【H14】片品川吹割の滝周辺水質調査

吹割の滝上流部での水質調査
佐藤
遙果
はじめに
1年次から野外実習の場として利用してきた吹割の滝(以下滝とする)の水質を詳しく
調べ、3年間のまとめにしたいと思いこの調査に取り組んだ。測定はpHメーターなどの
測定器や、パックテストを用いて化学的に行うことにした。
方
法
8 月 31日 、9 月 24日 、10月 8 日 、10月 30日 、
11月 18日 の 計 5 回 、 滝 上 流 の 浮 島 北 部 の 川 岸
4地点(図1)でpH、EC、水温を測定し
て、採取した水を学校へ持ち帰り、パックテ
ス ト を 用 い て C O D 、 N H 4、 N O 2、 P O
4を測 定した 。
pH、ECは3回測定した。それ以外は1
回のみ測定した。
水質測定を行った場所は 浮島と呼ばれる
中州を挟んで川が二股に別れる所で、状況の
異なる4地点を選び、地点A、地点B、地点
C、地点Dとした。
図1
測定場所の上流(北)からの様子
表1
地点
A
B
C
D
測定地点の川の状況
流速
水深
遅い
浅い
遅い
浅い
早い
深い
早い
深い
表2 天気、水の濁り、水量
測定日
天気
水の濁り
8 /31
晴れ
透明
9 /24
晴れ(前日2日間雨)
濁りあり
10/8
曇り時々小雨
透明
10/30
曇り時々小雨(前日雨) 透明
11/18
晴れ
透明
結果と考察
表3 pHの値
採 取 場 所 8/31
9/24
10/8 10/30
地点A
8.3
7.8
7.7
7.5
地点B
7.9
7.5
7.7
7.6
地点C
7.6
7.5
7.4
地点D
7.8
7.3
7.7
7.5
平均
8.0
7.6
7.7
7.5
は測定できなかった
11/18
7.0
7.3
7.3
7.2
7.2
平均
7.7
7.6
7.5
7.5
7.6
8.2
8.0
7.8
7.6
7.4
7.2
7.0
6.8
- 1 -
多い
8.0
7.6
7.7
7.5
7.2
8/31
図2
表4
ECの値
単 位 : μ S /cm
140
採 取 場 所 8/31
9/24
10/8 10/30 11/18 平 均
120
100
地点A
107
82
78
104
93
80
60
地点B
130
80
74
100
92
40
地点C
132
85
81
76
94
20
0
地点D
105
73
81
102
90
平均
119
73
79
95
92
は測定できなかった
図3
量
9/24
10/8 10/30 11/18
pHの平均値
119
96
8/31
9/24
73
79
10/8
10/30
11/18
E C の 平 均 値 ( μ s/cm)
表5 CODの値
単 位 : ppm
12
10
採 取 場 所 8/31
9/24
10/8 10/30 11/18 平 均
8.8
10
7.5
8
地点A
10
5
10
10
0
7.0
6
4.5
地点B
3
10
10
5
0
5.6
4
2
地点C
10
10
10
0
7.5
0
0
地点D
5
5
10
10
0
6.0
8/31 9/24 10/8 10/30 11/18
平均
4.5
7.5
10.0 8.8
0
6.3
は測定できなかった
図 4 C O D の 平 均 値 (ppm)
表 6 N H 4の 値
単 位 : ppm
採 取 場 所 8/31
9/24
10/8 10/30 11/18 平 均
0.8
0.7
地点A
0.1
0.2
0.1
*
*
0.1
0.6
0.4
地点B
0.5
0.2
0.1
*
*
0.2
0.2
0.2
0.1
地点C
0.2
0.1
*
*
0.1
0
地点D
1.6
0.2
0.1
*
*
0.4
8/31 9/24 10/8 10/30 11/18
平均
0.7
0.2
0.4
*
*
0.2
測 定 で き な か っ た *: 測 定 限 界 以 下 ( 0.1未 満 )
図 5 N H 4 の 平 均 値 (ppm)
N O 2 : 測 定 限 界 以 下 ( 0.02未 満 ) P O 4 : 測 定 限 界 以 下 ( 0.1未 満 )
p H の 平 均 は 7.6と な っ た 。 ふ つ う の 淡 水 で の p H は 7.0前 後 で あ る が 、 こ こ で は や や 塩
基性を示している。この原因は周辺の地質の影響であると考える。滝周辺の岩石は古墳時
代に榛名山の噴火で飛ばされた軽石層から出来ている溶結凝灰石と花崗岩であり、これら
はpHの値を高くするということから、塩基性を示したのは滝周辺の地質の影響であるこ
と が 言 え る 。 ま た 、 8/31の 地 点 A の 値 が p H 8.3と な っ て い る 。 こ れ は 、 夏 で あ り 水 量 が
少なかったため、溶結凝灰石と花崗岩からの塩基成分が濃縮されたためだと思われる。
E C は 、 各 地 点 数 値 に 大 き な 差 は み ら れ な い が 、 測 定 に よ っ て 大 き な 差 が あ る 。 9/24は
特に高い値である。これは前日2日間にわたって降った雨の影響だと考える。雨自体は不
純物ではなく、流れを速くしたため川底や岸の泥などから不純物を運び込むためと思われ
る 。 9/24の 水 は 濁 っ て お り 、 川 底 が 見 え な い 状 態 だ っ た 。 ま た 、 10/8は 小 雨 で あ っ た が 、
値は低くなっていることからも、ECの値が高くなるのは雨によって運ばれてくる不純物
の影響が強いと考えられる。
C O D は 水 道 水 ( 飲 料 水 ) の 0と 比 べ る と 少 し 汚 れ て い る 。 こ れ は 、 洗 剤 な ど の 生 活 排
水が流入しているのではないかと考える。
N H 4、 N O 2、 P O 4は パ ッ ク テ ス ト で ほ と ん ど 検 出 で き な か っ た 。 N H 4は た ん ぱ
く 質 ( 食 べ 物 の か す ) や し 尿 が 多 く 含 ま れ る ほ ど 数 値 が 高 く 、 N O 2は ア ン モ ニ ア が 更 に
酸 化 さ れ た も の で あ り 、 P O 4は 化 学 肥 料 な ど が 流 れ 込 む こ と に よ っ て も 増 え る も の と い
うことから、これらの高い数値が現れる場所は下水処理の行き届いていない所、もしくは
処 理 が 追 い つ か な い 人 口 の 多 い 都 市 や 、工 業 地 域 で あ る こ と が 考 え ら れ る 。こ の こ と か ら 、
調査地点ではこれらの流入はないと考えられる。
おわりに
どの測定項目からもきれいな水と判断できるが、CODが飲料水より若干高い値を示し
た こ と が 気 に な る 。今 後 は 、調 査 回 数 を 増 や し 、天 候 に 左 右 さ れ な い 考 察 が で き る と よ い 。
今回の調査を行う中で、水というものは一種のイキモノであると感じた。その日のうち
に測定しなければ水質が変化してしまう可能性もあり、ビンに採水するときやビーカーに
移すときは、空気の影響を受けないように気を使うなど、大変な面もあったからだ。
現在の水質は問題ないが、将来上流の片品村や利根村の人口が増えたとしたら、水質は
悪くなっていってしまうのではないかと心配になった。景観の美しさだけでなく、環境的
にもきれいな滝であり続けてほしいと感じた。
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