1 - 素形材センター

プレス加工
株式会社深井製作所
遮熱板用汎用機能性エンボスの開発
軽さと安さを両立しプレス成形性に優れた汎用素材
質量
剛性
1.開発の目的
80 年代後半に国内採用が始まった遮熱板用のエンボ
ス技術は、90 年代に入って欧米が特許性のない公知の
テクスチャ(模様)を汎用化したが、特定のメーカー
だけが特許を有する剛性の高い仕様を独占していた。
一方でエンボスは元々意匠性であり機能性エンボス市
場は存在せず、自由に入手できる環境ではなかった。
開発の発端は、機能性エンボス市場が存在しなかっ
図1
平板 t 0.5 mm を 100 % とした場合の質量・剛性比較
たことだったが、我々以外にも機能性エンボスを必要
を拡大すれば、軽量化の余地が残されている可能性が
としている企業はあるだろう。物流合理性からは集約
ある。これを具現化したのが SUBARU XV HYBRID
生産が理想だが、企業間の垣根を越えて協業を実現す
に採用されたバッテリーカバーで、embrella ® として
ることは容易ではなく、結果的に当社で内製すること
は初の遮熱板以外に採用された事例となった。
となった。
3.開発の成果
2.開発の内容
海外では大手数社が集約生産によりスケールメリッ
先行技術に学びつつ、特許抵触回避策を立案。優れ
トを活かし競争力を得ているが、物流コストが高いわ
たパラメトリックシミュレーションソフトを活用でき
が国ではこういった手法はそぐわない。当社が導入し
る機会を得たこともあり、独自開発ではあったが、数
たエンボスロールは非常にコンパクトな設備であり、
か月という短期間に既存技術を越える性能を実現でき
少額な投資で済む。このような設備を主要生産地域に
る見通しを得た。
配し、ライセンスビジネスによる普及を図ることで「地
形状が雨傘を伏せたような形状であることから、傘
産・地消」の生産形態を確立していきたい。
を意味する “umbrella" とエンボス “emboss" を組み合
4.特記事項
わせた造語 “embrella ® "(エンブレラ)と命名、商標
登録した。
昨年暮れには、平成 25 年度 地球温暖化防止環境大臣
曲げ剛性は強度とは全く異なる要素で、板厚の三乗
表彰で技術開発・製品化部門を受賞したが、embrella®
で効くため、3 割薄い板厚での曲げ剛性は、僅か 1/3
の普及を通じ我が国の製造業の国際競争力向上と、地
になってしまう。embrella ® は、剛性をおおよそ3倍
球規模での温暖化防止に役立てて行くことが当社の使
程度にでき、3 割薄くても元の厚みとほぼ等価の剛性
命であると、改めて強く感じている次第である。
を維持できる。また、エンボス成形による表面積の向
上を最小限に抑えたこと。加工硬化に伴う母材強度の
向上も相まって、絞り性などの評価では、同材質の平
板と遜色ないか若干高い成形性を有する。そのため、
embrella ® 化に特別なプレス成形技術は不要であり、
平板でプレス成形が可能な工法設計であれば、ほぼ、
そのまま embrella® に置換することが可能である。
エンボス加工はロール成形工法を主に行われる。特
許形状である embrella® に特化し、専用設備とするこ
とで、製造コストは材料投入コストのみとなる。将来
写真 1
XV HYBRID の事例
的には薄板化で浮いた材料コストの大半が利益として
得られるようになるだろう。
自動車業界では、何故か遮熱板にしか採用されてい
ないこの技術だが、それは単なる固定概念でしかない。
設計的には剛性は高い方が良い場合が多く、適用範囲
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SOKEIZAI
プレス加工-深井製作所 131029.indd
Vol.55(2014)No.1
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株式会社 深井製作所
〒 326 ‑ 0005 栃木県足利市大月町 465‑3
TEL. 0284 ‑ 40 ‑ 2000 FAX. 0284 ‑ 40 ‑ 2025
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わ が 社 の 素 形 材 技 術 最 前 線
2014/01/09
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