エンタープライズIT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ) 高分解能衛星画像と IT の融合で、 新しい価値を創出 長い助走期間を経て本年7月、NTTデータの100%出資の子会社として設立されたNTTデ ータGC。高分解能衛星画像とITを組み合わせ、地理情報/地物管理分野での社会情報シ ㈱ NTT データ GC 代表取締役社長 高石 哲氏 ステムビジネスの展開を目指す同社の取組みについて、高石哲社長にうかがった。 約 8 年の助走期間を経て、本年 7 月に衛星画像の専門会社を設立 1m 分解能の衛星画 像の販売権利を取 得 で き た の は 、 ―本年7月、NTT データの 100 %出 2003 年に成功した 資子会社として設立されましたが、設 OrbView-3です。 立の背景からお聞かせください。 ― 衛星が上がらな 高石 いことには、ビジネ NTTデータでは、約8年前か 企画型ビジネスに見合った 体制の必要性 技術の急速な向上により 業界の変化も加速 業界・市場の変化に応じた 機敏な戦略判断と、変化に対応できる体制が必要 事業分野に特化した子会社(NTTデータGC)の設立 図 1 NTT データ GC 設立の背景 ら高分解能衛星画像のビジネスに取 スを始められない…。 り組んできました。東西冷戦終了後 高石 画像が取得できないことには 領ギアナで打ち上げられました。使 のアメリカの規制緩和政策により軍 話になりません。頼りにしていた衛 われたアーリアン 4 型ロケットは成 事偵察衛星技術の民間への転用が可 星が落ちたため、急遽、米国に数年 功率が非常に高いとはいうものの、 能になり、90年代中頃に高分解能商 先行して商業衛星ビジネスを展開し 心配で私自身実際に現地に行って祈 業衛星の運用会社が相次いで設立さ ていたフランスの SPOT 衛星の画像 るような思いで見守りました。成功 れたのを受け、ニュービジネスとし を使うことを検討し、2002 年5月 した瞬間、これで日本に帰れる、ビ て検討を始めたのがきっかけです。 に打ち上げが成功した 2.5m 分解能 ジネスを始められるということで、 当時、IKONOS(SpaceImaging 社) 、 の SPOT5(SPOT IMAGE 社)の 感無量でしたね。 QuickBird(Digital Globe 社)、そ 衛星画像の販売権を取得しました。 ―実際にビジネスを開始されたのは して OrbView(ORBIMAGE 社) 実は、OrbView-4 が落ちた時に、 2002 年から…。 高石 2002 年9月から 2.5m 分解能 の 3 つの商業衛星の打ち上げ計画が 「チームは解散すべし!」という意 ありました。実際に高分解能衛星の 見が社内の大勢を占めましたが、将 の SPOT5 衛星画像でスタートし、 民間事業が始まったのは、1m 分解 来を見据え、プロジェクトを継続す 2003年から1 m 分解能の OrbView - 能の IKONOS が打ち上げられた ることが役員会で了承されました。 3 衛星画像を加えた「Geo コンテン 1999 年からです。IKONOS と 私は、将来を考えると著作権が持て ツサービス」を提供してきました。 QuickBird の衛星画像の国内販売権 るデジタルコンテンツが必要という しかし、市場の様々な変化に俊敏か は他社が取得し、NTT データは ことから執念を持って取り組みまし つ的確に対応するためには、衛星画 OrbView の衛星画像を取り扱うこ たが、この時にプロジェクトを継続 像を核にした事業分野に特化した専 ととしました。ところが、2001 年 させてくれた会社を誇りに思ってい 門会社として、営業チャネルの開拓 の打ち上げに失敗したため、実際に ます。SPOT5 は、南米のフランス を含め機動力のある体制を確立する 94 2005 Vol.42 No.12 エンタープライズIT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ) 2∼3年後 現 在 衛星画像 (バーチャルリアリティのインタフェース) ・ 「誰でも」が ・ 「どこでもドア」のように ・ 「日本全国のどこでも」を 見られるサービスを提供 ・「広域画像と詳細画像」により ・バランスのとれた経済発展への 資源(「自然・人工物」)管理を 支援するサービス (製品) ・BASEIMAGE :全国を毎年更新 ・OverScene :3次元バーチャル空間 ・GreenDataset (製品) ・BASEIMAGE ・GreenDataset ・50cm解像度BASEIMAGE :1/1000縮尺相当 ・OverScene ・OverSceneWorks :電子納品データ管理 ・OverSceneMobile :現場情報との組みあわせ 図 2 NTT データ GC のビジネス戦略 融合 ソフト (業務ソフト) サービスシステムへ Ex)意思決定支援システム 自然・人工物管理システム 3Dで、 リアルに 全体を俯瞰できる リアルタイムで、遠隔地の情報 を統合できる 時間軸の変化を、 シミュレーション して見ることができる 図 3 Geo コンテンツ・ビジネスの将来像 必要があるということで設立しまし 省、地域の公社・自治体など大きな の衛星画像ですが、今後は他の衛星 た。 「桃、栗3年、柿8年」といわれ 面積の土地を管理しているところで や場合によっては航空写真など、 ますが、ここまでくるのに約8年と す。このため、特約代理店制度を設 様々なリソースを活用していきたい いう長い助走期間を要したわけです。 け、地域ごとに地場の有力な測量会 と考えています。2007 年に 50cm 分 社や建設コンサルタント会社などと 解能の OrbView-5 の打ち上げが計 衛星画像と IT を融合したサービ スシステムの提供を目指す 連携してビジネスを展開していま 画されていますが、そうなると適用 す。また、電力や鉄道、通信会社と 領域が相当に拡がります。ビジネス ―2つの衛星の画像を中心にビジネ いった広いエリアを管理する事業者 戦略的には、デジタルコンテンツ スを展開されていますが、現在のビジ への営業も強化していきたいと考え (広域画像と詳細画像)と IT を組み ネスの状況はいかがですか。 ています。 合わせ、バランスのとれた経済発展 高石 ―現在、パートナー数は何社くらい のための資源(自然・人工物)管理 すが、1回で撮影できる範囲が ですか。 を支援するサービスを提供していき 60km × 60km と大変広く、広域な 高石 たいと思います(図2、図3参照)。 地上の様子を一度に把握するのに適 象とする特約店を含め約 60 社です。 これにより、NTT データグループ しています。一方、OrbView-3 の場 やはり地域によってそれぞれ需要の 全体として、地理情報/地物管理分 合は、撮影サイズは 8km × 8km で 地域特性もあり、受注実績に関して 野での社会情報システムビジネスの すが、1 m という高い分解能によ は濃淡がありますが、各パートナー 拡大につながると考えています。 るクリアな画像をお届けできるの 会社が積極的に活動、展開している ―最後に、今後の目標をお聞かせく で、局地的な地上の様子を詳細に把 ところです。 ださい。 握するのに適しています。私どもは、 ― Geo コンテンツ・サービスの詳細 高石 他社のように依頼を受けてから撮影 は後続の頁でご紹介しますが、新会社 後には年間売上20億円、この8月か するのではなく、自社のリスクで日 のビジネス・ビジョンをお聞かせくだ ら衛星画像ビジネスを中国で展開し 本全国をあらかじめ撮影しておき、 さい。 ているNTT DATA(中國)有限公司、 その中からご希望の地域の画像をお 高石 私どもは、単なる衛星画像の NTTデータ本体の衛星画像関連ビジ 届けしています(BASEIMAGE)。 販売ではなく、デジタルコンテンツ ネスを合わせて、ミニマム年間売上 このため、納品までの時間が短いと と IT を融合し、新しい価値を創る 50億円は達成したいですね。 いう特徴があります。こういった衛 ことを目指しています。したがって、 ―本日は有り難うございました。 星画像の主要ユーザーは、国土交通 現在は SPOT5 と OrbView-3 の2つ SPOT5 は、分解能は 2.5m で 2005 Vol.42 No.12 各都道府県に1社、全国を対 NTT データ GC 社単独で5年 (聞き手・構成:編集長 河西義人) 95
© Copyright 2024 Paperzz