本日の獲得目標および進行 アナフィラキシーとは アナフィラキシーの定義

2011/12/6
本日の獲得目標および進行

アナフィラキシーの概念および疫学について

アナフィラキシーの診断について

アナフィラキシーの治療について

アナフィラキシーの入院適応について

アナフィラキシーのフォローアップについて
以上のことを理解し診療することができる
アナフィラキシーとは

アナフィラキシーの語源
1902年にPortierとRichetによって提唱
イソギンチャクの触手に含まれる毒素を犬に投与して、その2
〜3週間後に再び同じ毒素を投与したところ、ショック症状を
呈して急死することを発見
→この現象をギリシア語で「phylaxis(保護)」「ana(反対)」を
組み合わせ「非保護」という意味を込めて「anaphylaxis」と報
告
アナフィラキシーの頻度

疾患死亡率は国によって0.7~2%とばらつきあり

日本では年間60~80人の死亡例報告
アナフィラキシーの定義
「経口・経気道・経皮的に体内に侵入した物質によって惹起されるIgE
を介した急性アレルギー反応」
→狭義のアナフィラキシー(Ⅰ型アレルギー反応)
「IgEを介さずに脱顆粒が誘発されることでアナフィラキシー反応と同
様の症状が出現するアナフィラキシー様反応」
臨床上の区別困難
⇓
「急速発症して死に至る可能性のある重大なアレルギー
反応」
食物アレルギーの原因とその頻度
…平成20年即時型食物アレルギー全国モニタリング調査
結果より
1.7%
死因:窒息(喉頭浮腫 致死的喘息) ショック(distributive)

ハチ刺傷によるアナフィラキシー頻度
日本の食物アレルギー再発率…
乳製品、鶏卵、小麦、ピーナッツ、魚介類、ナッツ類、ソバ、エビ、
果実の順に再発率が高い

2.4%
1.5%
3.3%
n=2478
3.9%
日本(農山地域8万人において)0.36%にハチ過敏症

2.5%
4.0%
38.7%
4.3%
4.8%
12.1%
20.9%
診断基準が厳密でないため、正確さに欠けるのが実情
1
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薬剤アレルギー原因薬剤
アナフィラキシー
アナフィラキシー様反応
βラクタム系抗菌薬
キノロン系抗菌薬
神経筋遮断薬
白金製剤
異種蛋白製剤
造影剤
麻薬
NSAIDs
バンコマイシン
局所麻酔薬
化学療法薬
モノクローナル抗体
アナフィラキシーの臨床診断
以下の3つの診断基準のいずれか一つを満たすときにアナフィラキシーである可
能性が高い2)
1.(数分から数時間での)急速な皮膚・粘膜あるいはその両方の病変(全身
性蕁麻疹・皮膚掻痒感・顔面紅潮・口唇/舌/口蓋垂腫脹)の発症
加えて以下の最低一つ以上
A)呼吸困難
B)血圧低下あるいは抹消臓器機能低下に関連した症状
2.以下のアレルゲン暴露後急激に生じる症状のうち2つ以上を満たす
A)皮膚‐粘膜病変
B)呼吸困難
C)血圧低下とその関連症状(転倒・失神・
失禁)
D)持続する消化管症状(けいれん様腹痛 嘔吐)
3.(数分から数時間で)患者が既知のアレルゲンに暴露したあとに生じた血圧低
下
A)乳児および幼児:(年齢層によって特異的な)収縮期血圧低下あるいは通常よ
り30%以上の収縮期血圧低下
B)成人:収縮期血圧90mmHg以下あるいはベースラインから30%以上の収縮期
血圧の低下
覚えやすい覚え方
視診は大事だよ〜
Dr.林のアナフィラキシーABCD法則
全身蕁麻疹+αはエピネフリン(アドレナリン)投与の適
だ!
応
A:Airway
喉頭浮腫
B:Breathing
C:Circulation
D:Diarrhea
喘息
ショック
下痢
腹痛
嘔吐
鑑別ってあるんでしょうか?

あります
・ヒスタミン様症候群…ヒスタミン過量摂取に伴う中毒
代表的な病歴…傷んだサバ科、サバ亜目の食物摂取後
・血管性浮腫…
突然発症の皮下、粘膜下組織の微小血管拡張と透過性亢進による
限局性浮腫
C1インヒビター異常やACEI/ARBなどの薬剤による
・他…急性喉頭蓋炎 喉頭異物 上気道腫瘍/膿瘍 気管支喘息 急性
肺水腫 循環血漿量減少 心原性(AMI 不整脈 劇症型心筋炎な
ど) 敗血症 肺塞栓 薬物/アルコール中毒 不安障害 心因反
応 など
アナフィラキシーってなんの?
アナフィラキシーにもいろいろあります

・動物(ハチ ダニ クラゲ ヘビ ラット マウス ハムスター)刺咬傷
・食物
・薬剤
・運動誘発性アナフィラキシー…
運動刺激によりアナフィラキシー症状が誘発されるもの
特定の食物を摂取したあとの運動で誘発されるのが食物依存性運動誘
発アナフィラキシー
・Latex-fruits症候群…天然ゴムラテックスに感作された患者がフルー
ツなどの摂取でも即時型アレルギー反応を呈する

病歴が勝負
2
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アナフィラキシー症状のgrade分類 3)
検査って何か必要?

grade
1
来院時検査
血液ガス分析:呼吸状態チェック
2
血算:血管拡張や血管透過性亢進により循環血漿の血管外漏出
→HgbやHctの上昇あり
3
白血球分画:好塩基球の増加など

診断確定やフォローに必要な検査
4
抗原特異的IgE抗体(RAST(radioallergosorbent test))
(ヒスタミン
トリプターゼ…特殊検査)
5
まず医療者が落ち着く

ABCDチェック+OMIを速やかに

上気道閉塞への対応…気管挿管か輪状甲状靭帯切開

ショックへの対応(distributiveです)
呼吸器
循環器
神経
-
-
-
全身性掻痒感、
上記に加え、 鼻閉、くしゃ
発赤、蕁麻疹、
活動性変化
悪心、嘔吐
み
血管性浮腫
鼻汁、明らか
上記に加え、 な鼻閉、咽頭 頻脈(+15/ 上記に加え、
上記症状
繰り返す嘔吐 喉頭の掻痒感/
不安
分)
絞扼感
嗄声、犬吠様
咳嗽、嚥下困 上記に加え、
上記に加え、
軽度頭痛、死
難、呼吸困難、 不整脈、軽度
上記症状
下痢
の恐怖感
喘鳴、チア
血圧低下
ノーゼ
重度徐脈、血
上記に加え、
呼吸停止
圧低下、心拍
意識消失
上記症状
腸管機能不全
停止
治療には何を使う? その1
治療戦略

皮膚
消化器
限局性掻痒感、口腔内掻痒感、
発赤、蕁麻疹、違和感、軽度
血管性浮腫
口唇腫脹

エピネフリン
成人0.3mg
筋注
(0.01mg/kg)
世界各国で第一選択だが初期投与量や投与方法についてコンセンサ
スなし 血流の大きな筋肉として大腿中央前外側が推奨 30分以内
の投与で予後改善のエビデンスあり grade3以上で使用

ヒスタミンH1ブロッカー(当院:ポララミン
1A静注)

ヒスタミンH2ブロッカー(当院:ザンタック
1A静注)
・最初の10分で循環血液量の35〜50%が血管外へ漏出する
・太い輸液ラインを2本確保し細胞外製剤(生食・乳酸リ
ンゲル)を1〜2L投与
第二選択として挙げられ、併用の有効性はあるとされているがエビ
デンスなし 皮疹には著効
・心肺停止には4〜8Lもの急速輸液必要
治療には何を使う? その2

ステロイド(当院代表例 サクシゾン200~500mg 静注)
アナフィラキシーに対するステロイド治療のプラセボコント
ロール試験はなし 他のアレルギー疾患を参考としてハイ
ドロコルチゾン5mg/kgを6時間毎に投与 他メチルプレドニ
ゾロンなども可
アスピリン喘息の症例では(当院では)リンデロンを使用
8mg 静注

エピネフリン☓→グルカゴン

α・β遮断薬や抗精神病薬内服
の患者に考慮

アドレナリンを投与して効果
がないときに考慮

グルカゴン受容体と結合する
ことで細胞内のcAMPを増加さ
せヒスタミン遊離を抑制

1~5mg 筋注(0.02〜
0.03mg/kg)
2〜
喘鳴あるけど…β刺激薬(吸入とか)は上気道閉塞や
ショックには効果なし 気管支攣縮による喘鳴にはベネト
リン吸入有効
3
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治療…まとめ
入院必要ですか?

エピネフリン→Grade3以上なら使用

H1+H2ブロッカー→皮疹には早く効くので
使ったほうが無難

ステロイド→使用
注意

Β刺激薬吸入→気道閉塞していず、喘鳴あれば
使用

エピネフリン効かなかったら…グルカゴン

症状が2相性で生じる…1〜20% 8時間
以内に生じる事が多い1〜72時間までは
可能性あり

軽症でも4〜6時間の経過観察は妥当

中等症以上…24時間の観察入院必要
ただしアスピリン喘息には
エピペン処方時の注意
フォロー

NSAIDs
・左図:食物ア
レルギーの場合
のフォロー
FEIA
・薬剤アレル
ギーは、現在の
技術では特異的
抗体を調べる検
査が存在しない
IgE
IgE
登録医により処方が可能 2011年9月から保険診療適応
薬価:エピペン(R)注射液0.3mgは10,950円、エピペン(R)注
射液0.15mgは8,112円
IgE

アナフィラキシーの補助治療を目的とした自己注射薬であるため、使
用後は 直ちに医療機関を受診するよう指導する。

アドレナリン自己注射薬を使用するタイミング
呼吸器症状など上記「食物によるアナフィラキシーの臨床的重症度」
においてGrade3以上
IgE

Grade4以上の症状が出現した場合 保育所および学校において緊急の場
に居合わせた関係者が、アドレナリン自己注射薬を使用できない状況
にある本人のかわりに注射することは人道上許される。

アナフィラキシーショックで生命が危険な状態にある傷病者が、あら
かじめエピペン®を 処方されている場合、救命救急士はエピペン®を業
務として使用することが可能となった。

0.01mg/kg以下の投与量とする
まとめ

見た目とバイタルが重要

診断は蕁麻疹+ABCD

治療はABCD+OMI+エピネフリン/H1
H2 blocker/ステロイド

経過観察入院とフォローの内科受診を忘
れずに
有効期間は20ヶ月
参考文献

1)救急・集中治療<vol22>特集 徹底ガイド アナフィラキ
シーQ&A-研修医からの質問226 箕輪良行特集編集

2)World Allergy Organization anaphylaxis guidelines:
Summary F. Estelle R. Simons, MDら

3)総合アレルギー学 改訂2版 [単行本]

4)食物アレルギーの診療の手引き2011(ネットでダウン
ロード可能)
福田 健 (編さん)
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