タイマー素子 タイマー素子 LMC555 の長時間動作 (11 Nov. 2012) 立川敏明 小型風力発電機の電磁ブレーキシステムでは,その作動時間にタイマーを用いる場合が 多い 1)。タイマーの作動時間は,利用する発電機出力,バッテリーの充放電特性 2)や風環 境などに依存するが,通常,数分程度である。このようなタイマーは,CR 回路の充放電特 性を利用した電子回路で,比較的簡単に製作できる。今回は,一例として,タイマー素子 LMC555 を用いたタイマー回路を用いて,素子マニュアルには掲載されていない数分程度 の長時間動作について考察・検討したので報告する。 図1は典型的な単安定で作動するタイマー 回路である。すなわち,TRIG に加えられた信 号(タクト SW により瞬間的に 5V から 0V に する)により,1.1✕CR 時定数時間だけ,OUT 信号に~4.9V が出力される(図の場合は LED が点灯する)。さらに,実際の風力発電機の電 磁ブレーキシステムでは,この出力信号をブレ ーキドライブ回路に接続する 1)。 図 2 は,上記回路で得られる典型的なタイマ ー作動時間を表したグラフで,抵抗値をパラメ ーターにとり,横軸タイマー時間に対する縦軸 コンデンサー容量をとったものである(素子マ 図1 タイマー試験回路 タイマー試験回路 ニュアルから転載) 。 図から明らかなように,横軸タイマー時間は 100 sec 以上の値の条件が記されていない。従っ て,風力発電機の電磁ブレーキシステムに用い る数 min タイマーに対しては不十分である。外 挿値が単純に利用できない理由の第一は,一般 的に市販されている 10 μF 以上のコンデンサ ーは,電解コンデンサーが主力で,コンデンサ ー内部の電解質を通じての洩れ電流が存在し, コンデンサー充電時間が長くなるからである。 また,容量が多くなるにつれて洩れ電流も多くな 図2 タイマー作動時間 タイマー作動時間 ると考えられる。 第二の問題点は,抵抗にもあり,2 MΩを超えるような値を持つ抵抗は,特殊な抵抗で量 産品では存在しないことである。 以上のような状況の中で,今回は比較的容易に入手できる量産品の抵抗とコンデンサー を用いて,図 2 の外挿値にあたる 300 sec 程度 までのタイマー作動を試みた。表 1 に, その結果をまとめた。用いた抵抗は,公称値 1 MΩ(公差∓10 %)のもので,それをテスタ ー(三和 PC5000)で測定し,得られた値は 1.01 MΩ(測定精度 1%以内)である。また, コンデンサーは,公称値 47 μF 一個と 100 μF 二個(ニチコン FG ,公差∓20 % ,50V 85℃)による単体・並列接続を用いた。また,これら三個のコンデンサー単体のテスター による容量実測値は,各々50.6 , 106 および 104 μF(測定精度 3.5%以内)であった。 表 1 タイマー作動時間実測値 タイマー作動時間実測値( 作動時間実測値(R = 1.01 MΩ MΩ) C 公称値(μF) 47 100 147 200 247 C 実測値(μF) 50.6 106 157 210 261 タイマー作動時 58.4 121 180 244 303 1.1✕CR(sec) 56.2 118 174 233 290 偏差Δ(%) 3.56 2.54 3.33 4.72 4.48 間(sec) 表 1 で,タイマー作動時間は,図 1 の回路中の C に上覧の C 公称値を挿入して得られた 実測値である。また,1.1✕CR は,C および R の実測値より求めた計算値であり,下覧の 偏差Δは,タイマー作動時間と計算値の差を % 表示したものである。明らかに,タイマー 作動時間は,計算値より長くなっているが,全体として 5% 以内の差である。また,タイ マー時間の繰り返し誤差(10 回測定)は,全体に渡って∓ 0.5 % 以下であった。 次に,同様な実験としてコンデンサーC に,公称値 100 μF 四個(ニチコン FG ,35V 85℃)を用いた測定も行った。こちらの結果も,ほぼ同様な結果が得られたが,偏差Δは 最大で 6.9 % となり,若干大きな値となった。 以上まとめると,市販品の抵抗とコンデンサーを用いて,タイマー素子 LMC555 を使用 した単安定型タイマー試験回路による長時間タイマーの試験を行った結果,5 min 程度まで のタイマー時間を持つタイマーが得られた。タイマー時間は,計算値に比べて 5% 弱長時 間となったが,再現性はよく,小型風力発電機の電磁ブレーキシステムに対しては,十分, 供用できることが分かった。また,市販品の大きな製品公差に対しては,精度表示された テスターにより対処できることが分かった。 参考文献 1) 立川敏明,岡琢磨,坂手克士 ; 電磁ブレーキによる風力発電機用過充電防止回路の試作 http://www.megaegg.ne.jp/~tatutosi/newpage4.htm 20) (2012) 2) 立川敏明 ; ソーラーパネル・バッテリー装置の充放電特性 http://www.megaegg.ne.jp/~tatutosi/newpage4.htm 14) (2011)
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