第10回セルフメディケーション学会要旨集を公開しました。

第10回 日本セルフメディケーション学会
講演要旨集
テーマ
ひとり、ひとりに合ったセルフメディケーション支援
~見て、視て、聴いて、コミュニケーション~
年会長
慶應義塾大学薬学部 教授
福島 紀子
会 期
2012 年 10 月 13 日(土)~14 日(日)
会 場
慶應義塾大学薬学部 芝共立キャンパス
第 10 回日本セルフメディケーション学会事務局
〒105-8512 東京都港区芝公園 1-5-30
慶應義塾大学 薬学部 社会薬学講座内
TEL:03-5400-2650 FAX:03-5473-0740
E-mail:[email protected]
http://www.self-medication.ne.jp/event/
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会場案内
慶應義塾大学薬学部 芝共立キャンパス
◆住所・電話番号
〒105-8512 東京都港区芝公園 1-5-30
TEL:03-5400-2650 FAX:03-5473-0740
◆交通アクセス
講演・シンポジウム
1号館 地下1階
マルチメディア講堂
ポスター会場
・JR 山手線及び JR 京浜東北線 浜松町駅下車 徒歩 10 分
・都営地下鉄三田線 御成門駅下車、徒歩 2 分
・都営地下鉄浅草線及び都営地下鉄大江戸線
大門駅下車 徒歩 6 分
1号館 1階 正面入口
エントランスホール
交流会会場
1号館 2階 学生ホール
区民講座
2 号館 地下 1 階 B55 教室
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第10回日本セルフメディケーション学会の開催に際して
認定NPO法人セルフメディケーション推進協議会
会長 池田 義雄
副会長 上原 明 生出 泉太郎 関口 信行 鶴田 康則
セルフメディケーションは薬局、ドラッグストアなどで購入した OTC 医薬品(大衆薬)等
を用いて自分で手当てをする自己管理治療という狭義の次元に加えて、肥満、糖尿病、高血圧、
脂質異常といった初期は無症状ながら将来的には重大な疾病として死に直結していく可能性
が予測されるような危険因子に対するセルフチェックや、セルフケアを行う自己健康管理とい
う広義の意味合いの実践も求められます。
さて SMAC は設立以来、日本薬剤師会、日本OTC医薬品協会、日本チェーンドラッグス
トア協会、日本生活習慣病予防協会など本協議会の趣旨にご賛同頂いている団体、企業並びに
個人の皆様のご支援とご協力のもと幅広い活動を展開して参っております。このような実績と
成果を踏まえて、本年 5 月に国税庁長官名で認定 NPO 法人の取得に至りました。このことは
我が国の行政がセルフメディケーションの推進に本腰を入れようとしている表れとも受け止
められ、誠にご同慶の至りです。
本協議会が注力している事業としては、Web による一般向けの「セルフメディケーションネ
ット」と医療関係者向けの「セルフメディケーションプロ」という 2 本立てのネットによるセ
ルフメディケーション活動推進のための情報提供、今回で 10 年目に入った「日本セルフメデ
ィケーション学会」の開催、加えて昨年からは東日本大震災に向けて村田専務理事を委員長と
した SMAC「健康支援隊」による活動が特筆されます。ここではセルフメディケーションの立場
からの災害支援を展開して大きな成果を上げています。その他、地域との連携を視野に安田、
嶋野両理事の肝いりにて「みなと区民まつり」への参加も 2 年目を迎えるに至っています。
このような背景のもと、記念すべき第 10 回日本セルフメディケーション学会は、福島年会
長が掲げられたメインテーマ「ひとり、ひとりに合ったセルフメディケーション支援」にて開
催される運びとなりました。メインテーマに沿った2題のシンポジウムと教育講演を中心に 30
題余のポスター発表があり、この中から「SMAC賞」の授与もなされます。そして2日目の
お昼には、
「タニタ食堂のランチボックス」つき区民講座「食べて実感! タニタ式健康のひ
みつ」
(㈱タニタ協賛)がとり行なわれます。そして初日の夕の恒例の懇親会も大きな楽しみ
です。この機会に会員諸氏の交流が一層深まることを心から期待する次第です。
なお本学会の運営に際しましては、福島学会長とともに実行委員会を主導していただきまし
た大嶋学会担当理事のお力添えに深甚なる謝意を表する次第です。
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第10回日本セルフメディケーション学会
「ひとり、ひとりに合ったセルフメディケーション支援
-見て視て聴いて、コミュニケーション-」
年会長 福島 紀子
慶應義塾大学薬学部 社会薬学講座
認定 NPO セルフメディケーション推進協議会は、安心できる健康の維持と安定した医療費
の確保を両立する「セルフメディケーション」によって「健康で活気あふれる 21 世紀の生活
環境を作る」ことをスローガンとして活動しています。目的を同じくする、本学会では、生活
者のためのセルフメディケーションの推進を、学術的な側面から検討していくことを目的とし
て、毎年学会を開催していますが、本年は 10 月 13 日(土)
、14 日(日)に慶應義塾大学薬学
部において開催する運びとなりました。
今回は「ひとり、ひとりに合ったセルフメディケーション支援-見て、視て、聴いて、コミ
ュニケーション」をメインテーマとしました。セルフメディケーション支援を行う薬局・ドラ
ッグストアには多くの生活者の皆様がいらっしゃいます。この中には、すぐに医療が必要な方
や、一般用医薬品を使用して様子を視たほうがよい方、生活習慣の見直しで様子を視る方など、
個々の状況に応じた適切な対応が求められます。これらの対象の皆さんをセルフメディケーシ
ョンの視点から支援するためには、相当の知識や観察力、話を聴くコミュニケーション能力が
必要です。また、かすかな兆候や、傾向・習慣を、見逃さないで発見する高い専門性に裏付け
られた能力を磨くことも重要です。セルフメディケーション支援として、ひとり、ひとりに合
った最適なプログラムを提案するためには、薬剤師と、医療、保健、福祉関係者等による、協
力した働きが、これまで以上に重要であると考えます。そこで区民講座も含め、広く職種を超
えたシンポジウムや教育講演を用意しました。初日に、
「諸外国から学ぶセルフメディケーシ
ョン支援」を企画し、各シンポジストの皆様に諸外国の例をご紹介いただきます。教育講演で
は、薬科大学で行われている医師と協働して実施している OTC 薬の講義を再現します。2日
目は、メインテーマである「見て、視て、聴いて、コミュニケーション」を医師、薬剤師、患
者の立場でお話しいただきます。ポスター発表は40近い登録があり、OTC 医薬品、食品・
栄養、健康管理、薬育、セルフメディケーションの実践に関連する分野を含み、それぞれの視
点からセルフメディケーションを考えます。関係各位による活発な意見交換を期待しています。
また、区民講座では、管理栄養士を講師に迎え、タニタ食堂のご協力によるお弁当の試食も
含めて、栄養について考えていただきたいと思います。一般向け講座ですが、薬局で生活者に
食事や健康のお話をする上で大変参考になる内容です。楽しみながら、情報共有、意見交換、
懇親・交流の場としての 2 日間としていただければ幸いです。
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第 10 回日本セルフメディケーション学会
年会長 福島 紀子(慶應義塾大学薬学部)
平成 24 年 10 月 13 日(土)、14 日(日) 慶應義塾大学薬学部
プログラム
第 1 日目 10 月 13 日(土)
12:00
受付開始・開場
12:50
ポスター掲示(12:50 までに掲示) 【1 階エントランスホール】
13:00
開会の辞
池田
福島
13:15-15:10
【1号館地下1階
義雄 会長挨拶
紀子 年会長挨拶
マルチメディア講堂】
シンポジウム
【1号館地下1階 マルチメディア講堂】
「諸外国から学ぶセルフメディケーション支援」
座長:亀井美和子(日本大学薬学部 教授)
『英国のセルフケア支援とセルフメディケーション』
松原なぎさ(松原薬局ストア 薬剤師)
『オーストラリアから学ぶセルフメディケーションに係る薬剤師の役割』
坂巻 弘之(名城大学薬学部 教授)
『米国のOTC医薬品を通して考える医療と薬剤師の役割』
陳 惠一(CJCファーマ(株)代表取締役
元カイザー・パーマネンテ薬剤部マネージャー)
質疑・応答
15:15-16:15
ポスター示説
16:15-17:30
教育講演
【1号館 1 階エントランスホール】
進行役:福島紀子(慶應義塾大学薬学部 教授)
「あなたならどうする? むくみを訴える患者さん」
沼田 久美子(東芝プラントシステム株式会社 診療所長、医師)
三上 正利(ミカミ薬局、日本漢方協会副会長、薬剤師)
17:30-18:30
交流会
【1号館2階学生ホール】
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第 2 日目 10 月 14 日(日)
9:30
受付開始・開場
9:45-12:10
シンポジウム
【1号館地下1階 マルチメディア講堂】
「見て、視て、聴いて、コミュニケーション」
座長:吉山 友二(北里大学 薬学部 教授)
『プライマリケアに求められる薬剤師の臨床判断』
木内 祐二(昭和大学薬学部 薬学教育推進センター長・教授)
『保険薬局に勤務する薬剤師の受診勧奨環境』
飯島 康典(イイジマ薬局 薬剤師)
『見て、聞いて、コミュニケーションして』
湯浅 和恵(SJS 患者会)
質疑応答・討論
12:20-12:40
SMAC賞発表
閉会式
次回年会長挨拶
区民講座
12:30
受付開始
13:00-14:40
区民講座
【2 号館
『食べて実感!
地下 1 階
B55 教室】
タニタ式健康のひみつ』
司会:福島紀子
挨拶:池田 義雄(タニタ体重科学研究所 所長)
講師:龍口 知子(株式会社タニタヘルスリンク 健康支援サービス事業部)
※タニタのお弁当を食べながら栄養管理について勉強します。
区民講座は、事前申し込みが必要です(先着 150 名)
。
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シンポジウム
「諸外国から学ぶセルフメディケーション支援」
『英国のセルフケア支援とセルフメディケーション』
松原なぎさ(松原薬局ストア 薬剤師)
『オーストラリアから学ぶセルフメディケーションに係る薬剤師の役割』
坂巻 弘之(名城大学薬学部 教授)
『米国のOTC医薬品を通して考える医療と薬剤師の役割』
陳 惠一(CJCファーマ(株)代表取締役、
元カイザー・パーマネンテ薬剤部マネージャー)
座長:亀井美和子(日本大学薬学部 教授)
第 1 日目 10 月 13 日(土)1号館地下1階マルチメディア講堂 13:15-15:10
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シンポジウム 『諸外国から学ぶセルフメディケーション支援』
英国のセルフケア支援とセルフメディケーション
松原なぎさ
松原薬局ストア 薬剤師
医療・介護専門職が行う「プロフェッショナルケア」に対して、
「セルフケア」は人々
が自分自身や家族等に行うものであり、衛生状態・栄養・ライフスタイル・環境因子・
社会経済的因子・セルフメディケーションを含む概念である。英国政府はセルフケア
支援を充実させることで、病院受診や入院、病欠日数が大きく減少すると試算してい
る。
調査によると、英国人の 87%は自分でしばしば軽疾患治療を行なっており、セルフ
ケアに対する関心は高い。その一方で、無料で利用できる国民保健サービス(National
Health Service: NHS)にすぐ頼る傾向も見られる。薬剤師はセルフケアの情報源とし
て、さらなる活用の余地がある。
英国では受診待機が日単位に及ぶことから、不要不急の受診を減らすことが課題と
なっている。軽疾患による受診を減少させるために、一部地域では薬局からも無料で
薬剤が供給できる「軽疾患スキーム」が採用されている。
薬局で臨床的な業務を行うにあたっては、患者プライバシーの保護が課題となって
いたが、近年は大手チェーン薬局を中心にコンサルテーションルームを備えた薬局が
一般化してきた。これにより、プライバシーへの配慮が必要な薬剤の販売も容易にな
っている。
英国では、公衆衛生上の優先課題の対策のためにスイッチ OTC 化が促進される点が
特徴的である。例としては、緊急避妊薬(レボノルゲストレル)や性器クラミジア感
染症治療薬(アジスロマイシン)が挙げられる。この他、生活改善や疾病予防の領域
でスイッチ OTC 化が促進されるケースもある。体重減量薬(orlistat)や心疾患予防
薬(シンバスタチン)がその例である。医師が懸念を示すものもあるが、患者の選択
肢や薬剤へのアクセスは向上した。
セルフケアは、保険内外の治療、短期疾患と長期疾患、薬物治療とそれ以外のすべ
てに関わるものであり、薬局はセルフケアを支援する施設であると言える。子供の頃
から人々にセルフケア教育を行い、セルフケアに自信を持ってもらうことが大切であ
る。
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シンポジウム 『諸外国から学ぶセルフメディケーション支援』
オーストラリアから学ぶセルフメディケーションに係る薬剤師の役割
坂巻 弘之
名城大学薬学部 教授
平成 18 年 4 月に 6 年制薬学教育がスタートし、同時に、社会環境の変化のもとで医
療における薬剤師の果たすべき役割も広がりつつある。地域における薬局(community
pharmacy)における薬剤師の役割は、処方せん調剤だけでなく、地域の消費者の健康
状態や症状を評価し、OTC 医薬品の販売による軽医療に係る治療機会の提供、受診勧
奨等や地域における健康増進・管理に関与することも重要である。こうした地域の保
健活動に薬剤師が関わることがかかりつけ薬局の機能の拡大にもつながりうる。
ここで、軽医療(minor aliments)とは、患者が自ら管理できる症状が対象と考え、
患者のセルフケアを重視するものとされている。軽医療に対して薬剤師が介入するこ
とは、医師の業務と区別するため、診断(diagnosis)と呼ばず、アセスメント
(assessment)やカウセリング(counseling)という用語を用いている。
一方、オーストラリアでも薬学部数が急速に増加し、2000 年に 6 大学であったもの
が、現在では 19 大学となり、薬剤師余りが急速に進んでいる。こうした中で、オース
トラリアにおいても、薬剤師の業務範囲をどのように広げるかが重要な課題となって
いる。そこで、OTC 医薬品による軽医療への薬剤師の関与が政策的にも重要視されて
いる。ある推計では、2%の治療が薬剤師にシフトすれば、薬剤師の職場確保につなが
るとされている。
オーストラリアでは、大学における教育だけでなく、オーストラリア薬剤師会
(Pharmaceutical Society of Australia; PSA)においても生涯教育が提供されてお
り、いずれもがケースメソッドを用いた意思決定能力を向上させることを目標として
いる。
講演では、オーストラリアにおける軽医療に関する教育システムを中心に話してい
くが、薬剤師が軽医療に関与するためには、そのための知識・スキルも重要であるが、
地域住民から信頼される薬局であることが必要であることを強調しておきたい。
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シンポジウム 『諸外国から学ぶセルフメディケーション支援』
米国のOTC医薬品を通して考える医療と薬剤師の役割
陳 惠一
CJCファーマ株式会社 代表取締役
元カイザー・パーマネンテ薬剤部マネージャー
「こちらはOTC医薬品としてご購入ください・・」こんな会話が米国の保健薬局
で時々聞かれる。米国において、OTC医薬品は、処方薬と垣根なく、積極的に、薬
剤師が関わりながら、成分ベースで使用されることが多い。
OTC医薬品の積極的な利用は、米国型の医療保険制度によるところが大きい。公
的あるいは民間医療保険に関わらず、formulary とよばれる推奨医薬品集を基に、後
発品やOTC医薬品の利用など合理的な薬物治療が推進されている。
また、OTC医薬品は、患者の状況に合わせ成分ベースで使い分け使用されること
が一般的になっている。単味成分のOTC医薬品も比較的多く存在する。これは、1
970年頃から10年以上かけて行われたOTC医薬品再評価によるところが大きい。
再評価は、1万種類以上あった製品自体の評価ではなく、約800種類の含有成分を
成分毎に評価する方法で実施された。成分モノグラフが作成され、製品はモノグラフ
の合算として評価された。
そうしたOTC医薬品販売に関して、米国では、薬剤師による販売は課せられてい
ないが、薬局薬剤師の果たしている役割は大きい。これは、リフィル調剤やOTC医
薬品に関する薬剤師教育の存在が大きい。
米国ではリフィル調剤制度があるため、調剤業務の起点が医師ではなく薬局になる
場合が多い。そのため、門前薬局よりも面薬局の方が多く存在し、薬局では調剤とO
TC医薬品販売の両方を扱う。また、薬剤師も、大学でOTC医薬品に関する教育を
受けているため十分な知識を有している。例えば、カリフォルニア大学では専門1年
次から1年間学習している。学生は、毎週数報の論文(時に相反する内容もある)を
読み、試験を受け、ディスカッションするというような実践的な方法でOTC医薬品
を学び、卒後教育も義務化されている。
最後に、OTC医薬品販売はじめ米国の薬剤師業務では患者志向が重視されている。
これは市民参加型の薬務行政によるところが大きい。薬剤師や薬局を管轄する Board
of Pharmacy は「市民を守るため」に存在し、薬事関係法規改定や懲罰決定などが市
民を含む Board メンバーによって行われている。
こうした米国の現状からOTC医薬品と薬剤師の役割について考えてみたい。
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教育講演
「あなたならどうする? むくみを訴える患者さん」
沼田 久美子
東芝プラントシステム株式会社 診療所長
三上 正利
ミカミ薬局、日本漢方協会副会長
進行役:福島紀子(慶應義塾大学薬学部 教授)
第 1 日目 10 月 13 日(土)1号館地下1階マルチメディア講堂 16:15-17:30
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教育講演「あなたならどうする? むくみを訴える患者さん」
進行役 福島 紀子
医師 沼田 久美子
薬剤師 三上 正利
薬学6年制教育が開始されてから 6 年が経ち、第 1 期生の薬剤師が誕生しました。
この 6 年生教育をスタートするにあたり、薬学コア・カリキュラムが公開され、各薬
科大学では、6 年間の教育カリキュラムの構築に多くの時間を割いてきました。
こうした努力にもかかわらず、一般用医薬品を含めたセルフメディケーションの教
育については、4 年制の教育ではあまり触れることがなかったこともあり、試行錯誤
が続いている状況です。
生活者が医療機関に行く前に、自己の選択で服用する一般医薬品については、薬剤
師や登録販売者の支援が欠かせないため、きちっとした教育を受け、知識を持つこと
が大切です。ひとり、ひとりに合ったセルフメディケーション支援は、生活者を見る
こと、生活者の話を聴くこと、薬学的視点で視ること、更に触れることも時には必要
になります。これらを実行するにはコミュニケーション能力が不可欠です。
そこで、現在、慶應義塾大学薬学部で行っている医師と協働して実施している一般
用医薬品の講義の一部を、今回は漢方薬にも詳しい薬剤師にも協力をいただき再現し
たいと思います。
対象科目の一般目標は、
「生活者とコミュニケーションがとれ、病気にならないため
のアドバイスができる地域密着型のかかりつけ薬剤師が望まれている。一般用医薬品
の販売は、生活者の訴える症状から状況の評価を行わなくてはならない。評価は、①
一般用医薬品の使用が、生活者本人に適しているか否か、②医療機関への受診を勧め
る必要があるか否か、③生活指導(養生法も含む)で対応可能かの 3 つに分けられる。
主に薬局で行う生活者の訴えからのトリアージ業務や OTC 薬の選択、また、生活者の
相談内容からのヘルスマネージメントを考える。
」としています。
本日は、実際の講義と同じ進め方を体験して戴くことで、学生が上記の3つの評価
軸を理解してゆく過程をお伝えするため、
「むくみの患者さんが来局した」という設定
で授業形式での講演を行います。
「なんだか、最近とても疲れやすいし、指輪がきつくなったりしてむくんでいる感
じがします。疲れが取れて、すっきりする様な薬はありませんか?」
さあ、皆さんならどうしますか?
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シンポジウム
「見て、視て、聴いて、コミュニケーション」
『プライマリケアに求められる薬剤師の臨床判断』
木内 祐二(昭和大学薬学部 薬学教育推進センター長・教授)
『保険薬局に勤務する薬剤師の受診勧奨環境』
飯島 康典(イイジマ薬局、薬剤師)
『見て、聞いて、コミュニケーションして』
湯浅 和恵(SJS 患者会)
座長:吉山 友二(北里大学薬学部 教授)
第 2 日目 10 月 14 日(日)1号館地下1階マルチメディア講堂 9:45-12:10
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シンポジウム 『見て、視て、聴いて、コミュニケーション』
プライマリケアに求められる薬剤師の臨床判断
木内 祐二
昭和大学薬学部 薬学教育推進室・教授
今後の医療では、医師数の不足や偏在、高齢化の進展などの様々な要因から、薬局
が地域の主要な医療機関として確実に機能し、薬剤師がプライマリケアの担い手、す
なわち多くの来局者(あるいは在宅患者)の状態を薬剤師自身が適切に判断し、最善
の対応を選択(トリアージ)
、実施することが求められています。地域住民の立場から
は、自分の健康回復、維持、向上を自ら図る、すなわちセルフメディケーションを行
う際に、その支援者として薬局と薬剤師に大きな期待を寄せています。
薬局あるいは在宅で、こうした臨床判断を行い、プリマリケアを責任持って実施す
るためには、さまざまな症状を訴える来局者に対して、薬剤師自らが、適切な情報収
集に基づいて症状から病名や病態を推測する必要があります。しかし、従来の大学の
薬学教育や卒後教育では、症状を訴える患者から病気を推測したり、絞り込む(鑑別
する)という系統的な学習が行われていませんでした。さらに、最善の治療や対応方
法を、患者の状態や背景と臨床的エビデンスに基づいて薬剤師が自ら判断するという
トレーニングも行われていません。そのため、多くの薬剤師は、症状を訴える来局者
に対して、的確な判断に基づいて適切な対応(救急対応、受診勧奨、OTC、生活指導
など)をすることに困難を感じていたと思います。
患者の訴えに適切に対応するためには、基本的な症状を示す疾患を系統的に理解し
ている必要があります。そのうえで、来局者とのコミュニケーションや観察を通して
疾患を絞り込みます。多くの疾患は適切な医療面接による自覚症状や患者背景に関す
る情報収集だけでも診断が可能と言われており、心理社会的情報や過去の情報につい
ての質問を加えれば、基本的疾患については推測が可能です。適切な判断には、客観
的なバイタルサイン(血圧、脈など)の情報を得ることも必要になるでしょう。来局
者の疾患を推測した後は、診療ガイドラインや標準的な治療プロトコールも活用して、
責任を持って適切なトリアージを行い、OTC などで対応が可能な軽疾患に対しては妥
当な薬物を選択し、セルフメディケーションの支援を行うことを期待しています。本
会では6年制薬学教育における、プライマリケアと臨床判断に関わる学習の取り組み
についても紹介いたします。
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シンポジウム 『見て、視て、聴いて、コミュニケーション』
保険薬局に勤務する薬剤師の受診勧奨環境
飯島 康典
イイジマ薬局 薬剤師
保険薬局における受診勧奨について
①薬剤師の資質 ②薬局の環境に分けて考えてみると
生活者が薬剤師に相談しようと思う条件として
1薬剤師との日頃からの信頼関係
2薬剤師が処方せん薬、OTC医薬品、医療雑貨、介護用品等に精通している
3薬剤師が地域の医療環境(地域の診療所等における検査機器の有無、医師の専門・
特徴、開業時間、休日夜間対応状況など)を熟知している。
利用者・生活者が日常の健康相談、軽医療、処方せん調剤等の関わりを通じて「薬
のことは薬剤師に、病気事も薬剤師に相談しよう」と思わなければ、上手くいかない。
広告やWeb、マスコ報道等で購買意欲を掻き立てられ購買するのではなく、自身の
健康状態を把握して、生活者が最初に保険薬局で健康相談などする仕組みが必要。O
TC医薬品も相談してから使用する慣習作りが必要である。
脱法ハーブにみられるようにイメージだけで薬物等を使用する風潮を改善していかな
ければ薬の適正使用は困難である。そのため日頃から地域や学校で薬剤師が関わりな
がら「薬のことは薬剤師に聞こう!!」活動が必要だと思われる。
①薬剤師の資質
保険薬局に勤務する薬剤師に求められる知識は医療、医薬品、医療資源、地域環境
等。特に、地域における医療情報や幅広い医療環境情報が重要になる。
これらの情報を得るためには、その地域で処方せんを発行している多くの医師等を招
いて、薬剤師会主催の定期的勉強会の開催が最適である。しかし時間的な制約のある
中で、最新の情報を得るためには、開催の目的を絞り込んだ、より専門性の高い勉強
会が望まれる。
一方、どのような手段で薬剤師が求められている幅広い医療情報を、入手可能かを
考える必要がある。
様々な医療機関の処方せんを受付ける保険薬局では、医師の発行する処方せんを通じ、
薬剤選択、処方設計の方向性を把握でき、結果として、地域の医療情報を得ることが
可能となる。また、患者面談により患者から見た医師の評価・評判など、より細かい
医療情報の把握も可能である。
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さらに面分業を通じて患者や生活者等から、日々更新される最新の地域の医療環
境・医療資源を把握することが可能である。
薬剤師自身も患者から、最新の医療・薬剤情報、薬剤に関する専門知識が要求される。
そこで日頃から医療用医薬品のインタビューフォームやOTC医薬品添付文書からの
情報収集や経験豊富な薬剤師から学ぶなど(マネージメント研修など)
、自己研鑽に励
むことは当然のこと。
以上のように、面分業下における薬局業務を通じて、得られる医療・医療環境情報
は幅広く存在し、薬剤師に求められている知識、特に「医療判断」の知識の多くを得
ることが可能である。
②薬局の環境
全国平均68%分業下での医療提供施設としての薬局像は、様々な医療機関の処方
せんを受け入れる調剤業務が必須条件と思われる。
保険薬局とは薬剤師が行う全ての業務が凝縮された場所であり、保険調剤業務だけ
ではなく、OTC医薬品の供給、その他薬事衛生をつかさどることが求められている。
それだけに保険薬局の医薬品在庫は、保険調剤用医薬品のほか、地域ニーズに適した
OTC医薬品や医療雑貨や日常雑貨等の品揃えをすることが個別的には大切である。
その一方で地域薬剤師会等と連携し、365日24時間、医薬品供給が可能な地域環
境を整備し、地域住民への医薬品供給に切れ目を作らないようにしなければならない。
複数の薬剤師が常駐対応することで、処方せん調剤における十分な服薬支援時間の
確保、在宅療養への参画、十分な相談時間を確保した上での最適なOTC医薬品の選
択と供給、さらには関連の医療雑貨、雑貨等の切れ目ない供給を行うことが可能とな
る。
薬局内だけで患者と接し、処方せん調剤する薬剤師でなく、患者宅へ訪問をしたり、
日常生活の中で患者と出会う機会の多い薬剤師でなければ、患者や地域住民との信頼
関係は築けない。ましてや「かかりつけ薬剤師」にはなり得ない。保険薬局も患者の
求めに応じ、24 時間対応が可能でなければ「かかりつけ薬局」として機能し得ない。
また、個々の資質に着目すれば、医療知識が乏しい、地域の医療環境情報が乏しい薬
剤師も、生活者からの信頼を得ることは当然できない。
「かかりつけ薬局・薬剤師」が生活者にとって常識になるには、生活者と薬剤師・
薬局に信頼関係が生まれ、そのつながりが「かかりつけ」まで成熟したときであり、
生活者の体調変化時のファーストアクセスの第一選択肢になろう。
今後、生活者との信頼関係の元、生活者からの体調不良の訴えや医薬品等の相談に
対応し、当該相談者の諸事情を理解・把握したうえで、薬剤師が持てる医療知識をも
って医療判断し、OTC医薬品の供給、状況に応じ適正な受診勧奨・健康アドバイス
を行うことが望まれている。
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シンポジウム 『見て、視て、聴いて、コミュニケーション』
見て、聞いて、コミュニケーションして
湯浅 和恵
SJS 患者会
SJS 及び TEN は PMDA での救済が最も多い副作用であり、発症率は低いが一端発症す
ると、僅かの間に重篤化します。現在、発症のメカニズムがまだ解明されていないの
で、薬を服用する前に予知することは困難です。薬の副作用として発症する以外にも
原因はありますが、薬が原因の発症が最も多いです。
また、問題な点は、特別な薬でではなくごく身近な薬でも発症するということです。
男女差、年齢差などなく発症し、誰にでもおこりうる副作用です。
一般のひとはもちろん、医療従事者さえ一度も経験したことがないなど知られてい
ないということも問題です。教科書で見ただけの知識では、臨床に役立っていないこ
とも事実です。今回初期症状や、急性期の写真などを見ていただき、副作用の実態を
知っていただきたいと思っております。そして、早期発見に役立ててください。早期
に診断、治療をすれば重篤化を防げるし、後遺症も残らずにすみます。
私は一般の人にセルフメディケーションを勧めるのはまだ早く、専門家のサポート
が必須であると考えます。OTC 薬の添付文書は、どこが重要なのかもわからないし、
消費者は 1 日何回、何錠飲めばいいかぐらいしか参考にしていないと思われます。文
字だけの情報提供では、なんの役にもたちません。そこにやはり専門知識がある人間
が介在すべきなのです。 今や、風邪薬でも症状に合わせた多くの種類の薬、似たよう
な名前がついた薬が販売されています。先ずは、適正使用を促すことが大切です。薬
剤師(登録販売者)と消費者(患者)とがうまくコミュニケーションできていれば、
何か異変が起これば、消費者は相談するだろうし、副作用の早期発見につながり、重
篤化を防ぐことができます。 また、なんでも相談できるような体制作りが必要ではな
いでしょうか?
副作用患者として望むことは、知識を広めてもらうこと。それには副作用にはそん
なものがあり、初期症状はどうなのか、相談されたらどうしたらいいのかを知ってお
いてください。二番目に消費者(患者)の訴えや様子をよく聞いてください。最後は、
何かあったらいつでも相談にいけるような雰囲気作りや信頼関係が生まれるようなコ
ミュニケーションをとっていただきたいと思います。
22
一般演題
ポスター発表
第 1 日目 10 月 13 日(土)1 階エントランスホール 15:15-16:15
23
24
P-1 ①OTC 医薬品関連
一般用医薬品における公的溶出規格の必要性について
○大嶋耐之、仲山千佳、加藤文子
金城学院大学薬学部
【目的】平成 20 年 4 月施行された薬事法の改正では、一般用医薬品がリスクの程度に応じて
区分され、その中で第一類医薬品の販売については、薬剤師による医薬品情報提供が義務づけ
られた。しかし、一般用医薬品の適正使用のための有効性や安全性等の製剤情報は不足してい
るのが現状である。本研究は、一般用医薬品について、医療用医薬品の公的溶出試験に基づき
溶出挙動及び崩壊時間を医療用医薬品の先発医薬品と比較検討し、溶出性及び崩壊性の面から
品質評価を行い、一般用医薬品の品質評価法について検討した。
【方法】試験製剤は、第一類医薬品に指定されている、ファモチジン及びシメチジン、第二類
医薬品に指定されているアゼラスチン、指定第二類医薬品に指定されているアンブロキソール
塩酸塩・イブプロフェン・クロルフェニラミンマレイン酸塩等含有製剤を用い、その主成分の
うち、クロルフェニラミンマレイン酸塩を試験成分とした。対象医薬品には、医療用の先発医
薬品を用いた。薬物濃度は、HPLC 及び紫外可視吸光度測定法により定量した。
「後発医薬品の
生物学的同等性試験ガイドライン」及び「日本薬局方外医薬品規格第三部」の公的溶出試験法
に従い、日本薬局方溶出試験法(パドル法)に準じて実施した。
【結果及び考察】一般用医薬品と医療用医薬品のアゼラスチン含有製剤においては類似した溶
出挙動を示した。ファモチジン及びシメチジン含有製剤では溶出の立ち上がりに差異が認めら
れた。しかし、すべての一般用医薬品において公的溶出規格に適合した。一方、クロルフェニ
ラミンマレイン酸塩含有製剤では、一般用医薬品において医療用医薬品に比し、溶出が緩やか
で、公的溶出規格に適合しなかった。スイッチ OTC のように医療用としての使用経験のある成
分を含有する一般用医薬品など、成分としての安全性は確立していても、配合成分として含有
する場合や、添加物の異なる製剤となった場合、溶出挙動が異なる場合があることが本研究に
より明らかとなった。溶出挙動の変化により、副作用や作用時間の変化などが考えられ、この
結果は消費者への情報提供の際に重要な情報であると考えられる。今後、一般用医薬品の適正
使用のためには個々の製剤情報の充実が必要であり、そのためには一般用医薬品の公的溶出試
験及び公的溶出規格の確立は急務な課題である。
【キーワード】一般用医薬品、適正使用、溶出試験
25
P-2 ①OTC 医薬品関連
一般用医薬品の添付文書の効能・効果の表現に関する検討(1)
-生薬製剤-
○戸田 麻里奈 1)、鈴木 恵美 2)、大谷 壽一 2)、望月 眞弓 1)
1)慶應義塾大学 薬学部 医薬品情報学講座、
2)慶應義塾大学 薬学部 臨床薬学講座
【目的】生活者が自らの判断で使用する一般用医薬品(以下、OTC 薬)は、生活者がその「効
能又は効果」等を正しく理解した上で、適正に使用することが重要である。しかしながら、一
部の OTC 薬では、生活者が使用の可否を自己判断することが難しいと考えられる「効能又は効
果」が存在する。そこで本研究においては、現在本邦において市販されている OTC 薬のうち、
特に生薬製剤について、医薬品添付文書中の「効能又は効果」を調査することで、OTC 薬を用
いたセルフメディケーションを推進する上で問題となる対象疾患名がないか、検討することを
目的とした。
【方法】(財)日本医薬情報センターが刊行する「JAPIC 一般用医薬品集 2011」を用いて、生薬
製剤の「効能又は効果」欄において対象とされている疾患名をリストアップした。続けて、リ
ストアップした対象疾患名を、生活者が使用の可否を自己判断することが困難なもの、という
点から考えて文言の修正等が必要と考えられるものを 4 名の合議の上抽出した。
「JAPIC 一般用
医薬品集 2011」の CD-ROM を用いて、抽出した対象疾患が「効能又は効果」に含まれている製
剤を特定した。
【結果・考察】全 166 の生薬製剤の調査を行った結果、137 の効能又は効果に含まれる 303 用
語が抽出された。リストアップ及び精査の結果、65 用語が、OTC 薬の効能又は効果における対
象疾患名として検討が必要であると考えられた。現在販売されている OTC 薬の生薬製剤の中に
は、
「糖尿病」
「気管支喘息」
「関節リウマチ」など、使用の可否の判断にあたり、薬剤師等の
専門家の関与が必要な対象疾患名や、生活者にとって難解な対象疾患名を効能又は効果として
標榜しているものが相当数存在した。このような対象疾患では、生活者が薬剤師等の関与なく
薬を購入し使用した場合、本来受診すべき病態にもかかわらず受診の機会を失う可能性があり、
生活者の著しい不利益につながる危険性がある。また、患者にとって難解な対象疾患名は、セ
ルフメディケーションの阻害要因になるばかりでなく、誤解に基づく医薬品の誤用、不適切使
用にもつながる。
【結語】OTC 薬の生薬製剤の「効能又は効果」において対象とする疾患名について、生活者の
適切な製品選択という観点から体系的に見直しを行うとともに、その表現方法についても検討
する必要があると考えられる。
【キーワード】セルフメディケーション、一般用医薬品、添付文書、効能又は効果、生薬製剤
26
P-3 ①OTC 医薬品関連
一般用医薬品の添付文書における効能・効果の表現に関する検討(2)
―化学合成品―
○安藤孝 1)、伊藤竜太 1)、富田三奈美 1)、橋口正行 1)、望月眞弓 1)
1)慶應義塾大学医薬品情報学講座
【目的】現在本邦において市販されている一般用医薬品(以下、OTC 薬)のうち、化学合成品を
含有する製剤について、医薬品添付文書に記載されている「効能又は効果」を調査し、セルフ
メディケーションを実施する上で問題となる効能効果の用語を検討した。
【方法】 調査対象薬は生薬製剤および漢方製剤以外の化学合成品を含有する製剤とし、
「JAPIC 一般用医薬品集 2012」((財)日本医薬情報センター刊行)の CD-ROM を用いて、9,180
製剤の「効能又は効果」欄に記載されている用語を調査した。検討対象用語について、三人の
評価者が各自、1)生活者が自己治療すべきでないもの、2)意味が分からず、言い換えや説明が
必要なもの、3)難解な漢字を用いているもの、4)上記三項目に該当しないが問題のあるもの、
の四点を評価した。さらに、文言の修正等が必要と考えられるものを抽出した。そして三人の
評価者が 1)~4)の各自の評価結果について、合議により、それぞれについてその判断の妥当性
を 1(可能性が低い)、2(おそらく)、3(可能性が高い)の 3 つの尺度で分類し、最終評価判定を
行った。
【結果・考察】9,180 製剤の調査を行った結果、1,480 の効能効果に含まれる用語が抽出され
た。そのうち、845 用語が、OTC 薬の効能又は効果における用語として検討が必要であると考
えられた。その内訳は、1)生活者が自己治療すべきでないものは 82 用語(例: 関節リウマチ、
心臓病)、2)意味が分からず、言い換えや説明が必要なものは 380 用語(例: せつ、よう、ちょ
う)、3)難解な漢字を用いているものは 337 用語(例: 捻挫)、4)上記三項目には当てはまらな
いが問題のあるものは 46 用語であった。1)のような用語を記載することは、生活者が薬剤師
等の関与なく薬を購入し使用した場合、本来受診すべき病態にもかかわらず受診の機会を失う
可能性があり、生活者の著しい不利益につながる危険性がある。また、2)や 3)のような難解な
用語は、誤解に基づく医薬品の誤用、不適切使用にもつながり、セルフメディケーションの阻
害要因になる。
そのため、
生活者が正しくOTC 薬を使用できるように用語を改める必要がある。
【結語】今回の検討から、OTC 薬の化学合成品の「効能又は効果」に記載される用語には不適
切な表現が存在することが明らかになった。セルフメディケーションの実施において生活者が
正しく使用できるように表現を改める必要がある。
【キーワード】セルフメディケーション、一般用医薬品、添付文書、効能又は効果、化学合成
品
27
P-4
①OTC 医薬品関連
保険調剤薬局来局者の OTC に関する意識調査
○小嶋文良、廣木 茜
城西国際大学薬学部
【目的】今日では保険財政の悪化、高齢化に伴いセルフメディケーションへの関心が高
まっている。しかし、使用者が適切な情報を得られているとは限らない上に、誤った情
報の流布や解釈が健康被害を引き起こす危険性もある。そのため、調剤目的で来局した
患者を対象に、一般用医薬品(OTC)に関する調査を行った。
【方法】調剤を併設するドラックストアにおいて、OTC に関する来局者へアンケート調
査を行った。本研究の目的を説明し、同意が得られた患者を対象に、直接聞き取りによ
る調査を実施した。調査内容は、OTC の特徴、購入に関すること、分類や情報に関する
こと、また分類に関しては、具体的な OTC 名を出して、購入できると考えられる店舗な
どを調査した。
【結果】回答者は 104 名(平均年齢 62.8 歳)であり、医療用医薬品と OTC があること
は 8 割以上が知っており、最も多い情報源はテレビであった。OTC は比較的効果が弱い
との回答は 8 割以上であったが、複数の有効成分を含む配合剤が多いことを知っていた
のは半数以下であった。OTC の分類については、第 1 類、2 類、3 類医薬品、医薬部外
品について購入可能な店舗の質問に対して、「医薬品は全てドラックストアと薬局で購
入可能」との回答が最も多かったものの、第 1 類がスーパーやコンビニで購入できると
の回答があり、薬剤師の居ないスーパーなどでも一部の OTC を購入出来ることは知って
いるのは 2 割弱であった。医薬品購入時に薬剤師の説明を受けた経験があったのは 6 割
に近かったが、第 1 類 OTC の販売に薬剤師の書面による説明の義務化を知っているのは
半数以下であった。
【考察】一般の方は、OTC の分類は理解できておらず、購入者は薬剤師の必要性は感じ
取っているようであるが、医薬品の分類との関連は全く知られてない。しかし、薬の購
入時に不便さなど現実に直面した時に初めて認識するとの回答が多かった。購入時に重
視しているのはブランドや CM など、日常よく見かけるものが多いと考えられる。しか
し、購入者はあくまで『安さ』
『使いやすや』
『効果』などを見ている為、思わぬ相互作
用の原因になる要因がアンケート内でいくつか挙がる結果になった。
【結語】一般の方は OTC に関して関心はあるものの、その内容や分類などの知識は乏し
く、セルフメディケーションの推進には積極的な啓蒙活動を行っていく必要がある。
【キーワード】一般用医薬品、医薬品の分類、ドラッグストア、来局者
28
P-5
①OTC 医薬品関連
新規 OTC 医薬品 BNS003 の軽度静脈還流障害(慢性静脈不全症)に対する
有効性と安全性
○川瀬一朗 1)、大道克裕 1)、高場利博 2)、星野俊一 3)
1)エスエス製薬(株)、2) 昭和大学、3)福島第一病院
【目的】
BNS003 は欧州において軽度の慢性静脈不全症に用いられている生薬医薬品で、臨床的
にもその有効性が証明されている。今回、BNS003 の日本人における一般臨床試験を実
施し、一般用医薬品(OTC 医薬品)としての有効性及び安全性を検討した。
【方法】
慢性静脈不全患者(下肢の静脈還流障害により、ふくらはぎやくるぶし等のむくみを有
し、かつ触診による圧痕を呈する者で、Porter's 分類のクラス 1 に該当し、ふくらは
ぎやくるぶし等がむくみ、それに伴い生じる「重量感・疲れ(だるさ)
」
、
「つっぱり感」
、
「ピリピリ感」、
「痛み」、
「熱感」
、
「かゆみ」のうち 2 症状以上を有する成人被験者)180
例を対象として、非盲検、非対照、多施設共同、一般臨床試験を行った。BNS003 を 12
週間投与し、全般改善度、症状別改善度、ふくらはぎ及びくるぶしの周径変化、被験者
の印象度を評価した。
【結果】
有効性解析対象例数 179 例における全般改善度は、
「著明改善」で 38.5%、
「中等度改善」
で 42.5%であった。また、
「中等度改善」以上の改善率は 81.0%であった。むくみに伴
う自覚症状(重量感・疲れ(だるさ)
、つっぱり感、ピリピリ感、痛み、熱感、かゆみ)
、
ふくらはぎ及びくるぶしの周径、いずれも投与開始前日と比較して有意な差をもって改
善を認めた。被験者の印象度も良好であった。本治験における副作用(自覚症状・他覚
所見)の発現率は 13 件(6.7%)で、最も多く発現した症状は「胃腸障害」6 件でいず
れも軽度なものであった。
【考察】
BNS003 は、軽度の慢性静脈不全に伴う下肢の各種症状に対し有効で、一般用医薬品と
して、使用者(対象者)自身がその改善効果を実感できる意味で有用性の高い薬剤であ
ることが示唆された。
【キーワード】一般用医薬品、ダイレクト OTC、慢性静脈不全、静脈還流障害、下肢の
むくみ
29
P-6
①OTC 医薬品関連
鎮痛薬の適正使用に向けた取り組み-片頭痛スクリーナーの活用と評価○小平久正 1)、高萩雅史 1)、山口義之 1)、吉山友二2)
1)株式会社 住商ドラッグストアーズ、2)北里大学薬学部保険薬局学
【目的】ロキソニンのスイッチ OTC 化で頭痛に悩む多くの消費者がセルフメディケーシ
ョンでロキソニンを購入・服用できるようになり、ロキソニンによる薬物乱用頭痛が危
惧されている。ロキソニン○RS の販売において片頭痛簡易質問票(片頭痛スクリーナー)
を利用し、薬局薬剤師がロキソニン○RS を適正に販売するツールとして活用できるか否
かを評価・検討した。
【方法】ロキソニン○RS を購入した 148 名を対象として、使用者の性別、使用目的を確
認し、使用目的が頭痛である場合においてのみ頭痛頻度と片頭痛スクリーナーの 4 つの
質問(Q1.日常的な動作により悪化するか Q2.吐き気をともなうか Q3.光を嫌だと感じる
か Q4.臭いを嫌だと感じるか)を行った。「時々ある」あるいは「半分以上ある」と回
答した項目が 2 項目以上あった使用者を片頭痛スクリーナー陽性者とした。
【結果】ロキソニン使用者は男性に比べて女性が多く、148 名中 108 名(73%)が女性
であった。使用目的は頭痛が最も多く、148 名中 72 名(49%)が頭痛で購入していた。
頭痛頻度および片頭痛スクリーナーによる判別では男性では 1~2 回が 9 名、3~6 回が
8 名、15 回以上が 1 名であった。片頭痛スクリーナー陽性者(以下陽性者)は 2 名であ
った。一方、女性では 1~2 回が 16 名、3~6 回が 27 名、7~10 回が 7 名、11~14 回が
4 名で、陽性者は 18 名であった。すべての陽性者(20 名)に対しては、片頭痛である可
能性が高いことを説明し、受診勧奨を行った。
【考察】ロキソニン○RS 購入者に対して、
「片頭痛スクリーナー」を用いることで片頭痛
の可能性がある使用者を短時間で判別し、受診勧奨を行うことができた。OTC 販売の現
場においては消費者とのコミュニケーションに十分な時間が取れない場合が多いため、
短時間で簡便に片頭痛を判別できる「片頭痛スクリーナー」は薬局薬剤師がロキソニン
S を適正に販売するための簡便なツールとして有用であると思われた。
R
○
【キーワード】ロキソニン○RS、片頭痛スクリーナー、薬物乱用頭痛
30
P-7
①OTC 医薬品関連
「医療用医薬品-OTC 医薬品対応表」を利用した災害時における
OTC 医薬品の有効活用
○鹿村恵明 1),2)、高橋淳一 2)、大澤光司 3)
1)東京理科大学薬学部、2)エムズ薬局、3)一般社団法人 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会
【目的】災害時において、被災地では OTC 医薬品が有効に活用できていない場合がある
ようだ。そのため、その対応策を考えておくことは重要である。災害時に医療チームが
使いやすい OTC 医薬品とは、医療用医薬品と成分が同じものが良いのではないかと考え、
災害時に必要性が高いと思われる 3 つの薬効群(消炎鎮痛薬、下痢止め、便秘薬)につ
いて、医療用医薬品と OTC 医薬品との成分対応表を作成した。この表を活用することに
より、医師は日常的に処方している医療用医薬品と同じような成分の OTC 医薬品を選択
することができる。また、これらは、医療用医薬品の代替薬として活用することも可能
であり、支援物資として供給する際にも、このような商品を優先的に送ると効率的では
ないかと考えた。作成した「医療用医薬品-OTC 医薬品対応表」の有用性を評価するた
めに災害時に被災地にて支援活動をした経験のある薬剤師にアンケート調査を実施し、
その有用性を検証することとした。
【方法】2012年 7 月に一般社団法人 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会のメンバー
を中心に、メーリングリストやフェイスブックを利用して、災害時に被災地にて支援活
動を行った経験のある薬剤師に協力を依頼し、アンケート調査を実施した。
【結果】有効回答35例について解析した。被災地での OTC 医薬品の供給量は、ほぼ充
足していたようだが、薬効群の偏りやバラツキについては、「ややあった」と「大いに
あった」の合計が60%であった。我々が作成した「医療用医薬品-OTC 医薬品対応表」
については、「有効だと思う」が77%、「どちらともいえないが」23%であり、「有
効だと思わない」は全くなかった。対応表の利用については「利用したいと思う」が8
0%、
「どちらともいえない」が17%、
「利用したいと思わない」が3%であった。
「利
用したいと思わない」理由については、OTC 医薬品の成分を理解しているので自分には
必要がないという内容であった。
【考察】今回の調査結果により、
「医療用医薬品-OTC 医薬品対応表」は有用であると考
えられるため、さらに薬効群のレパートリーを増やしていきたい。アンケートの自由回
答からは、被災地では、ほこりが多いので目薬の要望があることや水剤の調剤が困難な
ため小児用シロップ剤の必要性があることがわかったため、そのような情報も追加して
災害時に本当に役立つものを作成したい。
【キーワード】OTC 医薬品、災害時対応、薬剤師、支援物資
31
P-8
①OTC 医薬品関連
タブレット端末を用いた一般用医薬品のお薬選択支援ツールの開発
○高橋伸幸、北野沙織、成井浩二、渡辺謹三
東京薬科大学薬学部一般用医薬品学教室
【目的】薬局やドラッグストアにおいて、薬剤師や登録販売者が消費者からの相談に応
じて適切な一般用医薬品を選択し、適切な情報提供を行うことが、セルフメディケーシ
ョン支援に重要である。そこで当研究室では、薬剤師や登録販売者による一般用医薬品
の選択と情報提供を補完し、かつ消費者も使用可能な一般用医薬品の選択と情報提供を
補助するためのツールが必要と考え、
「お薬選択支援ツール(以下、
「ツール」
)
」の開発
を行っている。今回はそのツールの完成を目指し、以下の研究を行った。
【方法】ツール媒体としてタブレット端末(iPad®)を採用し、ツール作成のためのア
プリケーションとして「GoodReader」を使用した。本研究では全ての薬効群に振り分
けるための初期選択画面と、これまでに未製作であった薬効群の医薬品選択画面を作成
した。また、画面作成にあたり消費者単独の使用も考慮して、図やイラストを用いるこ
とで視覚的・直感的にわかりやすくし、専門用語を極力回避することとした。
【結果】15 歳未満の小児と 65 歳以上の高齢者は用量や併用薬等の観点からツールの対
象年齢から除外した。また、対象年齢内でも妊婦や授乳婦、併用薬や基礎疾患のある消
費者についてもツール適応外とした。初期選択画面は「薬効群」と「部位」から、症状
に応じた医薬品選択画面へとリンクするよう設計した。さらに便秘、痔については、食
生活の偏りや運動不足など、日頃の生活習慣がこれらの症状の原因となり得ることから、
症状を早期に改善するための日常生活での注意事項を記載した画面を作成し、導入した。
【考察】今回、ツールを完成させることができたので、今後は実際に現場で運用し消費
者、薬剤師双方の意見を聴取することで、有用性・利便性を把握し、必要に応じて改良
を加えていきたい。また便秘、痔以外の薬効群でも、症状改善のために日常生活での注
意が必要な薬効群に関しては、それらの助言を提示するための画面の作成を進めていき
たい。本ツールは医薬品情報提供の補助の役割を担うものであり、これだけで説明を全
て果たすものではない。そのため医薬品販売前の最終確認は薬剤師等が行うものとした。
本ツールを活用することで薬剤師や登録販売者による情報提供が一層行いやすくなり、
消費者の一般用医薬品に対する関心・知識が向上することで、さらなるセルフメディケ
ーション推進のための一助となると考えられる。
【キーワード】セルフメディケーション、一般用医薬品、お薬選択支援ツール
32
P-9
①OTC 医薬品関連
かぜ症候群初期において OTC 医薬品でのアンブロキソール含有製剤の
投与がもたらす臨床的期待
○玉城 武範 1),3)、玉城 昇 2)、吉山 友二 1)
1)北里大学薬学部 臨床薬学研究・教育センター臨床薬学(保険薬局学)、
2)のぼる耳鼻咽喉科、3)ミドリ薬局美里店
【目的】医療用医薬品のアンブロキソール塩酸塩錠は抗インフルエンザ作用報告されて
いることから、我々は保険調剤業務においてその付加価値に期待した去たん剤としての
使用に伴い、臨床上の問題点が存在するか確認することを目的とした。
【方法・対象】2009 年及び 2010 年のそれぞれ 10 月 1 日から 3 月 31 日までに、協力医
院から応需した処方箋で使用されたアンブロキソール塩酸塩錠の処方量の変化を、レセ
プトコンピューターを使い電子的に確認した。また、処方医師に臨床上の使用で問題点
があったか確認した。またアンブロキソールの抗インフルエンザ作用に関する基礎およ
び臨床的研究の主要な文献的調査を行い、かぜ症候群へ予防的臨床応用する際の問題点
を抽出した。
【結果】アンブロキソール錠の使用割合は 0.54%から 1.36%へと推移していた。協力医
院の処方医からの聞き取り調査では、日常診療において抗インフルエンザ作用に期待し
て去たん剤の使用問題点は特段抽出されなかった。また、かぜ症候群の重症化予防また
は初期の治療に特化した、いわゆる投与タイミングに着目した報告は臨床分野では確認
できなかった。
【考察】かぜ症状の初期にこれらのウイルス感染により気道粘膜の防御機構が破綻し、
細菌性感染を続発することで病状が遷延化するケースも少なくないと考えられる。アン
ブロキソールは医療用成分ではあるが、セルフメディケーションを目的とする OTC 医薬
品へ成分が配合され、平成 23 年 12 月に「一般用医薬品の区分リスクの変更に伴い第2
類医薬品に分類された。そこで我々はアンブロキソール含有 OTC 医薬品が、付加的価値
として抗インフルエンザ作用を併せ持つ可能性がある感冒薬として、社内で薬剤師及び
登録販売者に情報提供してきた。沖縄県においては冬季のみならず通年通してインフル
エンザウイルス感染の罹患者が多い。こうした沖縄県の状況下では OTC 医薬品の担うプ
ライマリ・ケアにおいて、インフルエンザ感染症を中心とした気道全域におけるかぜ症
状の遷延化予防に役割を果たす可能性のある薬剤として重大な使用意義を持つと考え
る。
33
P-10 ①OTC 医薬品関連
一般用医薬品によるうっかりドーピングを未然に防ぐための一覧表の作成
○宮崎 智子、羽生 祥子、川上 美好、吉山 友二
北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター臨床薬学(保険薬局学)
【目的】近年、スポーツファーマシスト認定制度が設立され、薬剤師のアンチドーピン
グ活動への意識が高まっている。一方、処方薬と異なり、消費者が自己判断で購入可能
な一般用医薬品にもドーピング陽性成分を含有する医薬品が存在する。近年、日本国内
では競技者本人や家族が治療目的で購入した一般用医薬品の風邪薬(エフェドリン配合)
によるドーピング違反事例が報告されている。そこで今回、薬局薬剤師が競技者のうっ
かりドーピングを防ぐために活用できる一覧表を作成したので報告する。
【方法】一般用医薬品第一類 104 製品を対象として、薬局薬剤師による一般用医薬品の
選択・販売時にドーピング陽性成分を含有するか確認できる一覧表を作成した。一覧表
は商品名、含有成分、効能・効果、用法・用量、使用上の注意の5項目に加え、ドーピ
ング陽性成分が含有されるか否か、含有される場合は使用が禁止される期間と理由を明
記した。情報源として、2012 年度禁止表国際基準及び薬剤師のためのドーピング防止
ガイドブック 2011 年版を参照した。
【結果】ドーピング陽性成分を含む製品は第一類 104 製品中 24 製品(23.1%)あった。
長期的に競技力を向上させる等の理由で競技者の使用が「常に禁止」される成分が、鎮
咳去痰薬(禁止成分:メトキシフェナミン)や男性用薬(テストステロン)など 18 製
品に含まれていた。
「競技会時のみ禁止」される成分は、鎮咳去痰薬(dl-メチルエフェ
ドリン塩酸塩)、男性用薬(ストリキニーネ)など 3 製品に含まれていた。作成した一
覧表は、上記の 24 製品によるうっかりドーピングを未然に防止するため、競技者への
考慮が必要な医薬品であることを薬剤師が一目で確認できるようにした。
【考察】競技者のうっかりドーピングを防止するためには薬局薬剤師の適切な支援が必
須である。ドーピング陽性成分を含む製品の調査の結果を、商品名、含有成分、効能・
効果、用法・用量、使用上の注意、ドーピング防止のアドバイスとして、薬剤師が医薬
品販売時に利用できる一覧表形式としたことに新規性と有用性が見出せる。本研究で作
成した一覧表は、薬局薬剤師の薬剤選択においてアンチドーピングを考慮する際の有用
なツールとなり得ると考えられた。今回は、薬剤師の職能が特に必要とされる第一類医
薬品について検討したが、かぜ薬などの第二類にもドーピング陽性成分を含有する医薬
品が数多くあるため引き続き検討したい。
【キーワード】一般用医薬品、アンチドーピング、薬局薬剤師
34
P-11
①OTC 医薬品関連
眼球運動計測および質問紙調査による OTC 医薬品選択行動の分析
―ブランドの影響を中心に
○河瀬絢子 1),崔庭瑞 1),小山慎一 1),泉澤恵 2),日比野治雄 1)
1)千葉大学大学院工学研究科デザイン心理学研究室,2)日本大学薬学部
【目的】演者らの研究より,OTC 医薬品選択時に利用者は「成分」や「使用上の注意」
よりも「薬品名」
「製薬会社名」をよく見る傾向があることが報告された(崔ら 2012).
本研究ではこのような行動傾向に対するブランドの影響について検討するため,ナシ
ョナルブランド(以下,NB)・プライベートブランド(以下,PB)選択時に利用者が
重視する外箱記載項目について眼球運動計測と質問紙調査を通じて検討した.
【方法】30〜40代の主婦25名(OTC医薬品平均購入回数:4回/年)を対象に眼球運動計
測実験と質問紙調査を行った.眼球運動計測実験では,被験薬としてNBとPBのかぜ薬
をそれぞれ使用した.1回の試行に3種類の外箱がコンピュータ画面上に実物大で呈示
され,被験者はその中から最も購入したいと感じた1品を選択した.被験薬の呈示から
医薬品の選択までの眼球運動を眼球運動計測装置で記録した.被験者がいつも購入す
る医薬品を選択した場合にはその被験者のデータを除外した.解析ではNB・PB間で名
前(薬品名・製薬会社名)と成分に対する視点の停留時間を計測し比較した.質問紙
調査は,眼球運動計測実験後,被験者が選択した医薬品外箱について行い,被験者は
「選択の決め手になったのはどの部分ですか?」(複数回答)などの全13項目の質問
に回答した.
【結果】眼球運動計測実験の結果,NB・PBで「名前」と「成分」間で二要因分散分析
を行ったところ,交互作用は有意であった(p<0.05).すなわち,NBでは,「成分」
より「名前」を統計的に長く見ていた(p<0.05).一方,PBでは,これらの項目間に
有意差が見られなかった(p>0.05).NB・PB間で外箱全体に対する総停留時間に有意
差はなかった(p>0.05).質問紙調査では,NBでは,「効能・効果」「薬品名」「製
薬会社名」が購入の決め手になったという回答が他の項目より有意に多く(p<0.05),
PBでは,「効能・効果」「用法・用量」が他の項目より有意に多かった(p<0.05).
【考察】眼球運動計測と質問紙調査の結果から,NBのOTC医薬品選択時には「成分」
「用
法・用量」などをあまり重視せず,「薬品名」や「製薬会社名」などのブランドを表
す項目に頼りがちな傾向が示唆された.
【キーワード】OTC 医薬品,ブランド,外箱記載情報,眼球運動計測,質問紙調査
35
P-12 ①OTC 医薬品関連
ブランドによる OTC 医薬品リスクマネジメント-在日台湾人における検討
○呂玠樺 1)、柳夏穂 1)、泉澤恵 2)、日比野治雄 1)、小山慎一 1)
1)千葉大学大学院工学研究科デザイン心理学研究室、2)日本大学薬学部
【目的】筆者らが一般大学生 66 名を対象に行った質問紙調査(小山ら 2012)ではナシ
ョナルブランド(以下 NB)の風邪薬と胃薬が,同等の成分・効能・効果で価格が半額
のプライベートブランド(以下 PB)の風邪薬・胃薬よりも好まれる一方で,湿布薬と
ビタミン剤では PB の方が好まれたことを報告した.比較的リスクの高い風邪薬と胃薬
で NB が好まれる一方で比較的リスクの低い湿布薬とビタミン剤では PB が好まれるとい
う結果はブランドがリスクマネジメントにおいて重要な役割を演じていることを示唆
している.本研究ではこのような行動傾向が在日台湾人でも見られるかどうかについて
検討した.
【方法】在日台湾人19名(年齢:20 代~30 代,在日期間 3 か月~9 年)を
対象にインターネットアンケート調査を行った.参加者は NB・PB の定義を理解してい
ることを確認後,設問に回答した.設問では NB の医薬品(風邪薬・胃薬・湿布薬・ビ
タミン剤)および NB の医薬品と同一成分・効能・効果で価格が2割安価な PB 医薬品が
販売されている場合にどちらを選択するかについて回答した.【結果】風邪薬・胃薬で
は NB を選択する回答が多かったが(それぞれ 68%,74%)
,湿布薬では両者にほとん
ど差が見られず(NB53%,PB47%)
,ビタミン剤では PB を選ぶ回答の方が多かった(63%).
【考察】ブランドによってリスクマネジメントを行う傾向は在日台湾人でも見られた.
今後は台湾に住む台湾人や,他の国の利用者とも比較することによってこのような行動
傾向の文化的背景を探りたい.
【キーワード】OTC 医薬品,リスクマネジメント,ナショナルブランド,プライベート
ブランド,文化的要因
36
P-13 ②食品・栄養関連
認定マークによって作り出される食品パッケージの盲点
○朴京子、小山慎一、日比野治雄
千葉大学大学院工学研究科デザイン心理学研究室
【目的】トクホマークのような食品パッケージの認定マークは消費者に安心感をもたら
す一方で成分表示への注意を抑制する可能性がある(朴ら2012).本研究ではトクホマ
ークが主婦の植物性食用油購入時の行動に与える影響を,眼球運動を測定することによ
って評価した.
【方法】30~40代の専業主婦20名を対象に眼球運動実験と質問紙調査を行った.刺激は,
市販の食用油7種類を用いた.そのうちの3種類にはトクホマークがついており,4種類
にはトクホマークがついていなかった.眼球運動実験で,刺激はPC画面上にflash
movieを用いて表示した.一試行に4種類の食用油がコンピューターに呈示され,呈示さ
れた食用油パッケージはマウスの操作によって,全4面を閲覧できるようにした.被験
者はマウス操作によってパッケージの記載情報を閲覧し,呈示された食用油の中から最
も購入したい1種類を選択した.刺激の呈示から選択までの間,眼球運動を眼球運動計
測装置(Ditect View Tracker・サンプリングレート30Hz)で記録した.パッケージデ
ザインの記載項目を「キャッチコピー」,「栄養成分」,「品名」,「使用上の注意」
などの9項目に分け,各項目に対する停留時間を求めた.眼球運動測定の終了後,被験
者が選択した食用油の栄養成分に対する熟知度について質問紙を用いてたずねた.
【結果】眼球運動実験の結果,トクホマークに注目していなかった人の「栄養成分」と
「概要」に対する視点の停留時間はトクホマークに注目した人よりも有意に長かった
(p <.05).また,質問紙調査の結果から,トクホマークに注目する・しないにかかわ
らず,トクホの成分である中鎖脂肪酸と植物ステロールの熟知度が他の栄養成分より低
く,
「あまりよく知らない」に相当する得点だった.
【考察】トクホマークは栄養成分に
ついてよく知らない消費者を安心させる一方で,トクホマークが表示されているという
だけで消費者が安心してしまい,栄養成分表示をよく見ることも知ることもないまま商
品を選択してしまう可能性がある.
【キーワード】認定マーク,食の安全、安心,眼球運動
37
P-14 ②食品・栄養関連
健康食品販売担当者の宣伝広告表示に対する認識調査
○菅野 敦之、宮澤 伸介、山崎 紀子、下川 健一、石井 文由
明治薬科大学
【目的】 生活者にとっては、健康食品もセルフメディケーションの大きな選択肢の一つとし
てとらえられている。しかしながら、その品質や内容には大きな格差があり、事実、
行政による健康食品等の広告・表示調査における不当表示による指導件数は増加傾向
にある。
そこで健康食品の取扱い・販売に関わる薬局及び店舗販売業のスタッフが、健康食
品広告・表示に対してどの様な認識を持っているかを調査し、考察を加えることとし
た。
【方法】協力を得られた薬局、店舗販売業者のスタッフに対して、行政が公開している健康食
品の不当表示例を基に 20 の表示例を示し、それぞれの表示文言に対する適否をどの
程度認識しているかについて、記入式アンケート調査を行った。また、同時に健康食
品の規制に関わる法律に、どの様なものがあるかについても、選択肢による認識調査
を行った。
【結果】健康食品表示の適否判断に対する認識には大きな個人差があり、取扱現場では個人の
認識の違いが意識されずに販売されている。製造販売業者の選定や製品選択に向け、
一定水準の共通認識を確実なものにしていく必要がある。
【考察】 生活者が安心してセルフメディケーションに臨むために、健康食品の取扱いスタッ
フとして、製品の適否を見分ける判断材料をしっかりと理解しておくことが重要であ
る。セルフメディケーションの情報発信や相談受付の場としては、信頼性が確保され
た業者・製品の選別を適切に行い、生活者をリスクから守る姿勢を堅持していくべき
であろう。
【キーワード】セルフメディケーション、健康食品、不当表示、情報提供
38
P-15 ②食品・栄養関連
血糖値を急上昇させないチョコレートケーキの開発
○龍野明子
林外科病院・栄養科
【目的】ひとりひとりに合ったセルフメディケーションツールとして、栄養科の知識を
応用し、血糖値を急上昇させずに安心して食べられるチョコレートケーキを開発し、糖
尿病患者での炭水化物制限による血糖値急上昇抑制効果について検討した。このケーキ
は、砂糖と小麦粉を使わず、一般的なケーキ材料以外を利用しているが、普通のチョコ
レートケーキと同様の食味(甘く柔らかい)をもち、日頃、血糖値を気にして我慢する
者や、市販ケーキ等の摂取による血糖値コントロール困難者の、セルフコントロールの
一助を目的に開発した。
【方法】被験者は、男性16名女性1名の糖尿病疾患者、及びコントロール(非糖尿病)
女性3名の合計20名。昼食終了1~3時間後に開発品を試食、試食直前、試食から2
0分後、1時間後、2時間後の血糖値を測定した。
【結果】開発品試食前の血糖値が 200mg/dl 以上であった複数の被験者においても、試
食2時間後の血糖値は 200mg/dl 以下となった。一例として、昼食 3 時間後に開発品
(400kcal 分)を試食した糖尿病患者(試食前血糖値 202mg/dl)の場合、試食後の血糖
値は、20 分後 172mg/dl、1 時間後 160mg/dl、2 時間後 127mg/dl となった。この例を含
め、今回の試験においては、①最初の血糖値よりも上昇しない、②20 分後に上昇し減
少する、③1 時間後に上昇し減少する、④元々が正常域であり正常域間で上下を繰り返
す、という 4 タイプの減少傾向がみられたが、いずれも試食 2 時間後の血糖値は試食前
より減少していた。
【考察】開発品を用いた被験者の試食前後の血糖値推移と、予備試験の結果をあわせて
考察すると、血糖値の上昇はカロリーではなく炭水化物の摂取を原因とするものであり、
炭水化物量を制限し、不足栄養素を間食時間に補うことにより、空腹状態の継続等によ
る血糖値の上昇等も抑制できると考えられた。単にローカロリーやノンオイルとするの
ではなく、適切な栄養素を選ぶことで血糖値の安定化を図ることが可能となる。併せて、
治療中の患者は、医師の治療を遵守した上で喫食することにより試験結果のような高い
効果が得られると思われるため、医師の治療を遵守した上で、長過ぎる空腹時間を作ら
ずに、「適切な質」の間食をする事が望ましい。それには、本開発品のような血糖値を
急上昇させない、しかも美味しいものが精神的にも身体的にも役に立てると考える。
【キーワード】糖尿病、血糖値、チョコレートケーキ、炭水化物制限、ノンシュガー
39
P-16 ②食品・栄養関連
がん化学療法受療者における口内炎発症と栄養状態の関連
○深町伸子 1)、寒河江照美 2)、今井康人 3)、藤田樹弘 1)、真崎哲哉 1)、鈴木順子 1)
1)北里大・薬、2)財団法人慈山会医学研究所付属坪井病院、
3)北里研究所・臨床薬理研究所
【目的】がん化学療法受療者に高率で合併する口内炎は、抗がん剤による免疫力低下な
どに加え、摂食不良から患者の栄養・全身状態悪化を招き、治療や QOL 確保の障害とな
るため、その発症予防及び早期治癒は化学療法管理上重要な命題である。我々はこれま
で、口内炎発症予防におけるアズレンの効果を検討してきたが、抗がん剤による口内炎
が潰瘍創を形成することに鑑み、発症並びに進展に全身栄養状態が影響している可能性
があると考え、今回抗がん剤治療患者の口内炎発症と栄養状況の関連を調べるためのス
クリーニング調査として、カルテの検査値を指標にレトロスペクティブな解析を試みた。
【方法】解析対象:食道がん化学療法受療症例 14 例。調査事項:がん化学療法受療経
過における口内炎発症の有無及び各症例におけるカルテ臨床検査血液所見データ:TP、
Alb、A/G 比、リンパ球(Lym)。調査方法:口内炎発症者群と非発症者群間での血液所
見データの差異及び、各症例における血液所見データの時間経過による変動。
【結果】口内炎発症者群と非発症者群間比較では、血液所見に顕著な差異は認められな
かった。いずれの症例でも、治療開始日の血液所見を基準とした場合、開始後 10 日±
のデータは、低値傾向を示した。口内炎発症者群では、非発症者群に比べて、血液所見
データの低値化傾向が有意に大きかった。
【考察】我々は、抗がん剤の副作用による口内炎と類似の病態、例えば褥瘡などに照ら
し、低栄養状態が、口内炎発症と進展になんらかの影響を与えている可能性を仮定した。
今回の調査の結果、口内炎発症又は進展と低栄養傾向に関連性があることが示唆された。
低栄養状態が口内炎発症を促進し、口内炎が更に低栄養状態を招くという負の連鎖は、
結果としてがん化学療法の有効性・安全性を大きく損なう可能性がある。がん化学療法
受療者は治療開始時、既に Lym 低下が認められる等、全身状態が良好ではない場合も多
い。その意味においてもがん化学療法を支持するためには、個体のデータに基づく栄養
管理計画・指導の積極的プロトコル化と治療への組み込みが重要であると考えられる。
【結語】抗がん剤の副作用が口内炎に結果するまでに、抗がん剤自体の作用以外にも多
重的な要因がある。その中で、生体の側の要因として「栄養状態」が浮上してきた。今
回のスクリーニングに、今後更に、多方面の情報を加えて検討を重ね、確かな栄養管理
指導計画構築を考慮したい。
【キーワード】口内炎、がん化学療法、栄養管理
40
P-17 ②食品・栄養関連
セントジョーンズワート含有食品購入時に得られる摂取上の注意点
○松長あやか、岸本桂子、福島紀子
慶應義塾大学薬学部 社会薬学講座
【目的】健康食品の中には、医薬品との相互作用や疾患への影響がある商品も存在する
が、消費者にその事実が十分に浸透しているとは限らない。特に、インターネット購入
では薬剤師からの情報提供を経ずに購入・摂取が可能である。セントジョーンズワート
(以下 SJW と記す)は海外では医薬品として販売されているが、本邦では健康食品として
分類されており、また、医薬品との相互作用が多い。これを踏まえ、本研究では、SJW
のインターネット購入の過程で消費者がどのような摂取上の注意に関する情報を得て
摂取に至るのかを調査した。
【方法】2012 年 8 月、インターネットを介して SJW 含有食品を購入した。購入サイト
は Yahoo! JAPAN と google のサーチエンジンを用い、
「セントジョーンズワート
購入」
のキーワード検索結果などから 25 サイトを選択した。購入した 55 商品について、購入
前(購入サイト)、購入後(商品ラベル・同封の説明書)の 2 つの情報源より、摂取におけ
る安全性に関連する「光過敏症」、「身体への悪影響」、「妊婦・授乳婦に対する注意」、
「うつ患者・二極性患者、アルツハイマー症患者、統合失調症患者に対する注意、麻酔
下での注意」(以下「うつ病等」と記す)、
「相互作用」の 5 項目について集計した。
【結果】購入前または後の情報源に 5 項目が全て記載された商品は 1 商品のみであった。
平均 1.67 項目の記載がみられ、全体のおよそ 4 分の 1(14 商品、26%)は記載が全くなか
った。購入前後の情報で比較すると、購入前は平均 0.98 項目、購入後は平均 1.45 項目
で、購入後の方が多かった。また、購入前後を通して記載のみられた注意は、多いもの
から順に、
「妊婦・授乳婦に対する注意」(29 商品、53%)、
「身体への悪影響」(26 商品、
47%)、
「相互作用」(24 商品、44%)、
「光過敏症」(11 商品、20%)、
「うつ病等」 (1 商品、
1.8%)であった。記載が確認できる項目数を項目別に見ると、特に、
「光過敏症」
、
「身体
への悪影響」の 2 項目については、記載のある商品数が購入の後に倍増した。
【考察】SJW 含有食品のインターネット購入を通して得られる摂取上の注意の情報量は
商品により異なる。また、購入前と後の情報それぞれに 5 項目が記載されていることが
理想だが、得られる項目数には差異があり、購入過程によっては購入後に初めて得られ
る情報も存在する。他の健康食品についても同様に、今後サイト管理者・販売者には食
品として安全に摂取できる情報のさらなる充実が求められる。薬剤師は消費者や患者に
対し、健康食品に関する情報提供や摂取の有無の聞き取りを、現在一般的に実施されて
いる初回の来局・来院時だけでなく、定期的に、より頻回に行うことが望まれる。
【キーワード】健康食品、セントジョーンズワート、安全性
41
P-18 ②食品・栄養関連
ブラジル産AF-08プロポリスの放射線防御と癌予防効果
○安川 憲 1)、野伏 康仁 1)、劉 素延 1)、及川 直毅 1)、
岡崎 加代 2)、堤 重敏 3)、黒川 昌彦 4)
1)日本大薬、2)サンパウロ州大原子力研、3)アマゾンフード、4)九州保福大薬
【目的】福島第一原子力発電所の事故は,爆発時の放射性物質の拡散とそれによる健康
被害が危ぶまれている.また,除染時における放射線被曝も,今後の避けて通れない大
きな問題である.今回,AF-08プロポリス(AF-08)の放射線防御能と癌予防
効果を検討したので報告する.
【方法】放射線防御能は,チャイニーズハムスター卵巣(CHO-K1)細胞に,コバ
ルト60γ線を照射し,遺伝毒性の強い・発癌性が懸念されるDNA二重鎖開裂など回
復が困難な損傷に対するAF-08前処理の効果を検討した.
癌予防では,DMBAとTPAを用いたマウス皮膚二段階発癌実験におけるプロモーシ
ョン過程におけるAF-08の効果を検討した.
【結果】AF-08は,CHO-K1 細胞に毒性を示さず,細胞増殖動態にも影響を及
ぼさなかった.AF-08の前処理は,細胞の放射線照射損傷量を濃度依存的に減少さ
せた.
マウス皮膚二段階発癌実験において,発癌対照群は5週目に最初の腫瘍が出現し12週
には全てのマウスに発現した.これに対し,AF-08投与群では,7週目に最初の腫
瘍が出現し,20週目では27%のマウスに腫瘍が発現した.平均腫瘍数は,発癌対照
群の14.5個に対し,AF-08投与群では1.8個と88%の抑制効果を示した.
主成分であるトリテルペン誘導体モロニック酸は,同様にプロモーション過程を強く抑
制した.
【考察】放射線は,生体に直接作用しDNAへ傷害を与えると同時に,間接的には各種
活性酸素を産生させ潜在的癌細胞の癌化を強く促進する.AF-08は,DNAへの傷
害を抑制すると共に,各種活性酸素も関与するプロモーション過程を抑制すると考えら
れる.
【結語】AF-08は,細胞実験と動物実験ではあるが放射線防御効果と癌予防効果を
有することが明らかとなった.これらの結果は,AF-08プロポリスが放射線防御作
用を有し,癌予防効果を示すことが示唆された.主成分モロニック酸が,癌予防成分の
1つであることを明らかとした.
【キーワード】AF-08プロポリス,放射線防御,癌予防
42
P-19 ②食品・栄養関連
今回は、要旨のホームページ掲載は不許可との通知がありました。
43
P-20 ③健康管理関連
保険薬局に期待される新たな機能
~簡易血液検査サービスに対する顧客ニーズ分析~
○唐澤綾 1)、生田美幸 2)、東海林希実 2)、岡本有史 2)、
山本章正 2)、矢作直也 3)、成井浩二 1)、渡辺謹三 1)
1)東京薬科大学、2)(株)ファーコス、3)筑波大学
【目的】昨今、薬剤師によるフィジカルアセスメントやバイタルチェックなどが注目され、一
部の保健薬局では店頭で自己血糖測定(SMBG:Self Monitoring of Blood Glucose)や HbA1c
測定などの血液検査を行う試みが始まっている。地域住民の糖尿病の簡易的なスクリーニング
や患者の自己管理促進を目的としているが、このような薬局の新しい機能を利用する顧客のニ
ーズは十分に調査されていない。そこで今回、簡易血液検査を実施している薬局にて、顧客へ
のアンケート調査を行った。
【方法】
(株)ファーコスの千住桜木薬局とあさがお薬局は、糖尿病診断アクセス革命に参加
し HbA1c 測定を行っている。また、同じくみなと薬局では SMBG サービスを実施している。
これら3つの薬局を利用している患者を対象にアンケート調査を実施した。
アンケート項目は、
健康診断の受診の有無、健康管理および血糖値への関心度、薬局での血液検査に対するイメー
ジとした。
【結果】アンケートの有効回答数は 112 件で、年齢層は 60 代・70 代が過半数を占めた。健康
診断の受診率は 69.6%で、厚生労働省の平成 22 年国民生活基礎調査の 64.3%よりやや高い結
果となった。健康診断を受診しない理由は「通院中」の他に、
「時間がない」
「面倒くさい」
「検
査そのものが嫌」が多かった。健康管理については 87.5%が関心ありと回答したが、最近の血
糖値を把握していると回答したのは 55.7%、血糖値が気になっていると回答したのは 30.4%に
とどまった。薬局で血液検査をしてみたいと思うかという質問に対しては、
「はい」
、
「いいえ」
、
「どちらでもない」のそれぞれの回答に分散した。薬局での血液検査に対するイメージとして、
「病院より気軽に立ち寄ることができる」
「待ち時間を有効に使える」との回答が多く、
「時間
がかかりそう」
「安全面・衛生面に不安がある」といった回答は比較的少なかった。病院・診
療所以外での血液検査の希望場所に 43 名が薬局を選び、これが最も多かった。
【考察】本調査の結果から、薬局で血液検査を行うことに不安や抵抗感が少なく、血液検査の
新しい実施場所としても期待されていることが分かった。また、定期的に健康診断を受けない
患者にとっては生活習慣病の早期発見や受診勧奨の機会になるのではないかと考えられた。し
かし、薬局側が新たな機能を装備しても疾患に対する患者の関心が低ければその機能を利用す
るには至らないため、血液検査の存在をアピールするとともに対象疾患への関心を高める啓蒙
が必要である。
【キーワード】血液検査、自己血糖測定、糖尿病、アンケート
44
P-21 ③健康管理関連
保険薬局に期待される新たな機能
~自己血糖測定サービスの導入評価~
○長田航洋1)、唐澤 綾1)、富澤 崇2)、中山美保2)、長沢伸悟2)、阿部修治2)、
成井浩二1)、渡辺謹三1)
1)東京薬科大学薬学部、2)(株)ファーコス
【目的】2012 年の調剤報酬改定や昨今の保険薬局数の増加などにより、更なる顧客関係強化や
薬局間の差別化が必要とされている。また薬剤師の職域拡大、保険薬局の機能拡大が叫ばれて
いるのも現状であり、地域薬局としての新たな顧客提供価値の創生が求められる。そこで、
(株)
ファーコスみなと薬局にて自己血糖測定(SMBG:self monitoring of blood glucose)サービス
の導入を試みた。今回はサービス導入プロセスを紹介するとともに、サービス利用者の随時血
糖値などの結果をもとに、その有益性を検討したので報告する。
【方法】2011 年 12 月 3 日よりサービスを開始し、初回測定は無料で糖尿病罹患の有無は問わ
ずサービスを利用できるようにした。2012 年 5 月 30 日までの約 6 か月間のサービス利用者に
ついて、測定件数、年齢、性別、随時血糖値、受診の有無、病態分類(糖尿病診断基準参照)な
どを調査した。また、サービス利用をきっかけとした増患や関わった薬局スタッフの感想も調
査した。
【結果】サービス利用者は 26 名(男性 9 名、女性 17 名)、半数以上が 60 代~80 代であった。
測定結果と食後時間から 6 人が糖尿病型、9 人が境界型と判定された。また、糖尿病と診断さ
れたことのないサービス利用者のうち、受診勧奨対象(糖尿病型および境界型と判定された人)
となったのは 7 人(47%)であった。また、当薬局の利用経験のないサービス利用者は 26 名
中 7 名であり、そのうち 1 名がサービス利用をきっかけに処方せんを持参するようになった。
【考察】薬局での簡易血液検査を導入するに当たっては、行政や門前医療機関などのステーク
フォルダーの理解が不可欠である。また、薬局スタッフの訓練やサービス提供マニュアルの完
備、そして導入後も薬局内外でサービスの存在を宣伝することが必要となる。今回の結果から、
薬局での血液検査が糖尿病予備軍のスクリーニングの一助になるとともに、糖尿病患者に対し
ても本サービスの利用で、より自己管理意識を高めるきっかけになると考えられた。また、こ
のような新たな試みによって薬局スタッフの専門性やモチベーションの向上が伺えた。しかし
ながら、サービス導入が薬局経営にもたらすインパクトは見出されなかった。今後長期的に本
サービスを運用する中でサービス品質の向上を図り、かつ他の薬局にも水平展開することでさ
らなる評価を行っていきたい。
【キーワード】自己血糖測定、 血液検査、糖尿病
45
P-22
③健康管理関連
特定保健指導における食行動・生活習慣変容とセルフメディケーションの推進
○渡邊史子1)、白石弘美2)、塙 悠3)、菅原正弘1)
1)医療法人社団弘健会 菅原医院、2)人間総合科学大学人間科学部 健康栄養学科、
3)人間総合科学大学大学院 健康栄養学専攻
【目的】平成 20 年度から特定健診・特定保健指導が開始され、メタボリックシンドロームの
概念で継続的な指導を行うことで、生活習慣病発症を予防することが期待されている。生活に
密着した個人医院において施行した特定保健指導ついて、食行動・生活習慣変容の視点からセ
ルフメディケーションによる生活改善の取り組みについて報告する。
【方法】対象は練馬区内個人医院で受診した、年齢 40 歳~74 歳の男女 27 名(男性 15、女性
12 名)である。特定保健指導内容は医師の健診データ結果説明のあと、管理栄養士による相
談時間 20~30 分間で栄養食事指導を行った。指導内容は動機づけ・積極的支援による食行動、
生活活動の変容を促す事を主眼とし、その継続効果を身体計測と血圧測定などから検討した。
【結果】1)対象 27 名の内訳から、男性 15 名(動機づけ支援 14 名、積極的支援 1 名)で、
女性 12 名(動機づけ 10 名、積極的支援 2 名)
、このうち 2 名が投薬治療となり除外、継続し
た保健指導は 25 名で平均年齢 65.9±8.2 歳であった。当院の特定保健指導実施率は 100%であ
り、厚労省の実施率目標 40%より高率であった。
2)指導内容は動機づけ支援、積極的支援ともに、医師からの検査結果の説明と、管理栄養士
による食行動・生活活動変容について、簡便に実践できるポイント絞った食事指導、そして体
組成測定器 X スキャンや、運動量が記録分析できる機器ライフコーダー貸し出しなどが、対象
者のモチベーションアップにも繋った。
3)
対象者 25 名の評価において、
介入時と 6 カ月後の体重はそれぞれ 65.5±8.7kg、
63.3±8.0kg
と高い有意差で減少した。腹囲 90.0±4.4cm、88.9±4.8cm と有意ではないが減少している。
BMI も 24.7±2.0、23.9±1.8 とかなり有意(p<0.001)に減少。介入時と 6 カ月後の血圧値に
ついても収縮期/拡張期それぞれ 132.4±15.6mmH1/78.2±10.9mmHg、126.9±18.8mmHg
/76.2 ±11.0 mmHg と有意差はないが 5~6mmHg 減圧傾向にあった。
【まとめ】保健指導 6 ヶ月後の客観的データから、腹囲は減少傾向を示した。体重、BMI、血
圧については高い有意差もって改善している。特に血圧値は生活習慣の変容のみで 5mmHg
減少は意義あるものと考える。また当院の特定健診実施率は、個人病院で保健指導がコミュニ
ケーションがとりやすい、体調不良時などの迅速な対応ができる。などに利点があるため、厚
労省の平成 22 年度平均実施率 40%程度に比べ 100%と高率であった。今後の取り組みとして
は、喫煙者への外来指導も含めたセルフメディケーションを推進したい。
46
P-23 ④薬育関連
北里大学薬学部におけるセルフメディケーション教育への取り組み
○有海 秀人、宮崎 智子、川上 美好、吉山 友二
北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター 保険薬局学
【目的】すべての国民が自らの判断で正しくセルフメディケーションを実践するためには、薬
剤師等から顧客への積極的なアプローチが求められる。そこで、北里大学薬学部(以下本学)
では、セルフメディケーション、特にOTC薬に積極的に関わる薬剤師の養成を目指すための
第一歩として、本学薬学部4年生を対象にOTC治療学(講義)と、病院・薬局実習事前実習
内でセルフメディケーション実習を開講している。そこで本発表では、本学におけるセルフメ
ディケーション実習への取り組みを紹介し、その有用性を検討した。
【方法】対象は、平成23年度における本学の6年制薬学部4年生(273名)とした。模擬
顧客との会話を通じて販売時に確認すべき情報を入手し、また分かりやすい言葉で情報提供を
行うこの実習は9月~10月の間の4回(240分/回)実施し、学生はいずれかの1回に出
席した。各実習では、保険薬局で実務経験のある薬剤師を招聘し、主に学生へのロールプレイ
についてフィードバックを担当して頂いた。実習の最後に、学生は到達目標について自己評価
(1:まだ不十分、2:到達、3:十分到達)ならびに、実習に関するアンケートを記入し、
学習効果を検討した。
【結果】各実習では学生6~8名を1グループとし、グループ内で具体的な模擬顧客からの症
状等を収集、および適切な模擬顧客への情報提供の方法について討議した。その後、各グルー
プの学生が輪番制で薬剤師と模擬顧客を分担しロールプレイを行った。実習終了後の自己評価
では、ほとんどの学生が2:到達、または3:十分到達とし、学生からのアンケートやコメン
トでは「実習は満足できる内容であった」
、
「学生自身がこの実習に熱心に取り組んだ」
、
「実際
の薬剤師の対応を見れて参考になった」など、好評であった。
【考察・結語】今回のセルフメディケーション実習では、模擬顧客との会話を通じて、症状等
を的確に入手し、また分かりやすい言葉でOTC薬の情報提供をする必要があるため、学生の
コミュニケーションの向上が重要である。その一助となるグループ内での討議や学生相互のフ
ィードバックは、セルフメディケーション実習に有用であると考えられる。また、学外教員で
ある保険薬局の薬剤師からのフィードバック等が学生の高い満足度が得られたことから、大学
内における現役薬剤師へのセルフメディケーション教育への参画は、学生の学習効果に良い影
響を与えたと考えられる。
【キーワード】薬学部6年制教育 学生実習 保険薬局薬剤師
47
P-24 ④薬育関連
小学生における発達段階別薬育デザインの検討と継続的薬育効果の評価
○上松遥 1)、高橋利奈 1)、三宅祐加 1)、岸本桂子 1)、清水靖子 2)、福島紀子 1)
1)慶應義塾大学薬学部社会薬学講座、2)国分寺市学校薬剤師会
【背景・目的】平成 24 年より中学校において医薬品に関する教育を行うことが学習指導要領
により義務化された。しかし、小学校において、薬育は義務化されておらず、また、1 年生か
ら 6 年生までの段階別の授業内容を示すガイドラインは存在しない。本講座では、2010 年度小
学校 1~6 年生に対する発達段階別薬育の導入 1 回目を行った。2011 年度は、薬育 1 回目の効
果を検討し、児童の理解度を考慮した上で、導入 2 回目を実施した。本研究では、これまでの
調査結果を踏まえ、児童に理解されていないと思われる内容を修正し、新たに授業内容を加え、
よりよい段階別薬育デザインの構築を目指した。また、小学生の薬誤認識と不適切使用を減ら
す事を目的に、過去 2 年間の薬育効果の評価を行った。
【方法】2012 年 7 月、東京都国分寺市の小学校において、1 年生から 6 年生まで各学年1コマ
(45 分間)
、計 6 回行った。授業内容は大きくわけて 5 項目(①健康に関する生活行動・習慣に
関する内容 ②医薬品の正しい使用 ③医薬品の作用 ④医薬品の分類 ⑤薬物乱用に関する内
容との関連)であり、1 年生から 6 年生まで段階別に構成した。これまでの薬育内容に、薬に
頼らず健康を維持する方法についての内容(健康三原則・自己防御力・体の調子を整える工夫)
を追加した。6 年生では、セルフメディケーションに必要な知識である OTC 医薬品の選択や使
用に関する説明を実践形式の内容で追加し、添付文書の見方や留意すべき点について説明を行
った。また、薬育効果の評価するため、薬育の前後で、薬誤認識と不適切使用についての調査
を行った。
【結果・考察】昨年度、薬育効果が見られなかった「大人用と子供用の薬の項目」において、
薬育の前後で薬誤認識は 39.7%から 21.3%と有意に減少した(P<0.05)
。
薬育受講前(2010 年度)と 2 年後の薬育前(2012 年度)を比較すると、どの学年でも薬誤
認識、不適切使用の割合が有意に減少していた。(表 1 参照)
表 1 薬育受講前と 2 年後の薬育前調査の比較
調査項目
「はい/思う」回答人数の割合(%)
2010 年
2012 年
(3 年時)
(5 年時)
P値
2010 年
2012 年
(4 年時)
(6 年時)
P値
1、薬の誤認識
薬は体の治して欲しい部分でだけ効く
薬を使ってアレルギー症状が出る事はない
病気やケガを治すには必ず薬が必要である
過量服用すると病気やケガを治す力は大きくなる
どの薬も他の薬と一緒に飲んでも大丈夫である
どの薬も食べ物との相互作用はない
31.0
57.0
45.0
19.0
27.0
37.0
4.8
20.6
30.2
4.8
12.7
17.5
<0.001**
0.007**
0.004**
<0.001**
<0.001**
<0.001**
59.0
32.0
39.0
5.0
11.0
15.0
3.0
10.6
24.2
7.6
3.0
10.6
<0.001**
<0.001**
0.079
0.479
0.080
0.416
8.0
6.0
10.0
10.0
0
3.2
4.8
0
0.024*
0.414
0.299
0.012*
5.0
19.0
25.0
3.0
1.5
1.5
13.6
1.5
0.317
<0.001**
0.119
0.550
2、不適切使用
過量服用をした事がある
2回分まとめて服用した事がある
飲まなければいけない薬を、飲まなかった事がある
錠剤を噛んだり、カプセルをあけて飲んだ事がある
χ²独立性の検定,*P<0.05,**P<0.01
また、2012 年度の薬育後調査では、初めて薬育を受けた直後の調査と比べ、
「薬について知
りたい」と回答した児童が増加した。この結果から、発達段階に合わせた薬育を繰り返し受け
る事によって、児童の医薬品に関する意識が変化すると考えられる。この為、単発ではなく継
続した薬育が望まれると言える。
【キーワード】 くすり教育、薬育、医薬品適正使用、小学生
48
P-25 ④薬育関連
中学校において求められる医薬品教育に関する研究
○笠澄恵美、成井浩二、渡辺謹三
東京薬科大学薬学部一般用医薬品学教室
【目的】
2012 年度より新学習指導要領が施行された。中学3年生の保健体育の授業内容に「健康の保
持増進や疾病の予防には、保健・医療機関を有効に利用することがあること。また、医薬品は、
正しく使用すること。
」が追記され、
「くすり教育」が約 40 年ぶりに復活した。そこで、より
良い授業を行うために、一般生活者が子どもにどのような「くすり教育」を行ってほしいと考
えているのかを調査した。その結果に基づき、中学校において求められる「くすり教育」とは、
どのようなものなのかを考え、授業項目の一例を作成した。
【方法】
2011 年 7 月に神奈川県内の小学校にて保護者を対象としたアンケート調査を行った。その結
果を解析し、一般生活者の意見を取り入れた授業項目の一例を作成した。
【結果】
2012 年より「くすり教育」が復活することに対する認知度は 2%であったが、
「くすり教育」
が行われることに対して 92%の人が賛成と答えた。賛成の理由としては、
「身近なものでありな
がら家庭で教えられないから」などが挙げられた。授業で教えて欲しい内容としては、
「症状
とは、薬は何を治すのか、薬の本当の役割」が最も支持され 77%の人が選択した。また、
「薬の
体内での動き(吸収・分布・代謝・排泄)」や「食べ物・飲み物と薬の相互作用」も高い支持を
得た。一方で、
「日本の薬害の歴史と現状」や「保健・医療機関の有効な利用法」はあまり支
持されなかった。
「くすり教育」の授業担当者は薬剤師が最も支持され、次いで養護教諭が支
持される結果となった。また、学校薬剤師の認知度は約 10%と低かったが、学校薬剤師が「く
すり教育」の授業を担当することに対しては 83%の人が賛成と答えた。
【考察】
一般生活者は「くすり教育」が行われることに対して非常に期待している様子が伺えた。教
えて欲しいと求めている内容は、基礎的なことから専門的なことまで幅広いことが確認できた。
また、学校薬剤師が授業を行うことに対しても肯定的であった。学校薬剤師が「くすり教育」
に参入し、情報があふれる現代社会において、薬に関する正しい知識を子どもの頃から身につ
けられるように支援することが望ましい。
「くすり教育」を積極的に担当することによって、
薬による副作用発現の減少に貢献する新たな学校薬剤師の役割を担うことができるようにな
るのではないかと考えている。
【キーワード】医薬品教育、新学習指導要領、中学3年生、学校薬剤師
49
P-26 ④薬育関連
国際感覚を兼ね備えたセルフメディケーションを支える
薬剤師を育てるプログラム開発の試み
〇田嶋公人、合志雅美、小澤実香、奥山恵美、平田隆弘、山村重雄、秋元雅之
城西国際大学 薬学部 国際教育小委員会
【目的】城西国際大学薬学部は、日本だけでなく世界にも目を向け、私たち薬学生・薬剤師に
何ができるかを考える国際教育を平成 21 年度から展開している。平成 23 年 4 月に実施された
本学学部生の認知度・満足度調査結果において、薬学 3 年生以上は語学教育の重要性を 70%以
上が認識していた。しかし、英語選択科目の履修や TOEIC 受験者数は伸びていないことも明ら
かになった。そこで我々は、委員会を作り薬学生に国際言語である英語への興味、必要性、そ
して、継続的な学習につながる環境醸成を試みた。また、セルフメディケーション先進国であ
る米国研修を実施し、日米薬剤師の違いや今後我が国で求められる薬剤師像を描くプログラム
開発を目指した。
【方法】活動は(1)~(3)の観点で薬学生の国際教育(英語学習も含む)の喚起を行った。(1) 薬
学部国際教育セミナーの企画運営、(2) 米国薬学研修の実施とエッセイ作成指導、および(3)
城西国際大学語学教育センターとの“英語週末特訓合宿”の実施であった。
【結果・考察】(1)薬学部国際教育セミナーは、平成 23 年度国内外から講師 4 名をお招きして
3 回実施し、海外での薬剤師の役割や大学教育の違いなどを学ぶ機会に恵まれた。(2) 米国薬
学研修は、2012 年 2 月に 2 週間カルフォルニア州にある UCR-Extension Center で行った。期
間中は病院だけではなく薬局チェーン大手 CVS/pharmacy なども訪問し、米国社会が薬剤師に
何を期待しているか考察する機会を設けた。また、UCR-Extension Center では薬学英語演習と
して、現地の OTC 医薬品を英語で服薬指導するロールプレイを行った。なお、研修後は参加者
各自が心境の変化や将来目指したい薬剤師像について、エッセイを作成することにより自身と
向き合う機会を設けた。(3) 英語週末特訓合宿は、2011 年 12 月に千葉県鴨川市で1泊 2 日で
行われ、薬学生 7 名が参加し英語圏文化に触れ刺激を受けた様子であった。
【結語】
「国際教育を薬学部でも展開する」という共通目標を持った委員会組織が生まれ活動
したが、環境醸成はまだ始まったばかりの感をぬぐえない。今後も国際感覚を兼ね備えたセル
フメディケーションを支える薬剤師を育成するために,薬学生に英語学習への意欲を引き出す
工夫を行っていきたい。
【キーワード】国際教育、薬剤師、英語学習、米国薬学研修、米国薬局チェーン CVS/pharmacy
50
P-27 ④薬育関連
医薬品及び薬物乱用の授業からの学び ~感想文の解析から~
○玉置国大、福島紀子
慶應義塾大学薬学部 社会薬学講座
【目的】本学社会薬学講座では、薬学的アプローチとしてまず正しい医薬品の使い方を知って
もらった上で、薬物乱用メカニズムを含めた話をする薬物乱用防止教育を実践してきた。これ
まで本講座は授業前後にアンケートを実施し、教育内容の理解度をみてきた。しかし、医薬品
と薬物を同時に考えることについて子ども達がどのように受け止めているかは明らかになっ
ていない。そこで今回は授業終了後の自由記述形式の感想文の内容を解析し、授業の受け止め
方について質的統合法により検討を行うと共に、量的な研究では得られなかった視点の発見を
通して、今後の薬物乱用防止教育の支援に繋げることを目的とした。
【方法】都内中学一年生に対して 2012 年 7 月 6 日に薬物乱用授業を実施した後の授業感想文
(自由記述式)85 名分を対象として、山浦が実践的に確立してきた質的統合法を用いて分析を
行った。この際、感想文を単位の構成要素に注目し分類する方法(04 理論)に基づき意味上の
文節に区切ったものを記録単位とした。その中で思いや気持ちが同じ意味を述べているものを、
曲尺理論モデルに沿ってそれぞれの関係性を検討した上でカテゴリー化を行い、それらを線で
結び概念化を図った後に考察を行った。
【結果】授業後の感想から 9 つのカテゴリーが生成された。
【医薬品・薬物双方の新しい知識
の理解】を基盤とし、
【授業形式の工夫による分かりやすさの実感、感謝】に影響を受けなが
ら、
【医薬品の不適正使用が危険で薬物乱用にもなることへの驚き、恐怖】
【薬物の危険に対す
る驚きと恐怖】の 2 つが得られた。そこから関連して【医薬品を適切に使おうとする意志】
【日々
の生活を壊さないために薬物を使うまいとする意志】
【他人の薬物使用に対する心配】
【将来的
にタバコを吸わないようにする意志】の 4 つが学びとして表現され、
【習った知識を今後の生
活に生かしたいという思い】がみられた。
【考察】授業後に生徒は、薬物を使うまいとする決意に加え、医薬品を薬物と同じにしないた
めに適切に使おうとする意志を持つことが分かった。これは、薬物乱用がどのような危険をも
たらすかの知識と、医薬品は使い方を間違えれば危険なものになり、その不適正使用は薬物乱
用の定義に含まれることの知識を同授業中に学ぶことで、相乗効果的に医薬品の不適正使用に
対する意識を高めたものと考えられる。さらに、この意識は煙草に対しても派生した。このよ
うに、医薬品と薬物の両方の側面から授業を行うことは互いの適正使用、乱用防止に関する意
識に関連付けられるという点で重要であることが示唆された。
【キーワード】医薬品の適正使
用 薬物乱用防止教育 質的統合法
*本研究は本学倫理委員会に研究計画書を提出し、
その内容が承認されたものである
(承 120724-2)
51
P-28 ⑤セルフメディケーションの実践
信頼ある町薬剤師を目指して
○嶋野純 1)、嶋野仁 2)、藤原博明 3)
1)ライオン薬局・SMAC 理事、2)日本薬科大学、3)綜合臨床メデフィ
【目的】生活者と副作用等情報の交換をしながら信頼ある町薬剤師の立場を築き、セルフメデ
ィケーションを推進する。
【方法】訪問してきた生活者に一般用医薬品の使用方法等のアドバイスをしながら、同時に「薬
の副作用アンケート調査」を行い、新たに発生した症状(副作用)等を記入してもらう。その
副作用の対処方法などをアドバイスし、コミュニケーションをはかりながら信頼ある町薬剤師
を目指す。
薬の副作用アンケート調査の内容:イニシャル、性、年齢、身長、体重、服用薬名、副作用症
状、副作用発生日、服用理由、服用状況など。
【結果】今年7月より開始したが、副作用アンケート調査に応えてくれ、副作用の対処方法な
ど情報交換がうまくいった9例につき、その詳細を報告する。男性5例、女性4例、年齢は 28
~72 歳であった。そのうち 69 歳女性は、両足指間の足白癬にもかかわらず、手持ちのオロナ
インを1日2回3週間塗布し、来店した時は患部に小水疱が多数見られ、一部は破瓜し、強い
搔痒を訴えた。同剤を塗布するに従い患部が広がった由であった。まずは炎症の改善を行い、
足白癬の治療はその後で行うこととした。他の 8 例の用いた薬剤(副作用)は次のとおりであ
った。72 歳男性コーラック・ロペラマックサット(便秘・下痢)
、16 歳男性ケヤリーヴ(接触
皮膚炎様症状)
、28 歳女性マキロンかゆみ止め液(胸部・背部小膿疱・小水疱)
、62 歳男性ユ
ンケルロイヤル(不眠)
、72 歳女性ムヒS(搔痒・発赤・小水疱)
、42 歳男性カロナール(む
くみ)
、38 歳女性当帰芍薬散(胸焼け感)
、38 歳男性アネロンニスキャップ(眠気)
。
【考察】開始して日は浅いが、一般用医薬品でも、かなりの副作用発生がみられ、これらに的
確に対応することが重要である。最初は副作用アンケート調査をしながら、コミュニケーショ
ン計るつもりであったが、副作用への対処を勧めることが重要と思うようになり、アンケート
調査の様式を変え、対応処置についても記載することのできる調査様式にすることとした。ま
た、上述例は一般的な生活者のセルフメディケーションを行ったに過ぎないが、もっと積極的
に町中における病気及び治療に関する啓蒙活動をしてゆくことの必要性を痛感した。このよう
な活動を通じ、生活者の健康へのアドバイスもして行くような活動を行えば、信頼ある町薬剤
師の立場を築き、セルフメディケーションをさらにすすめられると思う。
【キーワード】町薬剤師、副作用アンケート調査、セルフメディケーション
52
P-29 ⑥その他
一般用医薬品販売時の顧客情報の収集の重要性とその責任
○秋本義雄
東邦大学薬学部医療薬学教育センター薬事法学研究室
【はじめに】一般用医薬品の販売に関わる薬剤師・登録販売者の情報収集はなぜ必要か、どこ
まで行うのか、またそれが十分に行われなかったときの責任について、情報収集の重要性を示
す裁判例から考察する。
【事件の概要】男児(当時7歳)が全身麻酔下での手術中に悪性過高熱を発症し、翌日脳循環
不全、心不全により死亡した。
第一審は麻酔薬使用前の麻酔担当医による問診に義務違反があったとしたが、控訴審では、
当時の医療水準としては麻酔医の行った問診に義務違反があったとは認められない、として原
判の敗訴部分を取消した。
(大阪高裁、昭和 53 年 7 月 11 日判決、判例タイムズ 364 号 163 頁)
【裁判所の指摘と一般用医薬品販売時の当てはめ】
1 情報収集は、患者の安全確保に必要な情報を収集することを目的とする。
顧客情報の収集は面談でしか得られない情報を得るためのものであり、単なる薬に対する希
望調査ではない。情報収集の不備により症状の悪化やQOLの著しい低下を招く危険がある。
2 系統立った具体的な質問が必要である。
得るべき情報は具体的な情報であり、形式的な質問や質問者が理解していない質問項目は全
く無意味である。
行うべき質問は、情報提供者として何に留意するかを意識した具体的かつ系統的なものであ
り、患者等に理解でき答えられる内容とする必要がある。
3 相手の状況に合わせた質問でなければならない。
質問を受ける顧客の心理や理解度を判断しながら表現を変える、または核心の周囲について
質問するなどの
4 必要があれば、患者の家族の副作用歴も収集しなければならない。
必要があれば、喘息などの顧客の病歴、家族の副作用歴など安全確保に関する情報であれば
掘り下げた質問を行う必要がある
【まとめ】一般用医薬品の販売は顧客の生命・QOLの改善を期するものであり、一般的な生
活用品の物販のように単に顧客の希望する商品を提供するというものではない。
一般用医薬品の使用で対応できるかなどの判断、すなわちトリアージが必要であり、使用後の
顧客の安全を確保する義務がある。さらに、顧客からの情報収集不備による誤った情報提供に
より使用された一般用医薬品で発生した健康被害等については、薬剤師であれ、登録販売者で
あれ、過失として全く同様の責任が問われることを強く意識しなければならない。
【キーワード】一般用医薬品の販売、顧客情報の収集、薬剤師、登録販売者、責任
53
P-30 ⑥その他
薬局、薬店と他業種間のユニバーサルデザイン整備の比較研究
○飯塚亜希、岸本桂子、詫間浩樹、福島紀子
慶應義塾大学薬学部 社会薬学講座
【目的】近年、まちづくりにおけるユニバーサルデザイン(以下、UD)の概念が定着し、様々
な利用者が安心して建物に入ることができるよう施設整備の配慮や工夫が求められている。利
用しやすい建物か否か建物外観から判断する情報は、障がいがある者にとって非常に有用であ
る。例えば判断材料の一つとして、建物出入り口に掲げるマークがある。マークは施設の配慮
を把握するための重要な指標となる。本研究では、建物出入り口のUD整備の取り組みについ
て着目し、実地調査を通じて薬店、薬局と他業種間の比較を行いUDに対する意識の傾向を知
り、医薬品の販売・授与の際に医薬品情報を提供すべき施設としての今後更に配慮すべき点に
ついて検討を行った。
【方法】世田谷区内の 1.薬局、2.薬店と他業種(3.スーパー、4.コンビニエンスストア、5.
書店、6.銀行、7.郵便局)の計7業種を対象に、2012 年 9 月 9 日~20 日に建築物出入り口に
おけるUD実施率の調査をした。調査対象は業種毎にランダムに 30 店舗抽出した。調査項目
は出入り口の構造整備についての 4 項目、「出入り口表示」についての 7 項目から成る。これ
らの項目は「東京都福祉保健局によるまちづくり条例」、及び「店舗等内部のUD整備ガイド
ライン」の例示を参考に作成した。
【結果】銀行や郵便局、スーパーにおいては、出入り口までの移動経路に手すりや傾斜路、点
状ブロックを設けるなどの細やかな配慮が数多く見られた。出入り口の表示については、聴覚
障害者への理解を示す耳マーク又は筆談対応についての提示を行っていたのは銀行のみで
8/30 件(26.7%)であった。出入り口の戸において補助犬受け入れについての提示を最も行って
いた業種は銀行とコンビニであり、最も低かったのは書店、次いで薬局、薬店の順であった。
【考察】今回の調査では薬店、薬局において出入り口のUD整備は十分に配慮されているとは
言い難い結果であった。また、薬店や薬局において耳マークや筆談対応の提示が不十分であっ
た。セルフサービス方式を導入する薬店においては従業員から施設利用者への案内や声掛けが
少ないと考えられる。国民のセルフメディケーションへの関心が高まるなか、薬店は施設利用
者に対して医薬品等の供給や情報提供が求められ、容易に相談できる体制を整えていなくては
ならない。医薬品の販売・授与の際、誰もが適切な医薬品情報を享受できるよう、物理的な改
善を施すだけでなく心理的なバリアを取り除くようにも努めなくてはならない。今後はこれら
の努力をより発展させていくことが望まれる。
【キーワード】薬店、薬局、ユニバーサルデザイン
54
P-31 ⑥その他
症例コンテンツの知識情報を活用した地域介護支援システムの研究開発(1)
加藤哲太 1)、山田純司 1)、高木教夫 1)、○高木慶子 1)、杉山康彦 2)
1)東京薬科大学薬学部、2)(株)シーイー・フォックス
【目的】多くの高齢者を抱える日本社会において、介護認定の結果はその家族や本人に多大な
影響を与える。政府は介護認定制度の積極的改革を行っているが、本制度が介護認定者の症状
(高齢者の症状)を的確に捉えているのかは曖昧な点が多い。当研究室は、これまで薬剤師の
問診スキル向上のため「症例学習システム」を構築してきた。そこで本研究は、当研究室が研
究開発してきた症例コンテンツの知識情報データベース(症状データベースと患者特性データ
ベース)をもとに、高齢者の症状を的確に捉えた「介護支援システム~介護認定版~」を構築
することで高齢者支援への充実化を試みた。今回は特に介護認定者のうち、約半数を占める認
知症を中心に検討した。
【方法・結果】
「介護支援システム~介護認定版~」の構築には、症状データベースと介護認
定で利用する調査項目の関連付けが必要である。前者には認知症疾患-治療ガイドライン20
10およびDMS-Ⅲ-Rによる認知症診断基準を、後者には要介護認定-認定調査項目(厚生
労働省)を参照にした。本システムの運用にはネットワークへの接続が容易、画面サイズが大
きく操作性が良好、動画像等の撮影が可能な事からiPadを利用した。
【まとめ】本研究開発は的確な要介護(要支援)認定を支援すると期待する。そのことは、増
加の一途を辿る介護認定者数の抑制や廃用症候群(生活不活発病)の誘発を防止し、さらには
認知症などの早期発見や症状の進行度合いの把握にも繋がると考えられる。
【結語】本システムは、的確な要介護(要支援)認定を行う事で、高齢者の生活向上に寄与し、
その家族や高齢者に対して安全・安心な福祉保障基盤を確立するための一助となるものである。
【キーワード】介護支援システム、認知症、要介護(要支援)認定
55
P-32 ⑥その他
症例コンテンツの知識情報を活用した地域介護支援システムの研究開発(2)
○加藤哲太 1)、山田純司 1)、高木教夫 1)、高木慶子 1)、
福田早苗 2)、杉山康彦 3)
1)東京薬科大学薬学部、2) 三洋薬局、3)(株)シーイー・フォックス
【目的】近年、独居老人や老老介護が急増している。そのため、周囲からの情報が入らない、
高齢者の症状変化の把握が出来ない等、高齢者の医療の確保において困難な状況に陥っている。
この現状を鑑み、東京都では2000年から介護保険審査会を設置した。本審査会では、従来
の認定者である医師に介護士や薬剤師を加えることで、高齢者の症状に対し、多角的かつ総括
的な認定を可能にした。本研究室では、2009年から薬剤師の問診スキル向上のためのデジ
タル・コンテンツ(症例コンテンツ)を作成し、研究開発を行ってきた。そこで本研究は、症
例コンテンツの知識情報を活用することで、高齢者の症状に的確に対応する「介護支援システ
ム~症状版~」の構築を試み、将来的に適切な医療提供体制を樹立することを目的とした。今
回は介護士や薬剤師から収集した高齢者の身体情報を自動解析することで、その状態(症状)
が医薬品の影響か、疾病の変化(悪化)かを判断できるか検討した。
【方法・結果】我が国の高齢化率は過去最高の23.1%、このうち15.7%が認知症であ
る(2010年)
。認知症の代表的な疾患はアルツハイマー病(AD)で、全体の約50%を
占める。そこで、本研究ではADに関して検討した。本システムの構築には、ADの症状デー
タベースと医薬品情報の融合が必要である。そのため、認知症疾患-治療ガイドライン201
0-Alzheimer病とADに適応のある薬剤の添付文書を参考にし、データベース化を
試みた。
【まとめ】本システムは高齢者の身体情報を自動解析することで、その症状が疾患あるいは医
薬品副作用から起因するのかを類別することで定点的に判断できると考えられる。さらに時系
列的変化を表示することで病態変化の推移が把握でき、患者症状の原因について早期に的確な
判断をすることが可能となり、このことは高齢者の生活向上に寄与すると期待される。
【キーワード】介護支援システム、認知症、医薬品副作用
56
P-33 ⑥その他
いわゆる健康食品に含まれる医薬品成分による健康被害の危険性について
○小島 尚 1)、 熊坂謙一 2)、宮澤眞紀 2)
1)帝京科学大学医療科学部、2)神奈川県衛生研究所理化学部
【目的】
近年、急速な高齢化に伴い生活習慣病やその基礎疾患となるメタボリックシンドロームの予
防等の目的から、多種多様な健康食品が開発され、販売されている。健康食品はそれぞれ標榜
する健康増進や作用があるが、その作用を高めるために不当に医薬品成分を添加したものがあ
る。また、個人輸入で購入した健康食品やサプリメントには国情の違い等から製品に医薬品成
分を含むものがある。しかし、これらの医薬品成分が原因となった死亡事例を含む健康被害が
発生している。今回、通信販売や個人輸入で購入した健康食品の成分調査を行った結果につい
て、健康食品に添加された医薬品成分の危険性を検討したので報告する。
【方法】
平成 10 年から 22 年ごろまで、店舗販売、通信販売また個人輸入で購入した、ダイエット、
強壮強精、血糖改善等を目的としたいわゆる健康食品を検体とした。
医薬品成分は痩身作用(瀉下生薬、利尿薬、下剤、中枢性食欲抑制薬、甲状腺末等)
、強壮
強精作用(マオウ及びエフェドラアルカロイド、強壮生薬、男性ホルモン、ED 治療薬等)
、血
糖改善作用(経口血糖降下薬)
、豊胸作用(女性ホルモン)などを標準品として既報に準じて
薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーや質量分析
計等を用い定性定量を行った。
【結果・考察】
ダイエットを標榜した健康食品にはホスピタルダイエットと言われる食欲抑制薬や精神安
定剤などの数種類の医薬品を服用する個人輸入の製品が見られた。また、強壮強精を標榜した
ものでは ED 治療薬関連物質を含むものも目立った。
添加されている医薬品成分は年次の経過とともに変化がみられた。近年、ダイエットや強壮
強精を標榜した健康食品には医薬品成分のデザイナーズドラッグが見られるようになり、特に、
中枢性食欲抑制薬、ED 治療薬、また、その関連類似体には使用経験がないものも多く、健康被
害が懸念された。これらの健康食品は全体からみればごく一部の製品であるが、安心安全と思
われる“健康食品”のイメージとはかけ離れており、健康被害を発生する可能性が存在するこ
とを周知する必要がある。
【結語】 このような健康食品は医薬品成分による健康被害とともに、本来、適切に治療する
機会が遅れたり、失ったりする可能性がある。そのため、健康食品のもつ問題点を理解して使
用することはセルフメディケーションとして必要なことと考えられる。
【キーワード】いわゆる健康食品、医薬品成分、健康被害、デザイナーズドラッグ
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P-34 ⑥その他
一般用医薬品に関するヘルスリテラシー測定ツールの開発
◯今野菜穂、倉田香織、土橋 朗
東京薬科大学
【目的】一般用医薬品の利用促進において、正しい情報の普及とともにその情報の理解度の把
握が効果的な服薬指導の実践には必要不可欠である。近年、薬害の発生を契機に医薬品情報の
重要性の認知が高まると同時に、
「くすり」の適用範囲はサプリメントや食品、嗜好品と大き
くひろがっている。諸外国では医薬品を子育ての便利な道具と考える母親・父親が増えており、
こうした風潮は我が国にもあてはまる。我が国の識字率は高いこともあり、これまでヘルスリ
テラシー研究についての関心はそれほど高くはなく、その測定方法の開発は公衆衛生分野の一
部の研究者が取り組んでいるにすぎない。しかし、社会構造の複雑化が進行している現在の状
況では、ヘルスリテラシー格差が少なからず存在している。そこで、一般用医薬品の推進にお
いてくすりに対する正しい認識を広めるために、簡単な質問で患者が有している服薬に関する
基本的な考え方を探り、提供する情報を絞り込むことができるツールの開発を目的とする。
【方法】米国で頻用されているヘルスリテラシー測定ツールの1つである Test of Functional
Health Literacy in Adults (TOFHLA)を翻訳した。TOFHLA の設問を改変し、患者が服薬方法を
過つ可能性を見いだすための設問の作成を行なった。
【結果】TOFHLA は 22 分間で実施され、点数により評価するものであり、国民調査のような調
査だけではなく、服薬指導前の問診ツールとして実施されることが明らかになった。服薬に関
して、血中濃度推移モデルを有している人であれば、服薬方法に関する個別的な服薬指導は最
小限で済む。一方で、医薬品の薬効の発現と血中濃度との関係および薬効と副作用の関係をあ
いまいに理解している患者は、飲み忘れ時や症状が改善しない場合の服薬には注意が必要であ
る。これらを判断するための問いかけとして 3 つの選択問題と 4 つの穴埋め問題を提案した。
【結語】十分な健康管理を行なうためにはヘルスリテラシーの向上が必要不可欠であり、服薬
指導において、知識、識字力、健康信念、科学的推論直などを測定するツールは有用である。
日本においても服薬に関して説明する前に簡単な質問をすることで服薬に関して患者が有し
ている健康信念および科学的推論モデルを推測し、ヘルスリテラシー向上に必要と考えられる
個別化した情報提供を可能にすることができる。今後は、現場での検証を目指す。
【キーワード】TOFHLA、用法指示、科学的推論モデル、健康信念、服薬指導
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P-35 ⑥その他
医療用医薬品と OTC 薬・健康食品を併用している入院患者への
お薬手帳活用促進に向けた取組み
○庄建司、二瓶大輔、五味裕介、小野寺潤、岩田裕
平塚市民病院 薬剤科
【目的】
お薬手帳は患者・医療スタッフとの共通の薬剤情報伝達ツールとして定着してきている。平塚
市民病院(以下、当院)では、持参薬確認時にお薬手帳を活用しているが、OTC 薬・健康食品を
併用しているにも関わらず、
「お薬手帳の持参忘れ」の患者は少なくなかった。今回、地域薬
剤師会に協力を仰ぎ、お薬手帳の持参率を上昇させ、活用促進を促すことを目的として取組み
を行った。
【方法】
2012 年 4 月施行の診療報酬改定を考慮し、地域薬剤師会会員の薬局薬剤師とお薬手帳に関す
る事前合意を行い、啓蒙活動を行った。持参薬確認を行った当院入院患者を対象とし、診療報
酬改定の前後 3 ヶ月間におけるお薬手帳の「持参あり」
「持参無し」
「持参忘れ」について調査
し、分析を行った。
【結果】
改定前後 3 ヶ月間の入院時持参薬確認を行った患者はそれぞれ前後で 693 人、698 人であり、
お薬手帳の「持参あり」の割合は前後で 39.1%、60.7%であった。年齢では男女ともに 70 歳
以上の保持率が高かった。
お薬手帳の「持参忘れ」の割合は前後で 33.4%、20.8%であった。OTC 薬・健康食品を医療
用医薬品と併用している患者でお薬手帳を持参していた割合は前後で 67%、75.2%であった。
【考察】
入院患者の持参薬確認時にお薬手帳を活用することで、アレルギー歴の確認、他院からの重複
投与の確認も可能となり、薬剤に関連したインシデントの予防になる。お薬手帳を持参する患
者は改定後では上昇していたが、これは診療報酬改定に伴う影響が大きいと考えられる。また、
地域薬剤師会の協力の下、啓蒙活動後では「持参忘れ」の患者は減少したため、調剤薬局での
指導の効果があったと考えられる。今後も、薬局薬剤師とともに病院薬剤師もお薬手帳への
OTC 薬・健康食品の服用有無の記載だけでなく、お薬手帳の活用方法について患者への啓蒙
活動を行っていくべきと考えられる。
【キーワード】OTC 薬 健康食品 お薬手帳
59
P-36 ⑥その他
かわる薬局、かわる薬剤師
○田中友春、小坂井萌、菊嶋一枝、秋葉保次
株式会社ウイングメディカル
【目的】
今、薬剤師に必要とされるスキルの中に、医療人としての必須条件である「ヒューマニズ
ム」と、患者と向き合う「コミュニケーション能力」がある。今回は、患者と向き合う薬剤
師に必要なコミュニケーション能力についての外部研修を受講した薬剤師に対して実施し
たアンケート調査の結果から、その取組みについて報告する。
【方法】
外部の研修を受講した薬剤師に対して、アンケート調査を実施した。
調査期間:平成 23 年 8 月 7 日より平成 24 年 2 月 5 日
対象研修数:6 回
回答数:315 名(受講者数:延べ 361 名) 回答率 87.25%
質問内容:患者とコミュニケーションを取るための工夫
【結果】
アンケートの集計結果は以下の通り。回答者の 82%(258 人)が在職中であり、その就業
先の業態は 80%(206 人)が調剤薬局、14%(35 人)が調剤+OTC、企業 6%(15 人)
、
病院 3%(8 人)と続く。
「患者とコミュニケーションを取るための工夫」については、53%
(166 人)が何かしらの工夫をしていると回答。
【考察】
薬剤師が業務を進める上で、薬剤師同士は勿論のこと、患者、医師、看護師との
コミュニケーションによって関係が成り立っている。アンケート調査の結果によると、
「笑
顔を基本に」
、
「患者の話をきちんと聴く」
、
「丁寧な対応を心掛けている」という回答が多く、
その必要性は薬剤師の意識の中に十分認識されている様子が伺える。患者に選ばれる薬局と
なり、薬剤師であるために変わっていかなければならないことを認識し、積極的にセミナー
に参加し学ぶ姿勢が見られる一方で、コミュニケーション力は日頃の業務の中で身につける
ものという考えが多いこともわかる。また、コミュニケーションよりも「間違えないこと」
、
「待たせないこと」に気を配り、患者にとって安心できる薬剤師でありたいとの意見もあっ
た。
【結語】
患者に安心・安全を提供し、それぞれの相手に応じたサービスを提供すべく薬局も薬剤師
もかわらなければならない。
【キーワード】
薬剤師、コミュニケーション力、研修・セミナー
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P-37 ⑥その他
登録販売者の保険調剤業務研修と期待される教育効果
○齋藤 育弘 2)、玉城 武範 1)、2)、吉山 友二 1)
1)北里大学薬学部 臨床薬学研究・教育センター臨床薬学(保険薬局学)
2)有限会社くすりのミドリ ミドリ薬局美里店
【目的】
平成 24 年 3 月に厚生労働省医薬食品局総務課長通知として「登録販売者の資質の向上のた
めの外部研修に関するガイドライン」が発表されて以来、登録販売者の技能向上を目指し、社
内外を問わず様々な研修が企画されている。薬剤師同様、薬を取り扱う専門職である登録販売
者に臨床的な研修をさせることで、どのような教育効果が得られるか検証することが本調査の
目的である。
【方法】
5 名の登録販売者に対し、ある一定の期間医療事務扱いとして勤務をさせ、一連の保険調剤
業務を学ぶとともに、薬剤師と伴に症例に触れ、医療用医薬品及び病態について学ぶ環境を提
供した。あらかじめ用意したアンケート用紙を用い、研修前と研修後でどのような気づきが得
られたか等を調べ、統計処理を行った。
なお、調査を行うに当たり、患者情報の取り扱いについては、厳重に管理指導し、各種法令
を遵守した。
【結果】
医療用薬剤は登録販売者の取り扱う一般用医薬品と異なり、単剤を組み合わせた点が多いた
め、薬剤の特徴や重要性について理解が深まったという意見が多くみられた。また、一般用医
薬品の適用と受診勧奨の鑑別を判断する際の根拠となる臨床症状について具体的に学ぶ機会
が増えた。
【考察】
責任ある受診勧奨は、健康相談者の症状の重篤化を防ぎ、適切な治療を受ける機会を提供す
る。登録販売者が薬剤師とともに臨床経験を得ることは、セルフメディケーションを適切に支
援するためのトリアージ能力の質の向上に寄与するものと考える。一般用医薬品の販売及び受
診勧奨をよりよい質で提供するために、知識での教育に加え、実践的な教育方法のオプション
の一つとして、薬剤師とともに臨床経験が得られる環境創出を提唱したい。
登録販売者は、地域住民へのセルフメディケーションを展開するために、医薬品を扱う薬局
及び店舗販売業の中で医療専門職としての能力を一層発揮してほしい。
【キーワード】
登録販売者、セルフメディケーション、臨床経験、トリアージ、受診勧奨
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P-38 ⑥その他
セルフメディケーションを志向した薬学生によるクリニカル・ミーティングの実践
○吉山友二1)、今井郁弥1)、清水美希1)、田中夕加里1)、園部尭仁1)、羽生祥子1)、
松岡未来1)、大島崇弘2)、上東悦子2)
1)北里大学薬学部、2)大島薬局、3)国立スポーツ科学センター
【目的】北里大学薬学部では、医療の現場と密接に連携した教育を展開している。臨床薬剤師
育成に際しては、医療現場における薬剤師の使命を間断なく体感することが大変有用である。
薬剤師育成環境を増やすという観点に立ち、実務実習を経験した6年生が主体となって低学年
にクリニカル・ミーティングを開催した。今回、セルフメディケーションを志向したクリニカ
ル・ミーティング企画に薬学生が取組むことの教育的有用性を明らかとした。
【方法】6年生
が低学年向けに臨床の第一線で活躍している薬剤師を招待して、専門領域のトピックスを気軽
に聞いてもらうクリニカル・ミーティングを企画した。意見交換を中心として、学生の目線で
リラックスして討議する中で入学後の早い時期から薬剤師を意識できるようにした。一般用医
薬品やスポーツファーマシストなどと題する講義を依頼した。講義前後に参加学生の薬剤師の
役割に関する意識変化をアンケート調査した。
【結果】今回の企画立案過程において、実務実
習に出向く前に聞いておきたいことを6年生が認識し得た。一般用医薬品の講義を通して、薬
局を身近に感じる学生が71%から93%に、薬局薬剤師を身近に感じると答えた学生が5
7%から79%と、低学年の薬剤師に対する意識は向上した。また、スポーツファーマシスト
の講義を通しても、薬局薬剤師を身近に感じる学生が増え、薬剤師は薬の相談がしやすいと答
えた学生が47%から73%へと、参加学生の薬剤師に対する意識は向上した。総じて、6年
生の企画を通して、低学年学生のセルフメディケーションおよび薬剤師に対する意識は向上し
た。また、在学時に低学年の教育に携わることは将来の薬剤師のリーダーとなるための貴重な
機会であると捉えた。
【考察】実務実習を経験した6年生が主体となってセルフメディケーシ
ョンを志向したクリニカル・ミーティングを開催することは、低学年が習得したいニーズを的
確に満たすことに役立つのみならず、企画者である6年生自身も薬剤師教育を相互理解するこ
とに有用であることが明らかとなった。米国では指導者ミーティングに学生代表も参加させ、
教育の貴重な機会として活用している。薬学生こそが次世代のリーダーであるならば、当然の
ことと思われる。6年生がスタートさせた新しい教育の息吹は、6 年制教育の学部生にも受け
継がれたことの意義は大であることを強調したい。
【キーワード】セルフメディケーション、
教育、薬学生、一般用医薬品、スポーツファーマシスト
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区民講座
『食べて実感! タニタ式健康のひみつ』
龍口 知子
株式会社タニタヘルスリンク 健康支援サービス事業部
司会:福島紀子(慶應義塾大学薬学部 教授)
第 2 日目 10 月 14 日(日)2 号館 地下 1 階 B55 教室 13:00-14:40
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今回は、要旨のホームページ掲載は不許可との通知がありました。
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謝辞
第 10 回日本セルフメディケーション学会の開催にあたりまして、参加各位
をはじめ多くの方々にご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。また、御協賛
と広告掲載により多大なご支援を賜りましたので、併せて御礼申し上げます。
下記にご記載させていただき御礼にかえさせていただきます。
2012 年 10 月 13 日
第 10 回日本セルフメディケーション学会年会長
福島 紀子
認定 NPO 法人セルフメディケーション推進協議会会長
池田 義雄
-----協賛企業・団体----エスエス製薬株式会社
三宝製薬株式会社
株式会社 クリエイト エス・ディー
全薬工業株式会社
株式会社 ココカラファイン
○大正製薬株式会社
株式会社 CFS コーポレーション
第一三共ヘルスケア株式会社
株式会社 じほう
武田薬品工業株式会社
株式会社 スマイルドラッグ
○日本医薬品卸勤務薬剤師会
株式会社 タニタ
日本漢方協会
株式会社 ドラッグマガジン
日本調剤株式会社
株式会社 南江堂
久光製薬株式会社
株式会社 龍角散
方術信和会
杏林製薬株式会社
ロート製薬株式会社
佐藤製薬株式会社
以上 23 企業・団体(五十音順)
○印は協賛のみの企業・団体
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