「温室効果」 気 象 ひとくちメモ

平成27年11月27 日
熊 本 地 方 気 象 台
気 象 ひとくちメモ
「温室効果」
今年 10 月の世界の月平均気温は 1891 年の統計開始以降において高い方の第 1 位になりま
した。また、10 月までの 8 つの月で高い方の 1 位を記録し、年平均でも高い方の 1 位になる可能
性がでてきています。このように近年は地球の温暖化が危惧され、その原因として二酸化炭素な
どによる「温室効果」が話題となっています。今回は、「温室効果」について説明します。
まず、「温室」と「温室効果」の違いについて説
明します。はじめに温室の仕組みです。一般に
温室は、ガラスやビニールで囲われた部屋とな
っています。ガラスやビニールは可視光線や近
赤外線は通しやすく、赤外線は通しにくい性質
を持っています。図 1 のように外側から入ってき
た可視光線や近赤外線は温室内に透過するこ
とができ温室内を温めます。逆に温室内からは
熱が赤外線として外に逃げようとしますがガラス
やビニールを透過できずに温室内に閉じ込めら
れてしまいます。このため熱が蓄積され温室内
図 1 温室のしくみ
の温度は高くなります。
次に「温室効果」のしくみを説明します。
「二酸化炭素による温室効果」というように、温
室効果にはある種類のガスが関係します。こ
れらのガスを温室効果ガスと呼び代表的なも
のは二酸化炭素、メタン、フロン、水蒸気など
です。空気の主な成分である窒素や酸素は
温室効果ガスではありません。仮にひとかた
まりの空気(空気塊)を考えます。空気塊が温
室効果ガスを含まない場合、この中を通る赤
外線はその進路を遮るものがなく、すぐに空
気塊の外に逃げてしまいます。空気塊が温室
効果ガスを含む場合、温室効果ガスは分子の
構造から、ある特定の赤外線を吸収・放出を
図2 温室効果の模式図
することができるため、空気塊の中では図 2 の
ように温室効果ガスの分子が赤外線をキャッチボールしていると考えることができます。このため
赤外線はすぐに逃げ去ることができません。結果として空気塊は熱を蓄積することになります。
地球の大気で考えると、もしも温室効果
ガスがない場合、太陽から地球に入射した
可視光線や近赤外線は地表で熱に変った
後すぐに赤外線として宇宙空間に逃げてし
まい地球の平均気温はマイナス19℃にな
ると推定されています。凍りついた世界に
なるわけです。しかし、現在の地球は図3の
ように適量の温室効果ガスによって赤外線
は大気中に熱として蓄積され平均気温は
およそ14℃に保たれています。
図3 地球における温室効果の模式図
産業革命以後、人類は化石燃料を利用
することによって大量の二酸化炭素を大気中に放出してきました。このため大気中の二酸化炭素
濃度は年々増加をしています。このままでは、温室効果のバランスが崩れることが危惧されます。
このように温室効果は、生命の星、地球の環境の維持になくてはならない重要な現象です。温
室効果ガスは多くても少なくても環境が変化してしまいます。現在の地球環境を維持するために
は適当量に保つことが大切です。
本件に関する問い合わせ先:熊本地方気象台
(096-352-0345)
※バックナンバーは熊本地方気象台ホームページに掲載しています。
(http://www.jma-net.go.jp/kumamoto/kishoumemo/kishoumemo.htm)