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●オペレーションリサーチの中の競争問題をパソコン
使ってかじってみよう。
●知ってて得するキーの便利な使い方。
社友会九州支部パソコン同好会
8月27日(水)
競争の原理原則
今年も8月15日を迎えました。終戦記念日ですが、かつては敗戦記念日といっていました。日本は満州
事変、日中戦争を経て太平洋戦争に突入し、8月15日に無条件降伏に至ったわけです。太平洋戦争は日本
とアメリカの戦いとなったわけですが、日本は戦争に勝つという信念で戦い、アメリカは戦争に勝つため
の理論でもって戦ってきた。結果は歴史が証明している。
この戦を理論化したのは古くは中国の、あるいはエジプトやメソポタミアにもあったのでしょうが戦い、
つまり戦争の書物でした。有名なのは孫子の兵法など現在でもベストセラーになっていますが、あくまで
書物で、戦を科学しているとは言い難い。まあ言うなれば経験談ともいうべきでしょうか。この戦を科学
するために数値化したのがランチェスターでした。
ランチェスターはイギリスの技術者で、自動車のエンジニア。しかし航空機の研究をするうちに実際の
戦闘では損害の数値に興味を持ち兵力と損害の間にどのような法則があるかを研究し、そうして生まれた
のが第1法則、第2法則とよばれるものです。ご存じのように第1法則は一騎打ちの法則。一人が一人と
戦う戦さで一騎打ちの戦いとも呼ばれます。第2法則は広域的な総合戦、確率戦ともいわれ現在の近代戦
に当てはまります。このランチェスターの法則を基本にして戦争を科学したわけですが、戦争が終了する
と、今度はこの理論をマーケティングに応用してたくさんの実証例が出現し、正しさが証明されました。
またこの理論を拡張してゲーム理論を作り上げたのが、コンピュータの理論を作ったフォン・ノイマン。
今もランチェスターの法則を基本に戦争のみならずマーケティング理論は進歩し続けています。
本日はこの基本理論の意味と、それに基づいた実際のシミュレーションで、競争を実際にエクセル上で
再現してみます。最後には競争に勝利するための基本法則をまとめてみたいと思います。実際に数値にし
てみますと、戦いの本質が見えてきます。アメリカはこの理論を発展させ理論武装して日本と戦いました。
日本は物量で負けたと当時の指導者は言い訳しているけれど、決してアメリカも物量で買っていたわけで
はない。この理論を基に集中と選択を組み合わせ日本と戦い、戦後は市場における競争にこの理論を発展
活用している。
1
競争を実際に科学するにはまず基本の数式があって、具体的にはデータをデジタル化してシミュレーショ
ンし、初期条件から時間経過による変化を予測します。
まず競争には味方と敵が必要です。
一次法則
アメリカのORチームは(軍の研究機関オペレーションリサーチ)「個]対[個]の戦闘における数式を以
下のように整理しました。
自軍(初期兵力-残存兵力)=交換比×敵軍(初期兵力-残存兵力)
それでは敵軍を全滅させたとしましょう。つまり
自軍(初期兵力-残存兵力)=交換比×敵軍(初期兵力)
変形して
自軍(初期兵力)-交換比×敵軍(初期兵力)=自軍(残存兵力)
お互いの交換比、武器効率が同じであれば、交換比は1となり上の式は
自軍(初期兵力)-敵軍(初期兵力)=自軍(残存兵力)
それでは敵軍を全滅させるシミュレーションをえきせるでおこない、
パラメーターをいろいろ変化させてみます。
一次法則では結果は簡単です。兵力数が
少ない時は交換比つまり武器効率を上げ
ることで、劣勢が簡単に優勢に変化させ
ることができる。しかし、近代戦におい
ては、このような一次法則になることは
あまりない。
2
上記のグラフ
二次法則
二次法則は「集団」対「集団」の戦闘を示したものです。集団対集団の場合は武器効率より兵力数が大
きくものを言います。戦闘力は兵力の二乗に比例するといわれますが、数式で表すと
(自軍初期兵力)2-(自軍残存兵力)2 =交換比×《(敵軍初期兵力)2-(敵軍残存兵力)2》
この式を用いて敵軍を全滅させるケースを考えてみます。
まず自軍1000、敵軍800のばあいはどうなるでしょうか。
この時上の式の残存兵力を0となりますので、
(自軍初期兵力)2-(自軍残存兵力)2 =交換比×(敵軍初期兵力)2
の式を使用すると簡単のため交換比を同じ1とする。
自軍残存兵力2=10002-8002
となり、自軍残存兵力は600となり、敵軍は全滅するという結果
になります。これをエクセルでいろいろ計算してみましょう
例えば、同じ1000の兵力をもっていて、自軍は1000投入、
敵軍が500投入後500投入したとします。この時の結果を出すと。
自軍残存兵力2=10002-(502+502)
結果をエクセルで計算してみると。自軍の残存兵力は707、敵軍は全滅という結果になります。これは
戦力の逐次投入という、集団の戦いの場合に一番避けなければならないことです。かつての日本軍のガダ
ルカナルを含め、戦いにおいてこの愚を犯しました。
それでは自軍の消耗兵力数を敵軍が800、自軍の消耗を100に抑えるには投入数をいくらにすればよ
いでしょうか。
(自軍初期兵力)=(敵軍の初期兵力2+自分の消耗兵力2)÷自軍の消耗兵力×2
(自軍初期兵力)=(640000+10000)÷200
3
一次法則も二次法則も時間と共に刻々と変化します。一次法則は簡単ですが、二次法則では非常に複
雑です。簡単にするために武器効率は同等とします。
自軍の消耗兵力=-敵軍の兵力×微小経過時間
敵軍の消耗兵力=-自軍の兵力×微小経過時間
これを数式におきかえます。
=-n (経過時間の推移において、味方の損害は敵の兵力に比例)
=-m (経過時間の推移において、敵の損害は味方の兵力に比例)
ある特定の時間における両軍の残存兵力を算出するには上の微分方程式を連立微分方程式として解く
必要があります。ここでは簡略に武器効率を1として解を算出すると下記のような答えが出てきます。
m(t)=
n(t)=
(味方初期兵力-敵初期兵力)et+(味方初期兵力+敵初期兵力)eーt
-(味方初期兵力-敵初期兵力)et+(味方初期兵力+敵初期兵力)e-t
それでは、初期兵力自軍1000、敵軍800としたときの兵力の損害推移をエクセルで計算してグ
ラフ化してみましょう。なお敵の兵力が0になるまでの時間は数式から下記のようになります。
敵が全滅するまでの戦闘時間=
Log
味方初期兵力+敵初期兵力
味方初期兵力-敵初期兵力
エクセルでは、この戦闘終了までを10段階にわけ、両軍の戦力の推移をグラフにしてビジュアル化
します。個々の数値を計算してグラフを作成して、二次法則の結果がいかに重要な結果を導きだすこ
とになるか確認してみましょう。このグラフは実際に米軍が活用した日本軍の拠点攻略の基礎シミュ
レーション資料です。
4
二次法則による戦闘に
おける時間経緯グラフ
初期兵力はわずかの差でしかありませんが、二乗の法則でこのように結
果は予想以上に大きく違っています。時間の経過とともに急激に敵側は
消耗が大きく、逆に味方は損害が急激に減ってきます。いかに初期兵力
の差が重大な結果をもたらすかです。
この結果を元に理論を発展させ、マーケティング戦略論がいろいろ出
てきていますが、基本はこのランチェスターによる一次法則と二次法則
が基本となっています。
ちなみに右の図は上が1274年の弘安の役の図、元寇による最初の博
多襲来では、日本は一騎打ちつまり一次法則で戦い、元軍は集団つまり
二次法則で戦い、日本軍はぼろ負けします。7年後再度攻めてきた弘安
の役では下のように集団に対して集団で対応、さらに防塁という砦を築
き、武器効率も格段にあげ対応して元の侵攻を止めることができました。
この時神風が吹いて勝利したといわれますが、日本のご家人が一次法則
から二次法則に戦術を変更し、かつ武器効率を上げてきたという事実は
あまり評価されていない。
5
この2つの基本法則で明らかになったのは以下の二つ
①戦闘においては兵力数の少ない方が必ず負ける。
②弱者は第二法則の戦いになればなるほど苦戦する。逆に強者は第二法則の戦いになればなるほど有利に
なる。
では弱者は必ず負けるとの前提で、弱者の取るべき原則はというと
①局地戦を選ぶ
②接近戦を展開
③一騎打ちを選ぶ
④兵力の分散を避け、一点集中主義をとる。
強者の原則はどうか
①なるべく確率戦に持ち込む
②一騎打ちを避け総力戦にもっていく。
③直接的な接近戦を避け、間接的、遠隔的戦闘場面を作る。
④圧倒的な兵力数による短期決戦を狙う。
このこれら戦闘の基本的な理論がマーケティングに応用され、
戦闘から市場における競争原理への理論として発展します。こ
の市場における競争理論で一番重要視されてきたのがマーケテ
ィングシェアの考え方です。企業の強さを図るものは売上利益
ですが、それをもたらす大元は市場シェアです。市場シェアな
くして売り上げなしといっても過言ではない。
右の図は成長曲線といわれるもので、成長期は一次法則が利く
範囲、成熟期は2次法則が支配する期間。これを基に市場シェア
の考え方を見てみます。
6
競争の形態には2種類あります。ゲームとレースこの違いを知っておかないと活動がとんでもなくおかし
なことになります。まずレースの説明から
●レース型競争。
これは小学校などでの50m競争を思い浮かべればわかりやすい。50mを団体で走って1着から6着ま
で順位を出すとします。1着には1等賞、2着は2等賞、3着は3等賞、そのほかの順位は参加賞。
つまり褒美は其れなりにいただけるわけです。つまり参加すれば何らかの利得がある。多い少ないは別に
して。成長期はレース型の競争です。努力すれば得るものがある。他人より努力する、時間を延長して働
く、訪問件数を増やす。どれも所得が行った行動に比例します。市場は無限に存在すると見える時です。
日本経済が大きく発展した70年、80年代、バブルまでがレース型の競争社会で、誰でもその気になれ
ば所得が得られた、またやればできるの時代でした
●ゲーム型競争。
これはゼロ和ゲームと言われるもので、6人で椅子取りゲームをすると考えてください。自分がとればだ
れかが損をしなくてはならない。生き残るためには他者を蹴落とす必要がある。
レース型競争はどちらかと言うとランチェスター第1法則に支配され、ゲーム型競争は第2法則に支配さ
ていると言えるかもしれません。この時市場の伸びはなくてもシェア1位はさらにシェアを伸ばすことに
なります。実際にエクセルで計算してみましょう。
シェアの考え方
市場の伸び
市場の伸び
A社
B社
A社
B社
C社
C社
成長期の市場
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成熟期の市場
成長期の戦いについては一次法則に従うと思われます。これはシェアに対しての配分です。
売り上げの伸び=市場全体の伸び×
各社の売り上げ
全体の売上
成熟市場ではどうしてもライバルから売り上げを奪う形になります。二次法則を基に計量してみます。
トップの売り上げ
全体の売上
トップ企業の伸び市場全体の伸び×
2位の企業は市場全体からトップ企業を差し引いたものから配分される。
ナンバーワンが有利な理由を実際に計量してみましょう。
あるとき、薄型テレビのシェアがA社40%、B社30%、C社20% その他D10%とし規模が1000
の市場で、1年後の市場の伸びが100だったとします。各社の初期値をA0、B0、C0、D0、市場の伸び
をT0。市場の伸びに対するそれぞれの企業の取り分をΔA、ΔB、ΔC、ΔDとする。これはかつての薄型
テレビの市場シェアにちかい。
A0
ΔA=T0×
T0
市場規模
将来市場
増 分
ΔB=(T0- ΔA)×
1000
B0
T0-A0
ΔC=(T0- ΔA- ΔB)×
C0
T0-A0-B0
ΔD= (T0- ΔA- ΔB- ΔC)×
現在シェア
売り上げ初期値
増分取り分
増分合計
将来シェア
1100
A社
40.0%
400
63.2
42.1%
100
B社
C社
30.0%
20.0%
300
200
26.0
8.8
100
29.6%
19.0%
D0
T0-A0-B0―C0
実際にエクセルで計算した結果を右の表にしたものです。1位以下はすべてシェアを下げている。
8
D社
10.0%
100
2.0
9.3%
ランチェスターの法則を研究したアメリカの数学者B.O.クープマンによって導き出された「ランチェス
ター戦略モデル式」により作られた市場シェア理論のことです。この理論により、市場でのポジションの
意味付けと、優劣の判断をすることができます。クープマンは戦力を戦術力と戦略力、生産補給力にわけ
ました。
戦力
自軍
M
敵軍
N
戦術力
=
戦略力
生産補給力
Mt
+
Ms
P
Nt
+
Ns
Q
M
Mt
Ms
N
Nt
Ns
ρ
自軍戦力
自軍戦術力
自軍戦略力
敵戦力
敵戦術力
敵戦略力
戦略係数
下記の微分方程式はは解が非常に難しいのですが、この方程式の解からさまざまな結論が出てきます。
dm
dn
-
dt
dt
= P- Q -
(n-nt)
mt
P-
上記の式より得られた均衡解はランチェスターの戦略方程式
と呼ばれるものです。
Mt=1/3(2ρ・N-M)
Ms=2/3(2M-ρ・N)=2ρNt
この結果から導かれるものが市場シェアの考え方です。
9
(m-mt) Q
nt
= L(mt , nt)
六つのシェア目標値
●独占的市場シェア:73.9%
「独占的寡占型」と呼ばれ、首位が絶対安全かつ優位独占の状態をさします。
●安定的トップシェア:41.7%
実質3社以上の戦いの場合、41.7%以上のシェアを取れば業界における強者となり、安定した地
位を確保できます。この目標値は、一般的には「40%目標」等といって用いられることが多く、ト
ヨタ自動車が「シェア40%の安定的な確保」にこだわっているのはこのためと言われています。
●市場影響シェア:26.1%
この値を上回ると、激戦の競争状況から一歩抜け出した状態と判断されます。つまり、この値が強
者と弱者を決定付ける基準値となります。一般にはこのレベルで業界トップであることも多く、ま
たシェア2位であったとしても、この基準にあれば市場に影響力をもつことが可能となります。
●並列的競争シェア:19.3%
複数企業で拮抗している競争状態の時に多いシェアで、安定的トップの地位をどの企業も得られて
いない状況です。この場合は、競合他社に先んじて市場影響シェアである26.1%を獲得することが
目標となります。
●市場認知シェア:10.9%
生活者において純粋想起がなされるレベルのシェアです。このレベルになると、市場において競合
他社からも存在を認められるようになります。
●市場存在シェア:6.8%
生活者において、助成想起が可能なレベルです。市場において、ようやく存在が許されるレベルと
して位置付けられます。
この数値は決して適当に決められたわけではありません。この数字をマーケットにおける基本数値と
して上記の数式により算出されたものです。
この中で重要なのは、戦術力と戦略力は1対2の割合でないといけない。力の差が3倍になると逆転は
不可能になるという数学上の結論です。当たる当たらないは複雑な要因がありますが、基本は今の通
りです。
10
アメリカ軍はこの戦略式を大々的に活用しました。まず拠点を攻撃するのに相手の兵力の3倍を基本と
し、それ以下だと実施しなかった。あるいは分断して必ず3倍の兵力でことに当たってきた。また当初
ゼロ戦にやられっぱなしでしたが、からなず3機で攻撃し一次法則のドッグファイト禁止、さらに機銃
をゼロ戦の3倍にしてここでも3倍の基本を活用し場面を二次法則して、最終的にゼロ戦は太刀打ちで
きなくなってしまった。
このように戦争からいろいろな技術の進歩がありました。電子機器の発達、原子爆弾の開発、コン
ピュータ等。それ以外に目には見えませんが戦争理論の解析があり、これが戦後のマーケティング理論
の発展につながっています。
ここで戦争に負けた、あるいは市場での攻防において勝利する基本的考えとなるのですが、この理論の
神髄は安易に勝てない戦はしてはならない、あるいは競争するにあたってやらねばならないこと、ある
いはやってはならないことを明確にしたことで、時の運はないということです。この点
アメリカは過去の戦争において以下を基本に据えてきました。
●勝利、成果を評価
●結果を出せば評価。結果を出さなければならないという緊張感
ゼロ戦
●結果を追及するモチベーション
ゼロ戦に対し
それに対し日本は
3機で対応、ドッグファイト禁止
●やる気、意欲を評価
ヒットエンドラン
●結果を出しても評価されない。
機銃数3倍
●やる気さえ出せばいいという意識
3・1の理論応用して作られた
アメリカの対抗機
●言っても無駄という諦め
結局この違いが結果を生んだのですが、現実のマーケティングの中でも非常に有効な考え
です。現実はもっと複雑で計算できないところもあるので一概にはいえませんが、いろい
ろな場面で結論を出す場合においては一つの指針になると思います。ただアメリカが直面
している中東での戦闘についてはこの理論は破たんしている。理由はて敵の特定できない
からだと思います。アメリカは新しい理論を研究しているかもしれません。今回はエクセ
ルで数値として初歩の体感をしていただきました。
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グラマンF6F