表面上に現れる大学中退の背景>「大学中退者へのアンケート結果の

<表面上に現れる大学中退の背景>
「大学中退者へのアンケート結果の解析より」
1.大学を決めた理由はやりたいことがあったから(B-1)
大学進学率が増加する中で、その波に飲まれながらも何らかの目的意識を持って入学し
た学生が多いことが言えるだろう。
・大学進学率が増加し、現在では 5 割を超えている。
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/3928.html
・世界的に見ると、日本は大学退学率が非常に低い。=今後、増加する可能性は?
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/3928a.html
2.入学前の情報は、HP やパンフレットから(B-5)
IT 時代の今、HP から気軽に大学情報を入手できるようになった。情報が溢れる一方で、
情報がないまま入学する人も多いことが示されている。意外なデータである。
3.中退理由は学習意欲の喪失(D-1)
学習意欲の喪失が大きな理由となっているようだ。学習意欲が喪失するまでには様々な
過程を辿っている可能性がある。例えば、期待と現実とのギャップがあったり、大学の風
土に馴染めなかったり…など。このテーマを丁寧に追っていくことが必要と思われる。
4.中退の原因となっている問題を解決するために行動しなかった(D-4)
色々行動したけど、どうしても中退せざるをえなかった…という最後の選択肢的ではな
く、もっと身近で、気軽に選択しているとも取れる結果であった。
5.学校(友人)が改善されていたら中退しなかった(D-5)
インタビューデータをさらに追ってみると、
「単位をとるのが大変だった」「もう少し管
理してほしかった」など、大学ならではの自由度の高い生活への戸惑い、馴染めない学生
が多いのかもしれない。
6.中退について相談したのは家族や友人(D-7)
相談相手は、家族や友人が2大柱となっている。また、相談していない者もみられ、学
校関係の支援につながらずに結論を出しているケースも少なくないと思われる。
7.相談相手からは引き止められなかった(D-8)
引き止めない人が多い。自身で、主体に選択することを求められている。
1
8.相談サービスはほとんど活用していない(D-9)
ほとんど利用していなことがわかった。わずかながら学内では学生課や先生に相談した
学生もいた。しかし、中退時には経済面、中退後のキャリア面、メンタル面、親子間の問
題などを相談できる窓口・制度を希望する意見が多かった。(D-11 より)
9.両親へは退学前に報告していた(F-2)
※ 削除いらない??
10. 両親は反対しなかった(F-3)
(D-8)と同様、自身で、主体に選択することを求められている。
<水面下にある大学中退の背景>
「大学中退者への自由インタビューの解析より」
100 名の大学中退者へのインタビューから自由な語りを逐語収録(発言内容の記録)し、
テキストマイニング解析(発言を、前後の言葉との結びつきの強さ、量、質などから分析
し統計処理した)を行った。自由インタビューからは、アンケートという事前に定型化さ
れたデータ収集とは異なり、発言者の本音が見えてくるものとされている。
本解析は、本人の自由な語りにより、大学中退の深層にある背景を探っている。
※テキストマイニング解析
テキスト(文章)データを単語や文節で区切り、出現の頻度や共出現の相関、出現傾向、
時系列などから解析し、有用な情報を抽出集計する統計処理技術。近年の自然言語処理の
発展により分析が可能となった。
1.大学中退にある二大背景
解析結果(解析図)からは、<中退、大学、理由>というキーワードを中心に、
(1)
「入
学、志望、情報」という学校の選び方にかかわる軸と、②「学生、支援、サービス、就職」
という社会資源にかかわる二つの軸が浮き上がった。また、先の二つの軸よりは弱いが<
中退>単独のキーからは、「相談、友人」などの内部資源が関係していることが示された。
さらに、<大学、優先、順位、生活>からは、「授業」を筆頭に、「サークル、バイト、
学費、イメージ」なのワードが浮かび上がってきた。
なお、所属としての「学部、学科、クラス、学内」や、在学中の様子を物語るキーであ
る「通学、人間関係、実家、悩み」などが直接には<中退>とは結びついていないことが
2
示された。
ちなみにアンケート結果では、中退の理由が①「学習意欲喪失」,②「人間関係」,③「関
心の意向」,④「不本意入学」の順で示されていた。しかし、自由なインタビューでは、学
習意欲や人間関係というキーでなく、入学時志望に関する話しや、専門的な支援・サービ
スの内容などについて語るものが多かった。
(1)入学志望時の情報
「中退の背景には、①入学志望時における情報の問題がある」
結果からは、不本意入学という大きなテーマと関連していると考えられるキーが出現し
た。これは「入学前とは思ったものと違う」
「想定したものと違う」などのほか、入学前情
報の不足からくるギャップが語られながら、中退にいて振り返る発言が多かったものと想
定される。また、インタビューでは「期待通りであったが思いのほか自分がついていけな
い、馴染めない」などの大学時代の流れを話したり、現在の状況である退学後の専門系学
校への入学などの話題が出現している。
(2)学生支援やサービスの利用
「中退の背景には、②学生支援や大学サービスの課題がある」
中退経験者が大学側が提供する学生支援やサービスのことを、大きく視野に入れている
ことが示された。この結果には、学生支援やサービスを期待したものの「思い当たる窓口
が無かった」などのほか、
「話しに行ったが役立たなかった」
「相談した結果退学した」と
いうものも含まれている。高校や予備校などで進路相談することが一般化している中、大
学の中にそのようなリソース(窓口)を求め、インタビューの中で発言されることも自然
なことかも知れない。
2.その他、中退にかかわるキー
(1)中退時の相談先
中退の相談先としての友人関係、高校時代の友人などの内部資源が見られた。
(2)大学生活の優先順位
授業の他、サークル、バイトなどの活動に関わる事項。生活に直結する学費などの課題
が示された。
(3)入学時に抱いた生活イメージ
大学生活のイメージは、学費、バイト、サークルが関連しながら入学時に構成されてい
る。そして、それらに葛藤する優先順位として、授業、出席がつながっていることが示さ
れた。
(4)中退とは直接結びつかない所属、在学中の様子
アンケート結果では、中退理由として②「人間関係」が示されているが、在学中の人間
3
関係の悩みそれ自体が中退とはむすびつかず独立していることが示された。また、在学中
の様子である通学、実家なども直接に中退にはつながってはいない。
3.中退後の指針
資格への挑戦、音楽を代表とする趣味への傾倒などが中退後の状況で強く語られている。
(解析図)<水面下にある大学中退の背景>
社会
資源
就職
利用
学部
活動
学科
所属
課外活動
クラス
サービス
バイト
優先
大学
悩み
在学
通学
学費
内部
資源
入学
情報
人間関係
出席
イメージ
志望
授業
生活
中退
理由
実家
住所
順位
学生
学内
サークル
支援
相談
取得
友人
成績
在学中の
様子
単位
学業
高校時代
学校の選び方
流れ
学校
関係
目標
資格
挑戦
大学時代
現在の状況
専門
4
音楽
趣味
(基本図1)<自由インタビューでの核となる発話=ピンク強い>
5
(基本図2)<自由インタビューでの発話カテゴリー=色別>
6
12
14
)
科
/
7
情報な し
説 明 会 ・オ ー プ ン
キ ャン パ ス
知 人 ・友 人
や パンフ
B-5入学前の情報
周 囲 の影 響 友 人 、
家庭 ︶
立地
/
(
受験形態
内部
H
P
やり た い こと
目
(
ブ ラ ンド
学力
37
20
25
14
40
35
30
25
20
15
10
5
0
63
30
32
70
60
50
40
30
20
10
0
B-2学校を決めた理由
70
66
60
50
41
35
40
30
20
16
12
2
D-1中退理由
80
67
70
60
50
40
29
30
20
10
0
有
無
D-4中退意志後の行動
60
56
50
40
30
26
20
9
10
0
自分
学校(友人)
家庭
D-5何が変わればやめないか?
8
妊娠
精 神 ・身 体 疾 患
経済的理由
不本意入学
学業不振
人間関係
関 心 の意 向
学習意欲喪失
0
8
7
10
60
56
50
50
40
30
21
19
20
12
10
0
家族
友人
学校関係者
その他
していない
D-7相談相手
60
49
50
40
31
30
20
10
1
0
止められた
止めはせず
その他
D-8相談相手から引きとめられたか?
90
80
78
70
60
50
40
30
19
20
10
0
0
していない
学内
学外
D-9相談サービスを使ったかどうか
9
100
90
86
80
70
60
50
40
30
20
12
10
0
退学前
退学後
F-2両親への報告時期
70
60
60
50
40
39
30
20
10
0
反対
反対しない
F-3両親が反対したかどうか
10