2008 年度 森泰吉郎記念研究振興基金研究成果報告書 慶應義塾大学政策メディア研究科 修士2年 80724564 小林亮一 「ルーマニア古都シビウにおける遺産保存に関する研究」 1.研究背景と目的 近年、効率重視の画一化が進んだ都市が増えその一方で、競争力のない地方都市では、目に見える衰退を体感すること ができる。 そのような状況下で「歴史」というその場でしかない魅力を活かした都市の必要性が問われている。一方で歴史は、常に 更新され続け、多くの都市がその重層化する歴史のもとで構成されている。 重層する歴史を都市内に、いかに落とし込み、歴史を活かした都市づくりをおこなっていくのかという問題は非常にむず かしい課題である。 2.研究目的 数ある重層都市の中で、歴史的重層性を活かした都市景観が評価され世界遺産に認定されたルーマニアの都市シビウを 対象とし、異なる時代の建築群がいかに形成されたのか ①様々な時代の層を有する都市構造 ②都市景観に影響をもたらす重層的な建築群 の二点の形成プロセスや形成要因を追求することで、今後の歴史を活かした都市づくりにひとつの視座を与えることを目 的とする。 3.研究対象地 対象地として選択した理由 ①文化の重層地域でそれぞれの歴史的建物が都市内で調和しているという理由から世界遺産やヨーロッパ文化都市に選 ばれている ②目に見える形で歴史性が保存されている。 ③歴史的建造物の多くが破壊された社会主義時代を、経験しながらも、14-19 世紀までの建物が、独自の増改築手法の 成果もあり中世の町並みを保持しつつ現在までにいたっている。 4.活動内容 ルーマニア班夏季調査日程表 8月 1日 2日 3日 4日 5日 ファン キー チキ ン中 村君 と交 流 EVENT MEMBER 6日 8日 9日 10日 11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日 18日 19日 20日 21日 22日 23日 24日 25日 26日 27日 28日 29日 30日 31日 1日 ロジスティク 小林 ス 橋爪 バス、列車 イスタ イスタン→ブ ン着 カレスト 22:3 5 ブカレスト 小林 イスタンブー ル コスミナさん (シニガリアさん) (館崎さん) 橋爪 (シニガリアさん) (館崎さん) 2日 3日 4日 ① 2008 年 8月 3 日~ ス イスタ ブカ 夜に チャ ン レスト 出国 バ(バ 三宅先生 中村 7日 ベル ベル ギー ギー 8月4日 エチ オピ ア バス 電車 レンタカー 予約 アルボレ、パ トラウツィ、 ス (プトナ)修 バリネシュ チャ 道院実測 ティ バ スチャヴァ (フモール 村)拠点 アルボレ、パトラウツィ、(プトナ)修道院 実測 アルボレ、パトラウ ツィ、(プトナ)修道 院実測 シビウ実測 ビエルタン近郊建物調査 「トランシ ビストリツァ シギショアラ 建築物調査 ブカ レスト ルヴァニア ブカレスト 建築レクチ はし づ帰 国 ワラキア建築調査 ャー」 ブカレスト ブカレスト にてコスミナ・コヅィア氏にシビウ現代建築に関してレクチャーいただく。 ②2008 年8月 17 日~8月 24 日 「シビウ歴史的住居実測+ヒアリング+資料収集」 歴史遺産指定を受けている 89 戸の住居の中からシビウの居住スタイルの原点ともなった最古の石造建築である 14 世紀 からの建造物 5 軒(8 軒中)の実測と住人、市の役人のヒアリングを行うことで、増改築の変遷を整理した。 ③2008 年8月 25 日~8月 31 日 「シビウ周辺都市悉皆調査+資料収集」 建築的特徴の把握のために、一軒一軒の写真撮影。 ④2008 年9月1日~9 月4日 「シビウ建築の資料収集+シビウバロックレクチャー」 ルーマニア文化省にて、シビウ建築に関する資料を収集するとともに、ハンナディレイ氏にシビウバロックに関してレク チャーを受ける。 5.活動成果 ①建築変遷整理 レクチャーや、資料をもとにシビウの建設当初から、近代化を果たす 1918 年までの建築的特徴を Fig_1 のようにまとめ た。 Fig_1 ② 実 測結果 Fig_2 で示されるように屋根裏の妻壁の跡とあわせ建物の躯体自身もかつての建築風景を想起させるものとして保存し ていることが明らかになった。 Fig_2 ③都市との関連性 Fig_3 のように各地区ごとにまとまった建築要素があり、層としてまとまり保存していた。 Fig_3
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