あなたのエステティック - 公益財団法人 日本エステティック研究財団

第8回エステティック学術会議 抄録集
あなたのエステティック
平成26年9月8日(月) 東京ビッグサイト 会議棟
主 催 公益財団法人日本エステティック研究財団
後 援 厚生労働省
協 力
全国理容生活衛生同業組合連合会
全日本美容業生活衛生同業組合連合会
一般社団法人日本エステティック協会
一般社団法人日本エステティック業協会
ご あ いさ つ
第8回 エステティック学術会議
会頭
第8回エステティック学術会議を開催するにあたり、
ご参加いただいた皆さま、
また開催にご協力いた
だいた関係者の皆さまに厚く御礼申し上げます。
近年、エステティックの国民生活に与える影響が増大し、消費者の清潔、快適さに対する意識と、安全・
安心への要求は大きく高まってきており、エステティック業務の適正化が急務となっております。
エステティックの将来を考えるとき、衛生・消毒に対する知識を高め、安全かつ衛生的な技術でサービス
を提供することが、お客さまの信頼を生み、満足度を高めます。
しかも、
日進月歩のサービス提供が求め
られるエステティック分野では、公衆衛生を確保しつつ、国民の皆さまの美と健康を創造する多角的な
提案が継続的に行われなければなりません。
今回、
「あなたのエステティック」と題して、必要な衛生知識、技術、店づくりなど顧客満足度を高める
手法について紹介し、エステティックの魅力をアピールすることといたしました。
また、初の試みとして、美と健康ビジネスの総合展示会「ダイエット&ビューティーフェア2014」とコラボ
レートし、最新エステティック関連機器や粧材、健康プログラムなど専門性の高い情報にも触れられる
機会を用意しました。今回の受講をとおして、皆さまがそれぞれの立場において、エステティックの発展の
ためご活用いただければ幸いです。
本会議は、公益財団法人日本エステティック研究財団が、公衆衛生の向上と消費者利益の保護を
目指し、エステティックの役割や最新の知識、技術動向等に関する発表を行うもので、各分野からの講演
をとおして衛生管理の重要性を再確認するとともに、お客さまに求められるエステティックの方向性を
探ります。皆さまにとって実りある機会になりますことを祈念しごあいさつとします。
【基調講演】
エステティックの健康被害と衛生管理の実態
平成25年度厚生労働科学研究費補助金 研究成果
関東 裕美 公益財団法人日本エステティック研究財団理事長(医学博士)
エステティックサロンにおける衛生環境および技術者の手指衛生に関する法的規制はありませんが、
これまでに顧客の傷口を介して感染が起きた事例も報告されている事から、直接顧客の肌に触れる器具
類や手指衛生には十分な注意が必要です。平成25年度は、エステティックサロンの衛生環境実態調査、
施術前後の技術者の手指細菌検査、サロンの衛生管理状況に関するアンケート調査を行いました。
その結果、すぐに健康被害につながる細菌類の検出はありませんでしたが、施設の環境調査、培養
検査により種々の細菌類が確認され、
さらに施設内伝播があることが分かりました。顧客の皮膚に直接
触れ、細菌伝播の可能性が高い技術者の手指の細菌培養検査では、個人による分離培養菌数の差が
あること、手洗い消毒後に菌数が増えた例や、施術直後での菌数の増加があることも確認できました。
施術者は顧客との接触により菌を媒介伝播する状況にあることをそれぞれが認識して、施術環境や
手洗い方法の改善をすることが求められます。安全な施術を提供するサロンであるためには衛生管理
対策の強化を図ること、具体的に注意すべき手技や方法などをお話したいと思います。
略歴
1980年
東邦大学医学部卒業
86年
東京共済病院医長
88年
東邦大学医学部助手
95年
日産厚生会玉川病院 部長
97年
東邦大学医学部皮膚科学
第一講座助手
2000年
米国Cincinnati大学皮膚科学教室
留学(リサーチフェロー)
03年
東邦大学医学部皮膚科学
第一講座助手
05年
同講師 07年 同准教授
12年
東邦大学医療センター大森病院・
スキンヘルスセンター長兼任
臨床教授 資格:日本皮膚科学会専門医、産業医、
日本美容皮膚科学会評議員、
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会評議員、
日本香粧品学会評議員
公益財団法人日本エステティック研究財団理事長、公益社団法人日本毛髪科学協会理事
専門領域:皮膚接触アレルギー
【芝山みよか記念 教育講演】
手指衛生は何のため、誰のために?
小林 寅喆 東邦大学看護学部 感染制御学研究室教授
近年、
インフルエンザやノロウイルスによる感染性腸炎などさまざまな感染症の流行により、医療関係
者に限らず一般市民への手指衛生が身近になってきた。これを裏付ける一つの根拠として、
ビルの入口
やスポーツジムなどの公共の場にも手指消毒薬が設置され幅広く利用されるようになった。
本来、消毒薬を用いた手指衛生(衛生的手洗い)
は病原体の感染経路の一つである接触感染経路の
遮断への有効な手段である。
しかし、病原体がほとんど存在しない環境や抵抗力が弱っているヒトへの
感染予防などを除いては、石けんを用いた日常的手洗いで十分な場合が多い。その反面、消毒薬の種類や
使用法によっては、十分な手指衛生効果が得られないこともあり、正しい知識と適切な使用が必要である。
一方、
日常生活に支障をきたさない程度の手荒れやアレルギー性皮膚炎、傷口を覆っているばんそうこう
などがある場合、手指に付着している細菌数は多く、黄色ブドウ球菌などの食中毒の原因となる病原体が
存在することもまれではない。また、爪の下にはブドウ球菌、腸内細菌、
カンジダ菌など多数の細菌類が
生息していることが知られている。特に、付け爪やアクリルジェルなどはこれら細菌の発育を助長し、
なか
にはグリーンネイルなどの細菌汚染による色素沈着が認められている。さらに医療の現場では、付け爪を
した医療従事者が新生児集中治療室において緑膿菌を原因とした集団感染に関与したとの疫学調査も
あり、爪が感染の危険性を増大させるという科学的根拠が示されている。
すなわち、人にとって異物は細菌によって汚染しやすい環境を作り、手指がそのリザーバーとなること
から注意が必要である。また、健常な人および健常な環境における手指衛生(手洗い)
と手荒れや異物
着用または感染症の流行期における手指衛生(衛生的手洗い)はその目的および手法が異なり、状況
に応じた対応が望まれる。
本講演では、
どのような場所
(部位)
に病原体が分布し、
どのようなタイミングで適切な手指衛生が求められる
のか具体的事例について述べるとともに、手洗いは何のため、誰のためにするのかを考える機会としたい。
略歴
1962年東京都生まれ。北里大学衛生科学学院卒業。東邦大学医学部微生物学教室。保健学
博士(北里大学)。東海大学医学部非常勤講師、国立国際医療センター研究員、三菱化学メディ
エンス感染症検査部長を経て、2008年1月東邦大学医学部看護学科准教授、大学院医学研究科
准教授、2009年4月から同大学,
大学院教授。2013年4月河南科技大学(中国河南省)兼任教授、
現在に至る。
【特別講演】
お客様の支持を受けるエステティック
西坂 才子
株式会社スリムビューティハウス代表取締役
財団法人自由アジア協会理事
スリムビューティハウスは、鍼灸治療院からスタートし、東洋医学を基本とした体の中から健康になると
いうダイエット方法を30年以上提供し続けているエステティックサロンです。現在、全国に71店舗
(内54店舗
エステティックサロン認証取得。17店舗取得申請中)、海外に2店舗を展開しております。日本のエステ
ティック業界は、既に成熟期を迎えています。そのような背景の中、社会から必要とされる企業である為には、
お客様に対して誠実でなくてはなりません。私達は常に、
お客様に対する「3つの安心」を心がけております。
① 健全な経営 エステティックは、お客様から前受金をお預かりして継続的役務を提供いたしますので、
経営の透明性と安全な経営が最も大切です。例えば経営困難に陥った場合でも、
お客様からお預かりした
お金は全額返金出来るように保全しておくべきなのです。それはお客様とのお約束の原点であると考えます。
② 確かなデータ エステティックには国家資格制度がありません。そのため、
お客様やスタッフからの信頼を
得る為には、科学的なデータで実証することが必須だと考えております。創業以来、数々の学会において積
極的に発表を続け、独自に開発した東洋医学をベースとした美容法は世界からも注目を集めております。
③ 社会貢献 私達のようなサービス業にとって社会貢献はとても重要です。社会から必要とされる企業を
めざし活動を続け、2012年には日本赤十字社から表彰状を頂きました。今後も業界全体を牽引していくこ
とを使命と考え、積極的に取り組んでまいります。
どの業界においても成功する秘訣は、
オリジナリティーをいかに発揮できるかということだと思います。私
たちにとって、
「3つの安心」は、企業としての基本であり、
スリムビューティハウスオリジナルブランドの証です。
今回は理容業界の方々が多くご参加されていると伺いました。女性客のマーケットは既に過当競争と
なっている中、男性客を多く抱える理容業界は、独自の強みを生かしたサービスに力を入れることで、
市場を大きく開拓できるのではないかと思います。
グローバルに活躍するビジネスマンは、外見も重要視されています。業界や性別の枠を超え、美容のニーズ
は時代とともに進化し多様化しています。常にニーズに応える為の努力と工夫を続け、
オリジナルのブランド
を確立していくことが、
お客様から支持をされる企業であり続けるための条件なのではないでしょうか。
略歴
青山学院大学卒業後、鍼灸師の資格を取得し、鍼灸治療院を開設。
その後、東洋医学を基本としたオリエンタルエステティックサロン スリムビューティハウスを創業。
【特別講演】
不可能へのトライ
舞の海 秀平 元力士・大相撲解説者
子供の頃から相撲一筋に打ち込こんでいた私は、大学4年の夏に高校の教員採用試験に合格して就職
が決まっていたのですが、卒業まで僅か2ヶ月という時に大相撲入りを決意します。
実は卒業間近の1月に相撲部の後輩が亡くなりました。昼寝中の突然の死です。お葬式でお父さんが
「せめて生きていてさえくれたらな」とおっしゃった言葉が耳から離れず、何かに揺り起こされるように、
今まで考えたことも無かったような様々な事を考え始めました。
それまで、
当たり前のように80年も90年も生きるものだと思っていました。
しかし人間というのはいつ死ぬ
かわからない。自分もいつ死ぬかわからない。
しかも人生は一度しかありません。亡くなった後輩は20歳
でした。
これから先、色々やりたいこともあったでしょう。
しかし、短い人生はもう終わってしまった。それに比べて
自分は健康で生きている。生きているだけで素晴らしい、
ありがたい、
という気持ちが沸々と湧いてきました。
そして自分が一番やりたいことは何だろうと考えた時、今まで積み重ねてきたこの相撲をさらに極めたい。
そのためにはどうしたらいいのかと考えた末、大相撲界に入る決断をしました。
ところが、思わぬところでの挫折。大相撲の世界に入るためには身長が173センチなければなりません。
私の身長は169センチで4センチ足りませんでした。振り返ると、新弟子検査に一度落ちた時に、
そこでどう
思うかが大切だったかと感じます。
「身長が足りないと相撲界に入れない」と思ってしまうと、
たぶんそれで
終わっていたと思います。当時(今でも)私の考えは、相撲を取る事にどうして身長が関係あるのか。身長が
低くても相撲は取れる。それを何とか証明したい。
しかし、規定をクリアしないと証明できません。そこで諦めず
に何か違う方法があるのではないか、
と考え続けたのが良かったと思います。
また、
自分と同世代の若者が頑張っている大相撲の世界ではどんなことが行われているのだろう。
どんな
稽古をして強くなっているのだろう。中に入って見てみたい、
やってみたいという好奇心が強かったと思います。
人生の岐路に立たされた時には是非、
自分で考える力と決断する力を持ち、好奇心を持って自らの道を切り
開いていってほしいと思います。
略歴
日本大学相撲部で活躍後、周囲の反対を押し切って夢であった大相撲入りを決意。新弟子検査
基準(当時)
の身長に足りなかったため、頭にシリコンを入れて合格を果たす。角界最小の身体ながら、
大型力士と闘い続けた現役時代のエピソードや挑戦し続けることの大切さ、
また相撲からの社会
関係論や教育論など興味深い講演で好評を博す。1968年青森県出身。2000年帝京大学講師、
2011年近畿大学客員教授。
JERF
公益財団法人 日本エステティック研究財団の概要
Japan Esthetique Research Foundation 略称 JERF
1.設立年月日
平成4年5月22日厚生大臣(現厚生労働大臣)許可により設立され、公益法人制度改革に伴い、内閣
総理大臣の移行認定を受け、平成25年4月1日公益財団法人へ移行し現在に至る。
2.設立趣旨
エステティックの国民生活に与える安全性や経営倫理等の影響の増大に鑑み、エステティック業界の
健全化に向けて、エステティックに関する調査研究を行うとともに、エステティックの業務の適正化及び
技能の改善向上を図ることにより、公衆衛生の向上及び消費者の利益の保護に寄与することを目的に
設立されました。
3.事 業
①エステティックの安全性、有効性及び技能改善等に係る調査研究に関する事業
②エステティックの業務の適正化に関する事業
③エステティックの技能向上のための研修に関する事業
④エステティックに係る消費者の苦情処理に関する事業
⑤エステティックに関する資料及び情報の収集に関する事業
⑥その他、本財団の目的を達成するために必要な事業
4.発行書籍
「エステティックサービス契約書」
(1セット3枚複写50組)
「解説エステティックサービスの契約Ⅰ」
(付 特定商取引法・契約書約款) 「解説 エステティックサービスの契約Ⅱ エステティック・サービス関連法規マニュアル」
「改訂版 エステティックの衛生基準」
(平成21年4月発行)
「エステティックに関する調査報告書」
(平成24年12月発行)
「エステティックサロンの衛生管理ハンドブック」(平成26年1月発行)
5.事務局
〒105-0003 東京都港区西新橋1-23-10 南和ビル4F
TEL 03-3501-5721 FAX 03-3501-6982
URL http://www.jerf.or.jp