デジタル印刷機が生む新しい価値をシール・ラベル

専務取締役 宮腰亨 インタビュー
デジタル印刷機が生む新しい価値をシール・ラベル、パッケージ分野へ
ビジネスフォーム印刷機、加工機、オフセット輪転機メーカーとして技術とノウハウを蓄積してきたミヤコ
シ。1994 年からサイテックス社(現コダック)のインクジェットシステムの販売を開始し、2003 年には DOD ヘ
ッドをラインヘッドに構成した同社独自開発のフルカラーインクジェットシステム「MJP600」を発表した。以
降、海外にもデジタル印刷機を輸出するなどデジタル印刷分野に力を入れており、シール・ラベル、パッケ
ージ市場にも製品を投入している。
出力機から後加工まで総合的に
印刷業界が全般的に厳しい環境にある中で、消耗材であるシール・ラベル、パッケージ印刷は、今後も
堅調に推移すると考えています。今後の伸びしろもある業界と見ており、ミヤコシとしてもシール・ラベル、
パッケージ業界にもっと提供できる機械を作る準備をしています。
当社はシール・ラベル業界の方々に凸版輪転印刷機 MTL10A やステップバック式オフセットラベル印刷
機 MLP を利用して頂いているほか、フォームの印刷や商業印刷等、幸いにも色々な業界とお取引させて
頂いています。これが当社の強みと考えています。
とくにフォーム印刷機については長年の技術とノウハウを重ねてきており、壊れない、頑丈だという評価
を頂いています。しかもお客様の業務内容に合わせ、オーダーメイドで機械を製造しているのも特徴です。
こうした蓄積はデジタル印刷機でも活かせると思っています。
また、競合が増えていく中、ミヤコシの特色を出していけるのは加工の分野です。ハーフカットもミシンも
可能であり、もちろんデジタル印刷機にも連結することもできます。インラインでもオフラインでも、出力か
ら加工まで総合的に提案できます。今後も加工のラインアップを増やしていく予定です。
高付加価値実現へデジタル印刷機
現在、シール・ラベル業界も、パッケージ業界も、デジタル印刷機の普及率は商業印刷分野よりも低い
水準にあります。やはり品質や生産性の要求に応えるマシンが限られていたためだろうと思います。
先行されている印刷会社の方々はすでにデジタル印刷機を導入され、サンプルテスト等を重ねているよ
うです。当社の機械をご採用頂いているユーザーもいらっしゃいますが、まだ、サンプルテストの段階で、
本格的な生産機として使われている機械も少ないのではないでしょうか。
しかし、徐々にユーザーの方々が望んでいるプリンターが登場し、選択肢は拡がり始めています。潜在
的なニーズは非常に高いものがあるので、今後、成長していく分野だと思っています。
その潜在的なニーズの 1 つが、デジタル印刷機を使うことで今までできなかった事業展開ができるという
ことです。可変印刷やバージョニングなど、付加価値を高めたモノづくりを求められています。ハードメーカ
ーとしても、技術的なハードルをクリアしていくだけでなく、高付加価値を実現する提案が必要と考えてい
ます。
もう 1 つがシール・ラベル、パッケージもサプライチェーンの中に存在しており、短納期化、小ロット化がま
すます進んでいるということです。もちろんロットの大きい受注に対してはコスト面から従来の通り、オフセ
ット印刷やグラビア印刷で対応されると思います。小ロットの受注をどうするかが課題であり、そこにデジタ
ル印刷機という選択肢が浮上してきます。
一方、デジタル印刷機を導入するにはイニシャルコストが高いという声もあります。そうした課題には、既
存の機械を活用しながら、デジタル印刷の特徴が出せる「ハイブリッド印刷」を提案します。例えば、今、お
使いの機械の搬送部分に、インクジェットのヘッドを搭載し、一部を可変印刷して付加価値を高める方法
です。ハイブリッド印刷には正確な搬送技術が必要であり、ミヤコシの技術が活かされる分野でもあります。
ラベル・パッケージに対応の MJP20W
当社のデジタル印刷機のラインアップにはインクジェット機と電子写真方式を用意しています。さらにイン
クジェット機には水性インクジェット(染料・顔料)、UV インクジェットの二方式を揃えています。いずれの印
刷機もロール紙による供給方式で、生産性が高いのが特徴です。インクジェットへのヘッドにはピエゾ式ド
ロップオンデマンド方式ラインヘッドを採用しています。スピードと品質を両立させるためです。
シール・ラベルやパッケージの分野で求められるのは、UV インクジェット方式だと思います。当社の
LED-UV 対応フルカラーインクジェットプリントシステム「MJP20W」は、シール・ラベル、パッケージ業界で
の利用も想定して開発しました。シール・ラベル用途以外にも、コートボール紙に対応しています。各色に
LED-UV ユニットを採用しています。各色に LED-UV ユニットを搭載しており、発熱が抑えられているので、
基材への熱の影響が非常に少ないことが特徴です。このため、フィルム等、軟包装分野にも対応していま
す。LED-UV で仮定着し、UV を再度照射させ、インクを硬化・乾燥・定着します。
生産性は現在、UV インクジェット機でも最高レベルの毎分 100m を実現していますが、150m まで上げて
いく計画です。ミヤコシ独自の用紙搬送方式により、用紙厚さにかかわらず転地、左右、表裏で高精度に
印刷します。解像度は 600dpi×600dpi。新設計された用紙搬送システムにより、用紙坪範囲は 64g/㎡~
400g/㎡と薄紙から厚紙までの出力が可能です。
シール・ラベル分野では狭い幅のナローフォーマットが求められるので、今後、そうしたニーズに対応し
た機会の開発も考えています。
IGAS2011 に 3 機種を出展
今年 9 月に東京ビックサイトで開催される IGAS2011 には「MJP20W」、「MJP20E」とアドオンタイプの
「MIYAKOSHI Hybrid Inkjet」3 機種のデジタル印刷機を出展する予定です。
「MJP20W」では先ほどご説明した通り、フィルムやコートボールなど LED-UV による特殊基材への出力
をご覧頂きます。新製品の「MJP20E」は水性インクジェットです。CMYK の 4 色に加えて特色 2 色を搭載し、
高品位出力が特徴です。主に商業印刷向けに提案していく予定です。
「MIYAKOSHI Hybrid Inkjet」は既設の印刷機に 1 ヘッド単位でプリントヘッドを増設できるアドオンタイプ
のデジタル印刷システムです。今お持ちの印刷機の機能が拡張できるもので、ワンパスで一部の情報の
可変印刷ができるようになります。
当社ではこのほか、用紙にアンカー剤を塗布して色再現領域を広げた「MJP20F」やワイドフォーマット対
応シリアルプリンター「TXP18A」、エントリーモデルの「MJP20D」等、用途に合わせて機種をラインアップし
ています。IGAS では実記を展示しませんが、当社のショールームでも印刷業界が元気の出る新しい見せ
方をしたいと考えています。
LED-UV インクジェットでシール・ラベル、軟包装、紙器の小ロット対応
どんなシステム?
1.LED-UV により軟包装にも出力
2.高い搬送技術で安定して高速出力
3.PDF 対応のコントローラー、負荷に応じて RIP 追加も
● Point1
LED-UV により軟包装にも出力
MJP20W は、ミヤコシ独自の用紙搬送方式により、用紙の厚さにかかわらず天地、左右、表裏において
高精度な印刷を実現するフルカラーインクジェットシステム。乾燥に LED-UV を搭載しており、省エネルギ
ーで環境に優しい。ミヤコシでは後加工機も自社開発しており、ユーザーの業務内容に合わせて、プリン
ターから後加工機まで最適なシステムを提供している。
LED-UV は消費電力が少なく、発熱も抑制されるため、基材に対する熱影響が軽減される。このため、
用紙以外にも軟包装に使われるフィルム等の基材に対して高品位フルカラー印刷を実現する。また、通
常の UV インクジェットと同様、出力後、インクが即座に乾燥するため、乾きにくいグロスコート紙にも出力
することができる。
紙厚は 64g/㎡から 400g/㎡まで対応。薄紙を多用する商業印刷のほか、小ロットのシール・ラベル、軟
包装、紙器パッケージ分野を対象としている。
● Point2
高い搬送技術で安定して高速出力
印刷速度は UV インクジェットとして最高域の 100m/分。同社はビジネスフォーム印刷機や加工機、オフ
セット輪転機など、多彩な印刷システムを手掛けてきており、その高い用紙搬送技術がこう即時でも安定
して用紙を搬送することができる。
今後はインクの改良により、150m/分への対応を計画している。
● Point3
PDF 対応のコントローラー負荷に応じて RIP 追加も
コントローラーは PDF データに対応した「Miyakoshi Clustering RIP」。PDF からデータを直接印刷すること
ができるほか、多数の高速ソフトウェア RIP を並列駆動させることで、大量のフルバリアブル高速印刷にも
対応する。
RIP エンジンは負荷に応じてを追加することもでき、各種アプリケーションをサポート。また、印刷時に
ICC プロファイルや解像度、階調数、網点形状を選択でき、印刷直前の変更にも対応する。
解像度は 600×600dpi。最大印刷幅 541mm。
(プリテックステージ 7 月号 増刊 掲載)