第7章 乳腺(乳癌)・女性性器癌の 放射線治療

RT2013
第7章 乳腺(乳癌)・女性性器癌の
放射線治療
国際医療福祉大学病院
放射線治療・核医学センター
北原 規
乳がん
‡
‡
‡
‡
‡
‡
治療法の変遷
放射線治療の適応
乳房温存療法
非温存術後照射
放射線治療の合併症
最近の話題
乳癌の疫学
‡ 本邦の乳がんの年間罹患数は約3万人、
‡ 死亡数は約9千人と推定され、罹患数に関
しては胃癌とほぼ同数になった。罹患数、
死亡数も増加の一途を辿っているが、利
関数の伸びが死亡数のそれを上回ってい
る。このことより、早期発見・治療技術の進
歩が進んでいることが判る。今後更に死亡
数を減少させる必要がある。
癌の種類と死亡率(男女別)
男
女
前立腺癌
肺癌
膵癌
肝癌
乳癌
肺癌
癌膵
大腸癌
肝癌
大腸癌
胃癌
胃癌
乳癌 -­ 浸潤癌 2 cm以下 (%) 100 Holland R 1985 80 2cm以遠に浸潤癌 2cm以遠に非浸潤癌 60 2cm以内に癌が散在 40 限局している 14% 20 28% 41% 0 17% 2 4 6 8 腫瘍辺縁からの距離(病理所見) 10 cm 5 早期乳癌に対する治療法別長期生存率
くじ引き試験 乳房切除 vs 温存療法
%
乳房切除術 80 70 乳房温存療法 60 50 40 30 20 10 0 NSABP B-­06 生存率算出
Milan Cancer Institute 20
20
NCI DBCCG 20
20
Institute Gustav Roussy 15
EORTC 10年
6 Breast cancer 15:3-­4, 2008 乳癌手術術式の動向
% 80 乳房温存 (59%)
(照射率82%)
60 N
I
H
40 20 胸筋温存 (33%)
N
S
A
B
P
単純乳切 胸筋合併 0 拡大乳切 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 7 乳癌の診断
乳癌は早期診断・早期治療により、良好な治療成績が得られる。
集団検診の普及・画像診断の進歩などにより早期診断が可能と
なって来た。
1.自己触診
2.医師による視診・触診
3.画像診断
1)マンモグラフィー(MMG)
2)超音波(US)
3)MR,CT 等
4.腫瘍マーカー
CA15-3,NST-ST-439,BCA225,CEA その他
5.細胞診、生検
乳房疾患の画像検査
•
•
検査:乳房X線写真(マンモグラム)、超音波検査、CT、MRI、骨シンチ
情報:炎症・良悪性腫瘍の鑑別と進展範囲の診断
™
乳房X線写真(マンモグラム)
(マンモグラム:腫瘤や
微細石灰化を観察)
™
™
™
™
超音波検査 (生検装置) 良性・悪性腫瘍の鑑別
腫瘍の進展範囲の評価
経過観察で他癌の発生の評価
(症例は乳癌) 乳房疾患の画像検査
•
•
検査:乳房X線写真(マンモグラム)、超音波検査、CT、MRI、骨シンチ
情報:炎症・良悪性腫瘍の鑑別と進展範囲の診断
™
™
™
CT検査
良性・悪性腫瘍の鑑別
腫瘍の進展範囲の評価
™
MRI検査 (症例は乳癌:良悪性の評
価の他に腫瘍の間質
や乳管内進展を評価) ™
核医学検査 ™
骨転移の検索
乳癌の画像診断(MMG,US )
5.乳がん
乳がん治療法の変遷
1894 Halsted---原発巣と所属LNを一塊として切除
(定型的乳房切除術)
1960年代より非定型的乳房切除術
Patey (Bt+Ax+Ic+Mn)
Auchincloss (Bt+Ax) 手術は縮小傾向
1980年代 乳房温存術
比較くじ引き試験で従来の手術と成績変わらず
1990年 米国NIH consensus meeting
乳房温存療法は早期乳癌の推奨治療法と勧告
最近---Sentinel LN 検索(乳腺リンパ節から最初に到達
する腋窩LN)で陰性例には腋窩LN郭清を省略
乳癌は集学的治療の代表選手
放射線
手術
乳がん
抗がん剤
ホルモン療法
乳癌の治療
‡ 手術:第一選択
‡ 補助療法:化学療法、ホルモン療法、放射線療法(外部照射)
™
™
™
乳房切除術 従来の標準治療
現在も進行癌に適応
™
™
™
™
乳房温存療法 早期乳癌の標準治療
部分切除+照射(接線照射)
症例によりホルモン療法や化学療法も併用 形態を残す乳癌の治療
右ハルステッド
左温存療法
ハルステッドの手術
乳房温存療法
乳腺と胸筋を切除
腫瘍だけをとって放射線で予防
5.乳がん
わが国の乳がん術式の変遷
現在60-70%
5.乳がん
放射線治療の適応と方法
1)早期乳がん乳房温存療法
2)非温存術後
3)進行乳がん(炎症性乳がんなど)
4)術後照射なしで,局所再発時に
5)転移症例:脳,骨など
(治療効果良好:今回は省略)
乳癌の放射線治療
罹患率は生活様式の欧米化に伴い急増.
腺癌であるが放射線感受性は比較的高い.
原発巣の初発・再発を問わず、また転移病巣
においても治療の適応と成り得る.
『乳房温存手術 + 術後照射』は早期乳癌の
標準治療として確立.
乳癌の初期放射線治療
1992年フランス放射線学会のポスター
(20世紀はじめの治療の様子)
200kV X線による接線照射
(1940年代)
乳癌に対する放射線治療
3つの役割
乳房温存術後の放射線治療
進行乳癌に対する乳房切除後の放射線治療
転移に対する対症療法としての放射線治療
5.乳がん
1)早期乳がん乳房温存療法
乳房温存療法の適応と禁忌
乳房温存療法の成績
接線照射
断端陽性の場合はブースト
(局所追加照射)
ブースト設定の正誤
5.乳がん
乳房温存療法
乳癌発育にはホルモン感受性がある症例が多く,
放射線治療や化学療法が奏功しやすい
stage I, IIの大部分---乳房温存療法の適応となる
乳房温存療法の禁忌
乳房切断と温存は同等の生存率
温存で照射併用ĺ局所再発率が著明に低下
全例に放射線は必要か
ĺ照射しないで局所再発をきたさない患者の選別
は困難ĺ照射すべきである,DCISも同様
5.乳がん
乳房温存療法の禁忌
絶対的禁忌
背臥位にて患側上肢を挙上できない
妊娠中である
患側乳房,胸壁への放射線治療の既往がある
相対的禁忌
膠原病の既往(リウマチは大丈夫)
ĺ急性皮膚反応や晩期の乳房線維症など
(乳頭直下の腫瘤ĺ現在、禁忌でなくなりつつある)
5.乳がん
乳房温存療法の接線照射
方法:マルチリーフコリメータのリニアックが良い
ウエッジフィルター使用
線量:全乳房に2Gy/日,5回/週,50Gy/5W
手術と照射のタイミング:
化療なしĺ8週以内に開始すべき
化療ありĺ20∼24週以内に開始すべき
リンパ節陽性例ĺ化療先行が良い
乳房接線照射の線量分布図
起こりうる副作用は?
5.乳がん
温存乳房への
接線照射
‡ 接線照射時の固定具
術後乳癌の治療(切線照射)
3D線量分布図
治療計画と照合
乳房温存療法=温存手術 + 術後照射
乳房切除術(胸筋温存)
乳房切除による精神的ストレスで術後
のQOL低下は避けられない. 乳房温存療法(円状切除)
術後照射の目的は乳房内に存在す
る顕微鏡レベルの残存腫瘍を根絶
することである. 5.乳がん
早期乳がん:年齢とブースト適応
NEJM 345: 1378-87, 2001
EORTC study:Stage I, II
5318人,断端陰性で術後照射50Gy/25回
ĺブースト16Gy/8回 (2661人),なし(2657人)
追跡期間中央値5.1年での報告
ブースト群 〃なし群 p
局所再発
4.3%
7.3% <0.001
40歳以下
10.2%
19.5%
0.002
41-50歳
5.8%
9.5%
0.02
5年生存率
91%
91%
線維化は同等ĺ50歳以下の人にはブーストやるべき
前記の臨床研究10年後の結果
JC O 25:3259, 2007
5318人,断端陰性で術後照射50Gy
ĺブースト16Gy (2661人),なし(2657人)
ブースト群 〃なし群 p
HR
局所再発
6.2%
10.2% <.0001 0.59
40歳以下
13.5%
23.9% .0014
強度の線維化 4.4%
1.6% <.0001
10年生存率
82%
82%
→局所再発は減らすが,生存への寄与なし
ブースト16Gyは多いようである
5.乳がん
乳房温存療法ポイント
1)早期乳がん:大部分は乳房温存療法の適応
2)乳房温存療法の禁忌:時代とともに変化
3)接線照射を用いる
4)断端陽性例ĺブーストを追加
5)ブースト:照射部位設定と患者年齢に注意
5.乳がん
2)温存術でない乳房切除術後照射
非乳房温存術後照射の適応
① 切除断端陽性
② 最大腫瘍径5cm以上
③ 4個以上の腋窩LN転移
④ 胸筋筋膜への転移陽性
5.乳がん
非乳房温存術後照射法
ホッケースティック型
胸壁と鎖骨上: 50Gy/5週
術後予防照射の意義
術後照射は胸壁再発を
減らす:27%ĺ8% グレードA
( Lancet 355:1757,2000)
最近のくじ引き試験結果
ĺ生存率にも寄与
(NEJM337:949,1997)
9. 乳房切除後放射線治療の適切な照射法は ?
a. 適切な照射野は ?
B 胸壁:
A ? A
鎖骨上窩: B
胸骨傍:
?
37 再建方法別にみた照射後に合併症の起こる割合
合
併
症
の
起
こ
る
割
合
1.0
0.8
2年
P<.001
0.6
インプラント
インプラント
53%
腹直筋皮弁
12%
0.4
0.2
腹直筋皮弁
0
5Y
1
2
3
4
Chawla AK, et al: Int J Radiat Oncol Biol Phys 54:520-6, 2002
38 局所進行乳癌 63歳 T4N3M1 :St IV
小線源治療
+
温熱療法
+
外照射
治療経過
1999.6
1999.11
2000.7
2000.8
2000.3
2000.9
Q. 乳房照射の最適な照射スケジュールは?
新しい照射方法
小線源治療
術中照射
北村薫ほか,隅田伊織ほか,臨床放射線52,2007より引用
手術拒否例に対する高線量率組織内照射例
腔内バルーンカテーテル(マンモサイト) 43 Fig 2. MammoSite radiation therapy system
Arthur, D. W. et al. J Clin Oncol;; 23:1726-­1735 2005 Copyright © American Society of Clinical Oncology
44 3次元原体照射
Arthur, D. W. et al. J Clin Oncol;; 23:1726-­1735 2005 45 術中照射 (Novac 7)
Veronesi U, et al: Eur J Cancer 37:2178-­83, 2001 Intra M, et al: Surgery 140:467-­71, 2006 46 Intrabeam
小型リニアアクセラレーター 重さ1.6 kg
最大50 kVの低エネルギーX線照射
術中照射 vs 全乳房照射
Phase III
TARGIT-A trial
局
所
無
再
発
率
術中例 1113 802 557 365 212 外照射 1119 801 551 374 208 Vidya JS, et al: Lancet 376:91-­102, 2010 術中照射 vs 全乳房照射
Phase III
TARGIT-A trial
(%) 5 局
所
再
発
率
4 術中
照射 外照射
3 2 1 0 1
2
3 4 年 Vidya JS, et al: Lancet 376:91-­102, 2010 49 分割法別にみた局所再発率
(%) 10 9 局 8 所 7 再
発
率
6 5 標準照射
4 3 2 短期照射
1 0 0
2
4 6 8 10 12年 Whelan TJ, et al: N Engl J Med 362:513-­20, 2010 50 年齢別にみた乳房内再発
(断端陰性, EORTC 22881/10882) 10.8年 Bartelink H, et al: J Clin Oncol 25:3259-65, 2007
≦40歳
41∼50歳
50
40
ブースト P=0.019
50
40
30
なし 30
20
あり 20
10
0
2
4
6
8
10 12
14 16 18
0
51∼60歳
P=0.0012
40
ブースト なし あり 20
10
2
4
6
8
10 12
2
4
6
14 16 18
8
10 12
14 16 18
>60歳
50
30
0
ブースト なし あり 10
50
40
P=0.0096
P=0.029
30
ブースト なし あり 20
10
0
2
4
6
8
10 12
14 16 18
51 3.
乳房温存手術後のリンパ節領域に対する
放射線治療は勧められるか?
52 5.乳がん
3)進行乳がんのポイント
進行乳がん:Stage IIIa, IIIbには化学療法
(CAF, CEF, CMFなど)
ĺ乳房温存術か非定型的乳房切除術
ĺ術後照射(ホッケースティック型)
炎症性乳がん:浸潤性乳癌の一部で高悪性度で予後不良
化学療法 ĺ奏功例に非定型的切除術と化療
ĺ術後照射(ホッケースティック型)
化療非奏功例には化療後に放射線治療
ĺ 接線照射 60∼70Gy,LN50Gy
化学療法・内分泌療法
1・化学療法:
1)術前化学療法
2)術後化学療法
レジメン:CMF,CAF,TAXAN系単独、
分子標的治療(ハーセプチン)等
2・内分泌療法:主に術後補助療法として
施行される。ER, PgR の状況が重要。
最近閉経後でタモキシフェン抵抗性の再発乳がん
には、アロマターゼ阻害剤が主流となってきた。
5.乳がん
放射線治療の合併症
1)急性合併症
皮膚炎
正常組織感受性の個人差
照射中の軟膏塗布
放射線肺炎
2)晩期合併症
肺線維症,上肢浮腫,
心筋障害,ほか
有害事象
13. 二次癌や対側乳癌を考慮しても乳癌
術後照射は勧められるか?
A
対側乳癌、肺癌、食道癌、肉腫などが
増えるが、絶対数は少ない。
14. 有害事象を考慮しても乳癌術後の
放射線治療は勧められるか? A
ほとんど全例に軽度の皮膚炎
他の有害事象の頻度は低く、許容範囲
56 乳癌の接線照射で 起こりうるイベント
皮膚炎
乳房炎
肺炎
術後疼痛
化療,ホルモン療法による副作用
上肢リンパ浮腫(慢性期)
投薬
ステロイド軟膏
患部冷却
疼痛対策
不安対策
化療の副作用対策
接線照射による皮膚の変化
照射前
照射直後
照射後5週
1年後
放射線皮膚炎
放射線皮膚炎1.jpg
放射線皮膚炎
5.乳がん
放射線皮膚炎に軟膏塗布
ステロイドクリームは放射線皮膚炎を軽減する
double-blind randomized study
49人の乳房温存療法後の照射
照射開始より塗布
(24Gyまで週2回,以後毎日1回∼終了後3週)
ĺ塗布は有意に皮膚炎を軽減(p=0.0033)
Radiotherapy & Oncology 59 : 257-65, 2001
Bronchiolitis Obliterans Organizing Pneumonia (BOOP)様肺臓炎
⊡照射後12カ月以内の発症
16例/1177例
⊡全身または呼吸器症状が2週間以上継続
(1.4%)
⊡照射野外の浸潤影
(癌研病院 放射線科 小口先生,室伏先生)
⊡その他の要因が無い
‐J AST R O 2009 京都で発表‐
全乳房照射:50 Gy/25回 追加照射:10 Gy/5回(電子線、9MeV、ijFP)
照射後約4ヶ月
咳、発熱(38度)、SpO2低下(R.AでSpO2 88%)
5.乳がん
2)晩期合併症
上腕,乳房の浮腫,線維化,
乳腺炎,放射線肺炎,
肋骨骨折(1.8%:JCRTデータ)
心膜炎 (0.4%: 〃
)
腕神経叢障害(1.8%鎖上照射例)
心臓障害など
Bronchiolitis Obliterans Organizing Pneumonia (BOOP)様肺臓炎
照射後4ヶ月
(発症時)
照射後6ヶ月
照射後4.5ヶ月
照射後6.5ヶ月
PSL使用
照射後7ヶ月
照射後7.5ヶ月
照射後9.5ヶ月
(癌研病院 放射線科 小口先生,室伏先生)
照射後4ヶ月
(発症時)
照射後4.5ヶ月
照射後6ヶ月
(癌研病院 放射線科 小口先生,室伏先生)
照射後6.5ヶ月
照射後7ヶ月
照射後7.5ヶ月
照射後9.5ヶ月
(癌研病院 放射線科 小口先生,室伏先生)
放射線肺臓炎
右乳房照射後 6ヶ月
67 BOOP (COP)
bronchiolitis obliterans with organizing pneumonia Cryptogenic organizing pneumonia ① 乳房への照射後、12ヶ月以内に発生
② 2週間以上の症状継続
③ 照射野外の浸潤影
④ 他に原因なし
Crestani, B. et al: Am J Respir Crit Care Med 158(6), 1998 頻度
1992年∼2004年12月までに乳房温存術後に乳房接線照
射を施行した患者で、1年以上の経過観察をした 968乳房
( 956人)の
うち
特発性器質化肺炎 (BOOP/COP):12例 ( 1.2% )
放射線肺臓炎(Rad. Pn.): 8 例 ( 0.8% )
関口・他 第14回日本乳癌学会学術総会( 2006.7)
左右別にみた虚血性心疾患の経年変化 %
100
Giordano SH et al: JNCI 97,419-­24, 2005 虚
血
性
心 95
疾
患
が
な
い 90
割
合
1985-­89 1980-­84 右側乳腺
左側乳腺
1973-­79 85
0
2
4
6
8
10
12
14 Y
70 5.乳がん
乳癌:まとめ
1)乳房温存療法の普及・
ガイドラインの整備
2)断端陽性に対する対処:ブースト照射
3)放射線治療合併症の理解
4)最近の各種話題
5)active womenが多い
(闘病記は参考になる?)
5.乳がん
Active women with breast cancer may live longer
アクティブな乳がん患者は長生き
2006/9/11 ニューヨーク(Reuters Health配信)
乳がん診断前に運動をしていた人は長生きする
特に肥満の場合(Fred Hutchinsonがんセンター)
1264人(20∼54歳)の診断前の運動状態を調査
ĺよく運動していた人は最大30%死亡率低い
(People Living With Cancer news:Cancerに報告)
陽気な人や笑う人は治療成績が良いという報告も有名
女性性器がん
1.子宮頸部
2.子宮体部
3.卵巣
4.膣,外陰
1.子宮頸癌
‡
‡
‡
‡
‡
‡
‡
一般
臨床病期分類,転移の頻度
放射線治療の役割と適応
放射線治療基準
腔内照射,術後照射
放射線治療成績
合併症
子宮頸がん(概説)
ヒトパピローマウイルス(1)
‡ 環状構造の二本鎖DNAウイルス。全世界的に
古くから存在していた。現在では100種類以上の
型が報告されている。正20面体のカプシドで覆わ
れており、遺伝子サイズは種類により異なるがだいたい
約8,000塩基ほどで、8から9のオープンリーディングフレーム(ORF:蛋白をコー
していると推定される遺伝子。しかしその遺伝子産物は同定されていない)を
んでいる。欧米の子宮頸癌でよく発見される16型HPVの場合、初期遺伝
(E1,E2,E4,E5,E6,E7) と後期遺伝子(L1とL2)というORFを持っている。その中で
特にE6とE7が発癌に関与していると考えられている。
‡ E6はがん抑制遺伝子であるp53と結合し分解することで発癌に寄与している。E6
はそれ以外にもhTERTの再活性化やPDZドメインを持つたんぱく質を分解するこ
とで発癌に寄与している。E7はp53と同様がん抑制遺伝子であるpRbと結合、分
解・不活化することでpRbと結合している転写因子であるE2Fを遊離し活性化す
ることで発がんに寄与している。それ以外にもE7はcdkインヒビターであるp21、
p27と相互作用することで発癌に寄与している。
ヒトパピローマウイルス(2)
‡ ヒトパピローマウイルス(HPV)にはハイリスク型とローリスク
型があり、子宮頸がんを引き起こすのは発がん性HPVとい
われるハイリスク型のみです。
‡ また、ハイリスク型HPVに感染しても90%以上は体内から自
然消失する為、子宮頸がんに進展するのはごくわずかです。
‡ 全世界で毎年3億人の女性が発がん性のハイリスク型HPV
に感染すると仮定した場合、そのうちの約0.15%が子宮頸が
んを発症すると推定されています。子宮頸がんになるまでに
は、通常、数年∼十数年と長い時間がかかるので、定期的な
子宮頸がん検診を受けていれば、がんになる前の状態(前
がん病変)を発見し、治療することが可能です。
ヒトパピローマウイルス(3)
1.子宮頸癌
解剖
子宮頸を固定している靭帯
膀胱子宮靱帯
基靱帯(傍子宮結合織)
子宮仙骨靱帯
移行帯:膣から連続する扁平上皮と頸部腺が接する癌の発生母地
1.子宮頸癌
臨床病期
分類
IIB,IIIAとIIIB
ポイント
1.原則として治療開始前に決定,以後変更しない
3.FIGO 分類はリンパ節転移が加味されていない.
またCTやMRによる診断を加味できない
1.子宮頸癌
子宮頸癌の転移
骨盤内リンパ節転移
I B
15%
II B 25-30%
III B
50%
外部照射は全骨盤を
含める
傍大動脈リンパ節転移
I B 5%, II B 19%, III B 30%
転移しやすい部位
肺,傍大動脈LN,縦隔,鎖上,骨,肝
1.子宮頸癌
子宮頸癌治療ガイドライン
‡2007年版 日本婦人科腫瘍学会
‡IIBにも放射線治療が適応と記載
欧米の指針
および5生率
骨盤内臓器と腫瘍の画像検査
•
•
検査:単純X線写真、超音波検査、CT、MRI、尿路造影、注腸造影、核医
学検査(ガリウム・骨シンチ)
情報:病巣部位の特定、外傷・奇形・炎症・腫瘍の鑑別と進展範囲の診断
超音波検査
CT検査
(症例は子宮頸癌)
良性・悪性腫瘍の鑑別
病巣の広がりの評価
侵襲がない
良性・悪性腫瘍の鑑別
腫瘍の進展範囲の評価
骨盤内臓器と腫瘍の画像検査
•
•
検査:単純X線写真、超音波検査、CT、MRI、尿路造影、注腸造影、
核医学検査(ガリウム・骨シンチ)
情報:病巣部位の特定、外傷・奇形・炎症・腫瘍の鑑別と進展範
囲の診断
MRI検査
核医学検査(ガリウム・骨シンチ)
(症例は子宮頸癌)
良性・悪性腫瘍の鑑別
腫瘍の進展範囲の評価
遠隔転移の検索
1.子宮頸癌
放射線治療の役割
‡ 治療:手術,放射線治療,両者の併用,
今後は化学療法が併用される方向
‡ 欧米:全ての進行期に対し放射線治療が主体.
腔内照射から出発ĺ手術ĺ超高圧放射線
治療の適用へと推移してきた
‡ 本邦:手術可能な症例には手術が優先
超高圧放射線治療が普及する前には,
放射線治療より手術の方が成績が良かった
ĺ現在でも手術がベストと考える婦人科医が多い
1.子宮頸癌
放射線治療の適応
• 両治療法の成績は同等ということの証明
Lancet 350:535-540,1997他(手術が合併症は多い)
• 適応:手術しないI期,II期(高齢者,肥満他疾患の合併,
手術に恐怖感を持つ患者,術者の技術が未熟など)
III,IV期の進行癌
• 放射線治療より手術が優先されるもの
開腹手術や腹膜炎の既往,妊娠癌,萎縮膣,タンデム
挿入不可の子宮,子宮奇形,放射線感受性が低い腺癌,
患者が子宮残存を不安がる場合,放射線治療が不十分
な設備
• ポイント:手術ではIII,IV期の治療は不可能
子宮頸癌の放射線治療
• 外照射 External Beam Irradiation
骨盤(リンパ節転移と子宮頸部腫瘍)
に対する通常分割照射
• 腔内照射 Intracavitary Brachytherapy
子宮頸部腫瘍に対する寡分割大線量照射
2つの照射法を組み合わせることで
治療効果を高める
子宮頸がんの標準的治療
外照射(2次元照射の照射野)
1.子宮頸癌
放射線治療の要点:外部照射と
腔内照射の組合わせが基本
上:L5上縁,下:閉鎖孔
• 左右小骨盤から1.5-2cm
骨盤内転移頻度を思い出すこと
腔内照射
腔内照射装置(Ir-192)
高線量率イリジウム 照射装置(腔内照射) MicroSelectron
腔内照射(RALS)
Remote After Loading System
S‐12
1.子宮頸癌
腔内照射のシェーマ
‡ B点:頸管2cm上方で,
‡ 正中より水平に5cm外方
‡ ĺ骨盤線量
A点:外子宮口より頸管に沿って,2cm上方の点
よりで頸管に直交して外側に2cmの点→腫瘍線量
腔内照射 (子宮頸癌)
タンデム
オボイド
腔内照射(タンデムとオボイド)
子宮頚癌の治療成績
Stage
Radiation therapy
Surgery
I
85-90%
86%
II a
70-80%
75%
II b
60-65%
59%
III
25-50%
***
IV
10-30%
***
腔内照射(A点、B点の概念)
腔内照射(B点の定義)
腔内照射(中央遮蔽)
62歳女性 子宮頸癌
外照射50 Gy/25回+腔内照射25 Gy/5回
治療前
治療後3年
1.子宮頸癌
術後照射
外部照射1.8-2.0Gy/日で40-50Gy
手術で肉眼的に病巣が切除されたが,顕微鏡的に
癌の残存が疑われる場合の予防照射
適応 1)リンパ節転移陽性例
2)リンパ節郭清不完全例
3)子宮傍結合組織浸潤例
4)筋層浸潤の著しい例
5)脈管侵襲の高度な例
6)膣壁摘出が不十分と考えられる例
成績:手術単独群と同等な成績となる
リスク臓器とその対応
1.子宮頸癌
周辺正常組織の耐容線量
(5年で5%の合併症)
• 直腸---60Gy
• 膀胱---65Gy
• 膣-----90Gy
• 子宮---100Gy以上
• ポイント:上の4つは大事
1.子宮頸癌
治療成績
扁平上皮癌5年生存率
I期----80-90%
II期---60-80%
III期--40-60%
IVA期--10-40%
(施設によるばらつきあり)
ポイント:欧米と比べて,日本の成績は優良
1.子宮頸癌
治療に及ぼす因子
貧血
Hb量は有意な予後因子
局所再発,遠隔転移
高血圧
拡張期圧110mmHg以上は
骨盤内再発と合併症が増加する
腫瘍サイズ
1.子宮頸癌
急性合併症
‡ 腹部手術既往は腸管合併症を
起こしやすい
‡ 照射中を中心として照射後1-3か月
以内に発生する
‡ 放射線宿酔(食欲不振,吐気)
‡ 膀胱炎症状,下痢症,腹痛
子宮頸がんの早期有害事象
1.子宮頸癌
後期合併症
‡ 放射線治療終了後,6-24か月に多く出現する
‡ 直腸:一過性の出血10-20%,直腸出血,
直腸狭窄,腸潰瘍
‡ 膀胱:一過性の膀胱出血5%前後,膀胱出血,
膀胱潰瘍,萎縮膀胱
‡ S状結腸:出血,狭窄
‡ 小腸:頻度は少ないが長期にわたる.
下痢,狭窄,イレウス
‡ 骨盤骨:壊死(基礎に骨粗しょう症が多い)
化学放射線療法
1.子宮頸癌
化学療法の併用
Cochrane Collaboration よる化学放射線療法に関する
ランダム化比較試験のメタアナリシス
Lancet 358: 781-786, 2001
*化学放射線療法は生存率を向上させ局所再発および
遠隔転移も減少させる
*適応はIIB期以上、あるいはIB、IIA期
腫瘍径5cm以上または骨盤内リンパ節転移陽性例
*標準的レジメン:シスプラチン単剤,
またはシスプラチン+5-FU
1.子宮頸癌
化学放射線療法の優位性
‡ RTOG 90-01:Stage IIB-IVA
‡ J Clin Oncol 2:876,2004
化学放射線療法(スケジュール)
1.子宮頸癌
子宮頸がん:最近の話題
1.子宮がんの手術時に卵巣を移動
通常の全骨盤照射では不妊となるのを避
けられない.107例で手術時に卵巣を移動
Fertil Steril 74: 743-738, 2000
2:卵巣を上腕に自家移植(Cancer2771, 2005)
3:Stage IIB/IIIの進行癌には放射線治療とシスプラチン
baseの化学療法併用が局所制御と生存率を向上させる
(J Clin Oncol 25:2804,2007)
4:Bulky IB/IIB子宮頸癌の化学放射線療法後の補助
化療は不要(Gynecol Oncol 104:58, 2007)
他科との連携のポイント
‡ CCRT適応症例では、婦人科系腫瘍医、
腫瘍内科医が平行して診療を行うことが
望ましい。理由としては
1.化学療法に起因する急性障害への対応
2.外科的な対応・処置
3.適切な婦人科的診察によるフォロー
4.適切な抗癌剤の選択・助言等がある。
1.子宮頸癌
子宮頸癌:まとめ
1)放射線治療は病期分類によらず良い適応
2)骨盤内,傍大動脈リンパ節転移に注意
(画像の勉強もして下さい)
3)外部照射に腔内照射の併用が必須
4)腔内照射:A点が腫瘍線量
5)治療成績は良い,化学療法併用で成績向上
6)合併症を少なくする治療技術
2.子宮体癌
‡ 一般関連
‡ 放射線治療の役割
‡ 放射線治療の方法
‡ 治療成績
‡ 合併症
2.子宮体癌
一般関連
近年増加傾向---乳癌同様,食生活の欧米化
疫学:略
危険因子
不妊,未産,小産,エストロゲン投与,遅い
閉経(52歳以上), Stein-Leventhal症候群,
tamoxifen使用など
病理:略
病期分類:略
2.子宮体癌
放射線治療の役割
子宮体癌治療ガイドライン2006年 (婦人科腫瘍学会編) 子宮体癌の85%は早期
ĺ治療の第一選択は手術
放射線治療単独は成績劣る
腔内照射線量分布不良,高齢者が多い
適応:
高齢,内科的合併症で手術不可症例
III-IV期の進行癌,手術拒否例
2.子宮体癌
放射線治療の方法
‡ 外部照射:手術成績を向上させる目的で
主に術後照射
‡ 照射野 :全骨盤照射を基本
子宮頸癌と同じ
‡ 線量:Ia期G1------腔内照射のみ
G2 Ib期-----全骨盤 40Gy
II IVa期-----全骨盤 45-50Gy
IVb期-------緩和照射 40-50Gy
2.子宮体癌
術後照射の適応:予後不良因子
1)進行病期
2)組織分化度がGrade2(3)以上
3)癌の子宮体壁筋層浸潤が1/3(1/2)以上
4)頸管浸潤陽性例,5)リンパ節転移陽性例
6)脈管侵襲陽性例,7)卵巣転移陽性例
8)年齢(高齢者で不良)
9)腹腔内洗浄液細胞診陽性例
10)子宮の大きいもの
2.子宮体癌
治療成績
‡ 5年生存率 I期
80%
II期 50-60%
III期 15-20%
IV期 5-15%
‡ 全体に手術療法の方が成績が良好
術後照射により,骨盤内再発や膣断端
再発が減少し,約10%生存率が改善
2.子宮体癌
I 期子宮体癌に対するRT
(高線量率腔内照射)
著者 症例
治療法
Sorbe 91
5-12Gy 6
(1989)
Kucera 228
(1998)
Nguyen 36
(1998)
生存率
5年CSS 72%
(point A)
34Gy/4fx
5年DSS 85.4%
(point M)
35Gy/5fx
(point W)
3年DSS 85%
2.子宮体癌
最近の話題から
Stage I 子宮体癌の術後放射線治療の意義
米国NCIのSEERプログラムデータ 21249人
RTあり:4080人
RTなし:17169人
Stage Ic/grade1,
死亡HR 0.44
Stage Ic/ grade3, 4 死亡HR 0.72
ĺ大規模データ分析で有意に生存率上昇
JAMA 295: 389-397, 2006
2.子宮体癌
放射線治療合併症
子宮頸癌の副作用とほぼ同じ
1)腔内照射でアプリケータ挿入時の
子宮穿孔の危険
2)子宮底の線量が増すため,
S状結腸合併症が起きやすい
2.子宮体癌
子宮体癌:まとめ
1)子宮体癌に対しては手術が基本
2)放射線治療の適応は限られる
3)術後照射により,骨盤内再発や
膣断端再発は減少
3.卵巣癌
‡
‡
‡
‡
‡
‡
一般,病理
治療方法
放射線治療の適応
全腹腔照射
治療成績
合併症
3.卵巣癌
一般,病理
‡ 疫学:上皮性卵巣癌:閉経後の高齢者に多い
胚細胞腫瘍や奇形腫:若年者に多い
‡ 危険因子
未婚,子供なし,喫煙,脂肪に富む食事
‡
‡
‡
‡
病理:悪性群77.3%,中間群22.7%,腺癌が多い
漿液性嚢胞腺癌:悪性群の40%---放射線感受性高い
ムチン性腺癌 :悪性群の20%---放射線感受性低い
上皮性卵巣癌 :診断時に半数が骨盤外の腹膜播種
あるいは後腹膜転移を認める進行癌
‡ Clear cell carcinoma:予後は不良
3.卵巣癌
治療方法
卵巣がん治療ガイドライン2007年(婦人科腫瘍学会改訂)
1)組織型が多彩で,進行癌が多く,
標準的放射線治療はない
2)従来の治療:第一選択は手術
化学療法や放射線治療は補助療法の役割
3)両側付属器切除,単純子宮全摘,大網部分切除,
リンパ節や転移巣の可及的切除
4)最近の治療---手術と化学療法の併用が主体
術後の治療としてCDDPを中心とした化療と放射
線治療の併用あるいは化学療法単独治療
3.卵巣癌
放射線治療の適応
再発例----緩和,延命治療として
dysgerminoma,顆粒膜細胞腫,類内膜癌,漿液
性嚢胞腺癌など---放射線感受性があり適応
米国NCIの治療指針
Grade 3あるいは正常臓器に強い癒着を持つ
I期,IC期および,骨盤内に 最大径0.5cm以
下の微小残存腫瘍をもつII期
3.卵巣癌
全腹腔照射
1)腹膜播種が主な進展経路
全腹部が照射の対象
2) 20-30Gyの総線量が限界
腸管,腎臓などの障害を
抑えるため---Open field法
3)手術でできるだけ切除した後
(化療後の2nd look opeも含む)
に行われる事が多い
4)1.0-1.2Gy/回で20-24Gy,骨盤に絞り45-50Gy
腎臓10-20Gyで,肝臓は25Gy程度で遮閉が必要
3.卵巣癌
治療成績
‡ 施設間のばらつき大
‡ 5年生存率: I期 60-90%
II期 30-50%
III期 0-20%
3.卵巣癌
全腹腔照射の合併症
‡ 急性: 腹痛,下痢,悪心嘔吐,
食欲 不 振,全身倦怠,WBC,
pl減少
‡ 後期: 下肺野肺線維症,肝機能
障害, イレウス,腎硬化症
3.卵巣癌
BRCA1とBRCA2
乳癌でBRCA1とBRCA2 キャリアは卵巣癌になる
リスクがある
早期乳癌491人で上記突然変異+を調査
10年で卵巣がんにリスク
%5&$ĺ12.7%
BRCA2ĺ 6.8% P=0.03
早期乳がん死亡の25%は卵巣がんによる
BRCA1,2のキャリアの早期乳がんは卵摘すべきか
Gynecol Oncol 96: 222-226, 2005
3.卵巣癌
卵巣癌:まとめ
1)放射線感受性の良い組織型もある
2)手術と化学療法後の再発に対して
緩和的放射線治療が行われる
3)全腹腔照射には限界があるが,
再発を抑える効果はある
4.膣・外陰
‡ 一般関連
‡ 放射線治療の適応
‡ 放射線治療の方法
‡ 治療成績
‡ 合併症
4.膣外陰
膣・外陰
spray
verrucous
‡ 婦人科腫瘍の内では稀
‡ 膣癌:膀胱,直腸に近接,直接浸潤多い
高齢者や内科的合併症で手術適応と
ならないものが多い
下1/3のもの:そけいLN転移多い
‡ 外陰癌:70%以上は陰唇に発生
手術が第一選択とされる
術後照射
手術できない場合には根治照射
4.膣外陰
放射線治療の適応
‡ 子宮腟部に進展し外子宮口に及ぶものĺ子宮頸癌
‡ 外陰に及んでいるものĺ外陰癌
‡ 尿道口に限局した腫瘍ĺ尿道癌
‡ 膣癌:0期およびI期:腔内照射単独
それ以上の場合:外部照射,可能な場合は腔内
照射または組織内照射を組み合わせた治療
‡ 外陰癌:放射線治療の適応は病期分類と正確に
対応しない
4.膣外陰
放射線治療の方法
そけい・大腿リンパ節領域
骨盤リンパ節領域および
腟(外陰癌では外陰)全体
を含めて照射する
10MV以上のX線,前後二門
(後で,大腿骨頭部避ける)
そけいリンパ節転移陽性患者に対しては、骨盤照射が推奨される
4.膣外陰
放射線治療:線量
‡ 膣癌:1回線量1.8∼2.0Gy、週5回法
腔内照射を併用する場合
子宮頸癌と同じく,外部照射は30∼40Gy
で中央遮蔽45∼50Gy程度まで照射
‡ 外陰癌:外陰は急性の皮膚・粘膜反応が強い
外部照射の1回線量は1.8Gyを超えない
‡ 術後照射:原発巣腫瘍床,LN領域へ50Gy程度
4.膣外陰
膣,外陰癌の治療成績
‡ 腟癌:5年生存率 (FIGO病期分類)
I期:70∼90%、II期:50∼60%、
III期:30∼50%、IV期:0∼20%
‡ I期(T1N0)では、局所制御率,5年生存率とも
80∼90%程度野と治療成績は良好
‡ 外陰癌:症例数がきわめて少ない.
治療法も種々雑多で明確な治療成績を示しにくい
I期(T1N0)では、局所制御率、5年生存率とも
80∼90%程度と治療成績は良好
80歳女性 外陰癌 扁平上皮癌T3N1
外照射と組織内照射の併用
鼠径部を含め 外照射54Gy後 左壁の残存 腫瘍に対し 192-­Ir刺入 2年後 腫瘍消失 日常生活 支障なし 後遺症なし 3年後に 外尿道口右に 再発(多発?)し 198-­Auグレイン 刺入 4年後 腫瘍消失 後遺症なし 4.膣外陰
最近の報告:膣癌
膣扁平上皮癌に対する
根治的放射線治療
MD Anderson CC
193人(1970-2000)
5-y-s stage I: 86%
II: 84%
III-IVA: 71%
膣癌では組織内照射大事
IJROBP 62: 138-147, 2005
4.膣外陰
最近の報告:外陰癌
‡ 術後断端の状態と他の臨床病理学的
予後因子に関する多変量解析
‡ 病理学的断端8mm以上あることが,
局所制御に極めて重要である
‡ Gynecol Oncol 104: 636, 2007
4.膣外陰
膣癌・外陰癌:まとめ
‡ 1)婦人科腫瘍では稀
‡ 2)そけいリンパ節転移が多い
‡ 3)外部照射,腔内照射,組織内照射
などを行う
‡ 4)急性期の放射線皮膚炎が強い
おことわり
図表は 北原 規・相羽恵介編著
・「化学放射線療法プラクティカル
・ガイド」2009より引用
(一部改変)致しました。