ポプラの綿毛2 2014年上半期版 - 北海道大学環境健康科学研究教育

2014(平成 26)年 4 月 1 日発行 Ver.2.0
発行:北海道大学
環境健康科学
研究教育センター
代表研究者:岸 玲子
みなさん、こんにちは!いつも研究にご協力いただいてありがとうございます!みなさんからのアンケートや血
液等を検査して、色々なことがわかってきました。今日はその中から有機フッ素化合物についてご紹介します!
妊娠中のお母様の血液中「有機フッ素化合物濃度」を調べました
有 機 フ ッ 素 化 合 物 ( PFOS 、 PFOA 、 PFNA 、 PFDA 、
PFTrDA など)は、撥水剤として衣類や建材、フッ素系の表
面コーティング剤などに使用されている化学物質です。動
物やヒトの生体内で蓄積するため、健康への影響が心配さ
れています。2009 年には、世界的な条約である「残留性有
機汚染物質に関するストックホルム条約」で PFOS が規制
され、日本でも 2010 年に「化学物質審査規制法 第一種
特定化学物質(今ははっきりしなくとも、毒性が明らかになる
までの間も法的に監視される物質)」に指定されました。
さらに、2003~2011年の濃度の経年的な変化を調
べたところ、世界的に大規模な規制対策が講じられている
PFOS と PFOA の血液中濃度は減少していることがわかりま
した。
北海道スタディでは、妊娠中の血液中有機フッ素化合物
の濃度を調べました。すると、札幌市の妊婦さんの血中有
機フッ素化合物濃度は、国内・海外のデータと比べて低い
ことがわかりました。
図2 妊婦の血液中PFOS/PFOA濃度の経年変化
一方で、PFDA と PFNA の濃度は経年して上昇していました。
図3 妊婦の血液中PFNA/PFDAの経年変化
有機フッ素化合物は化学構造の炭素鎖の長さで物質が
異なりますが、炭素鎖がより長い物質の濃度が上昇している
ことから、今後の人体への蓄積が危惧されます。
表 1 有機フッ素化合物の分類と炭素鎖数一覧
図1 地域別の血中有機フッ素化合物平均濃度
さ い た いけつ
次に、出産時にいただいたへその緒の血液(臍帯血)中の
アイジーイー
アイジーイー
免疫抗体E( I g E )濃度との関連を調べました。 I g E はア
レルギー疾患を持つ人の血中で濃度が上昇する物質です。
その結果、妊娠中のお母様の血液中PFOA濃度が高いと、
アイジーイー
臍帯血中 I g E 濃度が低く、女の子のみでこの関連が認め
られました。また、お子様が2歳のときにいただいたアンケート
を集計し、妊娠中の血液中有機フッ素化合物
の濃度と、お子様の2歳のアレルギー症状との
関連を調べました。その結果、妊娠中の
お母様の血液中PFTrDA濃度が高い程
2歳の子どもの「湿疹になるリスク」が低くなり、
これらの結果から、妊娠
中の有機フッ素化合物のば
く露が子どもの免疫応答機
能を低下させているのでは
ないか、と懸念されます。
この傾向は女の子で強いことがわかりました。
(Okada et al., Environ Res 2012., Okada et al., Environ Int 2013., Okada et al., Environ Int 2014.)
健康に影響があると心配されている「有機フッ素化合物(PFOS、PFOA、PFNA、
PFTrDA など)」と、歯科の分野で使用される「無機フッ化物(フッ化ナトリウム)」とは
構造も物性も全く異なる別の物質です。
自然界に存在するフッ素の中で、フッ化ナトリウムがむし歯予防に効果があるとされたのは 1940 年代後
半でした。歯面塗布法・洗口法などむし歯の予防のため使用されるフッ化ナトリウムの有効・安全な用量・用
法は、長年の国内外からの研究調査から確立されており、WHO(世界保健機関)をはじめ数多くの専門機関
に認められています。日本においても厚生労働省が「フッ化物洗口ガイドライン」(2003 年)を発表しているよ
うに、むし歯予防に対する効果が評価されています。
フッ化物の使用法や、むし歯予防メカニズムにつきましては、厚生労働省、日本歯科医師会のホームペ
ージに詳しい解説がありますので、ご覧ください。

厚生労働省ホームページ
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-006.html

日本歯科医師会ホームページ
http://www.jda.or.jp/park/prevent/index05_16.html
現在、フッ化物が骨、発がん、アレルギーなどの全身へおよぼす影響については、過去の研究から
関連はないと結論づけられています。むし歯の予防には毎日の歯みがき、甘いものを控えるなどの食事コントロールなど様々
な対策が必要ですが、その中でもフッ化物応用は、安全性と効果が非常に高いむし歯予防策です。
ベルギー・アントワープ大学の
COVACI 教授を迎えて(2014/2)
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いつもご協力いただき、本当にありがとうございます!
次の「ポプラの綿毛~ポプラ通信増刊号~」は
2014(H26)年 10 月発行予定です。
最新の成果情報については、『環境と健康ひろば』ホーム
ページをご覧ください。
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台湾・台北大学の CHEN 教授を迎えて
(2013/11)
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