動物整形外科病院

整形外科
Liaison
[ リエゾン - E ]
03
執筆
監修
April.2014
樋口 飛鳥 先生
樋口 雅仁 先生
【動物整形外科病院】
(大分県)
技術資料
日田市
大分県
フランス語で「つなぐ」という意味を表しています
はじめに
鎮痛薬を処方すると飼い主様は安心します。
しかしそれ以上に、
鎮痛薬は我々獣医師が処方することで安心
感を得ようとしてしまいがちな薬かもしれないと思います。長期投与が可能で、副作用の少ない理想的な薬
だからこそ意味のある投薬・処方を心がけたいと考えています。
診断、痛みの評価(来院患者、紹介症例)について
飼い主様がおかしいと感じていることを丁寧に聞き出します
診断の始まりは視診からです。痛がる、震える、元気消失・食欲不振を含む整形疾患の疑いを主訴に来院した犬だ
けではなく、骨折や歩行困難以外のほぼ全ての外来症例について、まず屋外、待合室、診察室で可能な限り自由歩
行させ歩行状態の観察を行います。特に、
ワクチン接種を目的に来院する子犬の先天的整形疾患は出来るだけ早く
発見するように心がけています。怪しいかな?と感じたら大まかにターゲットを絞り、診察台に乗せてから、初めて動
物に触ります。熟練された先生方はリードに繋がれて犬が入ってきた時点で靭帯断裂を診断されたりしますが、私
は骨折・重度の膝蓋骨脱臼等の明らかな症例以外は基本的にこの時点での確定診断は行っていません。
また、膝関節脱臼やレッグ・カルベ・ペルテス病の場合、疼痛や違和感のため患部周辺を舐めることで起こる脱毛と、
本来の皮膚疾患を見誤らないことも重要なポイントとなります。紹介症例は予め診断が下った症例も少なくありま
せんが、できる限り先入観に囚われない診察を心がけています。痛みの評価は飼い主様の主観による所も大きいと
思いますが、症例のヒストリーが重要になってくることも少なくありません。
したがって、全ての症例でわずかな異変
でもいいので、いつから始まったか、
きっかけはあったか、進行しているかを中心に入念に稟告をとります。何度も質
問を変えて注意深く聞き出すと意外な事実が発覚することもあります。
X線検査
診断に役立つ情報を得るために正確なポジショニングと撮影条件は必須です
視診、触診、問診が終了したら、次はX線検査です。当院は整形外科を主要診療科にしているので、X線検査は常に
行っています。X線検査から正確な情報を得るためには、正しいポジショニングや撮影条件の選択を行って綺麗な
X線を撮影することを心がけています。100あるうち50しか情報が載っていないX線検査では、例え100%の読影
する力があったとしても、所詮50以上の情報を得ることは出来ません。それを心に留めて納得出来るまで何度も撮
り直しています。
橈尺骨骨折で「折れている」と、
「 骨折している+微少骨片が存在する+成長板が閉鎖していない等々」まで判明
するのでは手術の難易度を含め、診断だけでなく治療方針、考えられる予後に関するインフォームドコンセントの質
に歴然とした差が生まれます。
若齢期の股関節形成不全では、確定診断のために麻酔下でのX線撮影を行います。不動化をしていない犬は仰
向けの状態で両後肢を引っ張られればどんなに訓練されていても抵抗して大腿部に力を入れます。加えて、寛骨臼
と大腿骨を覆っている関節包が捻れ、関節内に陰圧がかかります。それらの力は大腿骨頭を寛骨臼側に押しつける
圧力となり実際よりも股関節が締まって撮影されてしまい正確な診断は困難です。
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Re p o r t
1
脱力した状態では陰圧が懸かっても、人が外に引っ張る力の方が大きくなるため大腿骨頭は正常よりも寛骨臼か
ら浮いた状態になり、診断が可能です。基本的にどんな病態でもスクリーニング目的で標的を決めずX線を撮ること
はありません。股関節なら股関節、脊椎なら脊椎、腎臓なら、膀胱ならとターゲットを絞って撮影します。
内科的治療について
内科療法も積極的な治療法の一つと捉えています
老齢性の変形性関節症、変形性脊椎変形症などは内科療法での対処になります。また、小型犬のレッグ・カルベ・
ペルテス病の症例の多くは疼痛管理のみで病態の安定化、症状の消失まで維持でき、最終的には薬からの離脱
に導ける可能性が高いため、NSAIDによる疼痛管理を積極的に勧めています。
現在、獣医界でもコンドロイチン硫酸エステルナトリウムやグルコサミン塩酸塩・グルコサミン硫酸塩を含む関
節系サプリメントが多く発売されています。
しかし製品の品質、エビデンスは健康食品という性質上求められてい
ません。
医学的にはコンドロイチン硫酸エステルナトリウムを経口摂取した場合の関節疾患改善作用は無いとされてい
ます。人医療では整形外科医にどのような形であれ関節系サプリメントの使用を提案される機会は少ないといえ
ます。この手のサプリメントは万人受けするものの、使用する獣医師側の知識や倫理観が強く求められます。ただ
漫然と使うのではなく、何かしらの根拠を持って処方するのであれば、関節系のサプリメントは今後の補助的治療
の一端を担う可能性があるかもしれません。
NSAIDを使用する場合、使用しない場合(使用するメリットとデメリット)
どう効いて欲しいかで決めています
NSAIDは関節痛など疼痛管理を第一に考える疾患に使用しています。COX-2選択性の高い製品は長期
投与での副作用の報告が少なく、安心して使用できるメリットがあります。しかし全ての疼痛管理に向いてい
るということはなく、疼痛に浮腫を伴う神経疾患には短期間でのステロイド使用の方がやはり有効であると考
えています。
デメリットは腎血流量の低下や、血栓症の発生、胃潰瘍等の消化器症状ですが、2週間おきに受診してもら
うことや老齢犬での血液検査など早期の対応に努めることで重篤化は予防できます。
レッグ・カル ベ・ペ ルテス病 の 病 態
1910年にLegg、Calve、Perthesが各々別に報告したレッグ・カルベ・ペルテス病は1935年にTuttにより
獣 医 学 雑 誌に初 めて 報 告され 、平 均 7ヵ月齢 ( 4 ∼ 1 2ヵ月齢 ) の 小 型 犬 の 股 関 節を形 成 する大 腿 骨 頭 部 の
血 行 障 害により軟 骨 下 骨が壊 死を起こす疾 患です。原 因は様 々な 説が推 察されていますが、特 定はされて
いませ ん 。
病 態としては、血 行 障 害による骨 頭 の 壊 死 → 破 骨 細 胞による骨 吸 収 → 骨 芽 細 胞による骨 の 再 構 築 の 順に
進みます。骨吸収時に壊死部に骨嚢胞が発生することにより軟骨に亀裂が入り脱落します。
Report by Asuka Higuchi
2
Te c h n i c a l
長い間、獣医界では骨頭切除がほぼ唯一の治療法とされてきました。
しかしながら安易な骨頭切除と手術手技
の失宜により手術前よりも症状が悪化したり、老化による筋力低下と共に大腿骨頭の切断面と寛骨臼がぶつかり
疼痛が激化する症例も多く存在します。人医療においてレッグ・カルベ・ペルテス病で骨頭切除という治療法は
存在しません。8歳以下の幼児では骨頭の扁平化を防ぐため保存的治療が選択され1∼4年(平均2.5年)の装具
の装着と疼痛管理、9歳以上では大腿骨減捻内反骨切り術・大腿骨頭回転骨切り術等、外科治療が選択されます。
動物では装具の装着は恐らく不可能ですが、筋肉量が完全に低下しきる前に発見し、骨頭の軟骨下骨の壊死
部分の再構築まで疼痛を管理できれば大部分の症例で最終的には投薬からの離脱、疼痛の消失まで導ける
可能性が高いと考えられます。レッグ・カルベ・ペルテス病の治療の最終目標は、疼痛からの解放、臨床症状の
消失にあります。
症状・診断
X線検査で確定診断を行います
レッグ・カルベ・ペルテス病は跛行、大腿部・膝・鼠径部の疼痛、股関節の圧痛、大腿部の脱毛、X線検査での関節
裂隙の狭小化・拡大・不整、軟骨下骨の骨密度の変化(初期は低下、末期は増加する)が代表的な症状です。初期
の病変は起立時に最も力の掛る寛 骨 臼 の背側縁と大腿骨頭の頭背側縁に存在するため、X線検査時に通常の
伸展位のポジションでは病変部が大腿骨頭の裏に回ってしまい見つけることが困難になりがちです。そのため
フロッグレッグポジションでの撮影を行う必要があります(図1)。
後肢をフロッグレッグポジションの状態にすると、尾側にやってくる骨頭の病変が寛骨臼の下縁近くに軟骨下骨の
骨密度の低下や、
ピストルグリップ変形として確認できます。
調査では一部の先生はX線検査を行わない、
または、
確定診断の材料とされていないことが示されましたが、X線検査
以外で確定診断を行う方法はありません。また、
レッグ・カルベ・ペルテス病はその病態から血液検査等で鑑別診断を
行う必要はほとんど無いと考えています。
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図1
Re p o r t
3
症例
症例1
ヨークシャー・テリア 雄 発症年齢(診断年齢)…生後8ヵ月
主 訴: 左後肢挙上 跛行 検 査: 股関節圧痛あり 〈X線検査〉
左股関節にピストルグリップ変形を確認
(図2)
診 断: レッグ・カルベ・ペルテス病と診断
5mg/kg、SID
治 療: フィロコキシブ、
すぐに症状は軽減し、
投薬後2週
経 過: 投与後、
で臨床症状の完全消失を認めた(図3)。
図2
しかし、
投与8ヵ月目に休薬日を設けたところ症状が再発した。そのため、
再び5mg/kg 、
SID
での投薬を開始。その後、1ヵ月毎に隔日、3日置きと投与間隔を開き、投与1年後には
疼痛と訴えたときのみの投薬とした。投与開始後約2年で薬からの完全離脱を果たした
(図4)。
現在 5 歳となり投 薬 開 始より4年が経過しているが跛行、疼痛などの臨床症状は無く、
負重も充分である。
図4
図3
Report by Asuka Higuchi
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症例2
トイ・プードル 雄
発症年齢…生後約7ヵ月頃と推定 初診時…生後8ヵ月
主 訴: 1ヵ月近くに及ぶ左後肢の皮膚病・脱毛(図 5)。
良く舐めている。近位にて皮膚の組織生検を行ったが原因
不明といわれた。精査を希望。
検 査: 脱毛以外皮膚に目立った病変は存在せず、大腿部から膝に
かけて被毛は脱毛ではなく舐める事で千切れた状態のため、
皮膚が透けて見えている。
〈歩行状態〉左後肢を若干挙上筋肉量も僅かに左後肢に低
下を認めた。股関節部の圧痛を疑ったためX線検査を行った。
〈X線検査〉フロッグレッグで大腿骨頭の僅かな骨密度の低
下を認めた
(図6)。
図5
診 断: レッグ・カルベ・ペルテス病疑い
SID、
2週間
治 療: 診断的治療としてフィロコキシブ、5mg/kg、
大腿部を舐める回数の明らかな減少を認めた。飼い主様によると2週間経過時に
経 過: 投与後、
は殆どしなくなったとのことで、投薬を続行。1ヵ月経過時に再度X線検査を行ったとこ
ろフロックレッグでピストルグリップ変形を確認(図7)。
レッグ・カルベ・ペルテス病と確定診断した。被毛は3ヵ月ほどで左右差は消失。但し、投薬
を止めると再発するとのことから継続投与とした。その後、6ヵ月経過時に薬の漸減を指
示。現在、投薬開始後1年経過しているが、
ほぼ薬からの離脱を果たしている。
図7
図6
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Re p o r t
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症例3
トイ・プードル 雄 発症年齢…生後約6ヵ月頃と推定 初診時…生後8ヵ月
主 訴: 断続的な跛行を認めたため近医を受診、外傷と診断
され経過観察をしていたが良化せず、
別の病院を受診
し、そこで X 線 検 査 を 受 け 股 関 節 形 成 不 全と診 断
された。手術を視野に入れた治療を希望していた。
検 査: 右後肢、左後肢とも大腿部から膝にかけて被毛粗造。
問診により良く舐めている気がするとの回答。左後肢
完全挙上。左後肢に重度の筋萎縮。股関節に激しい圧痛
を認めた。持参されたX線検査より患肢の大腿骨頭部
の骨密度の変化が疑われる所見があり、
同時に股関節
の形状に異常が認められなかったため、
レッグ・カルベ・
ペルテス病を疑い再度、
X線検査を行った。
〈X線検査〉股関節伸展位・フロッグレッグの両方で骨頭
の骨密度の低下(軟骨下骨の虫食い状の脱落)、骨頭
の変形を確認
(図8)
。
図8
診 断: レッグ・カルベ・ペルテス病
治 療: フィロコキシブ、
5mg/kg 、
SID 、
2週間
経 過: 2週間後の再診時に症状の軽度の改善はあるが、
やはり後肢の跛行は続いているとのこと
でフィロコキシブ10mg/kg *SIDに増量。2週間投薬した。
初診から4週間後の受診時に、未だ跛行は存在したが飼い主様から徐々に脚を使う事が
増えた。後肢を舐めなくなったとの改善を示す稟告を得られたため10mg/kg *で継続投与
とした
(図9)。
現在、初診から8ヵ月経過しているが、皮膚症状は寛解し、歩行状態も改善している。この
ためプレビコックスを5mg/kgに減量した。X線検査上では病態の進行が一定の状態で
停止しているため現段階は骨の再構築段階にあると推察される。最近のX線検査にて、骨
頭の骨密度の増加が確認されている
(図10)
。
歩行状態も良好であり、飼い主様も症状の改善を実感しているとのことである。今後も
1ヵ月間隔でのX線検査を継続していく予定である。
図9
図10
*本報告は症例報告です。用法・用量については、添付文書に従って投与してください。
Report by Asuka Higuchi
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Te c h n i c a l
症例4
トイ・プードル 雌 来院時…生後約10ヵ月
主 訴: 骨頭切除後の疼痛 負重困難
既 往: 生後8ヵ月より跛行と左後肢の疼痛を訴え近位に受診。レッグ・カルベ・ペルテス病と診
断され、NSAIDを2週間投薬したが跛行が治らず、左側大腿骨頭切除手術を受けた。
その後1ヵ月間リハビリに通院するも、患肢を少し触っただけで激しい疼痛に泣き叫び、
性格が激しくなったとのこと。
来院時、患肢は完全に挙上し、左後肢上部に手をかざすだけで歯を剥き出しにして威嚇
行動をとっていた。後肢筋群は菲薄化、膝関節は疼痛を緩和するために内転し、足根関節
は外方に捻られた状態で挙上していた
(図11)
(図12)
。
検 査: 触診は不可能
診 断: X線撮影検査により大腿骨頭切除術の失宜と診断
治 療: 残存している骨頚部を再切除し、殿筋の一部をフラップ状にして骨頚部断端を覆った。
歩行状態の劇的な改善をみた。NSAIDの投与
経 過: 術後2週間ほどで患肢の負重が可能になり、
は術後1ヵ月続けたが、投薬終了後も疼痛は見られず、性格も穏やかになり、よく遊ぶ
ようになったとの稟告を得た。
考 察: 骨頭切除の失宜は骨頭切除前よりも激しい疼痛を起こす。また、切除することにより
周辺の筋群が菲薄化し、いずれ骨頚部と寛骨臼が接触するようになることが予想される。
NSAIDでは骨同士がぶつかることにより発生する激痛のコントロールは不可能である
ため、本症例に限らず骨頭切除術を施された犬は老齢期に再び疼痛と跛行を訴えると
考えられる。
これらより、骨頭切除はあくまで全ての治療を施し尽くした後の最後の砦という位置づけ
にあるものであり、一種類の鎮痛剤の効果が認められなかったからといって安易に選択
すべきものではない。また、飼い主様にも骨頭を切除することで完治させるという意味
合いでインフォームドコンセントを得ることも避けるべきであると言える。
レッグ・カルベ・ペルテス病においてNSAIDの効果が薄い症例に関しては筋肉量が確保
できている段階で骨頭回転術や、人工骨頭置換術という外科的治療に進むべきである
と考える。
図11
A n i m a l
H o s p i t a l
図12
Re p o r t
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診断チャート
前肢跛行
後肢跛行
急性
外傷
慢性
神経学的異常
筋疾患
趾
整形外科的異常
中足骨
足根関節
脛骨・腓骨
膝関節
大腿骨
股関節
骨折
骨盤・仙椎
脱臼
炎症性・変性性関節疾患
形成不全
レッグ・カルベ・ペルテス病
内科療法
外科療法
全ての整形外科的疾患に関して
※確定診断にX線撮影検査は不可欠である
※正当な理由を得られるまで「とりあえず」で鎮痛剤を処方しない
※確定診断を下す根拠・技量について不安を覚える場合は投薬を極力控え専門医に紹介すべきである
※骨折・幼若期もしくは成長期の先天性脱臼や形成不全などへのNSAID・関節系サプリメントの投与に治療的
な意味はないことを理解する
考察
レッグ・カルベ・ペルテス病は多くの症例に関しては疼痛管理のみで臨床症状の消失に導ける可能性が高いと
いえます。より早期に疼痛管理を行うために、病態早期での発見と確定診断が必須です。筋肉量が低下しきる
前に疼痛管理を開始した症例2と重度の低下を認めた症例3では同じように軟骨下骨の壊死が進行している状態
でも、臨床症状には大きな差があります。
また、投薬による鎮痛は骨頭が初期からすでに虚脱している症例・病態が進行し筋肉量の低下が重度な症例・
鎮痛薬が効かない症例などは適応外です。疼痛管理は即効性のある治療法ですが、短期間で終了することは
出来ません。短期間での機能回復が必要な症例では観血的治療法(大腿骨頭回転術・人工骨頭置換術・骨頭切除術)
を選択せざるを得ないのが現状と言えます。
当院では次の選択肢として大腿骨頭回転術を実施しています。
Report by Asuka Higuchi
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Te c h n i c a l
プレビコックス について
他の薬剤と比較しても使いやすい薬だと考えています
選択的COX-2阻害薬として初の製品で、日本での発売が7年前と決して古い薬
ではありませんが長期投与の症例も集まりつつあり、比較的副作用も少ないこ
とから使いやすい薬と考えています。
当院では2週間おきの受診を基本に、最大で1ヵ月分まで一回の受診で処方して
いますが、現在まで幸いなことに副作用が出た症例はありません。様々なタイプでの発売がされていますが、
プレビ
コックスは錠型も小さく、投与に関して容易であると感じています。
コンプライアンスについて
飼い主様の薬への理解と獣医師との連携が必要です
鎮痛薬はそもそも投与しなければ痛みが出るので、通常通りの副作用等の説明を理解して頂ければ飼い主様
のコンプライアンスは非常に高い薬です。
しかしながら、なぜ投薬を行うのか理由は明確に提示する必要があります。
内科療法を行う整形疾患で「何が起こっているのか」、
「今後どうなっていくのか」の2点に飼い主様の注意は集中する
ように感じます。診断後、病態から考えられる予後まで過去の症例の動画と共にお話しし、治療者側の描く未来
予想図をお伝えします。耳で聞くだけではなく実際の症例の動いている様子を目にすることで飼い主様の理解を
より深めます。帰宅後もご家族で確認できるように資料を渡し、電話での相談にも対応します。罹患動物に関係
する全ての人に明確なイメージを持って治療に参加して頂けるように努力しています。
12
シニアケアへの取り組み
飼い主様への金銭的な負担も考え、
生涯上手に疼痛をコントロールすることが目標です
当院では一定の年齢以上の犬はフィラリア検査に併せて一般身体検査・血液生化学検査を毎年行います。また、
全ての年齢の犬猫でワクチン接種時に聴診・糞便検査などの一般身体検査を行うようにしています。若干診察に
時間は掛りますが、疾患の早期発見に繋がると考えています。疾患によっては必要であれば夜間の救急対応も行
っています。異変に気付いたら様子を見ず、病院に連絡するようにお話ししています。
手術不適応の慢性の関節疾患については上述の通りNSAIDによる疼痛管理が治療の主体です。
しかし、一部
の症例では鎮痛薬だけで症状をコントロールすることが難しい為、より良質なタンパク源を多く含む食事管理や
ポリ硫酸ペントサンナトリウム注射液による補助療法も併せて行っています。
近年リクエストの多いサプリメントは上述しましたが、現時点でのコンドロイチンやグルコサミンなどを経口摂
取することの医学的根拠、その効果などを客観的にお話しし、その是非は飼い主の自主性に任せています。
A n i m a l
H o s p i t a l
Re p o r t
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サプリネオ フレックスについて
効果について残念ながら客観的な確証はありませんが、従来のタブレット型・カプセル型のもの
と比べ、薬を連想させる見た目でないため、
「 可哀相」という感情を抱きにくい、美味しそう、香り
が強いのか飼い犬が見るだけで喜んでやってくる、少し大きいが見た目ほどべたつかず、固くな
いので崩しやすい、など実際に使用している飼い主様からの評価は
非常に高いサプリメントです。
「喜んで食べる」飼い犬の姿を見ることは飼い主様
の喜びであり、積極的に治療に参加する意欲に
繋がると実感しました。
現在当院では6ヵ月間継続で与えている症例
もいます。
R
サプリネオはメリアルの所有登録商標
Report by Asuka Higuchi
10
Te c h n i c a l
犬の筋骨格系疾患
品種別罹患率
罹患率(%)
12.0
筋骨格系疾患の
罹患率の高い品種
犬全体平均罹患率(8.1%)
11.1
10.2
10.0
9.8
9.8
9.7
8.7
8.6
8.5
8.4
8.5
8.0
6.0
4.0
2.0
2011年度4月1日∼2012年3月31日
ラブラドール・レ トリーバー
ウェルシュ・コーギー・
ペンブローク
2
ゴールデン・レトリーバー
ダックスフンド
トイ・プードル
1
900,000
ヨークシャー・テリア
JKC登録の犬種別 2013年
(1999∼2013年)
0 300,000
キャバリア・キング・
チャールズ・スパニエル
JKC登録の犬種別累計
ミニチュア・ダックスフンド
(アニコム家庭どうぶつ白書2013 P64より引用)
ポメラニアン
し、罹患率の高い品種を示した。
フレンチ・ブルドッグ
の契約を開始した犬を対象に、筋骨格系疾患
で請求があった犬の罹患率を犬種別に調査
パピヨン
0.0
までの間に、
アニコム損保の「どうぶつ健保」
1,500,000
0
20,000
60,000
100,000
1,442,783
1
プードル
87,438
チワワ
996,695
2
チワワ
58,954
3
プードル
884,150
3
ダックスフンド
33,183
4
ヨークシャー・テリア
313,941
4
ポメラニアン
15,612
5
シー・ズー
293,446
5
ヨークシャー・テリア
13,000
6
ポメラニアン
264,185
6
柴
12,725
7
ウェルシュ・
コーギーペンブローク
248,872
7
シー・ズー
9,665
8
パピヨン
233,615
8
マルチーズ
8,717
9
ラブラドール・レトリーバー
204,618
9
ミニチュア・シュナウザー
7,657
10
柴
192,238
10
フレンチ・ブルドッグ
7,336
11
マルチーズ
176,679
11
ゴールデン・レトリーバー
6,619
12
ゴールデン・レトリーバー
172,136
12
パピヨン
6,018
5,832
13
ミニチュア・シュナウザー
168,775
13
ウェルシュ・
コーギーペンブローク
14
キャバリア・キング・
チャールズ・スパニエル
124,233
14
ラブラドール・レトリーバー
4,477
15
パグ
123,228
15
ジャック・ラッセル・テリア
4,400
※赤字は筋骨格系疾患の罹患率の高い品種。
※JKC登録の犬種別 2013で筋骨格系疾患の罹患率の高い キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル は17位(3,485頭)。
S WDA 1403 1 1403 5,000