わかりやすい悪性腫瘍の話 乳がん 乳がんとは? 乳がんの症状は

わかりやすい悪性腫瘍の話 乳がん
2014.4.1
乳がんとは?
乳がんは乳房の中にある乳腺(母乳を作るところ)にできる悪性腫瘍です。
乳腺は母乳を産生する「小葉」と母乳を乳頭まで運ぶ「乳管」からなっています。
乳腺は乳頭から木の枝のように放射状に広がり、その先に小葉と呼ばれる母乳を作るとこ
ろがあります。乳がんの多くはこの小葉を構成する細胞から発生します。
図:アストラゼネカ発行「乳がんからあなた自身を守るために」
乳房の変化に気づかず放置していると、がん細胞が増殖して乳腺の外にまで広がり、リン
パや血液の流れに乗って肺や肝臓、骨など離れた臓器にまで及びます。
乳がんの症状は?
初期の乳がんでは、食欲がなかったり体調が悪くなるといった全身症状はほとんどありま
せん。このため、唯一の手がかりとも言える乳房の変化を放置してはいけません。
乳がんを発見するきっかけとなる症状の 90%以上は「しこり」です。痛みは原則として
ありませんが、乳腺症を合併した場合や特殊なタイプの乳がん(炎症性乳がん)などでは痛み
を伴うことがあります。この他に乳房にひきつれやくぼみができたり、乳頭部から分泌物
が出たり、ただれ、変形がおこることもあります。
乳がんにかかる確率は?
日本では、乳がんにかかる女性が年々増加しています。最新のデータでは 1 年間に約 60,000
人の方が乳がんになると報告されています。これは日本女性の 14 人に 1 人という値で、女
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性のがんの中でもっとも多いがんです。乳がんで亡くなられる方は、約 13,000 人程です。
30 歳を超えると増え始め 40 歳代後半で罹患率が最も高くなり、最近では 50 歳以上で罹患
する方も増えています。
乳がんになりやすいタイプ
乳がんの発生や増殖には、
「エストロゲン」という女性ホルモンが関わっています。乳腺が
エストロゲンにさらされている時間が長くなることが原因と言われています。さらに閉経
後は、エストロゲンが脂肪細胞で作られるようになるため、肥満している女性では乳がん
のリスクが高くなるようです。乳がん細胞が、エストロゲンの受け皿(ホルモンレセプタ)
を持っている場合、エストロゲンの働きを抑えることが乳がんの治療になります。
・年齢(40 歳以上)
・高齢出産の人・出産をしていない人
・初潮が早く閉経が遅い人
・閉経後肥満の人(卵巣機能が廃絶した閉経後は副腎由来のアンドロゲン(男性ホルモン)が
脂肪組織などのアロマターゼによりエストロゲンに変換される。
)
・血縁者に乳がんになった人がいる
第一度近親者(親・姉妹・子)が乳がんの場合: 2.1 倍
母親と姉妹(第一度近親者に 2 人)が乳がんの場合:3.6 倍
第 2 度近親者(祖母・孫・おば・姪)が乳がんの場合:1.5 倍
・良性の乳腺疾患になったことがある
・乳がんになったことがある。
・閉経後ホルモン補充療法、経口避妊薬使用の経験がある。(欧米では危険因子とされてい
ますが、日本人でははっきりしていません)
~乳がんや卵巣がんを発症しやすい体質に関係している遺伝子~
BRCA1 遺伝子、BRCA2 遺伝子等 …遺伝子(DNA)に入った傷を修復する働きに関係
していると考えられる)
上記遺伝子に生まれつきの変化を持っている方は乳がんや卵巣がんを発症するリスクが
高くなります。この遺伝子については、家族歴が見られる場合と見られない場合があり
ます。また、全乳がんのうち遺伝要因が関係している乳がんは 5~10%ですが、アメリカ
のガイドライン
(NCCS)
では 25 歳以上から半年に一度の医師の検診を推奨しています。
<信州大学医学部附属病院(遺伝子診療部)で詳しい説明が受けられます。>
・アルコールの摂取、たばこの摂取と発症率には関連性が見られるというデータも出てい
ます。
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2014.4.1
乳がんの病気(ステージ)
0期
乳管内に留まるがん。非浸潤がん(超早期)
Ⅰ期
2 ㎝以下のしこりで、リンパ節の転移がないと思われるもの。(早期)
Ⅱa 期
しこりの大きさが 2 ㎝以下。脇の下のリンパ節に転移がある。
またはしこりの大きさが 2 ㎝~5 ㎝で脇の下のリンパ節に転移はない。
Ⅱb 期
しこりの大きさが 2 ㎝~5 ㎝で脇の下のリンパ節に転移がある。
Ⅲa 期
・しこりの大きさは 2 ㎝以下だが、脇の下のリンパ節に転移があり、さらにリンパ節へ
の転移はないが、胸骨の内側のリンパ節がはれている。
・しこりの大きさは 5cm 以上で脇の下あるいは胸骨の内側のリンパ節への転移がある。
Ⅲb 期
しこりの大きさ、わきの下のリンパ節への転移の有無にかかわらず、しこりが胸壁にが
っちりと固定していたり、皮膚にしこりが出たり、皮膚が崩れたり、皮膚がむくんでい
る。炎症性乳がん。
Ⅲc 期
しこりの大きさにかかわらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転
移のある場合。あるいは、鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある場合。
Ⅳ期
骨、肺、肝臓、脳など遠隔臓器に転移している。
早期発見のために
乳がんは自分で発見できるがんの一つです。自己検診で普段から自分の乳房に触り慣れて
いると乳房の変化に気づきやすいので、定期的に自分の乳房に触って検診を行いましょう。
毎月整理が終わって 4,5 日頃の乳房が柔らかく安定しているときがよいでしょう。
鏡の前でチェック
鏡の前に立ち、①腕を自然に下げた
状態、②高く上げた状態で、以下の
項目を確認します。
・左右の乳房の形や大きさに変化が
ないか
・乳房にえくぼのようなくぼみやへ
こみ、ひきつれがないか
・乳頭にただれやへこみがないか
入浴時に浴室でチェック
入浴時に石鹸をつけた手で、4 本の
指を揃えて指の腹で小さな円を描
くように、または肋骨に沿って外側
から内側へ指をずらしながら、乳房
全体を触ります。このとき、左乳房
を触るときは右手で、右乳房を触る
ときは左手で行ってください。ま
た、乳房を触るときには指先でつま
まないように注意しましょう。
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2014.4.1
あおむけに寝てチェック
調べる側の背中の下にあまり高くない枕、またはたたんだタオルなどを入れ、調べる側の
腕を上に上げます。調べる側の乳房と反対の手の指を乳房の乳頭よりも内側にのせ、指の
腹で胸の中央部に向かって滑らせるように触ります。同じ姿勢のまま、乳房の乳頭よりも
外側を外から内に向かって同様に触ります。反対側の乳房も同様に行ってください。
脇の下のリンパ節と乳頭をチェック
起き上がった状態で、調べる側と反対の手の指を揃えてわきの下に入れ、指先で触ります。
反対側も同様に行ってください。左右の乳頭を軽くつまんで搾るようにして、血液が混じ
った分泌物が出ないか確かめます。
乳がん検診のすすめ
アストロゼネカ発行:
『乳がんってどんな病気?より
月に 1 回の触診検診に加え、定期的にマンモグラフィや超音波検査などの画像検査を受け
ましょう。若くて乳腺が発達している方には、マンモグラフィより超音波が適しています。
マンモグラフィでは、低エネルギーのX線撮影を行い、視診、触診では感知できないごく
早期の乳がんを最も高感度に検出できます。
乳がんの確定診断
画像検査で異常所見があると、細胞診(針を刺して組織を吸引)か、針生検や外科的生検(い
づれも麻酔をして行います。
)で細胞を採取して調べます。病理組織診断だけでなく「エス
トロゲン受容体」
、
「プロゲステロン受容体」、
「HER2」の免疫組織染色での評価が可能です。
*HER2:細胞の増殖や分化に関与していて代表的ながん遺伝子と言われます。(分子標的治療
薬の投与の判断ができます)
参照:アストラゼネカ発行『乳がんってどんな病気?』
アストラゼネカ発行『乳がんからあなた自身を守るために』
国立がん研究センターがん情報対策センターホームページ・『がんの教科書』中川恵一著