店頭におけるデジタルサイネージの 課題と展望

特集:店舗内購買行動研究の最前線
店頭におけるデジタルサイネージの
課題と展望
神 谷
渉
財団法人流通経済研究所主任研究員
1. はじめに
期待と相まって盛り上がりを見せているとい
1)
うことであろう 。
ここ数年、店頭におけるデジタルサイネー
もともとデジタルサイネージは、電車にお
ジの展開に注目が集まっている。しかしなが
ける液晶テレビを利用した情報発信・広告な
ら、将来性や可能性への期待は高いもの、国
ど交通広告の分野が先行していたものであっ
内・海外の事例を見ても必ずしも成功してい
た。海外でも、フランスのJCDecaux などの
るとはいえず模索の時期が続いているように
屋外広告を手がける企業が、バス停などにお
見受けられる。本稿では、まず店頭における
けるデジタルサイネージを展開している。
デジタルサイネージがなぜうまくいかないの
2)
店頭におけるデジタルサイネージの活用が
かという点について、ビジネスモデルの視点、
ここ数年注目されるようになったのは、これ
技術の視点、購買者の視点から確認する。そ
までも店頭テレビ(非ネットワーク型)の設
の上で、店頭におけるデジタルサイネージ活
置などによる販売販促が行われており、デジ
用の展望を行う。
タルサイネージ導入の親和性が高い領域であ
ると考えられたことも大きな要因である。
2. デジタルサイネージの概要
デジタルサイネージとは、日本におけるデ
ジタルサイネージの業界団体であるデジタル
3. 店頭におけるデジタルサイネージ
事例
サイネージコンソーシアムの定義によると、
店頭におけるデジタルサイネージの事例と
「屋外・店頭・公共空間・交通機関など、あ
して取り上げられることが多いのが海外の事
らゆる場所で、ネットワークに接続したディ
例である。海外、特に米国では小売業あるい
スプレーなどの電子的な表示機器を使って情
はメディア企業が中心となって店頭でのデジ
報を発信するシステム。
」とされる。この定義
タルサイネージを展開するケースが存在する。
で注目しておきたいところは、
「ネットワーク
ただし、海外においても店頭でのデジタルサ
に接続した」という部分である。デジタルサ
イネージ展開は試行錯誤を繰り返しており、
イネージには、通信事業者であるNTTなども
十分定着するには至っていないのが実態とい
積極的に関与しているが、これはNTTが推進
える。
するNGN(次世代ネットワーク)の活用への
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日本では2008年ころより店頭におけるサ
流通情報 2010(483)
イネージに関する期待が高まっており、2009
2年の歳月と1千万ドル(10億円)のリサー
年に入っていくつかの大規模な展開が起きつ
チ費用を拠出し実験・調査を繰り返してきた
つある。
という。
これまでのWalmart-TVとの違いは、まず
パートナーの追加・強化を行ったことである。
(1) ウォルマート
米国のウォルマートは90年代後半から子
これまでのPRNに加えて、DS-IQ(データ分
会社を通じてWalmart-TVとしてデジタルサ
析の領域を担当)、Studio2(コンテンツ配信
イネージを展開してきた。子会社(PRN)は
のカスタマイズを担当)がパートナーになっ
ウォルマートにとどまらず、他の小売業の店
た。そして、コンテンツについても単なるコ
頭デジタルサイネージも手がけるようになり、
マーシャルの配信やニュースの配信からの脱
その後フランスの家電メーカーであるトムソ
却を行っている。具体的には、TV毎に別コ
ン社に売却された。順調に導入されてきてい
ンテンツの配信が可能となり、より販促や売
るように見えるが、実際には何度か大きな方
場に連動したコンテンツの配信が可能になる。
向転換が行われている。2008年9月の発表で
また、売上反応測定の仕組みを導入し、広告
は 、 こ れ ま で の Walmart-TV を 刷 新 し 、”
実施後4週間以内に結果を広告主(メーカー)
Smart Networks”と名づけられたインスト
に提供するとしている。
アTVネットワークに置き換えることが発表
された。これまでのWalmart-TVは、売場と
(2) テスコ
必ずしも連動しないコンテンツを繰り返し流
英国のテスコは2004年からTescoTVとし
すことにより、購買客よりも店員のストレス
てデジタルサイネージを導入してきた。しか
が高まり、現場においてテレビ自体の電源を
しながら、効果が十分に発揮できていないこ
消すといったケースもあるなど課題が山積し
と か ら 、 2007 年 よ り 運 営 ・ 分 析 を
ていた。Smart Networksの導入に際しては
dunnhumbyに委託しTescoScreensとして
Smart Networksの概要
ディスプレイ概要
音の有無
コンテンツの内容
コンテンツ
の長さ
費用
Welcome
Screens
入り口に57インチのディスプ
レイを設置
なし
新製品情報、特売
情報等
2分毎に5秒
間
8万ドル(800
万円)/2週間
Category
Screens
57インチのディスプレイをグ
ロサリーとHBCの売り場に1
台ずつ設置。視線の位置に
合わせた展開。家電売り場
のテレビも含む
あり
顧客の注意を
ひきつけるノウ
ハウを導入
6分毎に2回、 5万ドル(約
カテゴリーに関す
10秒間
500万円)/1
る購買者へのソ
リューション提供、
週間
季節テーマの訴求、
特売情報
End cap
Screens
14インチのディスプレイをグ
ロサリーエンドに3台、HBC
エンドに2台設置。ディスプレ
イはタッチスクリーンとなっ
ており双方向に動作可能
“デジタルなデモ販を目指
す”
あり
個別商品の宣伝
(価格なし)
2分間のコン
テンツ(15秒
毎に中断が
入る)
食品:32万5
千ドル(約
3250万円)/2
週間(エンド
の場所代込
み)
出所:ウォルマート
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再構築を行った。dunnhumbyは、Tescoの
展開に当たっては、日立製作所とパートナ
子会社であり、Tescoの顧客カードのデータ
ーを組んでいる。設置数は2009年中に100店
分析を担当する企業である。dunnhumbyに
舗1000台に拡大し、最終的に2010年春に全
変わって大きく変わった点は、デジタルサイ
国250店舗で2500台を導入する計画である
ネージをPOPや店頭ツールと同列にみなし、
という。
総合的な店頭メディアとして位置づけたこと
(4) サミット
である。これにより、店頭の販促目的に応じ
たデジタルサイネージの活用を意図していた。
2002年に大画面プラズマテレビによるサ
しかしながら、この方法の本格展開を模索し
ミットビジョンを志村店と深沢坂上店に実験
ていた2009年に、デジタルサイネージの展開
導入。以降、新店や改装に合わせて随時導入
を休止する報道がなされた。報道を総合する
されている。サミットビジョンの特徴は、テ
と、以前導入した機材が古くなり、機材を刷
レビ的なコンテンツや広告を導入するのでは
新してまでやる効果が見出せなかった、広告
なく、生鮮食品に焦点をあててその日のおす
主からの協賛が思うように集まらなかったこ
すめ商品を訴求することにある。したがって、
となどが要因とみられる。
コスト負担も小売業が中心となって実施して
いる。
(3) イオン
(5) ソニー
2008年5月からジャスコ津田沼店におい
てデジタルサイネージの実証実験を進めた。
2008年より、「ミルとくチャンネル」とし
2009年になり実証実験の成果を踏まえて本
てSMを中心に店頭でのデジタルサイネージ
格導入が発表された。実証実験によって、導
サービスを本格展開している。全国で約400
入のための各種検証を終えたためとしている。
台のディスプレーに広告を配信することが可
本格導入の第一弾として2009年6月1日
能(2009年3月現在)であり、店舗情報・特
までに都内30店舗で「イオンチャンネル」と
売情報・イベント情報などのお買物情報、お
呼ぶデジタルサイネージ端末300台(各店10
料理レシピ・天気予報・ニュースなどのお役
台)を導入した。デジタルサイネージ端末を
立ち情報の他、他媒体とのクロスメディア連
使ってイオンの商品情報や企業のコマーシャ
携によってコンテンツを充実させ、視認率向
ルを放映することで、店舗における商品の販
上を目指しているとしている。
主通路とレジ前の2つにサイネージを設置
売促進と広告料収入獲得を狙うとしている。
店頭デジタルサイネージの効果
キャンペーンあたりの売上
金額上昇額平均値
キャンペーンあたりの売上
上金額昇率平均値
キャンペーンあたりの売上
上金額昇率中央値
2006/08以前
2006/08以前
(Tesco TV時代)
(Tesco Screens時代)
4,820英国ポンド
14,536英国ポンド
5.7%
7.3%
2.8%
6.3%
出所:dunnhumby
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しており、合計で1店舗5台から10台程度の
ものであり、コンテンツの内容や展開場所な
設置となっている。説明資料によると、
「ミル
どの工夫が必要である。
とくチャンネル」の効果として配信商品の人
数あたりの購入点数が実施前と比較して平均
80%上昇したとしている。ただし、特売など
他の販促を合わせて実施した可能性もあり、
単純な比較には注意が必要である。
5. 店頭でのデジタルサイネージ、
ビジネスモデルでの課題
店頭でのデジタルサイネージには液晶テレ
ビやコンテンツ管理・運営など少なからぬ設
4. 店頭でのデジタルサイネージ、
購買者視点での課題
備投資と運営コストが発生する。ある事業者
へのヒアリングでは、1店舗あたり1千万円
~2千万円くらいの初期費用が発生するとい
購買者の立場で、店頭のデジタルサイネー
う。このような初期費用を捻出するために、
ジを捉えるといくつかの課題が存在する。最
デジタルサイネージによる収益モデルが展開
も重要な点は、
「購買者の店頭での目的は商品
されている。
やサービスの購買にある」ということであり、
一般的なモデルは、企業の広告をデジタル
この部分に対応した店頭のデジタルサイネー
サイネージ上に展開することで、広告費用を
ジの展開が遅れているということである。
徴収しようとする試みである。初期投資を小
交通広告などと違った店頭でのデジタルサ
売業が負担せず第3者が運営を行うソニーの
イネージの難しさもここにある。交通広告の
ミルとくチャネルなどは、基本的にこのケー
場合は、電車に乗っている空き時間や電車を
スにあてはまる。小売業が運営を行うイオン
待っている時間など手持ち無沙汰な時間に、
のケースでも小売業が広告費用を徴収するこ
様々な情報を提供することで消費者の関心を
とを念頭に置いている。
ひきつけることができる。一方店頭では、購
ビジネスモデルとしての課題は、広告主と
買者はその店で何を購入するか?という目的
媒体の関係から、結果として店頭におけるデ
意識を持って店内を回遊しており、そのため
ジタルサイネージが広告としてではなく、販
の情報探索を行っている。したがって、目的
促として位置づけられることである。
意識と合致しないような情報提供を行っても
関心をひきつけにくい。
通常との取引と関係のないところで展開す
る広告とは異なり、店頭という媒体に関して
ウォルマートも導入初期には、テレビと同
は、運営が第三者であるにせよ、小売業であ
様の感覚で、ニュース番組など必ずしも店頭
るにせよ、売場との連動を意識するケースが
と関係のないコンテンツに広告を含めて提供
少なくない。
していたが、
“Smart Networks”ではより売
すなわち、小売業との取り組みの一環とし
場との連動を意識したコンテンツ提供を意識
てデジタルサイネージへの出稿を扱うことに
するように変化している。
なり、広告出稿側も広告費としてではなく、
国内の実験では、店頭で車の広告や航空会
販促費として認識することになる。販促費と
社の広告などがコンテンツとして提供される
して認識されると、店頭におけるデジタルサ
ケースも見受けられたが、このようなコンテ
イネージは、販促としての短期的な費用対「効
ンツは購買者にとって意思決定と関係のない
果」が求められる。店頭での具体的なアクシ
店頭におけるデジタルサイネージの課題と展望
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ョンであるため、POSデータによる効果の検
コンテンツ面で言えば、第一にコンテンツ
証が比較的容易であることも「効果」を求め
の提供方法の標準化である。デジタルサイネ
る動きを加速しているといえるだろう。
ージ毎に画像・映像サイズや提供フォーマッ
その結果、店頭におけるデジタルサイネー
トが異なれば、提供対象毎にカスタマイズを
ジに販促費として提供できる金額は1店舗あ
実施しなければならず作成コストは高いもの
たりで計算するとそう多くはならない。特に
につく上に提供にも時間がかかってしまう。
コンテンツ提供にかかる費用を広告主が負担
このようなコスト負担が店頭におけるデジタ
した上で、出稿料を支払うとなると、その金
ルサイネージの促進を阻害している部分もあ
額が一層減少してしまうことがわかる。その
る。第二に売場と映像コンテンツの連携が必
ため、収益としてのビジネスモデルを検討す
ずしも十分でないケースもある。洗剤売場の
る際には、安価に出稿できる価格体系や仕組
近くで画一的に食品の販促を行ってしまうと
みづくりが必要であろう。
いったケースも少なくない。過去の実験事例
一方で、店頭におけるデジタルサイネージ
では、ある企業のエンド陳列の上段にデジタ
を収益のビジネスモデルと考えず、別の目的
ルサイネージで競合他社の商品の宣伝が行わ
で活用しているケースも存在している。サミ
れていたというケースも存在した。売場毎の
ットなどが代表的な事例であるが、メーカー
コンテンツ配信に加えて、コンテンツ配信は
等の広告を積極的に載せるよりも、食品小売
中央(運用センター)などからの一斉配信が
業の中心商材である生鮮や惣菜の情報、社員
一般的であるが、現場においてある程度コン
の声を中心に掲載を行っている。このことに
テンツを差し替え、組み換えができる仕組み
より、社員の士気を高める役割も果たしてい
が必要であろう。
るという。設置にかかる初期費用については
また、デジタルサイネージのインタラクテ
小売業が新店や改装の際の費用、IT導入の費
ィブ性の向上も課題である。インタラクティ
用などとして負担しているケースが多い。追
ブ性が高まれば、購買者の要求に応じた情報
加費用としてみなしているのではなく、最初
提供や意思決定のサポートを行えるようにな
から費用を織り込んで計上しているため、あ
る。既存の「インタラクティブ」といえば、
えて収益モデルを考える必要がない。むしろ、
タッチパネル型のキオスク端末を想像してし
取引先の方からデジタルサイネージを活用し
まうが、このようなタイプ以外でのインタラ
た共同販促の提案が出てくる場合もあるとい
クティブ性の向上が必要である。たとえば、
う。
携帯端末や顧客カードとの連動も方向性とし
てありえるだろう。
6. 店頭でのデジタルサイネージ、
技術面での課題
さらに視覚・聴覚以外の活用もこれからで
ある。視覚・聴覚については既存の液晶テレ
ビを活用することで対応できるが、嗅覚・味
技術面での課題としては、売場との連動を
覚・触覚等への訴えかけはできない。嗅覚に
いかに高めるかという点にある。コンテンツ
対しては、香りの自動的な提供方法の模索が
の提供をタイムリーに実施でき、購買者にダ
続けられており、NTTコミュニケーションズ
イレクトに働きかけるにはまだハードルがあ
の「香り通信」などのサービス実験も開始さ
る。
れ、今後の展開に期待できる。
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最後に最も重要な点として技術の急速な進
いた。例えば床広告やエンド陳列との組み合
展と陳腐化がある。最新のシステムを高い費
わせでデジタルサイネージを活用するという
用を投入して構築したとしても、半年後には
販促的視点に特化する形での展開を模索して
より高機能な製品が安価に入手できる可能性
いた。テスコ撤退の理由は明らかにはなって
が高い。先行者よりも後発者が有利な点もデ
いないが、販促的な視点に注力した結果、費
ジタルサイネージの店頭展開に様子見を行う
用対効果が厳しく求められ、広告主からの協
企業が多い要因でもあろう。
賛を十分に得られなかったと推測できる。
ただし、このことをもって店頭におけるデ
7. まとめと将来展望
ジタルサイネージの効果は得られにくいと判
断するのは早計である。店頭におけるデジタ
店頭におけるデジタルサイネージは、購買
ルサイネージの効果は、短期的効果だけでは
者、ビジネスモデル、技術の視点でいくつか
なく、様々な視点での効果を総合的に見て判
の課題点があることを示した。
“店頭”という
断する必要がある。
場所の特殊性によってさまざまな制約を受け
例えば、店頭におけるデジタルサイネージ
ているのが実情である。設置する側にとって
の役割はサイネージの設置場所に依存する部
は店頭においてデジタルサイネージを展開す
分も大きい。売場に近い設置場所であれば、
る目的、出稿する側にとっては出稿する目的
売場との連動や販促的な視点が求められるし、
を明確にすることが必要である。
レジや入り口など売場との関連が薄い場所で
目的や方法が整理されないままだと、単に
あれば、購買者のブランド認知向上やブラン
「置くだけ」
、
「流すだけ」
という状況となり、
ド構築を目的とした広告的な視点での出稿も
効果も望めない。特に以下のような視点で目
十分にありえる。その場合、広告的な出稿に
的を整理することが必要であろう。
店頭での直接的効果(短期的売上)を求める
・販促的視点:短期的なセールスリフトを
望む
・広告的視点:中長期的なブランド構築を
望む
・そのほかの目的:店員のモチベーション
を高める、オペレーションを徹底させる、
など
先にビジネスモデル上の課題として、店頭
のは誤りである。問題はこのような違いを設
置者、出稿者双方が認識しているか、という
点である。このような認識がないと、設置者
と出稿者の思惑の違いが前面にでてしまい期
待はずれのソリューションと位置づけられて
しまう可能性がある。
先般ローソン、ADK、NTTドコモによる
デジタルサイネージを活用した新会社設立発
3)
に近づくとどうしても販促的な視点となり、
表 されたが、ここで注目しておきたいのは、
短期的な売上効果を求められることになると
デジタルサイネージが従来のようにコンビニ
指摘した。その点を理解した上で、デジタル
エンスストア店内ではなく店外に向けて設置
サイネージの改良に取り組んでいたのが英国
されるという点である。店外であれば、通行
のテスコであったが、残念ながら休止という
客に対しては広告的な意味合いとして位置づ
結果になっている。テスコは、dunnhumby
けられる。一方、来店客に対しては販促的な
を通じて販売促進ソリューションの一つとし
効果も期待できる。どちらの側面にも対応で
てデジタルサイネージを位置づけようとして
きるツールである。ただし、コンテンツ面で
店頭におけるデジタルサイネージの課題と展望
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は、いずれをターゲットとするかで内容も変
できる方法が限定されてしまうことになる。
わってくるため、試行錯誤の後に最終的には
このような小売業が、売場でのデジタルサイ
いずれかの方向に寄っていくことになるだろ
ネージを導入するのであれば、紙ベースでの
う。
販促ツールの代替として活用に注目が集まる
店頭におけるデジタルサイネージは、試行
ことになるだろう。
錯誤を繰り返しながら目的に応じたソリュー
ションが明確化されていくことになると予想
〈注〉
する。具体的には、売場に近づけば近づくほ
1)
ど、低コストでの導入が求められるため、大
幅な機器の値下げがない限り、売場での展開
は遅いペースで進展していくことになるだろ
う。一方で、レジや入り口など店頭でもパブ
2)
リックスペースに近い部分での展開は、より
早いペースで進展していくことになるだろう。
売場での展開には時間がかかると予想する
が、売場での展開が加速する可能性があると
すれば、メーカー等が提供する既存の紙の販
促ツールの代替である。むろん、通常で考え
3)
IMC Tokyo 2008のパネルディスカッションに
おいて、NTTの宇治副社長は,NGN(次世代ネ
ットワーク)を活用したデジタルサイネージの
サービス展開に「伸びると思うので,実現方法
は別にしても事業化したい」との期待感を示し
た。(2008/06/12ITPro記事より)
日本においては三菱商事と合弁でMCDecauxを
設立、交通広告やショッピングセンターなどに
おける屋外広告を手がけている。
2010年2月2日報道発表。デジタルサイネージ
を核に高い付加価値を持つ新メディア(以下「新
メディア」)を共同で開発・運用することを目的
とする合弁会社(株式会社クロスオーシャンメ
ディア)を設立することに合意。新会社設立は
2010年3月、サービス開始は同年6月を予定。
ればコストは紙の方が安く展開できる。しか
しながら、このような紙のツール(トップボ
ード等)などの販促物は必ずしも店頭で展開
されるとは限らず、場合によってはメーカー
販促物を禁止する小売業もある。
ウォルマートなどは売場管理の視点からメ
〈参考文献〉
Burke, R.R.(2009) “Behavioral Effects of Digital
Signage ” , Journal of Advertising Research,49(2)
中川弘道(2009)「インストアメディアにおけるデ
ジタルサイネージ」
『マーケティングジャーナ
ル』,29巻3号
ーカーツールの導入を認めていない。そうな
るとメーカーとして店頭で顧客にアプローチ
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