No.ICP-2006-002 固定電話と携帯電話の料金低下の厚生インパクトの測定† Impact of Decline in Prices of Fixed and Mobile Phones on Household Welfare 中村彰宏∗・実積寿也∗∗ Akihiro Nakamura and Toshiya Jitsuzumi 消費者行動モデルと整合的な計量経済モデルを構築して通話需要分析を行う一方で、電気通 信事業者側の生産関数に関する先行研究の成果を活用することで固定電話サービス及び携帯 電話サービスの料金変化の消費者厚生に対するインパクトの測定を行う。 具体的には、Nakamura et al.(2006)で提案された分析フレームワークをベースとした需要分析 モデルも用いて各種弾力性の推計を行い、価格低下が及ぼす消費者厚生への影響を推計する とともに、先行研究の結果を活用してラムゼイ料金を導き、単独平均費用水準の料金を設定した 場合との厚生比較を実施した。ラムゼイ料金への移行は厚生上望ましいと考えられることが多い が、その場合は交差価格弾力性の情報を正しく反映することが必要であり、自己弾力性のみに基 づいて算出されたラムゼイ料金ではかえって厚生水準が悪化することが判明した。 The authors estimate welfare impact of calling price decline, using the micro data of households in the Tokyo Metropolitan area between 1997 and 2000. Following the approach suggested by Nakamura et al. (2006 ) , the authors propose a two-step seemingly unrelated regressions estimate for household telephone demand that explicitly considers subscription decision-making to obtain an unbiased estimation of elasticities. Based on such unbiased estimation, the authors then calculate the second-best Ramsey pricing and the first-best two part tariff, and find out that the information of cross-price elasticity is vital to derive welfare-improving price structure. March 8, 2007 情報通信政策研究プログラム † 本研究に対しては、2006 年度情報通信政策研究プログラム、および、科学研究費補助金(基盤(C) 課題番号 17530182)から助成を得ている。また、使用したデータについては総務省情報通信政策研究所の協力を得た。 ∗ 総務省情報通信政策研究所客員研究員、帝塚山大学経済学部助教授 [email protected] ∗∗ 総務省情報通信政策研究所客員研究員、九州大学大学院経済学研究院助教授 [email protected] 1.はじめに 産業に対する政府の介入を経済理論的観点から正当化するためには、当該介入が資源配分の調整 を通じて産業の効率性を改善するという効果を有する必要がある。しかしながら、産業全体の効率性を改 善し得たとしても、所得分配面での公正性を欠くものであれば社会厚生の観点から当該介入は容認し難 い場合もある。 わが国の電気通信市場においては 1985 年以降 20 年にわたり規制緩和、競争原理導入がすすめられ てきており、その成果は主として個別サービスについての価格低下トレンドや当該サービス市場規模の拡 大といった配分効率性の観点から評価・検証されてきた。しかしながら、一連の規制改革が所得分配面 にどういった影響を及ぼしてきたのかという点を分析した例は筆者らの知る限り存在しない。そのため、過 去 20 年の電気通信政策が通信市場の効率性改善には貢献したということが言えても、公平性の改善をも たらしたのか否かについて、あるいは、「電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利 益を保護し、もって電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進する」(電 気通信事業法第一条)ことの実現に有効に貢献しているのか否かについては確たる回答が与えられてい ない。現時点において、ユニバーサル・サービスを構成する固定電話等サービス以外の電気通信サービ スに対する規制は大幅に緩和されるに至っている。しかしながら、携帯電話や IP 電話を含む代替財が数 多く存在し、さらに供給サイドについては事業者間の合従連衡を通じて複数の通話メディアを提供するの が通常となっている複雑化した通話市場においては、固定電話料金に対する公的規制が携帯電話ユー ザーにとってどのようなインパクトを及ぼしてきたのか、などという問いに答えることは現時点では不可能で ある。また、今後、通信市場の更なる競争促進のためには、携帯電話をはじめとして新しい情報コミュニケ ーション手段を包含した形で通信市場を分析し、通信市場全体の構造を把握した上で、適切な制度デザ インを行う必要がある。 こうした目的を達成するためには、供給サイドの情報と共に需要サイドの情報も必要となる。料金規制 が経済的効率性を満たすためには、規模の経済性測定など供給側の費用構造についての分析が必要 とされるが、同時に限界費用価格形成が不可能な場合の次善料金の一つであるラムゼイ料金を例に取 れば、需要弾力性の情報が不可欠であり、需要サイドの分析も必要となる。特に、携帯電話通話市場と 固定電話通話市場を一つの市場と捉え、ラムゼイ料金を計算するには両通話メディアに対する需要がど のような関係にあるかの情報も不可欠となる。 こうした状況を踏まえ、本稿では研究蓄積が豊富な供給側の弾力性情報は既存研究の成果を活用し、 既存研究の成果を活用できる形で固定・携帯両通話サービスの需要分析を行うことで、わが国の競争政 策評価の一環として経済効率性を満たすラムゼイ料金を計測することとした。本稿のラムゼイ料金の計算 では、両サービスの自己価格弾力性のみに基づいたラムゼイ料金と、両サービスの交差価格弾力性の情 報も考慮したラムゼイ料金を計算して厚生比較を行うこととした。分析の結果、交差価格弾力性を考慮し たラムゼイ料金にすることにより、単独平均費用料金と比較して厚生が改善することが示された。 本稿の構成は以下の通りである。まず、次節において電気通信政策の評価という観点から通話需要分 析の重要性と先行研究のレヴューを行う。Nakamura et al.(2006)で提案された分析フレームワークをベー スとした需要分析モデルと実証分析の結果、さらには、価格低下が及ぼす消費者厚生への影響につい ては第三節と第四節で紹介する。第五節では、通信サービス生産関数の推定に係る先行研究の結果を 活用してラムゼイ料金の算出を行い、単独平均費用水準の料金を設定した場合との厚生比較を試みる。 -1- 第六節は全体のまとめと今後の課題に充てられる。 2.通話需要分析の政策的重要性と先行研究事例 2001 年に制定された「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成 13 年 6 月 29 日法律第 86 号) により、政府は「政策の評価の客観的かつ厳格な実施を推進しその結果の政策への適切な反映を図る」 (第一条)義務を負っている。同法第六条を受けて定められた「総務省政策評価基本計画」では、「電気 通信事業の健全な発達及び低廉なサービスの提供」に係る政策については事後の実績評価方式の対 象とすることが明記された。基本計画によれば、電気通信政策の評価にあたっては、必要性・効率性・有 効性・公平性・優先性という五つの観点1をできる限り定量的に把握し、いくつかの数値目標との比較を行 うと共に、指標のみによって測定することが困難である場合は、「参考となる指標を用いて当該政策の現 状や課題等を明らかにし、定性的な評価手法も交えて適切な評価を行う」こととされている。 平成 17 年度実績評価書においては、加入者系光ファイバ網集線点光化率、IPv6 対応サービス提供 事業者数、電気通信事業の市場規模、電気通信事業者数の推移、電気通信サービスの料金の低廉化 の状況といった定量指標が採用されている。さらに、2004 年度より、事前評価において、実施後の想定コ スト・便益といった影響を客観的に分析し、公表することにより、規制制定過程における客観性と透明性の 向上を目指す手法である規制影響分析(Regulatory Impact Analysis:RIA)が試行的に実施され、電気通 信政策の分野では、「電波法及び放送法の一部を改正する法律案に基づく間接出資規制の導入」、「特 定電子メールの送信の適正化等に関する法律に基づく表示義務等の適用範囲の拡大等」、および「工 事担任者資格者証の種類の見直し」が評価対象とされた。 しかしながら、現行の評価指標として採り上げられているような通信サービスに関する料金水準の低廉 化や市場規模の推移の情報だけからでは、市場成果というパイの全体がどの程度拡大したのかという効 率性の観点については検証できても、それがどのように切り分けられているのかという公平性の観点につ いて十分な分析を行うことができず、料金低廉化によるメリットが消費者に均等に及んでいるのかといった 所得分配面へのインパクトに関する問いに的確な回答を与えることができない。そのためには、個票デー タに基づいた需要分析を行い、世帯属性別に料金低廉化による厚生改善の大きさを比較するという作業 が必要である。そもそも、通信サービスの供給サイドに関する分析を行った先行研究例が数多いのに対 し、需要サイドに着目した分析は、恐らくはデータ収集上の理由から、その数が極めて限られている2。 また、需要分析は適切な競争政策を立案するためにも必要不可欠である。過去 20 年のわが国の電気 通信産業を巡る政策展開は「相次ぐ規制緩和」という言葉で特徴づけることができる。1985 年時点におい ては第一種電気通信事業者の新規参入を厳格に規定していた参入規制は、1997 年 11 月に需給調整条 項(過剰設備防止条項)を削除し、2004 年には過去 20 年の市場構造を規定していた事業区分そのもの を見直した結果、許可制から登録・届出制へと大幅な規制緩和が断行された。2003 年度以前の旧法下 における第一種電気通信事業者に対する料金規制についても同様の経路を辿ってきており、公正報酬 率規制に基づく料金認可の対象は年を追う毎に縮小され、認可基準自体も事業者の自由度を大幅に高 めたプライスキャップ規制に取って代わられた。現時点においては特定電気通信役務(電話、ISDN 等) に係る料金のみがプライスキャップ規制の対象であり、それ以外のサービス料金については届出あるい 1 2 「公平性」「優先性」の観点については、対象政策の特性に応じて選択的に考慮される。 Taylor(1980, 1994, 2002)は、通話需要関数に関する先行文献を包括的にレヴューしている。 -2- は完全自由となっている。 伝統的に自然独占産業として捉えられてきた電気通信産業においては、市場競争によるパレート最適 の達成が見込めないため、次善の効率性水準を達成する手段として参入規制と料金規制が適用されて きたが、電気通信技術の急速な発展による自然独占性の希薄化という要因が需要の高度化・多様化と軌 を一にした結果、こういった一連の規制緩和が要請されてきた。その一方で、ナショナル・ミニマムやユニ バーサル・サービスを安定的に確保することを通じて競争環境に十分に対処しきれない個別消費者の利 益を確保するという所得再分配政策上の観点から、基礎的なサービスとそれ以外の高度なサービス(ある いは付加的なサービス)の間では規制緩和のテンポを異にするという対応も観察される。 そのため、個別サービス間には規制水準の格差が永く存在しているが、当該サービスがそれぞれ「連 関財3」の関係にある場合、こういった規制格差は望ましくない結果を生む。実際、規制の緩い携帯電話 サービスと規制の厳しい固定電話サービスが「連関財」の関係にあれば、双方の市場に参入している事 業者と片方の市場のみで事業展開を行っている事業者の間では公正競争条件が保証されないため資源 配分に歪みが生じ、市場開放の本来目的が十分には達成されない4。「連関財」の関係にある市場をカバ ーする事業者の存在を前提として最適な(あるいは次善の)効率性を達成するためには、特定サービスに とどまらない通信市場全体の構造を把握した上で、需要分析によって導かれた両財間の交差価格弾力 性の情報を活用して、連関市場全体を対象に包括的な規制枠組みを構築することが必須である。 通話サービスの価格弾力性を計測した先行研究は、海外においてはかなり積極的に行われている。 海外の主な先行実証分析結果を表1に示すが、海外の先行実証研究で計測された価格弾力性の推計 結果は-0.013~-0.89 と非弾力的な値となっている。そして、所得弾力性についても Appelbe et al.(1990) の一部の推計において 1 を越えるものが観察された以外は概ね非弾力的な値となっている。全体的な特 徴としては、長距離通話の価格弾力性ほど大きくなる傾向が観察される。 海外の通話需要の先行実証研究については、80 年以前の研究に関しては Littlechild(1979)や Taylor (1980)でサーベイが行われており、それ以降の主な成果についても Taylor(1994, 2002)で包括的にサー ベイされている。その他、通常の通話需要関数を推計した分析以外にも、2契約目の加入需要を分析し た Duffy-Deno(2001)、通話回数と1通話あたりの通話時間を分析した Heitfield & Levy(2001)等がある。 海外の通話需要に関する先行研究が多数存在する一方で、我が国では、山崎ら(1993)、斯波・中妻 (1993)、三友・太田(1994)、河村(1996)、Okada & Hatta(1999)、河村ら(2000)、中村(2002)、中村・実 積(2006)等があるが、その数は少ない(表 2)。集計データによって計測された価格弾力性値は、米国等 の例で計測された値に比較していずれも高い計測結果となっている。 3 本稿では、代替(交差弾力性が正)・補完(交差弾力性が負)関係にあるような補償交差価格弾力性が 0 以外の値をとる 複数財の関係を「連関財」という用語を用いて表現している。 4 サービス間の内部相互補助を禁止することができればこうした状態は阻止できるが、情報の非対称性の存在等の問題が あるため経済理論的に問題のない措置を構築することは実務上困難であり、別会社化等の構造的措置によるしかない。し かし、持株会社により複数の事業会社が統合されている場合は、そういった構造的措置も意味を喪失する可能性が高い。 -3- 表1:海外の主な先行研究結果 文献 Rappoport & Taylor (1997)* データ 推計期間 需要量 1994.4 通話時間 -1994.5 アメリカ (家計の通話料金BILL) Munoz (1996) スペイン (パネルデータ) Appelbe et al. (1992) カナダ国内長距離通話 説明変数 推計方法 ヴァリエーション 価格弾力性 所得弾力性 価格,所得, 最小二乗法 InterLATA -0.44~-0.70 所得はカテゴ 世帯属性, (加入選択との InterLATA/InterState -0.42~-0.70 リカル変数 集中度など 2Step推計) Total InterLATA -0.35~-0.50 1985-1989 通話料収入/ 価格, 所得, 料金指数 地域属性 カナダ国内長距離通話 Larson et al. (1990) 米国9都市間トラヒック (3年間) Appelbe et al. (1988) カナダ国内長距離通話 -0.13 1979Q1 通話料収入/ 価格, 所得, AR1,分散 通常料金時間帯 -1988Q4 料金指数 市場規模など 不均一を考慮 の地域属性 したFixed & 割引料金時間帯 Random Effect Lang &Lundgren (1991) スウェーデンの1週間平均値 のトラヒックデータ (2週間) Appelbe et al. (1990) Fixed Effect Random Effect 1988 通話時間 価格(地域, 時間帯別) 分散不均一を 考慮した非線型 最小二乗法 通話時間 報告され ていない 報告され ていない -0.013 ~ -0.016 1975Q1 通話料収入/ 価格, 所得, AR1,分散 通常料金時間帯 -1983Q3 料金指数 市場規模など 不均一を考慮 の地域属性 したFixed & 割引料金時間帯 Random Effect 1983 -0.26 ~ -0.65 -0.40 ~ -0.83 0.46 価格, 所得, AR1過程に従う 人口, 発信地 二段階最小二 への通話量 乗法 (通話時間) -0.24 ~ -0.54 -0.45 ~ -0.89 -0.75 0.56 ~ 1.38 0.72 ~ 1.29 0.54 1977Q1 通話料収入/ 価格, 所得, AR1,分散 通常料金時間帯 -0.21 0.33 -1986Q4 料金指数 市場規模など 不均一を考慮 ~ -0.73 ~ 0.95 の地域属性 したFixed & 割引料金時間帯 -0.39 0.23 Random Effect ~ -0.75 ~ 0.79 カナダ・アメリカ長距離通話 1977Q1 通話料収入/ 価格, 所得, AR1,分散 通常料金時間帯 -0.43 0.12 -1986Q4 料金指数 市場規模など 不均一を考慮 ~ -0.49 ~ 0.74 の地域属性 したFixed & 割引料金時間帯 -0.45 0.17 Random Effect ~ -0.53 ~ 0.54 *:Rappoport & Taylorでは交差弾力性も推計されている。また、世帯属性も加味した弾力性の推計結果が報告されており、特定の相手に集中して通話する世帯ほど 高い自己価格弾力性が観察されるという結果を導いている。 表2:我が国の主な先行研究結果 文献 データ 推計期間 需要量 説明変数 推計方法 自己価格弾力性 交差弾力性 所得弾力性 中村・実積(2006) 関東1都6県の世帯へのアン ケートデータ 1997 -1999 支出関数を推計して 通話料金比率 AI需要体系による (補償)自己価格弾力性 (補償)交差弾力性 (支出弾力性) いるため通話支出 通話支出合計 通話支出関数をSUR NTT NTT-NCC NTT シェア(NTT, NCC, により同時推計 -0.88977 0.66289, 4.26440 1.04475 携帯) NCC NTT-携帯 NCC -4.07947 0.22688, 0.32680 0.71109 携帯 NCC-携帯 携帯 -0.18492 -0.18492, -0.28539 1.00023 中村(2004) 第一種電気通信事業者の トラヒックデータ 1998 -1999 支出関数を推計して 通話料金比率 AI需要体系による (補償)自己価格弾力性 (補償)交差弾力性 いるため通話支出シェ 通話支出合計 通話支出関数を3SLS 固定電話間 固固-固携 ア(固定電話間通話, により同時推計 -0.6926 -0.00552, -0.00367 固定携帯電話間通話, 固定携帯間 固固-携携 携帯電話間通話) -0.0294 1.80869, 0.69623 携帯電話間 携携-固携 -1.8692 0.03499, 0.06047 中村(2002) NTT, NCCのMA間通話データ 1996 を各MA発信の通話量指数, -1998 通話料金指数を作成して使 用 1996 -1998 NTT県間通話量指数 価格, 所得, Fixed Effect & 発信元加入数, Random Effect 着信元加入数 NCC県間通話量指数 価格, 所得, Fixed Effect & 発信元加入数, Random Effect 着信元加入数 -0.19165 ~ -0.65652 -0.21985 ~ -1.40249 NTT-NCC 0.247925 ~ 1.052676 NTT-NCC 0.360718 ~ 0.563118 0.264519 ~ 0.84617 0.621167 ~ 0.634743 河村・実積・安藤 関東1都6県の世帯へのアン (2000) ケートデータ 1998 -1999 支出関数を推計して 通話料金比率 AI需要体系による いるため通話支出 通話支出合計 通話支出関数をSUR シェア(NTT, NCC, により同時推計 携帯) (ここに掲載した推計 結果はNTT, NCC, 携帯 全てに加入している 世帯の推計結果) Okada and Hatta 家計調査データの電気通信 (1999) 支出額をトラヒックデータで 按分して使用 1992 -1996 支出関数を推計して いるため通話支出 シェア(固定, 携帯, 第3財) 価格比率 支出額計 人口 加入者数 対数線形の支出関数 を最尤法により 同時推計 河村(1996) 1989 -1994 1989 -1994 通話時間 価格, 所得, 加入数積 価格, 所得, 加入数積 Fixed Effect & Random Effect 加重最小二乗法, Censored Regression -1.6736 ~ -1.8119 -1.1643 ~ -1.1721 推計され ていない 推計され ていない 1.2947 ~ 2.9924 1.1905 ~ 1.3035 三友・太田(1994) NTT (関東圏MA間 OD表 Panel Data) 1990 通話時間 価格, 所得, 加入数積 価格, 所得, 加入数積 最小二乗法 -1.8469 0.1994 最小二乗法 -0.8769 推計され ていない 推計され ていない 斯波・中妻(1993) NTT・電電公社の時系列 1953 -1990 通話料金収入/通話 価格, 所得, 最小二乗法, 最尤法, 料金指数 (ラグ付き説明 コクラン・オーカット 変数) 山崎・今川・三友 NTT(関東・東北・東海・四国 (1993) のMA間データ) 1990 通話量(通話回数, 加入数等より加工) NTT (県別OD表 Panel Data) NCC (県別OD表 Panel Data) 通話時間 通話時間 ×MA間距離 価格 二段階最小二乗法 NTT -0.7303 ~ -0.7514 NCC -0.9824 ~ -0.9871 携帯 -1.3400 ~ -1.3683 固定 -1.405 携帯 -3.963 (補償)交差弾力性 固定-携帯 0.866 0.276 (支出弾力性) NTT 1.0549 ~ 1.0573 NCC 0.6014 ~ 0.7200 携帯 1.0041 ~ 1.0044 固定 0.588 携帯 0.67 0.1994 -1.0近傍 ~-0.2近傍 推計され ていない 0.55近傍 ~ 0.85近傍 -1.56 推計され ていない 推計され ていない (東京MA周辺) -4- (補償)交差弾力性 NTT-NCC 0.1013 ~ 0.494 NTT-携帯 0.5017 ~ 0.5290 NCC-携帯 1.3904 ~ 1.8923 (支出弾力性) 固定電話間 1.0198 固定携帯間 0.9790 携帯電話間 1.0312 ところで、殆どの先行研究は固定電話間通話に関する分析である。携帯電話による通話を含めた実証 研究例は、データの蓄積が進んでいなかったこともあり、Okada & Hatta(1999)、河村ら(2000)などがあ げられるのみである。Okada & Hatta(1999)では、家計調査(旧総務庁統計局)の集計データを用いて分 析をしている。家計調査データにおいて携帯電話と固定電話の支出が分離されたのは 2000 年以降であ ることから、家計調査の電気通信支出をトラヒックデータ(旧郵政省電気通信局)で按分することによりデ ータを作成している。推計モデルは、固定電話支出、携帯電話支出、及びその他財の三財モデルであり、 AI 需要体系の二次の項を省いた対数線形型モデルで支出関数を特定化し、最尤法で計測している。 Okada & Hatta(1999)では、固定電話による通話と携帯電話による通話の自己価格弾力性は、それぞれ -1.405、-3.963 と比較的高い値が計測されており、また、両通話は代替的であるとの推計結果を得ている。 河村ら(2000)では、関東地方の世帯向けアンケートデータを用いて、NTT(固定系)、NCC(固定系)、携 帯電話発信の三財モデルの AI 需要体系による通話支出関数を計測し、固定電話発信の通話と携帯電 話発信の通話の代替性が示される結果となっている。Okada & Hatta(1999)が用いた家計調査データは 基本料金を含む支出額であり純粋に比較はできないが、河村ら(2000)の推計結果も両通話需要が代替 的という点では整合的な結果となっている。 その他、携帯電話加入数を考慮した先行研究としては、携帯電話・PHS の加入の有無を加入電話の 加入需要関数に挿入して推計した実積ら(1998)や、地域科学的なアプローチで総通話量と固定電話・ 携帯電話・PHS の加入者数の関係等を分析した田北ら(1999)、韓国における固定電話加入と携帯電話 加入の関係を分析した Sung & Lee(2002)等がある。 先行研究においては、OD 表の各要素を独立したサンプルとして用いた分析が多い。三友・太田 (1994)で指摘されているように、OD 表の各要素を独立したサンプルとして価格弾力性を計測した場合に は、各地域間の距離が遠くになるに従って当該地域間の情報交流も減衰するため、距離の関数となって いる通話料金と当該地域間の通話量の関係を計測する通話需要関数の推計において、地域間距離が 通話量に与える影響をコントロールしきれない可能性がある。我が国の通話価格弾力性推計値が比較的 大きく出ている要因のひとつはこの点も影響していると考えられる。実際、発信 MA 毎の通話量指数・通 話料金指数を用いて推計された中村(2002)の価格弾力性推計値は、非弾力的な値となっている。 また、分析事例の多くは対数線形型の需要関数を想定している。対数線形型需要関数は分配率が一 定になるという性質を持つが、昨今の変動の激しい通話市場の代替・補完関係を計測するには、分配率 一定という制約はモデルの特定化の誤りを生じさせる可能性がある。 加えて、いずれの場合も、加入需要は所与とされてきており、推計値にバイアスが生じる可能性がある。 そのため、筆者らは、従前の研究においては所与とされてきた加入需要を明示的に考慮した推計モデル を構築し、サンプルセレクションバイアスを除去した弾力性値の推計を行い、一応の成果を得たところで ある(Nakamura et al., 2006)。しかしながら、そこで提案された分析フレームワークは、長距離系 NCC が 存在していた 1990 年代後半を分析対象として最適化されたものであり、長距離系と地域系の市場区分が 消失した今日の市場環境には必ずしも適合的ではない。そのため、本稿では、河村ら(2000)が採用した フレキシブルな AI 需要体系(Almost Ideal Demand System)による支出関数をベースとして Nakamura et al.(2006)において提案された分析フレームワークを市場の現状に合致すべく発展させ、政策的有意味 性及び操作容易性を改善した推計モデルを採用した(モデル式については次節で説明する)。 -5- 3.需要分析モデル 本研究では、固定電話サービスと携帯電話サービスおよびそれ以外の一般財の消費に関する家計の 選択問題を、携帯電話加入選択に関する意思決定を陽表的に考慮した AI 需要体系に基づいてモデル 化する。モデルの背景となる消費者行動に関しては図 1 に示すとおり、固定電話に加入済の世帯がまず 携帯電話サービスへの加入の有無を決定し、しかる後に、一般財を含む消費財・サービスへの支出額を 決定するという、シーケンシャルな手順に従うと仮定する。 Mobile Phone Subscription Choice Pre-assumed Fixed PhonePOTS Subscription Subscription patterns are determined. Mobile Phone Non-Subscription Fixed Phone Subscription Mobile Phone Subscription Fixed & Mobile Phone Subscription First Stage: Selection of Subscription Expenditure Func. estimation. Almost Ideal Demand System Second Stage: Budget Allocation 図1:消費者行動に関する仮定 推計作業に際しては、Heckman-Lee の 2 Step Estimation で推計を行う。2 ステップ推計を行う場合、本 来であれば、支出関数で想定する間接効用関数と、加入パターン選択の確率(間接)効用関数の形状は 同一のものを仮定しなければならないが、本稿では、それぞれ別の形状の関数形を採用する。もちろん、 AI 需要体系における間接効用関数は、加入パターン選択の確率(間接)効用関数としても採用可能であ る。しかしながら、AI 需要体系の間接効用関数を加入選択モデルに採用した場合、どの加入パターンに おいても、各世帯(消費者)が直面するそれぞれの通話メディアの価格が同一となるため、(コンディショナ ル変数である価格変数のパラメータは)推計不可能となる。このような点を考慮し、本節の加入パターン選 択の推計式においては、あらかじめ定めた通話メディア毎のウエイトで集計した集計通話価格に基づい て、加入パターン選択が行われると仮定し、AI 需要体系の間接効用関数とは異なる関数形を加入選択 モデルに採用して推計を行うこととした。 上記設定の下、各世帯は将来の通話需要による効用を想定し、まず、携帯電話サービスに加入するか 否かを決定する。世帯 i の選択は I i MOB = U i + - U i- ( U i + :世帯 i が新たに携帯電話に加入した場合の 効用水準、 U i- 世帯 i が携帯電話に加入しない場合の効用水準)の符号条件により決定される。つまり、 携帯電話サービスを利用するか否かの選択は次のとおりとなる。 I Pr(固定電話のみ加入) II Pr(固定電話と携帯電話に加入) -6- = Pr (I i MOB < 0 ) = Pr (I i MOB > 0 ) しかしながら、I 自体は観察することができず、実際に観察できるのは二値データのみである。従って、 それぞれの支持関数 I に関して、(1)式のような定式化を行い Probit モデルにより推計することになる。 (1)式における左辺 I iMOB は携帯電話サービスに加入した場合に1、しなかった場合に 0 をとる。(ただし、 Zij は世帯 i に固有の属性あるいは選択肢 j に固有の属性を表す変数(行列)、 ε は誤差項。) I iMOB = Z iα ′ + ε i ---(1) 世帯属性に関する変数等を明示した具体的な特定化は以下の通りである。 I iMOB = α10 + α11 × Arate + α12 × Dself + α13 × Family + α14 × Etotal + α15 × Dsu + α16 × Dremote + α17 × Sing _ m + α18 × Sing _ f ---(1)’ まず、Arate は通話料金指数の加重平均の差分である5。経済理論からは、当該変数の係数推計値が マイナスの値をとることが期待される。Dself は、当該世帯の世帯主が自営業を営む場合に 1、そうでない 場合に 0 を示すダミー変数である。Family は、家族構成員数、Etotal は可処分所得を示す。Dsu は当該 世帯に高校以上に所属する学生がいる場合に1、いない場合に 0 をとるダミー変数であり、Dremote は当 該世帯に遠隔地に居住する家族がいる場合に1、いない場合に 0 をとるダミー変数である。Sing_m 及び Sing_f は、単身世帯ダミーであり、前者が男性単身世帯、後者が女性単身世帯を表す。 支出関数については、Deaton and Muellbauer(1980)による AI 需要体系に基づいて下記のように特定 化する。(ただし、E:総支出額、Pi:各財の価格指数[i=1:固定電話, 2:一般財, 3:携帯電話]、X:世帯属 性変数行列) ln E ( P1 , P2 , P3 ; u ) = a0 + ∑ ai ln Pi + i ln P = a0 + ∑ ai ln Pi + i 1 bij ln Pi ln Pj + uc 0 P1c1 P2c2 P3c3 − δX ---(2) ∑ 2 i, j 1 ∑ bij ln Pi ln Pj 2 i, j ---(3) 価格指数集計関数((3)式)を前提として、シェパードのレンマを用いて上記支出関数((2)式)を変形 すると下記のシェア方程式が導かれる。 ⎛ E ⎞ S1 = a1 + b11 ln P1 + b12 ln P2 + b13 ln P3 + c1 ⎜ ln + δX ⎟ ⎠ ⎝ P 5 ---(4) 本節における通話価格変数は同一 MA 内の消費者は基本的に同一の価格に直面しているとして作成されている。AI 需 要体系における間接効用関数においては各通話メディアの価格が分離された形となっている。従って、固定電話のみに加 入している場合と固定電話と携帯電話の双方に加入した場合について、それぞれのケースで利用者が直面する各メディア の通話価格は同一となってしまう。プロビットモデルで加入選択モデルを推計する場合、通話価格は、選択肢固有のコン ディショナル変数として挿入するため、各選択肢における通話シェアにより加重平均した通話料金指数の差分をもって説 明変数として推計式に加えた。 -7- ⎛ E ⎞ S 2 = a 2 + b12 ln P1 + b22 ln P2 + b23 ln P3 + c 2 ⎜ ln + δX ⎟ ⎝ P ⎠ ⎛ E ⎞ S 3 = a3 + b13 ln P1 + b23 ln P2 + b33 ln P3 + c3 ⎜ ln + δX ⎟ ⎝ P ⎠ ---(5) ---(6) ところで、支出関数が満たすべき性質としては、①加法性(需要関数が予算制約を満たしていること)、 ②同次性(需要関数が消費支出と価格に関して 0 次同次であること)、③対称性(スルツキー行列が対称 行列であること)、④凹性(スルツキー行列が半負値定符号であること)などがあげられる。これらのうち、① ②③の性質については推計の際に予めパラメータ制約として課すことができる。③対称性( bij = b ji )につ いては、(1)式の係数構成にすでに織り込み済みであるが、今回の推計に際しては、推計式に加法性の 制約( ∑ ai = 1, ∑ibij = 0, ∑ ci = 0 )及び同次性の制約( ∑ bij = 0 )を加える。④凹性については、パラメ j [ ] ータ制約を線形制約として課すことができないため、推計後に cij : bij + ci c j ln( E P ) − S i δ ij + S i S j ( δ ij はクロネッカーデルタ δ ij =1 if i=j, 0 otherwise)が半負値定符号行列であるかを検証する。 上記、①②③のパラメータ制約を課したことにより、実際の推計では、式(3)(7)(8)に誤差項ν ij を加え た式により支出関数の推計を行うこととなる6。 P P1 ⎛ E ⎞ + b12 ln 2 + c1 ⎜ ln + δX ⎟ P3 P3 ⎠ ⎝ P P P ⎛ E ⎞ S 2 = a 2 + b12 ln 1 + b22 ln 2 + c 2 ⎜ ln + δX ⎟ P3 P3 ⎠ ⎝ P S1 = a1 + b11 ln ---(7) ---(8) 推計にあたっては、まず、携帯電話サービスの加入選択関数については、前述のとおり(1)式を Probit モデルにより推計する。続く支出関数の推計で unbiased 推定量を得るためには、バイアス調整項を挿入 する必要がある。結局、支出関数に係るバイアス調整項挿入済推定モデルは以下の連立方程式として表 現される(バイアス調整項の算出方法や記号の説明については Nakamura et al. [2006]を参照されたい)。 S1 = a1 + b11 ln P1 P E ϕ ( Zα ′) + b12 ln 2 + c1 ln + σ 14 + ω1 P3 P3 P Φ (Zα ′) ---(9) S2 = a2 + b12 ln P1 P E ϕ ( Zα ′) + b22 ln 2 + c2 ln + σ 15 + ω2 P3 P3 P Φ (Zα ′) ---(10) 6 AI 需要体系による支出関数の推計では、線形化のために価格指数 P として Stone の近似式(lnP=ΣSilnPi)がよく用いら れる。本稿でも価格指数 P は Stone の近似式を用いた。線形近似式を用いた場合、推計値がバイアスを持つことになり、価 格弾力性計算式をそれにあわせて変形する必要がある(LA-AIDS)。しかしながら、本稿では、制約式としての価格指数関 数を同時推計することにより、この問題を回避することとした。また、Buse(1994)等で指摘されるように、価格指数を Stone 近 似した場合、シェア関数の右辺にもシェアが入ることとなり、誤差項と直交する適切な操作変数を探すことはできない。この 点については、Eales and Unnevehr(1988)のように Stone 型の価格指数を作成する際にラグ付シェアを用いるなどの方法が あるが、携帯電話通話量の年々の伸びを考えれば、前期シェアで価格指数を近似することの不正確さは否めず、本稿の 推計では適当ではないと言える。そのため、本稿では当期シェアで価格指数を作成し推計を行った。この点についての推 計の改善は今後の課題である。 -8- ln P = a0 + ∑ ai ln Pi + i 1 ϕ ( Zα ′) bij ln Pi ln Pj + σ 16 + ω3 ∑ 2 i, j Φ (Zα ′) ---(11) 通常、支出関数などを推計するケースにおいては、価格変数の内生性を考慮して操作変数法などが 採られる。本稿の推計においても、上記モデルのパラメータを三段階最小二乗法により推計する7。AIDS モデルの推計に世帯属性変数を挿入して分析することも可能だが、今回の推計モデルには世帯属性変 数を入れない形で推計した。 なお、最終段階で推計する AI 需要体系の枠組みで構築される支出関数の間接効用関数については、 個人属性変数(X)を加えて次のように特定化される。 u = (ln (E P ) + δX ) c0 P1c1 P2c2 P3c3 ---(12) 上式は、支出関数(両対数)に線形の形で個人属性変数を加えた場合の特定化であるが、仮に上式 の間接効用関数を直接推計しようとした場合(間接効用関数の値は直接観察できないが)、属性変数の 係数を推定するためには非線形推定を行う必要が生じる。本節の推計プロセスでは、まず携帯電話の加 入選択関数、支出関数の順に推計を行うが、本来であれば、携帯電話加入選択モデルの特定化におい ても、消費者行動の背後に想定する間接効用関数の形状は、最終段階の通話支出関数における上式を 基本に考えるべきであろう。 4.実証分析 本研究で使用するデータは、郵政省郵政研究所(現総務省情報通信政策研究所)で行われた関東地 方(一都六県)在住世帯を対象としたアンケートデータ及び、電気通信事業法報告規則に基づいて第一 種電気通信事業者より総務省(旧郵政省)に提出されたトラヒックデータ(電気通信役務報告)である。い ずれも対象期間は 1997 年度から 2000 年度である。アンケート調査は、表 3 に示したとおり、4 年間ほぼ 同時期に関東一都六県の世帯に対して行われた。対象世帯数はおよそ 1560 万世帯で、人口比でおよ そ全国の 33.8%をカバーする。アンケートでは、電話サービスの利用動向や毎月の平均支出額の他、世 帯や世帯構成員の属性についての質問で構成される。主要な記述統計については表4のとおりである。 データの詳細に関しては、河村・実積・安藤(2000)及び中村・吉田(2001)を、トラヒックデータの詳細は 中村(2004)等を、また、携帯電話通話サービスを中心とした各年度の集計結果等については、大石 (1998)、実積・安藤(1999、2000)を参照されたい。 推計で必要となる通話料金については AIDS モデルと整合的な価格指数が存在しないため、地域・年 度別の推移律を満たす Fisher Ideal 指数により作成した(具体的な算出方法は中村(2001)を参照された い)。加えて、携帯電話の通話プラン毎の通話料金差異を反映させるために、作成した地域・年度別価格 指数を各世帯の契約プラン情報から修正した。一般財価格については、総務省統計局の県別 CPI、『家 7 操作変数としては、定数項、lnE/P、バイアス調整項、地域人口、地域の固定電話契約数、地域の携帯電話加入数、CPI を採用している。 -9- 計調査年報』「都道府県庁所在地別一世帯あたり年間の品目別支出金額、購入数量(全世帯)」の「電話 通話支出」及び「総消費支出額」、及び前述のトラヒックデータを用いて、ラスパイレス型指数により通信費 を除いた県別 CPI を作成した。 表3:アンケート調査の概要 アンケート 時期 対象地域 方法 サンプリング アンケート送付数 アンケート回収数 回収率 No.1 No.2 No.3 No.4 1998/2 1999/1 2000/1 2001/1 東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、茨城の一都六県 なお離島は含んでいない. 郵送方式 住民基本台帳より層化二段抽出 2,300 11,800 12,000 12,000 1,006 2,061 1,168* 1,033 43.7% 17.5% 9.73% 8.61% 注*:一定の回収数が得られなかったことから、2000 年度調査のみ調査会社のモニターによるア ンケートを追加的に実施した。. 表4:記述統計 アンケート アンケート回収数 通話支出額 平均値(円) 総通話支出額 標準偏差. 有効サンプル数 NTT に対する通話支出額 NCC に対する通話支出額 携帯電話に対する通話支出額 その他通信機器の保有率 PC ワープロ専用機 ファックス インターネット加入 その他属性変数 平均値 税引き前年収(千円) 標準偏差. 有効サンプル数 税引き後年収(千円) 標準偏差. 有効サンプル数 世帯員数 標準偏差. 有効サンプル数 世帯員の平均年齢 標準偏差. 有効サンプル数 遠隔地に住む世帯員数 標準偏差. 有効サンプル数 Total 5,367 No.1 (1998) 1,006 19.1% No.2 (1999) 2,060 39.1% No.3 (2000) 1,168 22.2% No.4 (2001) 1,033 19.6% 14,635.71 22,116.43 4,375 7,464.84 1,562.68 5,914.59 12,380.63 10,562.31 774 7,213.05 1,326.78 4,073.27 14,819.52 26,991.62 1949 7,542.43 1,914.70 5,349.93 14,816.12 18,166.26 893 7,798.67 1,225.46 6,534.32 16,251.09 20,980.28 759 7,170.80 1,322.20 8,286.30 55.4% 44.2% 48.1% 50.5% 37.2% 49.6% 35.9% 20.0% 56.8% 43.8% 51.2% 52.6% 57.5% 44.4% 47.9% 52.6% 67.4% 39.3% 54.0% 67.7% 8,448.18 7,531.94 4,946 6,349.73 4,979.83 4,689 2.92 1.43 5,267 38.79 15.11 5,151 0.23 0.67 3,913 9,040.04 10,184.87 865 6,672.39 6,178.81 795 3.15 1.49 1,006 39.92 14.86 945 0.14 0.47 880 8,502.92 7,042.92 1,957 6,424.09 4,741.13 1,863 2.93 1.38 2,060 37.29 14.55 2,029 0.17 0.60 1,953 8,059.54 5,947.02 1,126 6,094.46 4,518.94 1,082 2.81 1.45 1,168 39.70 15.28 1,157 1.57 0.95 130 8,266.35 7,331.07 998 6,224.50 4,799.28 949 2.79 1.40 1,033 39.67 15.99 1,020 0.22 0.71 950 - 10 - 表5は携帯電話加入選択に係るパラメータの推定結果、表6は支出関数に係るパラメータの推定結果 である。表6をみると、加入選択モデルとの相関を示す、σ14, σ15 の係数が統計的に有意な結果となって いる。このことから、加入需要を考慮に入れない支出関数単独の推計は、サンプルセレクションバイアスを 生じさせることが明らかとなった。なお、支出関数の凹性については、サンプル平均値で評価した結果、 本節の推計結果は凹性を満たしていた。 表5:携帯電話加入選択に係るパラメータ N 3722 変数 Constant Arate Dself Family Etotal Dsu Dremote Sing_m Sing_f α10 α11 α12 α13 α14 α15 α16 α17 α18 対数尤度 -2444.98 係数 標準誤差 t値 -0.3950 0.1949 -2.0270 -0.0026 0.0018 -1.4920 0.2557 0.0610 4.1950 0.1890 0.0202 9.3800 2.96E-07 6.45E-08 4.5880 0.3225 0.0665 4.8460 0.0933 0.0714 1.3060 0.5569 0.0790 7.0460 0.3325 0.0921 3.6110 p値 0.0427 0.1356 0.0000 0.0000 0.0000 0.0000 0.1914 0.0000 0.0003 表6:支出関数に係るパラメータ 変数 a0 a1 a2 a3 b11 b12 b13 b22 b23 b33 c1 c2 c3 σ14 σ15 σ16 係数 -0.070 0.357 0.161 0.482 -0.014 0.011 0.004 -0.024 0.013 -0.017 -0.049 -0.016 0.065 -0.053 0.010 0.051 標準誤差 0.025 0.027 0.011 t値 -2.838 13.225 14.104 p値 0.005 0.000 0.000 0.021 0.009 -0.677 1.141 0.498 0.254 0.007 -3.347 0.001 0.001 0.003 0.010 0.004 0.035 -13.535 23.340 -5.332 2.432 1.472 0.000 0.000 0.000 0.015 0.141 注:標準誤差等が空欄のものは他の推計値より二次的に計算したパラメータ これら推計結果を用いて消費支出弾力性、自己価格弾力性、交差価格弾力性を計算する8。各弾力性 8 価格指数に Stone の近似式を用いた場合における各弾力性の算出方法のバリエーションについては Green and Alston (1990, 1991), Buse(1994)などで議論されている。Green and Alston(1990, 1991)では、Stone 近似を用いた場合の弾力性 算出は、Deaton and Muellbauer(1980)の算出方法を修正した形で用いるべきだとされる。しかし、Buse(1994)では、Green and Alston(1990)の修正価格弾力性算出方法は Deaton and Muellbauer(1980)によるオリジナルの価格弾力性算出方法 に対して有効とは言えないという結果を実証分析から導いている。本稿では、河村ら(2000)と同様、Stone 近似の価格指数 を用いて価格指数関数も同時推計し、弾力性の計算の際には、推計されたパラメータによる価格指数関数から価格指数 - 11 - の計算はサンプル平均値で評価しており、結果を表7~9に示す。可処分所得弾力性の結果からは、固 定電話サービスと携帯電話サービスは下級財となっていることがわかる。また、価格弾力性推計の結果は、 各財はそれぞれ純代替財の関係にあることを示している。但し、「固定電話」の価格が低下した場合、純 代替財の関係にある「その他財」の消費量は所得効果によりかえって増加し、粗補完財の関係を示すこと は特徴的である。自己価格弾力性推計の結果は固定電話が必需財、携帯電話が非必需財であることを 示している。 表7:可処分所得弾力性 固定電話 携帯電話 その他財 -0.4289 -0.1735 1.0686 表8:非補償価格弾力性 固定電話 携帯電話 その他財 固定電話 -0.8031 1.5046 -0.0291 1.9096 -2.5108 0.0001 携帯電話 0.6191 1.1898 -1.0397 その他財 表9:補償価格弾力性 固定電話 携帯電話 その他財 固定電話 -0.8178 1.4986 0.0076 1.9037 -2.5132 0.0150 携帯電話 0.2108 1.0247 -0.0226 その他財 さらに、本推計結果を用いることで、固定料金や携帯料金の料金低下の影響を計測することが可能で ある。政策評価を行う場合、経済インパクトは社会厚生の変化により評価を行うのが適当である。ここでは、 通話価格の低下による等価変分を計算し、競争促進政策(通話価格低下)が経済にどの程度の影響を 与えたかを評価する。 表10に、各財・サービスの料金が現状より低下した場合の等価変分を計算した。なお、等価変分の値 は一世帯一月分である。表10を見ると、可処分所得に占めるシェアを反映してその他財の料金低下によ る厚生改善が最大となっているが、通話サービスに関してみると、固定電話の料金低下による厚生変化 が、携帯電話の料金変化による影響と比較して厚生に大きなインパクトがあることがわかる。なお、等価変 分は相対評価をせざるを得ないため、当該金額を以って政策が成功であったかどうかを確かめるために は、その政策の費用を明らかにせねばならない。こうした点も今後の研究課題である。 推計値を計算して Deaton and Muellbauer(1980)の弾力性算出式を用いるという方法をとった。 - 12 - 表10:通話料金低下の厚生インパクト 固定電話料金 携帯電話料金 その他財価格 100% 100% 100% 100% 100% 80% 100% 100% 60% 100% 80% 100% 100% 80% 80% 100% 80% 60% 100% 60% 100% 100% 60% 80% 100% 60% 60% 80% 100% 100% 80% 100% 80% 80% 100% 60% 80% 80% 100% 80% 80% 80% 80% 80% 60% 80% 60% 100% 80% 60% 80% 80% 60% 60% 60% 100% 100% 60% 100% 80% 60% 100% 60% 60% 80% 100% 60% 80% 80% 60% 80% 60% 60% 60% 100% 60% 60% 80% 60% 60% 60% 等価変分 0 104,888 282,460 2,145 107,096 284,602 5,613 110,819 288,539 5,384 110,973 289,505 7,069 112,604 290,872 9,940 115,580 293,806 12,144 118,585 298,266 13,231 119,470 298,634 15,332 121,483 300,278 変化% 0.0% 22.6% 60.6% 0.6% 23.2% 61.3% 1.5% 24.3% 62.4% 1.6% 24.5% 62.9% 2.1% 25.0% 63.4% 2.9% 25.9% 64.3% 3.7% 26.9% 65.7% 4.1% 27.2% 66.0% 4.7% 27.9% 66.7% 5.ラムゼイ料金算出と厚生比較 連関財の関係にある複数財を同時提供している事業者の場合、収支均等制約の元で社会厚生を最 大化する料金水準(ラムゼイ料金)は、i 財に係る料金水準を Pi 、限界費用を MCi 、i 財の自己価格弾力 性を ε i 、j 財の料金変化に対する i 財需要量の変化割合を意味する交差価格弾力性を ε ij とした場合、以 下の(13)式によって導くことができる(Train 1991)。 (P1 − MC1 ) (ε − ε ) = (P2 − MC2 ) (ε − ε ) 1 21 2 12 P1 P2 ---(13) 弾力性については前節で導出済みであるので、本節では固定電話サービスと携帯電話サービスの提 供に係る限界費用の推計を行う。 固定電話サービスの生産を実証分析の対象とした先行研究としては、末吉(1995)、浅井・中村(1997)、 浅井・根本(1998、1999、2001)、浅井(2001)、浅井・依田(2002)及び文(2003)などがある。これらのうち 本稿では、浅井・中村(1997)が導出した費用関数を利用する。浅井・中村は、1992 年度から 1995 年度に かけての NTT 地域通信事業部の財務データを用いて、トランスログ型に特定化した変動費用関数の推 - 13 - 計を行っており、固定電話サービスに係る限界費用は(14)式で与えられる。 ∂C C = [− 8.2729 + 2.4140 ln Y − 0.0453 ln PL + 0.0453 ln PM − 2.4175 ln K − 0.0097 D ] ∂Y Y ---(14) Y :電話の年間通話分数(発着信合計) PL :人件費/期末従業員数 PM :物件費/期末電話加入数 K :資本量 ただし、 C :費用 D :地域通信事業部ダミー(東京、関東、東海、関西について1) 一方、携帯電話サービスの生産に係る実証分析を行った先行研究としては、野口(2004, 2005)以外に みあたらない。野口(2005)の推定した一生産物三生産要素モデルによれば、携帯電話サービスの限界 費用は以下の(15)式で計算できる。 C ∂C = [0.4502 − 0.0033 ln pk + 0.0461 ln pm − 0.0428 ln pl + 0.0497 ln q ] ∂q q ただし、 pk :資本価格 pl :労働価格 pk :資本価格 C :総費用 ---(15) pm :原材料価格 q :通話トラヒック(発着合計) 本稿では、これら(14)式及び(15)式に、電気通信事業法報告規則に基づいて電気通信事業者から 総務省に提出されたトラヒックデータ(「トラヒックからみた我が国の通信利用状況[平成12年度]」)、NTT の公表データ(「インフォメーション NTT1998」)、NTT 東日本および NTT ドコモの 1998 年度有価証券報 告書、金融経済統計月報、および物価指数月報から一定の前提条件にしたがって算出された東京圏に おけるサービス提供に係るデータを代入して電話サービスの提供にかかる限界費用および平均費用の 推定を行った。得られた値は表11のとおりである。 表11:電話サービスの生産費用 (円/分) 限界費用 平均費用 固定電話サービス 携帯電話サービス 0.4244 6.0380 5.8721 15.4075 料金規制の目的が収支均衡制約のもとでの効率的なサービス提供であるとすれば、固定電話サービ スと携帯電話サービスを独立の事業として考えた場合の最適料金水準(単独平均費用料金)と、これら二 つのサービスを同じネットワークを用いて提供する同時生産サービスとして考えた場合の最適料金水準 (ラムゼイ料金)を得ることができる。なお、先に得た平均費用や限界費用の数値は、各サービスの単独生 産について推定された費用関数に基づくものであるが、ここでは、固定電話と携帯電話を同一の生産設 備を用いて同時生産した場合においても、その限界費用については個別生産の場合と同じであることを 仮定している。なお、ラムゼイ料金は具体的には(13)式を用いて導出される。 ところで、平均費用料金もラムゼイ料金も共に収支均衡制約の下での次善料金であり、二部料金を採 - 14 - 用することによる厚生改善の余地が残る。例えば、Hotelling (1938)は、費用逓減産業に限界費用料金形 成に従って生産行動を行わせ、費用逓減産業において不可避な損失発生分については所得再分配効 果が発生しないように贈与税を充てるべきであると主張している。ただし、Hotelling の提案では、サービス を利用しない者にも一定の負担を課すことになるため不公平感が大きい。そのため、通話料金は限界費 用に等しく設定するが、赤字補填分については月額固定の基本料金で回収するという二部料金の採用 が考えられる。本稿では、そういった基本料金付の限界費用料金の厚生インパクトについても検討する。 得られた最適料金を表12に示す。複数サービスの共同生産メカニズムを明示的に考慮したラムゼイ料 金においては、交差価格弾力性を考慮しない場合、固定電話サービスの必需性と携帯電話サービスの 非必需性を反映して、固定電話の通話料金が高騰している(ラムゼイ料金1)。しかしながら、交差価格弾 力性を加味した場合は、固定電話サービスと携帯電話サービスは純代替財の関係にあるため最適料金 水準が逆転する(ラムゼイ料金2)。さらに、価格弾力性がグローバルに一定値であると仮定し、料金変化 が需要量に及ぼす影響を明示的に考慮すれば、固定電話料金の変動に対する携帯電話利用量の変動 (固定電話料金に対する携帯電話サービスの交差弾力性)は、携帯電話料金の変動に対する固定電話 利用量の変動よりも小さいので、各サービス料金の需要総量に与える影響の差が縮小する。その結果、 最適料金の水準は単独平均費用の水準にさらに接近する(ラムゼイ料金3)。ちなみに、2006 年 8 月現在、 NTT ドコモ中央の FOMA タイプ M(自網内、営業区域内の携帯⇔携帯、携帯⇒固定)の通話料金は 14 円/分。NTT 東日本の固定⇔固定通話料金が約 3 円/分、固定⇒NTT ドコモが 17.5 円/分である。IP 電話 の進展等による需給両側面の構造変化のため限定的な評価となるが、これらの料金は今回推計された 最適料金水準とほぼ同水準といえるかもしれない。 料金水準の変更による厚生変化は表13として与えられる。自己弾力性のみを考慮したラムゼイ料金で はかえって厚生水準が悪化することがわかる。 表12:電話サービスの最適料金水準 (円/分) 固定電話サービス 携帯電話サービス 5.872 15.407 単独平均費用料金 15.354 8.833 ラムゼイ料金1 10.558 12.158 ラムゼイ料金2 7.293 11.931 ラムゼイ料金3 0.424 6.038 限界費用料金 (円/分) 1,911.026 9,340.826 w/基本料金 (円/月) 注1:ラムゼイ料金1は自己弾力性のみを考慮した料金、ラムゼイ料金2および3 は自己弾力性と交差弾力性をともに考慮している。 注2:ラムゼイ料金1および2は総需要量を現状維持とした仮定の下で算出。ラム ゼイ料金3は弾力性一定の仮定の下で価格変化による総需要量変化を考慮。 表13:ラムゼイ料金等による厚生改善 ラムゼイ料金1 ラムゼイ料金2 ラムゼイ料金3 限界費用料金 等価変分 -435.766 1,833.457 10,861.987 46,948.054 - 15 - 対所得変化率 -0.10% 0.41% 2.44% 10.57% 6.まとめ 本稿では、Nakamura et al.(2006)で提案された分析フレームワークをベースとした需要分析モデルを 用いて通話需要分析を行い価格低下が及ぼす消費者厚生への影響を推計した。また、先行研究の結果 を活用してラムゼイ料金を導き、単独平均費用水準の料金を設定した場合との厚生比較を実施し、ラム ゼイ料金の運用においては交差価格弾力性の考慮が重要であることを定量的に示した。 1987 年にサービス提供が開始されて以来、当初は一部のユーザーのための贅沢サービスとして捉え られてきた携帯電話サービスは、競争激化による料金低廉化と IT の進歩によるサービス改善に支えられ 順調に利用者数を伸ばし、2000 年には固定電話加入者数を超えるまでになった。今日では携帯電話サ ービスはもはや誰もが手放すことができない必需性の高いサービスであり、固定電話サービスとの差をあ まり気にしないで利用することのできる代替サービスとして考えられるに至っている。実際、固定電話を利 用することなく、携帯電話のみを利用して生活している者も学生層を中心に存在しているものとみられる。 固定電話と携帯電話の利用者数が逆転した時期を対象とした今回の計量分析結果では、携帯電話の必 需性については肯定的な結果を得ることができなかったが、固定電話サービスとの代替性については明 確に示され、我々の直感を一部裏付ける結果が得られた。 出典:総務省(2006 p.107) 図2 固定通信と移動通信の加入者数の推移 他方、生産サイドに目を転じると、現在、通信ネットワークの IP 化が急速に進展しつつあり、あらゆる通 信サービスが統合された IP 網のブロードバンドサービスの一部として実現されようとしている。その結果、 従来は別個のサービスとして提供されてきた固定電話と携帯電話が FMC(Fixed Mobile Convergence)の 名の下に統合的なサービスとして提供される例がでてきている(図3)。固定電話と携帯電話が一つのネッ トワークにより同時生産される複数生産物として提供されるようになれば、規模の経済性に加えて範囲の 経済性が発揮されることが期待できるため、本稿で算出した次善料金体系等が社会的厚生にもたらす貢 献度合いはさらに大きなものになる。 - 16 - BT: BT: 「BT 「BT Fusion」 Fusion」 KT: KT: 「OnePhone」 「OnePhone」 (2005年6月提供開始、申込数:約2万5,000人) (2005年6月提供開始、申込数:約2万5,000人) (2004年7月提供開始、ユーザ数:約15万人) (2004年7月提供開始、ユーザ数:約15万人) ■ ■ 携帯電話事業者ボーダフォンのネットワークを活用し(M 携帯電話事業者ボーダフォンのネットワークを活用し(M VNO)、BTのサービスとして提供。 VNO)、BTのサービスとして提供。 ■ ■ KTフリーテル(KTの移動体子会社)との提携により提供。 KTフリーテル(KTの移動体子会社)との提携により提供。 ■ ■ 1つの端末に固定電話と携帯電話の機能があるが、それ 1つの端末に固定電話と携帯電話の機能があるが、それ ぞれにつき別の電話番号(固定・携帯の2つの電話番号)を ぞれにつき別の電話番号(固定・携帯の2つの電話番号)を 持つ。 持つ。 ■ ■ 1つの端末に固定電話と携帯電話の機能があり、電話番 1つの端末に固定電話と携帯電話の機能があり、電話番 号も1つ(携帯電話番号を使用)。 号も1つ(携帯電話番号を使用)。 ■ ■ 固定電話機能と携帯電話機能はエリアに応じて自動的に 固定電話機能と携帯電話機能はエリアに応じて自動的に 切り替わり、屋内外での途切れのない通話が可能。 切り替わり、屋内外での途切れのない通話が可能。 ■ ■ 固定電話機能と携帯電話機能は手動による切替が必要。 固定電話機能と携帯電話機能は手動による切替が必要。 ■ ■ 屋内からの固定電話としての発信には固定電話の通話料、 屋内からの固定電話としての発信には固定電話の通話料、 屋内外からの携帯電話としての発信には携帯電話の通話 屋内外からの携帯電話としての発信には携帯電話の通話 料が適用される。 料が適用される。 ■ ■ 屋内からの発信には固定電話の通話料が適用される。 屋内からの発信には固定電話の通話料が適用される。 ■ ■ 着信については、屋内外を問わず、携帯電話の通話料が 着信については、屋内外を問わず、携帯電話の通話料が 発信者に課金される。 発信者に課金される。 BTの 固定電話網 ■ ■ 着信についても、固定電話番号への着信は固定電話料金、 着信についても、固定電話番号への着信は固定電話料金、 携帯電話番号による着信は携帯電話料金が発信者に適用 携帯電話番号による着信は携帯電話料金が発信者に適用 される。 される。 KTの 固定電話網 BTの 携帯電話番号で着信 BTの IP網 ブロードバンド回線 Bluetooth 固定電話番号で着信 KTの 固定電話回線 AP AP 自動的に切り 替わり、通話し ながらでも途切 れない 端末の位置情報 等の受渡し GSM Bluetooth 号 番 話 電 信 帯 携 で着 手動による切替 が必要 CDMA2000 携帯電話番号で着信 ボーダフォンの移動体網 (BTがMVNOとして運営) KTフリーテルの移動体網 携帯電話番号で着信 出典:総務省資料 図3 FMC サービスの例 最後に本稿において残された課題を挙げる。もちろん、携帯電話と固定電話の普及率を考えれば、今 回の分析対象がわが国の平均的な世帯像を捉えている可能性は高い。携帯電話のみを利用している世 帯や、固定電話のみを利用している世帯についても推計作業を行えば、学生や、単身世帯、高齢者世 帯などの非平均的世帯を対象とした厚生分析が可能になり、今回の分析と併せればわが国全体の姿をよ り的確に把握することができる。そのためには、今回利用したアンケートデータをさらに精査するとともに、 新たな調査を実施する必要があるかもしれない。他方、費用の推計に関しては、固定電話と携帯電話の 複数生産構造を明示的に考慮した費用関数の推計が課題である。規模の経済と範囲の経済を費用水準 に反映させることができれば、料金政策として追求すべき最適水準が明らかになるにとどまらず、通信産 業の最適構造に関する「産業政策」的議論のための基礎的資料を提供することができる。 - 17 - 参考文献 Appelbe, T.W., Snihur, N.A., Dineen, C., Farnes, D. and Giordano, R.(1988). Point-to-Point Modeling: An Application to Canada-Canada and Canada-United States Long Distance Calling. Information Economics and Policy, 3(4), 311-331. Appelbe, T.W., Dineen, C.R., Solvason, D.L. and Hsiao, C.(1990). Econometric Modeling of Canadian Long Distance Calling: A Comparison of Aggregate Time Series versus Point-to-Point Panel Data Approaches, MRG Working Paper, No. 9004, University of Southern California, California. Appelbe, T.W., Dineen, C.R., Solvason, D.L. and Hsiao, C.(1992). Econometric Modeling of Canadian Long Distance Calling: A Comparison of Aggregate Time Series versus Point-to-Point Panel Data Approaches. Empirical Economics, 17, 125-140. 浅井澄子(2001)「地域通信事業における規模の経済性と範囲の経済性」『岐阜経済大学論集』, 35(1), 125-136. 浅井澄子・依田高典(2002)「地域電気通信サービスの費用格差」『公益事業研究』54(3), 1-6. 浅井澄子・中村清(1997)「地域通信事業の費用構造分析」『公益事業研究』, 48(3), 31-40. 浅井澄子・根本二郎(2001)「NTT 地域通信事業の生産性と技術進歩」『日本経済研究』, 43, 1-17. 浅井澄子・根本二郎(1999)「地域通信事業の効率性の計測」『公益事業研究』, 50(3), 1-10. 浅井澄子・根本二郎(1998)「地域通信事業の自然独占性の検証」『日本経済研究』, 37, 1-18. 文東洙(2003)「NTT 地域事業部の配分効率性とトービンの q の分析」『六甲台論集. 経済学編』, 50(3), 68-86. Buse, A.(1994). Evaluating the linearized almost ideal demand system. American Journal of Agricultural Economics, 76(4), 781-793. Deaton, A. and Muellbauer, J.(1980). Economics and Consumer Behavior. New York, New York, Cambridge University Press. Duffy-Deno, K.T. ( 2001 ) Demand for additional telephone lines: an empirical note. Information Economics and Policy, 13(3), 283-299. Eales, J.S. and Unnevehr, L.J.(1988). Demand for Beef and Chicken Products: Separability and Structural Change. American Journal of Agricultural Economics, 70(3), 521-532. Green, R. and Alston, J.M.(1990). Elasticities in AIDS models. American Journal of Agricultural Economics, 72(2), 442-445. Green, R. and Alston, J.M.(1991). Elasticities in AIDS models: A clarification and extension. American Journal of Agricultural Economics, 73(3), 874-875. Heitfield, E. and Levy, A. ( 2001 ) . Parametric, semi-parametric and non-parametric models of telecommunications demand An investigation of residential calling patterns. Information Economics and Policy, 13(3), 311-329. Hotelling, H. (1938) The General Welfare in Relation to Problems of Taxation and of Railway and Utility Rates. Econometrica, 6(3), 242-269. 実積寿也・安藤正信(1999) 「移動体通信の普及動向」『郵政研究所月報』130, 60-73. 実積寿也・安藤正信(2000) 「移動体通信の普及動向」『郵政研究所月報』139, 4-20. - 18 - 実積寿也・大石昭夫・高谷徹(1998) 「通話料金指数の作成」『郵政研究所月報』116, 23-39. 河村真(1996) 「電気通信産業における規制緩和の経緯」『日本経済研究』31, 248-273. 河村真・実積寿也・安藤正信(2000)「電話サービスの支出弾力性と価格弾力性の計測」郵政研究所ディ スカッションペーパー No.2000-04. Landes, W.M. and Posner, R.A.(1981) Market Power in Antitrust Cases. Harvard Law Review, March, 94 (5), 937-996. Lang, H. and Lundgren, S.(1991). Price Elasticities for Residential Demand for Telephone Calling Time: An Estimate on Swedish Data. Economics Letters, 35(1), 85-88. Larson, A.C., Lehman, D.E. and Weisman, D.L.(1990). A General Theory of Point-to-Point Long Distance Demand. In A. de Fontenay, M.H. Shugard, and D.S. Sibley(Eds.), Telecommunications Demand Modeling: An Integrated View(pp.299-318)., Amsterdam, Elsevier Science Publishers B.V. Littlechild, S.C.(1979). Elements of Telecommunications Economics. Peter Pergrinus Ltd., London. 三友仁志・太田耕史郎(1994)「通話需要関数の推定と最適料金体系の数量的分析-需要の外部性の 存在に依拠して-」『地域学研究』 22(1), 99-115. Munoz, T.G.(1996). Demand for National Telephone Traffic in Spain from 1985-1989: An Econometric Study Using Provincial Panel Data. Information Economics and Policy, 8(1), 51-73. 中村彰宏(2001)「近年の通話需要の動向~県別料金指数・県別通話量指数の計測~」『郵政研究所月 報』150, 34-49. 中村彰宏(2002)「加入電話間通話の通話需要分析」『郵政研究所月報』163, 116-135. 中村彰宏(2004)「携帯電話と固定電話の価格弾力性の計測」『平成 15 年度情報通信学会年報』 3-14. 中村彰宏・実積寿也(2006)「通話需要分析と政策的インプリケーション:AI 需要体系によるアプローチ」 『情報通信学会誌』, 23(3), 77-86. Nakamura, A., Jitsuzumi, T., and Kawamura, M.(2006) Impact of Declining Telephone Calling Rates on Households in the Tokyo Metropolitan Area. Proceedings of the ITS 2006 - 16th Biennial Conference. 中村彰宏・吉田誠(2001)「移動体通信の普及動向」『郵政研究所月報』156, 4-17. 野口正人(2005)「携帯電話産業における規模の経済の計測」InfoCom REVIEW, 36, 30-38. 野口正人(2004)「携帯電話事業における規模及び範囲の経済性の計測とその政策的含意」InfoCom REVIEW, 34, 77-86. 大石明夫(1998)「移動体通信の普及動向と通話支出」『郵政研究所月報』116, 40-52. Okada, Y. and Hatta, K.(1999). The Interdependent Telecommunications Demand and Efficient Price Structure, Journal or the Japanese and International Economies, 13, 311-335. Rappoport, P.N. and Taylor, L.D.(1997). Toll Price Elasticities Estimated from a Sample of U.S. Residential Telephone Bills, Information Economics and Policy, 9(1), 51-70. 斯波恒正・中妻照雄(1993)「電気通信需要の計量経済学的分析」『郵政研究レヴュー』4, 214-243. 総務省(2006)『平成18年 情報通信に関する現状報告』 (http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/whitepaper/ja/h18/pdf/index.html) 末吉俊幸(1995)「DEA に基づく限界費用価格形成 : NTT 電話基本料金に関する一考察」 『シンポジウ - 19 - ム』, 34, 24-28. Sung, N., and Lee, YH. Substitution between Mobile and Fixed Telephones in Korea. Review of Industrial Organization, 20(4), 367-374. 田北俊昭・宮田拓司・高谷徹(1999)「移動電話・公衆電話を考慮した地域間通話需要分析モデル」『応 用地域学研究』4 Taylor, L.D.(1980) Telecommunications Demands: A Survey and Critique, Cambridge, Mass. Ballinger Publishing Campany. Taylor, L.D.(1994). Telecommunications Demand in Theory and Practice. Kluwer Academic Publishers. Taylor, L.D.(2002). Customer Demand Analysis. In Cave, M.E., S.K, Majumdar, and I. Vogelsang(eds.) Handbook of Telecommunications Economics, Volume 1, Structure, Regulations and Competition. North-Holland. Train, K.E.(1991) Optimal Regulation: The Economic Theory of Natural Monopoly. Cambridge, MA: The MIT press. 山崎健・今川拓郎・三友仁志(1993)「日本における通話構造の定量的分析―通話トラヒックデータに依 拠して―」『地域学研究』23(1), 109-130. - 20 -
© Copyright 2026 Paperzz