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《 INTERVIEW 》フランス料理編
「多彩な部位の活用で
和牛の魅力を世界へ伝える」
ティエリー・ヴォワザン
帝国ホテル 東京 「レ セゾン」シェフ
和牛は、頬肉やスネ肉でもおいしさが際立つ。
日仏の食文化に向き合い続けた
実力派フランス人シェフが考える、
和牛の魅力をより広く世界へ伝える方法
和牛のフィレ(手前)やサーロイン(左奥)は、そのクオリティを最大限に生かすシンプルなロースト
などに向いている。和牛の魅力である脂のおいしさと肉質を引き出す焼き方をすれば、付け合わせやソー
「和牛頬肉の煮込みと牛フィレ肉の組み合わせ モワルのクネル
スはアクセントを添える程度の感覚で十分だ。
とトリュフポムスフレと一緒に」。フランス語で Ripoppé(リポ
ペ)という名の古典料理。和牛の頬肉とフィレ、それぞれの特
徴を生かした調理法の組み合わせが食感と味わいに奥深さを生む。
トリュフの香り、仕上げにかけた赤ワインソースが全体をまとめ
上げている。●使用部位/頬、フィレ ●等級/A5
卓越したセンスが織りなす、伝統を踏まえた現代フランス料理――。そう評されるティエリー・
ヴォワザン氏のスタイルは、安易な流行などとは無縁。エスコフィエ以来の正統かつクラシカル
なフランス料理の技法と、日本の食材に対する深い理解の上に成り立っている。間違いなく、
和牛の魅力をよく知る実力派フランス人シェフの一人である。
和牛は、頬肉やスネ肉にまで豊かな風味がある
── 今回つくっていただいた三皿は、使用した和牛の部位、調理法、味付け、仕上がり……。すべ
てがまるで違う。フランス料理というより、シェフの和牛料理の多彩さに感動しました。
「それはよかった(笑)
。ただ私としては、奇をてらったつもりはまったくありません。どの料理も、
15 歳から料理人としてのキャリアをスター
トして以来、食材と向き合い、古典を研究
する真摯な姿勢を貫いてきたヴォワザン氏。
なめらかな赤ワインソース一つにも、シェ
フの見識と実力、感性が光る。
フランスの伝統料理がベースになっています。
たとえば『和牛頬肉の煮込みと牛フィレ肉の組み合わせ』は、
『リポペ Ripoppé』というフ
ランス語名を持つ 17〜18 世紀頃の料理。私が 1987 年にパリのジャン・ポール・デュケノワ氏
の店にいた頃よくつくっていた一皿です。使ったのは和牛の頬肉とフィレ。程よい脂のある頬肉
はくたくたになるまで煮込んでコンフィ状に、高貴な部位であるフィレはそのきめ細かな肉質を
生かすように焼いて重ね合わせ、食感と風味のコントラストを楽しみます。骨髄とトリュフのパテ
と赤ワインソースを添えました」
── 艶やかなソースがまた素晴らしい。コクのある深い味わいで、思わず赤ワインがほしくなりま
した。一転して 「和牛スネ肉 鰹節を香らせたジュレ 昆布クリームにかわいらしいプースと」(→次
ページ)は、白ワイン向き。こちらは日本の食材を積極的に取り入れていますね。
「この前菜は、冷製のポトフのようなものと考えてください。調理では、まず水に和牛のスネ肉
を入れて火にかけます。冷たい状態からゆっくり火を入れますから、肉が縮むことなく、脂が液
体に溶け出しておいしいブイヨンになります。よく煮込んで柔らかくなったスネ肉に、舞茸、ブイ
ヨンと鰹節の風味をつけたジュレを合わせ、さらにクリーミーさを足したいとの考えから、昆布と
若布のクリームを添えています」
── ポトフ仕立てにするのは、和牛の脂を水に溶かしてブイヨンを仕上げたかったからですか?
和牛の魅力&生かすポイント
1. 和牛は頬肉やスネ肉にまで上質な風味がある。さまざまな部位の魅力を発見し、
「その通りです。これはすごく伝統的な料理法で、肉の旨味をブイヨンに移すのです」
── 和牛でつくるブイヨンと、ほかの牛肉でつくるブイヨンでは味に違いがあるのでしょうか?
「もちろん、全然違いますよ。フランスの牛肉と比べても、和牛でつくるほうが断然風味が豊か
フランスでは牛のあらゆる部位を料理に使
その特徴を生かした調理法を開拓する
です。対談で奥田さんもおっしゃっていましたが、和牛は脂自体に素晴らしい風味が備わって
う。上は和牛の一般的な部位の説明図だ
2. 酸味のタッチやスパイシーさをプラスすることで、絶妙な味のバランスを
いて、最終的な味わいの違いにまでつながります。
が、和牛の魅力を海外に広めるためには、
3. 日常的な料理に使うことが、和牛の魅力を伝える近道
スネ肉にはコラーゲン(ゼラチン質)も豊富に含まれていますから、それがまた、奥行きの
だとヴォワザン氏は言う。
部位ごとの和牛の個性を伝えることも大事
「和牛スネ肉 鰹節を香らせたジュレ
昆布クリームにかわいらしいプースと」。
鰹節のジュレ、昆布クリームから "日
本の香り" が漂ってくる。磯の香りと
でも言 えば い い か。これ が、上 質
な和牛スネ肉(右中央)とよく合う。
●使用部位/スネ ●等級/A5
あるおいしさを生み出します。
私ならこの一皿には、甲州ワインを合わせますね。和牛が日本固有の
テロワールを感じさせるように、私にとって甲州ワインは日本のエッセンス
そのもの。日本の食材によく合いますし、日本で最もお気に入りのワイン
の一つです」
異なる食文化との融合は、まず日常的な料理から
──フランスと日本、両国の食文化と向き合ってきたシェフに、フランスのシェフたちへ、フランス
料理で和牛を生かすコツやメニューづくりのアドバイスがあれば、ぜひお聞かせください。
「私がアドバイスできる立場にあるかどうかわかりませんが、フランス料理に限らず、どんなジャン
ルの料理についても確実に言えることはあります。
第一は〝バランスに気をつけること〟 です。和牛はリッチな風味で肉質も柔らかく、脂が多
めですから、酸味のタッチを加えることで絶妙なバランスが生まれます。また、カリッとした食感
としっとりした食感といったバランスの組み立て方もあります。
第二に〝和牛本来の良さ、香りと味わいを最大限に生かすこと〟。日本の和牛には豊富な
「レ セゾン」 では、日本各地から届く旬
の野菜をふんだんに使用している。写真
は渦巻きビーツ、白ニンジン、ポワローな
ど。いずれも新鮮で、そのまま、あるいは
ローストするだけで濃厚な風味を味わえる。
うまみ成分や上質な脂に由来する独特の香りと味わいがありますから、部位ごとの特徴も踏ま
えた上で、それらを生かす料理法を考えることですね」
── それには、和牛という食材を理解してもらうことが大事ですね。また海外では、その国の食文
化との融合が大切だと思いますが、プロのシェフだけでなく、一般の消費者に対しても同じことが
言えますか?
「もちろんです。たとえばフランスなら『ポトフ』のような日常的な料理で、フランスの牛スネ肉と
和牛のスネ肉を使ったものを食べ比べてもらえば、絶対に『和牛のほうがおいしい』と飛び
つくはずです。これはフランス人だけでなく、イタリア人、イギリス人、ドイツ人、アメリカ人……。
日本人もそうでしょ? 食文化は習慣ですから、普段から食べ慣れている料理ほど味の違い、
食材の違いがわかりやすい。和牛のポテンシャルは高いのですから、まずは実際にそうした違
LES SAISONS
いを感じてもらうことが大事です。
レ セゾン
今、日本の食文化は世界から注目されていますし、日本に和牛という高級食材があることは
帝国ホテル 東京のメインダイニング。クラ
シカルモダンな雰囲気の中で、ヴォワザン
氏の素材を選び抜いた本格フランス料理が
楽しめる。2016 年現在、世界で最も権威
あるフランスの食味評論誌で星を獲得中。
●東京都千代田区内幸町 1‐1‐1
☎ 03‐3539‐8087
多くの人たちが知っています。もしかすれば、サーロインやフィレは現状のままでも輸出が増えて
いくとも思いますが、もしフランス人に本格的にアプローチするなら、頬肉やスネ肉、オックステ
ールといったほかの部位もしっかりアピールしたほうがいい。そうすれば、和牛のクオリティの高
さに驚き、和牛ファンが増えることにつながると考えています」
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