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第56次(平成22年度)海外電設視察団報告書
目
次
ページ
はじめに ··········································································· 1
Ⅰ.行程・団編成・訪問国の概要
1.行 程 ·································································· 1
2.団編成 ·································································· 3
3.訪問国の概要 ································································ 4
Ⅱ.ベルリン市
4.ポツダム広場再開発地区 ··········································· 6
5.ドイツ鉄道ベルリン中央駅駅舎 ·································· 9
Ⅲ.フライブルク市
6.リーゼルフェルト地区住宅団地(省エネルギー団地) ······· 11
7.フライブルク市環境保全局訪問 ······························· 15
Ⅳ.アムステルダム市
8.ニューランドプロジェクト(ソーラー発電利用団地) ······· 19
9.ゴミ処理施設(デ・メールランデン社) ··················· 26
[参考] (社)日本電設工業協会(JECA) について ······················· 29
まとめ ··········································································· 30
2010 年 11 月 8 日経営企画委員会
はじめに
(社)日本電設工業協会は、平成 22 年 9 月 28 日から 10 月 6 日までの 9 日間、先進
的な環境保護政策を実施しているドイツ(ベルリン・フライブルク)及びオランダ(ア
ムステルダム)の 2 ヶ国 3 都市、5 現場 1 訪問に、第 56 次海外電設視察団を派遣し
た。
当協会の海外窓口である経営企画委員会の国際交流専門委員会において、実施計画
等の準備が進められ、本年 5 月から参加者の募集を開始し、8 月 10 日に募集を締め切
った。最終的には、当協会の井上健副会長(運営委員長)を団長とする総勢 19 名の
視察団となった。
低炭素社会の実現という全地球的課題に向けて、電気設備工事業界としては設備や
システムを通じて低炭素化を進めるという具体的な行動が取れるポジションにおり、
その役割は大いに期待されている。また、国内の電気工事受注高の減少や受注競争の
激化等、電気設備工事が飽和状態であるなか、当業界にとって、これら環境分野へ挑
戦し開拓することは新たなビジネスチャンスでもある。
第 56 次海外電設視察団では、
低炭素社会の実現に向けて日本の電気設備工事業界に有益となる制度や仕組みがない
かを調査するため、環境先進都市である 3 都市を訪問し、電気設備工事の視点から視
察を行った。
Ⅰ. 行程・団編成・訪問国の概要
1. 行程
月
日
9 月 28 日
(火)
9 月 29 日
滞在、移動
視察先
東京(成田) → ミュンヘン
ミュンヘン→ベルリン
ベルリン
・ポツダム広場再開発地区
(水)
9 月 30 日
(木)
10 月 1 日
(金)
10 月 2 日
(土)
・ドイツ鉄道ベルリン中央駅駅舎
ベルリン→シュツットガル
ト→バーデンバーデン
バーデンバーデン→フライ ・リーゼルフェルト地区住宅団地(省
ブルク→バーデンバーデン
エネルギー団地)
・フライブルク市環境保全局訪問
バーデンバーデン→ローテ
ンブルグ→フランクフルト
1
10 月 3 日
(日)
フランクフルト→ケルン→
アムステルダム
アムステルダム
・ニューランドプロジェクト
10 月 4 日
(ソーラー発電利用団地)
(月)
・ゴミ処理施設(生ゴミの肥料化、
生物分解、デ・メールランデン社)
10 月 5 日
(火)
10 月 6 日
アムステルダム→ミュンヘ
ン
ミュンヘン→東京(成田)
(水)
[ルートマップ]
2
2. 団編成
氏
団
長
名
井上
所属会社
健
会社役職等
代表取締役社長
(副会長、運営委員長)
日本電設工業㈱
〔取材・報告書作成班〕
(☆は班長)
◎第1班(ベルリン)
☆
嘉悦
崇
㈱土井製作所
経営企画室専務執行役員
近藤
一彦
㈱イートラスト
郷原
章
㈱協和エクシオ
CE・環境事業本部執行役員事業本部長
元木
泰明
四国電設工業㈱
代表取締役社長
伏木
忠了
北電力設備工事㈱
代表取締役会長
代表取締役社長
(理事・(社)新潟電設業協会会長)
◎第2班(フライブルク)
☆
太田
正男
川北電気工業㈱
岡部
雄一
北陸電気工事㈱
栂野
絋次
㈱関電工
細矢
充
細田
順弘
三木
寛
電設事業本部取締役副本部長
(人材委員会委員)
常務取締役(政策委員会委員)
取締役副社長
(出版委員会副委員長)
フィデス㈱
専務取締役
代表取締役社長
㈱中電工
(中国支部長、(社)広島電業協会会長)
新生テクノス㈱
常務取締役営業本部長
◎第3班(アムステルダム)
☆
清岡
努
因幡電機産業㈱
電設東日本事業部第 1 営業部長
一瓢
秀次
三栄電気工業㈱
社長
冨永
昌雄
八千代電設工業㈱
常務取締役東京支店長
後藤
和雄
ミツワ電機㈱
取締役特別顧問
野口
隆弘
西日本電気システム㈱
中央支社営業部長
松岡
徹
代表取締役社長(理事・(社)岡山県電業
旭電業㈱
協会会長、経営企画委員会委員)
◎事務局
工藤
光泰
(社)日本電設工業協会
3
常務理事兼事務局長
3. 訪問国の概要
ドイツ
オランダ
35.7 万 km2
(日本とほぼ同等、
世界第 61 位)
8,175 万人
(第 16 位、2010 年)
4.2 万 km2
(日本の九州とほぼ同じ
世界第 131 位)
1,659 万人
(第 58 位、2010 年)
(世界 60 位)
12,729 万人
(第 10 位、2008 年)
231 人/km2
393 人/km2
337 人/km2
都
ベルリン
アムステルダム
東 京
主要言語
ドイツ語
オランダ語
日本語
政体・議会
連邦共和制・
二院制
立憲君主制・二院制
立憲君主制・二院制
国
面
人
本
別
積
口
人口密度
首
(参考)日
宗
教
歴
史
月別平均気温
年間降水量
37.8 万 km2
キリスト教 49%、イス
その他 5%、
仏教、神道ほか
キリスト教、ユダヤ教 ラム教 4%、
無宗教 42%
1871 年 ドイツ帝国成 1648 年 オランダ連邦 1868 年 明治維新
1947 年 日本国憲法施
立(いわゆる「ビ
共和国独立
スマルク憲法」 1945 年 オランダの解
行
制定)
放
1989 年 11 月「ベルリ
ンの壁」崩壊
ベルリン
(1 月)-1.9℃~
(7 月)23.7℃
ベルリン
571mm
アムステルダム
(2 月)0.2℃~
(8 月)21.8℃
アムステルダム
780mm
230V
50Hz
東京
(1 月)5.8℃~
(8 月)27.1℃
東京
1,467mm
100V
50 Hz・60 Hz
電
圧
230V
50Hz
通
貨
ユーロ
ユーロ
円
3 兆 3,527 億ドル
(283.9 兆円)
7,948 億ドル
(67.3 兆円)
5 兆 680 億ドル
(429.21 兆円)
1.3→▲5.0
2.0→▲4.0
▲3.7→▲1.9
G
D
P
(2009 年)
GDP 成長率
(2008→2009)
(注) 1 ドル=84.69 円、1 ユーロ=115.72 円(三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング調べによる 2010 年 9 月 28 日
~10 月 6 日までの平均レート)とした。以下、本報告書ではこのレートによる。
4
都 市 別
ベルリン
フライブルク
アムステルダム
面
積
892km2
153 km2
166km2
2,188km2
人
口
343 万人
22 万人
76 万人
1,304 万人
3,842 人/km2
1,411 人/km2
4,459 人/km2
5,960 人/km2
人口密度
5
(参考)東
京
4.「ポツダム広場再開発地区」現場視察
日
時
2010 年 9 月 29 日(水)
場
所
ドイツ ベルリン ミッテ区
対応者
9:30~12:00
Ms.Herrmann 氏(ベルリン都市開発部)
(1)概要
ベルリン市は、1871 年のドイツ帝国時代に建造物をはじめ都市機能の集中化の
土台が作られ、二つの大戦による破壊と再開発により都市としての形が定まってき
たといわれる。今回視察したポツダム広場とその周辺は、ベルリンの壁崩壊(1989
年)以後の都市再生事業(1990 年~)により現在の姿がある。
(2)現場視察
東西統一後、交通の要所として近代的開発が行われた広場周辺は、ベルリン市の
条例による制約も厳守しながら、事務所関連 50%、商業用施設 30%、住宅 20%と
いう割合で構成されている。広場に隣接する DB(Deutsche Bahn、ドイツ鉄道)
本社ビル、ソニーセンター、ダイムラーシティなどの高層建築物を除き、道路面か
らの高さを 22m までにするという制約に基づいた(防災上、景観上配慮)建築物
とその他広場、道路、地下道路・鉄道、地下廃棄関連施設などが 90 年代初めから
総合的に開発が進められた。
【ソニーセンター横のポツダム通りから。手前が
【開発地区と周辺道路、エリアとの境界にある緩
ソニーセンターと奥にドイツ鉄道本社ビル。】
衝エリア、水と緑のスペース。水は雨水有効活用
の貯水。
】
統一後ドイツは北欧諸国同様、環境配慮の方針を憲法で明文化し、環境税の導入
で、高い税率による高負担社会と高レベル福祉、従来から根付く地方分権体制のも
と、経済成長と環境対策を共生させる方針を示し、国づくりを進めてきた。ポツダ
ム広場周辺の都市再生事業においてもその方針は色濃く反映されている。
6
広場周辺道路は、車道における自動車と路面電車(トラム)、自転車と駐輪、レ
ンタル自転車用スペース、歩道が区分されて共存している。ドイツの環境対策は民
意、民間団体に基づく活動が多いが 90 年代以降急速に市内の移動手段として自転
車の利用が増えている。電力、ガス、水な
どの生活インフラのライフラインはオー
ル地中化されており、土木・建築上の耐震
配慮などは、地震のないドイツでは考慮さ
れず、日本と比べるとかなり浅層部分に埋
設されているとのことであった。開発にお
けるコンセプトの一つに古いベルリンと
新しいベルリンの共存、保存ということも
あり、ベルリンの壁の保存・展示、時計台信
【ポツダム広場に即する道路。
号塔の保存なども見られた。
赤い部分が自転車専用、ここでは歩行者より優先
される。
】
各建造物は区画ごとに各国様々な建築家、コンサルによる近代的デザインに基づ
いているが、基本計画と監修をレンゾ・ピアノが行っている。米国スタイルでない、
住宅、インフラ、商業、産業施設がコンプレックスのように都市に共存しているス
タイルが全体像から見て取れる。随所には、構造上本当に効率的な空調なのか、と
疑問を持つような部分もあるが、デザイン性、
道路配置、建造物の環境対応をバランス良く
実現させているのだろう。
【広場隣接のショッピングモール、アルカーデ
ン。ダイムラーの長期契約に基づく入居で約
120 店舗が入る。ハイエンドよりも中間層向け
【広場中心の高層エリアから住宅、商業施設エリア
に均等高さの建造物が並ぶ。デザインは独自。
】
7
のショップなどが入っている。自然光の取り入
れ、空調配慮など他の建物とエコ配慮設計は同
様。
】
ベルリン市のホームページを検証すると、都市計画における緑地オープンスペー
スの確保が重要な方針として位置づけられている。当開発地域においても、地下道
路の地上部の緑地化、道路幅を確保しながらの緑地部分、開発地区端部における雨
水留保池と騒音対策の緑地スペースが随所に配置されている。雨水はビル屋上貯水
のトイレ水洗への有効活用としても使われ、ビル窓部分も外壁窓との二重構造によ
る断熱効果と夏場の換気、温度調整機能を持たせていた。以上のような環境対策に
よって、通常建築物と比べ、70%の CO2 削減、年間 7,000ℓの水使用量の削減を実
現している。
DB ビル、ダイムラーシティなど各投資家の意向を反映させながらの区画がある
が、一番目を見張る近代的区画はソニーセンターエリアだった。3 大映画祭の一つ
ベルリン映画祭授賞式も行われる当施設横の大通りにはレッドカーペットを思わ
せる歩道もあり、センター内部はガラス、
テフロン加工樹脂屋根により自然光と空
気の流れの確保が配慮されている。昔のラ
グジュアリーホテル(ESPERANDE)の
建物を実に 75m 移動、復元させての建造
物への取り込み、135 の分譲スペース、各
種商業施設、レストラン、映画館、中央広
場など、住民・観光客が集まる場所となっ
ている。当時のフィルハーモニーオーケス
トラのカラヤン氏とソニー大賀元社長の
特別な交友関係も開発出資に大きく影響
しており、当時のソニーの隆盛振りを感じ
る開発区画であった。
【ソニーセンターのテント屋根】
(3)一般的所感
ポツダム広場から歩いて周辺地区を約 2 時間かけてレクチャーを受けながらの
説明だったが、特徴的な箇所が多数あった。東西ドイツ統一という象徴的な出来事
があり、さらに経済成長と環境対策の共生のために、国、地方、産官学、民のベク
トルのバランスを図りながら 20 年前に計画されたということに驚きを感じた。そ
して、東西統一後早急に進展した開発経緯を聞いてドイツの都市開発のスピード感
を強く感じた。それは地方分権が進み、地方独自性に特徴あるドイツと社会・政治
が構造的に違う日本、また地震・台風などが多い日本とそのリスクが少ないドイツ
との違いが大きく影響していると考える。
8
5.「ドイツ鉄道ベルリン中央駅駅舎」現場視察
日
時
2010 年 9 月 29 日(水)
場
所
ドイツ ベルリン ミッテ区
対応者
15:00~16:00
DB(ドイツ鉄道)広報担当者
(1)概要・現場視察
ベルリン市の代表的観光名所であり、東西ベルリンの象徴的境界であったブラン
デンブルク門から地下鉄 U55 号線で二つ目(55 号線は 3 駅のみ)約 5 分ほどの距
離にあるベルリン中央駅は、2006 年完成(98 年から開発開始)、地上 3 階、地下 2
階、
利用者数 35 万人/日のドイツ国内最大級の駅施設である。内部にはレストラン、
商業施設など 85 店舗、54 のエスカレーター、27 のエレベーターを有し、建造物
全体はガラス壁面が多分に使われ、実に屋根部分だけでも 9,000 ユニット、4,500
種類という量である。
【ベルリン中央駅正面から。
ガラス多用の近代的デザイン。
地上 3 階、地下 2 階で上下の環
境の違い(上は夏暑い、下は光
が入りにくい)をカバーする構
造、 機能 を随 所に 説明 を受け
た。
】
98 年開発当時まったくの更地であり、統一前から存在する東西ラインの新設(老
朽化の為)、南北ラインの新規開発を融合させる一大プロジェクトだった。開発に
おいては、南北ラインを地下に設置するために、地下に多分に存在する地下水を如
何に効率良く排水、防水しながら進めるかがポイントになった。コンクリートによ
る箱状に包み込んでから排水するなど大規模な土木工法を用いて進められた。駅に
隣接する二つのビルはオーナーである DB(ドイツ鉄道)の事務所である。地下に
走り、今後も開発が進む地下鉄はベルリン交通公社(メトロ)が管理しており、S
バーン(都市交通)
、U バーン(地下鉄)、そしてドイツ国内主要都市を結ぶ特急列
車 ICE や長距離夜行列車 NCL など多種多様な路線が東西南北に、そして各階層に
渡って交わる構成である。
9
環境配慮型の建築はベルリン中央駅でも散見する。夏よりも冬の寒さ対策に重点
がおかれるドイツらしく、自然光を多く取り入れ、空調しやすい構造のアーチ状の
屋根、その屋根には太陽光発電用パネルも設置され、駅消費電力の 2%をまかなっ
ている。
【最上階のホームから見た天井部。アーチ状の屋根には多くのガラスが使用されている。
屋根には、太陽光発電用パネルが設置されており、駅舎全体消費電力の 2%をまかなう。
】
(2)一般的所感
地方分権が古来より進んでいるドイツにとって、地方主要都市、市内交通、そし
て EU 域内との交通ネットワークは非常に重要なインフラであると感じた。2006
年のワールドカップ開催に向けた開発案件だったが、今後も地下鉄網、市内交通網
の開発が進行中であり、世界都市ベルリンの付加価値に今後も中央駅が持つ役割は
大きい。
【ベルリン中央駅最上階ホームにて】
10
6.フライブルク市「リーゼルフェルト地区住宅団地」現場視察
日
2010 年 10 月 1 日(金)
時
9:00~11:00
場 所
フライブルク市リーゼルフェルト地区
対応者
Mrs. Beising 恵子 氏
(OSM コーディネーター)
(1)住宅団地建設計画の概要
①背景
ドイツ全体では人口が減少しているものの、フライブルク市にあっては人口
が増加しつつあり、その対策として新しい住宅団地の開発の必要性が生じてい
た。人口増加の原因は、国内有数の歴史を有するフライブルク大学があり各地
から学生が集まること、ドイツの南部に位置し年間日照時間が 1,800 時間など
比較的温暖なことから移住者が多いなどの理由によるものである。また、早く
独立する若年層が増えたこと、離婚率が上昇したことで、一人暮らしの数が急
増していることも住宅不足に拍車をかけることになった。
リーゼルフェルト地区の住宅団地は、これまで行ってきた住宅地域の開発方
式が景観保護や環境保護への意識の高まりという流れの中で極めて困難になっ
ていたのを受けて、従来とは全く違った新たなコンセプトを持った住宅団地と
して計画がなされた。
本地区の計画人口は 12,000 人であり、1994 年に建設に着手、今年でほぼ整
備を終了しつつある。
②地区計画
フライブルク市の西側に位置している産業地帯に隣接した 310ha の耕地を建
設用地とし、そのうち 70ha を住宅建設用地、残りの 240ha を景観保護地域に
指定した。この景観保護地域は、広大な農耕地を守るため動植物を中心とする
保護地域として整備された。住宅開発地と隣接した動植物の保護地域の決定は
ドイツでは初めてのことである。
1992 年夏には、ムンデンホフ動物公園が開園し、ここでは動物がほぼ自然に
近い形で見ることができるとともに、教育の一環として子供達が動物との接し
方を学べる場所である。そのため、学校の課外授業のひとつとして広く利用さ
れている。
③交通計画
この住宅団地の計画に伴い、既存の市電の路線が 1.5km 延長され、地区内に
は3つの停留所が設置された。これにより、住民は長くても 400m歩くだけで
停留所まで行くことができ、その後市電に乗って短時間で市の中心部まで行く
11
ことができる。また、同時に自転車道も整備され、車、自転車、歩行者が安全
に通行することができる。
また、パーク&ライド用の駐車場が近くに整備されている市電の停留所もあ
り、近郊から車で来て容易に市電に乗り換え、市の中心部に行くことができる
ようになっている。なお、市の中心部は、人々が自由に散策し賑わいのあるま
ちづくりを推進するため、自動車の通行が制限されている。
【パーク&ライド用の駐車場】
【自動車の通行が禁止されている市の中心部】
④住宅計画
フライブルク市は北緯 48 度(北海道稚内市の緯度は概ね 45 度 30 分)に位
置しており、冬季の気温は-20~-15 度まで下がる。今年の夏は猛暑で 35 度まで
気温が上昇したとのことだが、一般住宅は暖房のみで冷房装置は設置していな
い。
このため、断熱を強化し冬季の暖房負荷を低減し、また、ドイツの中では比
較的晴天日数が多いという地域特性を活用して太陽光発電や太陽熱による給
湯・暖房を推進している。暖房負荷を極力低減するということから、5 階建程
度以下の集合密集住宅を整備しており、一戸建ては建設しない方針とのことで
あった。
(2)現場視察
Mrs. Beising 恵子氏の案内で住宅地を視察したが、地域内は 5 階建程度の比較
的低層の集合住宅が建ち並んでいる。敷地は広く、街路、駐車場もゆったりとし
ており、住宅近くの道路は子供の遊び場兼用となっている。
住宅の 7 割方は南又は南西に面し、南面は開口部を大きくして、冬場の太陽光
を取り入れる一方、北面の開口部は極力小さくして断熱性能をあげているとのこ
とだった。寒冷地に立地している割には大きい窓ガラスが設置されているが、こ
12
れは断熱性能が高い複層ガラスを使用している。街なかを歩いていくと、窓ガラ
スがほとんどない大きな建物があったが、これは教会とのことであった。それも
カトリックとプロテスタントの 2 つの教会が合築されている。断熱性能に配慮し
たというドイツ流の合理性を追究した結果によるものであろうか。そのほか、緩
やかに傾斜し地面まで届き芝生で覆われた屋根の体育館があったが、これは景観
と断熱に配慮したデザインとのことである。
街には多様な商業施設も計画的に整備されている。この街だけでもある程度の
用事が済ませることができるようにという配慮とともに、地域内での雇用を確保
しようという計画であり、約 1,000 人がこの地域内で働いている。途中、不動産
屋に立ち寄り住宅価格を調べてみたが、約 80 ㎡の中古住宅が日本円で約 2,300 万
円、約 130 ㎡のものが約 4,000 万円ということで、少々割高な感じがした。ドイ
ツの平均的給与は日本よりも少し低めであること、給与の半分は税金等で差し引
かれるため可処分所得が少ないことを考慮するとなおさらである。しかし、食料
などの日用必需品は非常に安く、社会保障制度が充実しているので、日本よりは
暮らしやすいのではないかということだった。
市電の終点まで歩くとそこで街は終わり、その向こうは広々とした景観保全地
帯であった。1 万人以上が暮らしている街並みから一歩踏み出すと、そこからは
草地と森がどこまでも広がっているように見えた。
【芝生で覆われた体育館】
【街並み】
13
(3)一般的所感
ドイツのアウトバーンをバスで走ると緩やかな丘陵がどこまでも続き、牧草地や
森が広がっている。街はひとかたまりになっていて山の裾とか谷間にあるが、その
街と街との間隔がかなり離れている。街は、例えば中世の城塞都市のように、城壁
で囲まれた範囲だけが市街地となっており、比較的狭い範囲に都市施設が密集して
いる。ところが、城壁の向こうは広大な牧草地と森である。ドイツの典型的な街は
このような形態であることから、大規模な住宅団地を作るにしても、都市のすぐ近
くに広大な敷地を確保することができる。このような条件が、職住接近や市街地の
賑わいに大きく寄与したと考えられる。
しかしながら、歴史的自然的な好条件があったというのは部分的な要因であって、
住民生活に大きな影響を及ぼす環境政策(交通政策、ゴミ・廃棄物対策、代替エネ
ルギーの推進、景観の保全、森林の保全、エコ建築など)を多角的に推進すること
ができたのは、政治・行政・住民間の対話や信頼・協力関係によるところが大きい
と思われる。ドイツの地方都市における成熟した市民社会の一端を感じることがで
きた。
【リーゼルフェルト地区の街並み、市電と太陽光発電の共同住宅】
14
7.「フライブルク市環境保全局」訪問
日 時
2010 年 10 月 1 日(金)
場 所
フライブルク市庁舎
対応者
Dr. Dieter Woerner
13:30~15:30
氏
(市環境保全局長)
(1)フライブルク市の概要
人口約 22 万人のフライブルク市はその歴史も古く、12 世紀初頭に街が成立した
といわれている。東西南北にのびる商業道路が交差する場所に位置し、現在もこの
ふたつの通りがメインストリートとなっている。東西にのびる通りはザルツシュト
ラーセ(塩通り)という名のように、中世の商業都市の名残を留めている。
西暦 1354 年には市のシンボルともいえるミュンスター大聖堂(高さ 116m)の建
設が開始された(1513 年完成)
。1368 年にはハプスブルグ家の支配下なり、1457
年にはフライブルク大学が設立、1677~1697 年には一時的にフランスの支配下に
なり、1770 年には王女マリー・アントワネットが婚礼の旅の途中でこの地に立寄り、
ハプスブルグ家領内の最後の日を過ごしたとのことである。
市はシュヴァルツヴァルト(黒い森)の麓に位置し、ライン平野と森林地帯に広が
る標高 200m~700m に及ぶ変化に富んだ地形となっている。スイス(バーゼル市)
に 60km、フランス(コルマール市)に 40km と 3 国の国境地帯に位置するフライ
ブルクは、ミュンスター大聖堂を中心に中世の美しい街並みが広がっている。
このように、その歴史、地形に加え、ドイツでは比較的温暖な地域となっており、
大学等の教育産業や観光産業が重要な位置づけとなっている。
【フライブルク市街並み】
【フライブルク市新市庁舎前にて】
15
(2)環境政策の概要
①環境先進都市となった経緯
35 年程前にバーデン・ヴュルテンベルク州で原子力発電所建設計画が持ち上
がったときに、市民の反対運動が成功したことがきっかけとなり、フライブル
クは環境先進都市へと進化してきた。原発反対運動の時に、単に反対を主張す
るということではなく、代替案を提案するなど、対話により合意点を見いだし
て問題を解決するという手法がとられた。このようなきめ細かな議論ができた
のは、フライブルクが国内有数の大学を擁している学術都市であり、学識経験
者が多数いたことも理由のひとつである。その上、フライブルクは歴史や自然
環境にも恵まれた地域であり、市民の街への愛着が強かったことにより、環境
保護政策がより一層推進されることになった。
また、政治的な観点では、市議会では従来より緑の党が力を持っており、現
在は最大党派となっている。
②交通対策
市内の主要道路以外、特に住宅地域は制限速度 30km として車両規制をし、
また、旧市内への車の乗り入れ制限を行い、空気の汚染防止と市民の快適な生
活空間の確保を目指した。また、市電、市バスの路線を延長し、公共交通機関
への乗り換えを奨励した。これらの公共交通機関をより魅力的にするため、通
称「環境定期」と呼ばれる定期券(Regio カード)を発行している。この定期
券は、全長 3,000km の広範囲の路線で有効であり、更に週末には家族全員が一
緒に利用できるといった特典がある。市電、市バス優先の信号の設置、低床式
車両の導入、パーク&ライドなど、市民が利用しやすい交通体系を構築してお
り、その結果、市電・市バスは黒字経営となっている。また、自転車通行を奨
励し、自転車専用道路の整備、自転車置き場の増設を行っている。
③住宅の省エネルギー対策
1992 年のドイツの全国基準は 65kWh/㎡・年(全エネルギーを電力量換算)
、
2005 年は 50 kWh/㎡・年であるが、フライブルクではそれより 30%少ない数
値を目標にしており、現在は 15 kWh/㎡・年を目指している。住宅の断熱に要
する費用として 2~3%程度建設費が上昇するが、ランニングコストの減少でも
とがとれると考えている。エコロジーとエコノミーは共存できるようになった。
④太陽光発電
フライブルクはソーラー経済の集積地である。これはフラウンホーファー研
究所の業績によるところが大きい。関連する企業は約 100 社、従業員は 2,100
16
人であり、地域経済の一翼を担っている。環境保護を推進したことにより環境
ビジネスが発展してきた。環境と経済は相反するものではないと考えている。
フライブルクの太陽光発電電力は 15MW となり、電力量ベースでは需要量の
2%程度を占めるに至った。
⑤バイオマス発電
ゴミの埋め立て地より発生するメタンガスのエネルギーを利用して、ランド
ヴァッサー地区にコジェネレーションシステム(CGS)を設置している。これ
により、発電と地域暖房を実現し、1 万人の団地にエネルギーを供給している。
夏場にはこの地域のエネルギーを全てまかなうことができるが、冬場で供給エ
ネルギーが不足する時は不足分に天然ガスを使用しているとのことである。
その他、市民プール・老人施設などに CGS を活用した 140 件のプロジェク
トを推進している。
(3)一般的所感
説明者のディーター局長の声は自信にあふれていたように感じられた。環境保全
に配慮しつつ経済発展を進めるなど、一見相反するような政策を、両者のバランス
をとりながら推進している。特に交通政策においては、自動車交通を部分的に抑制
しつつも、自動車の利点を引き続き活用しながら、他の市電、市バスといった公共
交通手段や自転車といった代替手段を着実に普及させている。代替手段が非常に不
便である、あるいは経済的に大きな負担があるといったものでは、これほど普及活
用されなかったであろう。そこをきめ細かな政策(路線の拡張、魅力ある定期券の
発行、自転車道・駐輪場の整備など)で多面的にフォローすることにより、目的を
実現させている。
また、中心市街地への車の乗り入れ制限の結果として、旧市街地の賑わいが戻っ
てきたとのことだった。訪問したのは金曜日の昼頃であったが、新市庁舎前の広場
や、商店街にあるオープンカフェ、大学キャンパスなどで大勢の市民で溢れていた。
当地は金曜日の午後から休暇が始まる、つまり週休 2.5 日とのことであった。真夜
中まで人出が絶えることはないとのことである。
フライブルクは中世からの歴史のある都市であり、旧市街地は概ね 700m 四方程
の広さに多くの観光資源が集中しているので、そのため活気があり賑わいのある街
づくりができる、あるいはパーク&ライドが普及するという下地があったと考えら
れる。しかしながら、第二次大戦で 90%が破壊された旧市街地を復興させたこと、
その後自動車交通の発展により旧市街地は車でマヒ状態であったというところから
現在の状況に復活し発展させた行政当局と市民の努力には敬意を表したい。局長の
説明の中に「持続可能な街づくり」
「市民が気持ちのいい街づくり」という言葉があ
17
り、経済的に成り立たなければ実現しない、楽しくなければ長続きしない、という
ことを実感させられた。
太陽光発電、太陽熱利用、ゴミ発電等の持続可能なエネルギーの活用の推進につ
いては、その努力や一定の成果は注目すべきであるが、前述のように原子力発電所
建設に反対する住民運動の結果、原子力エネルギーの代替手段として再生可能エネ
ルギーの開発を推進することとした経緯を勘案すると、原子力エネルギーの替わり
となるにはまだかなりの時間と努力を要するのではと感じた。先ごろ、メルケル政
権が脱原発政策(2020 年頃までに全原発の運転停止)を修正し、原発回帰へ転換し
つつあることを見ても、再生可能エネルギーへの転換が難航しているという現実を
窺うことができる。
フライブルクの現場視察に限らず今回の視察を通じて感じたのは、路面電車、バ
ス、車、自転車、歩行者が、それぞれのスペースを相互に合理的に活用していると
いう驚くべき距離感を市民が有しているということであった。交通信号を厳格に遵
守するということではなく、自己責任のもと各自の判断でスムーズに行き交ってい
る。ルールを尊重しつつも、それに固執せずに、自由に行動しているように見える。
自分の身は自分で守るといった、日本人には真似できにくい欧米人の特性を垣間見
たような気がする。
【ディーター局長と
井上団長】
【フライブルク市環境保全局長によるレクチャー】
18
8.「ニューランドプロジェクト(ソーラー発電利用団地)」現場視察
日
時
2010 年 10 月 4 日(月)
場
所
オランダ
対応者
9:30~11:30
アーメルスフォールト市(アムステルダムの南東 40km)
Bernard Verheijen 氏
(ベルナード・フェルハイエン、元 Eneco 社)
Ronald Franken 氏
(ロナウド・フランケン、ECOFYS 社)
(1)企業概要
①Eneco 社
Eneco 社はロッテルダムに本社を置くオランダ国内で電力を供給する TOP3
の企業である。現在はオランダ国内 50 市にエネルギー(主は電気)を供給して
いる。オランダ国内のマーケットシェアは 28%を占め、200 万戸の需要家に対
し年間 50 億ユーロ(日本円で 6,000 億円)を販売し、現在ではベルギー・イギ
リスへと進出している。また、この企業の特徴は、自治体(ロッテルダム市な
ど)が株主のセミプライベート企業であり、株式の 100%が自治体保有である。
②Eneco 社の将来像
Eneco 社は化石燃料からサステイナブル燃料への切り替えを推し進めており、
将来的にはサステイナブル燃料だけで PAY 出来るようにすることを目標として
いる。2013 年までに 25%切り替え、2030 年には化石燃料をゼロにし収益を上
げて行くという目標に向かって努力を続けている。
③ECOFYS 社
ECOFYS 社は Eneco 社のコンサルタント会社である。得意先は EU 諸国・中
近東・中国などで、世界各地にスタッフを配置し、主に太陽光発電・バイオマス・
風力発電のマネジメントを建設会社・電気会社・政府などに提案している。
現在は、Eneco 社の子会社として、プロジェクト開発に関わる様々なサービス
を行っている(可能性・コスト・財政・技術のオートメ化などのマネジメント)
。
また、このニューランドプロジェクトにも計画当初から参画し、現在も太陽光
発電の電力量のモニタリングを行っている。
④ECOFYS 社の将来像
太陽光発電は大規模開発エネルギー・環境エネルギーの 2 つの大きな流れにな
っていく。近年、スペインでは 50MW のプロジェクトが可能かどうかの検証を
行っており、アブダビでは 100MW の太陽光発電設備の建設を予定、アメリカの
19
カリフォルニア サンディエゴの会社が 500MW の大規模太陽光エネルギーの受
注をしており、中近東・中南米という太陽光の多い地域では大規模開発が今後見
込まれている。また、太陽光発電の方がガスや油を燃料とする火力発電より、イ
ニシャルコストが安いという研究結果が出ており、太陽光の多い地域では、この
大規模開発が注目を浴びている。
ECOFYS 社は、今までのノウハウを基に、このような大規模プロジェクトに
参画していこうとしている。
(2)ニューランド現場視察
①概要
ニューランド(Nieuwland)は、オランダ中央部のアーメルスフォールト市
(Amersfort)に位置し、1993 年からニュータウン建設が始まり、2000 年に完
成した。当初、500 戸の住宅に 12,000 ㎡の面積の太陽電池パネルを設置し、年
間発電量は 1.3MW に及んだ。年間を通じ 500 戸の住宅・小学校・スポーツホー
ル等の施設の総電力量の 52%を太陽光発電で補っており、現在では 5,000 戸の
住宅が隣接し、総発電量は 2MW に及ぶ規模である。
当初建設した 500 戸の
PV ハウス(photovoltaic)
の太陽光発電は、全てグリ
ッドコネクトされており、
500 戸の内の 250 戸は、
Eneco 社が屋根の所有者
となって、屋根上に PV を
設置し、総発電量の 20%
を家のオーナーへ還元し
ている。
また、残りの 250 戸の
PV ハウスは、屋根も全て
【ニューランド住宅街風景】
オーナーの所有物となっており、そこで発電される電力は全てオーナーのものと
なっている。
1 戸当たりの建設コストは、EU 政府とオランダ政府の補助金が 49%
出ているお陰で、通常の戸建て住宅と同程度の価格になっている。
また、今回使用されている太陽光パネルのメーカーは、EU からの補助金が出
ている関係上、シーメンス(SIEMENS)が多い。
20
【コミュニティーハウス内に設置された太陽光発電の表示装置】
年間消費電力量(真中のゲージ)
1日の消費電力量(真中のゲージ)
年間総発電量 (下のゲージ)
1日の総発電量
(下のゲージ)
※訪問した 10 月 4 日は曇りだったので、1 日の総発電量のゲージは低い。
②バランスド・エナジー・ハウス(balanced
energy
house)
バランスド・エナジー・ハウスは、年間の消費電力を太陽光発電で全て賄う建
物で、このニューランドを象徴すべきゼロエネルギー住宅である。当初 2 棟建設
され、現在は一般住宅として使用されている。また、天井上部はガラス屋根にな
っており、昼間は太陽の光で室内は十分な照度が取れ、日差しがきつい場合には
電動で動く遮蔽窓が天井上部に取り付けられ、まさに快適な光環境を実現してい
る。
その他の特徴としては、地下水槽への長期蓄熱が試みられており、この汲み上
げられた地下水をヒートポンプで昇温し床暖房・壁暖房に利用されている。
当初、95 ㎡取り付けてあった太陽電池パネルは、施工上の問題で現在は撤去
されている。
【バランスド・エナジー・ハウスの概要】
・床
面
積:120 ㎡弱
・使用電力量:80A(230V)
・価
格:60 万ユーロ(土地付)
・電気メーター:2 個(発電量・消費電力量)
21
【室内から見た天井部】
【バランスド・エナジー・ハウス視察風景】
【バランスド・エナジー・ハウスの電気送発電系統図】
22
③ニューランド住宅街視察
このニューランドの住宅街に入り、様々なデザイン住宅があるのに驚かされる。
また、この敷地内には水路を生かした水辺空間が多く設けられ、池や川では水鳥
や水生植物・魚などが繁殖し、水を浄化している。また、この水路は常にポンプ
を使って水の流れを起こし、水の浄化をおこなっている。
【水辺の住宅郡。屋根にはソーラパネルが設置】
【せり出したデッキから、週末には釣り糸を垂らす光景も見られるという。】
【屋根に太陽電池パネルが付いた住宅街】
※建築デザイン優先で、太陽電池パネルがほぼ垂直に取り付けてあり、太陽光の集光性は悪い。
23
手動操作で太陽光パネルの向きを変える事が
出来る。
壁面タイプなので集光性は悪いと思われるが、
住宅の下を流れる水路からの反射光もあり、屋
根置きタイプと変わらないという。
【壁面タイプの太陽光パネル】
【ニューランド住宅街風景と団員】
(3)一般的所感
街づくりの基本コンセプトである「環境に優しい街づくり」を実現したニュータ
ウンに一歩踏み込むと、先進的な街づくりに驚きの連続であった。
ニュータウンの自動車道は十字に配置され、中央部に小学校・医療施設・店舗・
公共施設が集中されており、各住宅からの移動時間を減らすように設計されている。
また、自転車専用道路まであり、自動車での移動を減らす役割も果たしている。住
宅街には 3 種類の小学校が建設されており、カトリック・プロテスタント・ニュー
トラル(無信仰)に分かれている。
ニュータウン内には、川・池が多くあり、水辺に面した住居が多いのもこの街の
特徴の一つで、水辺が多ければ日本では蚊の発生を危惧するが、魚・水鳥や水の浄
24
化作用により、蚊の発生が少ない事にも驚かされる。また、水辺に面した住宅の一
部には、自家用ボートを係留している家庭もあり、週末には家族で水遊びをしてい
る光景が目に浮かぶ。
オランダでは、このアーメルスフォールトのニュータウン以外にも、アムステル
ダムから北西へ車で 1 時間程度の街、北ホラント州ヘールフホワール市に 2.5MW
のニュータウンが建設されている。このように世界各国で太陽光発電の需要が伸び
ると予測される中で、日本企業が世界で競争に勝ち抜くためには、これまで以上の
努力が必要であると実感した。
最後に、オランダは、我が国との税制や社会資本に対する考え方、街づくりにお
けるグランドデザインの徹底性も含め、国の施策の違いはあるものの、この素晴ら
しいニュータウンは自然と一体感があり、太陽の恵みを受けたこのニュータウンに
暮らす人々の顔に、ゆとりとやすらぎを感じ取ることが出来る素晴らしい街であっ
た。
【コミュニティーハウ
ス内での説明風景】
【左から井上団長、ベルナ
ード・フェルハイエン氏、
ロナウド・フランケン氏】
25
9.「ゴミ処理施設(デ・メールランデン社)」現場視察
日
時
2010 年 10 月 4 日(月)
場
所
オランダ
対応者
14:00~16:00
ハーレマミア市(スキポール空港の南)
Bas boone 氏(バス・ボーン、デ・メールランデン社)
(1)オランダのゴミ分別処理
①オランダ政府の取り組み
オランダ政府は廃棄物再利用を推し進めて行く上で、1994 年 1 月 1 日から、
オランダの全市町村で、一般家庭から出るゴミの 80%が生ゴミ=GFT((野菜・
果物・庭の草木)を他のゴミと分別処理することを義務付けた。オランダ政府に
とって、この生ゴミのコンポスト化(肥料化)は、オランダ国土の 1/4 が海抜 0
メートル以下の為、地球温暖化による海面上昇を防ぐ意味でも脱焼却が必要であ
った。また、ゴミ問題や急速に発展した工業等による環境の悪化に対する懸念か
らも、この廃棄物リサイクル事業を推し進めることが重要であった。
②ゴミの分別処理
ゴミの分別は地域によって違いはあるが、一般家庭から出るゴミの回収は、生
ゴミ・紙・その他の 3 つそれぞれ違う回収 BOX が路上に並べ置かれている。
また、ガラス・ビン・プラ
スチック・その他のゴミは、
ショッピングセンター等にコ
ンテナを設置し、分別回収し
ている地域もある。また、ア
ムステルダム市は、道が狭く
コンテナ設置が出来ないので、
一般家庭から出るゴミも一つ
の袋で全て捨てている。
【プラスチック専用回収BOX】
(2)企業概要
①デ・メールランデン社概要
デ・メールランデン社は、スキポール空港の南のハーレマミア市にある。この
企業の設立は 1997 年で、ハーレマミア市とアールスメア市によって設立された
廃棄物処理会社である。設立当時は、ゴミの回収業と処理業を中心にスタートし
たが、この 12 年間で新たに 6 つの自治体が資本参加し、現在では 8 つの自治体
が株主となっている。 この 8 つの自治体で約 31 万人が暮らしており、そこから
26
出る一般家庭ゴミの回収及び廃棄物処理のほか、信号機の補修・道路清掃・自治
体内にある公園の清掃・道路の凍結防止(塩の散布)等がこの企業の主な事業内
容である。
年商は 4,900 万ユーロ(日本円で 60 億円弱)で、年商の構成は、自治体が 60%
その他 40%である。従業員は 300 人で週 5 日勤務している。この企業の特徴は、
ここに集められたゴミは出来るだけ再利用する事を考え、特に自転車・衣類で使
えるものはアフリカ・東ヨー
ロッパへ持って行くなどし、
リサイクル意識が非常に高い
企業と言える。また、ゴミ回
収車は 100 台保有しており、
回収車の中には、天然ガスを
燃料とする車も保有し、環境
への配慮も行っている。
【青色の車はディーゼル車、緑色の車は天然ガス車】
このデ・メールランデン社の施設内には、いくつかのコンテナが設置されてお
り、一般家庭から出たゴミの持ち込みも受け付けている。また、この企業では、
一般市民のゴミの分別作業に感謝する意味で、年に1度、コンポストデーとして、
処理施設来場者に 1 人 4 袋のコンポストを無料で配布している。
【コンテナの種類】
・木材コンテナ(2種類)
(A木材 再利用されていない)
(B木材 再利用済)
・布用コンテナ
・家電製品用コンテナ
・ガラス ビン類
・プラステイック
・その他
【処理施設内に置かれたコンテナ】
(3)デ・メールランデン社の展望
①バイオマスプラント
現在一部稼働中のバイオマスプラントが来年の 3 月に竣工する。回収された
GFT(野菜・果物・庭の草木)は、施設内の集積場に集められ、その生ゴミに
75 度の熱風と水を混合し、メタンガス(60%)と CO2(40%)を製造する。製
27
造されたメタンガスは、施設内のゴミ回収車の燃料に使用し、CO2 は周りの温室
農家へ提供している。また、出てきた残渣は、熱風を作り出す燃料として再利用
される。このバイオマスプラントでは、メタンガス(車の燃料・熱源用)・CO2
(近隣農家へ提供)
・熱(温室農家用熱源)
・水(道路清掃用)
・コンポスト(腐
葉土)の 5 つを製造する予定である。
②パワープラント建設
現在、この施設内に焼却炉(パワープラント)の建設計画がある。このパワー
プラントは、近隣への環境配慮から新技術を積極的に導入し、手狭になった事務
所のほか訪問者用プレゼンルームなどを設ける予定である。そして、このパワー
プラント建設に不可欠なのが、発電出来るだけのゴミを集められるかである。ま
た、EU・オランダ政府・株主(自治体)の承認・助成が必要であり、環境に配
慮した収益を産むモデルプランが必要条件となっている。出来るだけ早くこのパ
ワープラントを建設することに現在全力で努力している。
(4)一般的所感
今後、オランダ国内での廃棄物再処理事業はより一層加速するであろう。なぜな
らオランダ国民の環境意識の強さを感じると共に、政府・自治体・銀行などの積極
的な投資もあるからだ。環境配慮の観点からも、このデ・メールランデン社のよう
な、生ゴミに対する処理の普及やリサイクル事業の必要性を感じると共に、ゴミリ
サイクル事業の必要性を改めて実感した。
【デ・メールランデン社施設にて】
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[参考]
(社)日本電設工業協会(JECA)
(JECA の商標)
①設立年
1948(昭和 23)年
②正会員数
609(うち企業会員の本社数 326 社、団体会員
(平成 22 年 9 月現在)
45 協会)
[参考]電設協加入の各都道府県協会会員数
3,786 社
③総会員数(賛助会員、特別会員
930 社
を含む。)
(平成 22 年 9 月現在)
④正会員の年間総完成工事高
正会員の年間電気工事完成工事高
約 5 兆 1 千億円(一社当たり約 169 億円)
約 3 兆 4 千億円(一社当たり約 113 億円)
(※平成 22 年実施会員調査結果:302 社)
⑤正会員の職員数
約 107 千人(一社当たり 354 人)
⑥地方組織
9 支部
⑦事務局役職員数(常勤)
本部 14 人、支部 16 人
⑧年間収入
約 5 億円
⑨主な業務
陳情提言、情報提供、人材育成、講習会、調
査研究、出版、広報、電設工業展、電設資材
電子カタログなど
⑩主要課題
・
公正かつ適正な受注活動の推進
・
更なる分離発注の推進
・
人材の確保と育成
・
省エネ・新エネ、リニュ-アル等の事業
分野の確立
・
29
新公益法人制度への対応など
まとめ
我が国はこれまで世界最高の環境技術を持ち、世界一を誇った太陽光発電が今では
ドイツ・スペインの後塵を拝していることに象徴されるように、長期的視点に立った
戦略なき環境政策によって、我が国が本来持つ環境分野での強みを活かすことができ
なくなっている。
今回視察した 3 都市の環境政策を見ても、政治・行政・企業が一体となって環境問
題への取組みを強力に推し進めてきたこと、さらには国民一人一人の環境に対する意
識の高さが、多角的に推進できた要因であることを改めて痛感した。日本では、6 月
に閣議決定された「新成長戦略」において、グリーン・イノベーションの促進により、
世界ナンバーワンの「環境・エネルギー大国」を目指すとの記載はあるが、これが有
名無実とならぬよう、官民挙げて、省エネ・新エネ技術やこれまでのノウハウを活か
したトップレベルの環境技術を普及・促進させる体制を早期に構築することが重要で
ある。
電気設備工事業界は、低炭素社会の実現に向けて具体的な行動が取れるポジション
におり、その期待は大きい。優れた技術を活かせる政府の積極的な政策に期待すると
ともに、それぞれの企業のさらなる努力と個々人の意識向上を図ることが、低炭素社
会の実現へ向けた第一歩であると考える。
最後に、9 日間の日程の中で、2 ヶ国 3 都市 5 現場 1 訪問を視察する盛り沢山な内
容であったが、井上団長を中心として、有意義に所期の目的を達成することができた。
今回の訪問・視察において、我々を受け入れて頂いた現地行政・企業の方々、並びに
事前の準備にご尽力頂いた方々に対し心より感謝申し上げる。
以上
30
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