特集 中国のチェーンストア 中国最大手食品小売業 「聯華超市」 の研究 神 谷 渉 財団法人流通経済研究所主任研究員 なっている。また、同年鑑によると、昨年対 1.はじめに 比は3.2%増となっている。 ここ数年の中国内資系小売業のトレンドを 聯華超市は、百貨店企業である第一百貨、 見ると、国営企業よりも民営企業の勢いが強 上海友諠商店などとともに、小売コングロマ い。小売業の上位を占める家電量販店の国 リットである百聯集団を形成している。百聯 美、蘇寧も国営企業ではなく、民営企業であ 集団は、 2003年に上海市にある国営系企業 る。また、 2010年に上場を果たした福建省 が連合して誕生した集団である。聯華超市自 の食品小売業である永輝超市も勢いのある民 体も、もともとは上海市政府の一部門を母体 営企業として知られている。一方、国営小売 として成立している。 業に目を転じると、依然として国内で上位の 民営企業の成長が注目される中で、国営企 ポジションを確保している企業も多い。例え 業も合併などを通じて、企業としての規模を ば、「聯華超市」である。 拡大させている。国営企業の合併による拡大 聯華超市は、中国食品小売業の中では最 は、「強い国内小売企業の育成」という政府 大手企業の1つであり、中国連鎖経営年鑑 の意図を反映している一方で、巨大国営企業 2010によると2009年グループ売上高は671 ゆえの脆弱性も抱えている。 1) 億元を超える 。売上高671億元は日本円に 本論では、中国最大手食品小売業「聯華超 換算すると約9349億円(1元14円換算)と 市」をケースとして、中国内資系国営小売業 2009年中国FMGCチェーン小売業ランキング 売上規模 増加幅 店舗総数 増加幅 (万元) % (軒) % 1 聯華超市股份有限公司(含華聯) 6,716,978 3.2 5,599 -4.7 2 康成投資(中国)有限公司(大潤発) 4,043,169 20.5 121 19.8 3 家楽福(中国)管理咨詢服務有限公司(カルフール) 3,660,000 8.2 156 16.4 4 沃尓瑪(中国)投資有限公司(ウォルマート) 3,400,000 22.2 175 45.8 5 農工商超市(集団)有限公司 2,673,800 0.2 3,331 0.0 6 物美控股集団有限公司 2,610,000 25.5 537 -26.0 7 新一佳超市有限公司 1,723,600 -2.0 109 3.8 8 好又多管理咨詢服務(上海)有限公司 * 1650000 0.6 104 0.0 9 文峰大世界連鎖発展股份有限公司 1,566,457 11.1 978 7.2 10 TESCO(中国内地) * 1330000 15.7 79 29.5 順位 企業名称 出所:中国連鎖経営年鑑 2010 30 流通情報 2011(490) の抱える課題について考察する。 ており、ハイパーマーケット業態は「世紀聯 華(Century Mart)」、コンビニエンススト 2.聯華超市の概要・沿革 アは「快客(Quick)」として展開している。 スーパーマーケット業態のバナー名が2つあ (1) 聯華超市の事業概要 る理由は聯華超市が華聯超市を買収したこと 聯華超市は、スーパーマーケット、ハイパー による。 マーケット、コンビニエンスストアの業態を 店 舗 数 を 見 る と、 ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト 有する。スーパーマーケット業態は「聯華超 (SM)業態が最も多く2818店舗となってお 市」、「華聯超市」の2つのバナー名で展開し り、コンビニエンスストア(CVS)業態よ りも店舗数が多い。ところが、売上構成比を 図表1 業態別店舗数 店舗数 直営店 加盟店 合計 HM – 見ると、売上高240億元のうち、ハイパーマー SM(聯華) SM(華聯) CVS 合計 132 495 214 921 1,762 1,173 936 1,059 3,168 132 1,668 1,150 1,980 4,930 ケット(HM)業態の構成比55%を占め、最 も高くなっている。 出所:聯華超市アニュアルレポート 2009 (2) 聯華超市の沿革 図表2 業態別売上構成比 聯華超市は、 1991年に上海聯華超市公司 売上構成比 として設立された。中国が近代小売業の導入 6% を意識した初期のころから展開している。も HM SM CVS 39% 55% ともと、SM 業態からスタートしているが、 その後 CVS 業態、HM 業態も展開するよう になっている。HM 業態に参入したのは、 2001年のことであり、比較的最近のことで ある。これは、 1994年にカルフールとの合 弁で上海地区におけるカルフールを運営する 出所:聯華超市アニュアルレポート 2009 「上海聯家」を設立していたことも影響して 図表3 聯華超市の沿革 年 沿革 1991 上海聯華超市公司設立 1994 カルフールとの合弁で上海聯家を設立(上海地区でのカルフールの運営) 1996 売上高8億元、店舗数41を達成 1997 三菱商事の資本参加 2001 世紀聯華投資発展有限公司設立、ハイパーマーケット業態を本格展開へ 2003 カルフール関連会社との合弁で上海ディア(ディスカウント店)を設立 2003 親会社(上海友誼集団)が経営統合し、持ち株会社を設立、百聯集団が誕生 2003 香港市場に株式上場 2006 上海ディアを売却 2006 上海に新物流センターを稼動(2.9万平米 )-岡村製作所のノウハウ 2007 広東省のCVS(快客)を売却(112店舗) 2009 百聯集団傘下の華聯超市を買収 出所:聯華超市アニュアルレポート、寺嶋正尚 他(2003) 中国最大手食品小売業「聯華超市」の研究 31 り、中国連鎖経営年鑑2010によると中国食 図表4 省別出店数 店舗数 上海 浙江 江蘇 安徽 河南 広西 黒龍江 吉林 遼寧 北京 天津 河北 山東 江西 福建 広東 内蒙古 重慶 甘粛 四川 湖南 湖北 貴州 2009年度 HM SM 32 37 24 9 5 5 4 4 2 2 1 品小売業の中では第6位に位置する小売業で CVS 1741 254 526 66 9 172 1289 238 6 ある。なお、両者とも香港に株式上場を行っ ている。 損益計算書からは、聯華が売上高に対する 当期利益率は2.5%とさほど高くない水準に あることが分かる。一方で、物美の売上高当 4 311 136 3 17 8 1 3 期利益率は、 4.7%と聯華の2.5%に比べ非常 に高い水準である。また、額で比較しても、 売上は2倍以上異なるにも関わらず、当期利 益は聯華の5.9億元、物美の4.9億元と1億元 の違いであり、聯華の収益性が劣っているこ 13 1 1 3 1 1 1 出所:聯華超市アニュアルレポート とがわかる。 また、両者に共有する特徴として、売上高 総利益では販売管理費をカバーすることがで きておらず「その他収益」によって確保して いる状況となっている点があげられる。聯華 の場合、その他利益の内訳としては、取引先 からの収入、テナント収入、フランチャイズ いる。2003年には百聯集団の誕生とともに、 収入等があるが、この中で最も多くの割合を 聯華超市は香港市場に上場を果たしている。 占めているのが、取引先からの収入である。 取引先からの収入の詳細について、 2008年 (3) 聯華超市の展開地域 度のアニュアルレポートに記載されている内 聯華超市は、上海市を中心に全国幅広い地 容から、多くはプロモーションや入荷、物流・ 区で展開を行っている。近年では、資源の集 配送に関わる収入とされている。 中を図るために、全国幅広い地区での展開を このことは、商品を仕入れて販売するとい 目指すというよりも、上海・華東地区での展 う小売業の基本的な行為では利益が確保でき 開に注力している。 ず、それを様々な形で取引先に転嫁して利益 を確保しているということである。 3.聯華超市の業績から見た 課題 物美は、売上高総利益率が聯華よりも低い にも関わらず、「その他収益」の割合が物美 の方が高いことから、売上高当期利益率は物 (1) 損益面での課題 美の方が高くなっている。すなわち、物美は 聯華超市(以後、聯華)の業績上の特徴を 取引先から様々な名目で収益を得ることで収 確認するため、民営同業他社との比較を行い 益が確保されていることが想像される。聯華 ながら見ていく。ここで取り上げる民営の同 超市は、売上高総利益率が物美よりも高いこ 業他社として、「物美」を取り上げる。物美 とから、商品を仕入れて販売するという小売 は、北京を中心とする内資系民営小売業であ 業の基本的な行為は行われていると考えられ 32 流通情報 2011(490) 図表5 聯華超市と物美の損益比較(2009) 単位:千人民元 聯華2009 売上高 売上原価 売上高総利益 その他収益 販売物流費 一般管理費 その他費用 営業利益 関連会社の利益 税引き前利益 当期利益 24,017,720 -20,881,677 3,136,043 2,652,839 -4,558,202 -560,117 -22,990 647,573 150,240 797,813 589,383 売上高 構成比 100.0 86.9 13.1 11.0 19.0 2.3 0.1 2.7 0.6 3.3 2.5 物美2009 10,511,410 -9,580,791 930,619 1,364,905 -1,369,093 -252,078 -32,473 641,880 5,682 647,562 491,360 売上高 構成比 100.0 91.1 8.9 13.0 13.0 2.4 0.3 6.1 0.1 6.2 4.7 出所:各社アニュアルレポート 図表6 聯華超市と物美の売上成長比較 単位:千人民元 聯華 物美 2009 2006 2009/2006 24,017,720 16,443,030 146% 10,511,410 5,159,666 204% 出所:各社アニュアルレポート る一方、消費者に対して高い価格での販売と に比べると整備されていないといった課題が なっている可能性もある。 あるものと考えられる。 なお、「販売物流費」については、聯華が 聯華の特徴としては、資産として現金・預 物美の3倍以上となっており、コストの違い 金を豊富に有しており、総資産に占める現 が利益率の差にもつながっているといえるだ 金・預金の割合が非常に高いことがあげられ ろう。 る。負債を見ると借入金(固定負債、短期借 なお、両者の売上高の成長性を2009年と 入金)は少ない。借入金によらない経営を実 2006年の売上高の比較で見ると、聯華も物 施することができているといえる。 美も共に成長しているが、物美の成長スピー ただし、聯華の負債の部として、クーポン ドの方が早い。聯華の場合は、 2009年に実 発行による負債の占める割合が高いことに注 施した華聯の買収効果が大きい。 意しておく必要がある。アニュアルレポート 上での明示はされていないが、これは聯華超 (2) 資本・負債面での課題 市が発行するプリペイド型カード(チャージ 両者の貸借対照表の違いとして挙げられる 型含む)のことを示していると考えられる。 のは資産の効率性の違いである。特にここで プリペイド型カードの販売により、現金が増 は、在庫の水準の違いに注目する。聯華の在 えるとともに、負債として計上される。使用 庫額は、物美の三倍弱ある。すなわち、聯華 された時点で売上が計上され、現金・負債が の方が物美に比べて在庫の回転が悪く、非効 相殺されるという仕組みになっていると考え 率な経営状況にあるということがいえる。前 られる。 述の「販売物流費」の状況も含めると、聯華 このように考えると、現金とクーポン負債 にはサプライチェーン効率化の仕組みが物美 が同規模の金額かつ高い割合を占めるのも納 中国最大手食品小売業「聯華超市」の研究 33 図表7 聯華超市と物美の資産・負債・資本の比較 単位:千人民元 流動資産 現金・預金 売掛金 受取手形 商品在庫 その他 固定資産 建物・機械・土地 投資その他資産 総資産 聯華2009 10,253,936 6,521,724 74,302 487,723 2,459,506 710,681 5,164,460 3,285,870 1,607,752 15,418,396 物美2009 2,876,319 1,171,575 586,486 838,803 279,455 3,535,371 2,237,538 1,297,833 6,411,690 聯華2009 12,438,947 流動負債 3,490,098 買掛金 0 短期借入金 1,773,257 未払金 6,944,234 クーポン負債 30,388 前受金 92,460 未払税金 その他 200,970 固定負債 51,375 2,982,074 純資産 15,418,396 総資本 物美2009 4,014,513 3,355,280 456,086 134,738 68,409 16,397 2,380,780 6,411,690 出所:各社アニュアルレポート 注)各社”-”となっている項目は、他の項目に含まれている場合がある 得できる。なお、このクーポン負債を売上 額で割ると、クーポン負債の割合は3割弱と なっている。売上の2~3割がクーポンによ 4.聯華超市の近年の戦略か ら見た成長の可能性 る利用と考えると大きな位置づけを占めてい 聯華超市の近年の戦略は、「集中化発展戦 ることがわかる(クーポン負債は流動負債と 略」、 「強店戦略」、 「生鮮強化」となっている。 して計上されているため、 1年間で使用され 「集中化発展戦略」は出店の戦略であり、い るクーポン額と考えて試算した)。現地在住 わゆるドミナント戦略のことである。2006 者へのヒアリングによると、プリペイド型 年くらいまでは、聯華超市も全国的な発展を カードは旧正月に国営企業などにより大量に 目指すべく展開を行ってきたが、効率面や管 購入され、従業員・関係者へのプレゼントと 理面での課題も出てきたために、上海を中心 して使われるケースも多いという。国営企業 とする華東地区に出店をシフトさせている。 ならではの結びつきもありそうである。 この集中化発展戦略は、サプライチェーン上 非効率な地区からの撤退を促し、聯華超市の (3) 比較から見た聯華の業績面での課題 課題である効率性の改善に寄与するものであ 利益率や効率性、成長性の面で、国営小売 るといえる。また、国営企業であるため、地 業である聯華が物美より劣勢となっているこ 域の政府と結びつきが強いことから、地域内 とがわかる。現状では、売上・規模面で聯華 での出店強化は他の企業との競争にも優位に が勝っているものの、中長期的に見た場合に 働くことになるだろう。その点で、集中化発 は、聯華が買収等による更なる規模の拡大と 展戦略は国営小売業である聯華超市の成長を 効率化を行わなければ、物美のような勢いの 一定程度加速させる要因となると想定され ある民営小売業に追いつかれてしまう可能性 る。 も否定できない。一方で、先述のプリペイド 「強店戦略」は、店舗の個店の強化を目指 カードのように国営企業であるがゆえの数値 したものであり、店作り・業態開発等が含ま には現れない強みもあることから、今後この れる。旗艦店やモデル店などの設定を通じて ような資産の活用が求められる。 全体としての店舗のレベルの底上げを図ろう としている。特に、スーパーマーケット業態 34 流通情報 2011(490) は、ハイパーマーケットやコンビニエンスス 産地からの直接大量購買が推奨されると、 「生 トアといった業態の狭間で競争力の強化が課 鮮強化」が大きなテーマとなってきたのであ 題となっている。現在競争力強化への対応と る。このような「生鮮強化」は、生鮮を核と して「聯華生活館」という高級スーパーマー する業態の開発につながり、中長期的には大 ケット業態の開発や生鮮強化型、コンビニ型 きな可能性があると考えられる。しかしなが のスーパーマーケットなどの業態開発を目指 ら、生鮮の購入には市場を利用するという消 している。実際のところ、聯華超市の場合、 費者のライフスタイルの変更を促すことにつ 業績面でもハイパーマーケット業態が好調で ながるため、短期的な効果をどこまで得るこ あり、店舗数では多くを占めるスーパーマー とができるかという点ではハードルがありそ ケット業態は停滞気味となっている。 うである。 古くから存在し、身近であるがゆえに、国 営企業のイメージが残り、店舗としても古さ を感じさせているのかもしれない。国営企業 5.まとめ ゆえの従業員のサービスの課題もある。この 本論では、中国最大手食品小売業「聯華超 ような状況を改善するための強店戦略ではあ 市」をケースとして、中国内資系国営小売業 るが、その効果は未知数である。地域住民の の抱える課題についてみてきた。業績面から 身近に存在するスーパーマーケット業態の停 みると、聯華超市は利益率や効率性、成長性 滞が継続すれば、企業としての成長に悪い影 の面で改善余地があることが分かった。一 響を及ぼす可能性もある。 方、資金面では借金に頼らず潤沢な資金を 「生鮮強化」は、産地からの直接購買など 持っている様子がうかがえるものの、それら を増やし、売場としても生鮮を拡大させてい の資産を有効に活用できているとはいえない こうという取組みである。従来、生鮮は2つ 状況であることが見て取れた。 の理由から積極的に扱われていなかった。理 清華大学の2007年の調査によると、華聯 由の1つは、市場(農貿市場)との競争であ と聯華の顧客満足度・顧客忠誠度は、 2005 る。鮮度や価格面で市場に劣るため、消費者 年に実施した調査に比べ着実に上昇している も生鮮食品を市場で購入するのが一般的であ が、総じて高いとはいえない状況となってい り、上海のような大都市であってもスーパー る。顧客評価は中長期的な業績に影響を及ぼ マーケットなどは加工食品や日用品を購入す すことが考えられるため、改善が求められ るために利用されていたという実態がある。 る。このような低い顧客評価の改善のために もう1つの理由は、利益率の問題である。市 は、現在の重点政策である「強店政策」によ 場との価格競争により、加工食品等に比べて る新業態の開発など個店の競争力強化などが 十分な利益が取れていなかった。また、廃棄 必要である。特に標準化した店舗業態の開発 等のリスクもあり、小売業の立場としては、 は、顧客体験の改善による顧客満足度の向上 メーカー等からの利益が確実に確保できる加 だけではく、効率性の向上にも寄与すると考 工食品や日用品の売場を減らしてまで生鮮を えられることから、優先的に取り組むことが 取り扱おうという意欲が高まらなかったので 必要な領域であるといえよう。 ある。ところが、農村地の活性化という意図 ここでは、いくつかの課題を指摘したが、 もあり、政府によってチェーン小売業による 機会も数多く存在する。国営企業であるがゆ 中国最大手食品小売業「聯華超市」の研究 35 図表8 聯華超市の顧客評価 顧客満足度 順位 1 2 3 4 5 6 7 14 19 企業名 ウォルマート カルフール 大潤発 ジャスコ メトロ オーシャン テスコ 上海華聯 聯華 顧客忠誠度 指数 >76 >76 >76 >74 >74 >74 >74 >72 >70 順位 1 2 3 4 5 6 7 19 20 企業名 大潤発 カルフール ウォルマート オーシャン ジャスコ テスコ メトロ 上海華聯 聯華 指数 >70 >66 >66 >66 >64 >64 >64 >60 >58 北京、上海、広州、天津、南京、武漢、成都、深セン、重慶、斉南、青島の5019サンプル 深圳 出所:清華大学経済管理学院中国小売研究センター「中国小売業顧客満足度研究」 えの地域との強固な結びつきは強みでもあ 磐石にし、その間に企業や店舗としての能力 る。中国のチェーンストアランキングを見て を強化することができれば、外資系との戦い も、比較的好調な企業は、地域を基盤とする にも優位性を保つことができ、全国展開の基 小売業である。聯華超市の場合は、上海とい 盤を整備することにつながっていくだろう。 う成熟市場に基盤をおいているために、現在 の成長余力は高くないように見えるが、周辺 都市・地域への拡大機会は存在する。2011 年3月の中国商業連合会の大会において中国 商業連合会の張志剛会長は、中国流通大手が 〈注〉 1) 聯華のアニュアルレポートの売上額と異なるの は。連鎖経営協会のデータが同じバナーの店舗 の売上を全て聯華のものとして計算しているた めである。このため、アニュアルレポートの金 額よりも大きい数値がでている。 全国に跨っての展開に成功できない理由とし て、企業面と環境面の問題があり、環境面の 問題としては、税制等の問題があることを指 摘している。すなわち、地方に対する保護政 策により、地方毎への納税等、納税が一元化 できないなど、税負担(金額だけではなく、 労力も含め)が全国的な流通企業の発展を阻 害しているということである。このことは全 国的に展開を模索する企業にとっては不利で あるが、聯華のような地域集中型の戦略に転 換した小売業にとっては有利であるともいえ 〈参考文献〉 神谷渉(2010) 「チェーンストアランキングに見る 中国における小売業の特徴と課題」『流通情 報』2010年5月号 清華大学経済管理学院中国小売研究センター (2007) 『中国小売業満足度研究』 中国連鎖経営協会(2010) 『連鎖経営年鑑2010』中 国連鎖経営協会 寺嶋正尚・後藤亜希子・川上幸代・洪緑萍(2003) 『最新よくわかる中国流通業界』、日本実業 出版 矢作敏行・関根孝・鐘淑玲・畢滔滔(2009) 『発展 する中国の流通』白桃書房 る。ローカルのトップ小売業としての位置を 36 流通情報 2011(490)
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