【課題】 オリーブという植物をまんでがん(まるごと )利用して恒常的に摂取

JP 2005-143398 A 2005.6.9
(57)【要約】
【課題】 オリーブという植物をまんでがん(まるごと
)利用して恒常的に摂取可能な抗ピロリ菌活性を有する
食品を提供すること。
【解決手段】 オリーブ植物由来の親水性天然成分を抗
ヘリコバクター ピロリ活性を有する素材として活用す
るオリーブまんでがん利用法。上記親水性天然成分がポ
リフェノール成分である。上記親水性天然成分として、
該親水性天然成分を含むオリーブの果実を破砕後、圧搾
および/または遠心分離して得られる果汁水分、オリー
ブの果実および/または葉の抽出物、あるいはそれらの
濃縮物を用いる。上記果汁水分が、オリーブ油の製造工
程で産出される果汁水分由来の採油廃液(Vegetation W
ater)である。上記素材が食品素材である。上記の利用
法で製造された該食品素材を原料とする食品であって、
オリーブ植物由来親水性天然成分を有効成分とする抗ヘ
リコバクター ピロリ活性を有する食品。オリーブ植物
を、有効成分である親水性天然成分が損なわれないよう
に加工したものを原料とする抗ヘリコバクター ピロリ
活性を有する食品。
(2)
JP 2005-143398 A 2005.6.9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ植物由来の親水性天然成分を抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する素材とし
て活用するオリーブまんでがん利用法。
【請求項2】
上記親水性天然成分がポリフェノール成分である請求項1のオリーブまんでがん利用法
。
【請求項3】
上記親水性天然成分として、該親水性天然成分を含むオリーブの果実を破砕後、圧搾お
よび/または遠心分離して得られる果汁水分、オリーブの果実および/または葉の抽出物
10
、あるいはそれらの濃縮物を用いる請求項1または2のオリーブまんでがん利用法。
【請求項4】
上 記 果 汁 水 分 が 、 オ リ ー ブ 油 の 製 造 工 程 で 産 出 さ れ る 果 汁 水 分 由 来 の 採 油 廃 液 ( Vegeta
tion Water) で あ る 請 求 項 3 の オ リ ー ブ ま ん で が ん 利 用 法 。
【請求項5】
上記素材が食品素材である請求項1ないし4のいずれかのオリーブまんでがん利用法。
【請求項6】
請求項5の利用法で製造された該食品素材を原料とする食品であって、オリーブ植物由
来親水性天然成分を有効成分とする抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する食品。
【請求項7】
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オリーブ植物を、有効成分である親水性天然成分が損なわれないように加工したものを
原料とする抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する食品。
【請求項8】
親水性天然成分がポリフェノール成分である請求項7の抗ヘリコバクター ピロリ活性
を有する食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリーブまんでがん(まるごと)利用法に関する。本発明は、オリーブ油の
製 造 工 程 で 産 出 さ れ る 果 汁 由 来 の 採 油 廃 液 ( Vegetation Water) を 有 効 に 利 用 す る 方 法 、
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頻繁に行う剪定で発生する葉を有効に利用する方法、それらの方法で得られた食品素材を
原料とする抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘ リ コ バ ク タ ー ピ ロ リ ( Helicobacter pylori、 以 下 、 「 ピ ロ リ 菌 」 と 称 す る こ と が あ
る。)は微好気条件下で生育するグラム陰性の短桿菌であるが、尿素からアンモニアを生
成することによって耐酸性を有し胃および他の消化器系に生息する。ピロリ菌はウレアー
ゼのほか、熱ショックタンパク、空砲化毒素、ムチナーゼなどの病原因子を産生すること
から胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌などの消化器疾患の原因として深く関与している
ことが知られている。よってこれらの疾病を予防・治療する手段のひとつとしては、その
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原因となるピロリ菌の除菌がある。
【0003】
従来の除菌法としては、テトラサイクリン、アモキシシリン、クラリスロマイシンなど
の抗生物質、メトロニダゾール、チニダソールなどの抗虫剤、ビスマス製剤、プロトンポ
ンプインヒビター等の薬剤を用いた治療法が知られている。しかし薬剤による除菌におい
ては、腹痛や下痢、粘膜障害などの副作用、耐性菌の発生といった問題があり、人体に対
しては一時的な投与しか行われない。また除菌後の再感染のおそれもある。
【0004】
一方、オリーブ果実抽出物については、活性酸素除去機能やメラニン生成抑制機能、腫
瘍細胞増殖抑制・死滅機能(特許文献1)などの機能性を有することが知られている。ま
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(3)
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たオリーブ葉の抽出物についても血糖値上昇抑制作用があることが明らかとなっている(
特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−181197号公報
【特許文献2】特開2002−10753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オリーブという植物をまんでがん(まるごと)利用すること、すなわち、植
物体の未利用部分を利用して廃棄するものをできるだけ少なくすることを目的とする。
より具体的には、本発明は、オリーブ油の製造工程で産出される果汁由来の採油廃液(
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Vegetation Water) の 有 効 利 用 法 の 提 供 を 目 的 と す る 。 さ ら に 、 本 発 明 は 、 頻 繁 に 行 う 剪
定で発生するオリーブの葉の有効利用法の提供を目的とする。
【0006】
一方で、ピロリ菌の除菌に関し副作用等の問題から、薬剤以外に抗ピロリ菌活性を有し
、恒常的に摂取可能な天然成分の探索が行われてきた。過去にはカカオ、唐辛子、ハーブ
、茶、マッシュルーム、ステビアなどの成分に関して抗ピロリ菌活性の効果が報告されて
いる。本発明は、恒常的に摂取可能な抗ピロリ菌活性を有する天然成分、および該成分を
有効成分とする抗ピロリ活性を有する天然組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、恒常的に摂取可能な抗ピロリ菌活性を有する天然成分を食品素材とし
、該食品素材を原料とする抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する食品を提供することを
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目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本 発 明 者 等 は 、 オ リ ー ブ 油 の 製 造 工 程 で 産 出 さ れ る 採 油 廃 液 ( Vegetation Water) 、 オ
リーブの果実の抽出物、さらに葉の抽出物、そして、さらにこれらの組成成分であるオリ
ューロペインならびにヒドロキシチロソールがピロリ菌に対して優れた抗菌性を有するこ
とを見いだした。
【0008】
す な わ ち 、 オ リ ー ブ か ら 採 油 す る 過 程 に お い て は 、 採 油 廃 液 ( Vegetation Water) と し
て果実由来の成分を含有する水分(以下果汁水分)が産出されるが、高濃度のポリフェノ
30
ール成分を含有する。またオリーブの果実から水、アルコールあるいはその混合物で抽出
される組成物、さらには葉から水、アルコールあるいはその混合物で抽出される組成物は
、これらも果実由来のポリフェノール成分を含有している。このポリフェノール成分を含
む組成物がピロリ菌に対して優れた抑制作用を有する。
【0009】
本 発 明 は 、 以 下 の (1 )な い し (3 )の オ リ ー ブ ま ん で が ん 利 用 法 を 要 旨 と す る 。
(1 ) オ リ ー ブ 植 物 由 来 の 親 水 性 天 然 成 分 を 抗 ヘ リ コ バ ク タ ー ピ ロ リ 活 性 を 有 す る 素
材として活用するオリーブまんでがん利用法。
(2 ) 上 記 親 水 性 天 然 成 分 が ポ リ フ ェ ノ ー ル 成 分 で あ る 上 記 (1 )の オ リ ー ブ ま ん で が ん
利用法。
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すなわち、オリーブ植物由来のポリフェノール成分を抗ヘリコバクター ピロリ活性を
有する素材として活用するオリーブまんでがん利用法。
(3 ) 上 記 親 水 性 天 然 成 分 と し て 、 該 親 水 性 天 然 成 分 を 含 む オ リ ー ブ の 果 実 を 破 砕 後 、
圧搾および/または遠心分離して得られる果汁水分、オリーブの果実および/または葉の
抽 出 物 、 あ る い は そ れ ら の 濃 縮 物 を 用 い る 上 記 (1 )ま た は (2 )の オ リ ー ブ ま ん で が ん 利 用
法。
すなわち、オリーブ植物由来の親水性天然成分、より具体的にはポリフェノール成分、
好ましくは該親水性天然成分を含むオリーブの果実を破砕後、圧搾および/または遠心分
離して得られる果汁水分、オリーブの果実および/または葉の抽出物、あるいはそれらの
濃縮物を抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する素材として活用するオリーブまんでがん
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(4)
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利用法。
(4 ) 上 記 果 汁 水 分 が 、 オ リ ー ブ 油 の 製 造 工 程 で 産 出 さ れ る 果 汁 水 分 由 来 の 採 油 廃 液 ( V
egetation Water) で あ る 上 記 (3 )の オ リ ー ブ ま ん で が ん 利 用 法 。
すなわち、オリーブ植物由来の親水性天然成分、より具体的にはポリフェノール成分、
好ましくは該親水性天然成分を含むオリーブ油の製造工程で産出される果汁水分由来の採
油 廃 液 ( Vegetation Water) 、 オ リ ー ブ の 果 実 お よ び / ま た は 葉 の 抽 出 物 、 あ る い は そ れ
らの濃縮物を抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する素材として活用するオリーブまんで
がん利用法。
(5 ) 上 記 素 材 が 食 品 素 材 で あ る 上 記 (1 )な い し (4 )の い ず れ か の オ リ ー ブ ま ん で が ん
利用法。
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【0010】
本 発 明 は 、 以 下 の (6 )な い し (9 )の 抗 ヘ リ コ バ ク タ ー ピ ロ リ 活 性 を 有 す る 食 品 を 要 旨
とする。
(6 ) 上 記 (5 )の 利 用 法 で 製 造 さ れ た 該 食 品 素 材 を 原 料 と す る 食 品 で あ っ て 、 オ リ ー ブ
植物由来親水性天然成分を有効成分とする抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する食品。
すなわち、オリーブ植物由来の親水性天然成分、より具体的にはポリフェノール成分、
好ましくは該親水性天然成分を含むオリーブの果実を破砕後、圧搾および/または遠心分
離して得られる果汁水分、より具体的にはオリーブ油の製造工程で産出される果汁水分由
来 の 採 油 廃 液 ( Vegetation Water) 、 オ リ ー ブ の 果 実 お よ び / ま た は 葉 の 抽 出 物 、 あ る い
はそれらの濃縮物を抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する食品素材として活用するオリ
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ーブまんでがん利用法で製造された該食品素材を原料とする食品であって、オリーブ植物
由来親水性天然成分を有効成分とする抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する食品。
(7 ) オ リ ー ブ 植 物 を 、 有 効 成 分 で あ る 親 水 性 天 然 成 分 が 損 な わ れ な い よ う に 加 工 し た
ものを原料とする抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する食品。
(8 ) 親 水 性 天 然 成 分 が ポ リ フ ェ ノ ー ル 成 分 で あ る 上 記 (7 )の 抗 ヘ リ コ バ ク タ ー ピ ロ リ
活性を有する食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、恒常的に摂取可能な抗ピロリ菌活性を有するオリーブに由来する天然成
分を有効成分とする食品を提供することができる。
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実施例で裏付けされたように、オリーブに由来する果汁水分あるいはその濃縮物が優れ
た抗ピロリ菌活性を有すること、ひいては抗ピロリ菌機能をもつ食品素材であることは明
らかであり、オリーブの果実を破砕後、圧搾および/または遠心分離して得られる果汁水
分、オリーブの果実および/または葉の抽出物、あるいはそれらの濃縮物を原料とする加
工食品を摂取することにより、消化器系に存在するピロリ菌を減らし、様々な罹病の危険
性を低下させることが可能となる。
本 発 明 に よ り 、 オ リ ー ブ 油 製 造 時 に 生 じ る 果 汁 由 来 の 採 油 廃 液 ( Vegetation Water) を
抗ピロリ菌活性を有する素材として有効利用する手段のひとつを提供することができる。
また、本発明により、頻繁に行う剪定で多量に発生するオリーブの葉の抽出物について
も抗ピロリ菌活性を有する素材として有効利用する手段のひとつを提供することができる
40
。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
オ リ ー ブ ( Olea europaea L.) は 、 モ ク セ イ 科 オ リ ー ブ 属 の 常 緑 樹 で あ る 。 西 ア ジ ア が
原産と言われており、地中海沿岸を中心として世界各地で栽培されている。その種類は5
00種類以上とも言われており、栽培適性、果実の大きさ、形、含油量など多様である。
そ の 果 実 は 核 果 類 で あ る が 果 肉 ( 中 果 皮 ) に 油 を 蓄 積 し 、 果 実 の 含 油 量 が 2 0 %以 上 に も
及ぶ品種もある。
【0013】
果実は油の採取のほか加工用としても利用されるが、果実そのものは強い渋味を呈する
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。これはオリーブ果実が高濃度のポリフェノール成分を含有することに起因する。
【0014】
日本では1908年に農商務省が香川、三重、鹿児島の三県で試験栽培を開始し、香川
県でのみ成功し現在まで栽培が続けられている。
【0015】
オ リ ー ブ 果 実 の 組 成 に お い て 水 分 は 概 ね 5 0 ∼ 7 0 重 量 %で あ る が 、 こ の 果 実 は 丸 ご と
破砕されまた採油工程によっては更に加水を行ったのち、撹拌段階を経て遠心分離または
圧 搾 に よ り 採 油 が 行 わ れ る 。 採 れ る 油 は 原 料 果 実 の 概 ね 1 0 ∼ 2 5 重 量 %で あ り 、 残 り は
果汁水分と繊維分、たんぱく質など不溶性成分から成る固形分が産出される。果汁水分は
オリーブ果実に由来する水溶性成分を含有しており、ポリフェノール成分をはじめとする
10
有効成分も含まれる。
【0016】
発明者等は、いずれもオリーブに由来する天然成分であり古くから食品として摂取され
ることも多く人体に対して安全性が極めて高いことが実証されている果汁水分が、ピロリ
菌に対して優れた抑制作用を有する事実を見いだし、本発明に至った。
【0017】
すなわち、オリーブに由来する天然成分、特に親水性成分等から成る果汁水分は、ポリ
フェノール成分に代表される抗ピロリ菌活性成分を高濃度で含有する。とくに配糖体の一
種であるオリューロペインやジフェノール化合物の一種であるヒドロキシチロソール(3
,4−ジヒドロキシフェニルエタノール)などはいずれもオリーブに特徴的なポリフェノ
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ール成分である。該ポリフェノール成分は、果汁水分ならびに果実の抽出物において高濃
度に存在するが、これらはいずれも強い抗ピロリ菌活性を示す。また、さらには葉から水
あるいはアルコールで抽出される組成物も果実と同様にポリフェノール成分を含有してい
る。
【0018】
したがって、本発明の抗ヘリコバクター ピロリ活性を有する上記親水性天然成分は、
該親水性天然成分を含むオリーブの果実を破砕後、圧搾および/または遠心分離して得ら
れる果汁水分、オリーブの果実および/または葉の抽出物、あるいはそれらの濃縮物の形
態であることができる。すなわち、抗ピロリ菌活性は、これらの成分を含む果汁水分ある
いはその濃縮物を有効成分として用いる方法により発揮される。
30
【0019】
オリーブ由来の果汁水分は、オリーブの果実を破砕後、圧搾および/または遠心分離し
て、あるいはオリーブの果実を水あるいはアルコールで抽出して得られる。葉から水ある
いはアルコールで抽出される組成物も果実と同様にポリフェノール成分を含有しており、
必要に応じ果実には葉を含んでいてもよい。
オリーブ油の製造工程で産出される果汁水分はオリーブ油のみの採取を目的としている
本工程においては不要な産物であり、現在は廃棄物として取り扱われている。本発明は、
果 汁 水 分 、 例 え ば オ リ ー ブ 油 製 造 時 に 生 じ る 果 汁 由 来 の 採 油 廃 液 ( Vegetation Water) を
抗ピロリ菌活性を有する素材として有効利用する手段のひとつを提供するものである。
またオリーブ油の製造工程で採油廃液とともに産出される固形分である採油滓には若干
40
の果汁水分が残存しており、採油滓を水あるいはアルコールで抽出し、濃縮することによ
り果汁水分とほぼ同等の成分ならびに効果を有する抽出物を得ることが出来る。これもま
た抗ピロリ菌活性を有する素材として利用可能である。
さらにまた、オリーブは剪定を頻繁に行うので、葉や枝は大量に廃棄物となっており、
この葉を水あるいはアルコールで抽出し、濃縮することにより果汁水分とほぼ同等の成分
ならびに効果を有する抽出物を得ることが出来る。これもまた抗ピロリ菌活性を有する素
材として利用可能である。
このように採油時に生じる固形分(採油滓)や剪定により生ずる葉について現在は廃棄
されているが、採油廃液とともに有効利用が可能となる。
【0020】
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果汁水分は食品等への加工に利用しやすいように、また有効成分濃度を増加させるため
に濃縮してから使用することもできる。果汁水分の濃縮方法としては、成分の損失を防ぐ
ため減圧濃縮あるいは膜濃縮などが挙げられる。利用用途によっては濃縮した液体を更に
固体にまで濃縮することもできる。葉を水あるいはアルコールで抽出したものについても
、濃縮することにより果汁水分とほぼ同等の成分ならびに効果を有するので、果汁水分と
同様に利用することができる。
【0021】
本発明における抗ピロリ菌活性を有する食品とは、オリーブに由来する抗ピロリ菌活性
天然成分を含有する食品、該天然成分を有効成分として含有する果汁水分あるいはその濃
縮物ならびに果実あるいは葉の抽出物の1あるいは2以上を含有する食品である。該食品
10
は、オリーブ植物を、有効成分である親水性天然成分が損なわれないように加工したもの
を原料とする食品を包含する。すなわち、オリーブに由来する天然成分に対する本発明者
らによる最新の科学的研究の成果を、安全で自然な食品で提供することができる限り、食
品の形態は問わない。実施例では、オリーブドリンクとオリーブクッキーを製造したが、
カプセルや錠剤などの形で手軽に利用できる形態の健康食品でもよい。例えばカプセルの
形態では、摂取する直前まで内容物を酸化などから守るという内容物の保護、必要な分だ
け持ち運べるし、あるいは実際に摂取する時にはカプセルを外して内容物をそのまま、水
などに溶かして摂るなどして、内容物のみを摂ることも可能である。「果実」そのものを
渋味をもったまま加工原料とした食品や、「葉」をそのままペースト状にして加工原料と
した食品などの態様も可能である。
20
【0022】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定される
ものではない。
【実施例1】
【0023】
果汁水分の調製例
オ リ ー ブ 油 製 造 工 程 で 産 出 し た 採 油 廃 液 を 回 転 数 3 0 0 0 rpmで 5 分 間 遠 心 分 離 を 行 い
、上澄液を得た。これを濾紙で濾過し、果汁水分とした。
【実施例2】
【0024】
30
オリーブ果実あるいは葉の抽出物の製造例
オ リ ー ブ 果 実 あ る い は 葉 1 0 0 gに 水 あ る い は 8 0 容 量 %エ タ ノ ー ル 溶 液 2 0 0 mlを 加 え
破砕したのちに振とう抽出を行った。抽出後濾過し、残さに更に先に加えたのと同じ水あ
る い は 8 0 容 量 %エ タ ノ ー ル 溶 液 を 加 え 、 同 様 に ろ 過 し ろ 液 を 合 わ せ て 抽 出 液 と し た 。 抽
出物は45℃以下の温度下で減圧濃縮し、固形分とした。
【実施例3】
【0025】
抗ピロリ菌試験
上記実施例1および2で得られた果汁水分ならびに抽出物、またオリューロペインとヒ
ドロキシチロソールに対して固体平板培地を用いた抗菌試験を実施した。
40
【0026】
被験液の調製
実施例1で得られた果汁水分、ならびに実施例2で得られた抽出物を蒸留水に再溶解し
、 こ の 溶 液 を 回 転 数 3 0 0 0 rpmで 5 分 間 遠 心 分 離 し て 得 ら れ た 上 澄 液 を そ れ ぞ れ 濾 過 滅
菌し、被験液とした。オリューロペインとヒドロキシチロソールに関しては各物質をそれ
ぞれ蒸留水に溶解し、濾過滅菌したものを被験液とした。
【0027】
試験用菌液の調製
標 準 菌 株 と し て Helicobacter pylori( ATCC43504) を 用 い た 。 こ の 菌 株 を 7 容 量 %の 馬
血清を含むブルセラ液体培地に接種して、37℃、微好気条件下で培養し、培養液を希釈
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して試験用菌液とした。
【0028】
試験操作
一 定 量 の 被 験 液 お よ び 7 容 量 %の 馬 血 清 を 含 む ブ ル セ ラ 寒 天 培 地 を 滅 菌 シ ャ ー レ で 平 板
とした。この平板に試験用菌液を塗布し、37℃、微好気条件下で培養を行い生育した菌
のコロニーの数より抗菌性を算出した。
【0029】
その結果、果汁水分については図1に示したように培地への添加量の増加とともにピロ
リ 菌 の 生 育 阻 止 率 は 増 大 し 、 5 容 量 %以 上 添 加 す る と 完 全 に ピ ロ リ 菌 の 生 育 を 抑 制 す る こ
とが確認された。
10
【0030】
また図2に示したように果実抽出物および葉抽出物についても、ともに添加量の増加と
と も に ピ ロ リ 菌 の 生 育 阻 止 率 は 増 大 し 、 そ れ ぞ れ 5 mg/ml以 上 の 添 加 量 で は ピ ロ リ 菌 の 生
育を完全に抑制した。
【0031】
オリューロペインについては図3に示したように濃度依存的にピロリ菌の生育を抑制し
、 0 . 7 mg/ml以 上 の 濃 度 で ピ ロ リ 菌 の 生 育 を 完 全 に 抑 制 し た 。
【0032】
また図4に示したようにヒドロキシチロソールについても同様にピロリ菌の生育を抑制
し 、 0 . 3 mg/ml以 上 の 濃 度 で ピ ロ リ 菌 の 生 育 を 完 全 に 抑 制 す る こ と が 確 認 さ れ た 。
20
【実施例4】
【0033】
製造例1
果汁水分濃縮物を有効成分とするドリンクの製造。
果汁水分を容量として約10倍に減圧濃縮したものを果汁水分濃縮物とする。この果汁
水 分 濃 縮 物 2 0 mlに 、 水 1 5 0 ml、 ブ ド ウ 糖 果 糖 液 糖 1 5 ml、 は ち み つ 5 ml、 ク エ ン 酸 0
. 4 5 g、 ビ タ ミ ン C 0 . 3 g、 香 料 0 . 2 gを 加 え て 混 合 し 、 オ リ ー ブ ド リ ン ク と す る 。
【実施例5】
【0034】
製造例2
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オリーブクッキーの製造。
果汁水分を減圧濃縮し、固形分にまで濃縮したものを果汁水分濃縮物とする。この果汁
水 分 濃 縮 物 3 0 gと 小 麦 粉 9 0 g、 シ ョ ー ト ニ ン グ 2 0 g、 コ ー ン ス タ ー チ 1 0 g、 粉 乳 1 0
g、 膨 張 剤 1 g、 お よ び 水 1 5 mlを 原 料 と す る 組 成 で 2 2 0 ℃ 、 約 7 分 の 焼 き 時 間 で ク ッ キ
ーを作り、オリーブクッキーとする。
【産業上の利用可能性】
【0035】
オリーブ油の製造工程で産出される果汁水分はオリーブ油のみの採取を目的としている
本工程においては不要な産物であり、現在は廃棄物として取り扱われている。
本 発 明 は 、 果 汁 水 分 、 例 え ば オ リ ー ブ 油 製 造 時 に 生 じ る 果 汁 由 来 の 採 油 廃 液 ( Vegetati
40
on Water) を 抗 ピ ロ リ 菌 活 性 を 有 す る 素 材 と し て 有 効 利 用 す る 手 段 の ひ と つ を 提 供 す る 可
能性がある。
またオリーブ油の製造工程で採油廃液とともに産出される固形分である採油滓には若干
の果汁水分が残存しており、採油滓を水、アルコールあるいはその混合物で抽出し、濃縮
することにより果汁水分とほぼ同等の成分ならびに効果を有する抽出物を得ることが出来
る。
本発明は、オリーブ油の製造工程で採油廃液とともに産出される固形分である採油滓を
水、アルコールあるいはその混合物で抽出し、濃縮したものを抗ピロリ菌活性を有する素
材として有効利用する手段のひとつを提供する可能性がある。
さらにまた、オリーブは剪定を頻繁に行うので、葉や枝は大量に廃棄物となっており、
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この葉を水、アルコールあるいはその混合物で抽出し、濃縮することにより果汁水分とほ
ぼ同等の成分ならびに効果を有する抽出物を得ることが出来る。
本発明は、オリーブの葉を水、アルコールあるいはその混合物で抽出し、濃縮したもの
を抗ピロリ菌活性を有する素材として有効利用する手段のひとつを提供する可能性がある
。果汁由来の採油廃液、採油滓の抽出物および/または葉の抽出物の濃縮物を食品素材と
して用いた恒常的に摂取可能な抗ピロリ菌活性を有する加工食品を摂取することにより、
消化器系に存在するピロリ菌を減らし、様々な罹病の危険性を低下させる可能性がある。
本発明は、オリーブ植物まんでがんを、有効成分である親水性天然成分が損なわれない
ように加工したものを原料とする抗ピロリ菌活性を有する食品の開発を促進する可能性が
ある。
10
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】オリーブの果汁水分のピロリ菌抑制効果を説明する図面である。
【図2】オリーブ果実あるいは葉の抽出物のピロリ菌抑制効果を説明する図面である。
【図3】オリューロペインのピロリ菌抑制効果を説明する図面である。
【図4】ヒドロキシチロソールのピロリ菌抑制効果を説明する図面である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
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フロントページの続き
7
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61P 35/00
A61P 35/00
A61P 43/00
A61P 43/00
111 Fターム(参考) 4B018 MD52 ME11
4C088 AB64 AC04 AC05 BA08 CA03 MA52 NA14 ZA68 ZB26 ZB35
ZC02
4C206 AA01 AA02 AA04 CA19 MA01 MA04 MA72 NA14 ZA68 ZB26
ZB35 ZC02
【要約の続き】
【選択図】 図3