暗くなる夜間では、カメラ映像も暗くなりカメラ映像
中に存在する障害物の存在に気づかない場合が出てくる
また、車載カメラシステムの種類もバックモニタのよう
(図1)。周囲が暗い状況下でも車両周辺に存在する障害物
な1台のカメラを用いたシステムだけでなく、4台のカメラ
をきちんとカメラで捉えることができるよう対策をする必
を使い車両上空から見下ろした映像で車両周辺の道路状況
要がある。
をドライバーに見せる俯瞰映像システムがさまざまなメー
カーから相次いで製品化されるなど市場ニーズの高まりと
共に技術進歩を見せている。
13
富士通テン技報 Vol.28 No.2
マルチアングルビジョン™ 専用カメラ
昼間
水平画角190°
サイドカメラ:近赤外線LED内蔵
夜間
図1 昼間と夜間のカメラ映像の違い
Fig.1 Difference in Camera Image Brightness between
in Daytime and in Nighttime
今回、車両ボディや車両周辺の障害物によって生じるド
ライバーの死角部分に対する視界補助に加え、ドライバー
の視界特性までカバーする視界補助システム「マルチアン
グルビジョン™」を開発した。マルチアングルビジョン™
では、車両全周囲360°をさまざまな視点から見ることが可
能となっているため、乗車から走行までトータルにサポー
ECU
3次元仮想投影視点変換技術 を使い合成
ト可能な視界補助システムとなっている。
3. 視界補助システム「マルチアングルビジョン™」の要素技術
3 視界補助システム「マルチアングルビジョン™」の要素技術
AVN
(マルチアングルビジョン™対応)
3.1 マルチアングルビジョン™の概要
マルチアングルビジョン™とは、車両の前後左右に取付
けた4台の専用カメラで撮影した車両周辺映像をECUで合
成し、車両周辺に存在するドライバーの死角に対し立体的
な俯瞰映像で視界補助する世界初のシステムである。
本システムは、専用カメラ4台、ECU1台、AVN1台で構
成される。4台の専用カメラで撮影した車両周辺映像を
ECUに集約しリアルタイムに映像合成を行なう。映像は
シーンに応じた映像を表示
図2 マルチアングルビジョン™の概要
Fig.2 Outline of Multi Angle Vision™
3次元仮想投影視点変換技術1) を使い3次元モデル上に合
成、シーンに応じた映像をAVNに表示しドライバーの視
界補助を行う(図2)
。
本システムでは、 3次元仮想投影視点変換技術 を使う
ことで車両全周囲360°を任意の視点から立体的な俯瞰映像
として見せることが可能となった。例えば、図3のように
自分の車両を中心に回しながら車両周囲の安全を確認する
画面や、図4のように後方から車両を見る画面など、従来
システムにない特徴的な映像が表示できる。他に本システ
ムで表示可能な画面を一部紹介する(図5・6)
14
ドライバーの視界補助を行なう Multi Angle Vision™ システム
一方で、カメラ取付けに関する精度は非常に細かい精度
が求められることとなった。これをクリアするためにカメ
ラを車両に取付けた際に キャリブレーション を行うこ
とで取付け時に生じる微小な取付け誤差を修正し、合成映
像にズレがないようにしている。
また夜間時のカメラ映像視認性低下に対し、夜間でも車
両周辺に存在する障害物をカメラで捉えられる様に 近赤
外LED照明装置 の開発を行った。この対策により夜間の
カメラ映像視認性を確保し、昼夜問わず車両全周囲の視界
補助を可能とした。
他にも、バージョンアップ用データの読み込み用として
ECUにSDカードスロットを搭載するなど今後の車種展開
に必要な機能を設けている。
以上、マルチアングルビジョン™の概要ならびにシステ
図3 車両周辺の安全確認に利用する映像
Fig.3 Image Used for Check Surroundings of Vehicle
ム構成について述べた。次節以降でマルチアングルビジョ
ン™を構成する重要な要素技術①3次元仮想投影視点変換
技術、②キャリブレーション、③近赤外LED照明による夜
間視認性向上技術を紹介する。
3.2 車両の全周囲を見たい視点から見せる
車両に取付けた4台のカメラ映像を 3次元仮想投影視点
変換技術 を使い合成する。 3次元仮想投影視点変換技術
とは、映像を3次元の立体モデルに投影したものを任意の
図4 見通しの悪い交差点で利用する画面
Fig.4 Image Used for Check at Intersection with Poor Visibility
視点から見た映像に変換する技術です。この技術を使うこ
とで、従来システムと大きく異なる映像を見せることを可
能とした。
従来の俯瞰映像システムの場合、4台のカメラ映像を2次
元平面上に画像変換・合成し俯瞰映像を生成している。こ
のため、車両周辺にある物体が伸びきった映像となってし
まい、また車両上空の特定の視点から見下ろした映像しか
表示できないなど、限られたエリア・限られたシーンのみ
での利用しかできなかった(図7)
。
図5 駐車時に利用する画面
Fig.5 Image Used for Parking
図7 2次元平面上への投影映像例
Fig.7 Image Example Projected on 2-D Model
図6 幅寄せ時に利用する画面
Fig.6 Image Used for Parking on Verge of Road
15
富士通テン技報 Vol.28 No.2
これに対し、本システムでは
周囲は湾曲面上
車両付近は路面平面上、
となるように設計された3次元モデル上
にカメラ映像を合成している(図8)
。これにより車両周辺
の物体が伸びきってしまうのを抑え、従来に比べ広いエリ
アの映像をドライバーに見せることを可能とした。また、
高速演算処理できるLSIを使用することで、ある視点での
見え方をリアルタイムに演算可能としている。このため、
従来タイプの車両上空からの俯瞰映像に加え、さまざまな
方向から車両周辺をドライバーに見せることが可能とな
り、幅広いシーンでの視界補助を実現した。
従来タイプの場合
マルチアングルビジョン™ の場合
図9 カメラ映像間の境界線表示例
Fig.9 Examples of Borderlines between Camera Images
また作業スペースや時間、機材の制約をできる限り緩和
した方式としている。例えば、マーカは各カメラで撮影で
きる場所であれば自由に置くことができるため、マルチア
ングルビジョン専用の作業スペースを確保する必要はな
い。作業に使用するアプリケーションはECUに内蔵、
AVNを通して作業を行なうことができるため、特別な機
材(パソコンなど)を新たに準備する必要がない。
3.4 夜間でもドライバーの視界補助を可能にする
夜間時、カメラ映像は暗くなり視認性が低下する。車両
の前後左右にカメラを取付ける車載カメラシステムの場
合、車両前後は車両に備わっている灯火装置により比較的
明るく撮影できるのに対し、車両側方は灯火装置がなく暗
さまざまな方向から車両周辺を確認可能
い映像しか撮影できない(図10)
。
図8 3次元モデル上への投影映像例
Fig.8 Image Example Projected on 3-D Model
前
後
左
右
3.3 カメラ映像の繋ぎ目をなめらかに見せる
システム搭載時に発生する微小なカメラ取付け誤差によ
り生じる映像ズレを修正するためにキャリブレーションを
行なう。キャリブレーションは、車両周辺に置いたマーカ
を各カメラで捉え各カメラの取付け情報(位置・角度)を
自動的に計算する。その計算結果を利用し合成映像上に生
じる微小な映像ズレを自動的に補正し各カメラ映像を違和
感なく繋ぐ技術である。
この技術を使うことで各カメラ映像同士をなめらかに繋
図10
夜間時のカメラ映像
Fig.10 Camera Images Captured in Nighttime
ぐことを可能とし、従来タイプでは表示されていたカメラ
間の境界線を、本システムでは無くすことが可能となった
(図9)
。
このような車両側方部が暗い映像を俯瞰映像に合成して
も、車両側方部が暗い俯瞰映像にしかならない。このため、
サイドカメラの視認性を確保できる照明装置を開発する必
要がある。今回、サイドカメラ用照明装置の開発で取組ん
だ内容を3点挙げる。
16
ドライバーの視界補助を行なう Multi Angle Vision™ システム
①不可視光である近赤外光を光源に使用
照明装置は自車ならびに他車の運転操作を妨げないよ
う不可視光である近赤外光を光源として使用した
②近赤外光を感じるカメラ
近赤外光を遮断するIRカットフィルタをカメラから除
去した
③照明装置の照射範囲は車両側辺一体
夜間に車両全周囲の視認性を確保するため、車両側
辺一体という広範囲を照射対象エリアに設定した
(図11)。
図13
夜間照明点灯時の各画面例
Fig.13 Example Images with Lighting System on in Nighttime
近赤外LED照明装置の照射対象エリア
図11
本システムにおける近赤外照明の照射範囲
Fig.11 Irradiation Area by Near Infrared LED Lighting of This System
4
4. ドライバー視点で考えられた画面仕様
ドライバー視点で考えられた画面仕様
4.1 シーンに応じた判りやすい映像
さまざまなシーンにおいて、より判りやすく使いやすい
画面となるようにドライバーの視点で考えている。例えば
これらの対策を行なうことで夜間でもサイドカメラの視
本システムのブラインドコーナーモニタは、車両前側方の
認性を確保し、昼夜問わず車両全周囲の視界補助を実現し
状況確認には従来同等の映像に車両を後方から見た映像を
た(図12)。また、照明装置の照射範囲を車両側辺一体と
同時に表示している。見通しの悪い交差点を右左折する場
することで特定画面のみの利用ではなく、本システムで表
合、車両前側方の状況確認と後輪の巻き込み確認が同一画
示できる全ての画面を昼夜問わず利用することが可能と
面で確認できる(図14)
。
なっている(図13)
。
前側方の状況確認
灯火OFF時
灯火ON時
巻き込み確認
図14
見通しの悪い交差点を左折時の利用画面
Fig.14 Images Used for Turning Left at Intersection with Poor Visibility
また、3次元の立体モデルを任意の視点から見た映像に
図12
灯火ON/OFFによる俯瞰映像の違い
変換できる特長を活かし、駐車時に使用する俯瞰映像の視
Fig.12 Difference in Brightness of Bird's Eye View Images
点角度をお客様の好みに応じて変更できる機能を搭載し
between with Lights on and with Lights off
た。ドライバーの好みに応じて視点を3段階切替えて使う
ことができる(図15)
。
17
富士通テン技報 Vol.28 No.2
視点角度設定画面
アルファードの場合
プリウスの場合
視点角度 0°
図16
車種に応じた車両CGの例
Fig.16 Example of Vehicle CGs according to Vehicle Model
5
5. おわりに
おわりに
今回、 3次元仮想投影視点変換技術 および 近赤外光
視点角度 30°
照明による夜間視認性向上技術 を用いることで、昼夜問
わずドライバーの視界をトータルにサポートする視界補助
システム「マルチアングルビジョン™」を開発した。今回
開発したマルチアングルビジョン™は、トヨタ自動車様の
アルファード、ヴェルファイア、プリウスの3車種におい
て2010年5月から販売店装着オプションとして製品化した。
図15
視点角度変換
本システムの開発により、さまざまな運転シーンにおい
Fig.15 Images at Different Viewing Angles
てドライバーに安心を提供し、更には車社会の安全に大き
4.2 搭載している車両に合わせた車両CG
く寄与することが可能だと考えている。今後は視界補助に
俯瞰映像の中心にある車両CGを搭載している車両の車
型・車体色に合わせて変更できる機能を搭載した。車型の
加え、予防安全や駐車支援を視野に入れた技術開発に取り
組んで行きたい。
変更により、車両の大きさ・形状が全く異なる場合でも、
車両周辺状況をより忠実に再現可能とした(図16)
。また、
参考文献
車体色を変更することで車両CGと自車の色を合わせドラ
1)清水誠也ほか,全周囲立体システム,FUJITSU,
イバーが一体感を得られるようにしている。
Vol.60, No.5, pp.496-501 (2009)
社外執筆者紹介
清水
誠也
(しみず
せいや)
1989年㈱富士通研究所入社。コ
ンピュータグラフィクスと画像
処理システムの研究・開発に従
事。現在、ITS研究センターに
在籍。
筆者紹介
谷口
奨
(たにぐち
貴傳名
すすむ)
2008年入社。以来、車載カメラ
システムの開発に従事。現在、
ITS技術本部 システム統括部
技術四部に在籍。
山田
(やまだ
正博
まさひろ)
1990年入社。音制御技術、画像
認識システムの開発に従事。現
在、ITS技術本部 システム統括
部 技術四部に在籍。
18
(きでな
忠司
ただし)
1986年入社。以来、カーマルチ
メディア商品(CD/TV一体機、
AVNなど)の開発に従事。現
在、ITS技術本部 システム統括
部 技術四部に在籍。
山田
(やまだ
浩
ひろし)
1988年㈱富士通研究所入社。各
種端末・ECUなどシステムの研
究開発に従事。2009年4月より
富士通テンに在籍、富士通研究
所兼務。
小型・高性能なミリ波帯アンテナ
Compact and High-performance Millimeter-wave Antennas
要
上
里
良
英
Yoshihide UEZATO
吉
竹
弘
晃
Hiroaki YOSHITAKE
生
野
雅
義
Masayoshi SHONO
藤
本
正
彦
Masahiko FUJIMOTO
山
脇
俊
樹
Toshiki YAMAWAKI
旨
当社は、前身の富士通時代を含め、ミリ波帯(30〜300GHz)を使用した自動車用レーダを継続して開発し、
2003年より量産を開始している。本論では、30余年の当社レーダ開発の歴史を紹介するとともに、電波の出入
り口であるアンテナ開発の経緯に焦点を当て、車載用として特徴的な導波管スロットアンテナと、2003年から
量産化を行った平面タイプのトリプレートアンテナについて解説する。
また車載用レーダのさらなる価格低減のため、構造が非常にシンプルで低コスト化に有効なマイクロスト
リップアンテナの開発を行い、従来比1/5の低コスト化を実現した。ここで取組んだ、伝送損失の低減設計や基
板材料開発の内容について説明する。
Abstract
Fujitsu Ten has been developing automotive radar using the millimeter-wave (30GHz to 300GHz) since before
we were separated from Fujitsu, and we started its mass production in 2003. In this article, we introduce our history of our own radar development for more than 30 years. In addition, we explain a waveguide slot antenna for
automotive application and a low-profile triplate antenna whose mass production was started in 2003, focusing on
the background of the antenna development.
For further reduction of the cost of the automotive radar, we developed microstrip antennas effective in lowering cost with its extremely simple structure and then reduced the cost by 80%. We also explain our efforts of the
design for reduction of transmission loss and the development of printed board materials.
19
富士通テン技報 Vol.28 No.2
1.はじめに
1
はじめに
2.2 製品化への取り組み
1990年代に入って、自動車のデザインが箱型からスラン
当社は1980年代に、導波管スロットアンテナを使って車
トノーズへと変化し始め、自動車メーカからはレーダに対
載評価用V型レーダを試作し自動車レーダの実用化の目処
し、より小型・薄型化の要求が強くなり、その要求に対し
を得た。1990年代には、搭載性向上とカーブでの検知性
て有効な平面タイプのアンテナ導入の検討を開始した。導
能向上のために、トリプレートアンテナを採用したメカ
入にあたっては、高効率の導波管スロットアンテナなみの
ニカルスキャン方式レーダを開発し2003年に製品化した。
利得維持が課題だった。当時BSアンテナ用として高効率
現在、アンテナの低価格化を目指し、コムライン型マイ
の平面タイプであるトリプレートアンテナを製品化してい
クロストリップアンテナの設計技術確立と製品化開発を
た日立化成工業株式会社(以下日立化成工業)とミリ波帯
行っている。
自動車用平面アンテナの開発を開始した。
アンテナ開発を進めていくなかで、立体アンテナから平
同じく1990年代に郵政省(当時名称)と、レーダメーカ、
面アンテナへと形状が変化し、材料も金属を使った導波管
自動車メーカが周波数割当実現のためのワーキンググルー
から誘電体に変わった。本文では、そのアンテナ開発の歴
プを発足した。その成果として1997年自動車用ミリ波レー
史と現在の取り組みについて述べる。
ダに60GHz帯の周波数が割り当てられた。周波数割当が実
現したことにより、製品化に向けた法規制の大きな壁がな
2
2. 自動車レーダ用レーダ開発の歴史
自動車レーダ開発の歴史
くなり、各メーカの製品化の動きは急速に活発化した。
当社は、トリプレートアンテナを導入し、アンテナの薄
2.1 開発のはじまり
型、軽量の特徴を活かしてアンテナをメカニカルにスキャ
1970年代から、増加する自動車事故の低減対策として自
ンすることにより、カーブでも探知性能が落ちない高分解
動車レーダの必要性が認識され始めた。また当時の郵政省
能メカニカルスキャン方式レーダを開発し、2003年に製品
による40GHz以上の周波数割当方針が決まり、技術的には
化した。その後、2006年には後方監視レーダを製品化した。
50GHz帯の簡易無線が実用化されるなど、社会的なニーズ、
電波行政動向、技術面で自動車レーダの開発環境が整い始
めた。
2.3 低価格化への取り組み
自動車レーダの普及に伴い、レーダの低価格化が課題に
1974年に富士通株式会社(以下富士通)は、自動車用
なっている。エッチングでパターニングするプリント基板
レーダ開発をするためにモートロニクス開発部を新設し
タイプのマイクロストリップアンテナは低価格化に有効で
た。ここではまず初めに、ミリ波帯での自動車レーダの可
ある。しかし、ミリ波帯では損失が大きく、効率が低いた
能性検討を行った。検出性能を優先し、高利得で直径が約
めこれまで使われてこなかった。
30cmある大型のカセグレンアンテナを使用し実験用モデ
しかし、近年、放射素子と給電線路を直接結合し、損失
ルを試作した。この試作機を使い検出性能を評価すること
の低い高効率のマイクロストリップアンテナが提案されて
で、ミリ波帯が自動車レーダとして有効であることを確認
いる(3)(4)。当社は、この技術を応用し、日本ピラー工業株
した。
式会社と共同で材料開発を行い、マイクロストリップアン
1979年に富士通の自動車用レーダ開発は開発体制を維持
テナの実用化開発に取り組んでいる。
したまま当社に移管された。
1980年代に当社は、高周波デバイス開発を富士通に委託、
3
3. アンテナ開発の歴史
アンテナ開発の歴史
アンテナは小型で高利得の導波管スロットアンテナを自社
開発し、車載可能なV型レーダを試作した。トヨタ自動車
図1に、アンテナ開発の歴史を示す。当社では導波管ス
工業株式会社(当時名称)の協力を得てソアラに搭載し一
ロットアンテナからスタートし、トリプレートアンテナ、
般道路での走行試験、寒冷地試験を実施した。このレーダ
さらに小型・軽量、低価格化を目指して、マイクロスト
は固定ビーム方式のため、カーブでの探知性能低下という
リップアンテナへと開発を進めている。
方式上の課題はあるが、本試験により先行車の探知性能、
隣接車両との分離など、自動車レーダに必要な特性を満足
していることを確認できた。
20
本章では、当社で開発したアンテナについて、各アンテ
ナの構成、特徴について詳細を述べる。
小型・高性能なミリ波帯アンテナ
1970年代
1980年代
1990年代
2000年代
ミリ波帯有効性確認
小型・高利得化
小型/軽量/低価格化
小型/高性能とさらなる低価格化
カセグレンアンテナ
ア
ン
テ
ナ
開
発
導波管スロットアレイアンテナ
トリプレートアンテナ
60GHz
1974年
初めての実験機
1982年
V型レーダ開発
76GHz
マイクロストリップアンテナ
近距離レーダ
1998年 60GHz
メカニカルスキャン方式レーダ開発
2003年 76GHz
メカニカルスキャン方式レーダ製品化
2006年 76GHz
近距離レーダ製品化
メカニカルスキャン方式
モノパルス方式
電子スキャン方式
固定ビーム方式
法
60GHz
50GHz(実験局)
▼日本で割当
▼日米欧で割当
規
76GHz
図1 アンテナ開発の歴史
Fig.1 History of Antenna Development
3.1 導波管スロットアンテナ
車載評価用モデルの試作にあたり、隣接車両との分離、
路面反射の影響などを考慮して最適ビーム幅を検討した。
最適ビーム幅を実現するためのアンテナ方式として、
3.1.1 導波管スロットアンテナの構造
図2(a)に示すように、送信アンテナまたは受信アン
テナは、導波管スロットアレイアンテナの一次放射器で
2°を、円筒パラボラ反射器で6°のビーム幅を形成して
チーズアンテナ、導波管スロットと円筒パラボラの複合ア
いる。このビーム幅2°×6°の送・受ビームを図2(b)
ンテナなど数タイプのアンテナを使ったアンテナを試作評
のように直交に組み合わせて、2°×2°の送受合成ビー
価した。なかでも、送信側と受信側のアンテナをV字型に
ムを得ている。
組み合わせビームを合成するタイプでは、小型でシャープ
なビームを形成することが可能となった。
対向車の電波干渉を避けるため45°偏波を行っている。
図2(c)に示す偏波面が互いに直交するロンジチュー
このアンテナを使用したV型レーダは、高周波部の各デ
ディナルシャントスロットとエッジシャントスロットを
バイス間を直結し簡素化することで、検出性能、搭載性に
送信、受信アンテナとして使用し、かつV字型に直交して
優れた車載評価モデルにすることができた。1982年から約
配置することで送受アンテナの偏波面を45°方向にそろ
10年間にわたり、一般道路での走行試験を実施し、以後の
えている。
レーダ用アンテナおよびレーダとしての仕様を確立した。
21
富士通テン技報 Vol.28 No.2
パラボラ反射器
6°
偏波面
2°
受信アンテナ
パラボラ反射器
スロットアレイ
(a)送信または受信のアンテナパターン
送信アンテナ
45°
偏波による
電波干渉の低減
エッジスロットアレイ
送信アンテナ 受信アンテナ
パターン
パターン
ロンジテューディナル
スロットアレイ
E
エッジ・シャント
スロットアレイ
合成ビーム
2°
合成ビーム方式の採用
2°
E
(b)送受V型配置(1)
ロンジテューディナルシャント
スロットアレイ
(b)導波管スロット
図2 導波管スロットアンテナの構成(1)
Fig.2 Structure of Waveguide Slot Antenna(1)
3.2 トリプレートアンテナ
高効率のミリ波帯平面アンテナを製品化するために、自
4
4. 低価格アンテナの開発
低価格アンテナの開発
動車レーダ用アンテナとしての仕様検討と評価を当社が担
搭載性とスキャン機能を両立するために、平面タイプの
当し、アンテナの設計・試作を日立化成工業が担当して共
アンテナは必要不可欠になった。また、自動車レーダの用
同開発を実施した。
途の拡大と普及に伴い低価格の要求が高まっている。
平面アンテナのなかでは構造がシンプルなマイクロスト
3.2.1 トリプレートアンテナの構造
図3(a)に示すように、非常に薄いフィルム基板に
エッチングした銅箔パターン(給電線路、パッチ)と上下
リップ方式の方が低価格化に有効である。しかし、樹脂基
板を使っているため伝送損失が大きくなり、効率が低下す
るという課題がある。
の平行平板(スロット板、地導体)、およびフィルム基板
この課題を解決する方策に、放射素子と給電線路を直結
を保持する発泡材から構成される。給電線路からパッチま
する手法がある(4)。この技術を用いると、各放射素子まで
での伝送線路部分を図3(b)のような上下を平行平板で
の伝送線路損失を低減できるため、高効率のマイクロスト
挟んだトリプレート伝送線路で構成している。
リップアンテナが実現できる。当社は㈱豊田中央研究所の
トリプレート伝送線路は、給電線路を構成する内部に樹
脂基板のような誘電体材料を使用しないため、材料に依存
する誘電体損失が小さく、また信号が上下の平板により遮
蔽され空間への放射損失がない。よって、損失が上下の平
板を流れる電流による導体損失のみとなり、アンテナの給
電線路に使用すると放射効率が高い平面タイプのアンテナ
が実現できる。
22
協力を得て、このタイプのアンテナを最適設計した製品化
開発に取り組んだ。
小型・高性能なミリ波帯アンテナ
スロット
給電線路
スロット板(アルミ)
誘電体シート
(発泡材)
フィルム基板
給電線路
誘電体シート
(発泡材)
パッチ
地導体(アルミ)
(b)
トリプレート伝送線路
(a)
アンテナ構成(2)
図3 トリプレートアンテナの構成
Fig.3 Structure of Triplate Antenna
4.1 マイクロストリップアンテナの構成
マイクロストリップアンテナにおける給電線路と放射素
4.2 製品化に向けての取組み
マイクロストリップアンテナの製品化に向けた主な取り
子の構成を図4(a)に、マイクロストリップ基板構成を
組みを以下に示す。
図4(b)に示す。
①基板材料の選定
上述したように各放射素子に信号を送る中央の給電線路
と放射素子を直結している。さらに放射素子を45°傾ける
ことにより、45°偏波も同時に実現している。
②アンテナパターン特性の改善設計
③ロバスト設計
上述の取り組みのなかで、ここでは、①基板材料の選定
と、②アンテナパターン特性の改善設計について検討した
放射素子
内容を以下に述べる。
45°
4.2.1 基板材料の選定
基板材料は、電気特性、機械的強度、耐環境性など、あ
らゆる特性について検討を行った。特にミリ波帯域で使用
給電線路
するということで電気特性が重要な課題となる。
(a)給電線路と放射素子の構成
基板の主な電気特性として、誘電率と誘電体損失がある。
誘電率は、大きいほど周波数帯域が狭くなるため、アンテ
給電線路
ナ材料としては3以下が適している。今回は、誘電率3以下
の基板のなかから、液晶ポリマー基板のLCP(liquid crystal polymer)
、フッ素樹脂基板のPTFE(poly-tetra-fluoro誘電体(樹脂基板)
銅箔(接地板)
(b)
マイクロストリップ基板構成
図4 45度偏波コムライン型マイクロストリップアンテナの構成
Fig.4 45-degree Polarized Comb-line Microstrip Antenna
ethylene)に絞込み、評価した。
誘電体損失は、給電線路内の損失に影響し、損失が大き
くなる場合放射効率が低下するため重要な指標となる。
給電線路の損失は、給電線路のみの評価サンプルを試作
し線路両端間の損失を測定した。LCPの場合、給電線路の
損失が大きくアンテナ効率がトリプレート方式より大きく
劣るという結果となった。
一方、PTFEは損失が小さく、コムライン型マイクロス
トリップアンテナの基板材料として使用すると高効率のア
23
富士通テン技報 Vol.28 No.2
ンテナが実現できる可能性が大きいという結果を得た。
給電部
4.2.2 アンテナパターン特性の改善設計
放射素子を直線状に配置した場合(図4(a))、誘電率
の温度特性がアンテナパターン特性に影響する。誘電率が
(a)
アンテナ構成
温度によって変化すると誘電体内の波長が変化し各放射器
から放射される信号の位相が変化する。各放射素子から放
導波管
射される信号の位相が同相の場合はアンテナ正面(アンテ
ナ面から垂直方向)で各信号の位相がそろってメインロー
ブのピークがアンテナ正面になるが、各信号に位相変化が
あると、アンテナのメインローブのピーク位置が変化する
変換器(給電素子)
(ビームが傾く)。そこで誘電率の温度特性がアンテナパ
ターン特性に及ぼす影響の対策として、下記(a)に述べ
(b)給電部構成
る中央給電方式を採用し、アンテナパターン特性の改善設
図5 中央給電方式マイクロストリップアンテナの構成と給電部構成
計をする方向で量産化開発に取り組んだ。本方式は、給電
Fig.5 Structure of Center-fed Microstrip Antenna and its Feeding Point
部がアンテナ中央部に位置することにより、新たなサイド
30
ローブ比劣化の課題を生じるが、下記(b)の対策により
実測値
改善した。
中央給電では、図5(a)に示すように給電部を境にし
て左右の放射素子の位相変化の符号が逆になるため、アン
テナ正面で位相変化が打ち消されピーク位置は変化しな
い。しかし、給電部がアンテナ中央に存在することにより、
中央部付近からの放射ができなくなるため、アンテナパ
ターン特性のサイドローブ比が低下する。
絶対利得 [dBi]
(a)中央給電方式の採用
20
水平パターン
10
垂直サイドローブ比
14.5dB
垂直パターン
0
-10
-20
-30
-90
-70
-50
-30
-10
10
30
50
70
90
角度 [deg]
中央給電方式採用の最も大きな課題はサイドローブ比劣
図6 アンテナパターン評価結果
化の低減にあり、以下に低減に向けた取り組みを示す。
Fig.6 Evaluation Result of Antenna Pattern
(b)サイドローブ比劣化の低減
給電部は図5(b)に示すように導波管部と変換器部と
で構成されている。変換器は、RF部との接続用導波管と
5
5. おわりに
おわりに
アンテナの給電線路(マイクロストリップ線路)との間を
信号が伝搬する時、反射や損失を少なくする機能を持つ。
当社のミリ波レーダの進化に伴い、そこに使用されるア
中央給電方式の場合、給電部に入力される信号を2分配し
ンテナも、導波管スロットアンテナからトリプレートアン
て左右の放射素子に供給する必要がある。ここでは変換器
テナ、マイクロストリップアンテナへと開発を進めてきて
の機能に2分配機能を付加することで、給電部のサイズを
いる。開発するアンテナの変遷に伴い材料や構造が大きく
従来と同程度におさえた。それにより、放射できないエリ
変わり、新しい構成での効率、温度特性、耐環境性など課
アを最小にすることができ、サイドローブ比の劣化を低減
題が生まれたが、そのつど検討を重ね製品化の可能性を見
した。図6にアンテナパターンの評価結果を示す。自動車
出してきた。今後は、加工誤差に強いロバスト設計を取り
レーダ用アンテナとして使用可能な利得、サイドローブ比
入れることで、より小型・低価格なアンテナを追求したミ
を実現した。
リ波帯マイクロストリップアンテナの量産化設計技術を確
立し製品化を目指していく予定である。
24
小型・高性能なミリ波帯アンテナ
参考文献
1)野上、上里、阪本、磯貝:自動車へのミリ波レーダの
応用 富士通テン技報 VOL3 No.2
2)山脇、山野:60GHz帯自動車用ミリ波レーダ、富士通
テン技報 VOL15 No.2
3)飯塚、渡辺、佐藤、西川:Millimeter-wave Microstrip
Line to Waveguide Transition Fabricated on a Single
Layer Dielectric Substrate IEICE TRANS. COMMUN.,
vol E-85B, No.6 June 2002
4)飯塚、渡辺、佐藤、西川:Millimeter-wave Microstrip
Array Antenna for Automotive Radars IEICE TRANS.
COMMUN., vol E-86B, No.9 September 2003
筆者紹介
上里
良英
(うえざと
よしひで)
1972年入社。以来、ミリ波レー
ダシステムの設計に従事。ITS
技術本部システム統括部技術二
部在籍後、2010年9月定年退職。
藤本
正彦
(ふじもと
まさひこ)
1982年入社。以来、ICの開発・設
計、自動車用電装製品の開発・設
計、ミリ波レーダシステムの開
発・設計に従事。現在ITS技術本
部システム統括部技術二部在籍。
吉竹
弘晃
(よしたけ
ひろあき)
2008年入社。以来、ミリ波レー
ダ用アンテナの設計に従事。現
在ITS技術本部システム統括部
技術二部在籍。
山脇
生野
雅義
(しょうの
まさよし)
1988年入社。以来、自動車用電
装製品の開発に従事。1991年よ
りミリ波レーダシステムの開
発・設計に従事。現在ITS技術本
部システム統括部技術二部在籍。
俊樹
(やまわき
としき)
1984年入社。以来、カーオーディオ製
品の生産技術、カーオーディオ用ハ
イブリッドICの開発・設計、ミリ波
レーダの開発・設計に従事。現在ITS
技術本部システム統括部技術二部長。
25
連立方程式法を用いた車室内音場創生技術の研究
Study of In-vehicle Sound Field Creation by Simultaneous Equation Method
藤
井
作
Kensaku FUJII
若
林
功
Isao WAKABAYASHI
宇治野
正
Tadashi UJINO
樹
Shigeki KATOH
加
要
藤
健
茂
旨
2008年2月、富士通テン㈱はトヨタ自動車㈱殿の クラウン 向けに 空間コントロール技術 を用いた「ト
ヨタプレミアムサウンドステム」を開発し、好評を得ている。この技術をさらに改善し、より自然な拡がり感
を提供すべく、連立方程式法を用いた音場創生技術の研究を富士通テン㈱と兵庫県立大学との共同で進めてい
る。原理検証をシミュレーションモデルを用いて実施し、聴取者の移動に応じて適切な制御が行えること、ま
た聴取者の耳元で任意の音場が設定できることを確認した。この技術の導入により、聴取者の移動に対し堅牢
になるため、1.5kHzで制限していた空間コントロールの制御帯域を拡大することができ、より自然な拡がり感
実現の可能性を見出した。
Abstract
FUJITSU TEN Limited has developed "TOYOTA Premium Sound System" using "spatial control technology" for CROWN of TOYOTA Motor Corporation in February 2008, which receives high reputation. We, at
FUJITSU TEN Limited, and UNIVERSITY OF HYOGO have been collaborating on research activities of sound
field creation technology by a simultaneous equation method through the upgrade of the spatial control technology in order to provide sounds with more natural sense of expanse. Through verifying the principle with a simulation model, we confirmed that it provides appropriate controls depending on listener's moves and creates arbitrary
sound field at the periphery of listener's ears. This new technology can provide precise controls depending on listener's moves, and this leads to expansion of the spatial control range whose upper limit used to be 1.5 kHz. We
found a clue to providing sounds with more natural sense of expanse.
26
連立方程式法を用いた車室内音場創生技術の研究
1.はじめに
1
はじめに
新音響空間
従来の音響空間
自動車の車室内は、多くのドライバにとって貴重なプラ
イベート空間の一つである。また、メディアのデジタル化
が進み、ホームと同等の高品位な音楽ソースを大量に持ち
込めるようになった。こうした背景から、今や車室内は、
図1 目標イメージ
音楽を楽しむためのリビングルームとして重要な役割を
Fig.1 Image of Targeted Acoustic Space
担っている。
ところが、車室内を音楽を聴取する空間として捉えると、
一般のリビングルームと比較して、走行騒音があること、
2.2 空間コントロール技術と効果
空間コントロールは、車室内での制約事項を以下の課題
空間が狭くスピーカの設置条件が制約されること、さらに
として具体的にとらえ、それら対策を実施することで仮想
ウインドガラスによる音の反射、内装材の不要振動の影響
的にリビングルームとして車室内空間を実現している。
など、オーディオ再生にとって不利な条件が多い。こうし
た課題に対し、騒音感応自動ボリューム1)、小型低音再生ス
課 題①:スピーカ取り付け部周辺からの不要振動
ピーカ 、広指向性ツィータ、車室内伝送特性補正用イコラ
解決策①:不要振動抑制技術
2)
イザ3)、音場制御装置などの開発と採用によって、車室内の
ような条件下でも良い音が得られるようになってきた。
2008年2月、富士通テン㈱はトヨタ自動車㈱殿の
クラ
不要振動を抑えるために、ホームオーディオ用スピーカ
のタイムドメイン(1)システム開発で培った車載スピーカの
制振技術を用いた6)。
ウン 向けに 空間コントロール技術 を用いた「トヨタ
プレミアムサウンドステム」を開発した 4)。この技術は、
課 題②:ガラスなどからの、遅延時間が短く強い反射音
車室内音場の精密な解析結果から、空間の狭さを感じさせ
解決策②:不要反射音抑制技術
る反射音や不要振動を抑制し、広い部屋をシミュレートし
強い反射音を抑制するために、聴取者の耳元にスピーカ
た効果音を付加することで、リビングルームのような音場
を設置し、そこから逆位相の音を再生して不要な反射音を
の創生を試みたものである。このシステムの音は、多くの
消す方法を開発した。
ユーザから「今までの車にはない拡がり感や臨場感がある」
と好評を得ている。筆者らはこのシステムをさらに進化さ
せるべく、より自然な「拡がり感」のある音を目指して検
討を継続している。
課 題③:天井、シートなどに吸収され反射音の到来方向
が限定
解決策③:空間情報付加技術
自然な「拡がり感」を得るには、先に述べた車室内特有
リビングルームで発生する反射音をできるだけ忠実に再
の制限のなかでの空間コントロール技術をブラッシュアッ
現するため、空間情報用として専用のスピーカを用い、デ
プする必要がある。その手段として連立方程式法を使った
ジタル信号処理によりシミュレートした反射音を再生。
音場創生技術5)を用いた。以下、空間コントロールにおけ
次に図2〜4に空間コントロール技術の効果を示す。図2は
る本音場創生技術の実用化の可能性について検討行った結
目標とするリビングルームのインパルス応答(2)、指向性拡
果を報告する。
散図(3)である。図3、4に空間コントロール処理OFF / ON
の車室内におけるインパルス応答と指向性拡散図を示す。
2
2. 空間コントロールと課題
空間コントロールと課題
2.1 サウンドコンセプト
富士通テン㈱が目指すサウンドコンセプトは「感動の音
処理ONはOFFよりもインパルス応答では空間情報(反
射音)が付加され、指向性拡散図ではさまざまな方向から
反射音が観測されており、目標のリビングルームの特性に
近づいているのがわかる。
空間創造」である。すなわち、図1のような狭い車室内空
間を感じさせない拡がり感のある音作りをめざしている。
目標とする広さは家庭で音楽を楽しむのに適した20畳前後
のリビングルームである。
*(1)音の時間軸特性を重視し、入力波形をできる限り忠実に再
生する技術。
*(2)インパルスと呼ばれる時間的幅が無限小で高さが無限大の
非常に短い信号を入力したときのシステムの出力。
*(3)反射音の到来方向とそのレベルをベクトル表示した図。
27
富士通テン技報 Vol.28 No.2
反射音
レベル
しキャンセル効果を十分に発揮できない場合が存在する。
左
そこで、制御帯域の拡大と、聴取者位置変動による制御効
果低下回避の両立を課題として、取り組んできた。
後
前
目指す状態は図5(音場創生技術)のように、制御帯域
を拡大しても聴取者の移動に対して制御効果の低下を回避
し、聴取者耳元の特性をリビングルームなどの音場に保つ
時間(ms)
ほぼ全方位
から反射音
状態である。
右
図2
リビングルームのインパルス応答(左)と
反射音の指向性拡散図(右)[目標]
Fig.2 Impulse Response (Left) and Directional Diffusion Diagram
of Reflected Sounds (Right) in [Ideal] Living Room
スピーカ
聴取者
反射音なし
レベル
移動
左
■従来法
伝達特性変化発生(反射音変化)
反射音
後
時間(ms)
反射音の
少ない方向
前
右
図3 車室内のインパルス応答(左)と
反射音の指向性拡散図(右)[空間コントロールOFF]
Fig.3 Impulse Response (Left) and Directional Diffusion Diagram of
Reflected Sounds (Right) in Vehicle Cabin [with Spatial Control off]
反射音≒リビングルーム
レベル
=
≠
一致
不一致
リビングルーム
聴取者耳元の伝達特性
■音場創生技術
伝達特性変化なし
=
一致
左
リビングルーム
=
一致
聴取者耳元の伝達特性
図5 制御効果イメージ図
後
Fig.5 Control Effect Image
前
反射音抑制 空間情報付加
反射音抑制+空間情報付加
時間(ms)
ほぼ全方位
から反射音
≒リビングルーム
右
図4 車室内のインパルス応答(左)と
反射音の指向性拡散図(右)[空間コントロールON]
Fig.4 Impulse Response (Left) and Directional Diffusion Diagram of
Reflected Sounds (Right) in Vehicle Cabin [with Spatial Control on]
このように空間コントロール技術は、スピーカの制振
や信号処理などの技術を組み合わせ、拡がり感を提供し
ている。
そのなかで、不要反射音の抑制や空間情報の付加は主に
信号処理技術によって実現されており、効果に大きく影響
を及ぼす。筆者らは、より自然な拡がり感を提供すべく、
3
3. 音場創生技術の紹介
音場創生技術の紹介
課題への対策として、聴取者の移動に対し不要反射音
の制御を追従させる適応制御技術を選択した。適応制御
技術の一つに、特に移動への対応に適した連立方程式法
がある。この方法を用いれば、聴取者の移動を随時検知
し不要反射音の制御をその移動に適した状態にすること
が可能である。
さらに聴取者耳元の伝達特性を任意の特性に設定するこ
とができ、空間情報付加制御も可能である。
本章では音場創生技術の概要について述べたのち、原理
を紹介する。
これらの信号処理技術に着目し検討を進めることにした。
3.1 音場創生技術の概要
2.3 残存課題
図6に従来法と音場創生技術の制御フローを示す。従来
今までの不要反射音抑制技術では制御フィルタの帯域を
法では制御フィルタの係数が最初に設定され、以後変更は
1.5kHz以下に制限している。よって、1.5kHz以上に制御帯
されないので、聴取者の移動に追従できない。音場創生技
域を拡大すれば、より広帯域にわたり不要反射音が抑制さ
術では先ず、聴取者耳元での伝達特性とリビングルームな
れ、より自然な拡がり感を提供できる。
どの理想とする特性(以下、目標音場)との差分を随時取
しかし、図5(従来法)のように制御帯域を拡大すると,
周波数の高い(=波長の短い)音は、聴取位置のずれに対
28
得する。次にその差分を元に聴取者耳元で目標音場を再現
するように制御フィルタを更新する。次第に差分がなくな
連立方程式法を用いた車室内音場創生技術の研究
れば、制御フィルタの更新が行われなくなり、聴取者耳元
スピーカ
の特性が目標音場と一致する。
差分を随時取得しているため、聴取者の移動の検知がで
C
マイク 聴取者耳元
Y
X
き、その差分を元に車室内の伝達特性を調整し、保つこと
―
H
ができる。このようにして音場を作り上げるため、本技術
P
を音場創生技術と称している。
+
演算装置
スタート
スタート
図8 演算装置内ブロック図(一般的な適応制御技術)
目標音場の
設定
目標音場の
設定
(General Adaptive Control Technology)
制御フィルタ係数
の設定
制御フィルタ係数
の設定
制御音出力
制御音出力
Fig.8 Block Diagram of Arithmetic Processor
Pはシステムが目標とする目標音場フィルタでリビング
ルームの特性など任意の特性を設定することができる。
Cは聴取者とスピーカ間の音響空間の伝達特性であり、
伝達特性取得
聴取者の移動などによって変動するため、未知の値である。
目標音場との差
分計算
目標音場(P)の出力と聴取者耳元の信号(Y)との差分
H は聴取者の耳元で目標音場( P )を再現するように、
無
差分有無
を元に調整される制御フィルタである。
聴取者の移動などで、音響空間伝達特性(C)の残響時
間が変動する場合、制御フィルタ(H)のメモリ長を充分
有
制御フィルタ係数
の調整
図6 制御フロー概略図(左図:従来法、右図:音場創生技術)
Fig.6 Overview Control Flowchart
に長い残響時間に対応するように設定しておくことで、聴
取者の移動に対し制御を追従させることが可能である。
しかし、音響空間伝達特性(C)が想定以上に変動した
場合、制御フィルタ(H)のメモリ長に過不足が生じる。
(Left: Traditional Method, Right: Sound Field Creation Technology)
メモリ長が過剰な場合は余分な計算時間が生じてしま
い、不足している場合は制御が困難になってしまう。
3.2 原理
C
3.2.1 構成
音場創生技術のシステム構成を図7に示す。スピーカから
X
Y
出力され、音響空間を通過した音響信号を聴取者近傍のマ
H
イクで取得する。次に演算装置部で取得した信号を解析し、
音響空間の
伝達特性(C)
聴取者
―
e
P
聴取者近傍を目標音場にすべく制御フィルタを計算する。
スピーカ
マイク 聴取者耳元
+
S
マイク
+
―
演算装置
※
補助フィルタ(S)の係数を元に制御フィルタを調整
演算装置
図9 演算装置内ブロック図(連立方程式法を用いた適応制御技術)
音響信号(X)
(Adaptive Control Technology by Simultaneous Equation Method)
Fig.9 Block Diagram of Arithmetic Processor
図7 システム構成
Fig.7 System Configuration
次に、聴取者が移動しても制御フィルタ(H)の自動的
な修正を可能とすべく、連立方程式法を用いた適応制御技
術(音場創生技術)を図9に示す。
演算装置内の処理について説明をする。
先ず、連立方程式法を用いない一般的な適応制御技術を
図8に示し、その問題点について説明する。
図8からの変化点は補助フィルタ(S)を用いたことで
ある。補助フィルタ(S)は聴取者耳元の特性(CH)と目
標音場(P)との差分を示すフィルタであり、補助フィル
タ(S)と目標音場との差分の差(e)を0にするように調
整される。このとき、補助フィルタ(S)には聴取者移動
による音響空間伝達特性( C )の変動や、制御フィルタ
(H)の過不足についての情報が含まれるため、補助フィ
ルタ(S)の値から制御フィルタ(H)を算出することで、
29
富士通テン技報 Vol.28 No.2
音響空間伝達特性(C)に適したフィルタに修正できる。
従って、連立方程式法はさまざまな音響空間伝達特性
これによって、音響空間伝達特性(C)を測定すること
なく差分から制御フィルタ(H)を求めることができる。
(C)に効率良く追従できることから、特に移動への対応
3.2.3 システムの動作例
に適した適応制御技術といえる。
次節では連立方程式法導入時の制御フィルタ調整方法に
システム作動時、音響空間伝達特性(C)変動時のシス
テムの動作例を補助フィルタ(S)
、制御フィルタ(H)を
ついて説明を行う。
使い説明を行う。
3.2.2 制御フィルタの調整方法
制御フィルタ調整方法は次の手順で行われる。目標音場
と聴取者耳元の伝達特性との差分の取得、聴取者耳元まで
の伝達特性推定、最後に制御フィルタ調整であり、これを
順を追って説明する。図9から聴取者は制御フィルタ(H)
■システム作動時
システム作動時はまず補助フィルタ定義式から補助フィ
ルタ(S)の推定が行われる。
次に制御フィルタ更新式を使い、制御フィルタ(H)が
と音響空間伝達特性(C)を通過した観測信号(Y)を聞
計算される。補助フィルタ(S)の係数から音響空間伝達
く。聴取位置の信号は次のように表すことができる。
特性(C)を測定することなく制御フィルタ(H)の最適
解を算出することができる。
Y=CHX
聴取位置の信号
この特性を目標音場フィルタ(P)を通過した音響信号
(PX)とすることが目的であるので、制御フィルタ(H)
は次のとおりである。
以下、式中の添え字は更新回数を示し、0は初期値である。
・補助フィルタ定義式
S1=P−CH 0=P−C
H0=1
・制御フィルタ更新式
PX=CHX
P
⇒H= C
制御フィルタ(H)の最適解
これが音響空間伝達特性(C)における最適解である。
ただし音響空間伝達特性(C)が未知であるので、この
ままでは最適解を求めることができない。
そこで、次のような補助フィルタ(S)を設定する。
P
P
H1= P P S H 0= P P
− 1
−( −C) = C
音響空間伝達特性(C)の変動がない理想環境では、制
御フィルタ(H)の最適解は更新を1回行うことで求まる。
この場合、次の更新時は補助フィルタ(S)の値は零つま
り、目標音場との差分が零になり、制御フィルタ(H)は
更新されない。
S=P−CH
⇒SX=PX−CHX
⇔SX=PX−Y
補助フィルタ(S)定義式
・補助フィルタ定義式
補助フィルタ(S)算出式
図9にて、補助フィルタ(S)と目標音場との差分の差
(e)を0にするように補助フィルタ(S)が調整されると、
補助フィルタ(S)定義式の右辺が得られる。
P 0
S2=P−CH 1=P−C C
=
・制御フィルタ更新式
P
H2= P P S H 1= P
P H1= C
− 2
これにより、目標音場(P)と聴取者耳元の特性(CH)
との差分を求めることができる。
次に、補助フィルタ( S )が充分に推定されていれば、
補助フィルタ定義式から既知の値(P、H、S)を使い、音
響空間伝達特性(C)の値を近似的にC'として推定できる。
S
C'= P−
H
音響空間伝達特性(C)算出式
このC'を用いて制御フィルタ(H)を表すと、補助フィル
タ(S)で構成された制御フィルタ(H)の更新式となる。
P
P
H= C'
= P−S H
30
制御フィルタ(H)更新式
■音響空間伝達特性(C)変動時
聴取者位置が動き、音響空間伝達特性(C)がC ⇒ C+
Δに変動した場合、補助フィルタ(S)は零ではなくなり、
制御フィルタ(H)の更新が行われる。更新によって、制
御フィルタ( H )は変動した音響空間伝達特性( C + Δ )
に対応する最適解を算出する。
・補助フィルタ定義式
P
P
S3=P−(C+Δ)H2=P−(C+Δ) C
=− C Δ
連立方程式法を用いた車室内音場創生技術の研究
フィルタ(P)と聴取者近傍の音場特性(CH)が一致して
・制御フィルタ更新式
いるといえる。
P
P
P
H3= P P S H 2=
= C+Δ
C
P
− 3
P+ Δ
C
2
E=10log 10 (P−CH)
2
P
制御フィルタ(H)の最適解が求まっていれば、次の更
評価誤差定義式
E: 評価誤差、P: 目標音場フィルタ、CH: 聴取者近傍の音場特性
新では補助フィルタ(S)の値が零になり、制御フィルタ
(H)は更新されない。
4.2 シミュレーション結果
図11に評価誤差の推移を示す。横軸を制御フィルタの
・補助フィルタ定義式
更新回数、縦軸を評価誤差としてプロットしている。
S4=P−(C+Δ)H3=P−(C+Δ) C P Δ =0
+
価誤差が減少している。また、更新回数が2回程度で評価
・制御フィルタ更新式
誤差が約1/100(−40dB)程度で収束し、目標音場と一致
P
P
H4= P P S H 3= P
P C+Δ = C+Δ
− 4
しているのがわかる。
この結果では制御フィルタの更新を繰り返すことで、評
更新回数6回目では聴取者の移動を模擬すべく、音響空
間伝達特性(C)を変化させている。これによって、評価
これらの方法を用いると聴取者が移動し、音響空間伝達
誤差が急激に上昇し、目標音場と異なっているが、すぐ
特性( C )が変化しても、その都度適切な制御フィルタ
に−40dB程度にまで差が小さくなり、目標音場と一致し
(H)に更新される。よって、制御帯域の拡大による、よ
ているのがわかる。
り自然な拡がり感提供と聴取者位置の変動による効果量低
10
下の回避を実現できる。
聴取者
移動
更新
更新
終了
更新
-10
評価誤差[dB]
4. 原理検証結果
原理検証結果
4
更新
開始
0
4.1 シミュレーション
次に音場創生技術の原理検証を行った。図10にシミュ
-20
-30
レーションモデルを示す。音響空間伝達特性(C)の初期
-40
値には擬似的に作成した特性を設定し、目標音場フィルタ
目標
特性 -50
(P)は図12のような特性、補助フィルタ(S)は0、制御
0
2
4
6
8
10
12
14
適応フィルタ更新回数
フィルタ(H)は1とした。確認事項は下記のとおり。
図11
評価誤差の推移
Fig.11 Transition of estimation errors
・聴取者近傍の音場特性が目標音場と一致するか
図12は目標音場フィルタ(P)のインパルス応答、図13
・音響空間伝達特性変化後も目標音場と一致するか
は評価誤差が−40dB程度の制御フィルタ(H)を用いた制
C
H
御点近傍の音場特性(CH)を表すインパルス応答である。
Y
聴取者近傍の音場特性が目標音場とよく一致しているのが
―
わかる。
P
X
+
S
+
0.5
―
0.4
0.3
図10
シミュレーションモデル
Fig.10 Simulation Model
Amplitude
0.2
0.1
0
-0.1
-0.2
音響信号(X)には目標音場を精度よく再現させるため、
白色雑音を用いた。
評価指標は下記の式で定義される評価誤差(E)を用い
た。この評価誤差は目標音場フィルタ(P)と聴取者近傍
の音場特性(CH)が同じ特性を持てば、P=CHとなりE=0
-0.3
-0.4
-0.5
0
50
図12
100
150
Tap Number
200
250
300
目標音場のインパルス応答
Fig.12 Impulse Response in Targeted Sound Field
となる。従って、評価誤差が小さな値ほどよく目標音場
31
富士通テン技報 Vol.28 No.2
0.5
参考文献
0.4
1)冨田 裕二、本島 顕、加藤 茂樹 「車室内騒音下におけ
0.3
る再生音のダイナミックレンジ制御方法についての一考
Amplitude
0.2
0.1
察」テン技報(36号)P28-33
0
2)加藤 茂樹、柴田 浩 「車載用超低音スピーカ 6001 」
-0.1
テン技報(2号)P51-61
-0.2
-0.3
3)加藤 茂樹、澤井 利仁、西野 雄治、天谷 祐治 「車室
-0.4
内音響特性とイコライジング」テン技報(5号)P51-61
-0.5
0
50
図13
100
150
Tap Number
200
250
300
4)高橋 寿夫、田林 準史、中石 信一、冨田 裕二、今村
聴取者近傍音場のインパルス応答
忠、蔭山 雅義、山崎 慎一 「空間コントロール技術を用
Fig.13 Impulse Response in Sound Field around Listener
いたクラウントヨタプレミアムサウンドシステム」 テ
ン技報(51号)P11-18
以上の検証から、聴取者近傍の音場特性(CH)が目標
音場フィルタ(P)と一致すること、聴取者が移動し、音
5)Tadashi Ujino, Keiichiroh Tanaka, Isao Wakabayashi,
響空間伝達特性(C)が変化しても目標音場と一致するこ
Kensaku Fujii, and Mitsuji Muneyasu "Application of
とが確認できた。
simultaneous equations method to sound field creation
system" Acoustical Science and Technology, vol. 31, pp.
337-346, 2010.
5. 終わりに
5
おわりに
6)加藤 茂樹 「車室内における快適音響空間創造技術」
連立方程式法を使った音場創生技術と、その原理検証に
自動車技術 Vol.62 No2 88-94
ついて紹介した。この技術を用いると制御帯域を拡大した
状態で聴取者が移動しても、その都度適切な制御フィルタ
に更新され、聴取者位置の変動による効果量低下の回避が
可能となる。
従って、聴取者位置に寄らずより自然な拡がり感の提供
の可能性が見出せた。
今回、シミュレーションには音楽信号を用いず、精度を
確保するため、白色雑音を用いた。実用化を考えると、音
楽信号で精度を確保する必要がある。次はこの課題につい
て取り組んでいく。
また、連立方程式法の考えを、車の音場を調整する際の
測定方法として用いることが可能であり、この技術を適用
した製品の提案活動を進めている。
社外執筆者紹介
藤井
(ふじい
健作
けんさく)
1972年富士通㈱入社。2001年まで、主
にエコーキャンセラや能動騒音制御の
開発に従事。2001年より兵庫県立大学
工学研究科 教授に就任。研究対象は
デジタル信号処理全般とその応用。
筆者紹介
若林
功
(わかばやし
宇治野
いさお)
2005年入社。以来、音響信号処
理アルゴリズムの開発に従事。
現在、CI第一技術本部 音響技
術部に在籍。
32
(うじの
正
ただし)
2008年入社。以来、車載用ス
ピーカ設計開発に従事。現在、
CI第一技術本部 音響技術部に
在籍。
加藤
(かとう
茂樹
しげき)
1979年入社。以来、車載用音響
システムの開発に従事。現在、
CI第一技術本部 音響技術部 音
響技術部長。
技術ノート
制御開発用シミュレータ「CRAMAS」の
ITS分野への取り組み
HIL Simulator "CRAMAS" for ITS Application
1
1. はじめに
はじめに
近年、自動車用制御システム開発の効率化と品質確保を
両立するためのツールとして、HIL(Hardware In the
Loop)シミュレータが広がりを見せている。HILシミュ
レータは、主にエンジン制御やトランスミッション制御な
どのパワートレーン分野、駆動系分野での活用が中心で
あった。当社ではHILシミュレータ「CRAMAS
(ComputeR Aided Multi-Analysis System)」の開発を行
い、社内外でのECU(Electronic Control Unit)開発にて
活用されているが、近年、ミリ波レーダを活用したITS
(INTELLIGENT TRANSPORT SYSTEMS)など、幅広
い分野に展開されており、シミュレータに求められる機能
も変化している。
本稿では、これまでのCRAMASの適応事例および、安
心・安全分野の取り組みについて紹介する。
丸
山
田
中
山
崎
誠
晃
Akira MARUYAMA
吾
Seigo TANAKA
剛
Takeshi YAMASAKI
2.1 適応事例
近年では、電気自動車やハイブリッド車など、動力源
をモータとする車両も実用化されている。当社では、そ
れらの車両の制御開発を支援するシミュレータを開発し
てきた。
従来のモータシミュレーションは、電気部、機械部とも
にMATLAB/Simulinkで記述されたモデルをソフトウェア
処理で演算していたが、電気的な動作をソフトウェア処理
で行うのには限界があり、制御装置の評価において必要な
精度を得ることが困難であった。
そのため、専用の機能ボード(モータボード)を開発し、
比較的変更が少ない電気的な動作についてはFPGA(Field
Programmable Gate Array)によるハードマクロ化を実施
することで、1μs周期での演算が可能となった。モータ
ボードを使用したHILシミュレータの構成を図2に示す。
CPUボード
(機械モデル部)
2
2. CRAMASとは
CRAMASとは
CRAMASは、富士通テンが独自に開発したシミュレー
タであり、図1に外観を示す。制御対象となるシステムの
動作を実時間で模擬できることを最大の特徴とし、1996年
に開発したABS(Anti lock Brake System)の試験を行う
ためのシミュレータがルーツである。
シミュレータは主に、制御対象となる実機が存在しない
場合の実機の代わりや、実車両では発生しにくい現象の試
験、実車両では危険を伴う試験などを実施するのに有効な
ツールである。しかし、近年の環境変化、低燃費の要求な
どにより制御が複雑化・大規模化し、さらに製品サイクル
の短縮化のため開発期間が短くなり、膨大な試験をより短
い期間で実施しなければならない、などの理由で、試験の
自動化がニーズとして注目されている。
モータ
(メカ部)
(Simlinkモデルで記述)
エンジン
負荷
トルク演算
-
+
Id、Iq
INV印加電圧
トルク
トルク
モータ定数
トランスミッション
モータボード
(電気モデル部)
(ハードマクロ化)
インバータ
モータ
(電気部
(電気部)
電気部)
θ
ゲート駆動信号
相電流
レゾルバ信号
I/Fボード
DC電流
素子電流
相電圧
E
C
U
E
C
U
制御ソフト
図2 モータシミュレーション
Fig.2 Motor Simulation
図1 CRAMAS外観
Fig.1 CRAMAS
一方で、CAN(Controller Area Network)に代表され
る通信ネットワークの評価を行なうシミュレータの開発を
進めている。車両内ではプロトコルの異なる複数のネット
ワークが存在する。近年ではネットワーク化された各
ECUが協調して制御を行っており、ネットワーク間を接
33
富士通テン技報 Vol.28 No.2
続し情報伝達をするため、ゲートウェイ(以下G/W)機
能をもつECUが必要となる。またネットワークの大規模
化に伴い、G/W-ECUもマルチチャンネル化が進んでいる
(図3)
。
パワー
トレーン系
シャシ系
ボデー系
低速
ボデー系
どが目的であり、サンプリング速度は速くても100μs程度
である。しかしながらITSの開発や評価では、自車両・
ターゲット車両・周辺監視といった同時刻で発生する事象
データを高速かつ大量に記録することが重要である。特に
安心・安全システムでは、センサとなるミリ波レーダの
ビート信号(1)計測は1MHz(1μs)以上のサンプリング速
度を必要とし、同時に自車とターゲット車の位置関係を精
度よく評価するためのGPS信号、周辺状況を記録する多
チャンネルのカメラ信号の計測を行うため、記録装置には
高速サンプリングと膨大なデータを欠落なく記録保存でき
る機能が要求される(図5)
。
図3 G/W-ECU
Fig.3 G/W-ECU
レーダビート
G/W-ECUの評価では、各ネットワークの通信負荷や、
状態(スリープ・ウェイクアップ)、バスの断線・短絡に
よる動作検証を行う項目があり、マルチチャンネル化され
ると評価項目の組み合わせは膨大となる。それらの検証項
目を効率的に実施しなければならないため、以下の機能を
開発した。
①バス負荷調整機能
②通信とI/Oの時間同期
③通信ログ専用のビューア
④評価パターンの自動生成および連続実行機能
レーダCAN
カメラ画像
GPS位置
図5 計測データの種類
Fig.5 Measurement Data for Millimeter-Wave Radar
評価パターン自動生成
3.2 CORMOの紹介
無数の組み合わせを自動生成・
連続実行
これらの課題を満足するため当社が開発したデータ計測
装置「CORMO」を下記に示す(図6)
。
CORMOは、レーダのビート計測を目的とした、最速
5MHzまでサンプリング可能なアナログ/デジタル計測を
はじめ、カメラ画像データ、CAN通信データ、RS232C通
信データ(GPS位置)が計測できる。PCとのインター
フェイスにはPCIe(Peripheral Component Interconnect
express)通信で行い、高速で大量のデータをPCへ転送、
逐次ハードディスクへ保存される。保存されたこれらデー
タには1μs精度のタイムスタンプが付加され、計測した全
てのデータを時間同期で再生することも可能である。
バス番号 状態
1
1
2
2
3
5
・
・
・
・
・
・
イベント
1
3
2
・
・
・
専用ログビューア
各バスの通信ログとI/Oのログを
時間同期で表示
CRAMAS
任意のバス負荷に設定
G/W−
−ECU
ECU
ECU
ECU
データ
ECU
ECU
バス
No.
3
バス
2
ECU No.
バス
No.
1
結果レポート生成
中継漏れ確認
図4 G/W評価用CRAMAS
Fig.4 CRAMAS for G/W ECU
3
3. 安心・安全分野への適応
安心・安全分野への適応
3.1 レーダ評価装置への要求
当社では、自動車を中心とした制御システム開発装置お
よび、データ収集解析装置の開発を行ってきた。
例えばパワートレーンを対象としたシミュレーションで
は、各種センサのアナログ信号出力、評価対象ECUの
RAM値計測、評価対象に接続される通信データの模擬な
34
図6 CORMO外観
Fig.6 CORMO
*(1)ミリ波レーダのFM-CW(Frequency Modulation Continuous
Wave)方式ではレーダからの送信波がターゲットにあたっ
て反射され受信波となり、受信部で送信波と受信波がミキシ
ングされたビート信号から、物標の距離と速度を同時に計測
できる。
制御開発用シミュレータ「CRAMAS」のITS分野への取り組み
表1 CORMO主要諸元
Table 1 CORMO Specifications
計測項目
CH
アナログ計測
8
Max 5MHz ビート信号の計測
デジタルI/O
24
Max 5MHz 計測タイミング信号
カメラ画像
4
30fps
サンプリング
用途
周囲状況
CAN
4
─
レーダ演算結果、
車速など
RS232C
2
─
GPSによる位置計測
LVDS
4
─
外部機器との通信
LAN
1
─
PCとの通信
PCIe
1
─
PCとの通信、
データ保存
3.3 計測用アプリケーション
CORMOとともに開発した、計測と再生アプリケーショ
ンを紹介する(図7)。アプリケーションはホストPCの
Windows上で動作し、PCとCORMO間はPCIe通信で計測
条件の設定、計測実行、保存、再生の操作を行う。
計測画面上では、アナログ・デジタルの生信号、CAN
データをモニタリングしながら、同時にレーダが認識する
物標状態(距離・角度・相対速度)の鳥瞰図や、カメラ画
像とのトラッキング表示、グラフ表示が可能である。また、
実路走行の長時間計測やCAN信号の変化をトリガにして
時刻をさかのぼったデータ保存も行える。
再生は、保存されたデータをフォルダ単位で選択し、
ビート信号のFFTグラフ表示・レーダ認識数値・鳥瞰
図・カメラ画像上への物標トラッキング図や後述するアル
ゴリズム演算中の変数挙動や物標表示機能を備えている。
図7 アプリケーション画面
Fig.7 Monitoring Screen
3.4 アルゴリズム開発のための評価装置
ミリ波レーダのアルゴリズムは、ビート信号成分に含ま
れる全検知物標から、ターゲットとする物標(先行車、対
向車やバイク)の抽出、その距離・横角度・自車との相対
速度を正確に算出する機能である。さらに周囲物の影響に
よるロスト、本来存在しない物標(ゴースト)対策も必要
である。
アルゴリズム開発手法として、試作レーダを車両に装着
し、テストコースやフィールド試験場でビート信号を計測
し、PC上でC言語やMATLAB/Simulinkで構築されたアル
ゴリズムにビート信号を繰り返し再生入力することで、認
識判定の改善を実施している。しかしながらPC上では割
り込みシーケンス通りのプログラム実行ができず、また
PCの演算結果によるアクチュエータ駆動や他ECUへの
データ通信では、リアルタイム性に欠けるため、レーダ単
体開発での使用に留まっている。
このため、当社で2002年にパワートレーン制御開発用に
開発したRapid Prototype ECU「Rtype」を応用し、
「CORMO + Rtype」を開発した。Rtypeは、ECUのハー
ドウエアの試作をすることなく、実ECUと同等の処理を
行うことができる装置である。
図8 CORMOとRtypeの接続
Fig.8 Application CORMO with Rtype
このRtypeと先述したCORMOを連携することにより、
ITSの開発・評価を効率的に実施することが可能となる。
具体的には、CORMOで計測されたビート信号の計測デー
タをLVDS(Low Voltage Differential Signaling)通信で
Rtypeへ送信、Rtypeに搭載されたCPU(Pentium)では、
高速フィルタ演算(FFT処理)するとともに、レーダに
実装されるアルゴリズムと同様の物標認識ソフトウェアを
演算し、その物標認識結果をCAN通信データ、またはホ
ストPCへ出力することができる。
同時にカメラ画像データもRtypeへ転送し、Rtypeで演
算された認識結果とのトラッキングを行うことで、アルゴ
リズム結果の良否判定が簡単に行える。
またレーダのアルゴリズムだけでなく、走行車両を検出
して車速と車間距離を自動調整する「ACC(アダプティ
ブクルーズコントロール)」や、先行車や障害物、歩行者
などとの衝突の被害を軽減する「PCS(プリクラッシュ
セーフティシステム)」などの制御アプリケーションを
Rtypeに組み込むことで、システム全体の制御を対象にし
た開発・評価が可能となる。
35
富士通テン技報 Vol.28 No.2
システム
PCIボード
データ保存
CORMO
センサ
3.5 おわりに
Rtype
計測
CPUボード
車両挙動
周辺変化
高速フィルタ演算
レーダアルゴリズム演算
結果出力
アクチュエータ
CANボード演算
図9 CORMO + Rtype構成図
Fig.9 CORMO and Rtype Configuration Diagram
今後、レーダセンサやITSの自動評価環境構築にも取り
組む予定である。開発されたレーダセンサやアルゴリズム
の評価は、実車走行をしながら撮影したカメラ画像中の
ターゲット車両と、レーダで認識したターゲット車両(物
標)を比較することで評価を行っており、多大な工数を必
要としている。
この課題に対しては、高精度なGPSとCORMO + Rtype
を用いて、Rtypeにレーダ捕捉の判定基準となるロジック
を組み込むことで自動化が可能となる(図10)
。
レーダ車
GPS
参考文献
1)山崎他:CRAMASモータボードの開発、富士通テン技
報46号(2005/12)
2)野海他:車載LAN開発への取り組み、富士通テン技報
49号(2007/6)
車両間の
位置演算
ターゲット車
GPS
レーダ車
カメラ
ITS分野での開発では、レーダやカメラ、GPSだけでな
く、あらゆる走行状況や周辺環境の情報を取り込む必要が
ある。たとえば車室内、車両周辺、車両間通信、道路状況、
衛星信号、サービスセンターとの通信など、多種多様な
データが出現してくる。
今回紹介したCORMO、Rtypeではミリ波レーダでの適
応を紹介したが、今後はCORMOのツールチェーン化によ
り、より高速で大量データの計測,システムまで含めたア
ルゴリズム開発の早期化に対応できる統合開発ツールへと
発展させていく。
また、今後も発展する環境対応技術、安心・安全のため
の技術、通信技術などの車両開発において業務改革、開発
の効率化が求められる。HILシミュレータに代表される開
発環境の活用・整備は必要不可欠であり、当社ECU製品
群とともに発展させていく。
レーダ認識
と
物標位置
比較
物標認識
画像処理
Rtype
図10
自動評価
Fig.10 Automatic Test Outline
筆者紹介
丸山
晃
(まるやま
田中
あきら)
1989年入社。以来、自動車用制御機
器の製造および制御システム開発
用シミュレータ(CRAMAS)の開
発に従事。現在、ITS技術本部 共通
技術統括部CRAMAS部に在籍。
36
(たなか
誠吾
せいご)
1981年入社。以来、自動車用制
御機器の開発および制御開発用
ツールの開発に従事。現在、
ITS技術本部 共通技術統括部
CRAMAS部に在籍。
山崎
剛
(やまさき
たけし)
1983年入社。以来、自動車用制
御機器の開発に従事。営業技術
を経て、現在、ITS技術本部 共
通技術統括部CRAMAS部部長。
当社特許の紹介
当社特許の紹介
発明の名称:盗難防止装置、及び盗難防止方法
特許第4289938号
発明者:松原
学、吉村
実
この発明は車両用の盗難防止装置に関する。
盗難防止装置は遠隔操作によるドアロックに連動して警戒モードがセットされ、警戒モードにおいて車両に加わる振動
などの盗難行為を検出すると警報を発生させる装置が一般的である。最近では、車両のエンジンを遠隔操作により始動さ
せる遠隔始動装置も実用化されている。
同じ車両に盗難防止装置と遠隔始動装置が搭載された場合、遠隔始動を行なうときは使用者が車両から離れていること
が多いため、遠隔始動を行う際に誤ってアンロック操作を行ってしまった場合など、もし仮に警戒モードがセットされて
いない状態で、遠隔操作によってエンジンが始動されてしまうと車両盗難の被害に遭う危険性が非常に高くなる。
その問題点を解決するために、本発明は遠隔始動を行なったときは盗難防止装置を警戒モードにセットするようにした。
また、エンジンが始動すると車両が振動するが、盗難防止装置が警戒モードにセットされると、その振動を検出して誤
った警報を出力してしまう。そのため、本発明はさらに遠隔始動により盗難防止装置を警戒モードにセットするときは、
通常の警戒モードとは異なり、振動センサ等誤警報につながる一部のセンサを無効にする警戒モードをセットするよう
にした。
本発明の構成を図1に示す。
図1 車両用盗難防止装置の構成図
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富士通テン技報 Vol.28 No.2
送信機51はロック/アンロックとエンジンの遠隔始動/停止の指示信号を送信可能となっている。盗難防止装置41はロ
ック/アンロック指示信号を受信するとドアをロック/アンロックすると共に、警戒モードをセット/リセットする。ロ
ックにより警戒モードをセットしたときは、通常の警戒モードとなり、全てのセンサを有効とする。この状態でいずれか
のセンサが盗難行為を検出すると警報音発生手段12が警報を発生する。
一方、盗難防止装置41は送信機51から遠隔始動指示を受信するとACCリレーなどの各リレー46〜48を制御してエンジ
ンを始動させる。このとき、警戒モードも同時にセットする。このときにセットされる警戒モードは振動を検出して誤
警報を引き起こす恐れのあるセンサ(侵入者検出手段11など)を無効とするモードである。従って、この状態でドア開
閉検出手段7などで盗難行為を検出すると警報を発生させるが、侵入者検出手段11で盗難行為を検出しても警報を発生さ
せない。
以上の構成により、遠隔操作でエンジンを始動させるときに盗難防止装置が警戒状態にセットされていない状態であっ
ても、遠隔操作に連動して警戒状態にセットするため、車両盗難の被害に遭う危険性が低くなる。また、遠隔始動に連動
して警戒状態にセットしたときは誤警報を引き起こす恐れのあるセンサを無効にしたため、誤警報を防止できる。
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当社特許の紹介
特許登録紹介
2010年4月1日から2010年9月30日の間に登録公報が発行された当社特許を以下に紹介する。
特許:115件
登録番号
4554645
出願名称
電子制御装置およびそのデータ通信方法
4553579
携帯用送信機、
処理装置、
及び遠隔操作システム
4551432
4551349
4551145
ダイバシティ受信装置およびダイバシティ受信方法
制御対象シミュレーション装置
レーダ装置、
レーダ装置の制御方法
4549986
デジタル放送受信機及びデジタル放送受信方法
4549399
ドアのキーレス開閉システム
4549233
情報端末装置
4549077
シミュレーション装置及び該装置のプログラム
4548980
4548883
ナビゲ−ション装置
リモートコントロールシステム、
及び受信機
4546282
通信システム
4544881
4544814
4541973
物理モデル作成装置、
該物理モデル作成装置を備えたシミュレーション
装置、
及び物理モデル作成装置におけるプログラム
情報端末装置
運転支援装置および運転支援方法
4541660
4540653
表示装置
故障診断方法、
及び故障診断システム
4536889
車両の運転支援装置
4536864
タッチパネル装置、
タッチパネルのキャリブレーション方法および電子
装置
文字の表示方法および装置
組合せ決定装置、
組合せ決定方法、
組合せ決定プログラムおよびレー
ダ装置
周辺監視装置
4536852
4536381
4535585
発明者
鷹取 剛
山下 真史
坂本 宏昭
松原 学
竹江 章
吉村 実
珍田 武志
北住 直樹
洞井 義和
石井 聡
八塚 弘之
島 伸和
一津屋 正樹
中嶋 靖夫
浅見 秀夫
柴田 大介
立間 数也
吉村 実
佐々木 義弘
村上 昌彦
吉本 卓己
森山 裕
中南 智敬
中石 信一
松原 学
吉村 実
井上 典昭
嘉本 光宏
一田 晴久
前畑 実
森山 裕
中南 智敬
上岡 昇二
春本 哲
松田 悠作
大和 俊孝
崎山 和広
鷹取 剛
松尾 智裕
冨山 浩一
中村 元裕
小野 孝道
明瀬 裕貴
南田 将哉
崎山 和広
清水 俊宏
佐古 和也
松川 洋
安永 秀樹
濱田 勲
岸田 正幸
樋口
共願社
富士通株式会社
トヨタ自動車株式会社
崇
39
富士通テン技報 Vol.28 No.2
登録番号
4531085
ドライブレコーダ
4531077
車両の走行状態表示装置
4530986
4530831
ディスクチェンジャのディスク収納部の分割装置
可変動弁システムの制御装置
4530639
音場調整装置、
サラウンド回路、
及び車載用音響装置
4530625
遠隔始動制御装置
4530623
サラウンド回路
4530549
移動体搭載品
4528999
追突防止装置
4526812
4526307
スイッチ電源装置、
昇圧回路および昇圧方法
機能選択装置
4523095
4522435
情報処理装置、
情報統合装置および情報処理方法
高周波回路装置、
及びレーダ装置
4522019
ディジタルテレビ放送用受信機およびアンテナ
4521904
4520362
4519957
車両用盗難防止制御装置、
及び車両用盗難防止システム
エンジン自動停止始動装置および方法、
ならびにエンジン制御システム
車両の運転支援装置
4519797
車載レーダ装置及び車載レーダ管制システム
4519780
レーダー装置及びその故障診断方法
4519284
4516557
4516261
4516178
4515555
4515366
ナビゲーション装置
表示装置
車載用TV録画再生装置
車両用ナビゲーション装置
光ピックアップ
始動制御装置
40
出願名称
発明者
本島 雅浩
石水 厚
塚本 昭
殿川 富士夫
森本 竜一
中島 一成
上谷 哲也
古石 朋久
行松 規光
黒川 亮介
池田 慎治
冨田 裕二
松井 英樹
松浦 章
吉村 実
冨田 裕二
松井 英樹
関 秀樹
秋田 裕宣
土田 秀憲
藤井 久士
黒田 修作
岸本 悟
澤田 純一
中野 雅夫
意眞 哲也
小松 和弘
吹井 大介
榎本 大舗
大西 康司
本田 加奈子
渡辺 弘道
米本 宜司
杉浦 慎一
近石 幸一
合原 秀法
荻野 和滋
高山 一男
榎本 祥二
山口 一陽
清水 俊宏
佐古 和也
山下 忠将
本田 加奈子
伊佐治 修
白川 和雄
大久保 尚史
関 哲生
中野 雅夫
岡 謙治
嘉本 光宏
小寺 洋之
嘉本 光宏
宮野 和彦
豊田 光博
松原 学
共願社
トヨタ自動車株式会社
富士通株式会社
富士通株式会社
当社特許の紹介
登録番号
4515156
窓管理装置
出願名称
4514050
平面スピーカ
4512112
運転情報記録装置
4511953
4510509
交通機関案内装置および方法
直流電源装置及び直流電源装置を備えたエアバッグ装置
4510275
4509002
記録担体読取機構の駆動方法
遠隔始動制御装置
4508827
板体直接駆動振動装置
4508599
4508433
4503657
データ圧縮方法
複眼カメラの調整方法及び調整装置
ダイバーシチ受信装置
4503487
楽曲情報提供システム、
端末装置、
および端末プログラム
4503224
スピーカユニット及びスピーカユニットの取付構造
4503062
再生装置
4503000
4502781
車載用侵入検知装置
エンジン始動制御装置及びエンジン始動制御方法
4502541
4495234
携帯端末装置
省燃費運転診断装置、
省燃費運転診断システム及び省燃費運転診
断方法
4495205
エコ運転支援装置
4495124
4494162
信号処理装置、
信号処理装置を備える車両用制御ユニットおよび車両
用制御ユニットを備える車両
運転支援装置
4494117
運転支援システムおよびナビゲーション装置
4493953
4493528
移動体位置提供装置および移動体位置提供システム
光ピックアップの光軸調整装置及び調整方法
発明者
春本 哲
大和 俊孝
竹内 博
前野 義彦
崎山 和広
中村 元裕
中島 裕造
池田 宏
大谷 清司
西川 彰
中島 裕一
前田 宗則
澤田 純一
尾崎 士郎
小牧 弘之
前野 義彦
佐藤 裕一
梅澤 浩昭
小池 昌樹
吉村 実
木村 康臣
中島 裕一
大谷 清司
西川 彰
日高 昇
嘉本 光宏
秋月 義樹
三田 勝史
伊藤 修朗
高山 一男
合原 秀法
吉本 卓己
内 俊介
永元 覚
尾] 行輔
平岡 玲子
津森 克彦
西川 彰
小野 紘平
中島 一成
佐々木 義弘
西 雅史
濱上 斉
木村 康臣
野崎 敏宏
春本 哲
清 幸栄
竹内 彰次郎
元永 豊
齊藤 幹
小松 和弘
木戸 啓介
春本 哲
山田 正博
松田 悠作
野守 寛典
中村 元裕
松井 英樹
冨田 裕二
市村 淳
肥田 昌志
共願社
トヨタ自動車株式会社
古河電気工業株式
会社
トヨタ自動車株式会社
株 式 会 社 豊田中央
研究所
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
41
富士通テン技報 Vol.28 No.2
登録番号
4493400
ディスクオートチェンジャ
4493217
光ピックアップ調整装置、
およびこれを備える光ピックアップ調整システム
4493200
タッチパネル搭載機器調整装置およびタッチパネル搭載機器調整方法
4489101
4488983
電力供給制御装置及び電力供給制御方法
ラジオ受信機及び受信方法
4488923
楽曲データ配信システム、
及び端末装置
4482291
スピーカ装置
4478731
通信装置及びゲートウェイ装置
4477561
内燃機関の制御装置
4476681
4476575
物標特定装置、
物標特定方法および物標特定プログラム
車両状況判定装置
4476271
4476228
制御装置
シミュレーション装置
4476014
4473113
シミュレーション装置
台形型エレメントアンテナ
4471472
ノイズ除去装置
4471127
スピーカ装置
4468921
デジタル放送受信機
4465780
車両センタクラスタの電気的接続構造
4464716
駆動システムおよびこれを搭載した自動車
42
出願名称
発明者
藤本 文彦
小川 宏一
山中 康誉
畑田 健一
小河畑 幸次
岩本 雅美
中北 尚夫
金田 喜隆
井上 明
山口 一陽
西澤 秀志
三野 修
永元 覚
笠井 和善
中島 裕一
大谷 清司
浜田 一彦
平本 光浩
西橋 奨
山下 真史
本谷 謙治
藤沢 行雄
山中 聡
嶋内 宏明
大塚 郁
出村 隆行
大井 康広
相原 義人
永田 哲治
西村 淳也
岸田 正幸
春本 哲
大和 俊孝
竹内 博
前野 義彦
宮本 直敏
宮崎 眞司
森山 裕
細川 健司
飯野 賢吾
久井 茂幸
山下 裕稔
田中 秀明
大矢 泰伸
長尾 孝司
荻野 和滋
永海 正明
堀本 学
小脇 宏
由井 啓之
珍田 武志
田辺 睦雄
田中 寿夫
須佐美 博丈
森 園恵
高山 一男
合原 秀法
山内 勝次
横山 克治
勝田 浩司
有田 寛志
共願社
株式会社村元工作
所
トヨタ自動車株式会社
株式会社ルネサステ
クノロジ
トヨタ自動車株式会社
小島プレス工業株式
会社
トヨタ自動車株式会社
株式会社デンソー
トヨタ自動車株式会社
当社特許の紹介
登録番号
4463628
4463116
4462916
出願名称
シミュレータ装置、
シミュレーション方法およびプログラム
スピーカ装置
基準電圧発生回路、
誤出力防止回路、
及び制御装置
4460110
4459918
4459889
ナビゲーション装置
スイッチングレギュレータ
始動制御装置
4459584
レーダ装置および距離算出方法
4458990
4458857
デジタルデータ受信機
処理装置
4458807
デジタル信号処理装置、
システム、
方法およびホスト装置
4458721
車載用電話システム、
ハンズフリー装置、
及び携帯電話装置
4456631
エコ運転支援装置
4456630
エコ運転状態表示装置
4454645
4454599
ディジタル放送受信機
ログデータ収集システム
4451869
4451866
車両用遠隔始動装置
車両盗難防止機能の制御装置
4451855
信号処理装置および制御ユニット
4451531
4451405
4447946
4447802
4445952
4445493
デジタル放送受信機およびメール端末装置
車両用バッテリの管理装置及び管理方法
レーダ装置
ROM書込装置
レーダ装置
運転支援装置
発明者
久井 茂幸
平本 光浩
小松 和弘
木戸 啓介
西田 祐輔
宮野 和彦
小宮 基樹
小池 昌樹
鶴田 典男
阪本 武志
小野 誉生
本田 加奈子
伊佐治 修
橋本 順次
松原 学
竹江 章
吉村 実
橋本 欣和
笠目 知秀
朝山 信徳
清水 雄一郎
大和 俊孝
北尾 英樹
岩本 真一
石尾 雅人
松尾 智裕
冨山 浩一
渡邊 将利
齊藤 幹
松尾 智裕
石尾 雅人
冨山 浩一
渡邊 将利
齊藤 幹
佐々木 満
笹 隆司
阪口 真行
木村 聡行
家後 麻里子
竹村 弘樹
竹村 弘樹
松原 学
鶴田 典男
小松 和弘
木戸 啓介
大西 康司
中嶋 靖夫
山口 一陽
伊佐治 修
山村 慶孝
本田 加奈子
中島 一成
共願社
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
43
富士通テン技報 Vol.28 No.2
製品紹介
AVN Lite
AVN 110M
だれでもかんたんに使えるシンプルさで大好評のAVN Lite。
大きな文字とボタンで見やすいメニュー画面から、イクリプスならではの正確で親切なナビ機能や、楽しさいっぱいのAV機能を迷わ
ずスムーズに使いこなせる。しかも見た目もすっきりジャストフィット。
そんな、みんなに「ちょうどいい」感覚がライトの魅力です。
NEW
AVN 110M
メモリーナビゲーション内蔵 ワンセグ/CD 7.0ワイドQVGA
AVシステム(AVメインユニット・SDメモリーカード・ワン
セグ/GPS一体型フィルムレスアンテナ付属)
オープン価格
ポータブルナビゲーション
EP001C
ナビゲーションとオーディオビジュアルを一体化させ、現在のカーナビのスタイルを
創造したイクリプスから、ついにポータブルナビが登場。使いやすさとわかりやすさ
を追求して大好評を獲得した〈AVN Lite〉の魅力を、コンパクトなボディに凝縮。だれ
もが快適に使いこなせる操作性に加え、安全なドライブをサポートするバックアイ
カメラを標準でパッケージ。さまざまなカーライフにフィットする「ちょうどいい」
ポータブルナビの誕生です。
NEW
EP001C
フラッシュメモリ内蔵 ワンセグ 5.0ワイドQVGA
ナビゲーションシステム バックアイカメラパック
オープン価格
高画質・高音質フルセグ内蔵ナビ
フルセグ内蔵ナビ
AVN770HDmkⅡ
AVN660HDmkⅡ
地デジやDVDのサラウンド音響にも対応し、さまざまなAVメディ
アを統合できる柔軟性。すべてが、クルマという空間に居ることを
忘れさせるほどの表現力にみちています。
NEW
AVN770HDmkⅡ
HDDナビゲーション内蔵HDD/DVD/地上デジタルTV 7.0ワイドVGA AVシステム
(AVメインユニット・デジタルTV/GPS一体型フィルムレスアンテナ付属)
希望小売価格
44
262,500円
多彩な音楽メディアへの対応や地デジ番組の受信、そして賢い
渋滞考慮探索まで搭載した、みんなが笑顔でドライブできる
AVNです。
NEW
AVN660HDmkⅡ
HDDナビゲーション内蔵HDD/DVD/地上デジタルTV7.0AVシステム
(AVメインユニット・デジタルTV/GPS一体型フィルムレスアンテナ付属)
オープン価格
編集後記
自動車の国内需要が横這い、シュリンクするなか、
成長著しい新興国を始めとする海外市場へのシフトが
成長のかなめとなっています。ガラパゴスと称される
日本の情報通信産業の特異な状況でも国内市場に発展
の余地がある間はよかったけれど、もはやそうではな
くなってきました。日本市場と世界市場との間を橋渡
しできる開発姿勢を学んでいくことが急務。
今号では1997年以来当社が繰り返し新機種を投入し
つづけてきたAVNの世界展開構想を紹介しています。
今後AVN以外にもこの流れは継承されていくでしょう。
AVNプラットフォーム開発に携わった方々の経験とノ
ウハウをぜひ今後の開発姿勢に活かしたいものです。
(I.S記)
近年、日本のものづくりの生き残りをかけた競争が
益々激化しているなかで、多くの戦略が議論されてい
ます。
そのなかのひとつに「日本市場の最大の強みである、
日本の消費者の洗練度・先進性を活かした世界市場に通
用する最終製品を開発し、製品革新力で優位に立つ」と
いった戦略が述べられています。今回のテーマのひとつ
である「ドライバーの視界補助を行うMulti Angle
Vision システム」は、まさしく洗練された消費者が生み
出した革新的商品となりました。アニメの主人公がポケ
ットのなかから、すごい道具を出して「あっ」と驚かさ
れたように、世界中の皆様に「驚き」「喜び」をお届け
できる商品を創造することが我々の役割だと思います。
(T.N記)
表紙説明
AVN Lite『AVN 110M』
ほしい機能だけをしっかりチョイスした大人気のAVナビ。
大きな文字とボタンで見やすいメニュー画面から、イクリプスならではの正確で
親切なナビ機能や楽しさいっぱいのAV機能を迷わずスムーズに使いこなせる。
みんなに「ちょうどいい」感覚がライトの魅力です。
編
委
員
集
委
員
富士通テン技報
Dec. 2010 Vol.28 No.2
通巻第56号
2010年12月発行
長
八
員
瀬戸山
郁
代
新
穂
貴
史
浅
田
裕
之
榎
本
祥
二
橋
本
順
次
石
村
桂
三
大
和
俊
孝
加
藤
茂
樹
横
山
義
彦
木
谷
哲
也
丸
山
美
徳
釜
井
隆
夫
木
潔
発
委
行
所
編集発行人
印
刷
所
富士通テン株式会社
〒652-8510 神戸市兵庫区御所通 1-2-28
http://www.fujitsu-ten.co.jp/
八 木
潔
菱三印刷株式会社
〒652-0803 神戸市兵庫区大開通 2-2-11
©富士通テン株式会社
幹
事
事
務
局
塚
本
修
一
江
口
泉
美
2010[不許複製]
本誌の内容についてのお問い合わせは下記富士通テン
技報編集委員会事務局(製品)事統・技術管理部内)へご
照会下さい。
〒652-8510 神戸市兵庫区御所通 1-2-28
電話代表
(078)671-5081
電話ダイヤルイン(078)682-2407
E-mail:[email protected]
記載した製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
45
富士通テングループ
事業所一覧表(2010年12月1日現在)
富士通テン㈱
本社(事務所・工場)
中 津 川 工 場
中津川テクノセンター
宇 都 宮 事 務 所
東 京 営 業 所
豊 田 営 業 所
札幌FSセンター
仙台FSセンター
東京FSセンター
名古屋FSセンター
神戸FSセンター
広島FSセンター
福岡FSセンター
豊田物流センター
神戸物流センター
〒652-8510
〒508-0101
〒509-9132
〒321-0953
〒160-0023
〒471-0024
〒003-0809
〒983-0852
〒160-0023
〒450-0003
〒663-8241
〒734-0044
〒815-0031
〒470-1216
〒652-0845
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
岐阜県中津川市苗木2110番地
岐阜県中津川市茄子川1683番地の1963
栃木県宇都宮市東宿郷3丁目1番1号(中央宇都宮ビル)
東京都新宿区西新宿8丁目14番24号(西新宿KFビル)
豊田市元城町1丁目11(富士通テン豊田ビル)
札幌市白石区菊水9条2丁目2番38号
仙台市宮城野区榴岡3丁目4番18号(タカノボル第22ビル)
東京都新宿区西新宿8丁目14番24号(西新宿KFビル)
名古屋市中村区名駅南3丁目11番10号
西宮市津門大塚町7番35号
広島市南区西霞町2番25号
福岡市南区清水4丁目4番34号
豊田市和会町東山11
神戸市兵庫区築地町6番24号
電 話
(078)671-5081
(0573)66-5121
(0573)68-7002
(028)651-3925
(03)5330-6244
(0565)32-2501
(011)837-5660
(022)256-2291
(03)5330-6418
(052)581-8628
(0798)36-7483
(082)250-5766
(092)511-3263
(0565)21-8801
(078)682-9331
㈱栃木富士通テン
〒329-0203
栃木県小山市大字西黒田91番地
(0285)45-1326
富士通テン東日本㈱
本
北 海 道 支
東
北
支
北 関 東 支
神 奈 川 支
千 葉 営 業
社
社
店
店
店
所
〒160-0023
〒003-0809
〒983-0852
〒338-0004
〒224-0032
〒260-0034
東京都新宿区西新宿8丁目14番24号(西新宿KFビル)
札幌市白石区菊水9条2丁目2番38号
仙台市宮城野区榴岡3丁目4番18号(タカノボル第22ビル)
埼玉県さいたま市中央区本町西4丁目18番1号
横浜市都筑区茅ヶ崎中央24番4号(第6セキビル)
千葉市中央区汐見丘町10番1号
(03)5330-6244
(011)821-2221
(022)256-2291
(048)859-2210
(045)944-1971
(043)241-0121
富士通テン中部㈱
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北
陸
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静
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〒450-0003
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名古屋市中村区名駅南3丁目11番10号
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富士通テン西日本㈱
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中
国
支
四
国
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九
州
支
社
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〒663-8241
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西宮市津門大塚町7番35号
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(087)863-7020
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〒652-8510
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
栃木県小山市大字西黒田91番地
岐阜県中津川市苗木2110番地
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
(078)671-5081
(0285)45-0245
(0573)66-5121
(078)671-5081
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神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
栃木県小山市大字西黒田91番地
岐阜県中津川市苗木2110番地
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
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神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
栃木県小山市大字西黒田91番地
(078)682-2266
(0285)41-1260
富士通テンアクティ㈱
本
社
小 山 事 業 所
中 津 川 事 業 所
富士通テンリサーチ㈱
富士通テンスタッフ㈱
本
社
小 山 事 業 所
中 津 川 事 業 所
富士通テンテクノロジ㈱
富士通テンサービス㈱
本
社
小 山 事 業 所
富士通テン㈱
北京事務所 (Beijing Office) ………………………… 郵編 100004 北京市朝陽区建国門外大街1号中国国際貿易中心1座2710-2711室
(Room 2710-2711, Building1, China World Trade Center, No.1, Jian Guo Men Wai
Avenue, Chao Yang Distric, Beijing, China 100004)
FUJITSU TEN CORP. OF AMERICA (FTCA)
Michigan Operations (MIO) …………………… 47800 Halyard Dr.Plymouth, Michigan 48170, U.S.A.
Los Angeles Operations (LAO) ……………… 19600 South Vermont Avenue, Torrance, California 90502, U.S.A.
Texas Distribution Center (TDC) …………… 5801 South Ware Rd, Suite 200 McAllen, TX, 78503-7799 USA
FUJITSU TEN de MEXICO,S.A. de C.V. ………… Avenida Industrial Del Norte, Manzana 8, Lote 2, Parque Industrial Del Norte,
(FTdM)
Reynosa, Tamaulipas, Mexico
FUJITSU TEN ESPAÑA, S.A. (FTESA)
Pol. Ind. Guadalhorce, C/Cesar Vallejo, 16, 29004 Malaga, Spain
FUJITSU TEN (THAILAND) COMPANY LIMITED (FTTL)
Bangkok Head Office (BKO) ………………… 88 Dr.Gerhard Link Building. 5th Floor, Krungthepkreetha Rd., Huamark, Bangkapi,
Bangkok 10240, Thailand
Rayong Factory (RAF) ………………………… 253 Moo 11, Rojana Industrial Park, Bankhai-Banbung Rd., T. Nongbua, A.
Bankhai, Rayong 21120, Thailand
天津富士通天電子有限公司 ………………………… 郵編 300457 天津経済技術開発区黄海二街5号
(TIANJIN FUJITSU TEN ELECTRONICS CO.,LTD.) (No.5 Huanghai Second Avenue TEDA, Tianjin, China 300457)
富士通天電子(無錫)有限公司 (FTEW) ………… 郵編 214028 江蘇省無錫市国家高新技術産業開発区新華路19号
(FUJITSU TEN ELECTRONICS (WUXI) LTD.)
(No.19, Xinhua Road, Wuxi National Hi-Tech Industrial Development Zone,
Jiangsu, China 214028)
天津日技精密電子有限公司 ………………………… 天津経済技術開発区南海路156号 津濱科技園通廠27号
(TIANJIN RIJI PRECISION ELECTRONIC CO.LTD.)
(Factory No.27, JinBin High-tech Industrial Park, No.156 Nanhai Road, TEDA,
Tian jin, China)
FUJITSU TEN CORPORATION OF THE PHILIPPINES (FTCP) … 100 South Science Avenue, Laguna Technopark, Sta. Rosa City, Laguna, Philippines
FUJITSU TEN CANADA INC. (FTCI) …………… 1149 Bellamy Road North, Unit 1, Scarborough, Ontario, M1H, 1H7, Canada
ECLIPSE TD (UK) LIMITED (ETUK) ……………… LOE House, 159 Broadhurst Gardens, London NW6 3AU, UK
FUJITSU TEN (EUROPE) GmbH (FTEG)
Düsseldolf Office (DUO) ……………………… Mündelheimer Weg 39, 40472 Düsseldorf, Germany
Technical Center Nürnberg (TCN) …………… Südwestpark 23, 90449 Nürnberg, Germany
Brussels Office (BRO) ………………………… Leuvensesteenweg 555/B.6, B-1930 Zaventem, Belgium
FUJITSU TEN KOREA LIMITED (FTKL)
Susong Tower Building 16th floor, 83-1 Susong-Dong, Jongno-gu, Seoul, Korea
富士通天国際貿易(天津)有限公司 (FTTT) …… 郵編 300074 天津市河西区囲堤道125号天信大厦1805
(Tianxin Building 1805, No.125 Weiti road, Hexi district, Tianjin, China 300074)
(FUJITSU TEN TRADING (TIANJIN) LTD.)
上海分公司 …………………………………………… 郵編 200041 上海市南京西1168号中信泰富広場14階1401室
(Shanghai Branch)
(Citic Square 1401, No.1168 Nanjing West Road, Shanghai, China 200041)
広州分公司 …………………………………………… 郵編 510613 広州市天河北路233号中信広場写字楼1204室
(Guangzhou Branch)
(Room 1204, CITIC Plaza, 233 Tianhe North Road, Guangzhou, China 510613)
FUJITSU TEN (AUSTRALIA) PTY.LTD.(FTAL) … 89 Cook Street Port Melbourne, Victoria 3207, Australia
FUJITSU TEN (SINGAPORE) PTE. LTD. (FTSL) … 20 Science Park Road #02-01/03, TeleTech Park, Singapore Science Park2,
Singapore 117674
富士通天研究開発(天津)有限公司 (FTRT) …… 郵編 300457 天津経済技術開発区黄海路280号
(FUJITSU TEN RESEARCH & DEVELOPMENT (TIANJIN) LTD.) (No.280, Huang Hai road, TEDA, Tianjin, China 300457)
FUJITSU TEN SOLUTIONS PHILIPPINES,INC. … 8th floor East Tower, Philippine Stock Exchange Center, Ortigas Center Pasig
(FTSP)
City, Metro Manila, Philippines
電 話
86-(10)6505-3535
1-(734) 414-6650
1-(310) 327-2151
1-(956) 686-8601
52-(899)921-8700
34-(95)213-3000
66-(2)704-4979
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63-(2) 793-2900
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49-(211)301875-550
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32-(2)712-8181
82-(70)8850-9102
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61-(3)9646-6004
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