ス デ ズ ! 8 - 北海道医療ソーシャルワーカー協会

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ズ
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8
8
北
海
道
医
療
ャ
ル
協
会
スタディーズ
!28
日本医療社会事業協会
(
1961年採
択
)
北海道医療ソーシャルワーカー協会 1995年変更採択
医療ソーシャルワーカー倫理綱領
日本国憲法の精神と専門社会事業の原理にしたがい、保健・医療の領域に
おいてソーシャルワークをおこなうわれわれはつぎのことがらを医療ソーシャ
ルワーカーの倫理綱領とさだめる。
1.個人の幸福推進と社会の福祉向上を目的として活動する。
2.対象者の処遇にあたっては、その意思の自由を尊重し、秘密を守り、
無差別平等の原則にしたがう。
3.ソーシャルワーカーとしての自覚をもって対象者との専門的援助関係
をたもち、その関係を私的目的に利用しない。
4.医療ソーシャルワークの意義と機能が他の関係職員に理解されるよう
つとめ、その目的達成に努力する。
5.専門職業の立場から社会活動をおこない、社会資源の活用と開発をは
かり社会保障の完成に努力する。
スタディーズ
第 28 号
!目 次!
●医療ソーシャルワーカー倫理綱領
●第50回
北海道医療ソーシャルワーカー学会
教育講演
対人援助技術を鍛える・伝える
~医療ソーシャルワーカーが洗練された専門職として成熟していくために
座長
講演
奥川
田村
里子(東札幌病院)
…………5
幸子(対人援助職トレーナー
国際医療福祉大学木坂スクール講師
日本社会事業大学専門職大学院講師)
…………7
●第50回
北海道医療ソーシャルワーカー学会
シンポジウム
医療ソーシャルワーカー協会の「軌跡」と「伝承」~今までの50年これからの50年
進行
~地域教育の意義
高田
玲子(日本医療社会事業協会元会長)
耕策(北海道医療ソーシャルワーカー協会元会長)
青木
常雄(北海道医療ソーシャルワーカー協会前会長)
北海道医療ソーシャルワーカー学会
支部で取り組む初任者研修
大悟(日本医療社会事業協会前会長)
清水
関
●第50回
中平
建久(北海道医療ソーシャルワーカー協会会長)
…………27
学会報告
第二報
本研修が参加者にもたらしたもの~
発表者
共同研究者
菊池
山田
英人(北樹会病院)
要子(南札幌脳神経外科)
佐藤奈津子(北海道社会保険病院)
寺田
巻
香(北翔大学)
康弘(北樹会病院)
山崎雄一朗(札幌ライラック病院)
…………41
入院時アセスメントとソーシャルワーク介入の検討
発表者
共同研究者
木川
幸一(北光記念病院)
菊地
英輔(北光記念病院)
今井
智瑛(北光記念病院)
西川
昌慶(稲積記念病院)
…………51
実習関係三者に向けてのソーシャルアクションと今後について
発表者
共同研究者
青柳
寺田
香(浅井学園大学)
高橋あすか・巻
兼平
攝子(札樽病院)
康弘(北樹会病院)
梢・五井
翠(札幌北楡病院)
佐藤奈津子(北海道社会保険病院)
佐藤
寿恵(勤医協中央病院)
高野
和美(勤医協札幌病院)
星野由利子(札幌麻生脳神経外科病院)
行沢
剛(勤医協札幌西区病院)
高橋
敦子(札幌秀友会病院)
…………55
透析患者の通院方法の現状と社会資源の活用について
発表者
共同研究者
兼平
梢・五井
根川枝里子(札幌北楡病院)
愛・山崎奈美恵(札幌北楡病院)
…………58
翠・梁瀬
高次脳機能障害者へのソーシャルワーク援助について
~「ナラティブ・アプローチ」の視点から~
発表者
共同研究者
田中
中島
麻里(札幌麻生脳神経外科病院)
雅美(平和リハビリテーション病院)
中村美由紀・星野由利子(札幌麻生脳神経外科病院)
小西利千子(北海道大学病院
リハビリテーション部)
…………61
介護ケアマネジメントにおける意識変化に関する一考察
~予防ソーシャルワークの展開に向けて~
窪田
発表者
富永
英香(札幌市白石区第1地域包括支援センター)
共同研究者
増田
智子(札幌市白石区第1地域包括支援センター)
京子・藤田
修一・伊藤
道林
地域ケアシステムの確立
純代(札幌市手稲区地域包括支援センター)
松美(札幌市中央区第2地域包括支援センター)
…………64
第3報~札幌西区在宅ケア連絡会10年100回のあゆみ~
発表者
共同研究者
高桑
堀口
朋子(札幌恵北病院)
恵美(平和リハビリテーション病院)
出井
聡(西円山病院)
山崎由美子(札幌第一病院)
…………69
時計台記念病院におけるMSWの教育・研修に関する実態把握
~教育場面の意義付けと客観的評価~
発表者
共同研究者
本野
聖子(時計台記念病院)
木村府佐子・山本加奈子・福島
通隆(時計台記念病院)
西川
昌慶(LSI札幌クリニック)
…………71
長期療養患者の療養場所についての模索
発表者
共同研究者
大野
浩二・田中
穂・竹田
沙織・神
高見絵里子(北斗病院)
安奈・高田
康範(北斗病院)
…………73
●医療福祉実習が実践現場にもたらす効果と今後について
~北海道における取り組みより~
研究者
北海道医療ソーシャルワーカー協会医療福祉実習委員会…………75
「患者の視点から見たソーシャルワーク支援調査」の報告
会
長
関
建久(北海道医療ソーシャルワーカー協会)…………80
・中央B支部合同
社会福祉専門職のリハビリテーションに関する予備的研究
研究者
石川
若林
田守恵美子・飛内
央弥(宮の森記念病院)
朋子(NTT東日本札幌病院)
望(介護老人保健施設プラットホーム)
鳴海
萌恵(札幌江仁会病院)
細川よしみ(共生会病院)
長谷川
聡(北海道医療大学)
…………85
・5支部合同学会
同期勉強会における連携を考える
研究者
根川枝里子(札幌北楡病院)
郡司あさみ(勤医協札幌病院)
竹内
智子(老人保健施設柏が丘)
永山多恵子(東札幌病院)
今井
梁瀬
智瑛(北光記念病院)
愛(札幌北楡病院)
…………89
・中央E支部合同
医療・介護難民を出さないために~介護療養型病床の行方~
発表者
久保
雄資(北海道社会事業協会余市病院)
共同研究者
谷口
知広(札幌秀友会病院)
竹田
玲奈(札幌山の上病院)
…………93
・中央B支部研修報告
研究者
佐藤
徳永
達哉(桑園病院)
小木
絢介(花川病院)
由佳(北海道大学病院地域連携医療福祉センター)
松尾
映夢(札幌中央病院)
聡(西円山病院)
…………97
出井
・中央E支部研修部報告
共同研究者
斉藤
俊輔(小樽協会病院)
北川
小林
泉田
沖
薫(札樽病院)
英子(西成病院)
智子(南小樽病院)
隆一(札幌市手稲区地域包括支援センター)
…………100
・南支部研修部活動報告
研究者
聖(函館脳神経外科病院)
…………102
尾崎
・北支部研修部活動報告
共同研究者
須田
明子(旭川厚生病院)
宮下
高橋
木谷
野村
久悦(森山病院居宅)
靖典(北星旭星地域包括)
竹田
石山
千鶴(佐野病院)
好江(一条通病院)
武浩(老健かたくりの郷)
昭典(道北勤医協宗谷医院居宅)
山田
麻理(富良野西病院)
佐々木しのぶ(北星脳外病院)
…………103
●MSWスタディーズ
●編集後記
バックナンバーのお知らせ
…………106
…………108
(6)
No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
司会者
これより教育講演を開始いたします。進行は座長の
東札幌病院・田村里子様にお願いしたいと思います。
田村様、宜しくお願い致します。
講師紹介
座長
田村 里子
皆さん、こんにちは。ただ今ご紹介にあずかりまし
国際医療福祉大学大学院乃木坂スクール、また日本社
た東札幌病院ソーシャルワーカー・田村です。この度
会事業大学専門職大学院、また学習院大学社会学部非
の教育講演の座長をさせて頂きます。座らせて頂きま
常勤の講師など、色々なところの教職の任にも就かれ
す。
ておられます。
本日、東京会の皆様に教育講演で、(はいやだとお
下に主なご著書として並んでおります。1997年にご
っしゃいましたので)奥川幸子をご紹介できますこと
執筆された『未知との遭遇~癒しとしての面接』とい
をとても幸いに思います。
う赤い表紙のご本が、今日も図書コーナーにありま
恒例によりまして若干ご紹介を申し上げます。本日
す。それが奥川さんによって書かれて、私もそのご本
配られましたこの学会誌の中の6頁に少し略歴の部分
に出会わせていただいて本当にものすごい感激と、本
が載っています。
当に鳥肌が立つような感じ幾度も感じながら読ませて
奥川さんは、1972年から24年にわたり卒業後ずっと
いただいて、続編を待ち望んでおりました。その10年
東京都老人医療センターで、医療ソーシャルワーカー
後の2007年、今年ですけども、この『身体知と言語~
として臨床を続けてこられました。その豊かな臨床の
対人援助技術を鍛える』というこのご本をお出しにな
経験をもとに1984年から「スーパービジョン」をお始
られました。今日おいでの皆さんは本当に幸運で、こ
めになられ、「奥川スーパービジョン」として皆さん
の厚いご本の本当にエッセンスの部分をギューッと詰
よくご存じかと思いますが、「臨床家を育てるのは臨
まった1時間半の教育講演をして下さるということに
床家である」ということを、まさに豊かな臨床経験、
なっております。
そして多くの含積のある言葉を紡ぎながらそれを我わ
れの臨床家に示して下さって今に至ります。また今は
少し話し過ぎてしまい申し訳ございません。では奥
川さん、宜しくお願い致します。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28
(7)
教育講演
対人援助技術を鍛える・伝える
~医療ソーシャルワーカーが洗練され
た専門職として熟成していくために
日本療養病床協会ソーシャルワーカー部会
〈はじめまして〉
顧問
奥川 幸子
ました。ちょうどその病院がオープンした年に、私は
大学を2年間病気休学していたのですが、2年遅れて
初めまして、奥川です。今日私はここで演壇ではな
大学を卒業した年とその養育院附属病院という65歳以
くて座る机を持ってきていただいた理由は、立ってお
上の高齢者の医療を専門にした病院で、それも703床
話ししてしまいますと力が入りすぎまして、ちょうど
という、当時はリハビリの設備も東洋一と言われてお
今日で還暦になったのですが、自分の体力と、その激
りましたし、医者も100人以上いてと、かなりばかで
しい、何て言うのかな、私自身のエネルギーとが何年
かい医療機関がオープンした年が重なっておりまし
か前から合わなくなってきまして、まだチューニング
た。2年前も東京都に受かっていたのですが、2年前
をしている最中ですので、座ってお話しするのがちょ
に私が東京都に入っていれば、多分違う道に行ってい
うど良いかなという時期ですので、失礼とは存じます
たであろうと思います。その2年間のタイムラグ、そ
が、今日ご用意させていただきました資料をしっかり
の間に私自身は医療ソーシャルワーカーの仕事を目指
説明をしたいということもありますので、座らせてい
そうと、その決心する、導かれるというか、そのよう
ただきます。
な色々な自分の中での経験というか考えというか感覚
この記念すべき50年の大会に私自身が恐れ多くもと
ですね、そういうものがわき上がってきて、ちょうど
いうことですが、教育講演で一応呼ばれたというか、
その年にオープンした高齢者医療の場に医療ソーシャ
ここにいるという事が本当に不思議な暗号というか、
ルワーカーとして飛び込んだというのも、これもまっ
巡り合わせというか、そういうものを私自身が感じま
たくの巡り合わせですね。
す。
〈医療ソーシャルワーカーとして
の私のスタート〉
それで私自身は恥ずかしくも、今ここにいらっしゃ
る皆様方のようなスタートラインではなくて、まった
くの素人の状態でMSWの世界に入りました。大学で
勉強は良くしていたのですが、専攻は教育学で、しか
何故かといいますと、私自身は今ご紹介がありまし
も子ども、障害のある子ども、生まれてからそれから
たように、昭和47年から東京都の老人医療センターで
ちょうど小学校ぐらいの時期の子どもの教育、耳が聞
働いていました。現在はそういう名称になっておりま
こえない、知的に遅れている、その両方の障害を持っ
すが、そのうちまた2、3年後に名称が変わることに
た、または自閉症も当時は入っていましたが、そうい
なっているようですが、当時は東京都養育院附属病院
うような子どもの教育者になるということを目指して
と言う名前でした。当時、東京都が初めて来るべき高
おりましたので、セラピューティックな教育者という
齢化社会、日本がちょうど65歳以上の高齢者人口が7
ことを私は目指しておりましたので、そこでやった専
%の時代に、その前から美濃部都政のブレーンの人達
門領域とそれから医療機関、しかもいきなり高齢者の
が急激に高齢社会を迎えるということで、老人医療の
対象で医療機関、専門職だらけの中に教育学出身の私
確立をということで、東京都の以前は施設内病院であ
が迷い込んだのでした。
ったものを広く都民に開放してということで開設され
今日のテーマは「相談援助面接」をベースにした「相
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No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
談援助実践」のプロフェッショナルになる、成熟して
すね。これが成立しないと面接は成り立たないのです
いくということはどういうことか、どの水準まで行け
が、私の場合は最初そういう技術、知識、一切ありま
ばプロフェッショナルとしてきちっと洗練されたもの
せんでした。高齢者とも話したことがあまりなかっ
になるか、それを職業的な財産としてMSW全体、ま
た。高齢になってどういうような問題にぶつかるのか
たはソーシャルワーカー全体が持ちうるか、ここがこ
とか、それは現場で学ぶしかなかったですね。それゆ
れから問われていることだと思います。皆様方は社会
えに一生懸命相手の話を聴こうという姿勢があった。
福祉士とか、精神保健福祉士とか、資格が出来てから
聴かないとわからない。教科書に当時はなかったので
お入りになっていらっしゃる。若い方の場合、ベース
す。今のように「高齢者の心理」だとか「認知症」な
の知識とかそういうものはおありになると思います。
んていうのはまったく今みたいに流布されていません
しかし実践というのはいきなり応用ですから、そのベ
でしたし、「何で、うちの父親がこうなったのだ」
「何
ースの基本的な知識があっても、目の前のライブのク
で、うちの母親が、あれだけ聡明だった母親がこんな
ライアントを前にするともう全然歯が立たない。これ
になっちゃったのだ」という時代でしたから、そうい
は大学院を出たソーシャルワーカーでも初年度、初心
う時に目の前にいらしてる方達というのは先端なので
者の時は皆さんが戸惑う、これは共通の体験です。
すね、時代の先端。現場というのはラディカルで、1
〈初心者・基盤のない私を助けて
くれたものは〉
番ラディカル。時代の先端は私達がいつもお目にかか
っている方達なのです。今もそうだと思います。です
から私は特に知識がなかったので一生懸命相手のお話
私はその中で、まったく何もないところで始めまし
を聴かなければいけなかった。その姿勢が傾聴ではな
た。中学校の時からプロフェッショナルになりたいと
いですよ。傾聴の技術といった時にはもっと高い技術
いうものはあったのです。先生から「あなたは先生に
が必要になります。ただ聴く姿勢ができていた、傾聴
なるといいよ」と言われた、そういうようなことはあ
の技術はなかったけれども、一生懸命聴こうと相手に
ったのですが、私は非常に従順で素朴な人間だったの
関心を向けていたということがひとつあった。
ですが、それがいきなりプロばかりが集っている集団
それから謙虚だったですね。知識がなかった分、自
の中で、しかも私の馴染みのないお年寄りとの面接、
信がなかった分。それから「自信がない」
、「私は何も
それも相談援助実践というところに臨んだのだけれど
できませんが」ということは言わなかった。しかし、
も、ベースがないところで私は始めましたので非常に
私はこれだけの若輩でありますが、何とかあなた様の
戸惑いました。皆様方が戸惑った、先ほど申し上げた
お役に立ちたいので、あなたのことを教えてほしい、
教科書的な知識は持っていても目の前のライブの人を
と伝えました。それから高齢者の医療の場面は、高齢
前にするとその応用、それの照らし合わせ、どれと結
者が年をとって病んでそして障害を得て、そしてこれ
びつくのかということが実践者の共通したひとつの試
から先どのような自分の残りの人生を、どこで誰とど
練になるわけですが、そういうプロセスではなかった
のように過ごすかということを決定する場面に、医療
のですね。ですからただ私自身が、スタートラインに
機関のソーシャルワーカーである私は非常に過酷な決
立った時に何がまったくの素人の私を助けてくれたの
断をしなければならないところでいつも立ち会ってお
かなということを振り返ってみるに、相手が高齢者で
りましたので、自分の望むとおりお帰りになる方もい
あったこと、高齢者というのは見た目よりものすごい
らっしゃいますが、多くの高齢者は不本意な状態で、
力があるのです。私たちのような相互交流をベースに
時代と社会の急激な構造的な変化の中で、家族の構造
して仕事をしていく人間、つまり相手の方の話を全身
も変わってしまいましたし、自分の価値観からうんと
の表情と言葉を聴いてこちらがそれを理解できる水準
かけ離れた社会状況になってしまって、私がお目にか
で一応それを受け止めて、そしてこちらがまた持って
かっていた初期の頃の高齢者は、「こんなはずではな
いる熟練度というか、それに応じて相手に働きかけ
かった」って言う高齢者だったのです。
て、それに応じて今度は相手(クライアント)がそれ
そうすると、その方のずっと生まれ育ってきた価値
に応じてこちら側の技量に応じて相手がまた発信して
観、そことものすごく現実とのギャップ、そこら辺の
くる。それが相互交流です。それがうまくいっている
ところを私は何とか理解をしようとお話を伺わせて下
と一方通行の会話じゃないことが成立するというのが
さいと高齢者に添ってきました。それで教えてもらっ
交互作用、インターアクションと言われていることで
たのは本ではなくて全部クライアントですね、教えて
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28
(9)
もらったのですね。そしてそこがだんだんだんだん一
したいということを上司に言って、それで今のスーパ
生懸命聞いて理解していくうちに経験、知識がどんど
ーバイザーに引き受けてもらうまでは、数撃ちゃ当た
んこう増えてくるわけです。そしてできるだけあなた
ると色んなところに電話をして。そういう知識も今か
の、私は未熟だけれども、あなたのお役に立ちたい、
ら36年前は、ありませんでしたから、ああこの人にス
何とか不本意であろうが何であろうが、あなたが少し
ーパーバイザーになってもらったら今の私はなかった
でもあなたが良いと、またはハッピーとは言えないけ
なあっていう、あ、この人が引き受けてくれたら今の
ど、言えないですよ、絶対、ハッピーとは言えないけ
私はないなあという人たちにまで電話していました
れども、口が裂けても言えないですね、そんなお追従
ね。知らないということは恐ろしいことで、やはりそ
ね。目の前の家に帰れない高齢者は幸せじゃないのだ
の時も運が良かったのだと思います。みんなに断られ
もん。そうすると、ハッピーじゃないけれどもあなた
て、最後の1人、高嶺の花と思って、この人は絶対来
ができるだけ良い状態でこれからの生活の場、例えば
てくれっこないと周りからも言われ、そして東京都は
家族の中に帰るにしても良い状態で、または施設に入
ペイが安いと言われ、アメリカでドクター並みにお金
るにしてもあなたができるだけ良い状態でこれからの
を貰っていた人を、セラピューティックな精神科の領
残された時間を生きてほしいという気持ちは非常に強
域のソーシャルワーカーをやっていた先生が日本に帰
く出てきますから、そこら辺のところが相手に伝わる
ってこられたばかりで、「その先生なんか頼めません
のですね、こちらの思いが、これが相互交流の中で起
よ」って私、アメリカでリハビリテーションの専門医
こる不思議なのですが、こちらの思いは切実な思い、
の免許、資格を取ってこられた先生、
荻島先生ですが、
それから熱心なもの、気持ちというものは相手にちゃ
亡くなりましたが、その先生に「あの深澤先生なんか
んと伝わるのですね。そうすると高齢者の方が私に、
来てくれるはずがありません」って言われる中で、も
若い若輩の私に折り合ってくれるというか、口では言
う必死で電話をして、みんなに、9人に断られました
いませんが、君が、心の声が「若いあなたがそういう
から、あと残るは高嶺の花の来てくれっこないという
ふうに言ってくれる。そのことに対して自分は不本意
1人、ということで私自身が、私はそういう時にね、
だけれども、行くよ」というふうに。私が説き伏せる
いつも未開社会でいたら最初に死ぬ人なのですよ。そ
わけではないのです。基本的には家族に私は委ねると
れ意味わかりますかね。あのね、食生態学というのが
いう基本は外してはおりませんでしたが、そういうよ
あるのですが、食生態学者の西丸震哉さんに言わせる
うな中で一生懸命やってきたということはあります。
と、皆人間がどうやってこれは毒、これは食べられる
謙虚であった。
草、これは食べられない草、キノコも、これは毒キノ
まずは一生懸命本人から聴こうとした。家族じゃな
コ、なんとかっていうのを獲得していったかという食
いです、本人から一生懸命聴かないとわからないか
生態学って非常に面白い本があるのですが、その中
ら、本人から聴く、これは私たちのソーシャルワーカ
で、まずは1番でワーッと駆け出して行って食べちゃ
ーのいわゆる実践の原則ですね。まずクライアント本
う人がコロリッと死ぬ、それでその後、そうするとそ
人から聴き、そして家族からも聴き、両方の摺り合わ
れは集団がそのキノコとか植物、草は食べちゃいけな
せをしていく。これ家族療法的なアプローチの鉄則で
い学習するわけです。私は多分そのタイプだと思うの
すから、その時にどういう戦略を用いるか、これがだ
ですね、コロッと先に、多分昔だったら生きてないな
んだんだんだん家族全体を支援する時の技術になって
っていうタイプなのですが、先兵なのですよ、電話を
くるわけですね。これが基本です。そして謙虚である
かける役、断られる役。もうかけまくりました。
こと。
実は私はもう1つあったのです。「給料を貰ってい
〈スーパーバイザーとの出会い〉
るのに恥ずかしい。こんなんじゃ、恥ずかしい」これ
それでみんなに断られて最後に先生にかけたら、深
大事なことだと思うのですね。給料をね、やっぱり貰
澤先生がちょうどこれもね、巡り合わせ。つまり「私
っているのに自分の技術が専門職なんていう気持ちは
はアメリカから帰ってきて、ちょうどやる気のあるソ
まだなかったですね。「自分の技術が未熟である、役
ーシャルワーカーを育てたいと思っていたところなの
に立たない、冗談じゃない」というのがありました。
よ」っていう言葉をいただいた。その時に私は礼儀も
ですからそこはやはりきちっと私たちは基礎を身に付
何も知らない、電話のかけ方も知らない、いわゆるエ
けて勉強してということでスーパーバイザーをお願い
チケットがない人。謙虚となんとかはあってもエチケ
(10) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
ットのない人だったっていうのはその時に私は痛切
の遭遇』では、深澤先生に、スーパーバイザーにこう
に、電話のかけ方も知らない職業人だったのだという
言われたということは、色々なところで『未知との遭
ことを私は感じました。その時からスーパービジョン
遇』という10年前に出した本には書いてあります。し
が始まっていたのです。私は一生懸命「東京都はペイ
かし、深澤道子先生という名前を出しませんでした。
が安いのですが、ペイが安いのですが」って言い続け
他の人の名前は出しました。しかし何故出さなかった
ていました。荻島先生というリハビリ部長に「ペイが
のか、これ、理由があります。
安すぎてダメですよ」ってすり込まれていたものです
〈私が本を書いた理由~実践を言
葉にして伝えるため〉
から、「来てくれるわけはありませんよ」って言われ
ていたから、これ大事なのですよ、事前情報、依頼の
受け方とか、そういうものと全部繋がってくるので
今度は『身体知と言語』といって私が本当に10年か
す。そういう先入観のもとで、「先生、東京都はペイ
けて、何回も何回も書き直して、とにかく実践家に伝
が安くて申し訳ありません、先生には申し訳ないので
えたいというような、私の実践知、獲得してきたもの
すが」って私が言いまくっていたの、電話で。必死だ
をやはりきちんとライブで、私はライブの人なのです
から、受けてもらうのにね。そしたら先生が向こうで
が、生の実践事例をベースにして実践の色々な知識と
冷静な声で深澤先生が、今でも覚えていますね、36年
か技術、机の上の教科書的なものと繋げるのが上手な
前、それはね、「あなた、バナナの叩き売りじゃない
人なのです。それからあと、生の実践事例を通して振
のだから。それに」わかります?「ペイが安い、ペイ
り返り作業をその実践者がしていくのをサポートす
が安い」ったらね、「あなた、バナナの叩き売りじゃ
る、そこが私の本当は取り柄なのです。しかし書くと
ないのだから。それにそのことはあなたが決めること
いうことは、うわぁーっと感性的に書くことはできる
じゃないでしょ。決められることじゃないでしょ」っ
のですが、論理的に書くというのは私が1番苦手なこ
て。当たり前なのです。
それでヒヤッときたのですね。
とだったのです。そのことを、『未知との遭遇』を書
それ言われて、その二言ね。それで私自身が「あれ、
いた時に深澤先生に、「あなた、これは素晴らしい本
そうだ」
。私が決める額じゃあない、それは東京都の
よ」というメッセージをいただいて、そしてその上で
決めることで、上が決めることで、私が「ペイが安い」
「もっとこの中のことを詳細に何冊も何冊も書きなさ
と言ってもねえ、私がどうにでもなるものじゃないの
い」って長い手紙を下さった。これスーパーバイザー
ですよ。だからそのことはポジショニングなのです
のやはりすごいところですね。
ね。ちゃんとウォッチングしなさいということなので
10年間私はそのことを一生懸命やってきたのです。
すね、メッセージ。つまりちゃんと東京都の組織、ど
途中でコケそうになったこともありますが、でもそれ
こで何が決定されて、私はいったいどこにいるの、そ
でそのライブの場というのは限りがありますので、実
の位置ね、医療社会科の1年目のソーシャルワーカー
践知を、やはり活字にして、言葉にして、形にして、
ということで、そうすると「あなたが決めることじゃ
やはり残しておく。「暗黙の知」ですね。表現できな
ないでしょ」それから「『ペイが安いのですが、安い
いこととされてきた私たちの知識を、技術を、きちっ
のですが』っていうのは、人に依頼する時の依頼の仕
と言葉という形にしなければいけないと私はずっと思
方じゃないでしょ」という暗黙のメッセージがそこで
っていましたので、そのことをちょうど私自身が、ま
パッとくるわけです。
あちょっと折り合ったところもあるのですが、もっと
だからスーパービジョンは、そこから始まってい
もっとやっていたら一生書けないって、それはみんな
て、私はそれ以来深澤先生にお話する時は、直立不動
からも言われましたので、「ここでいいか」って納得
です。汗が出るの。
スーパーバイザーって恐いもので、
できる路線まできたので、それがちょうどできる目処
ずっと私は唯一ビビルというか、緊張する相手になっ
が立った時に、田村さんから電話をいただきました。
たのが深澤先生なのですね。その1回の言葉は少ない
これも1つの巡り合わせだと思います。
のです。私は饒舌です、まとまらない人です。ですが
その今回の本の中に私は深澤道子先生のおっしゃっ
深澤先生は頭の非常にいい人で、一言でポーンと本質
て下さった言葉とか、先生の教えとかを、言葉という
的なことをおっしゃるので恐かったのですね、自分自
形に、これだけのものに、
形にしたのは私だけれども、
身にないものというのがあります。そのおかげで今の
その土台、基礎ですね、家で言えば基礎、土台はみん
私があります。それは今度書いた本の、私は『未知と
なあの時の3年間、深澤先生に作ってもらった、サポ
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (11)
ートして作ってもらったものの上に私が自分で乗せて
フリーランスで、熟練者、対人援助職者、プロフェッ
きたのだっていうことが実によく、辿る作業をしてわ
ショナルを目指す人のいわゆるスーパービジョン、ま
かりましたので、言葉に、綿密に言葉にしていくとい
たは振り返り作業の研修の事例をベースにした、自分
う作業を通して、そのことを本当に芯から実感しまし
自身の実践を自己検証していくプロセスのお手伝いを
た。『未知との遭遇』でも、10年前も実感はしていた
ずっとしてきていますから、やはりそういう中であら
のですが、私の中に多少先生に対して、「この本に先
ゆるソーシャルワーク、色んなソーシャルワークの活
生の名前を載せちゃうのはご無礼かな」というのがあ
動分野の、社会福祉士とかソーシャルワーカー達、そ
ったのです。気持ち、通じますかね。先生にご無礼か
れからその周辺にいらっしゃる保育士。保育士さんだ
なって、自分が未熟なのに先生の名前を載せちゃ、ご
って今ソーシャルワーク援助技術を身につけるという
無礼かな。でもね、この本を、『身体知と言語~対人
のが保育士会の巻頭に入っていますから、あれって思
援助技術を鍛える』という本を私は書いた時、本当は
っちゃう。それから民生委員さんだってものすごく私
間に合えば先生に白い帯を書いてもらおうと思ったぐ
たちより下手すれば、難しいクライアント、地域住民
らい、私の中では「ああこれで、長い手紙を、10年前
の問題を民生委員さんがやっているのですよね。
に先生に長い手紙をいただいたことに対する1つの答
こういう現状は何なのだって。しかも専門職のサポ
えが出たな」って。それから、先生に教えていただい
ートがなく、プロの相談援助の、援助職者のサポート
たこと、先生に土台を作っていただいたということの
なく、民生委員さんが抱えているとかですね、そうい
上に今の私がある。
うような実態をたくさん見させてもらいながら、もろ
〈相談援助のプロフェッショナル
といえる人はどのぐらいいるか〉
に、生で、ずっと私は体験し続けてきましたので、そ
ういう中で、やはりMSWも含めてソーシャルワーカ
ーが認知はされてきたとはいえ、社会福祉士の資格が
この仕事、この知識、技術というものは私たちのM
出てきたとはいえ、本当に自他共に認めるプロフェッ
SWだけではなくて、対人援助技術、ソーシャルワー
ショナルであるというふうに自分で言える人がどのぐ
クの援助技術ですね、これはまさしく伝達可能なのだ
らいいるかというと、そうとう私は疑問です。
な、だからどのように伝達をしていけばいいのかな、
それから地域にどれだけきちんと相談援助のプロが
ここがこれから問われていくところなのだろうなとい
いるかということに関しても私は疑問です。何故か。
うところにきている時に、皆様方がこの「『伝承』~50
それは私が周辺領域の対人援助職者の、ケアマネも含
年の軌跡、我々が未来へ伝えるもの」それの、このソ
めてですね、事例検討、いわゆるその人達が今実践で
ーシャルワーク学会の、MSWはどのようにあるべき
抱えているクライアントの問題、チームの問題、地域
かという課題は繰り返し問われています。先ほど笹岡
の問題、そういうようなものを生で見させていただく
会長が、日本協会の会長がおっしゃったように、MS
ことの中で、「ああ、この人はに会ったクライアント
Wは私が笹岡さんよりもうちょっと前に私はMSWの
は気の毒」と思う、一方でもう本当にプロフェッショ
仕事を始めましたが、その時よりは遥かに今、MSW
ナル、医療機関で「うわぁ、プロのMSWに会ってい
というのは認知されていると思います。しかしその仕
りゃ違うのに、人生が」とかですね、それから民生委
事の中身が何なのか、どういうことなのか、MSWと
員さんが抱えている事例の中で、「うわぁ、児童相談
してそのアイデンティティーをどのように持てるか、
所にプロがいれば違うのに」と感じる。それから市役
そしてそれを後輩にどのように、後進、これから入る
所、区市役所に窓口の「家庭なんとか課」とか、それ
人達にどのように伝えていけるのか、それに対する確
から「高齢福祉課」でもなんでも、子どもの場合は特
信の段階までいった。自分自身が「あ、これで私はプ
に深刻ですよ、1日1日が発達ですから、それを削が
ロフェッショナル」いわゆる「I’m professional」です
れちゃったらもう取り返しがつかないですから、窓口
ね、それだと言い切れるMSWがどれだけいるかって
の「児童福祉課」とかですね、児童相談所とかそうい
いうと、ちょっとこれは怪しいかなって私は思ってい
うところにプロがいれば、市役所にプロがいれば、保
ます。これ実感です。
健師がもうちょっと相談援助のプロ、そういう実践力
そしてそれは、色んなソーシャルワーカーの、私は
を身につけていれば、MSWがもうちょっとフォロー
この10数年フリーランスで、まあ大学の先生なんかは
してくれればなとか、療育のところで「おいおいおい」
片方で最近やっておりますが、どちらかというと私は
とかですね、そういう事例に出合う。それは将来の見
(12) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
通し、つまり将来予測能力がないから生じる。これは
うわけ。「あなたが引っかけたのよね」って。
「引っか
アセスメント力の問題です。
かったのでしょ、このケース、10年経ってるけど、ど
アセスメント力がない援助職者が関わると、将来予
うにかなんないかって、あなた思ったのよね」
。これ
測ができないですから、フォローアップができないの
引っかかる、直観ですね。そのケアマネージャー、例
です。どのようにしてフィードバックを相手からもら
えばケアマネージャーだとしたら、民生委員だとした
えばいいか、次に繋いだ機関からどうフィードバック
ら、その人は職業的なトレーニングはしてないわけで
をもらえばいいかとか、それからそのクライアント自
す。だけど個人の生きてきた歴史的な身体ですね、身
身に、子どもの場合だったら親御さんに、いつ頃こち
体で「あ、これはおかしい」と思えるだけのチェック
らが連絡をさせていただいて宜しいですかとかです
機能は持っているわけです。これが個人の力なのです
ね、いつ頃になったらもう1度私にお目にかからせて
ね。若い人にはないです。やはり年数を生きてきた、
いただけますかとかですね、MSW、医療機関とか療
人生の襞をたくさん刻んできた人の能力なのですね。
育機関のソーシャルワーカーがそういうことをきちん
だけど職業的な色々な基盤ができてないから、困っち
と踏んでいないのですね、終わり方が下手だから、そ
ゃうわけ、お手上げというわけです。問題に気がつい
ういうようなことがあるから、結局地域に放置されち
ても、そのどこを見たらいいのか、じゃあそれをどう
ゃったまま、地域で人の良い民生委員や住民が抱え
いうふうに繋げたらいいのか。さらに、クライアント
て、地域住民参加型の社会福祉サービスとか、そうい
への動機づけ、繋げるためには動機づけ、モチベーシ
うような方達が抱え込んで。彼らは素人ですよ、はっ
ョンのサポートができないと、繋げるところにも、繋
きり言って、その中でも素晴らしい人達は自分の資
げる先がわかっていても繋げられないですね。それか
源、個人的な財産で、職業的な能力ではないですよ、
らあと引きこもっている人を引き出せないですね。そ
個人的な人間力で、「人間力」ということばは今言い
して引きこもって自分の価値観でいっぱいになってい
古されているからあまり言いたくないんですが、個人
る親子を、じゃあその親に対して子どもの人生を考え
の力で、持っている能力でサポートしている人、その
た時に、どのようなことが必要か、というような情報
すごい高い能力、純粋培養の専門職より余程能力の高
を渡せないですね。ですから自分の情熱だけで体当た
い人は確かにいらっしゃいます。でもそんなのごくわ
りをするようになるわけです。
ずかで、やはり地域にそれなりの、または医療機関に
プロというのはそれではいけない。プロというのは
そういうアセスメント力の卓越したプロフェッショナ
色んな技術、知識を持っていて、ちゃんとモチベーシ
ルがいる、いないでは全然送り出した時のその人の人
ョンを、初めて入ったところのクライアントでも、か
生、運命が違ってくるのだっていうことをどれだけ自
たくなになっているクライアントでも、ちゃんと開け
覚している相談援助職がいるかということを時々私
る、そしてモチベーションを、ちゃんとその、「こう
は、あ、しょっちゅうだね、疑問に思いまして、「う
してみようかな」って動機づけをするだけのやはり技
~ん!」とかっていう思いをしています。
術を持っていないとプロとは言えないんですね。です
でも、事例を出した人に対しては、その人だってま
から、そういう人が地域にいない、相談窓口や機関に
だまだ未成熟なんですよ。しかし、発展途上にあるケ
いない、そういうことで不利益を被っているクライア
アマネージャーとか民生委員さんとかが事例を出しま
ントをたくさん見てきたのですね。
す。保育士さんも出します。そのような方達は相談援
そしてもう1回戻りますが、「あなたは偉い」
。「引
助の基本は持っていません。これから身につけようと
っかけているのだから、偉い。で、あなたが引っかか
している人達です。でもね、その方達の実践事例を読
った。じゃあこのクライアントをこれから、もう10年
むと、またはそれを絵解きしていくと、クライアント
経っちゃったけど、5年経っちゃったけど、これから
はまず、医療機関の職員が最初の出会いですね、やは
この人達に、さあ、何をしようかっていうことを考え
り。すると医療機関で「うーん?」とかね、あとは児
る。あなたがもし、この人のことを引っかかんないで
童相談所で「うーん?」とかですね、「おー?」
。「児
こういう事例検討に出さなかったら、この人達はこの
童福祉課」「家庭課」とかそういう市の窓 口 で「ん
ままね」って。子ども達、親もね、親子もこのままで
ー?」とかですね、在介支で「うーん?」とかですね、
先行きどうなるか見えていたわね、「だからあなたは
そういうような疑問がいっぱい私は出てくるのです。
偉いのよ」って私はいつもね、事例を出した人に言う
それで、事例を出した人には「偉いっ!」と私は言
ことしているの。だから恥ずかしがることない。技術
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (13)
がないのは、習ってないのだから、相談援助の技術、
カーが洗練された専門職として熟成するために」で
職業的な訓練、そういうものを受けてないのだから、
す。私はプロフェッショナル、やはり洗練された専門
「恥ずかしがることはない」って私は言うのです。も
職集団になるということが1つの目標なのだろうなっ
し目指すのだったら、アマでも何でもちゃんとそれは
て思います。本当のプロフェッショナルっていうのは
トレーニングをすれば身に付きますって私は言い切っ
洗練されているはずですから、その本当の意味でのプ
ています。それは自分でやはりこの10数年、自分が相
ロフェッショナル集団になるっていうことが、おそら
談援助の輪唱実践をやってきた24年、そして私が対人
く社会的にはある程度認知をされ始めてきたMSW集
援助職者のトレーナーとしてやってきた12年、それを
団が今度はどうやってプロフェッショナル度を上げて
考えた時に私は技術、感性も含めて訓練していけば身
いくかということになるんだと思います。
に付くということを実感しています。ではそこら辺に
これは、MSW、医療ソーシャルワーカーには、医
ついて、私が何故こんなにしゃかりきになって熱くな
療機関で働くソーシャルワーカーには、非常にその要
るかということの理由を、今こんなこと話すつもりな
素はあります。これは私の今までの辿ってきた軌跡か
かったのですけど、ついゴメンね、田村さんね、熱く
ら見ても、昭和47年のスタート時点から見てもそうで
話しちゃったのですね。さあ、レジュメに戻ります。
すし、非常に医療機関の専門職の中でソーシャルワー
〈医療ソーシャルワーカーは相談
援助のプロに一番近いところに
いる筈〉
クの支援、援助を、援助技術を磨いていけるというこ
とは、他の名だたるプロ中のプロ、伝統的なプロとい
われている医師、それも優れた医師、そして看護職、
それからリハビリのスタッフもどんどんどんどん資格
何故私がここにいるかっていうことなのですね。そ
が出てから上がっては来ました。私の働き〓〓と一緒
れで、すごく皆様方と「縁(えにし)
」を感じます。ち
に切磋琢磨しながら働いてきているからで始めた頃は
ょうど北海道MSW協会設立50年の記念大会でこれま
まだまだ未分化だったけど、「何これ?」
とか、PT、
でMSWが培ってきた何を未来に伝えていくのか、こ
OT達見ていて、「え、こんな集団いるの」って私、
れはちょうど私がこれまで培ってきた臨床の知を伝え
お嬢さんでもないのに驚いた覚えがあるのですが、自
たいということで本を完成させた時期にここで皆様方
分はすごく粗野に育っているのに、「ええっ」って、
とお目にかかった。私は今日、
生まれ変わるのですね、
PTやOTの集団を初めて見たとき、
「この人達と私、
60の還暦ですから。私はここまで生きるとは自分で思
一緒に働くの?」なんて、当時はお嬢ちゃんだったも
わなかったのです、実際にね。ですから私が生まれ変
のですから、そう思ったことがありますが、今はすご
わる時に、また皆様方にこういうお話をさせていただ
く洗練されて来ましたね。この間に、すごいなって思
く、ものすごく縁を感じます。
います。
それでは7頁のレジュメに沿ってお話しします。私
の本もそうですが、レジュメの内容もとても膨大すぎ
て、言いたいことが山ほどあっていつもね、奥川のレ
〈地域の相談機関でMSW出身者
は光っていた〉
ジュメは詐欺だって言われちゃうのですが、最後まで
私がつくづく、すごい実感したのは平成2年、在宅
説明し終わらないから、だから「そしたら出すんじゃ
介護支援センターができたときです。今は滅びつつあ
ない、話せることしか出すな」と私は前に言われたこ
り、包括にドンドンこう入れられちゃいましたが、在
とがあるのですが、でもどうしても皆様方にはお伝え
宅介護支援センターが中学校区に1つできました。最
したいことが、この今日のレジュメに載っている1頁
初は特別養護老人ホームとか、いわゆる社会福祉施設
目と、あと私の今回出させていただいた本の基本概念
の法人に設置され、そのうちに医療法人にも在介支が
図と表です。これは本をお持ちでない方、お買いにな
できたのですが、平成2年です。私が本格的に在介支
らない方でも、私はやはりここはどうしても理解して
に関わるようになったのは平成4年からです。平成4
いただきたい図と表ですので、これは載せさせていた
年から相談員としていらした方は、介護にいらした方
だきました。ちょっと枚数が増えて申し訳なかったの
とか、まあ配置の基準が保健師と社会福祉士とか、色
ですが、それでは、今日のタイトルの「対人援助技術
んな組み合わせ、看護師と社会福祉士、保健師と介護
を鍛える・伝える」は今日の皆様方の学会の大会テー
福祉士とかですね。今まで相談援助の仕事をしてこな
マと同じです。サブタイトルは「医療ソーシャルワー
かった方たちが中心でしたので、やはり相談援助の技
(14) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
術を付けなければならないという時期が到来していま
できませんでした。「もう冗談じゃない」っていうよ
した。私がフリーになったのが平成8年からですか
うな。だから「勉強してください」って言わなきゃい
ら、その時、私はまだ東京都の老人医療センターで医
けないような人が多かったのですが、
療ソーシャルワーカーをしておりましたが、全国社会
それはどういうことかと言いますと、医療に馴染み
福祉協議会の和田さんという人から呼ばれて、全国大
がある、医者に対してもちゃんとコミュニケーション
会の講演に、記念講演ですね、そういうところに呼ば
とれますね。他の分野の人達は医者とコミュニケーシ
れてお話をしたのが平成4年です。そしてそのあと分
ョンとれないのです。医者側の問題もあるでしょう
科会で事例検討を初めて受け持たせていただきまし
が、こちらが何を聞いていいかがわからない。つまり
た。在介支で、ですね。その時にMSWもチラホラで
ポイントがない。視点、目の付けどころがわかりませ
すが、MSW出身の人が在介支にもう入っていたので
ん。このクライアントを理解するために、じゃ医療面
す。それで私ね、その時に事例検討した時に、つくづ
ではどういうことを理解したらいいのかという、その
く思いました。もう、「おーい、おいおいおい」
って、
ポイント、自分の視点、目の付けどころですね、それ
「あ、このクライアント、死んじゃうじゃん」
、「あ、
がこれ、アセスメントの目なのですが、それを持って
死んじゃったじゃない」「これって、何」
とかですね、
いませんと医者に何を聞いていいかがわからないわけ
で本人達は気づいてないとかですね。福祉の領域にい
です。MSW初年度の人はみんなそれで困ったことの
た人達は特にそうなのですけど、医療と馴染んでない
経験があると思いますが、そういうことがちゃんとで
ので、この人が脱水を起こしているとかですね。それ
きる人達が要る。ケアというのに医療はつきもので
で、在宅で亡くなっちゃったというのは、「これ違う
す。出だしは医療から始まりますから、高齢者が年を
のよ」っていうのが、「看取りじゃないのだよ、看と
とって病を得て、そして障害を受けて、要介護状態に
る必要のない人が看とられちゃった」っていうよう
なってというのは、全て、介護保険だって何だって、
な、ちょっと言い方、こういう言い方しかできないの
医療からスタートなのですね。そうすると医療の仕組
ですが、あまりストレートな言い方するとなんですか
み、それから少しは、要するに医者や看護師では、医
ら。
療職ではないですから、詳しい薬とかそういう知識は
ですからそういうようなケースなんかが出てきたり
している中で、最初はどこもそうですよ。
別にそれが、
必要ありません。必要な時にきちんと聞けばいい、コ
ンサルテーションをすればいいわけです。
在介支を腐すことではありません。やはり初期ってい
だけど、たくさん患者さんを見ている、経験してい
うのはね、だって習ってないのだもん。習ってないで
るというか、その疾病の最初から終わりまで、例えば
配置されているのだから、そっちの方がひどいわけで
パーキンソンがどういう症状から始まって、認知症が
す。ですから、そういう中でそういうことすら気がつ
どのようなステージから始まって、どういうふうに段
かない人達が実践を地域でやっていたという恐ろしい
階を踏んで最終的な、いわゆるターミナルに行くかと
ことがあったのです。それは他にもたくさんありま
いうね、じゃあ今、この目の前の人はどこの段階なの
す。
かなということを経験している、してないは全然違う
そういう中でMSW出身者というのはすごく信頼で
のですね。それをちゃんと医者から基本的な知識、正
きる援助者が多かったです。これは何故かということ
確な知識、看護師からもらって確認を取って相談援助
ですね。私はその時に、MSWの力、底力、これを実
業務をしてきたこと、「経験知、身体知、応用知」に
感しました。並み居る在介支の、たくさんのあの相談
なっているわけですね。応用できる知。そういうので
援助職といわれている、相談員といわれている中で、
ないと、辞書や辞典で調べたものは机の上の知識、目
MSWがダントツにやはり光っていました。これはケ
の前の対象者とちゃんとその知識と、どのステージ、
アマネージャーの時も一緒です。平成12年の介護保険
私が経験、「類推力が働いて」って言いますが、アナ
制度が発足してからのケアマネージャーになった1代
ロジーですね。つまり「私が今まで経験した人と、あ、
目、1世代目のケアマネージャーの研修も、私はその
この人のステージは今までの、あ、
あの時と同じだな。
前からさせていただいておりますが、その時もMSW
形は違うけど、あ、このステージなのだな、表現の仕
出身の人は光っておりました。これは何故かと言いま
方は違うのだな、違うけどこのステージだな、あ、こ
すと、やはり信頼性が非常に高いので、能力が高いと
の人はじゃあ将来…」これが将来予測に繋がるわけで
いうことなので、安心できる。他の人達はとても安心
すね。そうすると、そういうようなことがきっちりと
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
ポジショニングできる援助者と、それは相談援助者に
はそういうことはね、あればあるほどいいんです。な
ければちゃんと医療スタッフに、その道のプロにちゃ
No.28 (15)
〈MSWは自信をもってもいい、
でもそのためには…〉
んとコンサルテーション、相談できるということが必
だから、自信持って良いのですよ。何故ないのって
要なのですね。その相談する方法を知っている、手づ
いうことですよね。勝手にないなんて決めつけちゃい
るを持っている、これ「バックアップシステム」と私
けないけど。「何で」って。これは私がMSWをやめ
は呼んでいますが、そういうようなことを持ってい
てから、トレーナーになってからの、本当にこれは、
る、こういうことが1つ大きい。
MSW相手だから言っているわけじゃあないのです。
それからもう1つは、相談援助の仕事に就いてきま
私の実感。だからもう少し自信持って良いのです。自
したから、クライアントとのアセスメント面接、イン
分のやっていることに確信を持てない、これは何故
タビューですね。単なるインタビューではありませ
か。これが今日の1つのテーマ。そして伝えるものが
ん。アセスメント面接をする時のインタビュー、これ
どれだけ皆さん方の中で蓄積されて、言葉として伝え
はプロのインタビューというのは、短い時間の、限ら
られるか。ここなのですね。多分言葉として伝えられ
れた時間の中で、限られた場で、そして限られた方法
ないから、深澤先生がおっしゃったことがあります。
で、そしてきちんと今初めて出会った人の人となり
36年前に「MSWの仕事って目に見えないから、相談
と、それからその人が置かれている状況、環境と言っ
の仕事って密室性が高いから、なかなか理解されにく
てもいいですが、それをきちんと理解する、これがプ
いわね」
。ここなのですね。だから人にデモンストレ
ロのアセスメント面接です。1回目が大事。初回が大
ーションでガンガンガンガン面接を見せるわけにはい
事です。そのためには色々な技術を、専門的な援助関
かないし、それから、プライバシーをたくさん聞くの
係を形成するとか、治療的なコミュニケーション技術
で、そのプライバシーをワアワアワアワアね、
「ほら、
をきちんとこちらが持っている、それからアセスメン
私はほら」みたいに「こんなにこの人の話を聞けるの
トの視点、目の付けどころを持っている、それから情
よ」「これだけこの人話してくれるのよ」なーんて、
報収集の枠組みを持っている、そしてその情報収集の
吹聴して歩くわけにもいかないし。秘密保持ね、そう
枠組みもその人の固有性に合わせた、奥行きをとれる
いうものがあるから、どうやって自分の仕事を色んな
だけの技量を持っている、そういうようなことがプロ
職種、世の中に伝えていけばいいのかっていうところ
のアセスサー、アセスメント面接を実施する人には求
がずっと課題だったのですね。はい、そこら辺のとこ
められるわけですが、プロの、私が望むプロの領域に
ろをやはり言語化することが困難な領域でした。これ
は、まだプロの段階には達していないMSWでも、そ
は何故か、結論を申しますと、「身体知」というのは
ういうことを日常業務としてやってきていますから、
「暗黙知」
なんですね。暗黙の知。これは数年前、4、
効率性っていうのは問われるわけですよね。ですか
5年前から企業の社長達が「会社の暗黙知が逃げてい
ら、何とかしてその人を理解しよう、他職種にちゃん
く」
、「会社の中で暗黙知を持っている人を優遇しなけ
と伝えようという姿勢があった人であれば、そういう
ればならない」ということを社長達が言い出しまし
相談援助の仕事をして、技術は必然的に身に付いてき
た。これ団塊の世代の人達が大量退職をすると暗黙知
ています。
が逃げていく。これ「暗黙知」というのは、言葉にな
それからネットワーキングがとても大事なのです
らない、形にならない、要するに形として表わせられ
が、どういうところと、質のいい社会資源とネットを
ない、表現できない、たくさんの「知」ですね。後ろ
繋ぐことができる能力、これ社会資源の活用で必須項
にその人が抱えている、身体体にいっぱいため込んで
目ですね。そうするとネットワーキングの技術を持っ
いる、表現しきれない、言葉として言い尽くせない、
ている、それでしかも面接技術を持っている、そうい
ものすごく莫大な知識、これ「暗黙の知」と言います
う人達が在介支、在宅介護支援センターにいらした、
ね。暗闇の「暗」に黙る「黙」
、黙示録の「黙」です
またはケアマネージャーとしてスタートしていらっし
ね。これの「知」
。「暗黙知」をどうやって言葉にする
ゃると、他の職種から参入した人とは雲泥の差。単な
かっていうことのテーマに私たちは直面しているか
る社会福祉士から来た人よりもものすごい力が。これ
ら、なかなかこのことが難しかったのだろうな、
って。
はもうね、はっきり断言できます。
これ途方もないことなのですね、実はこれ哲学的な命
題なのです。
(16) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
でも私はね、やってやれないことはないだろうと思
ものも含めて、私、自立した患者ですので、かなりや
ってね、ずっと踏ん張ってきたのです。だってそうし
はり勉強していますので、医者を選ぶっていうのも自
ないと、洗練された専門職として言えないじゃない?
己決定しなきゃいけないって自分で考えている患者な
だからそのことを、でもね、私はこの10数年のトレー
ので、単なる紹介では行きませんから、そうしないと
ニングの中でそのことに挑戦する実践者、熟練した実
結果が自分に返ってきた時に、あのその紹介して下さ
践者たちとたくさん私は出会ってきて、今もその人達
った人のせいにするのは嫌ですので、全部自分に返っ
とトレーニングを続けています。その人達は、最初は
てくるように、そういう意味では自立しているので
メタメタでもですね、6年前メタメタね。
「ワアワア、
す。そうしますと、相手を値踏みします、患者の方が。
ワアワア」って言っていて言葉にならない、まとまら
すると向こうもアセスメントしていますね、私の疾
ない、クライアントのことを表現しても、
「ワアーッ」
患、どのぐらい日常生活になんとか…。で、やりとり
と莫大に言う、言わなきゃ。「何が核なのだかわかん
をして、即断しなきゃいけないわけですね。そういう
ない、あなた」っていうような人が、輪郭も描けなか
ようなこと、医者だって相互交流、つまり患者と、患
ったような人が今きちんとできますから。ということ
者である私と、私が今度主治医として決めた、その人
は、そういうようなこと、言葉に言い尽くせないこと
との間の、相互に、全身の表情と言葉の交流、これ相
をきちんと後ろに、自分の中で収めながらきちんとそ
互交流っていいますね。それがちゃんとチューニング
この大事なところをちゃんと表現できるようになるの
するかどうか、つまり波長、波長を最初合わせてきま
です。これトレーニングです、全て。そのことの確信
すね。波長合わせって、グループワークでよく使われ
を私は持っておりますので、だからここで胸を張って
るでしょ。今このグループがどんな状態でいるのか
言えるのです。
な、今日はどういうご機嫌かな、今日は個々がどうな
それで洗練された専門職に、私はMSWというのは
のかな、じゃどこにチューニングをするのかなってい
近いと思っているのですよ。ですからそのことを少し
うのがグループワークの手法の中にありますね、始ま
これから、MSWの方達は本来持っている力、培って
りのところでね。これは面接の時もこの人のどこにチ
きた財産、職業的な財産をどのように洗練されたもの
ューニング、波長合わせをしたらいいのかなっていう
にしていったら良いのだろうかということについての
ことは、いつも私たちはクライアントを主体にして考
少しのヒントになれば私は幸いだと思います。
えていきますね。そういうようなことをやはりきちん
〈相互交流を基盤にして実践され
る対人援助〉
とやっていく。これ相互で交流しながらチャンネルを
どこに合わせるかということをしていくわけです。こ
の人のインテリジェンス、どのくらいかな。この人に
まず対人援助実践は、相互交流を基盤として実践さ
はどういう言葉で言えば通じるかな、理解してもらえ
れます。これはもう当たり前のことで、相互に交流す
るかな。そういうことを瞬時に測っているわけです
るって。申し上げましたね、これ、医者だってそうな
ね。お互いに測りながら、初回面接というのをやって
のですよ。例えばね、私は最近主治医を増やしたって
います。
いうか、自分のその道のプロに主治医をもう1人選ん
ですから、そういうようなことで、相互交流ってい
だのですね。今までの主治医っていうか、包括的に診
うのはどの部門、看護師であればアナムネーゼです
ていただいた人から紹介状をもらってその道のプロの
が、アセスメント面接時はとくに行われていますし、
ところに行った。そうするとね、1発でその人を信頼
ケアマネージャーであろうが全ての身体的な非常に色
しても良いと直観しました。私、患者ですね。私は別
彩の強い、身体ケアの色彩の強い専門職も含めて、や
にMSWやっていたから見抜く力がついているという
はりこちらの援助技術、知識、そういうものを相手に
わけではないと思います、患者として行っていますか
渡す時には相互に交流しながら渡しています。その時
ら。すると、この人はどのぐらい信用できるかな、技
に援助関係がうまくいってないと上手に渡せない。向
術を持っているのかな、そうするとね、
受け答えでね、
こうも、こちら側の医者や看護師のせっかくのいい知
それから医者の即断、ちょっとした呼吸、息、そこら
識、そういうものが相手に伝わらない、もったいない
辺のところで患者はちゃんとこの人が信頼できる人か
ことになるのですね。これは非常に交互作用、それが
どうかっていうのを、それも技術的なものも含め、私
非常に影響しているのですが、医療ソーシャルワーカ
は患者歴が長いので見る目がありますから、技術的な
ーはこれが武器になります。でも医者は注射をしたり
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (17)
検査をしたりとか色んなデータを揃えて色んな看護師
癒します。そして子どもを支援します。そして気持ち
も身体ケアをしながら、介護福祉士も身体ケアをしな
を溶かして情緒的な基盤を整えて、そして子どもを強
がら交互作用を常にしています。
化して、エンパワーして、集団に入れるだけの力を子
そうすると私は保育士さんの例で説明すると、1番
どもに渡して、そして準備を整えて、レディネスを整
わかりやすいのですが、保育士さんが最近何故ソーシ
えて、モチベーションを付けて、子どもを園児の中に
ャルワーカー援助技術を必要とするかっていいます
入れるわけですね。
と、これは私の本のコラムのどこかに書いてありまし
ところが、じゃあお母さん達の子育ての相談に乗る
02に保育士の事例を載せてあるのです
たね。コラム!
時、お母さん達のできない、色んな傷ついた心、お父
が、保育士さんは子育て支援をせざるを得なくなって
さん、お母さんの辛い、
または能力が少し落ちている、
きました。子育て能力が落ちてきたのは時代の変化、
それで余計自己評価が落ちている、そういう人達の子
社会構造の変化、そういうような背景のなかで、おば
育てを支援していくためには、まずお母さんたちがど
あちゃん、母親のお母さんの知恵では追いつかないの
のような状況のなかで子育てしているかを理解するた
ですね、今の子育て事情というのは。ちょっと前に生
めのインタビューが待っていますね。相談、お話を聴
んだお母さんの知識、これが1番役に立つと言われて
く、面接です、相談援助面接です。私が何で「相談面
いる時代なのですね。そうしますと保育士さん達は、
接」と言わないで「相談援助面接」と、あえて「援助」
例えば色んな理由で固まっちゃった園児が保育園に来
と付けるかというと、それはやはり相談面接、プロが
て、馴染めない、子ども達に。いつも遅刻してくるか
相談を受けたら、やはりちゃんとそれが手当てになら
ら。で、いつもバッチイから沐浴をしてから他の子ど
ないと聴いた意味がない。プライバシーを聴かせても
も達の仲間に入れないといけないような子とか、いつ
らうわけです。で、お話を聴くわけです。そしたらそ
も休みがち、親の都合で休みがち、遅れがちっていう
のお話を聞いたことによって、全身の表情と言葉で相
子は、特に初年度、4月、今のこれからの季節という
手を抱きしめて、そして相手がそのことによって、こ
のは、仲良くなる時期に始めから一緒にいないとなか
れちょっと例えですよ。そのことによって相手が「あ
なか入っていけない。それで親が離婚の話とかそんな
あ、あなたに相談して良かった」
、もう今まで沈んで
ことで、グチャグチャやっていると子どもには必ず影
きた人がニコニコニコニコーって心からニコニコーっ
響が来ますので、子どももなんかコチコチになってい
てする。それからもう本当にうきうきして帰ってい
る。親もとんがっていると、子どもにそれが伝染しま
く。その後、「帰ってから私はそれまですごく沈んで
すね、手を繋いで母親が連れてくるわけですから。そ
いてどうしようかと思ったのに、家に帰って台所をし
うしますと保育士さんはじゃあどうやってその子を、
ながら鼻歌が出てきました」っていう手紙を私はもら
最初は個別にケアするにしても、どうやってその子を
ったことがありましたが、「もう親の介護でずっと10
園児達のクラスの仲間に入れるんですかって私が質問
何年続いていて、辛い辛いと思って相談室の戸を叩い
したら、
「その子を、子どもをこの手で抱きしめます」
たんですが、奥川さんに話を聴いていただいて、それ
って。「この体でこの腕で抱きしめます」って言った
で私はいつの間にか家に帰っていて、お茶碗を洗いな
の。抱きしめてその子の固まっちゃった心を溶かし
がら鼻歌を歌っている私を発見しました」って、これ
て、身体を溶かして、そして1対1の対応を保育園で
は嬉しかったですね、私は。自慢じゃなくて、
「ああ、
保母がして、そして保育士が、そして午後からその子
そういう気分になってくれたのだな」私がお話を聴い
をやっと子ども達の仲間にその子が入れるように準備
たことによって。もちろん情報サポートなど色々して
をしますって言うことなのですね。そうすると母親と
いますよ。ただ話聴いているだけじゃだめですから。
か父親とか、おばあちゃん、おじいちゃんを抱きしめ
だから色々な手当てをしているのですが、それを今度
るわけにはいかないですね。そうすると、相談援助実
は親に対して保育士さんは全身の表情と言葉で抱きし
践で保育士がこれから何を身につけなくちゃいけない
める、これが相談援助面接の真髄です。「癒す」とい
かという時には、「全身の表情と言葉で抱きしめるの
うことですね。それができないと、相手が自己決定し
です」って、いい言葉でしょ。これ私の台詞よ。あの
てくれないのです。自己決定をするためには情緒的な
ね、自分で言って「いい言葉でしょ」なんてちょっと
基盤を整えないと、その整えるような面接の仕方をす
申し訳ないのですが、保育士さんは子どもをこの手で
る。そうしないと、相手が今困っていること、本当は
抱きしめます。抱きしめて子どもの心を溶かします。
人に話したくないこと、本当は、「私はこんなことは
(18) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
今まで自分で対処できていたのに、何で?」っていう
たこと、クライアントの困っている状況、またはその
ような方が多いですし、そのやはり個人の秘密を話す
病気とかそういう実践経験を、目の前の人に対してち
というのは痛みが伴いますから、そういうようなこと
ゃんと応用できるということですね。同じじゃないわ
を相手が気持ちよく話してくださるような土壌を整え
けですから、個人は1人ひとり全部個別性がある、個
ないといけないですね、基盤を。だから私たちの面接
別的にちゃんと今までの経験を類推力、類推しながら
技術というのは、かなり高度な技術が、身体化された
相手にその理解の、理解ができるということですね。
技術が必要だっていうことは言えるのです。で、そう
そういうようなことをやっていくための能力の開発
しますと、医療ソーシャルワーカーはこれで勝負する
と、それからそれを言葉にきちんと、そういうものを
のですね。保育士さんはまだ子どもの社会性を育て
きちんと言葉に、根拠立てた言葉、これが今エビデン
る、子どもの発達を支えるというひとつの本来の保育
スと言われているところですね。根拠立てた言葉、絵
士業務があります。それで子育て支援をするから、私
解き作業、つまり力動の中で行われている作業を絵解
はそこでソーシャルワーカーが足りないからよ、結
きできるようになるということが私たちの今までの仕
局、保育士がやるっていうのは、違う?だって、餅は
事の洗練度を上げる、または伝達力を上げる、つまり
餅屋で、本来はその道のプロが対応した方がいいに決
いつも新人が戸惑わないですむ、つまり必ず伝達でき
まっているもん。だけど保育士さんがやる。そして児
る、いわゆる伝達能力のある、言語化できる、根拠立
童相談所が頼りにならないから保育士がみんな抱えて
ててきちんと絵解き、目に見えない、形にならない動
いるのですよ、今。例外はありますよ、もちろん。で
きの関係の中で起こっていることを、それをきちんと
もね、出てくる事例、出てくる事例、もう全部保育士
言葉にできる先輩。その先輩もただ「こうなってんだ
さんが抱えているの。するとやはり相談援助のプロが
よ」って言うのではなくって、それをその人が、新人
ね、いないっていうことが私の非常に、忸怩たる思い
なら新人が自分の身体で浴びて、感じて考えたことを
をする瞬間なのです。
ちゃんと検証しながらその新人がその言葉として紡い
〈相互交流をことばにする〉
でいけるようにサポートできる、これがスーパービジ
ョンなのですね。ちょっと違うのですよ、
「こうだよ」
相談援助実践者にとっては、相互交流が武器なので
っていうのがスーパービジョンじゃないのです。「今
す。このね、私たちは何を武器にするかといったら、
あなたが直面していることはこういうことなのよ」と
相互の交流、目に見えない、形にならない、その力動
いうのは、臨床実践家を育てるスーパービジョンじゃ
の中で相手との全身の表情と言葉を交換しながら、相
ないのです。そうじゃなくて、その人を頭の良い体に
手と紡いでいくのです、言葉という形で。それを作っ
仕立て上げるのが臨床実践家のスーパービジョンなの
ていくのですね。それをしながら相手のニーズをまな
です。いいですよね。私はそういうことができるよう
板の上に上げ、抽出し、そして相手がどういう状況で
になってほしいのです。
あるかを、私が理解したという、これ全身の表情で理
そうしないと、職業間での、専門職間の、MSWな
解したということのほうが納得度は高いですよ。でも
らMSW間での職業的な伝達というのは永遠に行われ
それに付随する言葉がやはり付いてこないと、面接と
ないで終わっちゃう。そこが今までは十分に実行され
いうのは成り立たないのですね。そういう意味で身体
てこなかった。でも私は深澤先生に伝達してもらいま
化された知識、技術と応用です。その場で全部類推力
したし、それを私が紡いでいって、そして私が今度自
が働くような、「あ、この人はこういうことで困って
分の第1世代、今私は第3世代を育てているという
いる」想像力・イマジネーションと、アナロジーと、
か、勝手に育っているのですが、第3世代と仲良くし
要するに想像力と類推力と、その前に察知能力がある
ている段階なのですが、まあ第1世代はもういいです
のですが、それからあと、クリエイティブ、クライア
ね。第2世代は今ちょっと子育て中とか色々で、私生
ントと創造していくっていうかね、4つぐらいと、そ
活充実中って私言っているのです。個人の生活も充実
れから推察能力とか、色々私たちに必要な、その時面
させて、個人が豊にならないと、「職業的な私」も頭
接で駆使している能力というのが実はあるのですが。
打ち、それでドッキングして初めて良い援助者になれ
だけど大きくいえば、イマジネーション、想起力、イ
ますから、やはり個を優先させる時期ってあるんです
メージする力と、それからあと類推力、
分析力ですね。
ね。だけどうまく行けばいいですよ、職業と個がうま
アナロジー。前、こういう人と、自分の今まで経験し
くバランスとれていくといいのですが、でもね、やっ
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (19)
ぱり、こういうね、技を鍛える分野っていうのは、職
ことがどうして難しかったかというのは充分ご理解い
業的にある時期没頭しないと身体化されないのです
ただけたと思います。暗黙の知を、つまり言葉になら
ね。身体化する時期っていうのはちょっと没頭する時
ないたくさんの体の中に詰まった知識を、経験知です
期があって良いのですね。そうすると、ちょっとこっ
ね。で私は「経験知」とはタイトルに付けなかったの
ちのバランスが崩れるのですよ、〈職業的な私〉と個
です。「身体知」とつけた。「頭のいい身体」
。だって
人的な〈わたくし的な私〉ね、個人の、固有名詞の私
私たちの目標って、頭のいい身体にしていくことなの
ですね。それがちぐはぐになるのですね。職業的な私
ですよ。偏差値とかね、
そういうことじゃないのです。
だけが突出しても、異物になっちゃうのです、〈わた
IQじゃないのです。自分の目で見て、自分の身体で
くし的な私〉
が幼いと。良い援助者になれないのです。
感じて、自分の身体で考えて、頭だけじゃなく全身で
だから深澤先生が昔言いましたね、私に、「あなた、
考えたことをどれだけ言葉にしていくか、まとめてい
いい人がいたら結婚しなさいね」って。「あなたね、
くか。それの作業をどれだけ積んだかで、熟練度とい
この仕事はいい仕事なのよ。結婚して子育てをして、
うのはどんどんどんどん上がっていきますから、私は
それからでも充分にやれる仕事なのよ」って私はね、
その作業、振り返り作業、反復学習、ここがすごく大
言われたことがあります。まあ私は残念ながら、ちょ
切、内省的な作業、つまり自分に問いかける作業、こ
っとこの道1本で、ま、
こっちは充分楽しみましたが、
れがとても大事だと私は考えています。
その代わり、世の中の真っ当路線じゃなかったのだけ
それでは図の1、この2番目、対人援助の構図で、
れども、まあ、いいや。あのね、それで、そういうふ
「援助者が置かれている状況の理解
うにして、今の私があるわけですね。だから私の今の
ことで、1、2、3とあります。これは、前の本『未
第2世代は、ちょっとこっちを頑張っている最中だか
知との遭遇』もこれが基盤になっているのですが、こ
ら、「あなた、いい仕事していますよ」と、でも私の
のような図では出しておりません。今回は基本概念図
ところへ来るとかなんとかって、焦って言うから、
「来
をやっと、ずっと私が20年近く温めてきたやつをやっ
る必要ない」って私は言っているの「あなたには課題
とこう形にすることが、見せられる形にしたっていう
を渡してあるから、その課題をあなたが充分達成して
ことで、今までレジメで使っていたものをある程度手
からでかまいません」って、「だから何年後になろう
直ししてっていう部分もあります。今回新しく作った
が結構だ。あなたはもう土台ができているし、私の熟
ものもいくつかありますが、図の1はずっと私がこの
成課程でいけばもうプロフェッショナルの領域に入っ
20年、もっと言えば25年ぐらい前から、もっとこの簡
ていますから、焦ることはない」と。「今はこっちを
単な概念図は使っていました。これが基本だと思いま
充実させたほうがいい」って私は言い切っているんで
すから。そうしますと、対人援助の構図、図の1です
すね。それは本人の、私が「こう、せい」っていう強
ね、8頁、お開き頂いていますか。それが今日お話し
制ではなくって、本人の選択でいいわけですから、そ
することの中核、今までお話ししてきたことのやはり
れをサポートしている、保証しているわけです。つま
整理された概念図がこれになるのですが。私たち援助
り私達の大事なクライアントに対する援助技術、治療
職者、対人援助者、自分が、人間、人が人を援助する、
的なコミュニケーション技術である保証、再保証。
「あ
自分の身体をいい道具にする、先ほど「頭のいい身体
なたはそれでいいのよ」
、「あなたは頑張ってきたわ
にしていく」って、いい道具にするっていうふうなこ
ね」
、「あなた、今のままのあなたでも、これから先大
となのですが、そうするとどういう状況の中で私たち
丈夫よ」って、これ保証なのですよね。これ重要な技
は、人が人を支援する援助職としてプロフェッショナ
術なのですけれど。そういうことをして、第3世代が
ルとして仕事をしていくのか、援助をしていくのか、
ちょっと頼もしい人達がたくさんおりまして、これか
これ「職業として」というところが味噌ですね。人が
ら私はその方達に期待しているところであります。
人を援助するという。これが私のずっとテーマであり
〈レジュメにある図:対人援助の
構図について〉
ましたから27、8年のこれがテーマなのです。「職業と
図の1」という
して人が人を援助するって、いったいどういうこと。
どういうふうにしていくの」っていうことなのです
それではですね、じゃあ実際に医療ソーシャルワー
ね。あの個人の私じゃないのです。職業的な私がどう
カーの仕事が何故難しいかと言うことを前提としてお
やって職業的な私を作り上げていくのか、スーパービ
話しします。ソーシャルワークの援助技術を伝達する
ジョンは職業的な私を、それを作っていく援助職者を
(20) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
サポートするのが私の今の仕事ね。
2008年3月
できますが、とても手間暇がかかります、修正をかけ
そうすると、さあ、3つの側面に分けることができ
るというのは。それでそういうふうなところまで自分
ます。まず1は、左側です。対象者・クライアント、
を研ぎ澄ましていくというのがプロですよ。あのでき
これはシステムとして考えていきます。これはもう皆
るようになります。
様充分にご理解しているところだと思いますが、対象
それでですね、クライアントが置かれている状況を
者と言った時に、目の前に現われたクライアントだけ
的確に把握し分析する。これカギ括弧1のところに書
ではなくてその背後にいらっしゃるインフォーマルな
いてございますが、今、目の前の人はどこにいるか。
あのその家族とか親族とか知人、友人含めて、必要で
過去、・現在・未来の座標軸、四次元で見ると。人を
あればクライアントをシステムとして考える。それで
理解するという時に私は「四次元」とあえて使ってい
その対象者で、まず私たち援助者というのは右側、2
るのですが、それはその人の過去、過去にその人の強
の方ですね。対象者が、まず1、そして2が援助者に
さ、対処能力、力が隠れていることがあるのです。そ
なっています。するとまず対象者の下、ずっと点々々
れからその人の拠り所、つまり生活史を聞く意味とい
々で、クライアントが生きている世界で理解する作
うことなのですが、固有世界。その人が今その人であ
業、これがアセスメントと言われていることです。ア
るというアイデンティティーですね、それはやはり過
セスメントと支援計画は表裏一体ですから、仮のアセ
去の、今まで生きてきた歴史の中に隠れていますか
スメントを描きながら、査定しながら、仮の支援計画
ら、私たち援助職者、特にソーシャルワーカーはその
を立てながら私たちは面接、相談援助面接を通してク
人の背景にある、背後にあるものということで、訴え
ライアントとのやりとりをしながら、情報を引き出
の背後にあるもの、その人の、今何故この人がこうな
し、そして確認を取りながらアセスメントと支援計画
っているかということの問題の中核、「ニーズの根っ
を、順次暫定的なものを、終始、こう修正しながら、
こ」と私は言っていますが、そこら辺を察知するため
修正を加えながら、アセスメント、そして支援計画と
にも、やはりそれは過去に全部隠れていますね。この
を表裏一体で両方はじきながら面接していますよね、
人が何でこんなにパニックになっているのか、何でこ
アセスメントの時にね。ですから、私はここで支援計
の人がこのことでこんなに落ち込んでいるのかとか、
画も全部入れています。ですからクライアントが生き
鬱になっちゃったのかとかですね、近い過去に何かあ
ている世界でどのぐらいクライアントに沿った理解
ったのかなとか、遠い過去とつながっているのかなと
が、固有世界、クライアントの固有の世界を理解でき
いうふうにもちゃんと類推していきますね。「推理し
るか、そしてどれだけクライアントが生きている世界
ていく」と言ったほうがいいと思うのですが、実は類
に入れるか、そして出てこられるかと、これが共感レ
推より推理ですね。それで解き明かしていく。そうい
ベルなのですが、ここのところが基本になるのです。
うような解き明かしていく作業、それからその人のエ
〈アセスメントは出だしが大切〉
ンパワーをする時に、大体そのヒントは過去に隠れて
いますから、過去なのですやはり。過去のいつ頃から
まず私たちの対人援助というのは、もちろん相談援
問題が発生しても含めて過去なのです。その人の強さ
助実践もそうですが、最初にクライアントと出だし、
を探すのも過去なのです。そうすると、アセスメント
このクライアントがどういう人で、どのような問題状
というのは、現在その人がどういうような状況に陥っ
況にいるのかなということを理解することから実践は
ていて、何に困っているのかなっていうことを切り取
始まりますね。まずは初回がだから大事だ。初回のも
る作業なのですね。で、それは過去と繋がった現在な
う5分、それこそ3分5分が大事だ。もう出だし、出
のです。そして支援計画という、あとゴールの設定と
だしの1発が大事という、相手の表現された訴えをど
いうのは、将来この人が何に向かって生きていくのか
のようにこちらが察知し、分析統合し、そしてその人
な、そうすると未来です。そうすると「過去・現在・
に対してどういうふうに返すか。もう勝負はここです
未来」
ですよ、その人のただ表面、点としてその人が、
ね。最初の1回。1回の相互交流。ここで決まると言
ああ離婚したんだなという点情報じゃなくて、ああ離
っても過言ではないぐらい、そのぐらい武士道みたい
婚した、どういう状況で離婚したのかしら。で、今こ
な感じだけど、真剣勝負なのですね、実際のアセスメ
の人はどういう状況、気持ちはどうで、そしてこの人
ント面接というのは。そこでもう勝負が決まりますか
の背景にはどういうものがあって、どういう人とくっ
らその後の展開も決まります。もちろん途中で修正は
ついて、どういう人と切れてとか、人間関係ですね。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (21)
そういうことも含めて、あと社会的な地位とか、様々
ットスカート、紺か黒に着替えて、
靴も全部替えてね、
なその人の環境、それ三次元ですね。で、時間軸、空
それでキリッとなるわけですね。その後はハデハデ
間軸が入るから、相対性原理でいうと「四次元」
。こ
ね。個人の私はハデハデ。それで職場ではジミジミ。
れ物理の人に聞いたら、合っているって言われたから
ジミっていうか、清潔、清楚。そういうふうに、ちょ
大丈夫だと思いますが、四次元なのですね。私はそう
っと化粧は濃かったけど、変えていましたね。化粧濃
いうふうにして、時間軸・空間軸を入れてその人の大
いのはね、私のやはりこれ、切り替えなのですよ。普
事な、その方がその人生の中で転換点になっているも
段スッピンですから、信じられないでしょ、普段スッ
のとか、その人が人生の中ですごく1番その身体に刻
ピン、私だということはわかりません。私は自分が住
印され、これ『未知との遭遇』でも書いているのです
んでいる小平市でケアプラン指導員をしていますが、
が、体に刻印されている心身、気持ち的に身体的に、
皆さんケアマネージャーがね、私とほとんど個人レッ
身体っていうのは心を含んだ身体と考えますから、そ
スンをした人ばっかりなのですよ、動き回っている。
れを刻印されているものを私たちがどれだけきちんと
そうすると、「奥川先生は時々犬の散歩をしているわ
その人から引き出せるか、これが勝負なのですね。コ
よ」ってこう、みんなの中では話が回っているらしい
ツがあるわけですから、全部を聞くことはできません
んですけど、私スッピンで歩いていますから、まあ、
から、その人のターニングポイント、岐路になったこ
みっともない格好で歩いているからね、「ああ恥ずか
と、やはり人生の大きな局面、事件、イベントですね、
しい」
なんて、「まあいいや」
って思っているのです。
ここのところをどうやって聞けるかということが、そ
それで、そういうふうにして、何らかの職業的な自
の人とその人固有の問題状況を理解するということに
分に入る時の儀式というのは皆さん持っていると思い
繋がります。
ます。そうするとね、でも「職業的な私」は、例えば
〈援助者と個人をどうコントロー
ルしていくか〉
20何年、新人だったら、22年、23年生きてきた、何々
という固有名詞の私の上に「職業的な私」
、ないわけ
です。出発点はないのよ、ゼロからのスタートね。
この図1はアセスメントの課程をここに書いてあり
それで、じゃあ、ある程度いくと、ちょっと3、4
ます。右側をちょっと見ていただけますか。そうする
年、5年ぐらい経つと、少し職場の中ではもう認知度
と、「援助者」と書いてあります。これで1、2、3
が上がってきて、地域でも、狭い地域だったら認知度
とあるのですが、援助者のところにちょっと白く浮い
が上がってきて、何となく仕事も面白くなってきて、
ているところが「職業的な私」と書いてあります。そ
こうやってきて、なんとか、医療ソーシャルワーカー
れから「職業的な私」というのは知的・分析的・援助
の私がいるのだけど、その期間、やはり成長した「個
的身体になっていなければならないという意味です。
人の私」がいるわけですね。いつも続いて、「個人の
職業的な、つまり、職業人として私が、医療ソーシャ
私」の上の乗っけるわけです、「職業的な私」を。そ
ルワーカーとして私が立っている時は、ちゃんとそう
うすると、トレーニングを積んだ援助職者でないと、
いうペルソナをつけるということですね。職業的、も
個人の私の価値観とか、個人の私の美意識とか好き嫌
う身体が即、変換していないと困るわけです。個人の
いとか、色んな目が出てくるわけですね。
あと気持ち。
私を引きずっていたら困りますっていうことですね、
それから自分が昔、よく言われることですが、逆転移
これ。ですから皆様方の場合もそれぞれ儀式があると
とか言われることで、昔ものすごく、すごい体験をし
思います。どうやって、まあ医者の場合は白衣を着る
たとか、まだ解決されてない問題、そういうようなこ
とか、そういうことなのでしょうけれども、ソーシャ
とが自分の中にまだ持っている時には、そういうよう
ルワーカーとして自分がこれから仕事をするっていう
な、解決されていない課題を持っていると、同じよう
時の、みなさんそれなりのおまじないっていうか、儀
な課題を持っているクライアントが目の前に現われま
式が、ない?
ち
すと、揺さぶられる。何かザワザワしちゃう。それは
ょっと大きい声で言って下さる。制服を着るのね。は
「個人の私」がザワザワするわけです。そのことをち
い、その時に気持ちが改まりますね。そう、私も病院
ゃんと引っ張り上げて、意識化できてちゃんと「あ、
では着替えていましたね。動きやすい、フットワーク
個人の私が騒いでいるな」
、
「あ、
この人似ているから、
のいい格好に。白いブラウスに、ま、清楚にというこ
ちょっと私がこの人好きだなぁ、こういうタイプ」
「
、あ
とで白いブラウスにキュロットスカート、黒いキュロ
ー惹かれるなあ、こういうタイプには弱いなあ」
。意
ありません?
あるでしょ、何?
(22) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
識しながらやっている分には良いのですが、それがい
と、今は確信しています。混ぜちゃいけません、自分
つの間にか、相手が手練れですと、引きずり込まれち
の健康のためにも混ぜちゃだめ。精神的な健康、鬱に
ゃって、色々な問題が起きます。一般的な援助関係に
なる人、多いでしょ、この仕事やると。そんなことな
陥っちゃいます。そういう意味で、「個人の私」とい
いですか。けっこう薬飲みながらみんな仕事していま
うのは「職業的な私」の背骨がきちんと出来上がるま
すよ。これは、私は健康だとは思っていません。いく
では、常に制御の対象ということになります。コント
ら今が「鬱流行り」と言ってもね。「鬱流行り」だっ
ロールの対象なのですね、これが厄介ですね、この仕
て北山修先生なんかは、「鬱になりますよ、こんな時
事。自分をベースにして、自分をいい道具に仕立て上
代に生きてれば」って精神科医はおっしゃいますが、
げていく職業の厄介さっていうのは、「個人の私」は
私はこの仕事をしていくのに、それはやはりいけない
いつも制御の対象である、チェックの対象であるとい
と思う。やっぱり健康でいるっていうことが、やっぱ
うところ。「職業的な私」の背骨をきちんと作らなき
り、倫理ですよ。あの職業倫理。これ頑張ってやって
ゃいけない。そしてプライベートに戻ったら、「職業
かないと、私はよくないと思う。まず、クライアント
的な私」から離れなきゃならない。これ大変。これは
によくない。
自分を使っているから、「職業的な私」と離れ、だか
そういう中で、「職業的な私」というのは、ここで
らよくソーシャルワーカーの陥るのはね、ケアマネー
スイッチ・オンして「職業的な私」をどれだけ作り上
ジャーもそうなのですが、看護師もそうだね。
「先生、
げていくかが私たちのトレーニングになります。宜し
どうするのですか」って。「私自分の今ね、父親の看
いですか。そうすると、援助者が置かれている世界を
取りなのです。介護をしているのです。そうするとど
常に理解しておくというのは、今私が申し上げた「個
うしても私はケアマネージャーの目で見ちゃうのです
の理解」
、個人の私の、制御の対象としての私の理解
よね」って。「ダメ」って私言うの。「お父さんからす
と、それから「職業的な私」がどのぐらいまで熟成し
ると、娘の目で見てもらったほうが、どうって。ケア
ているかの理解が必要になります。そうしますと、こ
マネージャーの目で見られて嬉しいと思います?」っ
のところは「場のポジショニング」と言いまして、『未
て聞くのですね。「冗談じゃない」って。「そんな分析
知との遭遇』
、今度の本では演習シートで作ってあり
的な目、知的な目で見られるより、親としてみれば、
ます。あと、
「私は誰に対してどこで何をする人か」
「ど
娘として、喧嘩しようが何であろうが、情をぶつけら
こまで責任を持てるか」これをいつも明確に持ちなが
れたほうがいいでしょ」って。「だからあなた、娘に
ら仕事に就いているということが第一前提です。クラ
戻れ」って私はよく言うのです。
イアントの前に私たちが立った時は、私は誰、クライ
私もやはり、それですごく混乱した時があったか
アントの理解ですね、誰に対して、どこで、その誰と
ら、母親の看取りの時にね。その時に混乱したから、
はどのような問題状況にあって、どこで、何をする人
父親の時は徹底的に「娘」
になったら、疲れちゃった。
か、このことをやっぱりきちんと探査をして、そのこ
ほんと、ストレスで大変。家族になり切ったというこ
とを理解して、私の実力はどこまでか。そうすると、
となのですね。だから私がもし職業的な援助者の目で
どのバックアップを使わなきゃいけないか。つまり、
父親を看てれば、もっと賢くやれたと思うのだけど、
誰と相談して、そのクライアントに不利益を渡さない
情、家族、娘の身で、長女でしかも私はすごく父親の
ためです。どうしても、自分は最初素人ですから、
「職
影響を受けている、情けなくも最終的には、情けなく
業的な私」がゼロ、またはまだ低い段階の時は、必ず
思うような父親でも、とても私は影響を受けた人間で
バックアップシステムを持つということが、この仕事
すから、やはり看取った時には私は通夜にも出られな
の鉄則です。ですから相談援助者も同じです。ですか
いぐらい調子悪くなりましたね。だからこれが本当な
ら、一番下の2の、下の四角の中にある「私のバック
のだと私は思った。お母さんのことで学ばせてもらっ
アップシステムがいる」
、「コンサルテーションのネッ
たことを、父親でできたのだなって、帳尻が合ったな
トワークを持つ」
。これはね、出だしからやる必要が
って、自分で、今にして思いますよ。その時はそんな
あるの。だから場のポジショニングが私のスーパービ
こと考えてないのよ、だけどそういうふうに「生のま
ジョンの、まずは出だしになります、
仕事に就いたら。
まの私」と「職業的な私」をちゃんとスイッチ、オン
そしてそれをちょっと理解するのに必要な図はあとで
・オフ、これが上手になると非常に健康的な、健康な
見といていただきたいです。
良い援助ができるソーシャルワーカーになれるのだ
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
〈図5について〉
No.28 (23)
アントから、左側のクライアントから、横、あの斜め
に伸びている曲線ですね。クライアントが援助者に働
必要な図は12頁。これが「業務の範囲とグレーゾー
きかけます。つまり、全身の表情と言葉で援助者に、
ン及び逸脱」「自分の実力及びバックアップの必要
例えば、色んなやり方が、
リーチアウトとかあるから、
性」ということで、自分の実力というのは、この真ん
何とも言えませんが、まずここは基本的にクライアン
中の5です。その上が「業務の出だしを考える」と。
トから訴えがあったということから始めて考えていき
で、業務の範囲が「1グレーゾーン」
。私たちの仕事
ますね。そうすると、何らかの方法でクライアントが
の難しさは、グレーゾーンが多いということです。そ
全身の表情と言葉で、訴えてきます。あの働きかけま
れから重複、他の職種と重複する。だから自分の立ち
す。すると援助者は、これからは、ずっと援助者の職
位置をしっかり持っていないと、この仕事の確立はな
業的な身体の中で起こっているメカニズムを、ちょっ
いということなのですが、それをきちんと明確に言葉
とこう外に出してあります。そうすると黒の丸の中、
として自分の立ち位置をはっきり言える、自覚してい
援助者自身に働きかける。つまりクライアントが相手
る、そしてクライアントに不利益を渡さない、これが
から、クライアントから発せられた言葉を援助者が1
スタートラインの1番の大事なところになります。自
度ね、身体の中に入れるのですね。入れて、援助者自
己点検ですね、自分の実力点検になります。クライア
身に、ここで必要なのは、援助者自身に働きかける力
ントの問題、どういう人で、どういうような問題状況
なのですよ。問いかける力と言ったらいいんでしょう
にある人を、どこで、私は何をする人かという時の、
か。内省力です。
内省力が援助能力を高めるのですね。
クライアントの、どういう人、それからどういう問題
「この人は何を言おうとしているのかな」「この人、
状況というのは、どういう知識が必要か。
何でこんな表情しているのかな」「この人、どうして
例えば今まで別のところで、同じ法人内で移動した
こういう悲しい顔して普通のことをしゃべれるのかし
としても、例えばね、今1番大きな、まあ自閉症なん
ら」とかね、色んな言語と非言語の不一致をそこで観
かの問題もありますが、高次機能障害、まったく関係
察しながら、こう問いかけてみて、「この人、こうい
のない所で働いていた人が、「高次機能障害」って聞
うふうに言っているけど、本当は言いたいこと違って
いただけでもう「わぁっ」ってなりますね。だけどそ
いるのではないかな」ということとかですね、一生懸
れは当然自分がその部署に異動した時に、こういう人
命問いかけているわけです。そうするとね、援助者の
が対象者としているのですよ、ということが自覚され
中で、こう循環している会話の中で、引っかかります
ていないといけないのです。それはその前にいた上司
ね。「あれ、前にもこういうこと言ったな、これ、キ
とか、前にいた先輩がそういうことをちゃんとオリエ
ーワードだなあ」「前、同じこと言ったよ」とかです
ンテーションできるということが専門職の世界なので
ね、色んな引っかかりが生じます。これが直観レベル
すね。それがないところでいきなりバーンと入っちゃ
です。で、引っかかったものを今度は引っかける、ど
うから、そうするとパニックになるのですよ。いくら
んな初心者でも引っかかってきます。直観働いている
在宅介護支援センターで7年仕事をしていようが、そ
のです。人間の身体の上等さを私がすごく感じるとこ
ういうところにポーンと行った時に、パニックになる
ろなのですが、どんな初心者でも、こちらが問いかけ
のですね。普段発揮していたアセスメント力、人間関
ると、引っかかっていて、色んな大事な、1番大切な
係形成力が、専門的援助関係形成力が、「あ~っ」と
情景っていうのは結構刻印されているのです、身体の
なっちゃうのです。そこでもうパニックになるのです
中に。それを想起してもらうと出てくるのです、
でも、
ね。
引っかけられないのです。ほら、目の付けどころが出
〈相互交流のしくみ〉
来てないと。つまりここが大切。「ここは、このクラ
イアントが」生きることへの感受性ね、「生きる上で
さてそこで、じゃあ私たちは何をベースにして仕事
とっても大切な出来事だったのだな」「あ、大切な事
をしていくかが3になります。1番上の真ん中、1と
柄だな、事項だな」ということが引っかかんないと、
2の上の真ん中の、カギ括弧3になります。するとこ
素通りさせちゃうのですね。そうすると、「引っかけ
こが、頭の良い身体を作っていく時の大事な要素なの
る」というのは「意識化させる」
。自分の中でそのま
です。これをベースにしてソーシャルワーカーなんか
ま直観で「あれあれ」って思ったものを意識化させる
は仕事をしていくわけです。そうするとまず、クライ
という作業が、ここで起こらないと、アセスメントで
(24) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
きないのです。ただ聞いた、表面的な話を聞いただけ
ニケーション技術を磨く。しかも、もう1度ちょっと
になっちゃうのです。ですから、引っかけて、考えま
援助者のここに戻っていただきたいですが、「知的・
す。専門職というのはちゃんと思考します。そして何
分析的・援助的身体」にギアチェンジするというのは
らかの判断を下すというのが専門職です。
理解いただけたと思います。そこの下の、「視点・知
そうしますと、それをして相手に、それをね、こう
識・技術に裏打ちされた態度・価値観」これが専門職
ずーっと援助者の白いちょっと浮き出たところでやっ
価値。つまり、専門職的な態度、これはクライアント
ているわけです。「知的分析的身体」なんです。しか
が主体であるとか、まあ、言われていることですが、
し、「援助的身体」とあります。これはつまり、
「援助
あと秘密を守るとか、色々ありますが、専門職という
的身体」というのは、ここから今度、援助者から、1
のはやはり屹立していなくちゃだめ。孤高。孤高を保
からさーっと上にいく時に、ギアチェンジをするわけ
つっていうかね、あの色んな組織とかそういうところ
です。クライアントに働きかける時に、ギアチェンジ
にもちろん馴染みながら、おっ立ってないと駄目なの
して、援助者から発信される表情や言葉は常に援助的
ですね、屹立している。だから孤独なのですよ、本来。
であること。その時で一番その人にとって支援になる
専門職というのは孤独。だから強靭な自己を作り上げ
働きかけと、ここは明確化したほうがいい、ここは聞
ないと、本当の意味でのプロフェッショナルにはなれ
いてこのまま素通りさせたほうがいい、ここはいじら
ないと私は確信しております。ですから、そういう意
ないほうがいいとかですね、ここはまた次に出てきた
味で、でもこれは私が自分で今まで自分をトレーニン
ら聴いてみようかなとかですね、そういうのが瞬時に
グ、素人からトレーニングしてきた、もちろん支援を
判断されているわけですね。そういうふうにして、適
たくさんもらってね、あと医療ソーシャルワーカーの
切な方法でクライアントに働きかける、これが、私達
仲間との勉強会とか、深澤先生以外の色々な先生達か
が使うコミュニケーション技術になります。
らの刺激を受けて、自分も色んな他の領域の人達との
こういうのを「治療的なコミュニケーション技術」
お付き合いとか、色んな本を読んで、そういうことか
と私はあえて呼んでいます。何故か。プロフェッショ
ら自分を膨らましてきて、容量を大きくしてってこと
ナルが、相談援助の専門職が行うコミュニケーション
は、自分だけの努力ではありません。だけどそういう
というのは、援助的である。やはりそれが治療に繋が
中で私が今度はそれをお返しする番で、一生懸命その
る。医者の治療と同じように、私たちが面接すること
サポート、プロフェッショナルになろうとしている人
によって相手がエンパワーされる、こう元気が出る、
達をサポートしている中で、そういうふうに身につけ
それから動機づけがなされる。つまりやる気が起き
ていくことができるということを、私は実物を見て、
る。そしてまたは考える材料を私たちからもらって、
見ているから、今こうやって自信を持って皆様方に申
そして向こうがすごくそこで論理的に組み立てられ
し上げることができるのです。出来上がる人を実際に
る。材料をもらえる、相手のインテリジェンスによっ
見ているから、最初ひどかった人が、私自身も含めて
て全部やり方違いますよ。そうしますと、そういうよ
ですね。だからそういう意味で、非常に私たちは、も
うなふうにして相手がもらって、自分で組み立てるよ
う言い尽くされていることですが、クールな作業をし
うに、こちらが聞いて返せるか。相手がちゃんと組み
ながら援助的であるという、非常に複雑なことを、そ
立てられるように、こっちも組み立てながらなんです
れも動きの関係性の中で、専門的援助関係ですね、治
が、クライアントに全部チューニングしているわけで
療コミュニケーションの技術がいるってこの3の中に
すね。クライアントの主体に全部働きかけているわけ
あります。
ですから、そういうような面接というのは全部これは
そして、その「適切な援助方法でクライアントに働
治療に繋がるんですね。そうでしょう。だってソーシ
きかける」の下に「相互交流」
、これを利用して、武
ャルワーカーだってそういう技術持っていないとね、
器にしてやる仕事が相談援助実践。そうすると信頼関
他の専門職と対等にできない。で、
見せつけられない。
係に基づいた共同作業を、即、すぐ、すっと相手がく
デモンストレーションできない。つまり、色んな職種
つろいだ状況に相手を持って行けるだけの技量、そし
に対して「私たちはこれだけ目に見える支援をできる
て共働作業ができるだけのこちらの技量、そして相談
んだ」ということを見せつける、これが相談援助面接
援助面接をベースにしてやるからには、面接、先ほど
なのですよ、できます。
から何度も申し上げていますように、面接そのもので
ですから、そういうふうなところで治療的なコミュ
手当てができる、これがなければね、
勝負にならない、
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (25)
他の職種と。それからあと、専門的援助関係を早期に
招きして、1時間半では絶対無理、最低でも3時間は
結べて、そして治療コミュニケーション技術を磨く。
必要と思っておりました。今日は、まずイントロの部
これは決してカウンセラーになりなさいということで
分だったのですが、私たちが今いつもしている相互交
はありません。ソーシャルワーカーにはカウンセリン
流、その私たちの武器にしている、それこそ伝承して
グ機能は必須です。媒介者機能とかですね。そういう
行かなくちゃいけない部分の、図1の部分をたっぷり
ことと含めて、カウンセリング機能がなければ、傷つ
と今、皆さんにお話をしていただけたところかなと、
いているクライアントの、人に相談しなければならな
思います。このご本の中に、これら図は全部解かれて
いクライアントの情緒的な側面を整えることができま
います。それといくつかのお話の中でありました点
せん。そうでなければ物理的に、現実的にやれないも
は、コラムの中で、それが具体的にどんなことかが伝
の。現実的にこうやってくには、それを整えながらや
わりやすいお話になっています。なかなかに本当に読
ってくのです。だからカウンセリング機能が必要で
みごたえのある本で、私自身もワクワクしながら、読
す。もちろん媒介者的な機能も必要だし、ネットワー
ませていただいています。まだまだいっぱいお聞きし
キングの機能、そういうものも必要になってきます。
たところではありますが、限られた時間の中ですの
でも私は今日、プロフェッショナルとして必要な、そ
で、この短い時間の中で、なかなか全てをお話いただ
の相互交流をベースにした実践をする時に大事なメカ
くのは難しかったのですけれども、何かご質問ありま
ニズム、それを少し皆様方にお話をさせていただきま
したら、どうぞお願いいたします。
した。このレジメのあとのところは、全然説明ができ
ませんでしたが、表の1、特に私は説明をしたかった
のですが、もしよろしければ、本を見ていただければ
と思います。
【質問者/小林さん】
すいません、お時間のないところ申し訳ないです。
南一条病院のソーシャルワーカーの小林ですが、私が
ごめんね、お話が長くなっちゃって、質問をしてい
ただかなきゃいけなかったのに。はい。
援助している時に、クライアントが、相談者が今どん
な力を持っていて、今どこの位置にあるか、私がどこ
の位置にあって、そこで車間距離をどう取るか、距離
座長【田村
里子氏】
を、じゃ今縮まった、この縮まったことはここに生か
はい。この厚いご本の中で、このレジメで渡してい
せるとか、もうちょっと距離を離そうとか、あるいは
ただいたエッセンスの部分の、図1に今日はちょっと
個の私にとって、ちょっと反応しやすいようなケース
焦点をしぼって触れられました。
の場合は、あえて車間距離を取るとかということもや
るのですけれども、この図1の中ではその車間距離の
【奥川
幸子先生】
取り方っていうのはどこに当てはまるのでしょうか。
でもね、要請でもあったのよね。
【奥川
座長【田村
里子氏】
幸子先生】
あ、これね。これはね、そこはね、あんまり説明し
まずは図1を中心にとお願いしたのですけれども、
てないの。あのね、相互交流をするということで、ポ
お話の中にふれられた、「どんなふうにその専門職と
ジショニングというところで私はそれを説明している
しての軸を作ってくか」
、また、「アセスメントってよ
のです。あのいわゆる相手との関係、どこの位置に立
く言われるけど、どんなことなのか」
、「自己決定を支
つかという自分の立ち位置ですね。例えばクライアン
えるために何をするのか」といったところが図3、そ
トが今どういう状況にいるか、これもポジショニング
して図4で示されています。
ね。今この人が人生のプロセスの中でどこにいるの、
発病してからどこら辺にいるの、障害の回復はどのぐ
【奥川
幸子先生】
図の4なのですよね。これ説明したかったですよ
ね。
らいになっているのとか、これから先この人の体はど
こにいるの、心はどこにいるのと、これ『未知との遭
遇』で書いたことなのですね。そういうことを測ると
いうのがアセスメントですね。あのそうすると今度こ
座長【田村
里子氏】
お時間がなくて、本当はやはり私は、奥川さんをお
ちら側が、じゃあどのぐらいの援助能力があるのと、
これもポジショニングなのね。そしてこの人との援助
(26) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
関係、信頼関係はどのぐらいできているのというのを
測る。この人に対しては、この人がどのぐらい力があ
2008年3月
時間がおしてしまいまして、大変失礼いたしまし
た。
るから私はどのぐらいのところの距離をとって、どう
いうサポートをすればいいかというのを測るのがアセ
司会者
スメントですよね、支援計画に反映させるね。その時
奥川先生、座長の田村様、
ありがとうございました。
は、これはその人の力をどう見るか、これは私の今度
会場の皆様、もう1度盛大なる拍手をお願い致しま
の本の第1部第1章の第4節、力のあるクライアン
す。
ト、クライアントの力を測りながら、こちらがどのよ
おわり。
うなスタンスをとるか、どういう援助方法をとってい
くかっていうところを変幻自在に変えるということ
座長【田村
里子氏】
を、クライアントの力の加減に応じて1から4つの段
すいません。この場をお借りしましてご連絡いたし
階に分けて援助者のとるポジション、どういう技法が
ます。受付のところに今の奥川先生の話ともつながる
有効かということを第1部第1章第4節にあの技法も
のですが、日本協会の協会ニュースと一緒に皆さんの
入れて解説してありますので、もし参考にしていただ
お手元に配布してあります、実践力をつけることを目
ければ。うん、この図では、それは出ていません。大
的とした『スキルアップセミナー5月』を開催する予
事なところですよね、それね。
定になっております、ホスピス看護ケア領域というふ
うに謳っておりますが、今がん者さんはどこの領域に
座長【田村
里子氏】
図3の強みをどう捉えるかというところと重なるご
質問ですね。
もおられますので、関心をお持ちの方は、まだ枠がご
ざいますので、是非ご参加ください。私のほうで、札
幌の教育文化会館では、まさに家族のダイナミックス
ですとか、専門の方にもお出でいただきまして、今の
【奥川
幸子先生】
お話にもありました「手当てとなる面接」という意味
図3もそうなのですね。図3もこれはアセスメント
で、カウンセリング技法の入門のところも含めまして
の概念図です。つまり相手の力をどのように測ってい
ワークショップを、かなり実践的な部分でいたします
くか、家族の力をどう測っていくかというところの、
ので関心のある方、是非ご参加ください。この場を借
今おっしゃったところの概念図になります。
りてご案内させていただきます。ありがとうございま
した。
座長【田村
里子氏】
まだまだ色々お聞きになりたい点はたくさんあると
思いますが、是非このご本をまた皆さんで読ませてい
ただきながら、続きに学んでいきたいと思います。
奥川さんお忙しい中、遠方までお運びいただきまし
て、どうもありがとうございました。
司会者
これをもちまして教育講演を終了致します。この
後、定期総会までの間、休憩のお時間とさせていただ
きます。会場設営の関係で皆様には退室をお願い致し
ます。
定期総会は14時45分からを予定しておりましたが、
【奥川
幸子先生】
いや、無事に話し終えてよかったです。どうもあり
がとうございました。皆さん、MSWは、私がねMS
Wに期待しているって伝わった?うん、頑張ってね。
期待しております。
座長【田村
里子氏】
このあともうほとんど時間がないのですが、ホール
のほうで書籍を販売しておりますので、どうぞご購入
下さい。場合によってはサインもして下さるそうです
ので、宜しくお願い致します。
14時50分からの予定とさせていただきます。お時間ま
でに会場にお集まりいただきますようお願い申し上げ
ます。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (27)
医療ソーシャルワーカー協会の「軌跡」
と「伝承」
~今までの50年これからの50年
司会者
ますので、そういう考え方で進めさせていただきたい
ここで今学会のシンポジウムについて簡単にご説明
させていただきます。
と思います。
司会の方からありましたように、1人斉藤桂紀さん
今回のテーマは、『北海道医療ソーシャルワーカー
がちょっと出席をいただけなかったのが残念ではあり
協会の「軌跡」と「伝承」~今までの50年これからの
ますけれども、北海道協会の流れから行きますと、今
50年』です。シンポジストには、日本医療社会事業協
日のパネリストの清水耕策さんが昭和62年から平成8
会元会長高田玲子様、北海道医療ソーシャルワーカー
年まで10年間会長を務めていただきました。それから
協会元会長(京極町社会福祉協議会)清水耕策様、北
青木常雄さんにはその次の平成9年から16年まで7年
海道医療ソーシャルワーカー協会前会長(介護老人保
間会長ということで、そして現在会長の関さんにバト
健施設
憩)青木常雄様、北海道医療ソーシャルワー
ンタッチをされて、北海道協会の20年の期間の会長さ
カー協会現会長(道東脳神経外科)関建久様を迎えて
んがちょうど揃っていることになります。そんなこと
おります。なお、プログラムにてご紹介しておりまし
でかなり中身のあるお話をしていただけるかと思いま
た、北海道医療ソーシャルワーカー協会元会長斉藤桂
すし、それから日本協会の会長を平成11年から14年で
紀様は、ご都合により参加ができなくなりました。お
しょうかお務めいただいた高田玲子さんにも参加をし
詫び申し上げます。
ていただいて、全国の中における北海道という意味で
シンポジウムの進行は日本医療社会事業協会前会長
も少しヒントをいただければという具合に思います。
で、現在、北海道医療ソーシャルワーカー協会監事で
私事になりますけれども、私も昭和46年、1971年に
あります、北斗病院中平大悟様にお願いしたいと思い
旭川の病院に勤め始めて、色々と職場は変わりました
ます。それでは中平様、宜しくお願い致します。
けれども、35年余りに渡って北海道協会や日本協会に
関わり、色々な役割をさせていただくことができまし
座長【中平
大悟氏】
皆さん、おはようございます。
た。
様々なことを教えられ、学び、育ってきたのだなと
『北海道医療ソーシャルワーカー協会の「軌跡」と
いう具合に思いますし、フロアの皆さん多くの方も同
「伝承」~今までの50年これからの50年』というテー
じような考えの方、そしてこれからそういう思いをし
マでシンポジウムを始めさせていただきます。
ていただきたい方、たくさんいらっしゃると思いま
昨日来色々な方からお話ありましたように、昭和32
す。そのような意味でそれぞれのキャリアにあわせ
年の12月に60名余りの大先輩たちがこの北海道協会を
て、是非これからの私たちの職能団体である協会をど
設立し、幾多の様々な歴史を重ねながら50年。
う作り上げていくか、一緒に考えていきたいという具
昭和32年に生まれた方は今年50歳を迎えますので、
合に思います。
人間の成長に置き換えますと、凄い営みを重ねてきた
それでは、それぞれのシンポジストの方に先ずご発
という感じが致します。この50年の歴史を振り返りな
言をいただいて、その中身を時間が許せば簡単にまと
がらこれから先の半世紀50年に向けて、私たちはどの
めるような形で進めたいと思います。
ような更に営みを重ねたら良いのか、1人ひとりの課
始めに清水さんのほうから発言をお願いいたします。
題として何を見出したら良いのか、そのためのヒント
を作り出すことができるシンポジウムになればという
【清水
耕策氏】
具合に思います。進行はなるべく座長は前に出ない
京極町社会福祉協議会で事務局長をしております清
で、シンポジストの方に多く語っていただこうと思い
水です。私は今日のシンポジストの中では1番古いの
(28) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
で、道協会の歴史を語らなければならない立場にある
ながら、福祉を語る夕べを15年間、毎年開催されまし
と思っております。
た。その頃、伊達の周辺では、太陽の園や北湯沢のリ
私が道の医療ソーシャルワーカー協会と関わりを持
ハビリセンターなどが設立された時代でしたので、
「福
ったところからお話をします。私が福祉大学を卒業し
祉仲間の集い」に参加した本州出身の学生が伊達周辺
て、伊達の赤十字病院でソーシャルワーカーになった
の施設に就職するようになり、福祉の専門職を増やし
のは昭和43年で、伊達に6年間、その後室蘭の市立病
てきました。
院で13年、それから昭和62年から道立精神保健福祉セ
私の役割として北海道MSW協会の歴史についてお
ンター(当時は道立精神衛生センター)へ移って、そ
話します。私が先輩たちから聞いたことと記念誌など
こで16年間ワーカーとして働いてきました。平成16年
の文献から調べたことをお話します。
に定年退職しましたが、就職して退職するまでの35年
間現役のワーカーとして活動してきました。
道協会の設立は昭和20年代の後半から、正確にいう
と、昭和29年に札幌の大黒病院のソーシャルワーカー
私が道協会と関わるようになったのは、昭和48年に
だった梅田幸子さんが中心になって第1回の設立準備
理事になり、そこから始まりました。それから52年か
会が設けられました。数度の準備会が開かれて、北海
ら10年間、副会長として道協会に関わらせていただき
道の衛生部長や札幌市の厚生局長などの行政機関から
ました。先ほど紹介がありましたように、昭和62年か
の積極的な支援によって、昭和32年の12月に北海道医
ら平成9年までの10年間会長を務めさせていただきま
療社会事業家協会として誕生しました。設立当初は社
した。
会事業家協会で、現在の医療ソーシャルワーカー協会
就職した頃を振り返ってみますと、就職したばかり
と同じですが、その後まもなく、医療社会事業協会に
の当時は殆ど協会の活動に関わる余裕がありませんで
改称されました。その時の会員はですね50名足らず
した。昭和40年代初めでしたから周囲を見ても福祉の
で、設立総会に当時の層々たる方々20数名が来賓とし
専門職は少ない状況でしたし、まして伊達という地域
て参加され、設立に大いに期待されました。
には私以外の専門職はおりませんでした。病院に勤め
昭和30年代は、高度成長の経済政策が展開されてい
ていても、自分自身の仕事のソーシャルワーカーとい
て、工業化と都市化が著しく進んだ時代で、家族制度
うことを説明することすら十分にできませんでした。
や地域社会や産業社会などが大きく変化したことか
「病院の職員で医者でもない、レントゲン技師でもな
ら、社会の歪みが出てきました。
そういう時代の中で、
い、薬剤師でもない、それで事務員でもない、そした
農村部の過疎化が進み、その頃から老人問題が顕在化
らおまえは何者なのだ」っていうことなのです。その
してきたのです。
頃、福祉事務所のケースワーカーという言葉がかろう
北海道においては、炭坑事故が多発していて、炭鉱
じてあったくらいで、自己紹介に“ケースワーカー”
事故の労災が絶え間なく発生していました。その当
と言ったところ、「おまえ箱でも売っているのか」と
時、殊のほか問題になったのがポリオの大流行したこ
言われました。“ケース”ということから“箱”を連
とです。そのポリオによる障害児が社会問題になり、
想されたのでしょう。また、お年寄りから礼状をいた
それに対して先輩ワーカーたちが、小児マヒの会を結
だいた時、礼状の宛名書きが「清水ケシ若様」という
成し、肢体不自由児療育キャンプなどを全道的に展開
状況でした。
しました。その活動をしていたワーカーは、保健所や
世間一般が社会福祉を全く理解されていなく、まし
大学病院のワーカーでした。また、その頃、結核がま
てや福祉の専門職の存在することが知られていない時
だまだ大きな問題でしたから国立療養所にワーカーが
期でした。私は福祉を理解する仲間を少しでも増やさ
配置されておりましたので、結核患者への相談活動が
すことからはじめようと考えました。その当時、夏休
活発に行われていました。
みに大きなリックをかついで道内を旅行することが学
北海道医療社会事業家協会は翌年の昭和33年に北海
生の間で流行しており、歩く蟹のようなので「カニ族」
道医療社会事業協会というふうに名前を変えておりま
と呼ばれていました。自分の母校である東北福祉大へ
す。その当時、北海道とか札幌市などの行政の後押し
行き、夏休みに北海道旅行を予定している学生を募集
で成り立っていたわけで、初代の会長には札幌医大の
して、洞爺湖や有珠の海岸でキャンプを行いました。
院長である滝本庄蔵先生がなり、昭和35年から厚生省
それを「福祉仲間の集い」と名づけ、3泊4日のキャ
の北海道地方医務局長の有末四郎先生が就任しまし
ンプで、道内で数少ない卒業生の先輩と後輩が交流し
た。有末先生が14年間会長として医療ソーシャルワー
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
カーの育成と指導に当たられました。
No.28 (29)
員として増えてきました。短期講習を受けてワーカー
私事ですが有末先生と私は同じ京極町の出身で、子
になった人たちが協会運営の主導権を握っておりまし
供の頃結核になった時に診ていただいたこともあり、
たが、「専門職としてどうあるべきか」や「資格制度
最初の就職時に伊達赤十字病院を紹介していただき、
化はどのように展開するか」という問題で講習を受け
その後も、何かと面倒をみていただきました。
た人たちと福祉大学を卒業したような人たちが対立す
行政の後押しをしで協会が設立できたことから、道
る構造ができつつありました。私が協会へ入会したの
や札幌市の補助金をもらって運営してきました。最初
は昭和43年で、古くからの人と若い人との軋轢をかな
は会員が少ないことから会費収入も少なく、補助金は
り感じていました。それが如実に現れたのは昭和45年
協会運営に大いに役立っておりました。最近では補助
の釧路大会の総会で、意見の対立があり、講習会を受
金の会計に占める割合が少なくなり、今年度から補助
けた人たちと大卒者の間の対立構造が明らかになりま
金が無くなり、完全に独立した協会になりました。
した。
その後の活動としては札幌を中心に総会と研修会
その頃、日本医療社会事業協会の方でも資格制度化
が、地方と札幌が隔年ごとに開かれる、旭川、函館、
を巡って様々な対立があり、協会活動が停滞していま
帯広、釧路などで開催されるようになりました。私が
した。全国的な動きの中でも組織内の対立関係があ
入会した年に頃は隣町である虻田町の洞爺温泉で総会
り、そのような背景が道協会の活動に影響を及ぼした
が開かれ、職場の先輩ワーカーに連れられて出席した
ように思われます。
記憶にあります。全道的に会員を増やすために各地で
昭和54年に日本協会から道協会へ全国の医療社会事
開くという意図がありました。研修会を各地で開催し
業大会を札幌で開催する要請がありました。清水清会
てソーシャルワーカーの業務の統一を図る活動が展開
長はその年にMSW協会へ長年関わった功績により褒
されていたのだと思います。昭和39年とか40年頃に
章を受章したこと全国大会という一大イベントを開催
は、医療社会事業短期講習会が開かれて、ソーシャル
することで、清水清会長の引退の花道になるのではな
ワーカーがそこで育成され、会員を拡大するというよ
いかということで、道協会としては全国大会を開催す
うな研修会がありました。その初期の頃の研修会は主
ることにしました。全国大会は道協会が一丸となって
に事例検討が盛んに行われ、事例を通して“ソーシャ
盛り上った大会となりました。その大会を機に清水会
ルワーカーはかくあるべきだ”ということを教えられ
長の旧体制が一斉に引退し、旧体制に反発していた私
たのを今でも覚えております。
より少し上の世代の人たちが役員になるものと思って
設立当初の頃の会員は殆どがその短期講習や厚生省
いました。ところが、いざ役員改選になると反発して
主催の講習を受けた人たちばかりで、福祉大学で教育
いた先輩たちも役員にならず、一代下の私や札幌市立
を受けた人は少数でした。
病院の遠藤さんやそれから函館市立病院の永長さんが
その頃の総会や研修会で議論されていたことが、身
役員として選出されてしまいました。
分法の制度化でした。その頃、身分法と言っていたの
理事会を開き総会の準備しようとするのですが、旧
ですが江戸時代の士農工商でもないのに身分というの
体制から何の引き継ぎもなく会の運営をやらせられる
もおかしい、これは資格の問題であり、資格制度化運
ことになりました。札幌市立病院の静療院で理事会を
動に改めて展開されることになりました。
開かれていたのですが、誰が会長になるかという話に
協会運営が補助金などで行政に頼らざるを得なかっ
なった時に、協会運営を知らない者同士で、「取りあ
たこともあり、医師である有末先生と滝本先生が会長
えずお前がなれ」というような感じで札幌市立病院の
になっていただき、そして行政と交渉しながら協会活
遠藤三千之さんになってもらいました。そして、帯広
動を展開してきました。設立から16年後、ソーシャル
の大江病院の門屋さんと私が副会長になり、事務局長
ワーカーの中から会長になり、ワーカー自身の協会と
に函館市立病院の永長さんなりました。しかし、お互
して独立すべきだということになり、北大病院のワー
いに道内各地の遠いところから汽車で来るので役員会
カーであった清水清さんが会長になりました。ソーシ
に集まるのが大変でした。永長さんは、夜行列車に乗
ャルワーカー自身が協会運営するようになっていった
って土曜日の夜行列車の乗り、日曜日1日中理事会に
わけです。そういう中で、資格制度を中心に展開して
出て、帰宅するのは月曜の朝になるようなことが続き
いくわけなのです。
ました。毎回の理事会がそのようなことが続き全員が
昭和40年頃から大学で社会福祉を学んだ人たちが会
疲れていました。それぞれの役員が2年間続けた結
(30) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
果、会長の遠藤さんは疲れ果てて「もうこんなことは
ましたので新人のための教育が必要になってきまし
やってられない」いい、1期で会長をおりることにな
た。それで、新任者研修を夏と冬の年2回開催し、2
りました。彼が事務局長をすることになり、会長には
回の研修を受けると正会員になれる制度にしました。
慈啓会病院の斉藤桂紀さんになってもらうことになり
この研修はベテラン会員が新任会員へ教えるいとい
ました。
う、両者が互いに学習することになりました。
しかし、
新しい道協会の執行体制は混乱しながらも、MSW
この新任者研修を企画することに精一杯で、次のステ
協会として何をやっていったらいいかということを模
ップである中堅者研修までたどりつけなかったことで
索しておりました。やはり地味な運動を展開するとい
悔いが残ったと思っています。
うことで、「医療ソーシャルワーカーは市民権を得た
副会長10年、会長10年の20年間の道協会に係わった
か」というスローガンを掲げ、できるだけ多くの方に
経験から「これからのワーカーに望むこと」について
MSWの活動を知ってもらおうということで、会の運
お話させていただきます。やはりソーシャルワーカー
営方針を立てました。
としての技術を向上することです。私が所属していた
資格制度化を促進させるために制度化推進委員会を
ところが道立精神保健福祉センターは道内の精神保健
組織して、制度化に関する意識調査と市民向けの署名
に関する技術センター的な役割を果たしておりまし
活動を展開し、昭和56年には、北海道議会において医
た。そういう中で日々感じておりましたが、ワーカー
療ソーシャルワーカーの資格制度化促進についての意
としての技術を徹底的に鍛える必要があると考えてお
見提出に関する請願というのが採択されるまでに至り
りました。面接技術とりわけカウンセリングの技術に
ました。
ついて心理社会アプローチでも課題中心アプローチで
その頃の会員数は約150名で、みんな和気あいあい
も家族療法でも良いのでが、まずは1つを基本的に身
とした雰囲気であるが、時は激論を交わしながら、本
に付けることです。それから徐々に多くの技術を学ぶ
当の意味での会員相互の交流があったと思います。そ
ことおすすめしたい。最初、私は教科書にあるとおり
れは身近なところにライバルがいて、互いに切磋琢磨
に相談が進まないので自分流で良いと考えていまし
するという関係にありました。
た。精神保健福祉センターで先輩ワーカーの金田迪代
昔を懐かしむ訳ではないのですが、最近の総会後の
さんに「相談は人柄で勝負するのではない」と指摘さ
交流会などで先輩が後輩を連れてベテラン会員を紹介
れ、大きなショックを受け、それから本格的に技術を
している姿が見られるのですが、ただ名刺交換だけの
学ぼうと思ったものでした。技術的なことは先輩ワー
ように思えるのです。果たして、このような交流でよ
カーの質問の仕方を、盗み取たり、真似してみたりす
いのかと私としては危惧をしているところです。
るだけで、面接の展開は大きく変わる経験をしまし
昭和62年、私が会長になり、副会長には苫小牧市立
た。その後、他職種の方々と集団精神療法の研究会で
病院の山口幸三さんと愛全病院の高田康範さん、事務
グループワークを学んできました。その研究会でソー
局長は天使病院の堤邑江さんの布陣でスタートしまし
シャルワーカーが余りにも少ないので、今後、グルー
た。2期目から堤さんが副会長に、事務局長に高田さ
プワークに興味を持つワーカーが増えてほしいと思い
んがなり、それらの三役の皆さんに支えられて協会運
ます。
営にあたりました。
今、ケアマネージャー(介護福祉専門員)と一緒に
昭和60年代は福祉行政が後退する傾向にあり、受益
仕事をしているのですが、やはりケアマネジメントは
者負担が増すという厳しい状況の中にありました。そ
ソーシャルワークのマニュアルであり、ケアマネージ
ういう中で、医療ソーシャルワーカーの専門性が一般
ャーはソーシャルワークの一部を担っているに過ぎま
市民に理解されるためのパンフレットとかポスターを
せん。できれば今後は、社会福祉を本格的に学んだ人
作って啓蒙普及活動をしました。また、その頃の道協
でないとケアマネージャーになれないという時代にな
会の組織は道南ブロック、日胆ブロック、
南ブロック、
って欲しいというふうに思っています。
北ブロックなどと漠然とした関係にあり、本部と支部
500人の町の社協で働
私は今、京極町という人口3,
の関係が不明確でした。協会の組織を中央、南、日胆、
いています。これまでにケースワークやグループワー
北、東の各支部として本部と支部の関係を明確にされ
クをある程度してきましたので、今はコミュニティワ
ました。
ークに挑戦しております。私は60歳を過ぎ、幾つにな
私が会長になった頃から新任者の会員が激増してき
っても新たな実践へ挑戦したいと考えております。今
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (31)
後も皆さんと一緒に挑戦し続けたいと思っています。
ソーシャルワーカーとしてケアマネージャーだとか介
話が長くなりましたけれど、私の話を終わらせてい
護サービスをどう見ていくか、どういうふうにその人
ただきます。ありがとうございました。
を地域のなかで生活全体を支えていくのだというとこ
ろで、医療ソーシャルワーカーの役割が逆にしっかり
座長【中平
大悟氏】
清水さん、ありがとうございました。副会長・会長
とあるのではないかというふうに整理されてきたかな
と思っています。
と通して20年、思いの丈を話し出すとおそらく終わら
2番目の「協会活動のテーマの流れ」
ということで、
ないと思うのですが、ポイントを触れていただきまし
この辺もバブルが崩壊して以降、いわゆる右肩上がり
た。それでは続いて、青木さんお願い致します。
であった診療報酬改定だとかが、厳しくなって病院経
営そのものが大変な時代に入ってきました。ただその
【青木
常雄氏】
中で北海道の場合、医療ソーシャルワーカーが飛躍的
はい。関会長の前で、今お話になった清水元会長の
に増えてきたのだと、ですからこれを逆に見れば、そ
中を8年度間担当しました、青木といいます。ちょう
の社会の変革の中で、この北海道という地域医療ある
ど私が会長になった時は、総合病院のソーシャルワー
いは地域福祉事情をどう捉えるかというようなところ
カーで、その後職場のほうで老人保健施設を開設して
に繋がってきたのかなというふうに思います。勿論、
そちらのほうのソーシャルワーカーも兼務という形
例えばここ何年かもそうですけれども、医療福祉相談
で、今のところ、肩書き的には老健施設職員になって
室あるいは医療相談室というベーシックな所属の名前
いますけれども、法人の病院のほうのソーシャルワー
から、地域医療連携室所属の医療ソーシャルワーカー
カーも兼ねながらやっている状況です。
とか、そういったところでかなり変わってきたように
協会の流れ等に関しては清水さんが、今私の持ち分
思います。勿論それに伴ってその業務の流れだとか役
も含めて、もうお話をしていただきましたので、端折
割、あるいは所属機関、地域あるいは患者さんからの
りながらいきたいと思います。記念誌のほうので、皆
期待とか、それも変わってきているのでしょう。逆に
さんの手元にあると思うのですけど143頁、144頁に、
私たちの協会では、ある意味、そういう地域から期待
一応振り返りを書いていますので、後で読んでいただ
されるものが変わってきているのだという部分はしっ
きたいというふうに思います。
かり受け止めたように思っております。単に入退院の
先ほど清水元会長がおっしゃったように非常に会員
調整係、退院促進係と言われたような業務から、やは
数が飛躍的に増えた時期です。私が担当した前は、確
りその患者さんが地域でどう生活するのだというとこ
かまだ300人前後だったような気がします。その後毎
ろをしっかり見据えて、地域医療連携室の中で業務を
年70~80名ちかくの新入会員が入会してきて今日に至
展開しているというか、そういうようなところを評価
るというようなところです。それにあわせて在宅介護
して変わってきたというところだろうと思います。
支援センターとか、昭和63年にできた介護老人保健施
先ほど言ったケアマネージャーと医療ソーシャルワ
設、当時は老人保健施設が、飛躍的に増えまして、医
ーカー業務の整理に関してはある程度できたかなと思
療法人系の介護老人保健施設のソーシャルワーカーが
っておりますし、あと先ほど清水元会長が資格制度の
入ってきただとか、そういうように所属機関領域が拡
関係で北海道議会に要請陳情とかしたという経過を報
大してきまして、平成12年の介護保険制度導入になっ
告なさったと思いますが、私の時は、道立病院、公的
てから医療ソーシャルワーカーからケアマネージャー
病院を中心に医療ソーシャルワーカーを配置して欲し
になった方も増えてきたというような、所属機関や領
いという、そういう要請活動を行ってきました。私は
域の拡大が目立った時期だったかなというふうに思い
北海道議会に何回か足を運んで、それぞれの所属会派
ます。勿論、介護保険の導入による医療ソーシャルワ
の議員さんに紹介者になっていただくようなお願いを
ーカー業務の変化、現場の戸惑いや混乱については、
行なってきましたけど、道議会も2年毎に委員が変わ
平成11年くらいから何年か協会の中でもに議論して、
るので。委員の変更のたびに、私たちが足を運んで説
特にケアマネ資格を持たない医療ソーシャルワーカー
明してお願いをするというようなことを取り組んでき
はどういう立場なのっていうようなことが議論されま
ました、一応これも資料の中に載っていますので後で
したけれども、これに関しては結構整理されてきて、
見ていただきたいと思います。
先ほど清水元会長がおっしゃったように、やはり医療
次に3番目の「職能団体として生涯研修システムを
(32) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
どう捉えるか」ということで、これは清水元会長の時
が触れられるのではないかなと思うのですけれども、
代からの流れを、会員数が飛躍的に増えることの中
職業倫理、倫理綱領の関係です。ここはやはり対人援
で、職能団体としてどう現役で働いている期間の研修
助職務の専門職として、更に磨きをかけてしっかり認
制度体制を作っていくかということを大いに議論し
識してやっていかないと大変なことになるのではない
て、試行錯誤ながらやってきて今も続いているじゃな
かというふうに思っております。社養協という社会福
いかなと思います。今、実習指導者の関係の担当者ベ
祉養成校協会ですか、あの協会代表の大阪市立大学の
ースでの検討や取り組みを意欲的に行うなど、結構北
白沢先生が今月始め、福祉新聞に書いていましたけれ
海道は先駆的にやっているのではないかというふうに
ども、社会福祉士をベーシックな資格として、医療ソ
思います。ここに書いてあるとおり現場の先輩が後輩
ーシャルワーカーをスぺシフィックな部分としてやっ
を育てるという部分、ここをみんなでしっかり認識し
ていきたいということで、資格制度を整理してきまし
ていかないと専門職っていうのは次の時代に、世代に
た。それ自体の考え方は理解できるのですけれども、
繋がっていかないのではないかというふうに思ってお
スペシフィックな部分をどう、北海道医療ソーシャル
りました。特に医者なんかは、今の北海道の一部では
ワーカー協会としてこの先どのように取り組んでいく
かなり問題になっていますけれども、臨床研修医制度
かということが課題だと思いますね。やはりそのベー
っていう、やはり医者が医者を育てるっていう、それ
シックな資格というけれども、ほんとそのベーシック
をしっかりやっているわけです。そういう意味では医
な資格自体がほんとに向上しているのかと、伸びてい
療ソーシャルワーカーも医療ソーシャルワーカーをし
るのかというようなところを、常に検証していく必要
っかり育てていくっていうところを意識していかない
があると思うのです。私自身は社会福祉士の資格をベ
と、専門職として地域で活躍ができないのではないか
ースに持って、そして医療ソーシャルワーカーとして
というふうに思っています。ただ個人的には、私がこ
活躍して欲しい、実践して欲しいという考え方自体に
の当時ずうっと思っていたのは、採用した医療ソーシ
はまったく変わってはおりませんが、その社会福祉士
ャルワーカーを育てるのは職場に第一義的な責任があ
自体のレベルがどうなのかというところを、私はこの
るのだと、だから職場は採用した以上その職員を育て
先、検証していきたいなと思っています。今年も合格
るためにはもっと投資してくれと、お金をどんどん出
率27%です。大学で一生懸命勉強して実習も積み重ね
して研修会に行かせるだとか、そういったことをやっ
て、合格するのが27%。こんな資格で良いのですか、
てほしい。自費で行っては、個別に勉強する熱心なワ
ということです。昨日の総会を振り返る必要はないと
ーカーもいますけれども、それはやはり北海道の場合
は思うのですけれども、ただ受験資格を持つことがど
なかなか東京に何回も足を運ぶというのは無理ですか
うこうだじゃなくて、27%の合格しかない受験資格と
ら、やはり職場でしっかりその辺をやってほしい。だ
いうのは一体何、というようなところも振り返りなが
けれども職能団体としては必要な研修はやりましょう
ら、この先みんなと一緒に歩んで行ければいいのかな
ということで、この期間やってきました。たまたま私
というふうに思っています。ちょっと後で時間があれ
の職場、何箇所か私も体験しているのですが、こうい
ばフロアのほうと意見交換する中で色んな思いを広げ
う職能団体の役割とか、そういったものも業務の1つ
ていければというふうに思います。以上です。
だという理解がありましたので、8年間会長をやっ
て、その前も色んな役割を担っていましたし日本や北
座長【中平
大悟氏】
海道の社会福祉士会のほうの活動もさせていただきま
青木さん、ありがとうございました。時間調整をし
したので、勤務していた職場のほうではその業務をす
ていただいてありがとうございます。フロアとの意見
るにあたって必要な活動だということで認めていただ
交換という提案もしていただいたのですが、時間的に
きましたので、何とかできたかなと思うのです。やは
余裕があればということで進めさせていただきます。
りそれは全体的にそうならなければおかしいと、ある
それでは次に現関会長から、関会長にはこれから協
いはそういうふうに仕向けていく必要があるんじゃな
会がどのように進むのかというビジョンについて少し
いかなというふうに思っています。
触れていただこうかというふうに思いますので、お願
最後に、「これからの協会活動の期待」というとこ
ろで、やはり医療ソーシャルワーカーの拠り所を明確
にしましょうということとか、この後たぶん高田先生
い致します。
2008年3月
【関
ス タ デ ィ ー ズ
建久氏】
No.28 (33)
です。つまり複数の団体にただ入っているのではなく
はい、皆さん。おはようございます。会長の関でご
て、その1番上の、「北海道協会は何の活動をする、
ざいます。多くの、両サイドに大先輩を迎えてこうい
どんな団体になるべきか」を考える必要があるのです
うとこでお話するのは非常に気が引けるのですけれど
ね。複数の団体に所属するということは、何らかのご
も、自分の役割と肝に銘じまして、お話をさせていた
自身の目的があって入っているわけですね。その中で
だきます。
北海道医療ソーシャルワーカー協会に入会してくださ
お話をしたいと思うのは、これからの私たちの協会
っている皆さんは、北海道医療ソーシャルワーカー協
やその活動がどういったものを目指しているのか、皆
会を何の活動をする、どんな団体なのかというふうに
様には機関紙などではお伝えしていますけれども、理
認識していらっしゃるかということを、私は非常に考
事会などで検討していることを、皆様にお知らせして
える必要があるというふうに感じたわけです。そして
いる以上のものは実はありませんけれども、その中で
その協会の活動の今後、将来を考えていこうというふ
少し私が考えていることなども含めてお伝えをしてい
うに思った時に、ではどういったものが課題としてあ
きたいと思っております。
るのだろうかというのを考えたわけです。これもあと
そもそも何で協会の将来を考える必要があるのか、
で、これもこのグランドデザインを考えるきっかけに
考えなくてもいいのではないかという選択肢もあるわ
なったことですけれども、研修会の参加者、けっこう
けです。でも、
ここにいらっしゃる皆さん殆どの方は、
皆さん参加してくださっているのです。実は生涯研修
将来を考えなければならない。つまり今、協会には課
システムを考えようといった時に、2005年に巻副会長
題があるというふうに認識をしていただいているのだ
が北海道協会で行われた研修の数を数えたところ、あ
ろうと思います。その多くはやはり社会情勢の変化が
っちょっと今、失言してしまいましたけれど、56回で
私たちにそういった協会活動の変化を要求していると
800人参加しているのです。まあこれ
総参加者数が1,
いうふうに思っています。一番下の環境の変化につい
が多いか少ないか、それを聞くと非常にボリュームと
てはまあ色々ありますけれども、特定機能病院や一部
しては多いなと感じるのですけれども。一つひとつの
医療機関ではあのDPCが始まっている、包括医療で
研修会だと、果たして何かそのイメージとはなかなか
すね。医療保険の料金の組み上げ方が変わってきてい
連動しづらいというふうに感じています。また会員数
ます。医療機関は機能分化しています。敢えて説明す
が増大というのもありますけれども、平成7年に会員
る必要もありませんが。あと田村さんなどがこう厚労
数は206名で、10年後の平成17年には704名、つまり10
省で色々意見を申し上げていただいておりますけれど
年間で3倍会員数が増えたのです。日本の高齢化と同
も、後期高齢者医療制度、
これ2008年から始まります。
じように、まったく逆ですけれども、会員も急激なあ
今どういう後期高齢者医療制度が考えられているかと
の会員増というものがあったわけです。それに伴って
いうことを、どのくらい皆さん会員の方が知っている
その会務を司る、特に事務局や財務を中心とした協会
かということなのです。この制度ひとつでも私たちの
業務というのはその増える会員数に正しく対応してい
社会情勢っていうのが大きく変わるわけです。あと去
くために必死になって努力をしてきたわけですね。そ
年始まりました介護保険法の改正や、決まりました医
ういった背景がありました。じゃそういったものも含
療療養型の介護施設の廃止、こういった環境もありま
めて何とかしたい。でも、何とかすると言っても何を
す。これが制度やそういったものの環境ですね。また
何とかすれば良いのだろうかと考える時に、やはり悪
その環境の変化に呼応するかのように私たち北海道医
いところを直すという発想ではなくて、もっと未来に
療ソーシャルワーカー協会以外にも色々な団体が出来
向かって私たちが、こうなりたいというものを定め
上がりました。昨日ご来賓でお見えになりました奥田
て、それに向かって努力をする中で課題を解消という
会長の所属する北海道社会福祉会これは社団法人化し
か、そういうふうにしていきたいというふうに考えた
ました。精神保健福祉会も出来上がりまして北海道支
わけです。つまり、会員の協会活動に対して関心の喚
部というような形になっています。つまり、ケアマネ
起とありますけれども関心を生むことを作っていこう
ージャー連絡協議会もあります。この中でこの団体に
というふうに思ったわけです。また専門職団体として
それぞれ所属している方もいらっしゃるわけですね。
の社会的な役割、発揮はしたいのですけれどもその社
つまり複数の団体に所属する私たち北海道医療ソーシ
会的役割は何だというのを定めたいというふうに思っ
ャルワーカー協会の会員も多くなっているということ
たわけであります。そういった中で色々なまとめを平
(34) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
成16年ぐらいから協会はして参りました。目的として
も、「当協会の活動の現状」という非常に10頁ぐらい
協会の在り方を明確にしたいということ、あと専門職
のまとめをさせていただきました。これは今お話をし
団体らしい、専門職団体というのは医療ソーシャルワ
た行動計画書を具体的に推進したくて、推進するため
ーカーの団体として、らしい活動は何だということ。
には総括が必要だと思いましたので、その総括として
それに伴ってまた会員の援助技術を含めた専門性を上
の位置づけでそれをまとめさせていただきました。
げていくということは必要だろうというふうに考えま
この中は、この当協会の活動の現状は3つの段階に
した。そしてこの丸が坂を上がっておりますけれど
分かれています。まず、私たち協会の道民会員にとっ
も、Aが平成16年の12月に今後の協会運営に関わる行
て今後の協会の姿を明確に更に示す必要がある。そし
動計画書というのを策定して総会の議案書などにも去
てそれは研修活動を充実すること、地域活動を推進す
年の釧路大会の時にも資料として載せております。そ
ること。この2つが今後の協会活動について必要であ
の2年後に当協会の活動の現状、これも昨年の議事録
るというふうに大きく定めたわけです。さっきの行動
にまとめておりますけれども、こういったものを2つ
計画書では6つでしたけれども、6つは重要ですが、
目に策定を致しました。そしてその同じ昨年度にグラ
更に特化して2つをまずやる必要があるというふうに
ンドデザイン検討課題、4つの課題というものを作り
考えました。ただこの地域活動をただ推進するだけで
まして、昨日総会がありましたけれども、昨年度取り
はなくて、それを達成するとどんなふうになるのかと
組んで参りました。そういった背景はそういった流れ
いうものも描かなければならないと考えましたので、
で「A」「B」「C」というふうな段階を経て今やって
活動目標というものもこの当協会の現状というレポー
きているというわけであります。
トの最後にまとめています。つまりこれは最後どうい
最初に「A」を少しかいつまんでお話ししますと、
うことが書いてあるかといいますと、私たちの協会は
この5つの柱を基に今後の協会活動を、協会運営に関
今までは広げる活動、いわゆる認知と普及というふう
する課題を取りまとめたものです。そしてこれは位置
に整理を致しました。ここにはちょっと載っていませ
づけとしはこの協会活動や運営の検討課題を取り組み
んけれども。そしてそれを更に踏まえてこれからの協
たいという宣言をしたものにとどまっています。そし
会活動は、専門家と協働であるというふうに位置づけ
てこれからが取り組みの、この行動計画書というの
ました。つまり、ソーシャルワーカーの独自性、他の
が、すいません、6つの柱になりまして、これが赤字
職種ではないソーシャルワーカーしかできないものが
で書いたとこでありますけれども。社会活動が大事で
あるはずで、それは私たちずっと思っているわけで。
ある。研修教育の充実化が必要である。組織運営体制
でも思っているだけではダメで、昨日の奥川先生のお
もこの時代の流れに応じてタイムリーに動ける体制づ
っしゃるように、伝え、言語化する必要があるという
500万
くりが必要である。また協会の予算、非常に1,
ふうに思いました。そしてそれとリンクする形で私た
近いあの事業執行の予算が毎年予算付けされています
ちが行う活動には重要なものとして地域活動がある。
けれども、何に、どう使うのか。まあ見直しをする必
そういったこの3つの段階でこの当協会の現状をまと
要があるだろう。あと前青木会長もお話いただきまし
めてその50周年以降の活動目標はあの定めてこれが、
た、職業倫理は大事にしなければならないというこ
まず目標を定めたわけです。ブルーのものが今までス
と。6番目はあの3番と非常に似通っておりますけれ
ローガンとして当協会で謳われてきた会員1人ひとり
ども、その運営方法をもっともっと、えー出来れば外
が作り上げる協会活動。会員1人ひとりが何らかの役
注できるものは外注して、私たち自身の業務負担を減
割を担い、1人ひとりが少しずつでも力を出して協会
らす必要があるというふうに考えました。ちなみにこ
の活動を支えていこうというスローガンでした。更に
こは、歴代の会長さん方やベテランの方の献身的な努
これを発展させて北海道医療ソーシャルワーカー協会
力によって実は協会活動は支えられてきて、また会員
は会員が自ら実践力を高められることを支援し、且つ
数が増えることによってその献身さ、ご自身の時間を
地域住民の自己実現を側面から支援する活動を行うの
割いて協会活動の色々な準備をしていただく、そうい
が、私たち北海道医療ソーシャルワーカー協会の活動
ったものは実はパンク寸前になってきている。実はも
の目標ですね。協会の目標は規約で決まっております
うパンクしていて、何とか点滴をしながらやってい
ので、活動の目標というふうに考えています。
る、そんな現状でありました。そして次2番目に、昨
その活動の具体化、これが皆さん言っていただいて
年総会議案書の資料としてもお出ししましたけれど
いる「グランドデザイン」というものです。このグラ
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (35)
ンドデザインというのは、ここに小豆色の白抜きで書
などがやはり必要だというふうに思っています。まあ
いた4つの具体的な達成目標のことを、私、指してい
事業の再編成についてはこういった、まあ事務局や財
ます。色々なこう捉え方をされている方がいるかもし
務を中心としてそういった取り組みをして、会員資格
れませんけれども、今日が良い機会だと思いましたの
についても昨日総会でも色々ご意見をいただきまし
で、この4つであるというふうに明らかにさせていた
た。そういったものにも取り組んで参ります。そして
だきたいと思います。この4つの教育研修活動の充
今年度の具体的な取り組みというのは、この4つの達
実、会員の地域活動支援、再編成、効率的運営、こう
成目標、向かって右側に対して具体的取り組みは今年
いったものは先ほどお話をした活動目標から生まれて
度このように考えております。やはり1番今年度の大
更にこの4つを達成目標として具体的に取り組もうと
きなものは、私は生涯研修プロジェクトを推進するこ
いったことです。これも昨日の総会で、昨年取り組ん
とが1番重要ではないかなと思っています。これは再
だ成果についてはお話をさせていただいているところ
検になりますけれども、私たち北海道医療ソーシャル
であります。
ワーカー協会は、地域活動の推進と研修事業の充実、
この4つを具体的に書いたものです。これも今日の
この2つが当面あの是非力を入れて取り組まなければ
資料にはありませんけれど、実は昨年の釧路大会の、
ならない課題なのです。それがどういうふうになって
釧路大会ばっかり言って申し訳ありませんけれども、
いるか、この課題をどういうふうに捉えたらよいかと
この4つのうちの1つ目が、会員が自ら実践力を高め
いうのを、これはちょっと私の考えなのでなんですけ
られる教育研修体制の充実であります。この中で卒前
れども、私色々な機関紙などで協会活動とご自分の資
研修と卒後教育というふうに大きく分けました。特徴
質の向上というのは表裏一体であるというふうに書い
のひとつは、卒前教育にもきちんと力を入れていこう
てきました。今日、それは実は円環的な関係にあるの
ということです。医療福祉実習委員会が色々な活動を
だというふうに思いました。1番上の「協会事業再編
しておりますけれども、私たちが卒業後だけではなく
成」これはグランドデザイン検討課題を推し進めるこ
卒業前にも、その到達、卒業時にどういった知識や技
とによって、特に今申し上げました研修事業を充実さ
術そういったものを身に付けているかというものを明
せていきたい。その研修事業を充実させることによっ
らかに、私たちのほうから教育機関にも提案していく
て会員の援助の質を向上する。援助の質が向上すると
必要があるというふうに考えています。卒後教育とし
当然まずは、第一義的には研修を受けて資質が向上し
ては1~5までがありますけれども、そのうちの「1」
た会員ご自身の益になりますけれども、その会員が所
「2」「3」ですね、この辺については昨年度から検
属する機関に対しても良い影響がもたらせられると必
討を始めて今年事業として取り入れております。年間
ず、私は思います。良い影響がもたらせられると自分
研修計画の策定はけっこう前からやっておりますけれ
が所属する機関の役割というのを、今まで目を閉ざし
ども出来れば将来的には、支部の研修等も含めて、そ
て地域に向けていなかったものが、多く地域に向ける
ういった年度最初に、800を超える私たちの会員にお
ことが必要だというふうに、僕は必ず実感していただ
知らせ、示すことができればよいというふうに考えて
けるようになると思っています。そしてその地域活動
います。「講師団」
、これは昨日の議案書では「講師座
を協会が支援をさせていただきながら推進をする。そ
談会」という名前になっておりますけれども。そうい
うすると、じゃその地域に対して協会はまた何をすれ
った私たちの協会の研修の役割を担っていただける研
ばいんだというふうなテーマにまた戻ってくる。そう
修講師の方々の集まりを作って手当てをしていく必要
いう円環的な関係で私たちそういうスパイラルにこう
があるというふうに思っています。スーパーバイザー
上がっていくような、そういった活動が、過去を考え
研修の実施については昨年度から取り組みを始めてお
ることができると思うのです。つまり協会活動と毎日
りますけれども、そういったスーパーバイザーの手当
行っている業務というのは離れたものではなくて非常
ての検討というのも今年の検討課題になっています。
に密接な関係、それは前々会長の清水会長や前会長の
まあこういったまず研修体制の充実があるわけです。
青木さんなどが申し上げてきたとおりであるというふ
会員が行う、2番目の、「地域活動の積極的支援」
うに思っています。ちょっと長くなりました。申し訳
です。これはまた後で詳しくというか、あの何故その
地域活動が積極的に支援が必要かということは述べた
いと思いますけれども。そういった自主活動グループ
ありませんでした。
(36) No.28
座長【中平
ス タ デ ィ ー ズ
大悟氏】
2008年3月
たらいいものかと思案していた時に、レジュメに書い
関さん、ありがとうございました。これまで文章と
てあります東大病院の上田敏(さとし)先生がアメリ
か口頭での色々な説明があったグランドデザインを巡
カでリハビリテーション医学の勉強をされて日本に帰
るイメージが、かなり分かり易く整理をされて提起を
ってこられました。東大病院は国立病院ですからソー
されたかなと思います。50年の主な関わりの中の振り
シャルワーカーを直ぐに雇うことができず、「無給の
返りと今後の課題、北海道の会長経験者そして現会長
ボランティアで来てくれる人はいないだろうか」とい
から今ある程度提示をされたわけですが、これに更に
うことで、人を探しているという話と私が仕事を求め
全国的な日本との関わりという視点も含めて、最後に
ていることが一致し、上田先生との出会いになりまし
高田さんのほうからお願い致します。
た。それが今日の私の基本的なソーシャルワーカーと
してのスタンスに繋がり、先生に育てていただいたと
【高田
玲子氏】
感謝しています。上田先生は当時の文部省の方々に「ソ
高田でございます。協会設立50周年、誠におめでと
ーシャルワーカーを病院に置くことはできないだろう
うございます。この場で皆様と喜びを分かち合えるこ
か」というふうにお話をしてくださったようで、ある
とを大変嬉しく、また光栄に存じます。また日本協会
日調査官が2人来られました。そして「あなたの資格
に対しては日頃、北海道協会の皆様方から、多大なる
は」と問われた時に「ありません。教員の資格だけで
ご協力をいただきありがたく思っております。ここに
す」と答えると、話にならんということで、そっけな
登壇されている4人の方々とは長い間日本協会の活動
く帰られた記憶があります。その時初めて“資格”と
をとおしてご一緒させていただきました。常にサポー
いう言葉が私の中に大きく残りました。当時PTとO
ティブで大変助けられたことを感謝しております。
Tの学校が設立されて間もなくだったため、かれらの
昨日は記念誌をいただき、ホテルに帰り読み始めた
臨床実習のスーパービジョンはWHOから派遣された
ら興味深く、斜め読みでしたが読破しました。懐かし
外国の教員で、専門職を養成するその指導のあり方に
い方々のお名前が随所に出てきて、私は北海道にこん
びっくりでした。また、PT達が職能団体として日本
なにいっぱい仲間がいるのだという思いを新たにいた
理学療法士協会を立ち上げるそのプロセスを目の当た
しました。今日はどれだけお話できるか分かりません
りにして、「専門職はこうして育つのだなあ」という
が、50周年の喜びを分かち合いながら、皆様にエール
ことを実感しました。ここでの経験は今日まで私の中
を送ることができれば幸いだと思っております。
で活きています。
レジュメに「温故知新」という言葉を用いたのは、
しかし、いつまでも無給というわけにはいかなかっ
「今までの50年これからの50年」というサブタイトル
たので、レジュメの2)に書いてあります、当時電電
にぴったりだと考えたからです。それは協会の発展の
公社(現在のNTT株式会社)という、今日の座長の
ために過去を知り、その歴史に基づき新たな知識を得
中平さんが以前おられた職場でもありますが伊豆逓信
て進むということで、これから後に続く皆様方にその
病院にリハビリテーション科が開設されるのに伴っ
道を辿っていただけたら幸いだという思いの現われで
て、私が初めてのソーシャルワーカーとして採用され
す。
ました。ここで初めてお給料を貰えたのですが、やは
日本協会と私の関わりということですが、ここでち
り“資格は?”と問われた時に、ないのですよね。そ
ょっと個人的な私のソーシャルワーカーとしての歩み
のため高校卒業の初級公務員の給与体系にしますとい
をお話させていただきます。
うことになりました。そうして働き初めてから労働組
大学院時代、昭和42年の頃ですが、大学では「あな
合と一緒に運動して、職域の中だけの資格制度です
たがたはこれから日本の福祉を担う非常に大切な人だ
が、大学卒業の専門職として「医療専門業務職」とい
から頑張って勉強してください」と励まされました。
う、制度を作ってきました。ここでもまた、「資格」
若かったし、そう信じて、
大学時代勉強しなかった分、
のないことの情けなさを味わいました。
私なりにはストレスを感じながらも頑張って勉強し卒
3年間の勤務の後、私は関東逓信病院、今のNTT
業を迎える頃、就職活動を始めました。しかし就職先
関東病院に転勤になりました。暫くして社会福祉士法
は全くありませんでした。あれだけ「専門家になるの
及び介護福祉士法が制度化されました。その時の医師
だ」
、「日本の福祉を担うのだ」と言われていたのにも
である上司は、「よかったね。資格が持てるようにな
かかわらず、教育機関からの支援は全くなく、どうし
り、10円でもあなたの活動にお金がつくと、お金の入
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (37)
る道が開かれ、あとはその流れにのれるからソーシャ
てくれる人たちも現われ、日本医師会も理解を示して
ルワーカーが定着できるようになるね」と喜ばれまし
くれるようになり、医療ソーシャルワーカーの業務指
た。医師たちは、資格があれば点数がつくという発想
針の改定にこぎつけることができ、福祉職俸給表に国
で、よかったと喜ばれたのですが、実はその夢もあえ
立病院のソーシャルワーカーを位置づけることができ
なく消えてしまいました。医療機関のソーシャルワー
ました。この改定は医療機関のソーシャルワーカーは
カーは社会福祉士法の枠組みに組み入れられないこと
社会福祉を学んだ人がなることを明記した大変重要な
が判明したからです。でも私たちは社会福祉の仕事を
指針となりました。その流れを受けて前会長の中平さ
しているのだから国家資格の受験資格取得のための通
ん、そして現会長の笹岡さんがその路線を引き継いで
信教育を受けようと同僚と相談し、全国社会福祉協議
現在頑張っておられます。一言で言うならば、私の日
会の通信教育を申し込みました。所属が判ると、「医
本協会に対するスタンスは、「医療機関に福祉の専門
療機関は対象外です」とあっけなく断わられました。
職である社会福祉士を位置づけること」に尽きると言
ということで、受験資格を取ることさえ許されなかっ
えます。資格の無い身で仕事をしてきたせつなさを次
た時代でした。
世代にさせたくない思いが私の根底にあったのだと思
当時職場も資格取得ができなかったことを特に問題
います。
にすることも無く、雇用継続をしてくれて、現場で仕
これからの時代もこの課題は継続していくでしょ
事をさせていただきましたが、55歳で早期の定年退職
う。しかも社会情勢は年金や医療制度をはじめとする
をして、NTTの関連機関であるテルウェル介護相談
改革などで更に厳しくなるでしょう。その茨の道を皆
センターに転職致しました。このセンターは電話相談
さんは今も、これから歩まれることになります。その
が中心で、看護師、保健師が殆どの相談に対応し、私
ためには「信念を持って仕事に取り組んでいただきた
の役割はスーパービジョンの実施と予算措置を含むマ
い」という願いがあります。ではその信念をどのよう
ネジメントでした。この時期に精神保健福祉士法案が
に確固たるものにすることができるか、レジュメに第
浮上し、東京を中心とした多くのソーシャルワーカー
1、第2、第3というふうにまとめてみました。
たちが「どうしょう・承服できない」ということで、
第1は、2000年、私が初めて国際ソーシャルワーカ
反対運動が立ち上がり、私も参加しソーシャルアクシ
ー連盟(IFSW)の総会、カナダのモントリオール
ョンを行ってきました。結果的に精神保健福祉士法案
であったのですが、出席させていただいた時に国際ソ
は成立しましたが、私たちは信念を貫いて医療機関の
ーシャルワーカー連盟によるソーシャルワークの定義
ソーシャルワークの仕事は「福祉の仕事」であること
が採択されました。この定義を見た時には、本当に感
を一層確信したように思います。
動しました。是非とも英語と日本文とをつき合わせて
この反対運動の最中に大学に転職することになり、
読んでいただき、何回も何回もまたは一文、自分の気
反対運動を成功へと導くことができなかった責任と罪
に入ったところ、または好きな単語を拾って暗記して
滅ぼしとして日本協会の会長の任に着くことになりま
いただくと、自分が躓いた時読み返すことで何かが浮
した。反対運動をしたメンバーは厚生労働省と対立を
かんでくるというか、見えてくるような感じがしま
したわけですから、当然会長になった私は厚生労働省
す。ですから是非ともIFSWの定義を基盤にし、そ
にとっては覚えめでたくない存在で、最初はけんもほ
こに戻っていただきたいのです。
ろろの対応でした。そんな折、国立病院のソーシャル
それから昨年、ソーシャルワーカーの倫理綱領が日
ワーカー協議会会長の村中さんから国立病院のソーシ
本の4つのソーシャルワーカーの団体で制定されまし
ャルワーカーを福祉職俸給表の福祉職に位置づけたい
た。これも大変貴重で、素晴らしい活動です。これは
という熱い申し入れがあり、私はこの申し入れは医療
中平さんが会長の時にしていただいた大仕事です。是
機関にソーシャルワーカーを位置付けていく突破口に
非とも皆さんのケース記録の下に置いて困った時に、
なると信じ、この機会を絶対逃すべきではないと決意
パワーが欲しい時に見ていただきたいと思います。
し、活動に入りました。
又、今年度6月の日本協会の総会では医療ソーシャル
しかし厚生労働省との交渉は厳しいものでした。
「あ
ワーカー倫理綱領という行動綱領が発表されます。こ
なた方は日本医師会と喧嘩をする気か」とか、「病院
れが採択されると私たちの行動綱領の基本ができたこ
のスタッフは医療職でなければならない」などと言わ
とになります。草案は読ませていただきました。ホー
れたこともあります。しかし色々活動する中で応援し
ムページでもオープンになっており、意見集約も行わ
(38) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
れています。この行動綱領は非常に優れており、諸外
また今、地域連携室が広がりを見せており、ソーシャ
国と比べても劣らないものだと私は考えます。ソーシ
ルワーカーの存在が揺れ動いている現状があります。
ャルワーカーとしての信念を育む為に、IFSWの定
それをどう判断するか迷うところではありますが、大
義、倫理綱領、行動綱領の3点を常に心に留め、仕事
きな流れの中で、「ノーノー」と言ってばかりいては
に行き詰まった時、是非ともここに戻っていただきた
存在そのものが揺らぐことになりかねません。発想を
いものです。
変えてその組織の中に、ソーシャルワーク部門を作る
第2には、職能団体での仲間づくりはもう言うまで
とか、ソーシャルワーカーの存在を表示できるよう
もありません。時間が押しているのでレジュメをお読
に、院内に対してのソーシャルアクションを協会がサ
みください。
ポートすることもソーシャルワーカーの存在を見せて
第3には、広い視野と書きました。私が学生の時に
いくことになると考えます。
「ケースワーカーはグループワーカーになれないと
もうひとつ、「地域への働きかけをどう行なうか」
。
か、グループワーカーはケースワーカーになれない。
」
これはこれからの皆様方の課題になると思います。私
というような変な理屈があり、一体なぜだろうと不思
は今、保育園の保育士さんたちの研修をさせていただ
議な違和感がありました。要するにソーシャルワーク
いています。エンジェルプラン以降保育園は子育て支
の理論を縦割りで考えていた時代だったようです。し
援をすることになり、保育園は子供を預かるだけでな
かし今ではジェネラリストソーシャルワークの考え方
く地域の保護者に対してどのように関わるか、地域に
で、個別援助、グループワーク、地域への働きかけの
子育ての情報を発信することが求められています。そ
活動が単独に存在している時代ではありません。まさ
のためにはグループワークが有効だと考え発想訓練を
に私たちの目の前に現れる方たちは、様々なニーズを
しながらワークショップを行っています。例えば地域
持っている方たちであり、地域に私たちは目を向ける
の子育てしている親をどうしたら集められるか、どの
ことが大切になります。今年度のこの協会の活動方針
ようなプログラムを提供したらよいか、保育園から地
は地域活動を視野にいれてソーシャルアクションを目
域へ発信する情報にはどんなことがあるか、虐待防止
指していると私は受け取りました。地域社会の諸課題
のために何ができるかなど、課題を投げかけ、ブレン
に対して意見発表や具申をして、ソーシャルアクショ
ストーミング行います。こうした研修の積み重ねが次
ンをしたり、地域住民への啓発活動などしていくこと
第に地域社会への働きかけになるエネルギーになって
が重要であり、このことを期待したいと思います。
くれることを願っているところです。是非ともこちら
そして最後に北海道の医療ソーシャルワーカー協会
の協会でもこうした方法を取り入れ、地域社会への働
が全国の牽引する協会として活動していただきたいと
きかけでの中で何ができるだろうか、例えば介護して
いう期待を述べています。まず長期目標は、地域の中
いる方々のご家族への働きかけやサポートとか、また
で私たちの存在をきちっと位置づけることです。それ
は行政に対して意見具申や共に協働する課題の取り組
には1つひとつの短期目標を達成し、ステップアップ
みなど、私達の周辺には生活課題としての題材がいっ
していくことです。日本協会での経験として、厚生労
ぱいあります。是非とも自由な発想で、取り組んでい
働省と交渉する時に、病院に、「社会福祉相談室の設
ただきたいと思います。
置あり」とか、
「社会福祉士がいる」という表示が出
最後になりますが、「やらない」
、「やれない」ので
せるようにして欲しいと言ったことがありました。そ
はなくて、「まず出来ることをやる」ということと、
の時、「そんなとんでもないことを言って」と一笑の
時間もお金も割いて「自分に投資をする」こと、勉強
もと却下されました。でも私は地域の人たちが病院を
する仲間と繋がっていくことが大切になります。堀場
選択する場合、「相談室がある病院だったらかかろう
製作所の堀場雅夫氏は、仕事を成功させるには、面白
な」と思える、そういう情報はとても必要だろうと思
い仕事をするのか、面白く仕事をするのか、その2つ
ったのです。ですから「福祉相談室設置機関の表示」
しかないと言うのです。面白いと思ってやった仕事は
ができるといいのにと今でも思っています。これは例
必ず成功するというのです。私たちの仕事は消耗する
えばの例ですが、そのようにするためには、勿論法制
ことが非常に多いです。でも私がこれだけ長く続けら
的な制約や課題は多々あると思いますが、住民がそう
れたのはソーシャルワークという仕事が面白かったの
ありたいと望むような機運を盛り立てていくことは北
だというふうに思います。なかなか見えにくい仕事故
海道協会の力ならできるのではないかと思うのです。
にその仕事が利用者に、関係者に、心ある人に理解さ
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (39)
れたときの醍醐味は面白く楽しいものです。昨日の講
かに受け継がれ、そして更に大きく発展をしていくこ
師の奥川先生は「この仕事は他人の人生を借りながら
と、そしてこのテーマのすべての行き着くところは、
自分の人生を考えることのできる贅沢な仕事」と言わ
私たちの対象者である患者さん、家族、地域の方々に
れました。醍醐味と贅沢を味わえるこの仕事に、先ず
私たちの存在が活きる関わり、これを作り出していく
は信念を持って立ち向かっていただけることを心より
ことだろうという具合に思います。
願っております。
色々なお話の中で、明日からでもすぐやれることも
これからも皆様の益々のご活躍を期待しておりま
たくさんあると思います。例えば今、高田さんからヒ
す。どうぞ全国にこの北海道協会の活動とまとまりの
ントをいただきましたけれども、1つピーアール、こ
良さを伝えてください。そしてこの度の記念誌は全国
れも非常に重要だと思います。そういう意味では、こ
の会員に配ってあげたいと思うほど質の高いものだと
れから医療機関に情報公開制度が導入され、具体的な
思います。編集の皆様は大変ご苦労なさったと思いま
動きをしていくと思いますが、審議会の中で出された
すが、こういう貴重な財産をいただけたことを感謝し
メニューを見ますと、第1番目に相談室の存在という
てお礼を申し上げたいと思います。ありがとうござい
のが公表のメニューに入っています。この相談室はワ
ました。
ーカーの相談室とは限定していません。どういう意味
での相談室でも良いのだろうと思いますが、でも少な
座長【中平
大悟氏】
くてもそれは逆に限定してないから私たちは使えるわ
高田さん、ありがとうございました。
けです。病院の情報の最初に「医療相談室、ソーシャ
シンポジストの皆さんからそれぞれの発言をいただ
ルワーカー室あります」と、「こういうメンバーがい
き、フロアーの皆さんの中にそれぞれの新たな価値、
ます」というのを、病院に出させる努力は我われにで
知識というものでお受け止めいただいたかと思いま
きると思うのです。そのことによって医療機関も私た
す。時計を見ますと3分余りという非常に座長として
ちも存在を外にアピールしていく1つのテクニックが
は辛い、中途半端な時間しか残っておりませんので残
そこにあるかと思うのです。そんなことを常に情報を
念ながら、最初の予定ではフロアとの応答もしたかっ
キャッチしながら自己存在を主張していくということ
たのですが、簡単なまとめをして、申し訳ございませ
も、高田さんのお話の中で具体化できる課題かなと、
んがこのシンポジウムを終わらせていただきたいと思
ちょっと今思いました。
いますが。
その様なことも含めて、それぞれの中で皆さんがお
テーマにあります、「軌跡」と「伝承」という言葉
っしゃられた意味では、やはり関会長がまとめられた
は非常に象徴的な言葉だと思いますが、高田さんのほ
中にあった2つの柱、研修と地域活動の推進。特に研
うから「温故知新」のお話も出ましたけれど、やはり
修は清水さんのご指摘にもありましたように、ワーカ
前へ進むためにはこれまでを見直すということが、最
ーとしての機能を鍛えて、自分に何かひとつ自信の持
大のエネルギーではないかという具合に思います。
てる技術を持つということが非常に重要なポイントだ
協会という集団、全体は無論ですけれども、やはり
ろうと思いますし、青木さんのほうからもご指摘があ
その集団を構成している私たち一人ひとりがどのよう
った、それを集団でやっていく機能というのは協会の
に関わってきて、これからどうしょうかということを
重要な役割だろうということもありました。その様な
考えることが、今回のメインテーマを活かすことだろ
研修の問題、あるいは私たちの存在が単に医療機関に
うと思います。
とどまらず、地域に大きく関わっていくような活動も
これからの50年、今日参加していただいている皆さ
協会ということも活用しながら、それぞれの会員が活
ん、50年後と言うとフィールドにそのまま居るかどう
かしていける活動が必要だろうというような指摘だっ
か、70、80を超えている年齢かと思いますので、その
たろうと思います。その様なことで皆さんの中にそれ
ままフィールドに居るかどうかわかりませんが、少な
ぞれ受け止めていただいた課題があろうかと思います
くともその時に自分たちが作り上げたものが続いてい
が、最後に記念誌の中にある言葉に触れて締めくくり
るということを思って維持していく努力は、やはり義
としたいと思います。
務としてあるのだろうという具合に思います。皆さん
この北海道協会設立の時に、準備をするための目的
がフィールドで関わっていける時間が限られているか
としてこういうことが触れられています。「この仕事
もしれませんが、必ずそれはこれまでと同じように誰
は医療社会事業家自身が自ら努力して進めていかなけ
(40) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
れば、我が国に根付かず正しい発展も望めないであろ
う」と、この認識がこの協会を作ったわけです。これ
は50年100年というスパンの中でも常に変わらず、私
たちの中に求められているテーマだろうという具合に
思います。そういう意味で、50年前に思いを致しなが
らこれからの50年、皆さんの1人ひとりの中でもう1
度見つめ直す機会として、このシンポジウムが何らか
の影響を与えて行くことができれば、非常にうれしい
ことだと思います。
これで、このテーマに基づくシンポジウムを終わら
していただきます。
どうもありがとうございました。シンポジストの皆
さん、ありがとうございました。
司会者
シンポジストの皆様、座長の中平様、ありがとうご
ざいました。もう1度、盛大なる拍手をお願い致しま
す。
それではここで休憩のお時間とさせていただきま
す。
おわり。
2008年3月
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (41)
支部で取り組む初任者研修
第二報
~地域教育の意義 本研修が参加者にもたらしたもの~
北樹会病院
南札幌脳神経外科
北海道社会保険病院
北翔大学
北樹会病院
札幌ライラック病院
1.はじめに
2005年度、中央A支部では北海道医療ソーシャルワ
ーカー協会入会2年目までの初任期の支部会員を対象
とした研修会を通年で行い、その取り組みについて昨
山田 英人
菊池 要子
佐藤奈津子
寺田
香
巻
康弘
山崎雄一朗
#講義中心ではなく、演習を中心とした「体験的会
得」を目指す
4.研修運営
1)受講対象
年度の本学会に於いて報告した。第一報では支部内の
今年度から受講対象を中央A支部に限定せず中央5
限られた条件下で行うことによる「地域教育」の特徴
支部へ拡大し、入会1年から2年目の会員20名を定員
的な成果とそれ故の限界が考察された。それらを踏ま
とした。
えて2006年度は、昨年度と同様の枠組みを柱にし、研
2)実施回数
修運営の在り方を見直すとともに、プログラムは同様
の内容を志向しつつも若干の修正を加え実施した。
2.目 的
本研究では参加者・所属機関の上司等を対象とした
2006年6月から2007年2月までの全8回実施。
3)受講条件
参加募集時に、全研修会への継続的な受講を条件と
した。
4)プログラム
アンケートおよび参加者エンドミーティングでの振り
エンドミーティング含め全8回実施。全体のプログ
返りから、各々の研修に対する意識等を抽出し、それ
ラム構成及び担当講師などは以下の通りである。各回
らを基に以下の3点を通じて初任期ソーシャルワーカ
の意図・方法・内容・結果については資料1に示す。
ーを対象とした研修会の持つ「役割や意義」について
明らかにする。
!初任期ソーシャルワーカーに本研修会が及ぼした
影響や研修効果
"所属機関からのサポートの実情
#所属機関が本研修会へ期待するもの
3.研修の枠組み
研修の枠組みは、前回に引き続き、以下の3点に留
意し、研修プログラムを作成した。
!2006年5月30日
「ソーシャルワークとは」
「コミュニケーション!:聴く」
気づき」に焦点を当てる
点を置く
寺田
講師
山崎
講師
佐藤
講師
巻
#2006年8月23日
「コミュニケーション":話す」
$2006年9月21日
「ソーシャルワーカーと組織」
%2006年10月18日
「コミュニケーション#:みる~自己観察~」
!今すぐ使える知識・技術の習得よりも、「本人の
"専門職に必要と考えられる「基礎力」の向上に重
講師
"2006年7月11日
講師
菊池
講師
菊池
&2006年11月29日
「コミュニケーション$:考える」
'2007年1月18日
(42) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
「ソーシャルワーカーの価値と倫理」講師
寺田
2008年3月
下さい。
!2007年2月8日
3)本研修会が貴院のソーシャルワーカー
「参加者とのエンドミーティング」
の成長に寄与していましたか。
#-1
5.調査概要
初任期ソーシャルワーカーの教育を行うに
あたって、研修会を活用していますか。
全研修会終了後、研修の総括と研修に対する意識調
1)どのような研修会を活用しています
査を目的として参加者へのアンケート、及びエンドミ
か。(複数選択可)
ーティング、上司等へのアンケートを実施した。
・院内研修(部署内)
1)参加者アンケート
・院内研修(病院全体、法人全体等)
対
象:初任期研修会
調査期間:第7回
参加者 20名
・本研修会
初任期研修会終了後(欠席者に
・道協会の新人研修会
は、後日郵送またはe−mailにてアンケー
・他職能団体による新人研修会
ト用紙を送信。回答はFAX、e−mailに
・道協会の研修会(新人研修会を除く)
て返送。
・他職能団体による研修会(新人研修会
調査方法:質問紙法(質問には選択肢を設けず、全
を除く)
て自由記述とした。
)
2)院外の研修会で初任期ソーシャルワー
回 収 率:100%
カーに「学んでほしい」と期待するこ
・アンケート項目:
とは、どのようなことですか。研修会
"
本研修会をどのように知りましたか。
に期待する効果についてお聞かせ下さ
#
参加しようと思った理由について教えてくださ
い。
い。
$
%
3)参加者インタビュー
あなたの職場では、研修会参加への理解や配慮
実 施 日:2007年2月8日
はありましたか。
対
'
エンドミーティング参加
調査方法:グループインタビュー形式
とですか。
&
象:17名(第8回
者)
本研修会に期待していたことは、どのようなこ
本研修会を継続参加したことは、現在のソーシ
(インタビューについては本研修のみに使
ャルワーク実践において、どのように活かされ
用することを事前に説明し、対象者の承
ていますか。
諾のもと録音し、逐語録に起こした。
)
今後より良い研修会にする為に、あなたの意見
そ の 他:17名を3グループ(1グループ
名)に分け実施。インタビュアーは研修
をお聞かせください。
会講師と担当者が担う。2年目の参加者
2)所属機関等上司アンケート
対
象:初任期研修会
5~6
参加者所属機関上司 17
(受講者)3名を各グループに分け、ま
機関
た参加者(受講者)の自由な発言の妨げ
調査期間:2007年2月6日~16日
とならないよう、所属機関の重複しない
調査方法:質問紙法(質問には選択肢と自由記述と
よう配慮した。
した。
)
回 収 率:70%(12機関から回答)
所要時間:約1時間半
・インタビューガイド:(参加者アンケートを基に作
・アンケート項目:
"-1
"-2
この研修会について貴院の職員が参加して
"
職場の配慮を具体的に教えてください。
いたことは、ご存知でしたか。
#
期待していた「参加者とネットワークをつくる
参加者から、本研修会をどのような研修会
であったか、聞いていますか。
"-3
成)
こと」はどのような意味ですか。
$
1)研修会についての内容をどのように聞
いていますか。
2)本研修会についてのご感想をお聞かせ
具体的にどのようなスキルアップを期待してい
ましたか。
%
「普段学べないことを期待していた」ようです
が、それはどんなことですか。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (43)
!
継続参加できた理由はどのようなことですか。
ルワーカーの「価値・倫理」
の大切さに改めて気づき、
"
研修会参加により、変化したこと、職場で活か
「流されそうなところを振り返ることが出来た」とい
せたこと、プラスになったことを教えてくださ
った効果を感じていた。
い。
・受講者より#
#
どのような参加姿勢で研修会に臨んでいました
か。
$
「先輩ソーシャルワーカーと受講仲
間の存在」
「上司以外の先輩ソーシャルワーカーの話は刺激
他の参加者のことを意識することや、プレッシ
的」であり、「よりサポーティブ」で「共感的」であ
ャーに感じることはありましたか。
った。研修では「できなければ駄目」と指導を受ける
ことは無く、「安心できる気持ちになれた」や「明日
6.結 果
から頑張れる気力ができた」「元気になれた」「前向き
アンケートやインタビューから得られた回答から、
になれた」
。
以下のようにカテゴリーに大別することが出来た。
受講仲間は、他の医療機関や施設の社会資源の情報
尚、アンケート、インタビューの回答の詳細について
等「自分の知らないことを知っている」存在であり、
は資料2をご参照願いたい。
一方ではその情報を比較・確認し「このままではいけ
受講者を対象とした調査からは以下の3点が挙げら
れる。
・受講者より!
ない」という危機感を感じさせてくれる相手でもあっ
た。受講者同士で「悩みの相談」をし、「同世代の実
「スキルアップ・すぐに仕事に活か
情を聞くことで安心する」といった「精神的なつなが
したいこと」
り」を感じており、「みんなに会いたい」という思い
まず、「面接が上手くなること」という漠然とした
が継続参加を支えたと同時に講師等、先輩ソーシャル
感覚があることが分かった。実務の中では、「わから
ワーカーの意図的な関わりは明日へのカンフル剤とし
ない言葉に舞い上がってしまう」「長い面接を切るこ
て効力を発揮していた。
とができない」等の問題状況があり、今困っているこ
次に、所属機関からのアンケート結果から、以下の
とを解消する策が「すぐに活かせること」であり、そ
3点が挙げられる。
の思いが「面接技術の向上」のイメージに繋がってい
・所属機関より!
「上司の対応」
た。本研修会を通じて「ソーシャルワーカーの基礎」
上司らは本研修会の存在を全員理解しており、研修
「倫理・価値」「ソーシャルワーカーとして仕事を続
参加に際しては、「早退の許可」や「業務を代わる」
けていく上で大切なこと」を学び、他の参加者や講師
など配慮している機関が多数あった。上司らが研修内
等の考え方を聞くことで、「将来的にも仕事をする上
容に関して報告をさせることにより、「職場で取り入
で大切な価値観や視点を学んだ」「苦しい時には答え
れて貰えませんか?」という初任期ソーシャルワーカ
がほしくなったが、答えのある仕事ではないことが分
ーの提案や、「あなたが学んで持ち帰った事を職場で
かった」と、ソーシャルワーカーとしての自分を客観
参考にしよう!」という上司の言葉を導く題材ともな
的に見ようとする意識が芽生えた。「ソーシャルワー
り、「上司との意見交換のきっかけ」となっていた。
カーとして仕事をする上で大切なことへの気付き」を
・所属機関より"
「研修への期待」
得て、迷いながらも「まずは落ち着いて話を聞いてみ
初任期の研修で得てほしいことは、「専門家として
よう」「分からないことや、困ったことがあっても焦
の価値・倫理・態度・考え方」
、「学ぶことの大切さや
ってその場ですぐに解決しようとしない」と思える変
学ぶ姿勢」のように、体験を通じて得られる研鑽や、
化が語られた。
「組織内では伝えきれないことを補う」という期待が
・受講者より"
「普段学ぶことが出来ない考え方」
多くを占めた。また、「仲間を作る」
、「悩みを共有す
「ソーシャルワーカーとしてどう生きるか?を学ば
る」場を通じ、「バーンアウトを防ぐ」効果や、
「日々
なければいけない」と思っているが、職場の上司から
の業務へのモチベーションや困難へ立ち向かう力を与
は「行動についてのアドバイスは貰えるも、基礎的な
えられる」等、体験することを通して得られる研鑽や
話までには行かず」
、業務の中では「考える余裕も無
情緒的支援を重視したものが多くを占めた他、「組織
い」状況の中で取り組んでいる。研修会が、自分自身
内では伝えられない(伝えきれない)ことを補う」と
の業務について立ち止まって考える機会となり、「普
いう期待も高かった。
段学ぶことが出来ない考え方」と感じているソーシャ
・所属機関より#
「研修への評価」
(44) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
実際に得られた効果では、「受講仲間との交流やネ
また、本研修会では「地域教育」という発想から、
ットワークの形成」
、「他の新人と共に学ぶことで、様
身近な会員が講師を務め運営する形態をとり、これが
々な視点があることを理解した」「悩みや不安解決の
研修効果を高める一助となっていた。職場内と他機関
糸口となった」と視野の拡大や、考え方のヒントを得
の身近な先輩ソーシャルワーカーのスーパービジョン
たことが挙げられた。「知識向上」
、「話し方や聞き方
が有機的に作用することにより、1人の初任期ソーシ
が活かされている」といった知識・技術の獲得や、「日
ャルワーカーの成長を地域全体で見守り、教育するシ
々の業務の振り返り」
、「利用者と向き合うときソーシ
ステムが構築される。本研修会の目的としている、
「日
ャルワーカーとしての考えを持てるようになった」と
々のソーシャルワーク実践に立ち向かう力を醸成す
する意識の変化に寄与したとの評価も受けた。
る」には、職場内教育と職能団体研修が連動し、相補
7.考 察
1)社会的支持
同世代との「意見交換や悩みの分かち合い」は、「気
持ちのリセット」に効果であると共に、「精神的な繋
がり」を強化し、力を共に得ようとする連帯感が醸成
された。
的役割を果たしていく必要があり、研修会への継続参
加を保障するための、所属機関の協力や理解が不可欠
である。
8.結 論
専門性が未確立な初任期ソーシャルワーカーの成長
を促すには、価値を通じて「考える力」を育むプログ
研修会での講師や先輩ソーシャルワーカーからの
ラム、並びに社会的支持が保障された研修環境が有効
「否定されることなく考え方の整理や裏づけを得、参
であり、あわせて所属機関との相補性が極めて重要な
加者自身が納得できる」といったサポーティブな関わ
意味を持つ。
りにより、失敗を恐れずに意見を述べることが可能と
なり、「自ら考え・語る」という重要な学びが生まれ
た。この体験が「承認されて自信を持つ」という変化
を受講者にもたらし、「能動的な継続受講」や「明日
への活力」
に対し、
有効に作用していたと考えられる。
2)即物的期待から根源的価値の追求へ
本研修会は参加者にとって、改めて自己の実践の意
味を問い直し、考える場となった。当初は面接技術向
上への期待が強かったが、研修の過程を通じて日々の
業務では見失いがちだった「価値」の存在に改めて気
付き、次第に意識化されるようになっていった。日々
の面接の結果を求めるだけではなく、実践の根底をな
す価値を振り返り、強化することが、将来にわたる長
い成長の過程においては重要であり、ソーシャルワー
カーとしての基礎的能力の獲得が可能になると、自覚
を促した。
3)研修と職場の連動による地域教育
上司らは「ソーシャルワーカーの専門性における価
値理解」
、「臨床力の向上」
、「サポーティブな関わり」
といった点に関して、職場内教育においては限界があ
るとし、研修に補う働きを求めていた。特に昨今、職
場内スーパービジョンでは、業務の効率的遂行のた
め、管理・教育的側面が優先される状況が見られる。
「支持的機能」
の補助は、上司から多くの求めがあり、
本研修会が果たす重要な役割の1つと位置づけられて
いた。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (45)
資料1
中央A支部 06年度
第1回:5月30日
初任期研修会
テーマ:ソーシャルワークとは
参加者:19名
プログラム内容
担当講師:寺田 香
目
的
1.専門職としてのソーシャルワーカーの意識形成をはかる。
2.新人ワーカーの現状を共有する。
内
容
KJ法を使用し、日常業務の中で「ソーシャルワークを行なった」と感じる場面を書き出し、グ
ループで分析・討論する。
結
果
「ソーシャルワークを行なった」場面についての様々な見解があることを理解し、それぞれの「価
値」を尊重して関わることこそが、ソーシャルワークの基本となることを体験した。新人ワーカー
の業務状況を共有し、自分と同世代のワーカーの実情を理解することを通して、精神的な繋がりを
得た。
第2回:7月11日
テーマ:コミュニケーション!:聴く
参加者:19名
担当講師:山崎 雄一朗
目
的
相手の話の内容や気持ちについて、自分の先入観や価値観に左右されることなくどれだけ正確に
把握しているかについて気づき、また『聴く』とはどういうことか学ぶことにあった。グループワ
ークでは、!聞き手の反応、"伝達内容の理解、#相手の感情の理解、$相手の枠組みで捉えるこ
との理解、%自己開示の促進、以上5点を目的とした。
内
容
4人のグループに分かれ、話し手・聞き手・観察者を各自役割交代しながら、身近な題材をもと
に会話に一定のルールを設けながらグループワークを実施した。できるかぎり参加者自身が体験し
て気づいたことをセッションごとにグループで話し合ってもらい、
『聴く』ことの難しさについて
認識を深めてもらうことを意図した。
結
果
体験的に『聴く』ことを学習してもらうことにより、
『聴く』と『聞く』の違い、また『聞くふ
り』との違いを理解ができるよう心がけ、自分自身の『聴き方』と同時に『話し方』を振り返って
もらった。
第3回:8月23日
テーマ:コミュニケーション":話す
参加者:24名
担当講師:佐藤 奈津子
目
的
1.コミュニケーションの基本である「言葉」に対する意識を高め、
「言葉」の持つ意味、力につ
いて理解を深める。
2.積極的コミュニケーションとしての主張行動を会得する。
内
容
主張行動の概要についてレクチャーを受け、自分自身のアサーションの度合いを確認する。論理
療法を理解することにより、自らの中にあるイラショナル・ビリーフの存在を振返る。グループワ
ークでは、職場や私生活における「主張できなかった場面」で主張行動を取ることにより、自分自
身や相手の感情を考察し、新しい気付きを得る。
結
果
主張することも主張しないことも自身の選択であるという、積極的コミュニケーションの考え方
を身につけた。イラショナル・ビリーフにより抑圧していた主張を展開する経験を通じ、
「伝えて
みる」ことの価値、
「伝え方の工夫」の重要性を理解した。
第4回:9月21日
テーマ:ソーシャルワーカーと組織
参加者:19名
担当講師:巻 康弘
目
的
1.自らの組織の理解
2.組織構成の理解。
3.SWの定義の確認
(クライエントニーズと組織の間に葛藤が生じるのは当然との理解)
。
4.医療機関組織の特性理解。
5.1.2年目の達成目標としての「困ったことを適切な手段で報告が出来る」ことのトレーニン
グ。
内
容
1.ロールプレイ
(学生が見学に来た場面で自らの組織についての説明)
。
2.所属組織について知りうる情報を記載
(あらかじめ設定した項目について記載)
、記載後グルー
プで読み合わせ。
3.組織論講義、人と環境の接点に介入するソーシャルワークについて講義。
4.現在の葛藤する内容や、明日取り組むことを具体化し、グループで説明。
5.全体共有し、講師・ファシリテーターからのコメントを実施。明日取り組めることについての
共有。
結
果
組織との関係の中で、葛藤を生じている会員も少なくなかった。しかし、漠然としていたり、解
決困難に思えたりしている状況がうかがえた。研修を通して、組織を理解する上での項目理解や、
葛藤が何故生じるかについての理解が進んだのではないか。その中で、1.2年目に必要な力は、
下記の点であることを確認した。!抱えた葛藤や課題はそのままにせず相談する。"的確な表現・
手段で部門内コミュニケーションの場で業務上課題として明らかにする。#他部門との課題は、直
接折衝すべきか否かを理解。不明な場合は上司に相談・報告。$自分・自分の職場で解決しない場
合は、スーパービジョン・コンサルテーションを受けられる人を見つける。
(46) No.28
第5回:10月18日
ス タ デ ィ ー ズ
テーマ:コミュニケーション!:みる~自己観察~
参加者:17名
2008年3月
担当講師:菊池 要子
目
的
1.ソーシャルワーカーは職務上、意図的にクライエントと関わり、コミュニケーションを図る必
要があることを意識化する。
2.コミュニケーションには「すれ違い」が生じることを知るとともに、
「言葉のもつ意味/力」
の重要性を理解する。
内
容
グループワークを通じて、表現方法の多様さと受け止め方の多様さを知るとともに、互いの共通の
認識を形成することの難しさを知る。また、自身の考え方や表現方法に癖があることに気づく。
結
果
「分かり合う」ために、意図的に言葉を選択し、表現することを改めて体験することにより、
「何
となく」コミュニケーションをとっていた自分を自覚し、意図的なコミュニケーションを意識する
ことの重要性を認識した。
第6回:11月29日
テーマ:コミュニケーション":考える
参加者:18名
担当講師:菊池 要子
目
的
ソーシャルワーカーが情報を得ようと考える理由(なぜ尋ねるのか?)を意識化することで、意図
的に面接を行うことの重要性を学ぶ。
内
容
「情報収集とアセスメントとは」についてレクチャーの後、架空の事例を元に、各自が必要と感じ
る情報を書き出し、それを題材にして「何を聞かなければいけないのか?」
「何のために聞くの
か?」についてグループ及び全体で分析・討論を行なった。
結
果
専門的なコミュニケーションはどれも目的があり、情報収集はそれと関連していなければならない
ことを意識化した。ソーシャルワークとは常に意図を伴ってクライエントに関わる行為の積み重ね
によって成り立っていることへの考察を深めた。
第7回:1月18日
テーマ:ソーシャルワーカーの価値と倫理
参加者:17名
担当講師:寺田 香
目
的
・「差別する」
というその行為に加担している
(もしくは加担しうる)
状況をひも解くことによって、
実践の基底を成す「価値」や「倫理」についての考察を促す。
内
容
『多分私はしていない
(はず)
』の「差別する」という事象が、実はいとも簡単に身近で発生しうる
構造を分析し、自己の意識の中で差別を形成する要因について考察した。
結
果
自分の内側に無意識に形成されている「差別する」構造を自覚することによって、自分自身の「価
値」を外在化して意識することや、その「倫理」を考察していく糸口を提供し、日々の実践の中で
改めて考えを深めていく出発点を提示した。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
イメージすることは面接技術の向上
資料2
'
本研修会開催をどのように知ったか
業務の振り返り、見直し
・
上司や、支部研修部からの案内によって
"
・
(
学習効果の期待(ソーシャルワークの理解、ソ
ーシャルワーカーのスキルアップ、ソーシャルワ
・
・
)
日常の業務に役立てる、仕事ですぐ役立つこ
交流、ネットワーク作り
とができる、業務に反映できることを期待
・
他の参加者との職場、業務について情報交換
昨年と違った考え方、受け止め方仕事への活
・
横の繋がり、顔を繋ぐ場
※
交流、ネットワーク、横の繋がりへの期待(先
ネットワークつくりの意味
・
輩、他支部の同期とのネットワーク)
事の相談をしやすい
ことの期待
#
他施設の情報
日常業務の見直し、振り返り
・
具体的な調整
早く帰らせてくれた
・
仕事を代わるなどの配慮
・
上司等への内容の報告(研修内容共有を実
同年代の仲間/悩み相談/精神的つながり/
気軽に話せる/気持ちが軽くなる
流されがちな気持ちのリセット
施)参加の為、早退、業務終了を早めること
'
・
病院車の利用
うらやましい
・
後押し
※
2年目の参加者:
昨年と違った「考え方」「感じ方」への気づ
どんどん参加するように(参加の勧
き(業務の振り返り、自分を見直す)
め)
(
1年目の参加者と交流を深めることにより、
消極的配慮
・
考え方の違いを知る
自由/自分次第/参加すべきだが院内の事
(業務・研修・会議等)が優先
・
%
SW実践への影響(どう活かされているか)
&
参加する場合は参加者の自己決定、自己責任
業務の振り返り(日々の業務の反省)
・
の上で認める
$
スキルアップ、知識、技術を学ぶ/習得するこ
・
大学での学び→職場で実践→研修で振り返り
・
業務の中味の確認―できているかどうか職場
と
・
業務を客観視することができた。仕事を見直
す機会だった(意識化)
研修会への期待について
&
情報網の拡大(情報交換)
他参加者の状況を知る(自分と比較)
参加の奨励(支持的な姿勢)
・
話し相手/悩み・知識等の共有仲間として
(横の繋がり)
・
・
では自分で上司に聞かない限り分からない
コミュニケーション能力、ソーシャルワーカ
・
ーとは何か
ソーシャルワークについて考える場、きっか
けとなる
'
・
面接技術
・
業務で得ることができないこと(普段学べな
点への気づき
いこと)
・
・
即物的な技術の習得
考え方の変化、広がり、意識の変化、自らの欠
参加者、講師のソーシ
ャルワーク業務についての情報
※
他の病院について知る機会
仕事のやり取りがしやすくなった
職場の研修参加への配慮
&
社会資源として
相談がしやすい関係/知っている人の方が仕
他の職場の機能、悩みなど、意見交換ができる
(
普段話せないこと、職場で話せないことを参
加者と話し合う/ディスカッションの場
かし方の会得の期待
'
自分の考えに対し、幅を持つ
悩みの解消の場としての期待
ークとは何かを学ぶ為)
・
ソーシャルワーカーとしての今の自分を振り
返る
参加理由、動機
&
焦らず
人の話が聞けること
1.参加者に対するアンケート及びインタビューから
!
No.28 (47)
具体的なスキルアップとは?
すぐにでも活かせる面接技術を学びたかった
が、実際の研修はもっと基礎的なこと
・
研修会で学んだことが、そのまま答えではな
かったが、実践場面で困ったときのヒントと
(48) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
なっていた
・
息抜きのような感覚/気持ちが楽になる安心
・
自分が何をしていいか見失ったときに振り返
できる場/元気になれる/明日から頑張れる
・
悩んで苦しいときには答えがほしくなった
・
前向きになれた
が、よく考えると答えがある仕事ではないこ
・
業務で落ち込んでいても頑張ろうという気に
り、考えることができるようになった
気力が出てくる。
とが分かった
・
・
なれた
面接で分からないと言えずにいたが、グルー
・
楽しく参加できた
プワークで訓練され言えるようになった
・
いつも仕事のことが頭から離れず、研修では
面接で分からない言葉が出ると舞い上がって
直接考えなくて済み、気持ちが楽
いたが、まず聞いてみようと少し落ち着ける
2)支持的かかわりから発生する教育的効果を得
ようになった
※
ること
倫理・価値の大切さ
・
・
将来的にも仕事をする上で大切な価値観や視
・
・
価値と倫理を学びすぐには仕事に取り込めな
・
自己世界の拡大(普段学べないこと)=職場
目線を合わせてくれてい
講師のサポーティブなかかわり/責められな
くて安心
内で得られないこと
・
講師に対し親近感
た
いが大切さを分かった
※
職場での落ち込み、研修参加で「そうじゃな
いのか」と気持ちが楽になった
点を学んだ
・
こういう考え方だったのかなという新たな発
対講師というより対参加者という状況で話し
やすかった
見
※
プレッシャーはなかった/失敗を恐れずに話
・
職場には先輩が1人/研修で視野が広がる
すことができた
・
職場だけではない、別な(いろいろな)考え
自分の気持ち・考えを語れた
・
・
※
を学ぶ
3)人的交流/ネットワーク形成に期待
自分にプラスされ幅が広がる/上司とは違う
・
みんなに会いたい/1人ではないという安心
刺激を得る
※
2年目:去年の内容と比較しながら、自分の
想像力の広がりとその必要性の自覚/知ろう
経験と照らし合わせ、業務を振り返ることが
と思わなければ知れない、面接で心がけるよ
できた
うになった
初心に帰る、自分自身の見直しとなり、さら
意図的実践・具体的な知識・技術の習得・実
なる努力への意識する場となった
践
・
共感などの返し方を使用
・
アサーション
・
去年学んだことを再度振り返る
!
研修会の今後について
"
病院や上司へ思っている事を伝えていったら
内容について
・
いいか考えることができた
・
意識的に要約―実際に言葉にすると違うこと
・
・
・
して話す
・
実践…うまくできないが
・
機感」を得た刺激になった
研修会参加によって、明日へのカンフル剤とな
1)リフレッシュ効果(継続参加できた要因)
事前にテーマだけでなく、内容や研修会の筋
書きを伝えてほしい
1年目との比較、去年の2年目との比較で「危
った
前回の内容が、業務の中で活かすことができ
たか発表する
言いたいことを相手に伝わるよう話すことを
・
グループワーク、ディスカッションに時間を
割いてほしい(参加者との悩みの共有)
説明など、相手は分かっていないことを意識
・
ロールプレイ、スキルアップの内容(即物的
な内容を求める声)
、事例研究
が多い
$
2008年3月
医療分野のワーカーのみだったので、他の分
野のワーカーの講義があればよかった
#
体制について
・
人数が多い分、参加者との交流が深まらなか
った(少人数制研修会の求め)
2008年3月
・
$
ス タ デ ィ ー ズ
2年目、3年目研修の求め
No.28 (49)
わったかも
会場、時間について
・
いろいろな人と交流しなきゃ自分だけの世界
・
時間通りに終わってほしい
・
場所が遠い/交通機関で行きにくい
・
積極的に交流を図ろうとは思わなかった
※
継続参加の条件に対し
・
ネットワーク作りではなくスキルアップが参
ではもったいない
正直、プレッシャーになっていたところがあ
%
った
※
加の目的
研修内容に期待/学習意欲(継続参加できた
他の参加者と自己の比較(相互作用)
・
仕事の進み具合(任され具合)の比較/(比
要因)
較して)焦った
難しいことを分かりやすく教えてくれた
・
周囲の進み具合と比較/みんなのようにでき
面白かった
るようになりたい
毎回持ち帰られるものがあった・大切なこと
知識として蓄積しようと思った。
を学べる研修
・
発言する人の内容が洗練されていた、同じス
何かを得たい/すがる思い/切実な思い
タートなのになぁ
行かないと学べず損/もったいない
ソーシャルワークの基盤に関する事を研修で
&―3!
学ぶ
価値・倫理は自主学習困難
※
"
・
・
"
参加姿勢
内容について
研修テーマ、概要等(事実)
・
MSWとは何か
去年よりは楽しく参加/自分の支部なのでリ
・
コミュニケーション方法
ラックス/顔見知りが講師というだけで安心
・
ソーシャルワーカーとしての基礎的な関わり
境
同窓生が多く顔見知り、すごく緊張すること
技法や価値、倫理といった根底の部分
はなかった
・
グル-プディスカッションや講義
去年は義務感が強く辛かったが、今年は行き
・
ソーシャルワーカーとしての基本
たいから行くという気持ちになれた
・
得たもの、感じたこと等
・
内容・参加してどうだったか/どんな事を学
・ 20人というメンバー構成の影響
#
在り方 (研修会の中で、
どう振舞っていたか)
・
び業務に活かしていくのか
シーンとした時には言いたいことも発言でき
・
なかった
・
初心に戻って参加と思っていたが医療分野以
#
手段・方法
外で経験あり、他者より年上の分どこか線引
・
き。気持ちがみんなの中に入っていけなかっ
・
$
参加者との距離感に関して
・
・
$
・
誰かが話してくれるからいいやという気持ち
去年親密になった支部メンバーが近くにいる
参加者と横の連携ができよかった/特にメン
バー固定が良かった。
研修で業務の再確認ができ良かった。
2回目以降は緊張しなかったが、人数が多く
他機関のソーシャルワーカ-と交流ができて
て相手を覚えられず
相手を知るグループワークがあると空気が変
プラス面:
講できよかった。
てなくなった
・
報告を命じたが…(報告無し)
新人向けの研修が少なく、基礎的な研修を受
からこそ、外へ出て行こうとする広がりが持
・
朝の業務前の打ち合わせ時や、研修翌日に述
その他
も正直あった。
・
報告レポート提出
べてもらう
参加者の中にグループ化があり、入りづらか
った
他機関のソーシャルワーカーと関係を作るこ
とで大変なのは自分だけではないと感じた
た
・
内容をどのように聞いているか
・
心
・
2.所属機関上司等アンケートから
良かった。
・
マイナス面:
(50) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
コミュニケーションについて、講師が全部別
で統一性がなかった。
!
・
新人同士のネットワーク作りに役立った
'
意識化
研修に対する意見
#
・
利用者と向き合うとき、ソーシャルワーカー
内容面の評価・期待
・
組織内で伝えきれない部分を補ってもらって
としての考えを持てるようになった
(
その他
いる
・
本来業務に役立つ技術の習得はもちろんだ
・
これからの成長に期待
)-2!
が、「バーンアウト防止・仲間作り・悩み辛
さの表出と共感しあえること」をこの研修に
#
体験的に得られる研鑽
・
在り方
・
新人は孤独になりがち、横のつながりの場と
厳しい指導は職場でやっている(はず)なの
方、捉え方、視点(技術的なことではなく)
、
気づき
$
で、暖かい目と心で研修を
%
要望
・
人的交流/ネットワーク形成
・
%
どこでも受けられるよう地域格差を無くすべ
道の初任者研修会との連携・役割分担を
・
今後2年目、3年目対象といった研修が多く
・
・
"
大変素晴しい試み
・
他支部の受け入れ感謝
成長に寄与したか?
#
考え方のヒント/自己世界の拡大
・
他の新人と共に学ぶことで、さまざまな視点
があることを理解、視野が広がった
・
自分が気付けない点がどのようなところか…
という考える時間をもらえた
・
実習が短期間で採用、他機関の状況を知り成
長
・
業務で悩んでいた事を解決する手助けに/1
年目で抱える悩み不安解決の糸口に
$
日々の業務の振り返り
・
研修を聞き、当院ソーシャルワーカーのあり
方や業務の方法を見直し
・
改善すべき点、仕事への考え方等を再確認す
る良い機会となった
%
具体的な知識・技術等獲得
・
専門的で内容の濃い研修となっていて日常業
務の中での成長や知識向上に役立っている
・
クライエントの力を引き出すこと、話し方や
聴き方は活かされている
&
人的交流/ネットワーク形成
ロールプレイ・事例検討等でクライエントの
気持ち体験(少人数職場ではできない)
・
その他
・
日々の業務へのモチベーションや困難へ立ち
向かう力を与えられる
開かれることを期待
&
仲間作り/同世代の交流
意識化
き
・
ソーシャルワーカーとして、専門家としての
価値や倫理、態度、原理原則、心構え、考え
して、日常業務の連携の面で有効
・
院内外研修で期待する学び/研修に期待す
る効果
期待
$
2008年3月
学ぶことの大切さ
学ぶ姿勢(教えてもらう
のではなく自ら学ぶ)
&
具体的な知識・技術等獲得
・
臨床力アップ
基本的な面接技術向上
・
基本的な社会資源の活用について
・
他院の状況を学び、持ち帰って活かす
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (51)
入院時アセスメントとソーシャルワーク
介入の検討
発 表 者
共同研究者
木川 幸一(北光記念病院)
菊池 英輔(北光記念病院)
今井 智瑛(北光記念病院)
西川 昌慶(LSI札幌クリニック)
長谷川 聡(北海道医療大学)
【はじめに】
急性期循環器疾患患者を対象とするH病院では短期
ート」およびその記録の内容と業務の検証を行う。
【方
法】
入院が多いことから、医療ソーシャルワーカー(MS
2006年4月1日から同年9月末日までの6ヶ月間に
W)も2000年11月から入院時アセスメントを実施して
H病院に入院した全患者920人の記録を対象とした。
問題の早期発見と即時介入に務めている。
これ以前の記録はコンピュータによる定式定型化され
アセスメント開始当初は入院患者及び家族の社会的
たフェースシート運用が未確立で、この時期以後のデ
背景を客観的に把握することを目的として社会保険情
ータが現行のMSW3人体制に対応し、現在の日常業
報、各種受給者証、入院申込書などをチェックしてい
務に反映する知見を得られるデータと判断できる。
た。その後さらに詳細な情報収集を行い適切なサービ
その電子化された初期評価項目と処遇記録の中から
スを供給するため、2005年6月に「MSWフェースシ
主として介入の要否判断と介入の事実によりグルーピ
ート」を作成して全入院患者のアセスメントを行って
ングを行い、患者数を集計し、その結果を基に再びフ
いる。データを分類整理したフェースシートはカルテ
ェースシートやMSW記録を参照して考察を加えた。
に保管し、早期介入の必要性の判断材料に活用すると
同時に、他職種との情報共有を図っている。
【結
果】
MSWアセスメント開始から6年が経過して相当数
分析対象920人の内訳は男595人(64.
7%)
、女325人
のデータが蓄積されてきた今、そのチェック項目およ
3%)だった。平均年齢は全体で67.
3歳(標準偏
(35.
びそのデータに基づくMSWの介入判断の妥当性や信
2歳)で,
男65.
4歳(標準偏差15.
3歳、範囲15~9
差15.
頼性を評価検証し、MSW業務の更なる効率化や行き
、女70.
7歳(標準偏差14.
6歳、範囲18~98歳)だ
6歳)
届いた患者サービスについて検討する時期が来てい
った。
入院時面接によりMSWが介入の必要性を「あり」
る。
【目
的】
6%)
、「なし」と判断した
と判断したのは355人(38.
4%)だった。その後実際の介入「あ
のは565人(61.
H病院の急性期循環器疾患患者は入院日数が短く、
7%)
、「なし」のケースは7
り」のケースは190人(20.
入院後の早い時期に介入の要否判断とニーズ発見を行
3%)だった。(表1)介入の判断と介入の
30人(79.
うことが重要である。
4%、
実行が一致するのは920人中629人で正判率は68.
本研究は現行のアセスメントおよび介入状況を把握
して、これまでの患者対応の妥当性あるいは的確性を
6%
判断と実際が一致しないのは291人で誤判率は31.
であった。
検証することを目的とする。アセスメント時のMSW
ここで介入が必要と判断した患者355人に着目する
による介入要否の判断と、介入の実行したケース、実
と、必要と判断しながら介入したケース127人に対し
行しなかったケースを見極め、不必要な介入などがな
て実際には介入しなかったケースが介入したケースの
かったか、それらを勘や経験に頼らず客観的データと
1.
8倍にあたる228人であった。MSW記録を確認する
して把握しているか、現在使用している「フェースシ
とこの2群は!介護保険サービス利用中、"委任払い
(52) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
制度がない医療保険加入者、!高齢者施設入所者、"
療養環境の変更となるケース、'3人は身元引受人確
生活保護受給者、#他院から転院などの患者であっ
認・他科受診先紹介だった。
た。
次に介入が「不要」と判断したにも関わらず、実際
【まとめ】
8%)であった。この
には関与したケースが63人(6.
介入不要と判断したにも関わらず介入した患者、す
うち$25人は入院費支払い・付添家族の宿泊費用など
なわちインテーク時の取りこぼし事例が63人もあるこ
経済的問題に対して社会資源活用となるケースであ
とが判明した。慎重にみれば介入不要と判断し実際に
り、%22人は入院予約あるいは医師による入院時診察
介入しなかった502人の中にも取りこぼしがありうる
において医学的検査が行われ、その結果として治療継
ことを示唆している。取りこぼしの原因として検査情
続となり身障者手帳・重度心身障害者医療受給者証申
報やADL項目の確認などインテーク時の情報収集項
請援助となっていた。また&13人は自宅からの入院で
目の具体的な不備が明らかになり、インテーク・フェ
あったがADLレベル低下により移動制限が発生して
イスシートのチェック項目の追加とその記載の徹底と
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (53)
いう作業課題を通じてさらに正確な介入判断につなが
の意味を持つか、これらについて多変量解析法を用い
ることが示唆され、ケースワーク業務改善のポイント
て検証するなどの試みが有用であることが本研究の過
が示された。
程で推定され、現在これを分析中である。
しかしながら全入院患者の70%近くが正しくケース
例えば入院期間に着目すると、ここまでの分析では
ワーク処遇を受けていることも事実である。急性期か
在院日数が長期化する状況で入院期間7日以内の介入
つ短期入院が多数を占める当該患者グループであるか
1%と比べて、入院期間31日以上では介入率が40.
率9.
ら、これらのケースについて今一度入念な分析を行う
8%となった。インテーク時に入院予定期間をチェッ
ことで、さらに効率良くニーズ発見と早期介入を可能
クし、その長短に計算された重み付け得点を与えるこ
とするインテーク方法を追求できる。具体的には、正
とでケースワーク上のハイリスクケースを見出して早
しく評価された患者をMSWによる介入群と非介入群
期に介入することができるとみられる。
に分ける。そのインテーク時チェック項目がこの2群
さらにそれらのチェックポイントが詳細な入院時面
を判別する要因となるかどうか、なるならばどの程度
接による情報収集前に得られる基本的・外的情報によ
(54) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
りケースワーク的スクリーニング・アセスメントも行
うことができる。今回の集計と考察により、今後の当
院におけるインテークの方向性と、そのためにMSW
が日常臨床業務の中で実施しなければならないアセス
メント方法の開発についての方向性を獲得することが
2008年3月
表1.MSW介入の現状
単位:人
介入の
実行
できた。
計
介入の判断
必要
不要
計
あり
127
63
190
なし
228
502
730
355
565
920
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (55)
実習関係三者に向けてのソーシャルアク
ションと今後について
発 表 者
共同研修者
医療福祉実習委員会 青柳 攝子(札樽病院)
寺田
香(北翔大学)
高橋あすか(北樹会病院)
兼平
梢(札幌北楡病院)
五井
翠(札幌北楡病院)
佐藤奈津子(北海道社会保険病院)
佐藤 寿恵(勤医協中央病院)
高野 和美(勤医協札幌病院)
星野由利子(札幌麻生脳神経外科病院)
行沢
剛(勤医協札幌西区病院)
巻
康弘(北樹会病院)
高橋 敦子(札幌秀友会病院)
【はじめに】
医療福祉実習委員会(以下委員会と略)では、職能
団体として後継者養成に積極的に関与する責任がある
日に開催されたブロック協議会にて、医療福祉実習に
ついて7つの申し合わせ事項が決定した(表1)
。
(表1)
との認識から、「医療福祉実習を各医療機関が受け入
医療福祉実習についての7つの申し合わせ事項
れられる環境作りと、新規に採用される医療ソーシャ
~北海道ブロック社会福祉実習研究協議会にて~
ルワーカーが医療福祉実習を経験した上で就職できる
1.依頼は現場実習依頼方法と同一。4年制大学
環境作り等をサポートし、医療ソーシャルワーカー全
・専門学校の種別は問わない。
体の質の向上を目指す」という方針を掲げ、活動を進
2.契約書*は、北海道ブロックにおける「契約
めてきた。今回は、これまでの取り組みの成果と今後
書(合意書及び指針を含む)に1部修正を加
の課題をまとめ報告する。
えた独自のものを使用。
【三方向へのソーシャルアクション】
実習は教育現場からの依頼で実施するという一方的
なものではなく、実践現場・教育現場・実習生の三者
3.養成校は、現場実習以前に医療福祉論が履修
で き る よ う に 単 位 科 目 を3年 以 内 に 整 備
(注:経過的対応あり)
。共通教材は道協会
との協議の上定める。
(実習関係三者)
が一体となって取り組むことが必要で
4.医療機関は「医療福祉実習プログラム」によ
あるといわれている。委員会では、その実現に向け、
って実習指導を行う。また、指導者研修を行
三方向へのソーシャルアクションを展開してきた。
ない受け入れ機関の拡大に努める。
第1に教育現場に向けてのソーシャルアクションと
して、北海道ブロック社会福祉実習研究協議会(以下、
ブロック協議会と略)及びワーキンググループに参画
してきた。平成18年度は、「個人情報保護法と現場実
習のあり方検討委員会」
、「実習前評価制度検討委員
会」へ、それぞれ委員を派遣した他、「医療福祉実習
検討委員会」を立ち上げ、医療福祉実習を取り巻く課
題について協議を重ねてきた。結果、平成18年11月11
5.道協会は受け入れアンケート結果を当年度9
月までに用意。
6.任意実習は医療機関の裁量に一任。
「契約書」
の取り交わしは双方で協議。
7.学生は医療機関での実習動機を明確に持つこ
とが期待される。
*当協会ホームページよりダウンロード可能
(56) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
ここで特に注目すべき内容は、教育現場の取り組み
実施した。参加者の経験年数は1年から20年以上まで
として、医療福祉論の単位化に加え、実習前での履修
幅広く、また、過半数が実習受け入れ未経験者であっ
を整備することを取り決めた点である。これは、全国
た。研修内容は概ね好評で、「自らのソーシャルワー
的にも先駆的な取り組みである。
ク実践の振り返りにつながった」という感想も聞かれ
第2に実習生に向けてのソーシャルアクションとし
て、実践現場からの声を学生に伝える機会を積極的に
提供してきた。教育機関側からの外部講師依頼への対
応の他、「医療福祉実習オリエンテーション」を毎年
継続して実施しており、平成18年度は78名の参加があ
り好評を得た。参加者アンケートでは「医療機関での
た(表3)
。
(表3)
実習スーパービジョン研修の結果
・参加人数:88名
8%)
→うち実習受け入れ経験なし50名(56.
実習を行いたい」「MSWへの興味が深まった」との
・研修アンケート結果:回答数85
声が多く寄せられた。
「問5:本研修が実習受け入れに活かせるか?」
その他、医療福祉実習についての7つの申し合わせ
事項の中で「実習生は実習動機を明確に持つことが期
はい 80(94%)
いいえ
5(6%)
・研修アンケート自由記載より:
待される」とされた。これも間接的に実習生の動機付
「実習受け入れは自分の成長のためにも必要」
けを高めることにつながると考える。
「プログラミングは達成度を測る上で大切」
第3に実践現場(MSW)に向けてのソーシャルア
「院内システム整備と契約関係が把握できた」
クションとして、学会報告、定期的な広報活動の他、
「組織的な体制の不十分さを実感した」
実習受入アンケートを毎年継続して実施してきた。平
「スーパーバイザーの底上げをしてもらいたい」
成18年度の実習受け入れアンケート結果では、受け入
れ可能機関数は横這いであったが、スーパーバイザー
可能数は前年の62名から91名と増え、受け入れ可能機
【今後の課題】
関の中の複数職場内でスーパーバイザーが増加してい
以上の結果から、今後の課題をまとめた。
る傾向があった。逆に、受け入れ困難理由としては、
第1に教育現場への取り組みとして、ブロック協議
「スーパービジョン能力の問題」
、「業務多忙」
、「マニ
会において医療福祉実習についての7つの申し合わせ
ュアル未整備」等「マネージメント能力の問題」が前
事項が決定したことは大きな成果であったといえる。
年度と同様に挙げられていた(表2)
。
これにより、実践現場・教育現場・実習生の三者関係
の確立に向けての条件が整備された。
(表2)
今後は、申し合わせ事項に盛り込まれた医療福祉論
実習受け入れアンケートの結果
の設置や、実習契約の中にあるスーパーバイザー会議
・対象:道内293機関のうち166機関から回答(回
の実施に関して、これらが医療福祉実習を行う全ての
6%)
答率 56.
・受け入れ可能機関数:
現場実習 35機関
養成校において実現するよう、働きかけていくことが
必要である。
また、医療福祉論における共通教材をブロック協議
単位実習 34機関(前年度 33機関)
会・当協会と協議の上決定することとしており、この
任意実習 47機関(前年度 61機関)
検討を通して、「医療福祉論で何を学ぶべきか」とい
・バイザー可能数:91名
う中味の点についての言及ができるよう、さらに検討
・受け入れ困難理由:「スーパービジョン能力の
を行う必要がある。
問題」「業務多忙」「マニュアル未整備」等
第2に実習生への働きかけとしては、教育現場のシ
ステムにより伝えることの難しい「保健医療分野にお
さらに平成18年度は、前年度の実習受け入れアンケ
けるソーシャルワーク」を職能団体自らが伝えること
ート結果から、実習マネージメント能力・実習プログ
により、実習の必要性認識の醸成や職業選択の際のモ
ラミング能力・実習スーパービジョン能力の強化が必
デルの提供につながったと考える。
須と考え、各支部主催のもと、道研修部、委員会協力
しかし、各大学への外部講師対応により、カリキュ
体制にて、全道4箇所で実習スーパービジョン研修を
ラム内での保健医療分野のソーシャルワーク実践に触
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
れる機会が増加してきている現状がある。今後は、医
療福祉実習オリエンテーションの更なるバージョンア
ップの検討を進めていく予定である。
第3に実践現場への取り組みとしては、実習受け入
れアンケート結果から、少しずつ実習受け入れ可能機
関数やスーパーバイザー可能数が増えてきており、後
継者養成が日々の業務と同様に臨床現場で働くMSW
にとって大切な役割であるとの認識が広まってきた結
果であると考える。特記すべきは、実際に実習指導を
実施した機関からは実践現場にとっての有益性が指摘
されており、これらを明確化し会員全体で共有するこ
とにより、実習受け入れ機関の拡大を図っていきた
い。
また、同時に実習の質の担保のために、!より充実
したプログラミングワークシートの作成、"スーパー
バイザー・実習生双方が活用可能なマニュアルの作成
(平成19年6月当協会発行予定)、#より充実したス
ーパービジョン研修の提供と参加者拡大への工夫が必
要である。
【おわりに】
クライエントを取り巻く社会情勢が次第に厳しさを
増す中、今後は実習関係三者それぞれの実習への真摯
な取り組みや協働が求められていくであろう。このよ
うな中で、三者それぞれが実習の意義と有益性を明ら
かにしつつ、連携を強化していくことで、保健医療分
野のソーシャルワークの質の向上に寄与できるよう
に、現場で実習スーパービジョンを行う立場から、今
後も活動を継続していきたいと考える。
No.28 (57)
(58) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
透析患者の通院方法の現状と社会資源の
活用について
発 表 者
共同研究者
根川枝里子(札幌北楡病院)
兼平
梢(札幌北楡病院)
五井
翠(札幌北楡病院)
梁瀬
愛(札幌北楡病院)
山!奈美恵(札幌北楡病院)
【はじめに】
当院で人工透析治療を行う患者は約280名であり、
週に2~3回にわたる通院方法は様々である。患者の
高齢化や社会福祉制度の改正など身体的、経済的負担
が大きい患者が、安全で快適に通院するには社会資源
を有効に活用できるよう院内スタッフと協働すること
が必要と考え、また医療ソーシャルワーカー(以下、
MSW)の活動の啓蒙も含めて検討したので報告す
る。
【目
的】
通院に関する現状や問題点を把握するため、透析患
者と院内スタッフを対象にアンケート調査を行い、通
0歳であった。透析導入時の平均年齢
平均年齢は62.
5歳であり、平均透析歴は9.
51年であった。
は51.
院時の負担軽減に向けて院内スタッフと協働できるこ
とは何かを検討した。
【対象と方法】
!冬季・行きの年代別通院手段の結果では、車での
通院が1番多く、当院透析通院バス利用者は非常に少
外来透析患者:274名
ないことがわかった。当院の透析通院バスは、主に自
透析治療に関わるスタッフ:62名(医師、看護師、臨
立している患者が対象で、病院近辺の白石・厚別・清
床工学技士、看護助手)
田・豊平の4区を午前と午後の2ルート送迎してい
患者、スタッフそれぞれにアンケート用紙を作成し調
る。アンケート自由記述より、患者は、「自宅の近く
査した。アンケートは無記名式、選択式及び自由記述
まで来てくれたら利用したい」
、「時間が合わないため
式にて実施した。
利用しにくい」等の意見が挙げられた。
11.
15~H18.
11.
25の期間で透析室にアンケート
H18.
回収箱を設置し、回収した。
【結
果】
患者アンケートの結果
で、回収率
回答者は計174名(男性100名、女性74名)
1%であった。患者の年代別内訳(グラフ1)
は、
は63.
20代が2%、30代が6%、40代が18%、50代が46%、
60代が50%、70代が41%、80~90代が12%であった。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
60代では、行きよりも帰りのタクシー利用の割合が
No.28 (59)
られた。
多く、透析による身体的負担の大きさが影響している
と考えられる。
70代の通院手段では、行き帰り共にタクシー利用が
多く、高齢化に伴うADLの低下が影響していると考
えられる。
通院手段を知ることにより推察されることは以下の
とおりである。
・医師は、個々の通院手段を知ることで、個別事情
を考慮した治療ができる。
!「今後福祉サービスを利用したいか?」という質
・看護師は、患者の事情に応じた対応につながり、
問に対して、40~50代の方で検討したいと回答してい
個別的なアドバイスや連絡調整が可能となり患者の支
る割合が比較的高かった。これは、60代はすでにサー
援が迅速になる。
ビス利用しているか、又は、福祉サービスに関する情
報を知りやすい状況にあると考えられる。
・技士は、基本的な支援内容を把握することで、透
析終了後の対応に活かすことができる。
一方40~50代ではADLの低下は少ないが今後の身
体的状況への不安が見られ、検討を考える方が多い傾
向にある。
これらをふまえて、透析通院に関する情報は、患者
の社会的側面を理解するために必要であり、社会資源
また、年代別付き添い者では、全体的に、ヘルパー
の活用につながると考えられる。また、患者の利用す
利用よりも家族の付き添いが多くを占めており、家族
るサービスには、契約内容により、ヘルパーがベッド
の負担の大きさが窺える。年代別サービス利用意思の
サイドまでの付き添いが可能であったり、玄関までの
結果においても、60代からサービスの利用希望や検討
付き添いまでしかできないなど、サービス内容に違い
したいとの回答が多かった。
がある。しかし、スタッフは患者が全員同じ内容のサ
ービスを受けられるという認識を持っていることも明
らかになった。
【考
察】
患者の実際の声として、透析通院バスの利用のしづ
らさが明らかになった。今後は利用拡大を目指し、透
析室にバスのルートを貼りだすことや、バスの時間に
ついても検討する必要がある。
また、個別化するサービスや契約内容について患
者、透析室スタッフにわかりやすく提示できるよう、
スタッフ用アンケートの結果
4%であった。患者の通院手段を知るこ
回収率は77.
とが役立つと回答したものが多かった。
透析室の掲示板を活用する。患者・家族に向けても負
担軽減のために通院情報パンフレットを作成検討す
る。
「透析通院に関してどのような情報があると役立ち
院内スタッフとの情報共有を充実させるためにも、
ますか」という質問に対しては以下のような結果が得
スタッフと協働して透析通院情報としてのデータベー
(60) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
スの作成を検討する。
以上の課題を実施することにより、患者・スタッフ
と情報を共有でき、早期介入にもつながると考える。
【まとめ】
!透析室掲示板の活用、"通院情報パンフレット、
#データベースの作成の3点の経過報告を以下に記
す。
!透析通院バスの路線図を見やすく改善し公表する
ことで、気軽に利用申し出ができるよう工夫した。ま
た定期的に、福祉制度の情報を掲示し、透析患者の利
益拡大とMSWの役割提示を行う。
"透析室(西)男女更衣室、透析室(東)内、外来
待合室、相談室の閲覧用ラックに設置した。各制度を
使った通院サービスの提示を行い、フローチャート式
でわかりやすく案内した。
#データベースの作成:平成19年度以内に、オンラ
インで情報共有できる「看護支援システム」が導入予
定となった。MSWとして看護部へ通院手段を含めた
情報(通院手段、車いすや歩行器などの使用の有無、
介護者の有無、介護者の連絡先、利用しているサービ
ス事業所と連絡先など)の入力について提示した。今
後も具体的な導入準備に積極的に参加していく予定で
ある。
【おわりに】
通院手段を把握することは、透析治療に役立つとい
うスタッフの意識が分った。今後私たちMSWは患
者、スタッフに対し、より安全で快適な通院方法を提
示し、定期的に社会資源の情報提供を行う必要があ
る。
今後の専門職の責務として、個別ニーズの充足から
地域への取り組みにつなげ、社会問題としての把握と
解決を目指す必要がある。
2008年3月
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (61)
高次脳機能障害者へのソーシャルワーク
援助について
~「ナラティブ・アプローチ」
の視点から~
発 表 者
共同研究者
中島 麻里(札幌麻生脳神経外科病院)
田中 雅美(平和リハビリテーション病院)
中村美由紀(札幌麻生脳神経外科病院)
星野由利子(札幌麻生脳神経外科病院)
小西利千子(北海道大学病院 リハビリテーショ
ン部)
【はじめに】
高次脳機能障害は厚生労働省が実施したモデル事業
【事
例】
1)事例紹介
の経過や当事者、家族の運動により以前に比べ周知さ
・クライエント 40歳代・男性
れてきたが、現在も高次脳機能障害の理解と対応は十
・病名
左前頭葉脳挫傷
分ではなく、様々な課題を抱えたまま生活している人
左急性硬膜下血腫
が多く存在する。
高次脳機能障害
・生活
・経過
A市脳神経外科から、精査・リハビリ目的に
て北海道大学病院へ転院
MSWからは「高次脳機能障害はわからない、難しい」
との言葉が聞かれ、その役割期待に十分応えてはこら
妻、子どもと道内A市にて生活
発症後に会社を退職
た後の社会復帰への援助及び、十分でない社会資源の
整備や拡大などの役割が求められるわけだが、今まで
失語
(2年前に転落事故にて受傷)
そこで医療ソーシャルワーカー(以下MSWと略)
には、高次脳機能障害者や家族に対して、命が救われ
左側頭頭蓋骨折
・妻の思い
在宅は困難。(A市脳神経外科からも在
れなかった。そこで今回、高次脳機能障害者へのソー
宅難しいといわれ、地元のディサービスも断
シャルワーク援助を困難にする要因には、「高次脳機
られた。
)
能障害は難しい」というMSW自身の思考支配がある
と仮説を立てた。方法として、北海道大学病院で実際
2)MSW方針と基本姿勢
にMSWが関わった高次脳機能障害者へのソーシャル
MSWとして、クライエントの人格を尊重し人間と
ワーク援助の事例からナラティブ・アプローチの「外
しての尊厳を守るため、クライエント及び妻との面接
在化」の概念を用い考察をおこなった。
を重ね状況を把握し、また信頼関係を築いていった。
【ナラティブ・アプローチと外在化】
ナラティブ・アプローチは、解決困難に見えている
ストーリー(ドミナント・ストーリー)から「問題」
その上でMSWは「自宅退院」を方針とした。
3)アセスメント
!
~なぜ自宅退院か~
妻は施設入所を考えていたが、「
(在宅へ向けて)
を「外在化」することで新たなストーリー(オルタナ
何とかしたい」との思いもあり。具体的方策が提示
ティブ・ストーリー)に変え、解決へ導くという方法
できれば、在宅生活を受け入れられる妻の「強さ」
である。なお、ここでの「外在化」とは、「人は問題
はあると判断した。
ではなくて、問題は問題にあるという認識」である。
つまり、人と問題を切り離すことと定義する。
"
本事例の場合、身体的には改善傾向で身体障害者
の施設入所は困難。また、現実の施設は妻の思い描
く施設(生活場面)ではない。それならば、あらゆ
(62) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
る社会資源を活用し在宅を考えたほうが現実的であ
障害という「問題のある夫」から、その「問題」を切
る。
り離し、「高次脳機能障害」のせいで大きな生活課題
#
妻は専業主婦のため、本人への在宅生活でのサポ
ートも可能。また、経済的にも妻が就労を第一目的
にしなくても良い状態であった。
$
MSWの経験から、本事例よりももっと重症な患
者が自宅退院となったケースがあった。
を背負わされてしまった「夫」とした。
また、MSWは、クライエントにも面接に同席して
もらい、「外在化」をベースにした関わり方をMSW
-クライエント関係の観察を通して家族に学んでもら
った。(図1、クライエント・家族の変容!~#)
4)インターベーション
上記アセスメントから、クライエント・妻と3者で
面接を行い在宅生活の検討を行った。また、
MSWは、
A市内で在宅調整が可能な病院への転院調整を進め
た。
妻の躊躇はあったが、医師、看護師、セラピスト、
MSW等多くのスタッフから、本人との関わり方を学
び、在宅生活を現実的に考えることができるようにな
った。結果、妻からも在宅に向け「自分も頑張ってみ
よう」との言葉が聞かれた。
転院先に関しては、MSWのネットワークを活用
し、在宅調整で実績のあるA市内B病院へ転院相談を
%
行った。B病院MSWから「外傷性の高次脳機能障害
者は今まで受けたことがない」と言われたが、「
『高次
脳機能障害のクライエント』というより、『在宅調整
が必要なクライエント』として、地元の病院の協力が
必要」なことを伝え、「在宅援助」に視点を置いて検
討してもらった。結果、B病院MSWや他スタッフの
協力のもと、協議の上転院が決まった。
5)結果
!転院先での役割
B病院では、自宅退院に向け外出・外泊を実施、ま
た家屋改造も行われ、市内でのデイサービス機関も決
めるなど、細やかな在宅調整がされた。その結果、受
傷より約1年で自宅退院となった。
"現在の状況
A市より公共交通機関を利用し北海道大学病院に妻
と通院。ディサービスも利用し妻の時間も保障され、
楽とはいえないが在宅生活が継続されている。
【考
察】
本事例をナラティブ・アプローチの視点の「外在
化」に着目し、以下の通り考察を行った。
1、クライエント・家族の変容
MSWは面接の中で「クライエント」と「障害」を
切り離し、問題を「外在化」していった。高次脳機能
%
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (63)
さらに、MSWは家族に「将来の希望される生活イ
結論として、MSWがクライエント・家族と一緒に
メージ」を語ってもらい、「過去の幾つかの成功例」
問題の「外在化」を図り、新たなストーリー(オルタ
や「具体的な退院までのプラン」を話し合い、クライ
ナティブ・ストーリー)をつくりあげていくことで、
エント・家族と共有していった。結果、在宅困難と思
クライエント・家族自身が本来持つ「強さ」
を発揮し、
われていた様々な「問題」に支配されていたドミナン
望まれる生活に近づいていくことが可能となった。さ
トストーリーから、「在宅は可能である」というオル
らに「高次脳機能障害はわからない・難しい」という
タナティブストーリーに変容していった。(図1、ク
MSW自身の思考支配を脱し、連携・協働の中でオル
ライエント・家族の変容!)
タナティブ・ストーリーが引き継がれていく構図がで
きあがっていった。
2、地域関係機関の変容
「外傷性の高次脳機能障害はわからない」という他
機関のMSWに対して、クライエントと問題を切り離
す「外在化」のアプローチを図ることで、他機関MS
Wも変化していった。次にそのMSWが院内で学習会
【まとめ】
などを企画し組織に変化を促し、さらには、組織が地
本事例からもわかるように、北海道大学病院のMS
域に対してディサービスの利用が可能となるよう働き
Wからは「高次脳機能障害はわからない・難しい」と
かけていった。その結果、「高次脳機能障害は分から
いう思考支配はみられない。MSW自身がクライエン
ない・難しい」という言葉に支配されていたドミナン
トから「高次脳機能障害」を外在化することで、「難
ト・ストーリーからオルタナティブ・ストーリーに変
しい」という思考支配からMSWを解き放つ。それを
化した。(図2、地域関係機関の変容)
可能にしていくひとつの方法として、ナラティブ・ア
プローチの視点は有効だと考えられる。
【参考文献】
「物語としてのケア」野口祐二著
医学書院 2002
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (75)
医療福祉実習が実践現場にもたらす効果
と今後について
~北海道における取り組みより~
研
究
者
北海道医療ソーシャルワーカー協会
医療福祉実習委員会
【はじめに】
受け入れ側にも効果があるという声を聞くものの、そ
の効果は明らかになっていなかった。本研究では、ス
平成18年度より社会福祉現場実習指定施設に保健医
ーパーバイザーへのインタビューを通して、実際に実
療機関が含まれるようになり、私たちを取り巻く状況
習を受け入れることによって実践現場へどのような影
は急速に変化をしてきている。
響がもたらされたのか明らかにすることを目的とす
北海道協会は「医療福祉実習を各医療機関が受け入
れられる環境作りと、新採用の医療ソーシャルワーカ
ーが医療福祉実習を経験した上で就職できる環境作り
る。
【研究の経過及び仮説】
等をサポートし、医療ソーシャルワーカー全体の質の
予備調査をもとに、実習受け入れは、スーパーバイ
向上を目指す」
という方針を掲げ、教育現場、実習生、
ザー個人、ソーシャルワーク部門、所属機関のそれぞ
実践現場の実習関係三者に対し、様々な取り組みを行
れに影響があると考えた。さらに実習指導経験の多寡
ってきた。
により異なった影響を感ずると仮説を立てた。
これらの取り組みにより、ここ数年で実習受け入れ
可能なスーパーバイザー数は確実に増えてきている。
しかし、受け入れ可能機関数は微増で、実習に対して
消極的な機関も多いのが実情である。
実習は養成教育の一部を現場に委託契約された教育
であり、実習生にとって学びの機会であるのは言うま
でもない。しかし、実践現場にとっては、実習生を受
け入れることによって様々な影響がもたらされること
になる。実習受け入れに消極的な機関からは、クライ
エントへの影響や業務への支障など不安の声も聞かれ
る。一方、
実習を受け入れたスーパーバイザーからは、
【調査対象】
調査の対象は、平成18年度に福祉系大学4年生の単
位実習(23日・180時間)を受け入れたスーパーバイ
ザー9名とし、実習指導経験により2つのグループに
分けた。
第1グループは単位実習を1回担当したスーパーバ
イザー4名で、いずれもソーシャルワーク部門内に他
に上司がいる立場であった。第2グループは単位実習
を3回以上担当したスーパーバイザー5名で、いずれ
も部門の管理者の立場であった。
(76) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
また、全員がソーシャルワーカー複数配置の職場で
ジュール調整が大変だった」「実習指導に追われ記録
あり、他のソーシャルワーカーと共に実習を受けてい
が後回しになり残業が増える」「休みがとれない」等
た。
の意見が挙げられた。
【調査方法】
また、「実習指導に時間と労力をかけているが、実
習生によっては疲労を感じる」との声も聞かれた。
調査の方法は、グループごとにフォーカス・グルー
プ・インタビューを実施した。インタビューにあたっ
ては、仮説に沿ってインタビューガイドを用意し半構
造的に進めた。1グループのインタビュー時間は約1
時間30分で行った。
【結果:バイザー個人にとって良
かった点】
スーパーバイザー個人にとって良かった点として
は、両グループから「事前学習を求めるにあたり、ど
のような勉強をすると理解が深まるかを考え、スーパ
ーバイザー自身も勉強した」といった自身の勉強のき
っかけになったという意見や、「倫理綱領や業務指針
に立ち返ることが増えた」といったソーシャルワーク
の基本の再確認につながったとの意見が挙げられた。
【ソーシャルワーク部門の効果】
ソーシャルワーク部門にとって良かった点として
は、特に第2グループの意見が多数を占めた。
さらに「プログラミングワークシートを基に実習プ
後輩ソーシャルワーカーが実習指導場面を見聞きす
ログラムを作成し、実践内容の過不足や業務を見直す
る体験や、面接、カンファレンス同席、日誌へのコメ
ことができた」との業務分析に関する意見が述べられ
ント記載など実習指導の一部を担うという体験を通
た。
じ、自身の実践を語ることでその成長のきっかけにな
また、スーパービジョンにおいては「実践が何に基
づくかを、実習生が理解できるように言語化する作業
り、部門内での教育効果につながると多数の意見があ
った。
は、スーパーバイザーの力となった」との声が多く聞
また、「職場内で医療ソーシャルワーカーも実習を
かれた。「スーパービジョン場面での実習生の感想は
行う専門職であるとの認識が深まった」など、部門の
実践への評価につながり、スーパーバイザーの自信に
認知向上が挙げられた。
なった」と感じていることも明らかになった。
逆に支障が出た点としては実習指導に時間がかかり
「上司や同僚とケースについて相談する時間がない」
という意見があった。
【バイザー個人:支障が出た点】
支障が出た点としては、時間調整に関する支障は、
両グループに共通しており、「実習生を意識したスケ
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
【所属機関の効果】
No.28 (77)
習契約が負担軽減につながるとの見解が示された。
クライエントへの影響としては、「実習受け入れで
所属機関にとって良かった点であるが、多くのスー
スーパーバイザーの能力が向上することで、よりよい
パーバイザーが、機関内の他部署に実習オリエンテー
支援につながりクライエントに反映できる」という間
ション協力を依頼し、部署の説明やソーシャルワーカ
接的効果と同時に、「面接同席やロールプレイなどの
ーとの関係性等を実習生に説明してもらっていた。
「他
事前準備を十分に踏まえた上だが、クライエントが気
職種も実習に協力することで刺激を受ける」「他部署
持ちを直接実習生に語るという作業を通じてクライエ
からも実習協力依頼がソーシャルワーカーに来るよう
ント自身が考えを整理することができた」という直接
になり、実習相互乗り入れ体制が形成された」との意
的効果も挙げられた。
見も挙げられた。
また、実習生受け入れにより、「所属機関の宣伝効
果になる」
、「実習生がその実習先に就職し、人材確保
につながった」との意見も聞かれた。
一方、支障が出た点としては、残業増加による人件
費増加が挙げられた。
【実習経験別の特徴】
以上、実習受け入れは実践現場にとって3側面にと
どまらず影響があったことが明らかになった。第1グ
ループでは「スーパーバイザー個人」の効果に対する
語りが多く、第2グループでは3側面いずれも一定量
【3つの側面以外での効果】
また、仮説で挙げた3側面以外で、次のような点で
も影響があったと語られた。
の語りが得られただけでなく、「職能団体」「クライエ
ント」に対する効果の語りがあった。また、両グルー
プ共通として、実習契約がスーパービジョンにもたら
す効果についての語りが得られた。
職能団体への影響としては、「職能団体として養成
校との実習システム形成はソーシャルアクションとな
った」「職能団体としてまとまるきっかけとなった」
「自分たちの専門性を高めていくことにつながる」と
述べられた。また、「現場実習に保健医療機関が組み
込まれたことで、社会福祉職であることが広く知れ渡
る機会になり、職種として元気になった」との意見が
あった。
養成校・実践現場のスーパービジョン関係への影響
としては、「単位実習の方が、実習後のフォロー体制
が整っているので安心」「単位実習のシステムが整備
されてきており、数年前から比べるとはるかに実習受
入に対する負担が軽減している」「スーパーバイザー
【考察1】
会議で、他の機関のスーパービジョン実践を知ること
これらの結果から、実習指導は決して楽なものでは
で、実習における悩み解決の糸口になる」といった実
ないが、現場のスーパーバイザーはそこから多くの効
(78) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
果を見出し、実感していることがわかった。実習指導
ネジメントするかは実習受け入れとその後の負担感を
で自らも学び成長することの自覚は、実習経験の多寡
左右するポイントである。これらの負担感を軽減し、
によらず、参加者全員に共通する見解であった。専門
マネジメントから派生する効果に転換するためには、
職としての後継者養成という責任だけではない、実習
組織内外での契約体制を整え、実習受け入れを組織の
受け入れの原動力となる要因と考えられる。部門内に
中のシステムとして位置づける努力が必要である。
おいては、価値の共有化が促進され、部署としてのま
とまりが強化されていた。さらに、経験年数の浅いソ
ーシャルワーカーが実習に関与することで、専門職と
しての強い責任感、自覚が芽生え、実習指導経験がそ
の成長に寄与することが明らかになった。また、継続
的に実習を受け入れることで、ソーシャルワーカーが
専門職であることを、組織へ向けてアピールする貴重
な機会であり、部門の認知や業務拡大の好材料ともな
っていた。同時に組織内では実習指導を互いに協力し
合うことにより、専門性の理解、職種間交流の活発化
がはかられ、人材確保面からも、実習受け入れが組織
に与える効果が認識できる。
スーパーバイザー個人やソーシャルワーク部門の成
【考察3】
長と、組織としての体制整備等の効果は、我々の使命
また、インタビューにおいて、クライエントへの影
である「クライエントの利益」へとつながると言える
響も語られた。実践現場としては、リスクマネジメン
だろう。
トの観点から、クライエントと実習生が関わる前提と
して、実習生と事前に面接時のルールの確認、面接の
ロールプレイ等により実習生の能力を見極めるといっ
た、実習生の質が一定要件を満たしているか事前準備
を行い、クライエントに不利益が生じないようその影
響に配慮しなければならない。
【考察2】
このように多くの効果が認められる反面、スーパー
バイザーが「やりにくさ」を感じていることは否めな
い。
スーパービジョンのために残業が増えるという負担
は共通の悩みであった。「時間」に関するマネジメン
トとして、スーパーバイザーのケース数を一時的に減
らす取り組みをしている機関もあった。
【おわりに】
実習指定施設に保健医療分野が含まれたことに関わ
らず、後継者養成は職能団体の責務である。今回改め
部門内の業務配分や、他部署への協力依頼は「人」
て明らかになった結果をさらに会員内で共有し、実習
のマネジメントの問題にもかかわる領域である。組織
受け入れ機関の「量」の増加とともに、「質」の向上
にソーシャルワーカー養成の価値の理解を促し、実習
に努めることが求められる。北海道協会はこれまで実
指導を業務の一環として位置づけ、質の高い指導をマ
施した「実習スーパービジョン研修」の他、当協会が
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
編集した実習マニュアルを発刊することができた。実
習の平準化を図り、北海道のソーシャルワーク実習の
質を向上させるように今後も真摯に取り組んでいきた
い。
No.28 (79)
(80) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
「患者の視点から見たソーシャルワーク
支援調査」
の報告
会
長
関
建久
平成19年10月に!日本医療社会事業協会より、「退
果をもとに平成19年12月6日に開催された「日本の医
院支援に関する患者満足度調査の依頼」がありまし
療を守る道民協議会」の「地域医療崩壊の危機」とい
た。丁度その月に同協会主催の「診療報酬とソーシャ
うテーマでパネルディスカッションがあり、当協会も
ルワーカー」の研修会が開催され、来道した講師の方
パネラーとして調査結果の一部を活用して発表いたし
と「調査があれば協力しましょう」といった経過もあ
ました。
り、理事会で検討の結果、調査を実施いたしました。
次号の北海道医報にて掲載されるなど、根拠を持っ
今回、当協会と!日本医療社会事業協会社会保険部
て私たちの活動を伝えること、またこういった調査を
と共同で作成した調査結果がまとまりましたので、会
継続して実施することの重要性を痛感いたしました。
員の皆様へお知らせいたします。
次年度以降もこういった活動を継続したいと思います
今回の調査結果を通じて、私たちの実践がクライエ
ントにとってどのような効果をもたらしているのかを
ので。会員の皆さんの益々のご協力をお願いいたしま
す。
数字で確認することができました。さらにこの調査結
平成19年12月5日
患者の視点から
見たソーシャルワーク支援調査
日本医療社会事業協会社会保険部会
北海道医療ソーシャルワーカー協会
1.調査の目的
関わらず、SWと面接した順に調査票を配布し、自記
式で記入を依頼し、施設内の回収箱にて回収した。
ソーシャルワーカー(以下、SWとする)の支援を
調査項目は、!医療機関の種別
受けた患者・家族が、SWにどのような相談をし、相
患者と回答者の関係
談して何を得たのか、また、SWの支援から何が実現
容
したのかを患者の視点から明らかにすることを目的と
〔調査期間〕
した。
&相談結果
$主病名
"患者の年齢
#
%相談内
'自由回答である。
平成19年10月29日から31日までの3日間
2.調査概要
3.調査結果
〔対象および方法〕
〔1〕調査協力医療機関
調査対象は、北海道医療ソーシャルワーカー協会会
調査協力医療機関の一覧は以下のとおりである。15
員の所属している医療機関から、無作為に抽出した24
医療機関から回答を得たが、その内、6名以上の回答
医療機関に調査期間中に入院もしくは通院した患者・
を得た11医療機関の患者・家族、計120名を中心に分
家族である。調査方法は、SWとの面接予約の有無に
析した。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (81)
【調査協力医療機関一覧】
真栄病院
道東脳神経外科
高橋脳神経外科病院
新さっぽろ脳神経外科病院
清田病院
函館脳神経外科病院
札幌麻生脳神経外科病院
北斗病院
北樹会病院
禎心会病院
西村病院
北海道社会保険病院
倶知安厚生病院
函館市医師会病院
網走脳神経外科・リハビリテーション病院
〔2〕患者の年齢
患者の年齢は、75歳以上が35%と最も多く、次いで
60~74歳が33%おり、60歳以上の患者の相談が全体の
約7割を占めていた。
〈図
1〉
〈図
2〉
〈図
3〉
〔3〕患者と回答者の関係
回答者は、患者本人が36名で30%、家族76名63%、
その他は8名いた。
〔4〕主病名
脳血管疾患が72名で60%と最も多く、その他の疾患
は多岐にわたっていた。
(82) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
〔5〕相談内容
2008年3月
かる。
相談内容は、120名の回答者が232項目にチェックを
また「介護について」「転院のこと」「退院につい
していた(複数回答)
。相談内容の内訳は「介護のこ
て」など、退院後の療養に関する相談を回答者の半数
と」(57件)が最も多く、「その他福祉サービス等」(4
以上である54%(124件)がしていた。
の順に多かった〈図4〉
。
9件)「経済的なこと」(47件)
以上のことから、SWへの相談の約半数が退院支援
特に「介護の相談」は回答者の約半数(57名)が相談
に関する内容であり、医療機関を出た後の療養の相談
しており、悩みや不安を持っている人が多いことがわ
が主流になっているのがわかった。〈図5〉
〈図
4〉
〔6〕相談結果
〈図
5〉
化して療養や介護の見通しをつけたことで介護意欲が
相談結果は、120名の回答者が213項目にチェックし
向上するなど、自分達で退院の方向性を見出し取り組
ている(複数回答)
。具体的には「病院外の機関(他
みはじめたことを表している。このような患者・家族
病院・役所・ケアマネジャー等)と連絡や紹介をして
が潜在的に持っている介護や療養への取り組み意欲を
もらった。
」など“連携”に関することに94名(78%)
エンパワーし、サポートしていくことは、SWの支援
がチェックしている。また「話を聞いてもらって気持
における基本的視点といえる。
ちが軽くなった。
」「自分たちで何とかやっていける見
通しがついた。
」など、“自己対処能力の向上”も83名
(69%)がチェックしており、“連携”と“自己対処
能力の向上”の2項目が突出して多い傾向があった。
この他「情報(制度、他病院、施設、介護サービス)
を知ることができた。
」“情報提供”は20名(9%)い
た。また「相談しても役に立たなかった」1件という
意見もあった。これは自由回答より相談するタイミン
グが早すぎ、患者・家族のニーズに合わなかったケー
スであると考えられた。
以上のように、SWの相談支援を受けた患者・家族
の約8割は、利用可能なサービスと結びついたと他機
関と連携がとれたことを評価していた。また、支援に
おいては、ただ単にサービスを紹介されただけではな
く、自己対処能力が向上した人が約7割いた。
これは、
患者・家族が退院や転院後の生活を具体的にイメージ
〈図
6〉
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
4.考
No.28 (83)
察
SWの相談支援においては、多彩な問題が話し合わ
れる。今日の家族の状況は、単身生活や高齢世帯や、
子供たちと同居していても高齢の患者が昼間1人で生
活しているのも多い。このような状況の中で、在宅療
養に不安を覚える患者やどのように患者を支えるか、
また、支えたいがどこまで介護できるかなど、介護に
不安を抱く家族も少なくない。また、療養先を選定す
るにあたり、長年の家族の持っているしがらみが浮上
し、現実の退院にまつわる問題解決を検討する前に、
この家族のしがらみを解決しないと相談が前に進まな
い経験も、相談現場では珍しいことではない。
SWの支援は、このような生活に関するさまざまな
相談で来談した患者・家族のニーズに対応している。
〈図
7〉
在宅療養をするにあたり、仮に患者への複雑な思いを
さわらないで介護サービスを家族に紹介したとして
〔7〕SWの支援を受けたことに対する自由回答
も、気持ちが受け入れてないので、なかなかサービス
の利用にはつながらないであろう。
・
「連絡をとってくれて助かりました。
」
・
「助かりました。専門に相談するところがあって
患者・家族が安心して積年の思いを語り、SWのよ
うな他者に自分を受け入れられる体験を通して、退院
よかった。
」
後の療養生活の選定も可能になる。今回の調査ではSW
・
「家族だけの情報は少ないのでSWの情報は大変
に相談した約7割の人が自己対処能力の向上をあげて
必要に思います。できるだけ多くの仕事をしてもらい
いた。医療機関におけるSWの存在意義を明らかにす
たいと思います。
」
る上でも、この数字の持つ意味は大きい。
・
「退院後がとても不安(情報不足)
。SWがいる
といないのとではかなり違うと思います。不安を相談
5.まとめ
今回の調査の目的は、相談に訪れる患者・家族が、
によって解消されますので家族はとても助かりま
す。
」
SWにどのような相談し、相談して何を得たのかを把
・
「病の次の心配していた件を相談させていただ
握することであった。相談に訪れる方は、高齢者で障
き、大変安心して療養することができます。ありがと
害や介護が残存する疾病が多く、患者の子供や配偶者
うございました。
」
が重い気持ちで相談室に訪れていることがわかった。
・
そして患者・家族は今後の療養生活をサポートしてく
「これから自分たちはどうしたらよいのかがわか
ってほっとしました。大変たすかりました。
」
れる機関との連携を求めていたことが明らかになっ
・
「あの時相談にのっていただいたおかげで、家族
た。また、その重い気持ちは、SWとの面接により軽
で安心して家庭生活を送れています。複数の選択肢を
くなり、介護や自宅療養の方向性を決める一助となっ
提示していただき、自分たちに合った道を選び進むこ
ていた。
前回のSWの退院支援調査では、以下の5つの有用
とができました。ありがとうございました。
」
・
「中々自分たちの必要なことが受けられるような
保険制度になっていないのがよくわかった。
」
・
性が明らかになった。
!
活用して患者を在宅に戻している。
「自宅看護となりますがケアマネジャーさんと相
談しながら、看護する側の年齢、健康状態等に不安が
SWは福祉サービスをタイミングよく、効果的に
"
SWは直接自宅に退院できなくても、地域・機関
あります。
」
連携を構築し、結果的に在宅療養を可能にしてい
・
る。
「相談に行くのが早すぎたので、どうなるか前へ
進めないでいます。
」
#
SWはカンファレンスを積極的に主催し、院内・
(84) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
院外の連携の要として機能している。
!
SW患者・家族のニーズを尊重し、面接を通して
介護への取り組み意欲を向上させて、在宅等、療養
環境の設定をしている。
"
医療機関や介護保険施設等との機能分化を効果的
に推進している。
今回の患者の視点からみた調査でも上記と同様の結
果を得ており、相談内容の約半数を退院支援が占めて
いた。SWの支援を受けた患者・家族の回答の「連携
をしてもらった」は前回のSW調査の2、3の項目に
充当し、
「気持ちが軽くなり、
今後の見通しがついた。
」
は4、5の項目に充当し、「情報が得られた」は1に
充当するという結果を得た。以上の結果から、患者・
家族にとって退院に関するさまざまな相談に対応する
専門職として、SWの配置は必要であり、SWによる
退院支援必須であるといえる。
以上
2008年3月
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (85)
中央B支部合同
社会福祉専門職の
リハビリテーションに関する予備的研究
研
1.目
究
者
石川 央弥(宮の森記念病院)
若林 朋子(NTT東日本札幌病院)
田守恵美子(介護老人保健施設プラットホーム)
飛内
望(介護老人保健施設プラットホーム)
鳴海 萌恵(札幌江仁会病院)
細川よしみ(共生会病院)
長谷川 聡(北海道医療大学)
的
平成18年の診療・介護報酬改定によりリハビリテー
ション関連病院入院患者は診療報酬制度の都合で退院
老人保健施設5施設と回復期病院2施設のソーシャル
ワーカーを対象にしたインタビュー調査を実施した。
考察に際してはこれらのデータも補助資料として考慮
した。
となるケースが増加した。ソーシャルワーカーは、退
院援助の際にリハビリテーションも考慮した患者の身
表1
対象者
体的社会的状況に応じた退院先を探すこととなり、従
人 数
施設数
区
来とは異なる退院プログラムの立案実施をすることと
地域包括支援センター
2
2
中央区
なった。リハビリテーションプログラムが中途の患者
地域包括支援センター
1
1
北区
が退院することになり、退院元・受入れ先双方のソー
地域包括支援センター
1
1
石狩
シャルワーカーのリハビリテーションに対する考え方
が患者の将来に従前より影響すると推察される。
本研究は医療・福祉施設に勤務するソーシャルワー
所
属
医療機関
42
24
中央区
医療機関
18
11
北区
医療機関
8
3
石狩
居宅介護支援事業所
2
2
中央区
居宅介護支援事業所
4
4
北区
者のリハビリテーションに対する理解と認識に関する
居宅介護支援事業所
1
1
石狩
予備調査を実施して前記の推察の妥当性を検証する。
介護老人保健施設
1
1
中央区
2.対象者の選定方法および概要
介護老人保健施設
7
3
北区
介護老人保健施設
3
1
石狩
北海道医療MSW協会中央B支部会員・准会員・賛
デイサービスセンター
2
1
中央区
助会員(2006年12月1日現在)を対象に、2007年10月
デイサービスセンター
1
2
北区
カーの援助技術方法を探ることを最終目標とし、現任
4~12日を調査期間として、郵送法による質問紙調査
を実施した。調査対象者は表1のとおりである。
3.調査の方法
調査項目は被調査者の基本属性項目の他、リハビリ
テーションの理解や認識に関する自由回答設問4項目
とした。分析はKJ法を参考にした本研究者グループ
による質的分析方法を行なった。
なお調査項目選定のために、事前調査として同支部
障害者小規模作業所
1
1
中央区
札幌保護観察所
1
1
中央区
専門学校
3
1
中央区
その他
7
7
中央区
その他
3
3
北区
(86) No.28
表2
ス タ デ ィ ー ズ
調査項目
4.結
1.リハビリテーションへの参加意識
2008年3月
果
調査対象108名から63名(回収率58.
3%)の回答を
2.リハビリテーションのイメージ
2%)女性39名
得、全て有効であった。男性24名(38.
3.リハビリテーションの認識・理解
8%)年齢は平均32.
2歳(標準偏差9.
3歳)
、平均
(61.
4.リハビリテーションの考え方
2年(標準偏差7.
8年)であった。勤務先は
経験年数9.
7%)、介護老人保健施設4名(6.
7%)、
病院42名(66.
9%)
、その他12名(19.
0
居宅介護支援事業所5名(7.
表3
%)だった。
質問内容
KJ法的分析の結果、リハビリテーションを仕事と
1.あなたは今の職場で「リハビリテーション」
を仕事としていますか?
はい・いいえ
しているかについて、「はい」回答が28名「いいえ」
回答が34名で「いいえ」の方が多かった。
2.あなたが「リハビリテーション」という言葉
北海道あるいは札幌のリハビリテーションに対する
から連想する単語を自由に3つ書いてくださ
意見について「リハビリテーションには地域格差があ
い。名詞でも動詞でも形容詞でも構いません
ることが注目されている」とする意見が17名で、その
が、文や文章ではなく必ず単語を書いてくだ
年齢は30~41歳だった。「リハビリテーションの違い
さい。
がわからない」回答が16名で回答者は20歳代、平均経
3.北海道あるいは札幌のリハビリテーションに
3年だった。また「リハビリテーションは提
験年数5.
ついて、お考えを自由にお聞かせください。
供場所によって捉え方が異なる」「リハビリ提供場所
4.「リハビリテーション」を日本語に訳するな
のレベルは統一されていない」という意見は老人保健
ら、あなたは何と訳しますか?既存の単語で
施設勤務者にはみられなかった。
も、あるいはあなたの造語でも構いません。
リハビリテーションという言葉から連想する単語に
文章による解説ではなく、必ず単語1つで訳
ついて「社会生活への活性」という言葉が想像され、
してください。
リハビリテーションを何と訳するかについては「生き
る」という単語が抽出された。
図1
連想単語
2008年3月
図2
リハビリテーションの訳
図3
リハビリに対する意見
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (87)
(88) No.28
5.考
ス タ デ ィ ー ズ
察
ソーシャルワーカー現任者の北海道あるいは札幌の
リハビリテーションに対する理解には「リハビリテー
ションが多様化している」という傾向がみられた。そ
の背景には!当事者の価値や生活歴などの生活の多様
化"QOLを試行した支援#複数専門職の協働が関係
していると推察される。
患者の入退院や転院(施設入所)という事態におい
て、患者と家族そしてソーシャルワーカー自身のリハ
ビリテーションに対する知識と理解は、ケースワーク
を左右する重要な要因ではないかと推察される。
また「団塊の世代に対する予防の意識付けが必要」
と予防的な視点からリハビリテーションについて考え
ている意見もあった。
本研究では今後、ソーシャルワーカーがそのような
リハビリテーション理解に至った原因を調べると共
に、勉強会や研修等々を通じ専門用語の適切な理解に
よるソーシャルワーカーの援助技術方法を探っていき
たいと考える。
2008年3月
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (89)
5支部合同学会
同期勉強会における連携を考える
研
究
者
根川枝里子(札幌北楡病院)
郡司あさみ(勤医協札幌病院)
竹内 智子(老人保健施設柏が丘)
永山多恵子(東札幌病院)
今井 智瑛(北光記念病院)
梁瀬
愛(札幌北楡病院)
【はじめに】
【概
私たちは連携の一環として、C支部2年目ソーシャ
要】
・開催日…毎月第3火曜日
ルワーカー(以下SW)6名で、今年の4月から勉強
・場
所…勤医協菊水ビルにて開催
会を始め、スーパーバイザーを招き事例検討を行って
・時
間…19時~21時までの2時間
いる。きっかけは、2年目になり勉強会が減ってしま
・形
態…C支部2年目SW6名で運営をしており、
うのではないかという思いや、困難を抱え込まず共有
毎回スーパーバイザー1名を交えて、グル
したい・解決したい思いがあったからである。
ープスーパービジョンの形態をとってい
今回は、これまで行ってきた勉強会の内容を振り返
る。他のSWとの事例の共有や積極的な参
り、得た成果と課題を明らかにし、どのように連携を
加を期待して、グループスーパービジョン
図り活かしていくのかを検討したので報告する。
の形態をとった。スーパーバイザーは、1
保健医療ソーシャルワーク実践2(中央法規出版20
方向のスーパーバイズではなく、参加者の
04年)によれば、連携とは「目的を同じくするものが、
1人であり、経験者としての視点で私たち
(*1)
連絡・協力しあい物事を行うこと」
と定義されて
にはない部分のサポートをしていただい
いる。
【目
た。
的】
・内
容…勉強会は事例検討を中心に行い、毎回様々
な機関の先輩方をスーパーバイザーとして
メンバーは組織内にとどまらず、他機関のSWの視
お招きし、事例の検討・助言をいただいて
点を学び、成長したいという思いが強くあった。研修
いる。事例検討は、単なる内容確認だけで
部などで開催されている勉強会はたくさんあるが、こ
終わらないように、何を検討したいのかを
の勉強会では自分たちが“今まさに”必要としている
明確にし、司会を決めて進行した。
ことを学ぶことで更なる成長を期待し、最終的にはク
・名
称…勉強会の名称は「アップアップの会」であ
ライエント(以下Cl)への支援の質が高いものとな
る。会の名前の由来は、2年目であくせく
ることが目的である。
している様子(アップアップしている様)
、
また、北海道ソーシャルワーカー協会のグランドデ
ザインには、会員が行う地域活動への積極的支援を掲
げており、地域における研究会、勉強会、ネットワー
キングを地域住民の暮らしを支えるスキル向上の手段
として重要視していることも、今回の勉強会開催の根
拠となっている。
そしてその中でも向上(アップ)したいと
いう思いが込められている。
【振り返り】
以下、これまでの事例検討の内容をまとめた。
第1回目は『MSWに対して特別な感情を抱いた患
者のケース』というテーマである。
ClがSWに対して家族以上に愛情を注ぎ、また、
(90) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
家族には見せない感情をSWにぶつけてくるClに対
検討をする中で、SWとして何かをしなければいけ
して、SWとしての対応が出来ていないのではないか
ないという焦りがあること、Clの社会復帰や存在意
と感じていたケースである。
義を先回りして見つけようとしていることに気づい
メンバーやスーパーバイザーからの助言を聞いてい
た。Clのペースに合わせながら、時間をかけてCl
るうちに、事例発表者はClがなぜそういうことを言
らしい生活をみつけるために今までのように一緒に悩
うのか、理由を明らかにせず、言われた言葉に対して
み、迷い、考えるという継続した支援をしていけば良
反応をしているだけだったことに気づいた。そのた
いという確信を持つことが出来た。
め、Clが言った言葉の意図が分からなかった。いつ
の間にか、相手のペースに巻き込まれて、自分もSW
第5回目は『終末期のがん患者への病状説明をめぐ
るMSWのかかわりについて』である。
としての役割を果たせていなくなっていたのかも知れ
ないと気づいた。
第2回目は「認痴症の家族を抱えるClに対するア
プローチ」である。
このケースは、本人がどの程度、病状についての情
報を得たい(あるいは得たくない)と感じているのか
という意向確認と、悪い事は本人に伝えないでほしい
という家族とのかかわりが困難だったケースである。
老健に長期入所しているClに対して、今後の方向
事例検討によって、SWが本人の言葉の真意を本人
性を検討しているが、家族に困難状況があるため、方
に確認せず推測していた為に、本人の得たい・得たく
向性を見出せずにいるケースである。
ない情報が明確になっていないということが明らかに
事例検討によりClに対してのアセスメントのため
なった。そのことを本人に確認し教わらなければ、本
の必要な情報が不足している事に気づいた。また、困
人の本当に知りたいと思っていること(あるいは知り
難ケースと感じていたのはSW自身であり、ケースを
たくないと思っていること)が分らないことに気づく
展開していくヒントを沢山得ることができた。とくに
ことができた。
SWとしての方針を明確にし、方法論を考えていくこ
との重要性を学んだ。
第6回目は『Clと問題を共有することが困難だっ
たケースについて』である。
そして事例を発表することにより、SWとしての役
このケースはSWに不全感が残り振り返りが必要で
割、価値について考えることができ、発表前よりCl
あった。定期的なフォローは行っておらず、時間外の
への関わり方に対して専門職としての自覚を持つこと
救急外来受診を繰り返す認知症のあるClと介護疲れ
が出来るようになった。
がみられる家族に対する支援で、電話で面接を行うこ
第3回目は『日常生活にたくさんの苦労を抱える透
析患者への支援のあり方について』である。
との難しさを感じ、どのように介入してよいのかとい
った疑問を持ったケースである。
多弁なClはSWに対して日常生活の不満・不便さ
アセスメントが十分に行えていなかったことにより
を訴えており、どの訴えに対しても明確な答えを提示
Clを捉えることが出来ず、援助方針が定まらなかっ
できずに傾聴を続けており、効果的なコミュニケーシ
た。事例検討を行う中でそれが具体的にどのような情
ョンや、どのように問題解決したら良いのか分からな
報が不足していたのか、問題の優先順位を決め1つ1
かったケースである。
つの問題に焦点をあてることの重要性に気づいた。ま
事例検討によって、SWの役割を提示し面接の契約
をすることの重要性が理解できた。
福祉用具や制度を当てはめるだけがSWの支援では
なく、困難な現実をClと一緒に考えていくことや、
Clのできることに焦点をあてたエンパワメントの視
点によりClの新しい理解につながった。
第4回目は『中途失明のClと向き合うことの難し
た、SWはClにとって一社会資源だという自覚を持
ち、Clの持っている力の評価を行いながら役割を提
示し契約することについて改めて学ぶことが出来た。
【成
果】
〈事例検討による成果〉
!
異なる職場で働く仲間の視点や切り口によって、
今まで悩んできたケースが整理され、気づくことの
さについて』である。
手術を繰り返すが失明に至り、生きがいを失ったC
出来なかった視点について改めて見直し、何が問題
lに対する支援で、長く深い関わりとなり冷静にCl
で他にどのような介入方法があったのかを改めて考
と向き合い、適切な援助が出来ているのか疑問に思っ
えることができた。
たケースである。
"
Clの行動・言葉の根拠・意図を明確にすること
2008年3月
#
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (91)
でClの理解が深まり、Clの力を信じることの重
ーパービジョンの短所としては、個人的な気持ちや問
要性も理解することができた。
題は隠されてしまう、自由に意見が出せない状態にな
事例検討する中で、そのClとSWをもっと理解
るメンバーもいるという点があるが、同期で集まって
したいと思い、ClとSWの感情やおかれている状
いる場合はこの短所は発生しにくいのではないかと考
況を想像・共感しようとする力が生まれ、それを客
える。
観的に考える力もついた。
また、非難・中傷をしない、お互いの意見や価値観
を尊重する、皆が発言できるよう配慮するなど、同期
〈勉強会全体としての成果〉
で行っている点では、ピアスーパービジョンの基本的
$
この勉強会はメンバー全員が同期という点、人数
姿勢と共通するものがある。私たちの形態としては、
が6人と少数である点で、臆することなく自由に意
グループスーパービジョンのように見えるが、スーパ
見を交換することができ、参加したメンバーは上記
ーバイザーとしてお招きしている先輩方にも、メンバ
のような収穫が多く得られ、満足感は高かった。
ーの1人として参加して頂いている。そのため特定の
%
異なる機関のSWと情報共有をし、機関の特色や
メンバーばかりが話すということは無く、形態はグル
相談内容の違いを照らし合わせることで、自らの機
ープスーパービジョンでありつつも、ピアスーパービ
関におけるSWの立ち位置を改めて考えるきっかけ
ジョンの利点は取り入れられていることに気づいた。
にすることができた。
&
SWとしてスキルアップし、Clの対応をよりよ
いものとしたいという共通の目的を持ち、困難や悩
'
(
)
*
【課
!
題】
長期的な計画ができていないが、今回検討した結
みをどのようにしたら解決・打開していけるかを、
果、事例検討を行った次の週に、報告者の実践が前
知識や意見を交換・共有しながら学びを深め、切磋
回よりどのように変わったのか時間をとって報告・
琢磨している。よって、単に同期で集まって話し合
話し合いを行っていきたいと考えている。それによ
いをしているわけではなく、SWとしての質の向上
って自分の支援が変わった点、前回学んだことをど
の為にお互いを社会資源として活用し、ネットワー
のように活かし、活用していくのかを再確認できる
クを作っている。
のではないかと考える。また、3ヶ月に1回のペー
毎回異なる機関のスーパーバイザーを招いている
スで、この勉強会の成果がわかるように個人評価の
こともあり、新たな視点、縦のつながりも得ること
尺度などを用いることで、勉強会の効果を数値化で
ができた。
きればと検討している。
他で開催されている勉強会で得るものもとても多
"
これまでは少人数であることがメリットであった
いが、自らが学びたいことをどのように学んでいく
が、急性期の病院が多く偏りがみられる。療養型病
のかを1から考えていくことは、責任感や参加意欲
院のSWや地域のSWの参加について話し合う必要
の増大につながっている。言いたいことがいえる、
がある。メリットとしては、療養型や地域の機能・
自由な発想・発言ができ、批判しないため、参加者
特性、新たな視点を得ることで、連携が広がるので
全員が十分に参加できる形態である。
はないかという期待がある。一方で、人数が多くな
支部で開催されていた勉強会の内容が、今行って
ることで会のまとまりや責任感が薄らぎ参加意欲が
いる私たちの勉強会で技術や知識をどのように活用
低下していくのではないかという不安がある。今後
していくのかを確認することができている。理論と
は勉強会をどのように発展・活用させていくのかを
実践を結びつけるきっかけとなっている。
検討していく。
事例を解決することだけが目的ではなく、全員の
振り返り、支援にも生かすことができている。
#
今まではグループスーパービジョンの形態を取っ
てきたが、進め方は自己流で行っている部分もあ
る。グループスーパービジョンについても学び、ど
ワ ー カ ー を 育 て る ス ー パ ー ビ ジ ョ ン(中 央 法 規
(*2)
のような進行がふさわしいのかを検討していく。い
2000) によると、グループスーパービジョンの長所
ずれはメンバーそれぞれがスーパーバイザーとして
は他のメンバーの意見を聞き相互に意見交換すること
基本的なことを身につけ、ピアスーパービジョンを
で、新しい気づき、共感が生まれることがあるという
行えるようになり自主的に活動を続けていけるよう
ように、%のような成果が得られた。逆にグループス
になりたい。
(92) No.28
$
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
今後は事例の検討だけで終わるのではなく、さら
はたくさんあがった。以下の表におおまかな予定を
に実りある勉強会とはどのようなものかを模索して
まとめた。さらなるSWとしての専門性の向上を目
いる。
指し、最終的にはClへの支援の質の向上を目指し
具体的には、文献を読み解く、他機関の機能や特
ているので、具体的にどのようにこの勉強会を活か
性について学ぶ、アプローチ方法を学ぶ、価値と倫
していくのかを検討していきたい。
理についての理解を深めるなど実践してみたいこと
今後の予定
12月
!今後の本読みなどの参考文献を検討
"自己評価
#今までの勉強会の振り返り
1月
!事例検討(アプローチ・価値・倫理についても検討)
2月
!前回の事例検討した結果、なにか変化があったかを検討
"制度・本読みなどをし、知識を深める
3月
!事例検討(アプローチ・価値・倫理についても検討)
"自己評価
4月
!前回の事例検討した結果、なにか変化があったかを検討
"制度・本読みなどをし、知識を深める
5月
!事例検討(アプローチ・価値・倫理についても検討)
6月
!1年のまとめ
"今後の活動について検討
#自己評価
$勉強会の評価
【終わりに】
私達の考える今回の連携とは、「お互いを社会資源
として活用しネットワークを作ることである。その上
でSWとしてスキルアップしClの利益につなげたい
という共通の目的を持ち、困難や悩みをどのようにし
たら解決・打開していけるかを、知識や意見を交換・
共有しながら学びを深め、切磋琢磨していくこと。
」
である。
自発的に行っている勉強会のため、モチベーション
は高く、自主的に勉強会を開催することでのメリット
はとても大きいと感じている。与えられたものだけで
はなく、自ら動いていくことの重要性を再確認でき
た。
今後は上記の課題を検討すること、さらに現状に納
得せずClの不利益になるような制度上の問題点にも
目を向け、会に留まらずネットワークを広げソーシャ
ルアクションにもつなげていくことができるようにな
りたいとの希望もある。
最後に先輩方にもご協力ご指導を頂き勉強会を充実さ
せていきたい。
参考文献:
(*1)保健医療ソーシャルワーク実践2
出版 2004年
中央法規
p240 引用
(*2)ワーカーを育てるスーパービジョン
社会福祉協議会編
中央法規 2000年
奈良県
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (93)
中央E支部合同
医療・介護難民を出さないために
~介護療養型病床の行方~
発 表 者
共同研究者
久保
谷口
竹田
雄資(北海道社会事業協会余市病院)
知広(札幌秀友会病院
玲奈(札幌山の上病院)
はじめに
2004年における療養病床実態調査を受け、厚生労働省
は療養型病床に入院中の患者の半数以上が社会的入院
であると発表しました。
そして、2011年度末までに現在13万床ある介護療養型
病床が廃止されることになりました。
厚生省によると介護療養型病床は、老健・特養・グル
ープホーム等の施設へ転換されることになります。
目的
前述のような状況を受け、介護療養型病床廃止の動き
が、患者・家族に具体的にどのような影響を与えるの
かを明らかにし、SWにとってよりよい実践とは何か
を知ることを目的とし、研究を行いました。
方法
方法は、介護療養型病床の現状を明らかにするため、
共同研究者を含む3名が介護療養型病床を有する医療
機関へ訪問し、SWにインタビュー調査を実施しまし
た。
(94) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
調査
調査は、北海道医療ソーシャルワーカー協会中央B・
E支部の療養病床を有する全18医療機関のうち7機関
を対象とし、2007年9月18日から10月12日までの期間
で実施しました。
調査結果!
調査した病院における要介護度は、3・4・5の割合
が90%以上でした。
調査結果"
介護療養型病床廃止に伴う動向について、調査した7
件のうち2件が、医療療養型病床への転換をすでに行
なっていました。
また、残りの5件は、転換先を未定としながらも、医
療療養型病床あるいは障害者病床への転換を検討して
いました。
調査結果#
転換に伴う患者の動向について、3医療機関において
要介護度の低い患者を他院・他施設へ移行させる動き
が見られました。
3医療機関とは、調査結果!で述べた、医療療養型病
床へすでに転換した2件と、医療療養型病床へ転換を
検討している3件のうちの1件です。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (95)
調査結果"
患者と家族の要望について、経済的負担が今よりも増
加するのではないかという不安、医師・看護師がいな
い環境は不安であるといった声が上がっており、今の
病院に長くいさせて欲しいという要望が強くあること
が明らかになりました。
調査結果#
厚生労働省が介護療養型病床を廃止すると決定した後
の受け入れ基準について、受け入れ基準に変化があっ
たと答えた病院が半数以上で、要介護度・医療区分の
高い患者を中心に受け入れるように変わったというこ
とが明らかになりました。
これは、介護療養型病床廃止後の転換先が未定である
ことや、昨年7月に医療区分が導入されたことが影響
していると考えられます。
調査結果$
ソーシャルワーカーの声として、特養・老健の不足や
サービスの地域間格差が存在するため、必要なサービ
スを活用できないのではないかと危惧する声が挙がっ
ていました。
考察!
現時点では介護療養型病床を施設へ転換させることを
検討している病院は無いうえ、患者の受け入れ基準に
も変化が生じています。
上記のように、病院として存続するための対策が検討
されてはいるものの、制度の行く末が不透明であり、
今後も状況が変化することを私たちは理解する必要が
あると考えます。
(96) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
考察!
患者・家族の不安は多くありますが、私たちはその想
いを受容し、患者・家族にとってよりよい生活の場を
ともに考えていく必要があると考えます。
結論
私たちは、介護療養型病床のおかれている状況や動向
を理解したうえで、患者と家族のニーズを把握し、共
に歩んでいかなければなりません。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
No.28 (97)
中央B支部研修報告
中央B支部研修部
桑園病院
花川病院
北海道大学病院地域連携医療福祉センター
札幌中央病院
西円山病院
徳永
小木
佐藤
松尾
出井
達哉
絢介
由佳
映夢
聡
関係作りが行なわれている中で、安心して発言できる
〈はじめに〉
ということもあるだろうが、その質疑に2,3年目の
平成19年度の中央B支部研修部では、「支部の組織
若手MSWも積極的に発言していることにも注目した
作り」「専門職としての資質の向上を目指した勉強
い。このことについては別項の新人研修において触れ
会」「新人教育」の3本柱を中心に今年度の予定され
ることにする。
た事業を行なうことができた。連携について会員で考
またこの勉強会では機材トラブルが起こりパワーポ
える機会、事例検討会、グループワークを用いての2
イントを映せない状況になった。このような時にMS
回の新人勉強会、ロールプレイを活用してのSST勉
Wとしてどれだけ冷静に、そして臨機応変に対応でき
強会などを企画した。ここでは今年度の活動を振り返
るかが重要であると講師の出井氏から学ばせてもらっ
りながら、B支部の研究の現状と課題について考察す
た。クライエントと関わる中でも、時にあっと驚く場
る。
面に出会うだろう。その時にいかに冷静に物事を進め
られるか、一緒に考えていけるかが問われるのだと思
〈勉強会の実施内容〉
(1)第1回勉強会
日
う。
勉強会終了後には、支部交流会を開催した。ベテラ
ンMSWの参加も得られ、貴重な交流の場となった。
時:H19年7月20日"
テーマ:「ソーシャルワークにおける連携」
(2)第2回勉強会
時:H19年9月20日!
場
所:リンケージプラザ3F研修室
日
講
師:出井
テーマ:「事例検討会」
聡氏(西円山病院)
参加者:33名
事例提供者:大木
由子氏(新川病院)
例年通りに第1回目の勉強会は、顔合わせの意味も
検討会司会:水田
陽一氏(いしかり脳神経外科ク
込めて集まりやすい内容で実施。部署内や他職種との
リニック)
連携、地域でのMSWとしてのかかわりなど、講師の
場
出井氏の体験を踏まえてお話いただいた。日々の業務
参加者:26名(1名、実習生)
の振り返りを行なうと共に、改めて連携について考え
第2回目は事例検討会を行なった。昨年、数年ぶり
る機会となった。また日々の業務やケースを通じて感
に支部で事例検討会を行い、事例検討会になれていな
じている連携の壁について解決するヒントを持ち帰る
い会員が多く、生の事例を通じて学ぶことの大切さを
ことができたのではないかと感じる。
再確認した。今回の事例検討会では事例のまとめ方、
所:北海道医療大学サテライトキャンパス
今回の勉強会は講義形式であり、参加者が発言する
検討して欲しいポイントが的確にまとめられていた。
機会は少なかったが、終わりの質疑応答では質疑が飛
MSWとしてケースをまとめること、そして相手にわ
び交い、講師と参加者のやり取りが続き大変盛り上が
かりやすく伝えることの重要性に気づいた。
る一面も見られた。MSWの姿勢として非常に重要な
また、司会の水田氏からは、的確に進行を進める技
ことであると感じる場面であった。もちろん支部での
術を学んだ。MSWは面接やカンファレンスなど多く
(98) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
の場面でコーディネーターとして役割を担わなければ
新人研修としては、例年通り中央5支部合同学会に
ならない、事例検討会での事例内容の検討も大変有意
向けて、新人のワーキンググループを作り、演題を発
義なものであったが、ベテランMSWのこういった技
表した。演題テーマは「社会福祉専門職のリハビリテ
術を多く盗んでいくことの必要性も感じている。
ーション理解に関する予備的調査」
。今年は新卒の新
今後も身近に事例検討会が行なえるような体制を作
っていく必要があると感じた。
人が少なかったので、北海道医療大学の長谷川氏に協
力を依頼し、研究の方針や内容のアドバイスを頂きな
がら、KJ法を用いてデーター分析を行なった。準備
(4)第3回勉強会
期間が短かったこともあり、もう1歩という内容では
時:平成19年11月23日"
あったが、今後につながる「研究の仕方」が見えてき
テーマ:中央5支部合同学会
たのではと感じた。また日々の臨床活動のスキルアッ
場
プにつながる気づきや技術開発につながるヒントを得
日
所:ちえりあ
参加者:41名
ていくことができたのではないだろうか。
第3回の勉強会は中央5支部合同学会にあて、41名
昨年までは新人のワーキンググループを行なってい
の参加を得た。B支部では新人MSWが集まり演題発
たので支部において新人研修会は開催していなかった
表を行った。
が、今年度は初めて支部で新人研修を行った。新人研
修会の中心は昨年の中央5支部合同学会に発表した2
(5)今後の研修会
日
時:平成20年2月7日!
年目の支部会員であった。昨年の経験を後輩に伝え、
またグループワークではバーバルのみならずノンバー
テーマ:「SST」
バルなメッセージを受け取りながら、多くの面接技法
場
所:北海道医療大学サテライトキャンパス
を駆使しながら進める姿が見られた。
講
師:元井昭紀氏
(就労・生活サポートセンター手稲)
第4回はSSTというテーマで講師に就労・生活サ
この光景は支部の研修会でも同様に見られ、積極的
な発言、質問、疑問を聞いてみることができ、MSW
としての成長を確認することができた。
ポートセンター手稲の元井氏を迎えて、SSTの基
新人勉強会では、「現場の若手MSWに何が起こっ
本、そして、MSWとしてのSSTの活用方法を学ぶ
ているのか」ということが少し見えた機会でもあっ
予定である。日々の業務で壁にぶち当たったり、ジレ
た。「若手MSWの倫理や価値が揺らいでいる」とい
ンマを感じたりという身近な問題において活用できる
うような話を聞くことがあるが、その判断は、新人の
ことを期待している。
何をみて、どのような判断基準の中で出てきた見立て
なのか?今回の勉強会のグループワークを通じて、推
〈新人教育〉
(1)第1回新人勉強会
日
時:H19年6月8日"
論も含めて以下のことを感じた。
まず、今の新人達の置かれている環境はきびしいも
のがあるということ。機関から縛られる業務が多すぎ
ること。市場原理の導入とは利益追求のために動くと
テーマ:「共に成長していける仲間をつくろう」
いうことであるから、ゆっくりとクライエントの人生
場
を考えるゆとりは昔ほどないのではないか。
所:桑園病院
対象者:入会1~3年目までのB支部会員
参加者:17名
しかも、機関からはたかだか3年程度で「相談室責
任者」という立場を期待されることも少なくない。ま
た推論のもうひとつは、国家資格化によって大量生産
(2)第2回新人勉強会
日
時:H19年8月24日"
されたワーカーはおそらく、その昔にソーシャルワー
カーをあえて選んだ先輩達よりも動機という点では弱
テーマ:「実践を振り返る~研究を通じて~」
いかもしれないということである。そのうえ、社会一
場
般にいえることだが、コミュニケーションの力は明ら
所:桑園病院
対象者:入会1~3年目までのB支部会員
講
師:木田智也氏(同交会病院)
参加者:15名(2名、実習生)
かに落ちてきている。
したがって、「何もないから作り出した」先輩たち
と、「与えられた業務を安全にこなす」新人達との違
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
いを単純に「倫理や価値」の問題として比較対象でき
ないのではないだろうか?
新人の勉強会においてはもちろん恵まれた先輩、職
場、仲間という土台があって初めて、日々の業務を振
り返ることができるものなのかもしれない。時には数
回の研修よりもピアな関係の中で職業倫理を語り合う
ほうが意味があるのかもしれないと感じた。
〈おわりに〉
ソーシャルワークを他の援助技術と比較したとき、
その伝承性の難しさを感じる。視点の置き方、人権や
自己決定など守るべき姿勢、対人援助ということへの
意識など、これらは言語的に伝えることはできるが、
それと実践での技術とはまた別なもののような気がす
る。そういった言語化が難しい部分の研修を支部で少
しでも行なっていく必要があるのではないだろうか。
これからも「ゆらぎ」を大切にして一緒に考えていけ
る勉強会を開催したい。
No.28 (99)
(100) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
中央E支部研修部報告
小樽協会病院
札樽病院
西成病院
南小樽病院
札幌市手稲区地域包括支援センター
斉藤
北川
小林
泉田
沖
俊輔
薫
英子
智子
隆一
きました。他の参加者にとっても緊張感のある大変刺
〈はじめに〉
激的な事例検討会となったのではないかと思います。
今年度、中央E支部では、例年行われている事例検
その後に行われた新人歓迎会では、新人5名を含めた
討会・新人歓迎会、1泊研修を企画し、無事行うこと
25名の参加があり、より一層親交を深める事ができま
ができました。特に、2年に渡って行うことのできな
した。
かった1泊研修を去年に引続き今年も開催することが
今回、初めての取り組みとして各事例提出者に助言
でき、当支部内の研修会として定着してきたように思
者を付けて、助言者には準備の段階からサポートして
います。
頂き、当日のグループの司会進行もして頂くという形
今年度中に開催予定の研修もありますが、ここでは
をとりました。
現在までに行われている研修会についてご報告いたし
事例提出者の方は事前に打合せをすることで発表の流
ます。
れ・検討してほしい課題を明確にして当日を迎える事
が出来たのではないかと思います。
初めての取り組みに研修部として企画段階から検討
〈実施内容〉
を重ね苦労しましたが、反省点など来年に活かしてい
1.事例検討会・新人歓迎会
きたいと考えています。
事例検討会はSWの基本の研修と位置づけ、平成14
年度から毎年実務経験2年目以上になるSWに事例を
提出・発表して頂いています。今年で6回目となりま
2.1泊研修会
平成19年9月29日"~30日!の2日間、仁木町の「フ
ルーツパークにき」で1泊研修を開催しました。参加
した。
今年は6月23日"の午後から札幌第一病院で行わ
事例は、
れ、新人5名を含む37名の参加がありました。
札幌市手稲区地域包括支援センター
者は、宿泊者10名、日帰り3名の計13人でした。
1日目の研修会では、札幌市手稲区地域包括支援セ
沖隆一氏の「不
ンター、副センター長の藤田修一氏を講師に迎え、
「地
安を抱えた利用者に対するソーシャルワーカーとして
域包括支援センターについて」というテーマでお話を
の関わり」と、札幌第一病院
赤澤千佳子氏の「退院
して頂きました。「地域包括支援センターとは」
、「地
援助と家族関係の調整~交通外傷を負ったクライエン
域包括支援センターの昨年度実績」
、「地域包括支援セ
ト(A氏)の事例~」
、静和記念病院
長谷川敦子氏
ンターとMSWの連携について」など具体的にわかり
の「本人と家族の意向が異なる場合の関わり方につい
やすく説明して頂きました。参加者から積極的な質問
て」の3題の発表がありました。
や発言などが多くあり、地域包括支援センターについ
各グループ内では司会進行のもと、各事例について
1時間以上話し合われ、新人・ベテランを問わず様々
な発言が活発にあり、事例提出者に対し鋭い質問や意
ての理解が深まったと思います。
研修会終了後は、宿泊するコテージの前でバーべキ
ューをして、より交流を深めることが出来ました。
見、アドバイスが出ていました。終了後、各グループ
翌日は、余市でボーリングをしたり、小樽で温泉に
から新人SWに話し合われた内容の総括を発表して頂
入ったりと、お楽しみ企画を満喫することが出来まし
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
た。
No.28 (101)
も急遽中止となりましたが、私たちの努力も虚しく、
今年度の1泊研修も、会員の方々の協力によって無
今年度正式に中止が決定されました。その後はこれに
事に終了することが出来ました。ただ、一般の研修会
代わる研修を行うことを目標に、新しい研修の企画を
より参加者が少ないことが今年度も課題として残りま
検討していきたいと思います。現在、後期高齢者医療
した。「1泊研修でしか得られないもの」
を盛り込み、
制度の研修を企画しており、それを無事成功させたい
多くの参加者が集まるような1泊研修を企画できるよ
と思っています。また、現在会員向けに研修のアンケ
う、今後も検討していきたいと思います。
ートを企画・製作中であり、この結果も踏まえて今後
の研修に生かしていきたいと考えています。
3.中央C・E支部合同研修会
平成19年10月9日!社会福祉総合センターにて、中
央C支部との合同研修を開催しました。東支部の北斗
病院
高田康範氏を講師としてお迎えし、「MSWの
業務確立セミナー『目標は数字で
~成果尺度を何に
しようか~』
」というテーマで講義をしていただきま
した。
今回はC支部と合同という形で開催し、平日にもか
かわらず44名の参加がありました。
北斗病院にて企画室室長として病院企画経営・広報
戦略に携わっている高田氏から「業務と数字化」とそ
の必要性についてわかりやすくお話していただきまし
た。
MSWとして行っている業務の中でも、数字か出来
るものはあり、数字化することで、自らの援助内容や
援助効果、業務量等が示しやすくなり、自分の傾向の
把握にもつながる。また、今後MSWは専門性と経営
のバランスや成果を求められるようになり、配置する
ことの有用性をアピールしていくためにも重要となる
だろうと講義をいただきました。
C支部との合同研修を行えた事で支部同士の連携に
もつながっていく機会を得ることができた研修会とな
りました。
〈おわりに〉
現在、中央E支部研修部は5名体制で、研修を企画
し、運営やその補助を行っております。会員の皆様が
参加したいと思うような研修したいと、部員一同頭を
悩ませております。そういった中、事例検討会・新人
歓迎会、1泊研修を企画し参加者を得ることができま
した。また今年度はC支部との合同研修を行うことも
でき、今後もこういった他支部との交流ができる研修
を継続していきたいと考えております。
しかし、残念ながら今年度にて当分の中止を余儀な
くされた研修もありました。長年に渡り開催されてき
ました、札幌市手稲区保護課との研修会です。昨年度
(102) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
2008年3月
南支部研修部活動報告
函館脳神経外科病院
【はじめに】
尾崎
日
時:平成19年10月21日~22日
場
所:湯の川温泉「啄木亭」
聖
今年度研修部では、会員の声を聞きながら、研修を
計画し実施した。
以下に、
実施状況について報告する。
(3)研修会「カンファレンス開催の仕方」
他職種との連携やカンファレンスの中でMSWがど
のような役割を果たしたらよいのかを、包括支援セン
【実施内容】
ターでの実践の話から学ぶ研修会を開催した。
(1)連続講座「事例検討と事例発表の仕方」
事例発表について、その機会が少ないことや、発表
日
時:平成19年11月21日
の仕方が分からないといった声が聞かれた。そのた
場
所:なるかわ病院
め、本講座にて、各参加者の事例に触れ、事例発表の
講
師:七飯町地域包括支援センター
安心ななえ
仕方について学び、そして、実践できる機会を提供す
谷口真樹氏
ることとした。
(4)南支部新人研修
!
今年度より、5年未満の新会員向けの研修会を開催
第1回「事例検討」
日
時:平成19年7月23日
していくこととした。内容は支部の紹介を中心とす
場
所:市立保健所
る。同時に、交流を深めることも目的に、組織部で実
講
師:函館中央病院
田中博光氏(第2、3回目
施している座談会との同時開催とする。
も担当)
"
第2回「事例発表」
日
時:平成19年8月23日
場
所:函館脳神経外科
#
第3回「事例発表」
日
時:平成20年2月9日実施予定
場
所:富田病院
【おわりに】
開催した研修会を振り返る中でいくつかの反省点が
日
時:平成19年9月11日
でてきた。私たちがクライエントと関るときに援助目
場
所:市立保健所
標、援助計画を立てるように、開催する研修の目的を
明確化し意義を深める話し合いに時間をかけること。
(2)第35回日胆支部南支部合同研修会
そして、研修準備をスムーズに進めるため計画を立て
毎年開催している日胆支部との合同研修会を開催し
講師、部員間の綿密な打合せをすることに時間をかけ
た。1日目は、ウィメンズネット函館の古川満寿子氏
る必要があった。今後も研修部内の連携を深め、参加
に、近年身近に聞こえるDVについての被害や医療従
者の身になる研修会を開催していきたい。
事者としての援助について講義していただく。また、
2日目には、4名の研究発表を行っていただいた。
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
北支部研修部
No.28 (103)
活動報告
旭川厚生病院
佐野病院
森山病院居宅
北星旭星地域包括
一条通病院
老健かたくりの郷
道北勤医協宗谷医院居宅
富良野西病院
北星脳外病院
〈はじめに〉
!
須田 明子
宮下 千鶴
高橋 久悦
木谷 靖典
竹田 好江
石山 武浩
野村 昭典
山田 麻理
佐々木しのぶ
春期研修
日時:平成19年5月19日$14時~16時
今年度は昨年度に引き続き、「現任研修・ブロック
場所:上川教育研修センター
研修・新任研修」の3本柱での企画運営を行いまし
内容:「高次脳機能障害の当事者に聞く~障害に
た。今年度は研修部員・ブロック研修担当者・支部長
向き合う自分・家族」
間でのメール活用により、研修の準備から運営まで部
講師:谷口
員間のタイムリーな情報の共有ができ、全体の進行状
参加者:31人
直英・昌江
氏
況を常に把握できたため、効率的な研修運営ができま
した。
"
夏期研修
日時:平成19年9月29日$14時~17時30分
場所:上川教育研修センター
〈実施内容〉
内容:「アサーティブトレーニングで効果的な自
!.現任研修
己主張の達人になろう%」
年度始めに研修内容についてじっくり議論し、「コ
講師:NPO法人「リカバリー」
ミュニケーション」を年間の研修テーマとし、「アサ
センター・リカバリーハウス
ーティブトレーニング」をシリーズ化して研修を企画
それいゆ
代表
大嶋
栄子
地域活動支援
氏
参加者:21人
運営しました。シリーズ化したことで、講師との連携
が取りやすく、研修内容としてもより深く研修テーマ
を学ぶことができました。特にアサーティブトレーニ
#
冬期研修
ングをロールプレイで実践できたことは知識だけでは
日時:平成19年12月1日$14時~17時30分
得られない感覚を体験できる上、すぐに実践に生かせ
場所:上川教育研修センター
る面で参加者の満足度が高かったようです。
内容:「アサーティブトレーニング
次年度も年間テーマをしぼりシリーズ化した研修運
営を行う予定ですが、今年度はテーマをしぼり込むの
実践編」
講師:NPO法人「リカバリー」
に苦労したため、今後は早い段階での企画が必要と考
センター・リカバリーハウス
えています。また会員にも早い段階で研修日程やテー
それいゆ
マをインフォメーションすることで、各自の年間スケ
ジュールに組み込みやすくすることと、研修参加の動
機づけにつなげたいと考えています。
パート2
参加者:12人
代表
大嶋
栄子
地域活動支援
氏
(104) No.28
ス タ デ ィ ー ズ
!.ブロック研修
2008年3月
ことを実感してもらいたいと考えています。
北支部では支部全域向けの研修とは別に、富良野ブ
今年度は新任研修の場がそうしたネットワーク作り
ロック、宗谷ブロック、北網ブロックの3地域に分け
の場になるよう企画運営してきましたが、そうしたネ
ブロック研修を行っています。今年度は宗谷ブロック
ットワーク作りの一環として研修部と新任者との関係
での研修の開催、北網ブロックではSW間の連携づく
づくりのためにも、2回目の研修開催にあたっては、
りのための懇親会を行いました。
研修部員が役割分担し新任者全員に研修参加の呼びか
研修部としては、ブロック単位という身近で研修が
けをしました。研修参加の呼びかけについては、研修
開催できることで、どの地域の会員にも研修という形
の趣旨を案内文だけでなく直接伝えることができ、ア
で会費を還元できること、遠方で研修に参加すること
ンケート結果からも参加の動機になったとの声もあっ
ができない会員にも有益であることが、ブロック別に
たことから、次年度も継続を検討したいと考えていま
研修を開催する意義になると考えています。しかし、
す。
こうしたブロック研修の趣旨を研修部員内で話し合
また、今年度は新たな試みとして座談会形式の研修
い、共有することができていなかったため、ブロック
を開催しましたが、新任会員やシンポジストである先
担当者にも伝えることができませんでした。
輩会員からも好評だったため、次年度も参加しやすい
次年度はブロック担当研修部員の意向を早い段階で
研修形態で新任者が交流・情報交換できる研修を企画
確認し、ブロック担当者合同会議を開催し、ブロック
運営したいと考えています。
研修の企画運営の支援を行いたいと考えています。ま
!
第1回新任者研修
た、ブロック担当者が代わっても、ブロック研修の趣
日時:平成19年8月11日%15時~17時30分
旨を含めた運営内容が引き継がれるよう、必要があれ
場所:上川教育研修センター
ばブロック研修マニュアルの作成を各担当者の意向を
内容:「ソーシャルワーカーになってみて」~業
務の理想と現実のギャップについて
聞きながら検討したいと考えています。
!
講師:森山病院居宅介護支援事業所
宗谷ブロック
日時:平成19年9月15日%15時30分~17時30分
高橋
平成19年9月16日#9時~12時
久悦氏
参加者:5名
場所:稚内市総合福祉センター
内容:「実践が生きる個別支援計画」
"
第2回新任者研修
宗谷圏域障害者総合相談支援センター
日時:平成19年11月10日%15時~17時30分
道MSW協会北支部研修部宗谷ブロック
場所:上川教育研修センター
共催
内容:「新任MSWのためのソーシャルワーク座
講師:日本福祉大学
教授
木全
和巳氏
参加者:2日間で約150名
談会~先輩ワーカーに聞きました~」
パネラー:旭川医科大学附属病院
旭川厚生病院
"
木下
佐藤
雅子氏
千尋氏
北網ブロック
道北勤医協一条通病院
日時:平成19年10月11日$
高砂台病院
樺澤
康裕氏
内容:懇親会
はらだ病院
山田
純一氏
参加者:8名
リハビリテーション病院
鈴木
天日
孝枝氏
理沙氏
参加者:9名
".新任研修
SSCN(Socialworker
Support
Communication
Network)と命名し今年度は2回新任研修を開催しま
した。
〈おわりに〉
今年度は学会の準備も重なったため、例年より部員
研修部では新任者が、道協会という職能団体に入会
各自が協会活動に費やす時間が増加した状況の中、研
し、支部研修に参加することで、困ったことがあって
修の企画運営を行ってきました。そうした中でも鈴木
も身近なところでサポートを受けられること、日常業
支部長や道研修部山崎氏らアドバイザーの助言のもと
務の中だけでは築けないネットワークづくりができる
研修部員それぞれが積極的に研修運営に参画すること
2008年3月
ス タ デ ィ ー ズ
ができました。次年度は、研修部の運営体制をさらに
強化するために、経験年数の若い会員をはじめとした
部員の拡大を検討し、新しい風や意見を取り入れてい
きたいと考えています。
また、今年度の企画運営の経験を生かし、より効率
のよい研修運営や研修部員育成を行っていくため、研
修マニュアルの作成を予定しています。今後も部員内
で役割分担しながら研修運営し、顔のみえるネットワ
ークづくりに尽力していきたいと思います。
No.28 (105)
デ
!
2
編集:北海道医療ソーシャルワーカー協会
調査研究部
発行:北海道医療ソーシャルワーカー協会
!
北
海
道
医
療
ル
協
会