朝倉市庁舎整備基本計画

朝倉市庁舎整備基本計画
平成 28 年(2016 年)3月
朝 倉 市
目 次
第1章 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.新庁舎の検討経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2.関連計画との整合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
第2章 新庁舎建設の基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
1.庁舎の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2.新庁舎の基本理念・基本的機能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
第3章 新庁舎に求められる機能と実現方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
1.ひとにやさしい庁舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
2.まちにやさしい庁舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
3.自然にやさしい庁舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
4.災害につよい庁舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
5.セキュリティにつよい庁舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
6.変化につよい庁舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
7.市民と行政をつなぐ庁舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
8.人と人をつなぐ庁舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
9.人と自然をつなぐ庁舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
第4章 新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・37
1.新庁舎の規模・部門配置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
2.敷地周辺の環境等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
3.平面・ゾーニング計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
4.断面・階層計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
5.建物デザイン計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
6.構造計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
7.設備計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
8.駐車場・駐輪場の計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
9.運用管理計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
第5章 新庁舎の建設位置・配置方式の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
1.建設位置・配置方式の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
2.建設位置・配置方式の検討結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
第6章 新庁舎建設に向けた事業計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
1.事業手法について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
2.財源計画について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63
3.事業スケジュール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
第1章
はじめに
第1章 はじめに
本市は、平成18年3月に甘木市、朝倉町および杷木町の1市2町が合併し、
「朝倉市」と
して誕生しました。現庁舎は、合併前の平成17年3月10日に調印された合併協定書に定
める「新市の事務所の位置は、甘木市大字菩提寺412番地2とする。
」ことに基づき、旧甘
木市役所の庁舎を朝倉市の本庁舎として活用してきました。しかし、昭和48年1月に竣工
した現庁舎は、老朽化が進むとともに、狭あいとなり、またバリアフリーにも対応すること
ができない状況にあります。
あわせて、平成18年1月に改正された「建築物の耐震改修の促進に関する法律」
(以下「耐
震改修促進法」
)に基づき、平成25年に「耐震改修促進計画」を策定し、耐震診断を行うこ
とが必要となりました。
これを受け、平成26年に現庁舎の耐震診断を実施した結果、現庁舎は耐震性に不安を残
す結果となりました。
この朝倉市庁舎整備基本計画は、平成27年8月に策定した「朝倉市庁舎整備基本構想」
に掲げる基本理念を達成するための基本的機能をより具体化させ、新庁舎の施設計画及び運
用管理計画、事業計画等を示したものであり、今後の設計に向けた基本的な指針となるもの
です。
策定にあたっては、
「朝倉市庁舎整備基本構想」の策定に引き続き、庁舎整備検討市民会議
において議論いただくとともに、市議会においては、市庁舎整備検討特別委員会の設置によ
り慎重審議がなされました。現庁舎の利用実態を把握し、市民や市議会からの幅広い意見や
提案をできる限り尊重し、策定しました。
また、庁内においては朝倉市庁舎整備検討委員会の下部組織として「市民サービス部会」、
「事務管理部会」
、
「建設環境部会」
、
「施設活用部会」の4つの作業部会を設置し、課題への対
応や新庁舎のあるべき姿について調査・検討を行い、本計画を策定したところです。
来年度は、完成時の姿がより明らかとなる基本設計・実施設計の策定となります。市民の
皆様に親しまれ、安全で利用しやすい庁舎となるよう、新庁舎建設事業を進めてまいります。
結びに、本計画の策定に当たり、ご尽力をいただきました市民会議および市議会の皆様な
らびにご意見をお寄せいただきました市民の皆様に心からお礼を申しあげます。
1
第1章
はじめに
1.庁舎整備の検討経緯
年 度
内 容
平成 18 年度 ○甘木市、朝倉町、杷木町が合併。
合併協定書において「新市の事務所の位置は、甘木市大字菩提寺 412 番地 2」と定めら
れる。
平成 25 年度 ○「耐震改修促進計画」策定
平成 26 年度 ○耐震診断実施
○庁内に「朝倉市庁内耐震対応検討委員会」を設置
○耐震診断の結果Is 値 0.41、耐震性能不足が判明
○市議会「市庁舎整備検討特別委員会」設置
○庁内に「朝倉市庁舎整備検討委員会」設置
○「朝倉市庁舎整備検討市民会議」設置
○市民 3,000 人を対象にした「市民アンケート」実施
平成 27 年度 ○「朝倉市庁舎整備基本構想(案)」策定
○「朝倉市庁舎整備基本構想(案)」パブリックコメント実施
○「朝倉市庁舎整備基本構想」決定
庁舎をピーポート甘木周辺に建替えることを決定。
○市役所職員を対象にした「職員アンケート」実施
○朝倉市庁舎整備検討委員会として 4 つの部会を設置
「市民サービス部会」「事務管理部会」
「建設環境部会」
「施設活用部会」
○「朝倉市庁舎整備基本計画(案)」パブリックコメント実施
2
第1章
はじめに
2.関連計画との整合
新庁舎建設にあたっては、本市が掲げる以下の計画の趣旨を踏まえ、幅広く検討するこ
とが重要になります。
○
○
○
○
○
第1次朝倉市総合計画(平成 25 年3月策定)
朝倉市第1次都市計画マスタープラン(平成 23 年 10 月策定)
朝倉市第1次国土利用計画(平成 23 年 10 月策定)
朝倉市環境基本計画書(平成 26 年3月策定)
朝倉市地域防災計画(平成 21 年6月策定・平成 27 年度改訂)
「第1次朝倉市総合計画」
(平成 25 年3月策定)では、
「水を育み 街を潤す 健康文化都
市」を将来の都市像として定めており、それを実現するために6つの大綱を掲げ,「『共生』
と『交流』を創る『自立』と『責任』のまち」を目指しています。
「第1次朝倉市総合計画」において掲げている本市の将来の都市像の実現に向けたまちづ
くりを着実に進めていくためには、市民の安全・安心を守り、時代の変化と市民ニーズに即し
た質の高いサービスを提供するための体制づくりが重要となるとしており、ワンストップサ
ービスの充実や庁舎内外のバリアフリー化を進めるなど、市民の利便性の向上を図り、新庁
舎の整備と併せて、本市の基幹業務システムの一元化や集約化に取り組み、事務の効率化と
サービス提供の迅速化を図るとしています。
「朝倉市第1次都市計画マスタープラン」
(平成 23 年 10 月策定)においては、
「水と緑を
育み 街を潤す 歴史と文化が薫る 交流拠点都市」を都市づくりの基本理念とし、新庁舎
が建設される甘木中央地域は「朝倉市郡の中心都市にふさわしい都市機能の集積と良好な市
街地を形成するまちづくり」を都市づくりの目標としています。
また、「朝倉市地域防災計画」
(平成 21 年6月策定・平成 27 年度改訂)において、市有建
築物については、施設利用者や職員の安全確保、並びに行政機能の維持を図るとともに、地
震時の防災拠点・避難施設として活用していく必要があることから、耐震診断・補強等耐震
対策に努めることとしています。
3
第2章
新庁舎建設の基本的な考え方
第2章 新庁舎建設の基本的な考え方
1 庁舎の現状
(1) 各庁舎等の配置
庁舎と支所等は、下図のとおりの配置となっています。
【各施設間の道のり】
本庁
1.1
ピ ー ポー ト甘木
2.4
3.4
環境セン ター
7.3
7.3
6.8
朝倉支所
(km)
17.4
17.2
16.9
10.3
杷木支所
ピーポート甘木
本庁舎別館
本庁舎
ピーポート甘木
②
朝倉支所
環境センター
4
杷木支所
第2章
新庁舎建設の基本的な考え方
(2) 庁舎配置の状況
職員が執務する各部課は、5か所に分散して配置されています。
ア 本庁舎
イ 環境センター
エ 朝倉支所
ウ ピーポート甘木(総合市民センター)
オ 杷木支所
<各庁舎の概要>
本庁舎
項 目
本庁舎
敷地面積
本庁舎別館
6,155㎡
環境センター
ピーポート甘木
朝倉支所
杷木支所
10,527㎡
29,590㎡
10,810㎡
8,920㎡
4,126㎡
3,088㎡
S63年2月
S58年8月
延床面積
5,892㎡
1,337㎡
526㎡
建築年月
S48年1月
H1年9月
S56年3月
構造
鉄筋コンクリート造
鉄骨造
階数
経過年数
地上5階、
地下1階
築後42年
耐震基準不適合
345人
総務部、市民環
部課配置
鉄筋コンクリート造
地上2階
地上3階
築後26年
築後34年
築後21年
新耐震基準
未補強
職員数
H6年2月
地上2階
H26耐震診断済
耐震性能
668㎡/
12,255㎡
H18耐震診断済
消防防災課
33人
環境課
境部、保健福祉
地下1階
築後27年
地上3階
築後32年
新耐震基準
耐震基準適合
6人
地上3階、
94人
67人
13人
教育部
朝倉支所
杷木支所
健康課
農林商工部
部、都市建設部
議会
※ 上記のほか、朝倉地域生涯学習センター内に、人権・同和対策課(朝倉地区人権啓発情
報センター)があります。
5
第2章
新庁舎建設の基本的な考え方
(3)現庁舎が抱える主な課題
現在の本庁舎は,以下に示す各種の課題を抱えています。
① 耐震性能の不足
現庁舎は昭和 48 年、建築基準法改正前の旧耐震基準で建築されたものです。
平成 26 年度に耐震診断を行ったところ、Is 値=0.41、補強ブレースが 101 か所必要
という診断結果になり、耐震性能の不足が明らかになりました。庁舎は、市民の生命と
財産を守るとともに、市民生活に係る機能や情報等が存在する重要な施設です。また、
危機管理機能を備えた防災の拠点であり、災害発生時にいち早く復旧、復興を図るため
の拠点として重要な役目があります。
■ 耐震診断指標
構造耐震指標には Is 値を用います。Is 値は地震力に対する建物の強度、靱性
(じんせい:粘り強さ)を考慮し、建築物の階ごとに算出します。
<震度 6~7 程度の規模の地震に対する Is 値の評価>
Is 値が 0.6 以上
倒壊または崩壊する危険性が低い
Is 値が 0.3 以上 0.6 未満
倒壊または崩壊する危険性がある
Is 値が 0.3 未満
倒壊または崩壊する危険性が高い
※「耐震改修促進法」の告示
■ 庁舎に求められる Is 値
一般の建物で 0.6 以上が必要とされています。防災拠点となる建物では、そ
の重要度に応じて、一般建物のから 1.5 倍(Is 値=0.9)以上の Is 値が必要とな
ります。
<必要な Is 値>
一般の建物
庁舎
0.6 以上
0.9 以上
※「官庁施設の総合耐震計画基準」
(国土交通省)
■ 耐震診断結果
平成 26 年度に実施した現庁舎の耐震診断の結果は、次のとおりです。
<現庁舎の Is 値>
地階
1階
2階
3階
4階
5階
最低値
X方向(東西)
0.67
0.41
0.44
0.60
0.67
0.60
0.41
Y方向(南北)
0.58
0.57
0.64
0.75
0.94
1.17
0.57
② 本庁方式分散型による機能の分散
職員が執務する事務所は、支所機能を除き4か所(本庁舎、環境センター、ピーポー
ト甘木(教育部、健康課)
、朝倉支所(農林商工部))に分散しているため、用件が各部
局にまたがるような場合は、事務所間を移動しなければならず、市民にも負担が伴い、
市民サービスや利便性の低下を招いています。
また、多種多様化する市民ニーズに対して迅速な対応が求められていますが、行政組
織が部課単位で事務所が分散しているため、各部課間の連携または協議に時間を要し、
連絡調整がスムーズに行えないなどの現状にあります。
6
第2章
新庁舎建設の基本的な考え方
課 題
■ 事務所の分散化により、市民サービスや利便性の低下を招いています。
■ 職員の事務所間移動に係る時間的損失、各庁舎の維持管理経費等が負担となります。
■ 各部課間の連絡調整等での業務が非効率です。
■ 職員の事務における連携意識が希薄になりやすくなります。
平成 18 年の合併においては、本庁支所方式=本庁方式集中型を採用し、本庁は旧甘
木市役所庁舎とすることが確認されていました。
しかし、旧甘木市役所庁舎のスペースに余裕がなかったため、農林商工部が朝倉支所
に置かれ、現在も本庁方式分散型のままとなっています。
また、現庁舎の狭あいは合併前からの問題でもあり、教育委員会は平成 14 年からピ
ーポート甘木に設置されている状況にあります。
合併協定書(下表参照)を踏まえ、本庁方式集中型が採用できる庁舎整備が理想では
ありますが、今後も市民の利便性、事務の効率性、財政面など様々な視点から検討して
いきます。
<合併協定書に定める「事務組織および機構の取扱い」>
1 基本方針
(1) 地方分権における行政課題に迅速、かつ的確に対応できる組織・機構
(2) 住民の声を適正に反映できる組織・機構
(3) 住民にわかりやすく、利用しやすい組織・機構
(4) 指揮命令系統を簡素化し、責任の所在が明確な組織・機構
(5) 簡素で効率的な組織・機構
2 具体的方針
(1) 庁舎配置方式については、本庁・支所方式とする。(以下略)
7
第2章
新庁舎建設の基本的な考え方
<庁舎配置方式の例>
本庁方式
分庁方式
総合支所方式
集中型
分散型
・組織・機構を1ヶ所に集約する方式です。
・庁舎を「分庁」として各行 ・本庁には管理部門や事
・残った庁舎は、窓口的な機能を持ち、支所又は出張 政部門を振り分け、業務を 務部門を配置し、合併時
概 所とします。
分散します。
の行政機能を残します。
・本庁に業務を集中します。
・支所においては、住民に直接関わりのある業務を行
要 います。
・本庁のスペースの関係
上、一部の部門を支所に
配置します。
本 庁
本 庁
朝
倉
市
の
例
すべての業務
朝
倉
支
所
杷
木
支
所
○○部
支所等に置かざるを
得なかった業務以外
の業務
朝
倉
支
所
農
林
商
工
部
総
合
市
民
セ
ン
タ
杷
木
支
所
△△部
甘木
庁舎
朝倉
庁舎
杷木
庁舎
総合市民
センター
□□部
※※部
本 庁
朝
倉
地
域
行
政
セ
ン
タ
杷
木
地
域
行
政
セ
ン
タ
教
育
部
・業務を集中することで、事務が効率化し、行政の一 ・既存の施設を利用するた ・住民にとって最も合併前
メ
体感が図られます。
め、建設費用(改装費程 に近くなります。
リ
・住民に与える新市誕生の印象が強くなります。(合併時) 度)は少なくて済みます。
ッ
・住民の申請手続き等の利便性が確保されます。
ト
デ
メ
リ
ッ
ト
・新庁舎を建設するためには、多大な建設費用が必要 ・各業務が分散するため、 ・職員数が合併時と同程
です。
住民にわかりにくくなりま 度必要であり、合併による
す。
効果があまり期待できま
・管理上は、非効率的で せん。
す。
・新市の一体感が醸成さ
・命令系統が複雑になり、 れにくくなります。
迅速な対応が難しくなりま ・命令系統が複雑になり、
す。
迅速な対応が難しくなりま
・会議、決裁等に支障をき す。
たします。
8
第2章
新庁舎建設の基本的な考え方
③ 建物・設備の老朽化
コンクリートの劣化や鉄筋の爆裂による中性化、屋上防水の劣化による雨漏りが発生
している状況があります。また、耐用年限による設備更新の必要性が生じており、性能
およびシステムの大きな見直しが求められています。これらの建物・設備の老朽化によ
り、省エネルギー性能が低く、CO₂排出量など、環境に与える影響も大きくなっていま
す。
課 題
■ 建物・設備の老朽化が進んでいます。
【現庁舎の至る箇所にクラック(ひび割れ)が発生している様子】
④ 防災拠点機能
庁舎は、市民の生命と財産を守るとともに、市民生活に係る機能や情報等が存在する
重要な施設です。また、危機管理機能を備えた防災の拠点であり、災害発生時にいち早
く復旧、復興を図るための拠点として重要な役目があります。
現庁舎は、耐震性能が不足しており、あわせて土砂災害警戒区域に一部指定されてい
ることから、災害対応機能が十分とはいえません。
課 題
■ 大規模災害に対応できる防災機能拠点としての強化が必要です。
■ 現状においては、分散した事務所での災害対策活動となり、災害対策本部会議での決
定事項が迅速に伝わらず、対策活動に支障が生じる可能性があります。
【土砂災害警戒区域に一部指定されている現庁舎付近】
本庁舎別館
・・・土砂災害警戒区域
・・・土砂災害特別警戒区域
本庁舎
9
第2章
(5)
新庁舎建設の基本的な考え方
庁舎の狭あい
行政ニーズの多様化、事務量の増加等により狭あい化が進み、窓口および待合スペー
ス、執務スペース、個別相談スペースや授乳スペースなどを設置するスペースが不足し
ています。
課 題
■ 個別相談スペースや会議室の十分な確保が行えず、プライバシーの確保等に問題があり
ます。
■
書庫や倉庫が不足し、廊下や階段に
溢れているため、市民サービスや業務効率
の低下、防災面、セキュリティ面に課題が
あります。
【ロビーに設けられた相談スペース】
(6)
バリアフリー
庁舎は、誰もが利用しやすいことが必要です。しかし、現庁舎建設時には、障がい者
や高齢者などに配慮した構造ではなかったため、改修によるバリアフリー対応だけでは
十分といえません。
課 題
■ 一定のバリアフリー対応を行っていますが、庁舎の構造上、バリアフリー化への対応は十分
に行えません。
【議場への通路が狭く、スロープがない。】
○各庁舎のバリアフリー化の状況
施設機能
本庁
別館
朝倉
杷木
○
×
○
○
多機能トイレ
△*1
×
△*2
△*2
建物内手すり
△*3
△*3
△*3
△*3
案内(点字・音声)
○
×
×
×
誘導ブロック
○
×
×
○
エレベーター
○
×
○
×
思いやり駐車場
○
○
○
○
(近江庁舎1階の窓口相談スペース) (近江庁舎1階の執務スペース)
段差のスロープ
*1…地階、1階のみ
10
*2…1階のみ
*3…階段のみ
第2章
新庁舎建設の基本的な考え方
2.新庁舎の基本理念・基本的機能
(1)基本理念と基本的機能
基本構想においては、新庁舎整備に向けての9つの基本方針と、それを実現するため
の15の基本的機能を掲げています。
<基本方針>
<基本機能>
やさしい庁 舎
わかりやすく使 いやすい施 設
ひとにやさしい庁 舎
プライバシーへの配 慮
ユニバーサルデザインの推 進
まちにやさしい庁 舎
街 と調 和 する庁 舎
自 然 にやさしい庁 舎
環 境 に配 慮 した庁 舎
災 害 に強 い庁 舎
つよい庁 舎
災 害 対 策 ・危 機 管 理 機 能
災 害 につよい庁 舎
災 害 に強 いライフライン
セキュリティにつよい庁 舎
情 報 管 理 ・防 犯 機 能
変 化 につよい庁 舎
時 代 の変 化 に対 応 できる 庁 舎
つなぐ庁 舎
職 員 環 境 と市 民 参 画
市 民 と行 政 をつ なぐ庁 舎
開 かれた議 会 機 能
人 と人 をつなぐ庁 舎
市 民 活 動 ・市 民 交 流 の 場
人 と自 然 をつなぐ庁 舎
潤 いのある都 市 環 境
地産地消
基本計画では、上記の基本的機能に沿って、さらに具体的な目標を設定したうえで、求め
られる新庁舎の基本理念の実現に向けた取り組み方策を検討していきます。
11
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
第3章 新庁舎に求められる機能と実現方策
新庁舎の基本理念の実現に向けた基本的機能を、具現化するための個別機能を以下のよう
に設定します。
<基本機能>
<個別機能>
案 内 機 能 の充 実
わかりやすく使 いやすい施 設
利 便 性 の高 い窓 口 計 画
快 適 な待 合 環 境
個 別 相 談 機 能 の確 保
プライバシーへの配 慮
わか り や すい サイ ン 計 画
ユニバーサルデザインの推 進
誰 もが 使 い や すいスペ ース
周 辺 景 観 と調 和 した庁 舎 デザイン
街 と調 和 する庁 舎
街 の環 境 に配 慮 した外 部 空 間
自 然 エ ネル ギー 等 の 有 効 活 用
環 境 に配 慮 した庁 舎
省 エネルギー技 術 の導 入 と負 荷 の低 減
都 市 環 境 の保 全 に配 慮 した取 り組 み
災 害 に強 い庁 舎
災 害 に強 い庁 舎 の実 現
災 害 対 策 ・危 機 管 理 機 能
災 害 対 策 機 能 の強 化
災 害 に強 いライフライン
ラ イフ ラ イン 途 絶 時 への 対 応
情 報 セ キュリテ ィへ の 対 応
情 報 管 理 ・防 犯 機 能
防 犯 機 能 の確 保
フレキ シビリテ ィの 確 保
時代の変化に対応できる庁舎
情 報 技 術 活 用 によ る 効 率 化
経 済 的 な庁 舎 管 理 の実 現
機 能 的 で働 きやすい執 務 環 境
職 員 環 境 と市 民 参 画
市 民 参 画 や協 働 を促 進 する工 夫
開 かれた議 会 機 能
市 民 に 開 かれ た 議 会 機 能 の実 現
多 様 な市 民 利 用 スペースの設 置
市 民 活 動 ・市 民 交 流 の 場
市 民 利 便 ス ペースの 設 置
潤 いのある都 市 環 境
敷 地 内 緑 化 の推 進
地 域 産 木 材 の利 用
地産地消
源 泉 の利 用
それぞれの個別機能における目標と具体的な取組方策について,以下に示します。
12
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
1.ひとにやさしい庁舎
わかりやすく使 いやすい施 設
(1) 案 内 機 能 の充 実
(2) 利 便 性 の高 い窓 口 計 画
プライバシーへの配 慮
(3) 快 適 な待 合 環 境
ユニバーサルデザインの推 進
(4) 個 別 相 談 機 能 の 確 保
(5) わかりやすいサイン計 画
(6) 誰 もが使 いやすいスペース
(1) 案内機能の充実
① 総合案内の設置
現庁舎に設けている総合案内を新庁舎でもエントランスホールに設置し、来庁者の用件に
応じた窓口案内や、分散した庁舎全体の総合的な案内を行います。総合案内カウンターは、
あらゆる来庁者が快適に利用できるよう配置やデザインを検討します。
② フロアマネージャーの配置
フロアで見守る職員を配置し、窓口への誘導や申請書等の記載補助などを行うことで来庁
者の手続きをスムーズにします。年度の変わり目など来庁者が増える時期に合わせて、増員
も検討します。
書類の記載方法を説明するフロアマネージャ
ー(兵庫県神戸市HPより)
総合案内カウンター(熊本県玉名市)
(2) 利便性の高い窓口計画
① 窓口の集約配置
現在分散している市役所機能を見直し、市民利用の多い窓口や高齢者の利用が多い窓口を
1階に集約配置します。また、福祉事務所と介護サービス課、子ども未来課と健康課など関
連性の高い部課間が連携を取りやすい配置とすることで手続きの効率性を高めます。
13
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
② わかりやすい窓口サイン
窓口サインは、目的内容がわかる表示(「結婚」「引っ越し」等)や、各部課の業務内容が
わかる表示とします。また文字の大きさや色分けを工夫するなどわかりやすい窓口とし、ワ
ンストップサービス機能をより効率のよいものにします。
③ 手続きをより効率的にするシステム
ネットワークを利用したシステムの活用により、総合窓口や機械での各種証明書発行や申
請が可能になります。異なるフロアや建物との連携も容易になり、素早く確実なサービスを
提供できます。マイナンバー制度や費用対効果を考慮し、そうしたシステムの導入を検討し
ます。また、窓口サービスの向上に向けて、対応できる業務の拡大を検討します。
ライフイベントごとの窓口サイン表示
(千葉県四街道市(よつかいどうし)HPより)
一箇所で様々な手続きができる総合窓口
(粕屋町HPより)
(3) 快適な待合環境
① 待合スペース
窓口の集約配置をもとにした総合待合スペースを設置します。見通しのよい快適な空間を
創出するとともに、窓口の配置形態を工夫することで手続きの利便性を高めます。
② 情報画面の設置
窓口での待ち人数のわかる窓口案内標示システムの他、ディスプレイや施設パンフレット
などを設置します。
窓口案内標示システム(熊本県玉名市)
見通しのよい窓口(熊本県玉名市)
14
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
(4) 個別相談機能の確保
① 窓口の間仕切り
窓口カウンターに間仕切りを設置し、相談者のプライバシーに配慮します。
② 個別相談室
福祉事務所や税務課など個別相談機能が求められる部課を中心に、窓口・事務スペースに
隣接した個別相談室を設け、安心して相談できる窓口とします。
プライバシーに配慮した個別相談室
(愛知県設楽町(したらちょう))
(5) 分 かりやすいサイン計 画
① 分 かりやすい案 内 表 示
誰にでもわかりやすい視認性の高いものとし、絵記号(ピクトグラム)を用いるととも
に、設置の高さや大きさにも配慮します。また、目的地の方向を示す「足もと誘導サイ
ン」、文字や番号だけよりもわかりやすい「色での誘導サイン」など直感的なサインを積極
的に取り入れ、来庁者をスムーズに誘導します。
ピクトグラム
② 障 がい者 等 の誘 導 への配 慮
視覚に障がいのある方でもスムーズに案内できるよう、点字サインや点字誘導ブロック、
触知案内機能や音声案内の設置を検討します。また案内表示には外国語表示も検討します。
(6) 誰 もが使 いやすいスペース
① 分かりやすく明快な動線計画
各階で適切なゾーニングを行い、エレベーターや階段等のコア部分(上下階の移動動線)
の機能的な配置や、利便性に配慮した廊下など、分かりやすく明快な動線計画とします。ま
た、主要な廊下については、車椅子の方でも支障なくすれ違うことのできるよう配慮します。
15
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
ゆったりとした見通しのよい通路(東京都青梅市(おうめし)庁舎)
② 段差や死角のない廊下・通路の計画
外部の通路を含め、新庁舎における廊下などは、段差のない安全な移動動線とするととも
に、出会いがしらの衝突防止など、見通しを確保した死角のない通路となるよう配慮します。
③ 利便性を踏まえた昇降機・階段の設置
庁舎全体の配置・平面計画に応じて、来庁者や職員が利用しやすい位置に、手すりや鏡、
音声案内等を備えた身体障がい者対応エレベーターなどの昇降機設備を適切に設置します。
また、来庁者の利用頻度が高い階段についても、上り下りしやすい緩い勾配の仕様とし、2
段手すりを設けるなど、ユニバーサルデザインに配慮します。
2段手すり
蹴上げを低く、
踏み面を広くする
一般的な階段
勾配の緩い階段
④ カウンターや椅子のデザイン
上り下りしやすい勾配の階段
(茨城県つくば市庁舎)
窓口カウンターは、ハイカウンターとローカウンターを設置します。比較的短時間で処理
可能な証明書発行などにはハイカウンターで対応し、車いすの方や比較的長い時間を要する
届出・相談等にはローカウンターで対応するなど柔軟に使い分けます。また待合スペースに
は、立ち座りをサポートできる肘付きタイプの椅子やステッキ掛け付きのチェア、優先席な
ど、高齢者の方などが座りやすい家具の設置に配慮します。
⑤ キッズスペースや授乳室の適切な配置
子育て関連の窓口や総合待合スペースでは,子ども連れの来庁者のためにべビーベッドや
授乳室のほか、子どもが遊んで待ち時間を過せるキッズコーナーを配置するとともに、子育
てサークルなど関連情報の掲示に努めます。
16
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
⑥ 高齢者,車いす使用者など誰もが使いやすいトイレの設置
車いす使用者が利用できる広さを確保し、手すりや多目的シート(オムツ換え台)、洗面台、
オストメイト等を備えた、誰もが安心して使えるトイレの導入を推進します。
キッズスペース・授乳室(箕面市
キッズスペース・授乳室 HP より)
多目的トイレ(東京都青梅市庁舎)
(大阪府箕面市(みのおし)HP より)
17
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
2. まちにやさしい庁舎
街 と調 和 する庁 舎
(1) 周 辺 景 観 と調 和 した庁 舎 デザイン
(2) 街 の環 境 に配 慮 した外 部 空 間
(1) 周 辺 環 境 と調 和 した庁 舎 デザイン
① 周辺の景観に配慮した高さ、屋上のデザイン
新庁舎は、周辺の住宅が並ぶ街並みや田園風景に配慮した高さとし、建物ボリュームや壁
面の分節化など、周辺地域への圧迫感の軽減に配慮します。また、新庁舎の屋上についても、
設備機器等を設置する場合は建築物の一部として目隠しをデザインするなど、景観に配慮し
ます。
② 朝倉の風土に配慮したデザイン
近接する歴史資料館やピーポート甘木との連携をふまえ、壁面のデザインや色彩など、上
品で落ち着いた外観となるように配慮します。
また、朝倉の風土として、昼夜の温度差や台風などの影響を受ける気候の特性を考慮する
とともに、維持管理面にも十分配慮した材料やデザインを検討していきます。
さらに、朝倉に育まれた伝統的な街並みや工芸品をモチーフとしたデザインを新庁舎の内
外に活用していくなど、地域の特色が出るような庁舎デザインの推進を図ります。
③ 庁舎にふさわしい外観デザイン
新庁舎の周辺には、ピーポート甘木や警察署などの官庁施設があり、庁舎としてふさわし
い外観デザインとするなど調和を図ります。
また、今後長きにわたり市庁舎として存在し、市民が利用する建物であることから、市民
に開かれた庁舎とします。華美なデザインとせず、機能美を追求したシンプルな外観とする
など、朝倉市の顔としてふさわしいデザインとします。
18
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
(2)街の環境に配慮した外部空間
① 市民の憩いの場となるオープンスペース
メインアプローチ空間としての計画とあわせ、市民の憩いの場となるオープンスペースの
設置を検討します。また、駐車場を含めた敷地内の外構計画は、イベントスペースとしても
利用できる多目的な広場として魅力ある空間となるよう検討します。
休憩など多目的に利用される広場
② 歩行者空間の利便性、安全性に配慮した計画
計画敷地はピーポート甘木や歴史資料館に隣接しており、公共交通機関利用による来庁者
について配慮し、車でのアクセスだけでなく歩行者のアプローチを考慮した計画とします。
敷地内外の利便性に配慮し、ゆとりのある安全で快適な歩行者アクセス空間を整備する方針
とします。
19
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
3. 自然にやさしい庁舎
環 境 に配 慮 した庁 舎
(1) 自 然 エネルギー等 の有 効 活 用
(2) 省 エネルギー技 術 の導 入 と負 荷 の低 減
(3) 都 市 環 境 の保 全 に配 慮 した取 り組 み
大規模な建築物は、建設から運用段階に至るまで、環境に対して大きな影響を与えること
から,新庁舎の整備に際しては、「朝倉市環境基本計画書(平成 26 年 3 月策定)」で示され
た方針を踏まえつつ、地球温暖化の抑制に貢献し、環境負荷の低減に向けた取り組みをライ
フサイクルコストの視点から検討します。
各種方策や技術の導入にあたっては,国が推進する「官庁施設の環境保全に関する基準」
や「環境配慮型官庁施設(グリーン庁舎)計画指針」など、次に示す具体的な方策やイメージ
を参考にしながら、設計段階において整備費用についての検証も行い、可能な限り「自然に
やさしい庁舎」を推進します。
各分野における環境配慮方策・技術
◆新エネルギー(自然エネルギー)の有効活用
機能別の目標
新エネルギー・資源の有効活用
による環境配慮
効率的かつ効果的な
省エネルギー技術の導入
ライフサイクルコストの低減
・長寿命化等の推進
・太陽光発電、太陽熱給湯の利用
・自然光の活用(照明負荷の低減)
・自然通風の活用・パッシブデザイン(冷房負荷の低減)
・地中熱、地下水熱の有効活用
◆エネルギー・資源の有効利用
・電力負荷の低減、平準化
・部位に応じた運転制御方式(搬送エネルギーの最小化)
・高効率照明器具、部位に応じた点灯方式の採用
・雨水や井水、排熱処理水の利用、各種節水システムの採用
・適正な運転管理が可能な管理システムの構築
◆負荷の低減
・建築物の向きや室の配置の工夫(熱負荷の低減)
・断熱性の高い材料等の採用
・断熱性、日射遮蔽性の高い建具やガラス、庇等の採用
・エネルギー損失の低減を考慮した建築設備システム
◆長寿命・エコマテリアル
・将来の変化に柔軟に対応できる建物
・耐久性のある構造体、設備等の更新・修繕への配慮
・維持管理の容易なスペース等の確保
・環境負荷の少ない自然材料等の採用
・廃棄物等の再使用、再生利用した資機材の使用
◆適正使用・適正処理
◆生態系の保全
・建設副産物の発生抑制、再利用
・運用時の廃棄物の適切な処理
・最小限の地形の改変
・緑化率の向上
「官庁施設の環境保全性に関する基準」をもとにした各種の環境配慮方策・技術1
1
パッシブデザイン:特別な設備機器を使わずに、建物の構造や工夫によって快適な室内環境をつくりだす手
法。エコマテリアル:製造・使用・廃棄時のすべてにおいて環境負荷の少ない材料のこと。
20
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
グリーン庁舎のイメージ(国土交通省ホームページより)
(1)
自 然 エネルギー等 の有 効 活 用
① 太陽光発電等の検討
新庁舎には、太陽光発電システムを検討します。太陽光発電システムでは、屋上などに効
率よく太陽光パネルを設置し、玄関ホールなどで発電量がわかるモニターなどを設置するこ
とにより、エネルギー利用の「見える化」を行います。
また、屋外での自然エネルギーを利用した照明の設置や風力発電設備の導入も検討します。
太陽光パネル・風力利用のイメージ
21
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
② 自然採光・自然通風の確保
庁舎建物は、平面や断面形状、開口部の検討により、可能な限り自然の採光や通風を確保
することに配慮し、できるだけエネルギー負荷を抑える工夫を行います。
自然採光を取り入れた明るい庁舎(東京都町田市庁舎)
③ 地中熱・温泉熱・太陽熱の利用
環境にやさしく、地域性も考慮した有効なエネルギーである地中熱や温泉熱を利用し、空
調設備への補助熱源としての活用を検討します。また、太陽熱による給湯用の補助熱源利用
についても検討します。
④ 雨水の有効活用
雨水を集水し地下ピットに蓄え、トイレの洗浄水や植栽への散水などに有効活用し、水道
水の利用を抑える工夫を検討します。
(2)省 エネルギー技 術 の導 入 と負 荷 の低 減
① 高効率照明などの採用
使用場所に応じて、人感センサーによる照明点灯方式、執務室等の昼光制御システムの導
入及び部分消灯が可能な照明計画などにより、照明電力の消費抑制を図ります。また、少な
い消費電力で長寿命の高効率照明器具(LED 等)を積極的に採用します。
② 断熱性の向上
外壁の断熱性の向上や、出入口から室内の空気を逃がさない工夫など、夏季や冬季におけ
る室内空調エネルギーの消費量を抑制します。また、夏季の昼間における日射抑制方策など
も検討します。
③ 空調システムの工夫
空調システムの導入に当たっては、熱源システムを検討し、夜間の安価な電力使用と負荷
の平準化など、ライフサイクルコストの低減に配慮した取組みを行います。
22
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
④ エネルギー管理システムの導入
庁舎内のエネルギー使用量が場所ごとに把握でき、各種設備の一元管理が可能なエネルギ
ーマネジメントシステム の導入を検討します。また、設備の効率的な運転管理を行うことに
より、光熱水費の削減を図ります。
(3)都 市 環 境 の保 全 に配 慮 した取 り組 み
新庁舎の整備において使用する各種材料については、リサイクル材を積極的に活用し、環
境負荷の低減に貢献します。また、環境にやさしい電気自動車の普及も見据え、充電設備の
設置を図ります。
23
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
4. 災害につよい庁舎
災 害 に強 い庁 舎
(1) 災 害 に強 い庁 舎 の実 現
災 害 対 策 ・危 機 管 理 機 能
(2) 災 害 対 策 機 能 の 強 化
(3) ライフライン途 絶 時 への対 応
災 害 に強 いライフライン
(1)災害に強い庁舎の実現
① 免震構造等の検討
新庁舎の建物には、地震発生後においても迅速な指揮・対応や、行政機能の維持・継続を
図るための方策として、免震構造等の導入を検討します。
従来の耐震構造では、地震時の揺れがそのまま建物全体に伝わるため、柱や梁などの構造
部材の損傷や、室内の什器・備品の転倒など、地震による被害が生じる可能性があります。
免震構造を導入した場合は、地震時の揺れを免震装置が吸収することで、上部建物の急激な
揺れを軽減することができ、建物構造上の損傷や什器・備品の転倒も抑えることができます。
また、耐火性能の確保や建物内の避難動線への配慮など、十分な対策を図ります。
免震装置の設置イメージ
② 万全な備蓄体制の構築
大地震等の災害発生から数日間程度は、支援物資等が供給されない事態が想定されること
から、災害対策等に従事する職員や、緊急対応として一時的に市庁舎に避難される市民のた
めの簡易トイレや毛布等の備蓄スペースを、新庁舎内に確保できるよう取り組みます。
保管する物品の種類や量等の詳細については、
「朝倉市地域防災計画」
(平成 21 年度策定・
平成 27 年度改訂)との整合を図りつつ、避難所であるピーポート甘木との連携も含めて今後
検討を行っていきます。
③ 浸水対策を考慮した庁舎
新庁舎の整備にあたっては、豪雨による浸水対策を検討していきます。また、電気室や機
械室、サーバー室などの重要な設備関連室や備蓄スペースなども、浸水の影響を受けない高
さ(2階以上)に設置し、災害時でも市庁舎が継続して機能できるよう配慮します。
24
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
④ 一時避難スペースの確保
地震や洪水等の災害が発生したときには,市庁舎を利用している来庁者や、市役所付近に
いる市民が一時的に避難することが想定されます。新庁舎においては、災害発生時の対策本
部や復旧活動に支障のない範囲で、会議室やロビー等の空間を、一次避難のためのスペース
として開放できるようにします。
(2)災害対策機能の強化
① 災害時の指揮命令機能の確保
災害時の迅速かつ確実な指揮命令を可能にするため、災害対策本部室の設置を検討します。
指揮命令等のための設備については、無線によるテレビ会議システムや防災行政無線など、
バックアップ機能を含めた通信システムの再構築を進め、本部員会議室の設置など、効率性、
迅速性に配慮します。
② 災害時 24 時間対応のための仮眠室等の設置
市職員は、災害時に情報収集や復旧活動などのため、市庁舎に 24 時間体制で対策に従事す
ることが想定されます。新庁舎においては、仮眠室としても利用できる和室やシャワー室を
備えるものとし、災害応急対策に従事する職員に配慮します。
なお、和室などのスペースは、平常時には職員のための福利厚生等に利用するなど、効率
化を図ります。
仮眠室兼休憩室(東京都青梅市庁舎)
(3)ライフライン途絶時への対応
① 自家発電設備による電源確保
市庁舎は、大地震等の災害発生後においても継続的な活動が必要となる拠点施設であるこ
とから、商用電力の供給途絶時への対応として、72 時間連続運転可能な自家発電設備の設置
を検討します。
また、電力の引込や庁舎内幹線ルートの二重化、太陽光発電等の自然エネルギーの活用に
よる蓄電対応など、電力供給設備に係る信頼性の向上対策について、導入に向けた検討を行
っていきます。
25
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
② 給水・排水機能の確保
災害時の万一の水道供給の途絶に備え、飲料水用の耐震性貯水槽を設置するなど、非常時
の飲料水確保を考慮した計画とします。さらに井水の活用についても検討を行います。
また、非常時の排水機能の確保策として、下水本管が破断した場合でもトイレ利用が可能
となる非常用汚水貯留槽や、マンホールトイレ2の設置などについても検討を行います。
③ 情報通信機能の確保
災害時の公衆通信網の途絶等への対策として、情報通信における光ファイバー回線及びメ
タル回線による引込の多重化や防災行政無線の設置,重要通信機器における電源の二重化、
無停電電源装置の設置など、災害時の活動内容に応じて外部との通信・連絡機能の機能確保
を図ります。
2
マンホールトイレ:災害などの有事に、敷地内の貯留槽や下水道管のマンホール蓋を開け,その上に仮設のテ
ントと便器を組み立てたトイレを設置し、一時貯留するもの。
26
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
5. セキュリティにつよい庁舎
情 報 管 理 ・防 犯 機 能
(1) 情 報 セキュリティへの対 応
(2) 防 犯 機 能 の確 保
(1)情報セキュリティへの対応
① 外部民間データセンターへの情報システム移設の検討
市民の個人情報など、重要なデータを扱う市庁舎においては、情報システムやデー
タの万全な運用及び保全が求められます。
現在、住民基本台帳システム等の基幹業務システムを運用するホストコンピュータ
やインターネット関連のサーバーについては、災害に強くセキュリティ機能に優れた
民間データセンターへ移設済みであることから、現在運用している業務システムサー
バーについても、今後、新庁舎の整備スケジュールにあわせて、民間の施設への移行
を検討します。
② 庁舎内バックアップサーバー室整備の検討
①で示した方針を受け、新庁舎においては、全庁的なネットワークのセンター機能
や、民間データセンターへの移設サーバーのバックアップシステムを構築する場合に
おいては、それらの機器を設置するためのサーバー室の整備を検討します。
(2)防犯機能の確保
① 庁舎内各部のセキュリティ確保
新庁舎の整備に際しては、来庁者と職員の利用する
エリアの区分や利用動線を考慮し、フロア構成や諸室
レイアウトなどセキュリティに配慮します。
また、職員用の出入口や、サーバー室をはじめとす
る職員専用室には、ICカード認証等による施開錠シ
ステムの設置を検討するなど、入室管理面のセキュリ
ティを確保します。
② 夜間窓口の計画等による防犯面への配慮
サーバー室出入管理
(東京都青梅市庁舎)
夜間や休日など時間外の来庁者に対して、時間外の出入口(窓口)を利用しやすい
場所に設置するとともに、庁舎管理室(宿直室など)を隣接させるなど、利便性や防犯
性に配慮します。
また、敷地内や庁舎建物内の利用者動線上の主要な場所に、防犯カメラの設置を検
討します。
27
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
6. 変化につよい庁舎
時 代 の変 化 に対 応 できる庁 舎
(1) フレキシビリティの確 保
(2) 情 報 技 術 活 用 による効 率 化
(3) 経 済 的 な庁 舎 管 理 の実 現
(1)フレキシビリティの確保
① フリーアクセスフロア・設備更新スペースの確保
執務室をはじめとする主要スペースについては、OA機器等のレイアウトや配線が自由
にできるフリーアクセスフロア(二重床)の導入や、将来の組織変更等にも柔軟に対応で
きるよう検討します。また、新庁舎内の配線,配管ルートや設備関係室についても、更新
等に備えたスペースを確保しておくなどの検討を行います。
② 将来的な変化や繁忙期への柔軟な対応
将来の機構改革や、臨時的な事務・作業等の利用にも対応できるように、柔軟性の高い
執務空間、設備計画の対応を図ります。また、転入出が多い年度替わりや確定申告の時期
など、窓口が混雑する繁忙期のために、臨時窓口に使える空間を確保し、通常時はロビー
やギャラリー等として使える工夫を行います。
(2)情報技術活用による効率化
① ネットワーク環境・情報システムの構築
新庁舎においては、庁内LAN環境の整備など、ICT(情報通信技術)を活用した効
率的、機能的かつ効果的な執務環境を実現します。また、Wi-Fi環境を整えるなど、
今後の技術の進展にも対応した環境整備を図り、高度情報通信社会における利便性に配慮
した庁舎を目指します。
② 出退勤管理システム導入の検討
現在、紙ベースで運用している庶務関係手続きについて、出退勤管理システムの導入を
検討します。職員の庶務管理を電子化することにより、手続きの省力化、効率化を図りま
す。さらに、職員用ICカード等の導入による時間外の庁舎出入や専用エリアへの入退室
管理等について、今後検討を進めていきます。
(3)経済的な庁舎管理の実現
① 維持管理に配慮した施設整備
新庁舎で採用する建築技術や設備は、機能的で汎用性のある資材やシステムを採用する
方針とし、メンテナンスが容易で、迅速かつ経済的に修繕ができるよう配慮します。また、
施設配置など、修繕・更新時の施設機能の停止をできるだけ回避し、施設機能の継続に配
慮します。
28
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
7. 市民と行政をつなぐ庁舎
職 員 環 境 と市 民 参 画
(1) 機 能 的 で働 きやすい執 務 環 境
(2) 市 民 参 画 や協 働 を促 進 する工 夫
開 かれた議 会 機 能
(3) 市 民 に開 かれた議 会 機 能 の実 現
(1)機能的で働きやすい執務環境
① 連携を考慮したゾーニング・職員動線
新庁舎の執務室ゾーニングについては、部門間の連携を考慮した配置とします。同一部
に属する課はできるだけ同一階に配置し、相互関連性の強い課は、できるだけ近接した階・
エリアに配置するなど、効率的に業務が行えるよう配慮します。
② 機能的な執務空間のレイアウト
窓口や各種相談、協議等の来庁者の応対をする部門の執務室を中心として、通路側にカ
ウンターを設置した来客ゾーン、その後ろにキャビネット等で区画された執務ゾーンの構
成とするなど、業務の内容や場面に応じた機能的なレイアウトとします。さらに、執務ス
ペースのデスク仕様や配置はできるだけ均一化し、組織変更や異動の際には人が動くこと
で対応可能な計画にするなど、フレキシブルな執務空間を検討します。
見通しのよい機能的なオフィス空間(東京都青梅市庁舎)
③ 利用に応じた会議室の設置
少人数で行う打合せやミーティング等のスペースは、各部門の特性に応じて執務室内や
各フロアに確保し、大・中会議室については、階層配置に応じて利便性に配慮したフロア
に配置するなど、効率性に配慮します。
集約配置する会議室については、音環境に配慮するとともに、可動間仕切として面積を
柔軟に設定できるなどの対応を行います。
29
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
空きスペースを利用した打合せブース(東京都立川市庁舎)
通路部分を利用した打合せブース(東京都立川市庁舎)
④ 適切な保管スペースの確保
文書量調査に基づき、各課の書類や図面等を保管する書庫を設置する方針とし、常用文
書以外のすべての文書を保管できる十分なスペースを確保するなど、適正な規模の書庫の
設置を検討します。
また、物品庫や測量器具・作業道具等を保管する収納庫を、必要に応じて適切に設置し
ます。
⑤ 休憩スペース等の確保
働きやすい環境づくりを進めるため、男女別の更衣室を、利便性に配慮して各階に配置
します。窓口関係部課用の更衣室は、来庁者の目に触れずに昼食をとれるよう、休憩スペ
ースを考慮した計画とします。
⑥ 受動喫煙防止・健康に配慮した内装材
健康増進法に基づき、受動喫煙防止対策として喫煙スペースを適切な場所に配置し、他
のエリアへの煙の流入を防止します。また、シックハウス対策として内装仕上げ・備品等
の健康に配慮した材料の採用や、室内の適切な換気を行います。
30
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
(2) 市 民 参 画 や協 働 を促 進 する工 夫
①
情報コーナーの充実
市民が利用しやすい場所に、市政情報コーナーを設置します。各種行政資料や刊行物、
パンフレット等を閲覧できるスペースを確保するとともに、パソコン端末やコピー機の
設置などの対応も検討します。また、庁舎内の掲示物については掲示コーナーを設ける
など、建物内の景観と情報伝達の整理を行います。
充実した市政情報コーナー(東京都立川市庁舎)
②
市民協働スペースへの配慮
市政や市の事業等に参画、協働している市民が、会合やミーティング等に利用できる
よう、時間外や休日における市民利用のしやすさに配慮した位置に会議室の設置を検討
します。
市民利用も可能な会議室(東京都青梅市庁舎)
31
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
(3) 市 民 に開 かれた議会機能の実現
① 機能的な議場の整備・傍聴スペースの設置
新庁舎の平面・階層計画に応じて、利用者の動線に配慮した議場の配置とします。
議場は、音響効果等を考慮した適切な天井高さの空間とし、議会開催に配慮した議場
内レイアウトを検討するとともに、車椅子利用者などを含む利用しやすい傍聴席の設
置など、機能的な空間となるよう検討します。
また、議場の音響・映像設備及び電子採決システム,カメラによる中継システム(待
合いロビー等での中継放映)など、議会の円滑かつ効率的で、市民に開かれた運営が
可能となる設備の導入などを検討し、環境整備を図ります。
<議場の形態比較>
項 目
フラット方式
段床方式
傍聴席
議 場
断面
議 場
傍聴席
イメージ
フラットフロアのため、議員側と行政
議員側、行政側双方からお互いが見
側の双方が見えにくい。
えやすく、議論が行いやすい。
可動式の什器とすれば、議会以外の
議場以外の用途としては使えず、定
利用の
用途にも活用でき,将来的な定数変
数変更や多目的な用途への変更対
しやすさ
更や多目的な用途への変更が容易
応も容易にできない。
サイトライン
にできる。
段差の処理
床はフラットであり、段差の処理は不
議場と傍聴席に段差があり、スロープ
要となる。
等の設置やその分の面積確保が必
要となる。
② 円滑な議会運営のための関連諸室の整備
正副議長室や、議員控室、委員会室、応接室並びに事務局用の諸室など、適正な配
置、規模による関連諸室の整備を行います。
③ 市民のための議場等見学機会の創出
新庁舎の議場について、議会が開催されていない期間などに、小中学生の社会学習
の一環として議場見学の機会の創出を検討します。議会がどのように行われ、どのよ
うな役割を担っているのかなど、実際の議場で体験しながら説明を受ける等、子ども
から大人まで、広く市民に開かれた議会の実現に向けた方策を推進します。
32
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
8. 人と人をつなぐ庁舎
市 民 活 動 ・市 民 交 流 の場
(1) 多 様 な市 民 利 用 スペースの設 置
(2) 市 民 利 便 スペースの設 置
(1)多様な市民利用スペースの設置
① 市民が快適に利用できるエントランス空間・休憩ロビーの創出
新庁舎のエントランスは、来庁者を迎え入れる玄関として、明るく開放的な空間となる
よう配慮します。また、市民が気軽に利用できるベンチを適所に配置するとともに、テー
ブルや椅子を配置した休憩・談話ロビーや自動販売機コーナーの設置など、来庁者が快適
に過ごせる空間を整備し、市民同士の交流機会を創出する計画とします。
なお、これらのスペースは休憩スペース等として使用するほか、災害時における被災・
安否情報の提供や各種相談窓口の開設場所、繁忙期の増設窓口として変更できるフレキシ
ブルな空間の配置を図ります。
1 階エントランス近くの休憩コーナー(東京都青梅市)
企画展示ができる市民ギャラリー(東京都あきる野市)
② 市民の様々な活動や交流に利用できる多目的スペースの設置
地域の活動団体の催しや、市民の交流のための機能として、多目的スペースを設置しま
す。多目的スペースは、市民が利用しやすいフロアに配置し、様々な利用に対応できる空
間とするなど、柔軟なスペースとします。
33
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
(2)市民利便スペースの設置
① 利便性に配慮した銀行等テナントの計画
現在庁舎にあるATMコーナーについては、新庁舎の整備にあわせて休日や時間外でも
利用しやすい場所への配置を検討します。また誰もが利用できる食堂に加え、カフェ、コ
ンビニエンスストアなどのテナント機能についても、利用者のニーズも踏まえながら、今
後導入を検討していきます。
1 階エントランス近くのカフェ(東京都町田市)
庁舎内に設置されたコンビニエンスストア(山梨県甲府市))
市民も利用可能な食堂(東京都町田市)
エントランスに設置されたATM(熊本県玉名市)
34
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
9. 人と自然をつなぐ庁舎
潤 いのある都 市 環 境
(1) 敷 地 内 緑 化 の推 進
地産地消
(2) 地 域 産 木 材 の利 用
(3) 源 泉 の利 用
(1)敷地内緑化の推進
敷地内には市民の憩いの場となる緑地スペースを設けて、朝倉の気候や風土にあわせた
四季を感じられる緑化を推進します。また、屋上緑化や壁面緑化についても管理面も考慮
しながら、可能な範囲での設置を検討します。
屋上緑化(東京都立川市庁舎)
(2)地域産木材の利用
朝倉の自然に育まれたスギやヒノキなどの良質な地元産木材を庁舎の内装材に利用する
ことで、訪れた人に癒しと安らぎを与えながら、人と朝倉の自然をつなぎます。また木材
利用は、朝倉の森の循環を促し自然を育む一助となります。
地元産木材を多く使った庁舎
(高知県梼原町(ゆすはらまち)庁舎)
35
第3章
新庁舎に求められる機能と実現方策
(3)源泉の利用
① 熱源としての暖房利用
敷地内には卑弥呼ロマンの湯の源泉があることから、エネルギーの地産地消をめざし
て、その熱を床暖房等へ利用することを検討します。
② 温泉を利用した足湯コーナー
敷地内の源泉の温泉を使い、庁舎内の市民の憩いスペースや屋外のオープンスペース
の一角に足湯コーナーの設置を検討します。朝倉市内外に朝倉市の魅力をアピールしま
す。
庁舎に隣接する足湯コーナー(うきは市ゆうゆうセンターHP より)
36
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
第4章 新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
本章においては、職員の配置を本庁方式で示すものであり、本庁方式集中型・分散型
など検討内容に応じた計画については、次章において具体的な設定を行います。
1.新庁舎の規模・部門配置
(1)基本指標となる職員数等の設定
朝倉市の平成 22 年から平成 26 年までの住民基本台帳人口は、全国的な推計同様に
人口減少と少子高齢化が更に深刻化する傾向にあります。
<朝倉市の人口動向>
年
人口
平成 22 年を基準とした増減比率
平成 22 年
58,174 人
100.0
人口(朝倉市統計
平成 23 年
57,628 人
99.1
情報による)
平成 24 年
57,422 人
98.7
※各年 9 月時点
平成 25 年
56,923 人
97.8
平成 26 年
56,204 人
96.6
朝倉市総合計画基本構想策定時点(H20.3)での人口推計は H27(2015)に 54,161 人、国
立社会保障人口問題研究所による推計は 2040 年に 38,750 人となっています。
一方、今後の更なる地方分権の進展による市町村事務の増加、高度情報化、市民ニー
ズの多様化などによる行政需要の増加が見込まれるところです。
職員数については、朝倉市庁舎整備基本構想資料編における朝倉市職員数(平成27
年4月1日現在)および新庁舎配置職員数検討資料の 477 人を基準とした指標設定を
行うこととします。
<基本指標の設定>
人数
説明
※内訳:本庁舎 351 人、朝倉支所農林商工部 52 人、
職員数 477 人※
ピーポート教育部・健康課 58 人、環境課 16 人
(雇用形態に関係なく机の配置や事務・作業スペースが必要であるため、正規・
非正規を含む。)
議員数 18 人
議員定数 18 人とします。
37
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
(2)庁舎規模の算定
(1)で設定した職員数に基づき、総務省の『起債対象事業費算定基準』※3および国
土交通省の『新営庁舎面積算定基準』をもとに基準面積を算定するとそれぞれ次のとお
りとなります。
<庁舎規模の算定>
区分
① 総務省起債対象事業費算定
基準
② 国土交通省新営庁舎面積算
(㎡)
定基準
(㎡)
事務室
3,555.9
2,457.5
会議室、倉庫等
3,801.2
5,252.0
玄関、廊下、階段等
2,942.8
2,834.0
630.0
630.0
10,929.9
11,173.5
議場
合計
以上の算定結果により、新庁舎の必要規模については、10,900 ㎡程度を基準としま
す。ただし、将来の財政見通しを考慮し、既存施設の活用などにより、縮減に努め、
適切な規模について継続して検討を行います。
なお、参考として、他市において、最近検討が行われた新庁舎の計画規模の設定を
下表に示します。これによると、職員1人当たり延床面積の各市平均は 27.7 ㎡/人と
なっており、本市の規模設定の 22.9 ㎡/人は、比較的コンパクトな庁舎の規模である
といえます。
<他市における新庁舎の計画規模>4
自治体名
庁舎建築年
人口(人)
延床面積
H27.4 現在
(㎡)
新庁舎で
執務する
職員数(人)
H26
75,547
14,800
550
26.9
玉名市(熊本県)
H26
68,090
11,000
396
27.8
山鹿市(熊本県)
H27
54,413
9,740
370
26.3
延岡市(宮崎県)
H28(計画)
128,548
18,500
640
28.9
国東市(大分県)
H28(計画)
30,188
7,400
268
27.6
出水市(鹿児島県)
H29(計画)
54,842
12,000
450
26.7
飯塚市(福岡県)
H29(計画)
130,859
17,800
601
29.6
朝倉市
4
延床面積(㎡/人)
佐伯市(大分県)
27.7
平均
3
職員 1 人当たり
H31(計画)
55,751
10,900
477
22.9
総務省地方債同意等基準に定める庁舎標準面積算定基準のこと。平成 23 年度に廃止されていますが、新庁舎
建設の規模算定において、他市でも多く用いられているため、本計画でも適用します。
数値は、各市の新庁舎建設基本構想、基本計画および基本設計から掲載しています。
38
第4章
(3)
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
駐車場規模の算定
自動車の駐車台数は、現状に基づいた台数から算出し、一般来庁者用 160 台、公用
車用 100 台、職員用 380 台の合計 640 台で設定するものとします。
<駐車場規模の算定>
利用者
台数(台)
説明
一般来庁者
160
現状に基づいた台数
公用車
100
現状に基づいた台数
職員
380
現状に基づいた台数(職員の 80%)
合計
640
(4)部門配置の考え方
新庁舎及び既存庁舎を含めた全体の部門配置については、業務の効率性や市民サービ
スの維持向上の観点から、できるだけ同一部門が1か所にまとまり、課ごとの分散がな
い計画とする必要があります。
新庁舎へ配置する部門については,市民サービスの向上や行政事務等の業務上の連携
の視点より,窓口関連や総務,議会等の部門を中心に、市民,職員の利便性や行政運営
の効率性に配慮するものとします。
健康課や文化課が入っていたピーポート甘木については、窓口との関連性が少ない部
門や、業務連携において独立性の高い部門、外郭団体などを中心に、新庁舎とは離れた
配置でも市民サービスへの影響が少ない部門が入るものとし、各部門の規模に応じた配
置とします。
また、現庁舎からの移転の負担や経費についても、できるだけ抑えることを念頭に置
いた部門配置とします。
以上の考え方に基づき、新庁舎への部門配置については、次章のとおり検討を行いま
した。
39
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
2.敷地周辺の環境等
(1)敷地周辺の環境条件
① 気候
朝倉市の気候は、昼夜間の気温差が大きく、風が弱い内陸型の気候の特徴を示して
います。年間平均気温約 16℃、年間降水量 1,860.4mm(1981 年~2010 年の平年値)、
年間日照時間 1,878.1h(1986 年~2010 年の平年値)となっています。
② 地形・地盤
敷地の地盤については、ピーポート甘木建設時に行った地質調査結果からの地質概要
は次表の通りであり、概ね地表面から 26m以深において、建物の支持地盤となる地層
が見られます。
<地質の概要>
地質構成
盛土
粘性土
砂礫
GL(深さ)
-1.6m
以 浅
-1.6m~
-3.2m
-3.2m~23.5m
粘土混じり
砂礫
-23.5m~
-26.0m
粘土混じり
砂礫
-26.0m
以 深
地質特性
礫混じり土。φ1~5cm大。
砂質シルト主体。旧耕作土。
φ1~2cm台の亜円礫を20~30%混入する。礫混じり粘性土~
砂質土状を呈する。粘土分はやや多い。
φ1~5cm大の礫を多含。基質は粘土分多い。
片岩花崗岩礫を多含する。軟。
40
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
3.平面・ゾーニング計画
(1)低層階
1階のエントランスホールはゆとりある空間とし、計画に応じて吹抜けを設けるなど、
全体を見わたせる開放的な雰囲気づくりに努めます。窓口部門に面して、待合スペースや
ロビー空間を適宜配置するとともに、市民が利用しやすい場所に市政情報コーナーや多目
的スペースの設置を検討します。
市政情報
展示コーナー
1階には複数の出入口を設け、来庁者
吹抜・階段
多目的 スペース
利便施設
1階・2階ホール
(エントランス・ロビー)
用駐輪場からの動線やピーポート甘木
1F
総合
案内
吹抜階段
エレベ
ター等
待合スペース・市民ロビー
との連絡に配慮します。また、市民利用
窓口カウンター
の多い低層階の利便性に配慮した施設
窓口部門
づくりを検討していきます。
低層階のゾーニングイメージ
(2)上層階
上層階(基準階)のゾーニングは、建物の幅や奥行などの大きさに応じて、機能的な計
画となるよう配慮します。平面計画としては、建物の両側を階段室やエレベーター等の
コアとし、中央に主要動線となる通路を設けて執務室を対面配置させる形状(イメージ
1)や、執務ゾーンの中間に階段室等の縦動線や吹抜けを設置する形状(イメージ2)な
どがあります。
外部
執務室は、配置部門の特性にあわせ
執務室
て、来庁者の分かりやすさや職員動線
カウンター
の効率性、部門間の連携などを踏まえ
階段 ・
階段 ・
エレベー
中央通路
タ―・
たゾーニングとします。
トイレ
トイレ ・
書庫 等
書庫 等
カウンター
会議室や相談室、書庫等のスペース
自然採光
については、執務室に近接させて効率
執務室
・通風
よく配置します。また、職員用の更衣
外部
室や休憩室など来庁者が立ち入らな
上層階(基準階)のゾーニングイメージ1
いエリアについては、主要動線から離
外部
したゾーニングとするなどの配慮を
行います。
執務室
カウンター
階段 ・トイレ・書庫等
通
路
吹
抜
通
路
階段 ・ エレベータ ―・
トイレ ・ 書庫等
カウンター
自然採光
・通風
執務室
外部
上層階(基準階)のゾーニングイメージ2
41
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
4.断面・階層計画
(1)断面計画
新庁舎の1階は、エントランスホールなど開放的な空間となるよう、上層階よりも階
高を高くします。2階から上の階層は、各室の大きさや快適性の観点より適切な天井高
さを確保したうえで、構造や設備計画との整合、経済性にも配慮して階高を設定します。
建物全体としては、高さを抑えるものとし、新庁舎の主要な階層として4~6階建で
検討します。なお、屋上は主に空調室外機等の機器置場とし、周囲の目隠し壁を適切な
高さまで立上げるなどの配慮を行います。
新庁舎の断面イメージ5
(2)階層配置計画
新庁舎における部門の階層配置は、以下の方針に基づくものとします。
<階層配置の基本方針>
○市民の利用頻度が高い窓口部門は、利便性に配慮し低層階に配置する
○同一部に属する課はできるだけ同一階に配置し、事務効率の向上を図る
○相互の関連性が強い課は、できるだけ近接した階・場所に配置する
○防犯セキュリティに配慮した階層配置とする
低層階、上層階への部門配置の基本的な考え方は、以下のとおりとし、具体的な部門
の各階への配置については、設計段階など各部門の計画規模に応じて、具体的に決定し
ていくこととします。
<新庁舎の階層別の配置部局等>
階層
部門・スペース
5
上層階(3階~)
管理部門、議会部門など
低層階(1~2階)
窓口部門、税・出納部門、市民利用スペースなど
断面図はイメージであり、今後の設計により変わる可能性があります。
42
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
5.建物デザイン計画
(1)新庁舎の外観デザイン
外観デザインは景観面を考慮し、ボリュームを分節化するなど圧迫感の軽減に配慮し
ます。建物デザイン計画は、周辺に立地するピーポート甘木や歴史資料館との調和も考
慮し、華美なデザインを避け、新庁舎としてふさわしくシンプルで機能美が表現できる
外観とします。
基本的な外観デザインとしては、先例より以下のようなパターンがあります。建物ボ
リュームや平面計画などとあわせ、設計時によりよいデザイン計画を検討していきます。
<外観デザインのパターン>6
特 徴
○両サイドにエレベーターや階段等(コア部分)のボリュームがあ
り、コア部分の間が開口部や水平ラインで構成されるなど、機能
が外観に表れるシンプルな外観
○窓口フロアで構成される基壇部と執務空間による上層部ボリュー
ムによる安定感を感じさせる構成
○上層部をセットバックさせ建物ボリュームに変化を持たせる工夫
福島県福島市庁舎
事
福島市、つくば市
つくば市、青梅
市、甲府市、町田
市
木津川市
京都府木津川市庁舎*
茨城県つくば市庁舎
山梨県甲府市庁舎*
東京都町田市庁舎*
6
東京都青梅市庁舎
*印の写真は各市のホームページより転載。
43
例
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
(2)新庁舎の内部デザイン
新庁舎の内部空間は、機能性を重視するとともに、エントランスホールや市民ロビーな
ど、明るく親しみやすいデザインとします。朝倉のスギやヒノキ等の良質な木材を内装や
家具等に部分的に用いるなど、地産地消にも配慮します。
(3)朝倉の風土に配慮したデザイン
例えば、下表に示す朝倉の風土、伝統工芸品などをモチーフとして、新庁舎の内外デザ
インに展開するなど、風土に配慮した工夫を行います。
<朝倉の風土にみるデザインモチーフ例>
朝倉の風土・伝統工芸等のイメージ
デザイン展開例
秋月
瓦坂と石垣を外構のデザイン
要素として取り入れる。
比良松の町並み
千本格子となまこ壁を外壁や
内装のデザイン要素として取
り入れる。
比良松の民家
幾重にも重なる軒や屋根を屋
根や外壁のデザイン要素とし
て取り入れる。
三連水車
三つに連なる輪を、デザイン
モチーフとして取り入れる。
甘木絞り
タイルの張り方など、壁面柄・
床の柄などに千代紙のパッチ
ワーク的要素を取り入れる
44
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
6.構造計画
(1)耐震安全性の確保
「官庁施設の総合耐震計画基準(建設大臣官房官庁営繕部監修)」では、人命の安全
確保や官庁施設の機能確保を目的として、構造体に関する耐震安全性の目標を下表のよ
うに定めています。
新庁舎は、災害応急対策活動の中枢となる施設であることから、構造体「Ⅰ類」、建
築非構造部材「A類」、建築設備「甲類」に相当する性能を持たせる方針とし、当該地
域の地震動の入力条件など、設計段階で綿密な検討を行い十分な耐震安全性を確保しま
す。
<官庁施設の総合耐震計画基準>
部位
分類
耐震安全性の目標
大地震動後、構造体の補修をすることなく建築物を使用できる
Ⅰ類
ことを目標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確保が図
られている。
大地震動後、構造体の大きな補修をすることなく建築物を使用
構造体
Ⅱ類
できることを目標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確
保が図られている。
大地震動により構造体の部分的な損傷は生ずるが、建築物全体
Ⅲ類
の耐力の低下は著しくないことを目標とし、人命の安全確保が
図られている。
大地震動後、災害応急対策活動や被災者の受け入れの円滑な実
建築非構造
A類
施、又は危険物の管理のうえで、支障となる建築非構造部材の
損傷、移動等が発生しないことを目標とし、人命の安全確保に
加えて十分な機能確保が図られている。
部材
B類
大地震動により建築非構造部材の損傷、異動などが発生する場
合でもm人命の安全確保と二次災害の防止が図られている。
大地震動後の人命の安全確保及び二次災害の防止が図られてい
甲類
ると共に、大きな補修をすることなく、必要な設備機能を相当
期間継続できる。
建築設備
乙類
大地震動後の人命の安全確保及び二次災害の防止が図られてい
る。
(2)地盤特性に応じた基礎形式
建物の基礎については、ピーポート甘木建設時の地質調査の結果より、支持層として
想定される 30m程度の杭基礎とし、設計段階の詳細な地質調査に基づき、地盤特性に
応じた適切な基礎形式とします。
45
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
(3)合理的な上部構造計画
3章で示した免震構造等の導入や、架構や荷重条件、費用対効果を含めた詳細な比較
検討など、設計段階において、建築計画や荷重条件、設備計画に応じた合理的な構造計
画を推進します。
<免震・制振・耐震構造の特徴>
制振ダンパー等の装置
柱・梁の耐震化
免震装置
耐震壁
地震動
地震動
地震動
制振構造
免震構造
耐震構造
○免震構造
○制振構造
○耐震構造
建築物と地盤若しくは他の土台
建築物に入力される地震力
地震力に対して構造体の力で
との間に、水平方向に柔軟に
を、建物内部の制振ダンパ
耐える構造で、地震力を受けて
変位可能なアイソレータを設置
ー等の機構により減衰させ
も倒壊しないよう、耐力壁やブ
することで地震動エネルギーを
たり増幅を防いだりすること
レース等を配置し、建物の各部
吸収し、建築物の揺れを抑制
で、建築物の振動を低減さ
分が、破壊しないだけの強度を
する構造。
せる構造。
確保する構造。
(4)暴風による安全性の確保
台風等による暴風に対する安全性を確保するため、風圧力に対して、構造耐力上安全
なものとします。
また、屋根材や外装材や窓についても暴風による影響を受けにくいものとし、安全性
を確保します。
46
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
7.設備計画
(1)耐震安全性及び災害時対応の性能確保
新庁舎は、3章で示した「庁舎の安全性の確保」のための取組方策に沿って、災害応急
対策活動の中枢施設としての災害時対応を踏まえた設備を導入します。
また、建築設備の耐震安全性は、
「官庁施設の総合耐震計画基準」における「甲類」に
相当する性能として、大地震後の人命の安全確保及び二次災害の防止を図るとともに、
大きな補修をすることなく必要な設備機能を相当期間継続できるよう配慮します。
オフィス形態
(賃貸ビルは事務系面積率を示す) .
庁舎
(2)環境に配慮した設備システムの導入
自社ビル
(全熱源)
60%~
1,261
空調
給湯
照明
コンセント
1,758
換気
給排水
1,717 昇降機
その他
1,928
(熱源有)
3章で示した新庁舎の目標と取組方策に基づ
60%~
き、新エネルギーの活用や省エネ・省資源、ライ
(DHC)
40%~60%
1,775
フサイクルコストの低減を見据えた、環境に配
(熱源有)
40%~60%
慮した設備システムを導入します。
2,073
(DHC)
~40%
一般財団法人省エネルギーセンターによると、
1,895
(全熱源)
右表のように一般的な庁舎の場合、全体のエネ
0
500
1000
1500
2000
2500
エネルギー消費原単位[MJ/m2・年]
ルギー消費量のうち、空調用が半分近くを占め
オフィス形態別のエネルギー消費量
る調査結果が示されています。
朝倉市の気候条件の下では、この調査結果よりも冷房用エネルギーの増大が想定され
ることから、空調設備の省エネルギー対策として、外皮負荷の削減や高効率空調方式・
高効率熱源の採用など、設計段階で効果的な検討を進めていきます。
国は現行の「エネルギー基本計画」において、ネット・ゼロ・エネルギービル(ZEB)
7
の実現に向けての長期目標を掲げており、2020 年までに新築公共建築物等において実
現するなどの方針が示されています。業務用建物(公共施設も含む)を対象とした実証
事業など新たな補助制度も創設されていることから、設計段階においてエネルギー消費
量の削減に向けた検討も推進していきます。
また、地産地消型再生可能エネルギーとして卑弥呼ロマンの湯の源泉を利用し、給湯
熱源や待合ロビーの床暖房熱源としての利用を検討します。
さらに、環境への配慮として、建築環境総合性能評価システム(CASBEE)8に基づく「S
ランク」に相当するレベルを目指すなど、庁舎全体の環境品質や将来にわたる維持管理
に配慮が行き届いた施設を目指します。
7
ZEB:省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、再生可能エネルギーの活用等により、年間の一次エネルギ
ー消費量が正味(ネット)でゼロ又は概ねゼロとなる建築物をいう。
8 CASBEE:建築物の環境性能で評価し格付けする手法で、省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といっ
た環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステム。評
価結果は「Sランク(素晴らしい)
」から、
「Aランク(大変良い)
」
「B+ランク(良い)
」「B-ランク(やや劣
る)
」
「Cランク(劣る)
」という5段階のランキングとなる。
47
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
8.駐車場・駐輪場の計画
(1)利便性・周辺交通に配慮した駐車場の整備
現状のピーポート甘木駐車場の利用面の要望や課題を踏まえ、一定台数の来庁者用
駐車場を確保します。整備にあたっては、駐車場への出入が周辺の交通や環境にでき
るだけ影響を与えないよう配慮するとともに、駐車のしやすさなどの利便性、新庁舎
への移動動線など使い勝手を考慮した計画とし、身体障がい者などの移動に配慮が必
要な方のための駐車スペースも利用しやすい場所に十分な台数を確保します。
公用車については、来庁者用の駐車スペースの確保を第一に考えたうえで、新庁舎
の敷地内に駐車すべき公用車の選定や、台数管理等の効率的な運用、来庁者用駐車場
との利用状況に応じた柔軟な区域の設定による台数確保の工夫を行います。
以上の考え方に基づき、新庁舎の駐車場の計画については、下表に示す方針としま
す。
<駐車場の計画>
新庁舎敷地に来庁者用駐車場・公用駐車場を合わせて 260 台程度を確保する。
(2)周辺交通・利便性に配慮した駐輪場の整備
駐輪場については、自転車やバイクでの利用者に考慮し、来庁者のための専用の駐
輪スペースを、利用しやすい場所に設置します。
また、職員用の駐輪場は来庁者用とは別に設け、効率的なスペースで最低限必要な
台数を確保する方針とします。
以上の考え方に基づき、新庁舎の駐輪場の計画については、下表に示す方針としま
す。
<駐輪場の計画>
種 別
台 数
説 明
新庁舎周囲の屋外に,屋根付きの平面駐車方
来庁者用駐輪場
20 台程度
式の駐輪場として設置し,多方面からの利便
性に配慮して分散配置の計画とします。
職員用駐輪場
50 台程度
48
第4章
新庁舎の施設計画・運用管理計画の基本的な考え方
9.運用管理計画
(1)効率的な施設運用管理の必要性
現在の庁舎は、建設当時の建物や設備の仕様を基本として、部分的に必要な修繕及び
更新を行ってきたものの、建物全体が老朽化していることや、抜本的な対策には膨大な
費用がかかることなどから、維持管理や修繕等の十分な対応ができない部位が生じてい
るのが実状です。
また、設備の集中管理システムに対応した庁舎となっていないことから、効率的な設
備管理やエネルギー利用に対応できない状況にあります。
新庁舎においては、供用開始後の施設環境を、良好な状態で継続的に確保していくこ
とが重要であり、限られた財源による効率的な維持管理等の実施も不可欠であるなど、
効率的な運用管理が求められます。
(2)適切な運用管理に向けた方策
設計段階において、供用開始後の管理運営に配慮した検討を進めていきます。
具体的には、耐久性のある建築材料の選定により、修繕の必要となる時期をできるだ
け延長させることや、清掃など維持管理のしやすい建築材料の使用、設備機器の入れ替
えを見据えた更新のしやすい平面・断面計画を行います。また、間仕切壁の位置変更の
しやすさなど、将来の利用状況の変化に柔軟に対応できるものとし、運用管理面におけ
る経費を節減できる工夫を行い、ライフサイクルコストの低減に努めます。
設備面では、施設の運用状況の把握などを効率的に管理できるエネルギーマネジメン
トシステム(BEMS)9など、最適な施設運用を可能とするシステムを導入します。最適な
設備の稼働を実現することで、光熱水費や燃料費などランニングコストの低減に配慮し
ます。
さらに、庁舎管理業務の効率化として、新庁舎の施設面の性能を効果的に運用した保
守管理や警備、清掃等の人的な負担の軽減など、ソフト面における効率性、経済性に配
慮した運用管理の実現を目指します。
9
BEMS(Building and Energy Management System):ビルなどの室内環境やエネルギー性能の最適化を図るた
めのビル管理システムのこと。建物内のエネルギー使用状況や設備機器の運転状況を一元的に把握し,需要予測
に基づく最適な運転が可能となり,きめ細かな監視制御によって,人手をかけることなく建物全体のエネルギー
消費を最小化できる。
49
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
第5章 新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
新庁舎の位置は、基本構想においてピーポート周辺と定めています。また、職員の配
置方式については、建築規模及び額に大きく影響することから、本計画策定段階におい
て検討してきました。
様々な意見を踏まえ、庁舎の位置については、現在のピーポート甘木第1駐車場及び
甘木歴史資料館南側で検討を行いました。
また、配置方式については本庁方式集中型及び本庁方式分散型で検討を行いました。
その検討による新庁舎の具体的なレイアウト及び職員配置について、
1.建設位置:ピーポート甘木第1駐車場 配置方式:本庁方式集中型
2.建設位置:ピーポート甘木第1駐車場 配置方式:本庁方式分散型
3.建設位置:甘木歴史資料館南側 配置方式:本庁方式集中型
4.建設位置:甘木歴史資料館南側 配置方式:本庁方式分散型
の4案を本章で示すとともに、検討結果について説明いたします。
1.建設位置・配置方式の検討
(1)建設位置:ピーポート甘木第1駐車場 配置方式:本庁方式集中型
①敷地の概要
所在地
朝倉市来春
敷地面積
約 8,410 ㎡(現:第一駐車場)
用途地域
第二種低層住居専用地域(近隣商業地域に用途地域見直し予定)
指定建ペイ率
50%(近隣商業地域に見直し後:80%)
指定容積率
80%(近隣商業地域に見直し後:200%)
その他
50
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
②交通環境
敷地周辺の公共交通機関としては、甘木鉄道「甘木」、西鉄甘木線「甘木」が徒歩12分の
位置にあり、それ以外は西鉄バス「甘木営業所」から徒歩15分、甘木観光バス「ピーポート
東」の2か所のバス停が周辺にあります。なお、鉄道は市内からのアクセス手段としては有
効ではなく、利用者の主な公共交通はバスとなります。朝倉・杷木地域からのアクセスを含
め、交通環境の整備を検討します。
車によるアクセスは、県道甘木・田主丸線、馬場口・大町線からが主な動線となります。敷
地は西面と南面、北東角で接道しており、車両及び歩行者は主に西面から敷地内へ至る動線
となっています。
庁舎には、徒歩や自転車、自動車等様々な手段での来庁が想定されることから、周辺道路
は現在計画中のものも含め、線形や歩道、交差点等可能な限り見直しを行い、道路環境を整
備します。
③施設配置計画
新庁舎の建設可能範囲は整形であるため、長方形の建物平面形状を基本として配置する方
針とします。ピーポート甘木や歴史資料館との連携を踏まえた計画とし、エントランスゾー
ンを形成します。
51
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
④各種動線計画
歩行者の動線としては、ピーポート甘木、市立図書館、歴史資料館から第2駐車場を経由
してアクセスがあり、道路を挟んだ隣地の新駐車場(2)からのアクセスがあります。また、
庁舎の建つ敷地内の駐車場からのアクセスも含め、歩行者等のアプローチ空間とタクシー等
の車寄せを、歩車分離に配慮して設置します。特に、道路を横断する動線については、歩行
者が安全に横断でき、かつ車両の交通に支障のないように配慮した計画とします。
52
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
⑤概算事業費
■イニシャルコスト
費目
金額
建築費
48 億 00 百万円
甘木歴史資料館倉庫敷地
新庁舎建物 9,600 ㎡の工事費
1 億 47 百万円
購入費
用地購入費
2 億 90 百万円
甘木歴史資料館倉庫
駐車場用地
※舗装・街灯等整備含まず
1 億 45 百万円
移転補償費
設計費等
合 計
説明
1 億 38 百万円
55 億 20 百万円
基本・実施設計費、各種調査等
うち合併特例債対象事業費:54 億 66 百万円
※上記には周辺整備費、外構工事費や移転費用等は含まれておりません。
■ランニングコスト(供用後 30 年として試算)
項目
年額(千円)
30 年計(億円)
備考
新築建物に係る保守管理費、保安警備費、修繕
新庁舎に係る
維持管理費等
約 116,413 千円
約 35 億円
更新費、光熱水費として概算。修繕更新費は経
年により費用が変動するが、合計を単純平均として
年額を記載
53
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
(2)建設位置:ピーポート甘木第1駐車場 配置方式:本庁方式分散型
50ページから53ページの
にする案です。
1(1)と同じ建設位置で、配置方式を本庁方式分散型
①敷地の概要
50ページ①敷地の概要と同じ内容です。
②交通環境
51ページ②交通環境と同じ内容です。
③施設配置計画
51ページ③施設配置計画と同じ内容です。
④各種動線計画
52ページ④各種動線計画と同じ内容です。
⑤概算事業費
■イニシャルコスト
費目
金額
建築費
41 億 00 百万円
甘木歴史資料館倉庫敷地
購入費
用地購入費
甘木歴史資料館倉庫
移転補償費
設計費等
合 計
説明
新庁舎建物 8,200 ㎡の工事費
1 億 47 百万円
2 億 38 百万円
駐車場用地
※舗装・街灯等整備含まず
1 億 45 百万円
1 億 38 百万円
47 億 68 百万円
基本・実施設計費、各種調査
うち合併特例債対象事業費:47 億 14 百万円
※上記には周辺整備費、外構工事費や移転費用等は含まれておりません。
■ランニングコスト(供用後 30 年として試算)
項目
年額(千円)
30 年計(億円)
備考
新築建物に係る保守管理費、保安警備費、修繕
新庁舎に係る
維持管理費等
約 102,207 千円
約 30 億円
更新費、光熱水費として概算。修繕更新費は経
年により費用が変動するが、合計を単純平均として
年額を記載
54
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
(3)建設位置:甘木歴史資料館南側 配置方式:本庁方式集中型
①敷地の概要
所在地
朝倉市甘木
敷地面積
約 4,915 ㎡(現:歴史資料館倉庫)
用途地域
第二種低層住居専用地域(近隣商業地域に用途地域見直し予定)
指定建ペイ率
50%(近隣商業地域に見直し後:80%)
指定容積率
80%(近隣商業地域に見直し後:200%)
その他
新庁舎敷地
約 4,915 ㎡
55
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
②交通環境
敷地周辺の公共交通機関としては、甘木鉄道「甘木」、西鉄甘木線「甘木」が徒歩12分の
位置にあり、それ以外は西鉄バス「甘木営業所」から徒歩15分、甘木観光バス「ピーポート
東」の2か所のバス停が周辺にあります。なお、鉄道は市内からのアクセス手段としては有
効ではなく、利用者の主な公共交通はバスとなります。朝倉・杷木地域からのアクセスを含
め、交通環境の整備を検討します。
車によるアクセスは、県道甘木・田主丸線、馬場口・大町線からが主な動線となります。敷
地は西面と南面、北東角で接道しており、車両及び歩行者は主に西面から敷地内へ至る動線
となっています。
庁舎には、徒歩や自転車、自動車等様々な手段での来庁が想定されることから、周辺道路
は現在計画中のものも含め、線形や歩道、交差点等可能な限り見直しを行い、道路環境を整
備します。
③施設配置計画
新庁舎の建設可能範囲は整形であるため、長方形の建物平面形状を基本として配置する方
針とします。ピーポート甘木や歴史資料館との連携を踏まえた計画とし、エントランスゾー
ンを形成します。
56
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
④各種動線計画
歩行者の動線としては、ピーポート甘木、市立図書館、歴史資料館から第2駐車場を経由
してアクセスがあり、道路を挟んだ隣地の新駐車場(2)からのアクセスがあります。また、
庁舎の建つ敷地内の駐車場からのアクセスも含め、歩行者等のアプローチ空間とタクシー等
の車寄せを、歩車分離に配慮して設置します。特に、道路を横断する動線については、歩行
者が安全に横断でき、かつ車両の交通に支障のないように配慮した計画とします。
57
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
⑤概算事業費
■イニシャルコスト
費目
金額
建築費
48 億 00 百万円
甘木歴史資料館倉庫敷地
購入費
用地購入費
設計費等
合 計
新庁舎建物 9,600 ㎡の工事費
1 億 47 百万円
2 億 58 百万円
甘木歴史資料館倉庫
移転補償費
説明
駐車場用地
※舗装・街灯等整備含まず
1 億 45 百万円
1 億 38 百万円
54 億 88 百万円
基本・実施設計費、各種調査等
うち合併特例債対象事業費:54 億 34 百万円
※上記には周辺整備費、外構工事費や移転費用等は含まれておりません。
■ランニングコスト(供用後 30 年として試算)
項目
年額(千円)
30 年計(億円)
備考
新築建物に係る保守管理費、保安警備費、修繕
新庁舎に係る
維持管理費等
約 116,413 千円
約 35 億円
更新費、光熱水費として概算。修繕更新費は経
年により費用が変動するが、合計を単純平均として
年額を記載
58
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
(4)建設位置:甘木歴史資料館南側 配置方式:本庁方式分散型
55ページから58ページの1(3)と同じ建設位置で、配置方式を本庁方式分散型に
する案です。
①敷地の概要
55ページ①敷地の概要と同じ内容です。
②交通環境
56ページ②交通環境と同じ内容です。
③施設配置計画
56ページ③施設配置計画と同じ内容です。
④各種動線計画
57ページ④各種動線計画と同じ内容です。
⑤概算事業費
■イニシャルコスト
<概算事業費>
費目
金額
建築費
41 億 00 百万円
甘木歴史資料館倉庫敷地
新庁舎建物 8,200 ㎡の工事費
1 億 47 百万円
購入費
用地購入費
2 億 07 百万円
甘木歴史資料館倉庫
駐車場用地
※舗装・街灯等整備含まず
1 億 45 百万円
移転補償費
設計費等
合 計
説明
1 億 38 百万円
47 億 37 百万円
基本・実施設計費、各種調査
うち合併特例債対象事業費:46 億 83 百万円
※上記には周辺整備費、外構工事費や移転費用等は含まれておりません。
■ランニングコスト(供用後 30 年として試算)
項目
年額(千円)
30 年計(億円)
備考
新築建物に係る保守管理費、保安警備費、修繕
新庁舎に係る
維持管理費等
約 102,207 千円
約 30 億円
更新費、光熱水費として概算。修繕更新費は経
年により費用が変動するが、合計を単純平均として
年額を記載
59
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
2.建設位置・配置方式の検討結果
(1)建設位置・配置方式各案のメリット・デメリット
50~59ページまでに記載のとおり、新庁舎の具体的なレイアウト及び職員配置に
ついては、以下の4案で検討を進めてきました。
1.建設位置:ピーポート甘木第1駐車場 配置方式:本庁方式集中型
2.建設位置:ピーポート甘木第1駐車場 配置方式:本庁方式分散型
3.建設位置:甘木歴史資料館南側 配置方式:本庁方式集中型
4.建設位置:甘木歴史資料館南側 配置方式:本庁方式分散型
様々な議論において出された4案の主なメリット・デメリットは次のとおりです。
※本庁方式集中型・本庁方式分散型のいずれにおいても、朝倉支所及び杷木支所の窓口
機能は現状通り存続します。
建設位置
ピーポート甘木第1駐車場
・北側に県道、西側に市道が面し、進入口
が複数確保できる。
メリット
・面積が広く(約 8,000 ㎡)、庁舎レイ
アウトの幅が広いため、敷地内の拡張性が
高い。
デメリット
甘木歴史資料館南側
・多くの市民が利用している第1駐車場を残せ
る。
・東側市道と西側市道及び市有地により、道路
を隔てずにピーポートと接続できる。
・住宅に隣接しており、日当たりやプライバシ
・北側への日当たり等に配慮する必要がある。
ーに配慮する必要がある。
・奥行きが長い、いわゆる「うなぎの寝床」の形状
・ピーポートの駐車場が減るというイメージが
になる。
大きい。
・駐車場(現第1駐車場)と道路を隔てる。
配置方式
本庁方式集中型
本庁方式分散型
・業務が集中し、住民がわかりやすい。
メリット
・業務を集中することで、事務が効率化し、
行政の一体感が図れる。
・現在朝倉支所にある農林商工部などの
面積分の建設費が増大する。
デメリット
・農林商工部が移動することにより、朝倉・
杷木地域住民の利便性の低下が懸念さ
れる。
60
・既存の施設(朝倉支所など)を利用することで
建設費を抑制できる。
・業務が分散するため、住民にわかりにくい。
・業務運営が複雑となり、迅速性・連携性に欠け
る。
・移動・会議・決裁等に時間を要する。
第5章
新庁舎の具体的な建設位置・配置方式の検討
(2)建設位置・配置方式についての判断
庁舎の位置や配置方式は、朝倉市のこれからのまちづくりを左右する重要事項です。
上記のメリット・デメリットを含め、協議・検討を重ね、以下のとおり判断いたしまし
た。
なお、今後の具体的な課題対応や建築費の最大限の抑制に努めるため、基本設計にお
いて更に検討を進めていきます。
新庁舎の建設位置は、甘木歴史資料館南側とする。
新庁舎の配置方式は、本庁方式集中型とする。
なお、設計にあたっては、建築費の抑制に最大限努める。
① 庁舎の建設位置の判断理由
ア 道路を隔てず、安全にピーポート甘木と連携できる。
イ 周辺住民への影響が比較的小さい。
ウ 現在の駐車場を残すことができる。
エ 南側に拡張性がある。
などを主な理由とし、甘木歴史資料館南側が最適であると判断しました。
このこととあわせ、第1駐車場やピーポート甘木との連携を向上させること、南側
の拡張性を具体化することを検討していく必要があります。
② 庁舎の配置方式の判断理由
ア 業務を集中することで、市民にわかりやすい行政となる。
イ 事務の効率化や一体感の醸成が図りやすい。
ウ 本庁支所方式を定める合併協定書のとおりとする。
などを主な理由とし、本庁方式集中型が最適であると判断しました。
なお、本庁方式集中型に伴うデメリットについては、下記の改善案を今後具体的に整
理していきます。
ア 建築費の抑制
基本設計とあわせ、現在活用している教育委員会や健康課のほか、ピーポート甘
木の一部を庁舎として活用することを具体化し、建築規模の縮小を図ることで建築
費を抑制します。
イ 支所機能の充実
本庁方式集中型とすることにより、現在の農林商工部が朝倉支所から本庁に移動
するため、朝倉・杷木地域住民の利便性の低下が懸念されます。このことに対処す
るため、農林商工部関係の申請等事務の支所対応を進め、支所機能を充実します。
ウ 支所の活用
朝倉支所や杷木支所の活用方針を早急に具体化し、無駄のない行政運営に努めま
す。
61
第6章
新庁舎建設に向けた事業計画
第6章 新庁舎建設に向けた事業計画
1.事業手法について
(1)事業の進め方についての基本的な考え方
基本構想においては、事業手法の考え方を以下のように整理しています。
●従来型の事業手法(分離発注)がある一方、より効率的、効果的な公共施設の整備等
を行う手法として、民間資金やノウハウの活用を前提とした一括発注方式による手法(PFI
等の民活手法)を導入している自治体もある。
●本庁舎の建設にあたっては、合併特例債を財源として活用することが、財政的に有利となる
見通しである。
(2)事業手法の概要
従来型の事業手法や、一括発注方式による手法の概要は、下表のようになります。
<事業手法の概要一覧表>
手法
業務
D
設 計
B
建 設
O
維持管
理等
主な資金調達
概 要
民間ノウ
ハウ・創
意工夫の
発揮
市の事務
管理負
担
特
徴
コスト/財
政負担の
軽減
分離発注方式
(従来手法)
個別発注
(委託)
個別発注
(請負)
個別発注
(直営/委託)
公共
公共が施設整備
に係る資金調達を
行い、各業務を個
別に発注手続き
等を行い、業務を
進める。
公共
公共が施設整備に係
る資金調達を行い、
民間が設計建設し、
整備に係る対価を民
間に支払う。
維持管理等は従来と
同様、公共側で実施
する。
設計~建設の施設
整備において創意工
夫が期待でき、工期
短縮が見込まれる。
設計建設部分の個
別手続き負担は軽減
される。
設計建設部分におい
て性能発注による効
率 化 や コスト削 減 が
期待できる。
事例多数
・習志野市庁舎
PFI
一括
発注
一括
発注
一括
発注
公共
民間が設計建設、
維持管理等を行い、
公共が資金調達の
上、対価を民間に支
払う。維持管理費は
委託料を事業期間
にわたり民間に支払
う。
設計~維持管理ま
でライフサイクルとして
の創意工夫が発揮
でき、工期短縮も見
込まれる。
長期一括契約となる
ため、個別の手続き
等事務負担が軽減
される。
設計~維持管理ま
で性能発注によるコ
スト削減が期待でき
る。
民間
民間が資金調達を行
い 、設 計建設 、維持
管理等を行う。公共は
賃貸借によりリース料
を 支 払 い 、民 間 が 投
下資金回収後に所有
権を公共に移転する。
民間
民間が資金調達を行
い 、設 計建設 、維持
管理等を行う。公共は
民間事業者のサービス
提供に対する対価を、
事業期間にわたり平
準化して支払う。
設計~維持管理まで
ライフサイクルとしての
創意工夫が発揮で
き、工期短縮も見込ま
れる。
長期一括契約となる
ため、個別の手続き等
事務負担が軽減され
る。
設計~維持管理まで
性能発注によるコスト
削減が期待できる。民
間調達金利は公共金
利より割高となる。
事業方式そのものの
法的根拠はなく、賃貸
借に係る借地借家法
が適用される。民間側
がリース会社等に限定
される懸念がある。
設計~維持管理まで
ライフサイクルとしての
創意工夫が発揮で
き、工期短縮も見込ま
れる。
設計~維持管理まで
トー タル と して の 創意
工 夫 が 発 揮 で き 、工
期短縮も見込まれる。
設計~維持管理まで
性能発注によるコスト
削減が期待できる。民
間調達金利は公共金
利より割高となる。
PFI 法に準拠し、募集
手続き等が明確な事
業手法であり、透明性
や公平性、リスク分担
の最適化などに基づく
事業となる。
・京都市伏見区総合
庁舎
公共工事の品質確保の促進に関する法律に
おいて、基本的な方針で「高度な技術提案を
求める場合」などで示された手法で、従来型の
延長上の事業となる。
その他
市庁舎への
導入事例
一括
発注
個別発注
(直営/委託)
個別・単年度・仕
様発注により、創
意工夫は各業務
単位で発揮され
る。
年度ごとに委託先
等の選定・発注手
続き、管理が必
要。
仕様発注、単年
度契約が基本とな
るためコスト削減の
効果は限定的とな
る。
一括発注方式(民活手法)
DBO
リース
DB
-
62
・高浜市本庁舎*
第6章
新庁舎建設に向けた事業計画
(2)事業手法別の概略スケジュール
各事業手法における、今後の概略スケジュールは概ね下表の工程が想定されます。
分離発注(従来方式)の場合は、新年度から設計に着手し、その後工事発注を行う工
程となり、平成 32 年度の完成、供用開始が可能となります。
一方、一括発注方式の場合は、事業化調査(民間が参画可能かなどの可能性検討)を
行うことが一般的であり、その後、実現可能性があれば、事業者の募集手続きの流れと
なります。事業者募集手続きは、PFI の場合法律で手続きが決まっており、1.5 年程度
の期間が必要となり、DB や DBO の場合も、募集要項や要求水準書、事業契約書等の検
討や事業者選定手続きについてある程度 PFI 手法に準じてやった場合でも、1年程度の
期間が必要と想定されます。その後、事業者との契約を締結し、設計施工の一括実施の
工程となり、従来方式よりも一定の工期短縮等効率化が図れたとしても、新庁舎の完
成、供用開始は平成 33 年度にかかると考えられます。
年度
事業手法
1年目
(H28)
分離発注
(従来方式)
2年目
(H29)
3年目
(H30)
4年目
(H31)
建設工事
基本・実施設計
5年目
(H32)
6年目
(H33)
移
転
▲供用開始
一
括
発
注
DB・DBO
・リース
PFI
事業化
調査
事業者募集
移
転
設計・施工
▲事業者選定・契約
事業化
調査
事業者募集
▲供用開始
設計・施工
▲事業者選定・PFI事業契約
移
転
供用開始▲
新庁舎の規模等に基づく概略の整備工程であり、周辺整備等は省略している
(3)本施設における事業手法
前記までの整理を踏まえると、財政に有利な合併特例債を活用する場合、平成 32 年
度に完成させる必要があることから、一括発注方式はスケジュールの想定より、これに
合致しない可能性があります。
また、新庁舎の建設にあたっては、設計や施工、維持管理の各段階において、発注者
の意向を適切に反映させることが重要です。また、十分な設計期間や施工期間を確保
し、品質を適正に管理していくことが求められます。
従来方式においては、設計、施工、維持管理のすべての段階で、発注者と受注者が段
階的に要求・計画条件を摺り合わせていくことが可能であり、設計と施工の独立性が確
保され、相互のチェック機能が確保しやすい面もあります。
また、新庁舎の建設は、発注後においても市民や市議会からの意見を聞きながら、段
階的に計画を進めていく必要があります。
これらより、新庁舎の整備における事業手法は、従来の分離発注方式で進めることと
します。
(4)地域経済への配慮
新庁舎の建設は、市の公共事業のなかでも大規模な工事となり、品質確保と同時に、
地域の経済発展に寄与する視点も重要となります。
地域の企業ができるだけ新庁舎の建設事業に参画できることも念頭に、品質や工程管
理など効率的な施工が行える仕組みについて、今後も引き続き検討を進めていきます。
63
第6章
新庁舎建設に向けた事業計画
(5)設計者の選定について
設計者の選定方法として考えられる競争入札方式、コンペ方式、プロポーザル方式の
特徴は、次のとおりです。
設計者選定方式
競争入札方式
設計競技方式
特徴
メリット
デメリット
・発注者が、複数の設計者から
・最も安い設計料を提示した設
・事業コストの大部分を占める
設計料の提案を受けて、「一番
計者を選定することができる。
建築工事費を低減させる効果
安い設計料」を提示した設計者
はない。
を選定する方式。
・発注者が、複数の設計者から
・具体的な設計案を提出させる
・設計案作成に必要かつ十分
対象プロジェクトについての「設
ことにより、設計者選定時にデザ
な要件や条件を発注段階であ
計案」の提出を求め、その中から
インやプランニングを概ね確定さ
らかじめ提示する必要がある。
最も良い「設計案」を選び、その
せることができる。
提案者を設計者として指名する
・提案書作成に時間がかかると
方式。
ともに応分の費用負担が必要で
あるなど、提案者の負担が大き
(コンペ)
く、参加のハードルが高い。
・設計案を評価して選定するこ
とから、提案に拘束され大きな
設計変更を行うことは難しい。
技術提案方式
(プロポーザル)
・発注者が、複数の設計者から
・具体的な設計内容について、
・業務の実施方針やプロジェクト
対象プロジェクトの設計業務に
設計者選定後に協議しながら
に対する考え方など文章表現が
対する設計体制、実施方式、
決定していくことができるため、発
中心の提案内容を評価するた
プロジェクトに対する考え方等に
注者の意向を設計内容に反映
め、優劣の判断が難しい。
ついての技術提案(具体的な
しやすい。
設計案を求めることはせず図形
表現はイラスト、イメージ図程度
・提案書作成に大きな手間がか
まで)を求め、必要に応じてヒア
からないため、提案者の負担は
リングを行い、「設計委託にふさ
比較的小さく、多くの設計者か
わしい考え方を有する組織と人」
らの提案が得られる可能性が高
を選ぶ方式。
い。
具体的な選定方法については、公共施設の設計の経験を踏まえた参加条件の設定や、
設計上の創意工夫及び市の地域特性の効果的な反映など、高い品質の確保とともに新し
い庁舎の実現の可能性を目指して、今後検討を行います。
64
第6章
新庁舎建設に向けた事業計画
2.財源計画について
新庁舎の整備に係る事業費は、前章に示したとおり約54億88百万円となる見込み
です。
財源については、財政負担に十分配慮し、今後も検討を行うものとします。具体的に
は、財政に有利な合併特例債を活用するとともに、基金や施設整備内容に応じた国の補
助金活用など、可能な限り財政負担の軽減を目指した計画とします。
現時点で、合併特例債を活用した場合の、市の実質負担額は次のとおりとなります。
<資金計画>
費目
金額
説明
概算事業費 A
54 億 88 百万円
うち合併特例債対象事業費:54 億 34 百万円
合併特例債 B
51 億 62 百万円
54 億 34 百万円×95%
普通交付税算入額 C
36 億 13 百万円
B×70%
実質負担額
18 億 75 百万円
A-C
※上記には周辺整備費、外構工事費や移転費用等は含まれておりません。
○合併特例債とは
合併特例債とは、市町村の合併に伴い特に必要となる事業について、合併後10年間に
限り(※5年延長され15年間になりました)使える地方債です。事業費の95%までを
借り入れることができ、後年度において元利償還金の70%が地方交付税(国からの支援
金)で措置されます。朝倉市は平成18年3月に市町村合併したため、平成32年度で
終了します。
○合併特例債を活用した庁舎整備の比較
庁舎建設費を【100】とすると、
<合併特例債を活用しない場合>
庁舎整備費 【100】
75%は市の借金
(通常の地方債)【75】
一般財源
【25】
全額市の負担 【100】
<合併特例債を活用した場合(期限:H32年度)>
庁舎整備費 【100】
95%は市の借金
(合併特例債)【95】
後年度、地方交付税で措置(70%)される
【66】
交付税措置(国からの支援) 【66】
←一般財源【5】
残りは市の負担
【29】
市負担 【34】
特例債を活用すると、約3分の1の市負担で建設できます。
65
←一般財源【5】
第6章
新庁舎建設に向けた事業計画
3.事業スケジュール
新庁舎の整備事業は、合併特例債の適用を前提とすることから、平成 32 年度に竣工す
る必要があります。
そのためには、平成 28 年度から設計に着手する工程とし、平成 30 年度から 31 年度に
かけて新庁舎の建設、平成 32 年度に周辺整備等を行うスケジュールを目標とします。
<事業スケジュール(案)>
年度
業務
基本構想・計
平成 27
平成 28
平成 29
平成 30
平成 31
平成 32
平成 33
構想・計画
画
●設計
・基本設計
・実施設計
設 計
基本設計
竣
工
実施設計
●建設工事
建設工事
・周辺整備等
設計
工事
基本構想:経緯、背景、基本理念と方針、建設位置、建設規模、財源等の建設計画の基本事項をとりまとめる。
基本計画:基本構想で示された基本的事項を整理し、整備方針やゾーニング等の検討を行う。
基本設計:基本計画の詳細を決定し、図面・仕様を整理し、完成時の姿を明らかにする。
実施設計:基本設計に基づき、工事を施工するための詳細図面及び設計書(積算書)を作成する。
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